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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/06 20060101AFI20220822BHJP
   F25D 19/00 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
F25D17/06 304
F25D19/00 510Z
F25D19/00 520D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017252088
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2019117036
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100109139
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】片桐 賢宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆
【審査官】嶋田 研司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0054047(US,A1)
【文献】特開2006-078053(JP,A)
【文献】特開2007-003173(JP,A)
【文献】特開2001-027469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 17/06
F25D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵室と、
前記冷蔵室の温度よりも低い温度に設定可能な切替室と、
冷蔵庫の内箱における背面側の内壁に沿うように、前記内壁の上方から下方にわたって配置された平板状の蒸発器と、
前記蒸発器の下方部に対向し、前記蒸発器よりも前記冷蔵庫の扉側である前方であって、前記冷蔵室側に配置された吸い込みファンと、
前記蒸発器の下方部に対向し、前記蒸発器よりも前記冷蔵庫の扉側である前方であって、前記切替室側に配置された吹き出しファンと、
前記扉側からの正面視において前記蒸発器を覆うように、前記蒸発器の前記前方に配置された断熱部と
前記冷蔵室と前記切替室の間に設けられた断熱仕切壁と、
前記吹き出しファンから前記切替室へ冷気を送風する切替室用ダクトと、を備え、
前記断熱部と前記蒸発器との間、および前記内壁と前記蒸発器との間には、冷気通路となる間隙が設けられており、
前記断熱部と前記蒸発器との間の前記冷気通路には、前記吸い込みファンからの冷気通路と、前記吹き出しファンへの冷気通路とを分ける遮断部が設けられ、前記遮断部の上端は、前記内箱における前記内壁の上面部に対して所定の間隔を有する位置に設けられ、前記吸い込みファンからの冷気通路と前記吹き出しファンへの冷気通路とを連通させる間隙が設けられている、
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記吸い込みファンは、遠心型のファンまたは軸流型のファンである、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記平板状の蒸発器は、ロールボンド型またはパイプオンシート型の蒸発器である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記吸い込みファンは、下方に開口部を有するダクト内に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記切替室の切替温度に応じて、前記吹き出しファンの駆動期間を制御する制御部を備える、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵庫に関し、特に、冷気循環用ファンを備える冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍室を備えていない1枚扉型の冷蔵庫においては、庫内上部に蒸発器を備え、さらに蒸発器よりも上部に吹き出しファンを備えた冷蔵庫が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-257230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように庫内上部に蒸発器と吹き出しファンを設ける構成においては、蒸発器と吹き出しファンを配置するスペースが必要となるため、庫内上部の奥行きが狭くなる。また、蒸発器の熱交換面積を大きくとれないため、熱交換の効率が低下する。さらに、庫内上部に設置した吹き出しファンからの冷気を庫内に行き渡らせるために、ダクト構造が複雑となる。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題を解決するものであり、庫内に十分な奥行きを確保し、かつ、蒸発器の熱交換効率を向上させ、さらに、ダクト構造を簡易化可能な冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷蔵庫の一態様は、冷蔵庫の内箱における背面側の内壁に沿うように、前記内壁の上方から下方にわたって配置された平板状の蒸発器と、前記蒸発器の下方部に対向し、前記蒸発器よりも前記冷蔵庫の扉側である前方に配置された吸い込みファンと、前記扉側からの正面視において前記蒸発器を覆うように、前記蒸発器の前記前方に配置された断熱部と、を備え、前記断熱部と前記蒸発器との間、および前記内壁と前記蒸発器との間には、冷気通路となる間隙が設けられており、前記吸い込みファンにより、前記蒸発器の下方より上方に送風する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の冷蔵庫の一態様によれば、冷蔵庫内の空気は、吸い込みファンによって吸い込まれ、吸い込みファンの周方向の下方に送風される。送風された空気は、断熱部と蒸発器との間、および内壁と蒸発器との間に設けられた、冷気通路となる間隙を流れ、蒸発器によって冷却され、冷蔵庫内へと送られる。平板状の蒸発器は、冷蔵庫の内箱における背面側の内壁に沿うように、内壁の上方から下方にわたって配置されているので、蒸発器の面積を大きくすることができ、熱交換の効率を向上させることができる。また、吸い込みファンは、蒸発器の下方部に対向し、蒸発器よりも前方に配置されているので、冷蔵庫の上方部に、ファンを配置するための空間が必要なくなり、冷蔵庫の上方部の庫内を有効に使用することが可能となる。また、吸い込みファンは、蒸発器の前方に設けられているので、吸い込みファンに妨げられることなく蒸発器の長さを下方へと延ばすことができ、かつ、除霜水が吸い込みファンに侵入することを防ぐことができる。
【0008】
本発明の冷蔵庫の他の態様は、前記吸い込みファンは、離心型のファンまたは軸流型のファンであってもよい。この態様によれば、離心型のファンまたは軸流型のファンにより、蒸発器の下方より上方に送風することができるので、冷蔵庫の上方部に、ファンを配置するための空間が必要なくなり、冷蔵庫の上方部の庫内を有効に使用することが可能となる。
【0009】
本発明の冷蔵庫の他の態様は、前記平板状の蒸発器は、ロールボンド型またはパイプオンシート型の蒸発器であってもよい。この態様によれば、蒸発器を平板状に薄くすることができ、庫内への出っ張り寸法を少なくして、庫内を有効に使用することが可能となる。
【0010】
本発明の冷蔵庫の他の態様は、前記吸い込みファンは、下方に開口部を有するダクト内に取り付けられていてもよい。この態様によれば、吸い込みファンにより吸い込まれ、吸い込みファンから排気される空気は、ダクトの下方に設けられた開口部から送出され、冷気通路へと流れる。したがって、吸い込みファンの停止時においても、冷気通路から吸い込みファンを介しての冷気の逆流を防止して、冷気通路における蒸発器による空気の冷却を行うことができる。また、前記吸い込みファンは、離心型のファンを用いたが、軸流型のファンでもよい。
【0011】
本発明の冷蔵庫の他の態様は、冷蔵室と、前記冷蔵室の温度よりも低い温度に設定可能な切替室と、吹き出しファンと、前記冷蔵室と前記切替室の間に設けられた断熱仕切壁と、前記断熱部と前記蒸発器との間の前記冷気通路の所定の範囲において、前記吸い込みファンからの冷気通路と、前記吹き出しファンへの冷気通路とを分ける遮断部と、前記吹き出しファンから前記切替室へ冷気を送風する切替室用ダクトと、を備えていてもよい。
【0012】
この態様によれば、吸い込みファンにより吸い込まれ、冷気通路へと送り出された空気は、蒸発器の下方から上方へと流れ、冷気通路において蒸発器により冷却される。しかし、冷却通路は、所定の範囲において、遮断部により、吸い込みファンからの冷気通路と、吹き出しファンへの冷気通路とに分けられている。したがって、吸い込みファンからの冷気通路を流れる空気は、所定の範囲を過ぎたところで、吹き出しファンへの冷気通路へと折り返す。吹き出しファンへの冷気通路を流れる冷気は、吹き出しファンから切替室へと、切替室用ダクトを介して流れる。その結果、複雑な構造のダクトを採用することなく、切替室の温度を冷蔵室の温度よりも低い温度にすることができる。
【0013】
本発明の冷蔵庫の他の態様によれば、前記切替室の切替温度に応じて、前記吹き出しファンの駆動期間を制御する制御部を備えていてもよい。この態様によれば、制御部により吹き出しファンの駆動期間が制御されると、単位時間当たりに切替室に送り出される冷気の量が異なり、切替室の切替温度を複数の段階に切り替えることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、庫内に十分な奥行きを確保し、かつ、蒸発器の熱交換効率を向上させ、さらに、ダクト構造を簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る冷蔵庫を示す斜視図である。
図2図1に示す冷蔵庫の扉を取り除いて内部を見た正面図である。
図3図2に示すA-A’線断面図である。
図4図3に示すB-B’線断面図である。
図5図3に示すC-C’線断面図である。
図6図3に示すD-D’線断面図である。
図7図3に示すE-E’線断面図である。
図8図3に示すF-F’線断面図である。
図9図8に示すG-G’線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る冷蔵庫1を示す斜視図である。図2は、図1に示す冷蔵庫1の扉3を取り除いて内部を見た正面図である。図3は、図2に示すA-A’線断面図である。図4は、図3に示すB-B’線断面図である。図5は、図3に示すC-C’線断面図である。図6は、図3に示すD-D’線断面図である。図7は、図3に示すE-E’線断面図である。図8は、図3に示すF-F’線断面図である。図9は、図8に示すG-G’線断面図である。図1から図9を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る冷蔵庫1の概要を説明する。
【0017】
(本発明の一実施形態に係る冷蔵庫の説明)
図1に示すように、本発明の一実施形態の冷蔵庫1は、冷蔵庫本体2と、扉3とを備える1枚扉型の冷蔵庫である。冷蔵庫本体2は、図2に示すように、冷蔵室4,5、および切替室6から構成される貯蔵室10を備える。冷蔵室4,5と、切替室6とは、断熱仕切壁7で仕切られている。通常、冷蔵室4,5は、2~12℃の温度に保たれ、切替室6は、0℃、2℃、あるいは5℃のいずれかの温度に保たれる。冷蔵室4,5、および切替室6は、冷蔵庫本体2の前面側に開口を有し、各室へ収容する食品等を出し入れできるようになっている。
【0018】
冷蔵室4,5、および切替室6の前記開口は、冷蔵庫本体2の前方に設けられた片開き式の扉3により開閉可能となっている。
【0019】
図2に示すA-A’線断面図である図3に示すように、冷蔵庫本体2は、外箱2aと、内箱2cと、断熱材2bと、から構成されている。外箱2aは、鋼板で形成される。内箱2cは、合成樹脂で形成され、外箱2a内に外箱2aと間隙を有して配設されている。断熱材2bは、発泡ポリウレタンで形成され、外箱2aと内箱2cとの間隙に充填される。
【0020】
内箱2cの内壁のうち、冷蔵庫本体2の背面側の内壁2c-1の近くには、内壁2c-1に沿うように、内壁2c-1の上方から下方にわたって、平板状の蒸発器14が配置されている。
【0021】
蒸発器14は、平板状の蒸発器であり、一例として、ロールボンド型の蒸発器が用いられる。ロールボンド型の蒸発器は、2枚のアルミニウム板のいずれか一方、あるいは両方の表面を、冷媒の流路パターンに対応させて凸状に形成し、2枚のアルミニウム板を貼り合わせた内部に、凹状の流路パターンを形成した蒸発器である。
【0022】
蒸発器14は、内壁2c-1に対して所定の間隔を有して配置されており、冷気通路S1を形成している。また、蒸発器14よりも扉3側の前方には、断熱部20が蒸発器14と所定の間隔を有して配置されており、冷気通路S2を形成している。このように、冷気通路S1,S2は、内壁2c-1側の蒸発器14の後方と、断熱部20側の蒸発器14の前方との両方に形成されている。なお、本明細書においては、「前方」とは、特に断らない限り、扉3側の方向を言うものとし、また同様に、「後方」は、特に断らない限り冷蔵庫1の背面側を言うものとする。
【0023】
断熱部20は、貯蔵室10の背面カバー15に取り付けられており、図3および図3におけるB-B’線断面図である図4に示すように、扉3側からの正面視において蒸発器14の前面を覆うように蒸発器14の前方に配置されている。また、断熱部20は、図4に示すように、幅方向の両端部20aが蒸発器14側に折り曲げられており、冷気通路S2の側方部を覆っている。断熱部20の両端部20aには、図3に示すように、開口部20bが複数箇所に設けられており、冷気は、開口部20bを通じて、図4に矢印Hで示すように冷気通路S2から貯蔵室10側へと流れる。
【0024】
蒸発器14の下方側と上方側には、それぞれ連通部S3と連通部S4とが設けられている。貯蔵室10内の空気は、連通部S3を介して冷気通路S1および冷気通路S2に流入し、冷気通路S1および冷気通路S2において蒸発器14により冷却された空気は、断熱部20の開口部20bおよび上方の連通部S4を介して、貯蔵室10内に流れる。
【0025】
蒸発器14の下方の連通部S3には、ドレン水を排水する受皿18が設けられている。受皿18内のドレン水は、受皿18に設けられた開口部(図示せず)を介して、ドレン管60により、蒸発皿30に排水される。
【0026】
冷蔵庫1の下部であって、切替室6の奥側には、機械室19が設けられている。機械室19には、冷媒を圧縮するコンプレッサ50が配置される。上述した蒸発器14は、コンプレッサ50、図示しない放熱器、及び図示しないキャピラリーチューブ等に冷媒配管を介して接続されており、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成する。冷凍サイクルの詳細については省略する。
【0027】
コンプレッサ50の上部には、蒸発皿30が配置されている。本実施形態の冷蔵庫1においては、冷凍庫が設けられておらず、蒸発器14の温度は、冷凍庫が設けられる場合ほど低くはならない。したがって、蒸発器14に霜が付着したとしても少量であり、霜は空気の流れによって飛ばされ、受皿18に落下する。受皿18において霜が融けて水となり、その水は、受皿18に設けられた開口部からドレン管60を介してドレン水として排出され、蒸発皿30に貯留される。
【0028】
蒸発皿30は、コンプレッサ50の上部の凸形状に対応して、図示を省略する凹状部が内部に形成されており、蒸発皿30の底面は、コンプレッサ50の上部表面に近い位置に配置される。その結果、コンプレッサ50により発せられる熱が、蒸発皿30に貯留されたドレン水に伝達され、ドレン水が蒸発皿30から蒸発する。
【0029】
蒸発器14の下方部の前方には、蒸発器14の下方部に対向するように、吸い込みファン70が配置されている。吸い込みファン70は、図2に示すように、冷蔵室5の位置における背面カバー15の裏側が配置されており、扉3側から見た正面視において、冷蔵庫本体2の中心よりも右側に配置されている。冷蔵庫本体2の中心よりも左側には、後述する吹き出しファン80が配置されている。
【0030】
背面カバー15は、図3に示すように、冷蔵室5の位置において、扉3側に凸状となるように屈曲しており、吸い込みファン70、吹き出しファン80、および空気の流路を形成するための領域を確保している。背面カバー15の最も扉3側に突出した部分の裏側には、ファン前断熱材40が配置されている。ファン前断熱材40は、図3におけるC-C’線断面図である図5に示すように、開口部41を有しており、開口部41は、図2に示すように、切替室6の位置における背面カバー15に設けられた切替室吸い込み口43と連通している。
【0031】
また、開口部41の上部に対向する背面カバー15には、図2および図5に示すように、冷蔵室吸い込み口42が設けられており、開口部41は、冷蔵室吸い込み口42とも連通している。図3に示すように、ファン前断熱材40の後方には、空気の通路S5が設けられており、開口部41、切替室吸い込み口43、および冷蔵室吸い込み口42は、通路S5と連通している。
【0032】
図3に示すように、吸い込みファン70は、ファン取付板前45に取り付けられたファン取付板後46に取り付けられている。ファン取付板前45は、上端部が、冷蔵室5の位置における背面カバー15の傾斜面に取り付けられ、下端部が背面カバー15の下端に取り付けられている。ファン取付板後46は、ファン取付板前45の後方に位置し、ファン取付板前45の背面に取り付けられている。
【0033】
図3におけるD-D’線断面図である図6に示すように、ファン取付板前45には開口部47を有しており、開口部47は、下方に広がった扇形状となっている。この開口部47は、断熱部20と蒸発器14との間に形成された冷気通路S2、および蒸発器14と冷蔵庫本体2の背面側の内壁2c-1との間に形成された冷気通路S1に連通している。
【0034】
吸い込みファン70は、離心型のファン、あるいは遠心ファンと呼ばれるファンであり、回転軸周りに環状に配置された複数枚のブレードを有し、径内周側に吸入した空気を径外周側へ吹き出す。図3に示すように、ファン取付板後46の上部は閉じられており、ファン取付板後46の下部は図3および図6に示すように開口している。また、図3におけるE-E’線断面図である図7に示すように、吸い込みファン70の側方および後方もファン取付板後46によって閉じられている。したがって、以上のようなファン取付板前45とファン取付板後46とがダクトとして機能し、冷蔵室吸い込み口42および切替室吸い込み口43を介して通路S5に流入した空気は、吸い込みファン70によって吸い込みファン70の下方へと排出される。排出された空気は、冷気通路S1および冷気通路S2を流れる過程で、蒸発器14によって冷却され、開口部20b、あるいは通路S4を通じて、冷蔵室4,5へと流れる。
【0035】
図3に示すように、冷蔵室5と切替室6との間は、断熱仕切壁7によって仕切られているため、切替室6については、上述の経路とは異なる経路で冷気が流れる。切替室6への冷気の供給を行うために、本実施形態においては、吹き出しファン80を設けている。吹き出しファン80は、図2に示すように、扉3側からの正面視において、吸い込みファン70の左横に設けられている。
【0036】
図8は、図3におけるF-F’線正面断面図である。図8に示すように、背面カバー15と蒸発器14との間に形成された冷気通路S2には、吸い込みファン70から排気された空気が流れる領域と、吹き出しファン80へと空気が流れる領域とを分けるための遮断部21が設けられている。
【0037】
遮断部21は、図8に示すように、断熱部20の両端部20aと略平行に配置された直立部21aと、直立部21aに続く屈曲部21bとを備える。直立部21aの位置は、図8に示すように、冷蔵室吸い込み口42の幅に対応して、冷蔵庫本体2の幅方向の中心よりも左側に寄った位置となっている。この幅方向の位置は、図5に示すファン前断熱材40の仕切り部42aの位置に対応している。
【0038】
また、遮断部21の直立部21aの上端は、内壁2cの上面部2c-2に対して所定の間隔を有する位置に設けられている。したがって、吸い込みファン70によって吸い込まれ、遮断部21によって仕切られた吸い込みファン70側の冷気通路S2を矢印I方向に流れる冷気は、直立部21aの上端を過ぎたところで、矢印J方向にショートカットする。そして、遮断部21によって仕切られた吹き出しファン80側の冷気通路S2を矢印K方向に流れ、吹き出しファン80の位置に到達する。
【0039】
図8におけるG-G’線断面図の図9に示すように、吹き出しファン80の背面は、冷気通路S2と連通しており、矢印L、M、N、Oに示す流れで、切替室吹き出し口44から吹き出され、切替室6へと供給される。
【0040】
図8に示すように、切替室吹き出し口44は、吹き出しファン80の真下の位置には配置されていない。しかし、図5に示すように、吹き出しファン80の前方に位置するファン前断熱材40の開口部48の形状は、吹き出しファン80から吹き出された冷気を切替室吹き出し口44に導くように湾曲した形状となっている。その結果、以上のような形状の開口部48を有するファン前断熱材40が切替室用ダクトの役割を果たし、吹き出しファン80から吹き出された冷気を切替室吹き出し口44に導き、切替室6へと供給する。
【0041】
吹き出しファン80は、図示を省略する制御部により、間欠的に駆動される。切替室6の切替温度は、0℃、2℃、あるいは5℃のいずれかの温度に切替可能であり、切替温度が低いほど、駆動期間が長く、切替温度が高いほど、駆動期間が短くなるように、制御部によって制御される。
【0042】
以上のように本実施形態によれば、平板状の蒸発器14を、冷蔵庫1の内箱2における背面側の内壁2c-1に沿うように、内壁2c-1の上方から下方にわたって配置し、扉3側からの正面視において蒸発器14を覆うように、蒸発器14の前方に断熱部を配置する。そして、断熱部20と蒸発器14との間、および内壁2c-1と蒸発器14との間には、冷気通路S1,S2となる間隙が設けられる。したがって、蒸発器14の両面で熱交換が行われ、蒸発器14により熱交換を行う面積を増やすことができ、効率の良い冷却を行うことができる。また、蒸発器14は、平板状なので、貯蔵室10に対する出っ張り寸法が少なく、従来型の蒸発器を用いた場合に比べて、貯蔵室10内の奥行きを深く取ることができる。
【0043】
吸い込みファン70を、蒸発器14の下方部に対向するように、蒸発器14よりも前方に配置したので、貯蔵室10の上部にファンを配置した場合に比べて、貯蔵室10の上部の奥行きを深く取ることができる。また、蒸発器14の下方にファンがないので、蒸発器14の下方部を、吸い込みファン70よりも下方に延ばすことが可能となり、蒸発器14の熱交換面積を増加させることができる。さらに、吸い込みファン70の蒸発器14側の後方は、ファン取付板後46により覆われているので、除霜水が吸い込みファン70に浸入することを防止することができる。
【0044】
吸い込みファン70には、離心型のファンを用いたので、簡単なダクト構造で、吸い込みファン70の下方から冷気通路S1,S2へと空気の流れを作ることが可能となる。また、ダクト構造が簡単になるので、省スペース化を実現することができる。
【0045】
本実施形態によれば、冷蔵室4,5と切替室6とで、異なった温度帯を達成するために、吸い込みファン70と吹き出しファン80との二つのファンを用いて冷気の送出を行ったので、切替室の冷気風量調整用のモータダンパー、あるいは切替シャッターを省くことが可能となる。
【0046】
また、切替室6の温度の切替えは、吹き出しファン80の駆動期間を調整することで実現できるので、ダンパーやシャッター等の機構部を設置する必要がなく、構成の簡易化を図ることができる。
【0047】
<変形例>
上述した実施形態では、蒸発器14として、ロールボンド型の蒸発器を用いたが、パイプオンシート型の蒸発器でもよい。パイプオンシート型の蒸発器とは、シート型の金属板上に、冷媒を供給するパイプを取り付けた平板状の蒸発器である。この場合でも、上述の実施形態と同様に、熱交換の面積を増やし、効率の良い冷却が可能となる。
【0048】
上述した実施形態では、吸い込みファン70の他に、吹き出しファン80を設けた態様について説明したが、貯蔵室10内の温度を、全て冷蔵室の温度とする場合には、吹き出しファン80を省略してもよい。
【0049】
冷蔵室4,5をワイン室として用いる場合には、補助ヒータを用いてもよい。
【0050】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0051】
1 冷蔵庫
2 冷蔵庫本体
2c-1 内壁
2c-2 上面部
3 扉
4 冷蔵室
5 冷蔵室
6 切替室
7 断熱仕切壁
10 貯蔵室
14 蒸発器
15 背面カバー
18 受皿
19 機械室
20 断熱部
20a 両端部
20b 開口部
21 遮断部
21a 直立部
21b 屈曲部
30 蒸発皿
40 ファン前断熱材
41 開口部
42 冷蔵室吸い込み口
42a 仕切り部
43 切替室吸い込み口
45 ファン取付板前
46 ファン取付板後
70 吸い込みファン
80 吹き出しファン
S1 冷気通路
S2 冷気通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9