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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】和服着付けフィギアの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63H 9/00 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
A63H9/00 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021038383
(22)【出願日】2021-03-10
【審査請求日】2022-02-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和2年7月8日~14日のいずれかにウェブサイトにて公開 ■https://www.furyu.jp/news/2020/07/fnex_re-zeroxyoshitoku/ ■https://fnex.jp/products/detail.php?product_id=71 ■https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001439.000005167.html ■https://straightpress.jp/company_news/detail?pr=000001439.000005167 ■https://president.jp/ud/pressrelease/5f053aa277656154eb320000 ■http://gendai.ismedia.jp/ud/pressrelease/5f053b997765611004320000 ■https://animeanime.jp/release/prtimes/20200708/76036.html ■http://ure.pia.co.jp/articles/-/769520 ■https://www.sankei.com/economy/news/200708/prl2007080081-n1.html ■https://b2b-ch.infomart.co.jp/news/search/../detail.page?IMNEWS4=2050181 ■https://news.infoseek.co.jp/article/prtimes_000001439_000005167/ ■http://www.seotools.jp/news/id_000001439.000005167.html ■https://www.excite.co.jp/news/article/Prtimes_2020-07-08-5167-1439/ ■https://news.toremaga.com/release/others/1575561.html
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和2年7月8日~14日のいずれかにウェブサイトにて公開 ■https://www.inside-games.jp/release/prtimes/20200708/77487.html ■https://www.gamespark.jp/release/prtimes/20200708/77484.html ■https://www.newscafe.ne.jp/release/prtimes2/20200708/503167.html ■http://news.nicovideo.jp/watch/nw7599668 ■https://business.nifty.com/cs/catalog/business_release/catalog_prt000001439000005167_1.htm ■https://news.biglobe.ne.jp/economy/0708/prt_200708_3396573199.html ■https://otakei.otakuma.net/archives/prtimes/000001439-000005167 ■https://yab.yomiuri.co.jp/adv/feature/release/detail/000001439000005167.html ■http://news.jorudan.co.jp/docs/news/detail.cgi?newsid=PT001439A000005167 ■https://ure.pia.co.jp/articles/-/769486 ■https://minkabu.jp/news/2707821 ■https://netshop.impress.co.jp/r/prtimes/items/000001439.000005167 ■https://www.jiji.com/jc/article?k=000001439.000005167&g=prt ■http://www.iza.ne.jp/kiji/pressrelease/news/200708/prl20070812170082-n1.html
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和2年7月8日~14日のいずれかにウェブサイトにて公開 ■https://jbpress.ismedia.jp/ud/pressrelease/5f053a8977656114bb320000 ■http://toyokeizai.net/ud/pressrelease/5f053e6577656126c51b0000 ■https://news.anibu.jp/20200708-168047.html ■https://dime.jp/company_news/detail/?pr=639004 ■https://news.allabout.co.jp/articles/p/000001439.000005167/ ■https://www.zaikei.co.jp/releases/1040713/ ■https://www.oricon.co.jp/pressrelease/675047/ ■https://www.asahi.com/and_M/pressrelease/pre_13843693/ ■https://news.fresheye.com/article/fenwnews2/1000003/20200708100000_pr_pr000001439-000005167/a/index.html ■https://news.fresheye.com/article/fenwnews2/1000003/20200708114004_pr_pr000001439-000005167/a/index.html ■https://mainichi.jp/articles/20200708/pls/00m/020/010000c ■https://www.figgy.jp/figure/202007070010/ ■https://hobby.watch.impress.co.jp/docs/news/1264033.html ■https://news.ganma.jp/contents/rizero/8876/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和2年7月8日~14日のいずれかにウェブサイトにて公開 ■https://hobby.dengeki.com/news/1030072/ ■https://ckworks.jp/animeradar/news/entry/hobby.dengeki.com/news/1030072/ ■https://www.pashplus.jp/goods/192125/ ■https://news.livedoor.com/article/detail/18539271/ ■https://antenna.jp/articles/10903484 ■http://animeanime.jp/article/2020/07/08/54865.html ■https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200708-00000006-anmanmv-ent ■https://news.goo.ne.jp/article/animeanime/entertainment/animeanime-54865.html ■https://gunosy.com/articles/eZa66 ■https://www.excite.co.jp/news/article/Animeanime_54865/ ■https://news.mixi.jp/view_news.pl?id=6149772&media_id=50 ■http://topics.smt.docomo.ne.jp/article/animeanime/entertainment/animeanime-54865?fm=latestnews ■https://entameplus.jp/article/index.php?id=653444791443047521&genre=anime ■https://this.kiji.is/653444791443047521?c=414795408717890657
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和2年7月8日~14日のいずれかにウェブサイトにて公開 ■https://news.biglobe.ne.jp/exarticle/game/2020/0708/4caef6e1.html ■https://news.line.me/issue/oa-animeanime/9675b47tpjh5?utm_source=Twitter&utm_medium=share&utm_campaign=none ■https://newscollect.jp/article/?id=653444791443047521 ■https://natalie.mu/comic/news/386810 ■https://newstopics.jp/url/12121556 ■https://news.mynavi.jp/article/20200708-1125769/ ■https://news.headlines.auone.jp/stories/series/general/13527635?genreid=202&subgenreid=222&articleid=13527635&cpid=10130094 ■https://gunosy.com/articles/eoLM3 ■https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200708-00000136-nataliec-ent ■https://news.mixi.jp/view_news.pl?id=6150350&media_id=86 ■https://news.line.me/articles/oa-natalie-comic/4e62fd3dc1ff ■https://news.biglobe.ne.jp/exarticle/game/2020/0708/9c112730.html ■https://ceron.jp/url/natalie.mu/comic/news/386810#commenttop ■https://ckworks.jp/animeradar/news/entry/natalie.mu/comic/news/386810 ■https://www.gamer.ne.jp/news/202007080054/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和2年7月8日~14日のいずれかにウェブサイトにて公開 ■https://www.oricon.co.jp/article/1210702/ ■https://newscollect.jp/article/?id=653590624642810977 ■https://entameplus.jp/article/index.php?id=653590624642810977&genre=game ■https://entamepost.jp/post/?id=653590624642810977&ct=game ■https://ln-news.com/articles/109099 ■https://news.prcm.jp/article/233771 ■https://news.ameba.jp/entry/20200710-15/ ■https://mantan-web.jp/article/20200710dog00m200070000c.html ■https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200710-00000070-mantan-ent ■https://www.famitsu.com/news/202007/12201855.html ■http://news.nicovideo.jp/watch/nw7632271 ■https://ceron.jp/url/www.famitsu.com/news/202007/12201855.html ■https://news.biglobe.ne.jp/exarticle/game/2020/0714/4f9124e2.html ■http://gamebiz.jp/?p=271026 ■https://dengekionline.com/articles/43210/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和2年7月8日~14日のいずれかにウェブサイトにて公開 ■https://news.line.me/issue/oa-dengekionline/q0hj4uxo09ud ■https://hobby.watch.impress.co.jp/docs/news/1264033.html
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (2)令和2年9月18日にウェブサイトにて公開 ■https://www.furyu.jp/news/2020/09/fnex_yoshitoku/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (3)令和2年9月19日にウェブサイトにて公開 ■https://netkeizai.com/articles/detail/1851 ■https://news.mynavi.jp/article/20200919-1321932/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (4)令和2年9月29日にウェブサイトにて公開 ■https://figsoku.net/blog-entry-205561.html
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (5)令和3年3月4日に「株式会社吉徳 浅草橋本店1階店頭」にて公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596136774
【氏名又は名称】株式会社 吉徳
(73)【特許権者】
【識別番号】307010096
【氏名又は名称】フリュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 ▲徳▼兵▲衛▼
(72)【発明者】
【氏名】上村 篤
(72)【発明者】
【氏名】羽原 良彦
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-061239(JP,A)
【文献】特開2020-146393(JP,A)
【文献】実開昭54-086295(JP,U)
【文献】登録実用新案第3056313(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両腕、両脚及び胴体を有し、かつ、可動できない 固定されたポージングを有する裸体のフィギア本体部、並びに関節部と関連付けされない箇所で分断されている可動できない肢体部及び頭部を製造するフィギア製造工程、
前記フィギア本体部に対して、生地を傷めず剥がすことが可能な接着剤により、複数の和服衣装のパーツを固定し、着せ付ける着せ付け工程、
前記着せ付け工程の途中の段階及び/又は終了段階で、前記肢体部及び/又は前記頭部を前記フィギア本体部に取り付けるパーツ取付工程、を少なくとも含む
ことを特徴とする和服着付けフィギアの製造方法。
【請求項2】
前記生地を傷めず剥がすことが可能な接着剤は、ホットメルト接着剤である
ことを特徴とする請求項1に記載の和服着付けフィギアの製造方法。
【請求項3】
前記分断されている肢体部は、肘関節よりも先の途中部分で分断された上腕部の一部を少なくとも含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の和服着付けフィギアの製造方法。
【請求項4】
前記着せ付け工程において、和服衣装のパーツ同士の固定については、前記生地を傷めず剥がすことが可能な接着剤を用いることなく、縫い止めにより固定を行う
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の和服着付けフィギアの製造方法。
【請求項5】
前記着せ付け工程は、前記和服衣装に綿を縫製する工程を含むものである
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の和服着付けフィギアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、和服着付けフィギアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
観賞用に製作される人形としてのフィギアが知られている。フィギアは様々なポージングを取るものであるが、ポージング自体の造形美も鑑賞の対象になるため、その形状は固定されているのが一般的であるし、固定されたポージングは観賞用として優れたものといえる。また、当然にフィギアが身に着けている衣装も鑑賞の対象になる。衣装は、人形本体と一体のものとして成型されるか、人形が身に着ける衣装を人形本体とは別途に成型する態様のものであっても、人形本体を成型するための樹脂と同じ樹脂で製造されることが一般的である。そうした中、人形本体を成型するための樹脂と異なる性質の樹脂を用いて衣装を製造する例もある。
例えば、特許文献1には、人形本体を成型するための樹脂とは異なる性質の樹脂を用いて人形が身に着ける衣装を成型することによって、薄手の着衣が身体に密着したような軽快な装いのフィギアを製造することを可能とした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4946533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、昨今の高級志向により、美しいフィギアを高級な衣装で着飾らせた造形美の高いフィギアが欲しいという要求も存在する。このことに関し、高級な鑑賞用の人形というものとしては、和服が着付けられた伝統的な日本人形が知られている。しかし、日本人形は人形の身体の一部と衣装とが組み合わされることによって人形としての完成形が得られるものであって、そもそも、胴体部は人形としての形状を有するものでなく、衣装の下に藁胴や木胴、或いは、図10に示されるように、発泡スチロール等が配置されるものである。したがって、フィギアを着飾らせてリアリティのある鑑賞用人形を提供するということとは相容れない。このため、日本人形の制作技術が、フィギアへ和服を着付けさせようという発想に結び付くことはなかった。
本発明は、従来の日本人形の製造方法では克服できない新たな製造方法を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、和服が着付けられたフィギアという全く新しい発想のフィギアを提供することを発明の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の和服着付けフィギアの製造方法は、少なくとも以下の構成を具備するものである。
両腕、両脚及び胴体を有し、かつ、可動できない固定されたポージングを有する裸体のフィギア本体部、並びに関節部と関連付けされない箇所で分断されている可動できない肢体部及び頭部を製造するフィギア製造工程、前記フィギア本体部に対して、生地を傷めず剥がすことが可能な接着剤により、複数の和服衣装のパーツを固定し、着せ付ける着せ付け工程、前記着せ付け工程の途中の段階及び/又は終了段階で、前記肢体部及び/又は前記頭部を前記フィギア本体部に取り付けるパーツ取付工程、を少なくとも含むことを特徴とする。
ここで、「関節部と関連付けされない箇所で分断されている」とは、分断箇所を関節部の位置とすることを必ずしも要しないという意味であり、分断箇所が偶々、関節部と一致する態様を排除するものではなく、関節部分で可動される人形との差別化を意図したものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る和服着付けフィギアの斜視図である。
図2】固定されたポージングを有する裸体のフィギア本体部を示す図である。
図3】ホットメルト接着剤を用いて、衣装着せ付けを行う様子を示す図である。
図4】フィギア本体に衣装の一部が貼り付けられた様子を示す図である。
図5】ホットメルト接着剤を用いて衣装同士を固定する日本人形を示す図である。
図6】縫い止めを用いて衣装同士を固定する本発明の実施形態を示す図である。
図7】綿を衣装部に縫製させておく本発明の実施形態を示す図である。
図8】着脱式パーツと着付けとの関係を示す工程図である。
図9】足首部と台座を示す図である。
図10】日本人形の胴体部と着付けの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態に係る和服着付けフィギアの製造方法は、固定されたポージングを有する裸体のフィギア本体部、並びに関節部と関連付けされない箇所で分断されている肢体部及び頭部を製造するフィギア製造工程、前記フィギア本体部に対して、生地を傷めず剥がすことが可能な接着剤により、複数の和服衣装のパーツを固定し、着せ付ける着せ付け工程、前記着せ付け工程の途中の段階及び/又は終了段階で、前記肢体部及び/又は前記頭部を前記フィギア本体部に取り付けるパーツ取付工程、を少なくとも含むことを特徴とするものである。
【0008】
以下、本発明の実施形態、特に製造工程についての実施形態を、図面を用いて説明するが、以下の図面は説明を目的に作成された概念図であって、実施されるそのままの態様を必ずしも示しているものではないことに留意する必要がある。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る和服着付けフィギア1の全体を示す斜視図である。裸体のフィギア本体部2に和服3が着せ付けられている。重ね袿姿で、右半身部分の一単を外した状態で、左半身側には和傘4を斜めに掲げるように両手を開いた状態での固定ポージングを取っており、優雅な立ち居振舞いが演出されている。この状態だけで、従来の日本人形とフィギアの発想を単に融合させたというようなものでなく、日本人形ともフィギアとも峻別されることが理解可能である。何故ならば、日本人形は衣装の下に人形の体裁を十分に維持した胴体が納められているものではないし、逆に、フィギアの衣装はフィギア本体と略同じ素材を用いて製作されているからである。本発明の実施形態に係る和服着付けフィギア1は、基礎となるフィギア本体部2及び和服3の組み合わせについての特徴的構造と製造方法としての特徴的な手法をもって、初めて実現可能となったものである。本発明の実施形態の特徴(製造方法及びフィギアと衣装の構造)について、和服着付けフィギアの製造方法の各工程について詳述することで説明する。
【0010】
(フィギア製造工程)
まず、本発明の実施形態に係る和服着付けフィギア1のフィギア製造工程を説明する。図2は、固定されたポージングを有する裸体のフィギア本体部2であって、既知となる所定の製造方法によって製造されたものである。図2は試作品のため、3Dプリンタを用いて製造されたフィギア本体部2を示している。しかし、大量生産時には、鋳型にフィギア本体部2を成型するABS樹脂等を注入して、フィギア本体部2が製造されることになる。また、図2には示されていないが、肘関節よりも上の部分で分断されている上腕部の一部22、足袋を履いた足首部23、頭部21等のフィギアの各パーツについても別途、鋳型を用いて製造する。その後、本体部とそれ以外のパーツには、必要に応じて着色が施される。
【0011】
(着せ付け工程)
次に、本発明の実施形態に係る和服着付けフィギア1の着せ付け工程について説明する。既に述べたように、従来からある日本人形は、発泡スチロールといった簡易的な構造の代替物によって人形の本体部(胴体部)が形成されていた。そして、図10に示されるように、二の腕部分は針金に発泡ウレタンを巻き付け、頭部は石膏をガムテープ等で貼り付けるようにされている。また、衣装部分は主として釘の打ち込みにより着せ付けられるようにされている。
【0012】
一方、本発明の実施形態に係る和服着付けフィギア1では、人形を構成する主体はABS樹脂等で成型されたフィギア素材であり、このようなフィギア素材は人間らしい自然なボディラインを表現できる点で優れている。しかし、このフィギア素材に釘を打ち込むことはできないし、仮に、袋状の衣装等を用意して、このフィギア素材に何ら工夫することなく、衣装を被せるようにしたのでは、ボディラインとの間に無用な空間が生じることになり、フィギア素材の持つ折角の綺麗なボディラインが台無しとなる。そこで、本発明の実施形態では、衣装の着せ付けに際して、生地を傷めず剥がすことが可能な接着剤としてのホットメルト接着剤を用いることとしている。図3は、フィギア本体部2の後側である臀部の部分にホットメルト接着剤で着物を接着した後に、フィギア本体部2の前側である大腿部にホットメルト接着剤をグルーガンで塗布しようとしている状況を示している。ホットメルト接着剤が塗布された後は、図4が示すように、着物の下部分が着せ付けられた状態となる。なお、図4では、フィギア本体部2の上半身にも肌襦袢がホットメルト接着剤で貼り付けられている状態となっている。また、図4からは、フィギア本体部2の形状が、肘関節よりも上の上腕部の途中までとされている様子を見ることができる。この後の着付け作業の障害となるために、図3では嵌め付けられていた上腕部の一部22が、図4では取り外されていることを理解することができる。一方、従来に日本人形へ衣装を着つける際に、ホットメルト接着剤を使用することはできない。これは、本体の発泡ウレタンが高温のホットメルト接着剤によって溶けてしまうためである。
【0013】
ホットメルト接着剤を使用する理由としては、体の曲線にフィットして衣装がシワにならない着せ付けを実現出来る、木工ボンド等に比べて乾きが早くて作業時間を短縮できる、接着剤が衣装に染み込まずに途中で剥がせる、貼り直しや位置の修正が容易である、という特長を有することが挙げられる。これらの特長を活かしつつ、塗布量や塗布面を極力抑えることによって、衣装の上から触れた時に、フィギュア自体が持つボディラインや質感が伝わるようにすることができるし、見た目としても美しいラインを醸し出すことができる。ホットメルト接着剤の種類としては、スティック状、ペレット状、シート状の任意のものを用いることが可能であるが、作業性の面では、グルーガンを使用してのスティック状を用いることが有利である。また、ホットメルト接着剤でなくとも、弱粘着性のスプレー接着剤でも代替可能である。
【0014】
従来の日本人形では、袖の垂れ具合や裾のシワの付き具合を美しく見せるための形状を維持するために、実は、図5に示されるように、ホットメルト接着剤を用いて衣装同士を固定している。日本人形はガラスケースに収められていたり、そうでなくても、展示箇所に固定配置されていたりして、人形を手に取って触れるということが想定されていない。このため、ホットメルトが使用されているのであるが、当然に引っ張った際の強度、および長期間の形状維持に不安を抱えることになる。一方、本発明の実施形態のフィギアは完成された後、手に取って鑑賞されることに耐えうるものでなければならない。また、外気に晒される機会も、伝統的な日本人形に比べて頻発されることが想定され、長期間外気に晒されることで接着剤が経年劣化し、接着の剥がれが懸念される。そこで、本発明の実施形態に係る和服着付けフィギア1では、フィギアへの衣装の取り付けにホットメルト接着剤を用いる一方で、衣装同士の固定は、図6に示されるように、縫い止めの手法を採用している。衣装同士の形状を整え、形が崩れないようにするためである。これにより、長期間の鑑賞に耐え得る作りを実現することが可能となった。
【0015】
本発明の実施形態に係る和服着付けフィギア1では、衣装形状の艶やかさをみせるために、さらなる工夫もされている。日本人形は、顔周りを美しく見せるため、衣装の内側に綿を入れ、シワを出さないように張りを持たせてシルエットを維持するのが普通である。そのやり方としては、各着せ付けの工程の際に後入れで綿を詰めるようにされる。本発明の実施形態に係る和服着付けフィギア1では、腕部周辺に綿を詰めた方がシルエットが美しくなるとの判断の下で綿入れを採用している。しかし、後述するパーツ取付工程において、着脱式の上腕部の一部22がフィギア本体部2に取り付けられることになるため、日本人形の製作のように綿を後詰めにしてしまうと、その着脱の際に、周辺の綿が袖の下に落ちてしまうことが懸念された。そこで、本発明の実施形態に係る和服着付けフィギア1では、図7に示されるように、肩口から二の腕にかけての部分周辺を中心に、先に綿を衣装に縫製させておくことで、着脱させても綿の落下を防ぐようにした。これにより、思わぬ副次的な効果も生じた。従来の日本人形の製作では、各着せ付けの工程の際、後入れで綿を詰めているため、形状の差異としての個体差が出やすいものであったが、本発明の実施形態に係る和服着付けフィギア1の製作では、衣装への綿入れ工程を行った後に本体に着せ付けるようにしたことから、形状についての個体差が生じにくいものとなった。さらには、先に綿を衣装に縫製させておくことから、個体差をより小さくできる。
【0016】
(パーツ取付工程)
玩具としての着せ替え人形が本願発明と比較されるべきものでないことは、これまでの説明から明らかであると思われるが、念のため、着せ替え人形についても少し述べておくと、着せ替え人形の類は、衣装自体が面ファスナ等で貼剥がし出来る構造や、人形に関節部を具備させて上下肢体部を可動構造とすることによって、着せ替えを可能としている。本発明は、そもそも着せ替え人形ではないので、対比する必要もないが、着衣工程のみに着目すると、着せ替え人形では、衣装か人形の少なくとも一方の可動範囲を大きくすることで、着衣が実現されている。本発明では、フィギアが固定ポーズを取ること、また、着衣される衣装が和服であることから、着せ替え人形で採用されている技術を転用することはできない。一方で、日本人形では、先に述べたように、二の腕部分は針金に発泡ウレタンを巻き付けて可動できるようにされているのが普通であるため、ある意味、着せ替え人形と共通した特徴を有するものともいえる。しかし、本発明の実施形態に係る和服着付けフィギア1は可動部分を持たないため、着せ替え人形や日本人形のような手法を採用することはできない。加えて、本発明の実施形態に係る和服着付けフィギア1は、腕に角度を付けたポージングを取っているため、腕周りのスペースが不足して衣装がだぶついたり、そもそも帯部分を着せ付けるためのスペースが無くなったりしてしまう。本来であれば、着せ付けの難易度は著しく高く、このようなポージングに対して着せ付けを行うこと自体が不可能の筈であった。そこで、関節部と関連付けされない箇所で分断されている上腕部の一部22を着脱式としたことで、先に当該パーツを外した状態で袖を通して、後で当該パーツを取り付けるという事を可能とし、着せ付け自体を容易なものとして、ポージングの制限を大幅に緩和することを可能とした。
【0017】
この点につき、図8を用いて詳述する。まず、腕に袖を通すのであるが、この段階で、着脱式でなければ袖を通す空間に対して、腕の長さが長過ぎて、袖を通すことができないという問題がある。次の段階でも、着脱式にして角度とスペースに余裕を作っておかなければ、そもそも帯部分が着せ付けられないという問題が生じてしまう。胴体には二の腕と上腕部の根本しか接続されていないことによって、これらの問題を解決している。このようにして、一通りの着せ付けが終わってから、上腕部の一部22を取り付けて形を整えるのである。肢体の分断箇所は、衣装によって隠れる範囲に限定すると、フィギアの組み立て完成時に分断箇所が見られないという効果を得ることができる。
本発明の実施形態に係る和服着付けフィギア1は和傘4を持つために、両手を開き、肘で曲げられた先の部分で、上腕部が分断されることが半ば必然である。しかし、上腕と二の腕が真直ぐなポーズであれば(それが魅惑的であるかは別として)、肘部分で分断されることが可能であることは言うまでもない。要するに、本発明が意図するところは、分断箇所を関節部の位置とすることを必ずしも要しないという意味であり、分断箇所が偶々、関節部と一致する態様を排除するものではない。ただし、分断箇所を肩口とする手法を採用した場合には、輸送時の衝撃等で接合部が外れてしまった際に、復旧させるのが困難であるし、衣装の形状自体が崩れる恐れもあるため、適当ではない。しかし、この手法であったとしても、治具を用いる等して解決できるのであれば、本発明の思想から排除されるものではない。
【0018】
上腕部の一部22以外に、頭部21と足首部23も着脱式にされている。そして、フィギア本体部2と足首部23の着脱だけでなく、足首部23と台座の着脱も可能とされている。図9は、台座に足首部23が嵌めこまれている様子を示す図である。これらのパーツも着せ付けの容易化に寄与するものである。特に、頭部については、髪の毛が長い造形の場合には、首周りのスペースが不足し着せ付けが困難になる問題を着脱式にすることで解消することを実現する。フィギアの場合は、人形の髪の毛も柔軟性の低いプラスチック素材で成形されることが多いため、髪の毛を避けて着せ付けを行うことができる従来の日本人形に比べて、このような課題が顕在化しやすい。このように、各種パーツを着脱式とすることで、次のような副次的な効果も発現される。フィギュア各パーツと衣装の生産をそれぞれ並行して進めるが、着せ付けに必要なパーツ(胴体部、上腕部の一部)を優先して進め、他(頭部、足首から下)は着せ付けをしている最中に揃えるという形を取ることで、全体的な工期を圧縮出来る。不良品が出た場合に、個別のパーツを交換することで対応することが出来る。足首から下の部分を分割構造とすることで、輸送時の破損リスクを軽減できる。これらの効果も、本発明の特徴的な構造と製造方法によって達成されるものである。
【0019】
[付記]
なお、本発明は、これまでに説明した新たな製造方法に適したフィギア及び衣装の組み合わせを提供することを目的の一つとすることもできる。
【0020】
(付記1)
本発明の一態様は、任意の固定されたポージングを有する裸体のフィギア本体部と、前記フィギア本体部に着せ付けられた和服衣装と、前記フィギア本体部に取り付けられている着脱式の肢体部及び頭部と、を含み、前記和服衣装は、前記フィギア本体に生地を傷めず剥がすことが可能な接着剤で固定されていることを特徴とする和服着付けフィギアである。
【0021】
(付記2)
本発明の一態様は、フィギア本体部と和服衣装を備え、前記フィギア本体部は、簡易的な構造の代替物を用いることなく明確にフィギアの一部を構成する胴体部と着脱可能な肢体部及び頭部とを有し、かつ、固定的なポージングとされた裸体相当のものであり、前記着脱可能な肢体部は、関節部と関連付けされない箇所で分断されており、前記和服衣装は、前記フィギア本体部に着付けされていることを特徴とする和服着付けフィギアである。
【0022】
以上、本発明の実施形態に係る和服着付けフィギア1について、図面を参照して詳述し、その製造工程及びフィギアないし衣装の特徴的構造について説明してきたが、具体的な構成は、これらの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、足首部23が立位の安定を保てる形状であって、台座を設けない態様とするのであれば、足首部23は着脱式としないことも可能である。換言すれば、固定ポージングとして決定された態様、衣装の形状に合わせて、着付けに適するような着脱部分を設定するというのが本発明の最も広範な技術的思想である。さらに、和服としての衣装は晴着でなく、紋付き袴などの変形例であっても本願発明の範囲に含まれるものである。また、前述の実施例は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 和服着付けフィギア
2 フィギア本体部
21 頭部
22 上腕部の一部
23 足首部
3 和服
4 和傘
【要約】
【課題】
従来の日本人形の製造方法では克服できない新たな製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
固定されたポージングを有する裸体のフィギア本体部、及び関節部と関連付けされない箇所で分断されている肢体部及び頭部を製造するフィギア製造工程、前記フィギア本体部に対して、生地を傷めず剥がすことが可能な接着剤により、複数の和服衣装のパーツを固定し、着せ付ける着せ付け工程、前記着せ付け工程の途中の段階及び/又は終了段階で、前記肢体部及び/又は前記頭部を前記フィギア本体部に取り付けるパーツ取付工程、を少なくとも含むことを特徴とする和服着付けフィギアの製造方法。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10