(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】トレーニング器具
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20220822BHJP
A63B 23/12 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
A61H1/02 K
A63B23/12
(21)【出願番号】P 2018040404
(22)【出願日】2018-03-07
【審査請求日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2017049749
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519184930
【氏名又は名称】株式会社ソミックマネージメントホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 靖博
(72)【発明者】
【氏名】酒井 弘美
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07090626(US,B1)
【文献】米国特許第05788608(US,A)
【文献】米国特許第05403256(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0184420(US,A1)
【文献】米国特許第06676579(US,B1)
【文献】特開2008-073508(JP,A)
【文献】特開2011-056119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A63B 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向に延びる棒状に形成された起立棒と、
前記起立棒の下端部側に配置されて同起立棒全体を起立した状態から傾倒可能に支持するベース体と、
前記起立棒の上端部に設けられて使用者が把持する操作把持体とを備え、
前記操作把持体は、
垂直方向に延びて前記使用者が垂直方向に沿って把持することができる垂直把持部と、
前記垂直把持部の上端部に設けられて前記使用者が水平方向に沿って把持することができる水平把持部とを備え、
前記操作把持体は、
前記水平把持部における水平方向両端部間に延びて前記使用者の手を前記水平把持部に固定する固定具を備えることを特徴とするトレーニング器具。
【請求項2】
請求項1に記載したトレーニング器具において、
前記固定具は、
前記水平把持部における水平方向両端部のうちの一方から延びるバンド、同水平方向両端部のうちの他方から延びるバンドおよび両バンドを連結または分離するバックルを備えることを特徴とするトレーニング器具。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載したトレーニング器具において、
前記操作把持体は、
紐状に延びて前記使用者が掴むことができる紐状把持部を備えることを特徴とするトレーニング器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の腕の身体機能を向上させるためのトレーニング器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、腕の身体機能を回復または増強するためのトレーニング装置がある。例えば、下記特許文献1には、垂直方向に棒状に延びる操作棒を同操作棒の上端部に設けられた操作部を介して使用者が手で傾倒させることで上肢運動を行うことができるトレーニング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたトレーニング装置においては、操作棒の上端部に設けられた操作部上に使用者が手を載せて操作するもので使用者による操作部の保持の仕方が限られ、使用者の手または腕の障害の程度または回復の程度に応じた操作部の保持によるリハビリテーション(以下、単に「リハビリ」という)またはトレーニングを行うことができずリハビリまたはトレーニングの種類および使用者が限定されるという問題があった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、手または腕の障害の程度または回復の程度に応じたリハビリまたはトレーニングを行うことができるトレーニング器具を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、垂直方向に延びる棒状に形成された起立棒と、起立棒の下端部側に配置されて同起立棒全体を起立した状態から傾倒可能に支持するベース体と、起立棒の上端部に設けられて使用者が把持する操作把持体とを備え、操作把持体は、垂直方向に延びて使用者が垂直方向に沿って把持することができる垂直把持部と、垂直把持部の上端部に設けられて使用者が水平方向に沿って把持することができる水平把持部とを備え、操作把持体は、水平把持部における水平方向両端部間に延びて使用者の手を水平把持部に固定する固定具を備えることにある。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、垂直方向に延びる棒状に形成された起立棒と、起立棒の下端部側に配置されて同起立棒全体を起立した状態から傾倒可能に支持するベース体と、起立棒の上端部に設けられて使用者が把持する操作把持体とを備え、操作把持体は、垂直方向に延びて使用者が垂直方向に沿って把持することができる垂直把持部と、垂直把持部の上端部に設けられて使用者が水平方向に沿って把持することができる水平把持部と、垂直把持部の下端部に同垂直把持部の外側に張り出した受け体とを備え、受け体は、垂直把持部の周囲が平らに形成されていることにある。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、垂直方向に延びる棒状に形成された起立棒と、起立棒の下端部側に配置されて同起立棒全体を起立した状態から傾倒可能に支持するベース体と、起立棒の上端部に設けられて使用者が把持する操作把持体とを備え、操作把持体は、垂直方向に延びて使用者が垂直方向に沿って把持することができる垂直把持部と、垂直把持部の上端部に設けられて使用者が水平方向に沿って把持することができる水平把持部と、垂直把持部の下端部に同垂直把持部の外側に張り出した受け体とを備え、受け体は、垂直把持部の外周面からフランジ状に張り出す平面視で円形に形成されていることにある。
【0009】
このように構成した本発明の特徴によれば、トレーニング器具は、操作把持体が垂直把持部および水平把持部をそれぞれ備えているため、使用者は手または腕の障害の程度または回復の程度に応じて操作把持体の把持の仕方を変えながらリハビリまたはトレーニングを行うことができ、リハビリまたはトレーニングの種類および使用者の範囲を広げることができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記トレーニング器具において、固定具は、水平把持部における水平方向両端部のうちの一方から延びるバンド、同水平方向両端部のうちの他方から延びるバンドおよび両バンドを連結または分離するバックルを備えることにある。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前記トレーニング器具において、受け体は、水平把持部の外径よりも小径に形成されていることにある。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記トレーニング器具において、受け体は、垂直把持部に対して着脱自在な状態で取り付けられていることにある。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、前記トレーニング器具において、受け体は、起立棒に対して着脱自在な状態で取り付けられていることにある。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記トレーニング器具において、操作把持体は、紐状に延びて使用者が掴むことができる紐状把持部を備えることにある。この場合、紐状には、断面形状が円形のロープ状のほか、断面形状が帯状のベルトも含まれる。このように構成した本発明の他の特徴によれば、トレーニング器具は、操作把持体が紐状に延びて使用者が掴むことができる紐状把持部を備えているため、使用者は垂直把持部および水平把持部とは異なる把持の仕方でリハビリまたはトレーニングを行うことができ、更に広範なリハビリまたはトレーニングができるとともに使用者層を広げることができる。
【0015】
また、これらの場合、前記トレーニング器具において、紐状把持部は、両端部が垂直把持部における垂直方向両端部および/または水平把持部における水平方向両端部にそれぞれ繋がっていることもできる。これによれば、トレーニング器具は、紐状把持部の両端部が垂直把持部における垂直方向両端部および/または水平把持部における水平方向両端部にそれぞれ繋がっており、これらは自由に屈曲しない剛体からなる垂直把持部および水平把持部に対して自由に屈曲する柔軟な垂直把持部および水平把持部として機能する。これにより、本発明に係るトレーニング器具は、使用者は垂直把持部および水平把持部とは異なる把持の仕方でリハビリまたはトレーニングを行うことができ、更に広範なリハビリまたはトレーニングができるとともに使用者層を広げることができる。
【0016】
また、これらの場合、前記トレーニング器具において、紐状把持部は、垂直把持部における垂直方向両端部間および/または水平把持部における水平方向両端部間で分離または連結が可能とすることもできる。これによれば、トレーニング器具は、紐状把持部が垂直把持部における垂直方向両端部間および/または水平把持部における水平方向両端部間で分離または連結が可能に構成されているため、両端が支持された紐状把持部と片方の端部のみが支持された紐状把持部を使い分けることができるとともに、紐状把持部が不要な場合には紐状把持部を分離することで垂直把持部および/または水平把持部の各両端に架設された状態を解消して垂直把持部および/または水平把持部を把持し易くすることができる。
【0017】
また、これらの場合、前記トレーニング器具において、紐状把持部は、長さが調節可能にすることもできる。これによれば、トレーニング器具は、紐状把持部の長さが調節可能であるため、使用者は把持に適した長さに調整したり、手に巻き付けることができる長さに調整したりすることができ、更に広範なリハビリまたはトレーニングおよび使用者層を広げることができる。
【0018】
また、これらの場合、前記トレーニング器具において、さらに、操作把持体は、垂直把持部における垂直方向両端部間および/または水平把持部における水平方向両端部間に延びて使用者の手を垂直把持部および/または水平把持部に固定する固定具を備えることもできる。これによれば、トレーニング器具は、さらに、操作把持体が垂直把持部における垂直方向両端部間および/または水平把持部における水平方向両端部間に延びて使用者の手を垂直把持部および/または水平把持部に固定する固定具を備えているため、使用者の手を垂直把持部および/または水平把持部に固定することで安定した状態でリハビリまたはトレーニングを行うことができ、更に広範なリハビリまたはトレーニングを行うことができるとともに使用者層を広げることができる。
【0019】
また、これらの場合、前記トレーニング器具において、操作把持体は、垂直把持部の下端部に同垂直把持部の外側に張り出した受け体を備えることもできる。これによれば、トレーニング器具は、垂直把持部の下端部に同垂直把持部の外側に張り出した受け体を備えているため、垂直把持体を把持する使用者の手を下方で支持することができ安定した状態でリハビリまたはトレーニングを行うことができ、更に広範なリハビリまたはトレーニングを行うことができるとともに使用者層を広げることができる。
【0020】
また、これらの場合、前記トレーニング器具において、水平把持部は、垂直把持部に対して着脱自在にすることもできる。
【0021】
これによれば、トレーニング器具は、水平把持部が垂直把持部に対して着脱自在であるため、水平把持部が不要な場合に取り外すことで垂直把持部を掴み易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトレーニング器具の全体構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すトレーニング器具の操作把持体の外観構成を概略的に示す拡大正面図である。
【
図3】
図2に示す操作把持体における垂直把持部を使用者が握った使用状態を示す拡大正面図である。
【
図4】
図2に示す操作把持体における水平把持部を使用者が握った使用状態を示す拡大正面図である。
【
図5】
図2に示す操作把持体における垂直固定具および水平固定具をそれぞれ分離するとともに水平固定具における可変長バンドを使用者が握った使用状態を示す拡大正面図である。
【
図6】本発明の変形例に係るトレーニング器具の操作把持体の外観構成を概略的に示す拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るトレーニング器具の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るトレーニング器具100の外観構成の概略を示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示すトレーニング器具100における操作把持体101の外観構成の概略を拡大して示す部分拡大正面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している部分がある。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。このトレーニング器具100は、手や腕を自分の思うように動かすことができない身体に障害がある使用者が操作把持体101を掴んで起立棒110を傾倒操作することにより手や腕の機能を回復および向上させるために使用する器具である。
【0024】
トレーニング器具100は、操作把持体101を備えている。操作把持体101は、リハビリやトレーニングを行う使用者が手Hで把持する部分であり、主として、垂直把持部102、水平把持部103および受け体105をそれぞれ備えている。
【0025】
垂直把持部102は、使用者が垂直方向に沿って把持する部分であり、樹脂材、金属材または木材を人が握ることができる太さの円柱状に形成して構成されている。より具体的には、垂直把持部102は、本実施形態においては硬質の樹脂材(例えば、塩化ビニル樹脂)を円筒形に形成した芯材(図示せず)の外側を弾力性のあるゴム材、熱可塑性樹脂材または熱硬化性樹脂材であるエラストマ材を円筒状に形成した外筒で覆って構成されている。また、垂直把持部102は、使用者の手Hの幅(概ね8cm~13cm)よりも若干長い長さに形成されている。なお、垂直把持部102は、使用者の両手で把持できる長さ(概ね15cm~20cm)に形成することもできる。
【0026】
この垂直把持部102は、図示上側の端部が小径に形成されており(図示せず)、水平把持部103が嵌合した状態で取り付けられている。また、垂直把持部102は、図示下側の端部が小径に形成されており(図示せず)、受け体105が嵌合した状態で取り付けられている。
【0027】
水平把持部103は、使用者が水平方向に沿って把持する部分であり、樹脂材、金属材または木材を人が掴むことができる大きさの板状に形成して構成されている。より具体的には、水平把持部103は、本実施形態においては硬質の樹脂材(例えば、塩化ビニル樹脂)を平面視で円形でかつ正面視で図示上方に凸状に膨らむ球面状に形成して構成されている。この場合、水平把持部103は、平面視で使用者の掌の大きさ(概ね6cm~10cm)でかつ掌に馴染む曲面(高さが2cm~7cm)で構成されている。なお、水平把持部103は、平らな円形、楕円形、多角形状または各種異形形状の板状に形成されていてもよい。
【0028】
この水平把持部103は、底面の中央部に円筒体が図示下方に向かって張り出して形成されて垂直把持部102の上端部に嵌合して取り付けられているとともに同円筒体の周囲が平らに形成されている。この場合、水平把持部103は、図示しないネジによって垂直把持部102に対して着脱自在な状態で取り付けられている。また、この水平把持部103は、垂直把持部102に代えて、後述する起立棒110の上端部にも垂直把持部102と同様に取り付けることができる。そして、この水平把持部103には、水平把持部103の上面を径方向に跨いだ状態で水平固定具104が設けられている。
【0029】
水平固定具104は、水平把持部103を把持した使用者の手Hを水平把持部103に固定するための部品であり、水平把持部103の径方向両端部からそれぞれ延びるバンドで構成されている。より具体的には、水平固定具104は、主として、固定長バンド104a、バックル104bおよび可変長バンド104cで構成されている。
【0030】
固定長バンド104aは、バックル104bを支持する部品であり、帯状に延びる化繊(例えば、ナイロン樹脂またはポリプロピレン樹脂)で構成されている。この固定長バンド104aは、バックル104bを通した状態で水平把持部103の下面端部から環状に延びて形成されている。この場合、固定長バンド104aは、水平把持部103の上面中央部に満たない長さで形成されている。
【0031】
バックル104bは、固定長バンド104aと可変長バンド104cとを互いに連結または分離するための部品であり、樹脂材または金属材を平面視で方形環状に形成して構成されている。本実施形態においては、バックル104bは、樹脂材(例えば、塩化ビニル樹脂)で構成されており、使用者が水平把持部103を把持する際に冷たさを感じて水平把持部103を掴み損ねることを防止している。このバックル104bは、環状の固定長バンド104aが通されて同固定長バンド104aに保持されている。
【0032】
可変長バンド104cは、バックル104bを介して固定長バンド104aに連結されることで水平把持部103を把持した使用者の手Hを水平把持部103に固定するための部品であり、固定長バンド104aと同様に、帯状に延びる化繊(例えば、ナイロン樹脂またはポリプロピレン樹脂)で構成されている。この可変長バンド104cは、水平把持部103の下面における前記固定長バンド104aが設けられた部分とは反対側の端部から延びて形成されている。
【0033】
この場合、可変長バンド104cは、固定長バンド104aに保持されたバックル104bを貫通して折り返すことができる長さに形成されることにより、使用者ごとに大きさの異なる手Hをそれぞれ保持することができる長さに形成されている。また、可変長バンド104cの上面には、可変長バンド104cの先端部側および中央部側に一対の面ファスナからなる留め具104dが形成されており、バックル104bで折り返された可変長バンド104cを着脱自在に固定することができる。なお、留め具104dは可変長バンド104cの長さを固定できれば面ファスナ以外のもの、例えば、ホックまたはボタンなどでも構成できる。
【0034】
この水平固定具104は、固定長バンド104aと可変長バンド104cとが互いに連結された状態および互いに分離された状態で使用者の手Hで掴まれることで操作把持体101を把持する部分としても機能する。すなわち、水平固定具104は、本発明に係る固定具に相当するとともに紐状把持部にも相当する。
【0035】
受け体105は、垂直把持部102を把持した使用者の手Hを図示下方から支持するための部品であり、樹脂材、金属材または木材を垂直把持部102の外周面から張り出して形成されている。より具体的には、受け体105は、本実施形態においては硬質の樹脂材を垂直把持部102の外周面からフランジ状に張り出す平面視で円形でかつ正面視で図示下方に凸状に張り出す略円錐状に形成して構成されている。この場合、受け体105の外径は、水平把持部103の外径よりも小径に形成されており、使用者による垂直把持部102の把持および同把持時による垂直把持部102の操作が行ない易くなっている。
【0036】
この受け体105は、上面の中央部に円筒体が図示上方に向かって張り出して形成されて垂直把持部102の下端部に嵌合して取り付けられているとともに同円筒体の周囲が平らに形成されている。この場合、受け体105は、図示しないネジによって垂直把持部102に対して着脱自在な状態で取り付けられている。
【0037】
また、受け体105は、底面の中央部に円筒体が図示下方に向かって張り出して形成されて起立棒110の上端部に嵌合して取り付けられている。この場合、受け体105は、図示しないネジによって起立棒110に対して着脱自在な状態で取り付けられている。また、この受け体105および前記水平把持部103には、垂直把持部102の外周面を軸方向に跨いだ状態で垂直固定具106が設けられている。
【0038】
垂直固定具106は、垂直把持部102を把持した使用者の手Hを垂直把持部102に固定するための部品であり、垂直把持部102の軸方向両端部側からそれぞれ延びるバンドで構成されている。より具体的には、垂直固定具106は、主として、固定長バンド106a、バックル106bおよび可変長バンド106cで構成されている。
【0039】
固定長バンド106aは、前記固定長バンド104aと同様に、バックル106bを支持する部品であり、帯状に延びる化繊(例えば、ナイロン樹脂またはポリプロピレン樹脂)で構成されている。この固定長バンド106aは、バックル106bを通した状態で受け体105の上面から環状に延びて形成されている。この場合、固定長バンド106aは、垂直把持部102の上下方向中央部に満たない長さで形成されている。
【0040】
バックル106bは、前記バックル104bと同様に、固定長バンド106aと可変長バンド106cとを互いに連結または分離するための部品であり、樹脂材または金属材を平面視で方形環状に形成して構成されている。本実施形態においては、バックル106bは、樹脂材(例えば、塩化ビニル樹脂)で構成されており、使用者が垂直把持部102を把持する際に冷たさを感じて垂直把持部102を掴み損ねることを防止している。このバックル106bは、環状の固定長バンド106aが通されて同固定長バンド106aに保持されている。
【0041】
可変長バンド106cは、前記可変長バンド104cと同様に、バックル106bを介して固定長バンド106aに連結されることで垂直把持部102を把持した使用者の手Hを垂直把持部102に固定するための部品であり、固定長バンド106aと同様に、帯状に延びる化繊(例えば、ナイロン樹脂またはポリプロピレン樹脂)で構成されている。この可変長バンド106cは、垂直把持部102の上端部側における水平把持部103の下面から延びて形成されている。
【0042】
この場合、可変長バンド106cは、固定長バンド106aに保持されたバックル106bを貫通して折り返すことができる長さに形成されることにより、使用者ごとに大きさの異なる手Hをそれぞれ保持することができる長さに形成されている。また、可変長バンド106cにおける垂直把持部102の外周面側とは反対側の外側面には、可変長バンド106cの先端部側および中央部側に一対の面ファスナからなる留め具106dが形成されており、バックル106bで折り返された可変長バンド106cを着脱自在に固定することができる。なお、留め具106dは可変長バンド106cの長さを固定できれば面ファスナ以外のもの、例えば、ホックまたはボタンなどでも構成できる。
【0043】
この垂直固定具106は、固定長バンド106aと可変長バンド106cとが互いに連結された状態および互いに分離された状態で使用者の手Hで掴まれることで操作把持体101を把持する部分としても機能する。すなわち、垂直固定具106は、本発明に係る固定具に相当するとともに紐状把持部にも相当する。
【0044】
起立棒110は、操作把持体101を使用者の好みの高さ位置で支持するための棒状の部品であり、伸縮自在な金属製の棒体で構成されている。具体的には、起立棒110は、操作把持体101から下方に向かって太さが細くなる3つの筒状の棒体で構成されており、これら3つの筒状の棒体のうちのより太さの太い棒体内に太さの細い棒体が収納されるように構成されている。なお、起立棒110は、操作把持体101から下方に向かって太さが太くなるように構成してもよいし、太さが不変で伸縮しない棒体、または連結式で構成されていてもよい。
【0045】
本実施形態においては、起立棒110は、200mm~1500mmの範囲で長さ(高さ)が調整可能に形成されている。この起立棒110は、一方(図示上側)の端部が前記操作把持体101を支持しているとともに、他方(図示下側)の端部がベース体111に支持されている。
【0046】
ベース体111は、起立棒110を起立した状態でかつ傾倒可能に支持する部品であり、主として、起立棒支持体112およびベース本体113を備えて構成されている。起立棒支持体112は、起立棒110を起立した状態でかつ傾倒可能に支持する部品であり、起立棒110の下端部が着脱自在に連結されたボールジョイント112aを備えて構成されている。この場合、起立棒支持体112は、ボールジョイント112aにおける図示しないボール部の保持力を増減する調整子112bが設けられており、回転操作を介して起立棒110を傾倒させるために必要な力を増減することができる。
【0047】
ベース本体113は、起立棒支持体112を支持する部品であり、非鉄金属または鉄鋼材などの金属材料を平面視で円板状に形成して構成されている。本実施形態においては、ベース本体113は、トレーニング器具100の安定性をより確保するために鋼板によって構成されている。このベース本体113の裏面には、ゴム材を円柱状に形成した複数の底足(図示せず)が均等配置されて設けられている。
【0048】
そして、このトレーニング器具100は、全体として人が持ち運びできる重さに形成されている。この場合、トレーニング器具100の総重量である人が持ち運びできる重さとは、概ね10kg以下であるが、好ましくは1kg以上かつ5kg以下、より好ましくは1kg以上かつ3kg以下である。
【0049】
(トレーニング器具100の作動)
次に、上記のように構成したトレーニング器具100の作動について説明する。トレーニング器具100を使用する使用者(リハビリを行う者またはトレーナ)は、トレーニング器具100を用意してトレーニング器具100を使用する机上または床面上に配置する。そして、使用者は、トレーニング器具100における起立棒110の高さを調整するとともに、調整子112bの回転操作を介して起立棒110を傾倒させる際の抵抗力を調整する。これにより、使用者は、トレーニング器具100を用いてトレーニングまたはリハビリを開始する。
【0050】
具体的には、使用者は、
図3および
図4にそれぞれ示すように、操作把持体101における垂直把持部102または水平把持部103を握ってまたは掴んで腕を前後左右に動かすことで起立棒110を起立状態から傾倒させてトレーニングまたはリハビリを行うことができる。また、使用者は、起立棒110を軸線周りに回転変位させることもできる。これらの場合、使用者は、垂直把持部102または水平把持部103を把持した手Hを垂直固定具106または水平固定具104を用いて垂直把持部102または水平把持部103に固定することができる。
【0051】
また、使用者は、
図5に示すように、垂直把持部102および水平把持部103に代えて水平固定具104または垂直固定具106を把持して腕を前後左右に動かすことで起立棒110を起立状態から傾倒させてトレーニングまたはリハビリを行うことができる。この場合、使用者は、水平固定具104または垂直固定具106における固定長バンド104a,106aと可変長バンド104c,106cとをバックル104b,106bを介して互いに連結して水平固定具104または垂直固定具106の各両端部が操作把持体101にそれぞれ支持された状態の水平固定具104または垂直固定具106を把持することができる。なお、
図5においては、使用者の手Hを二点鎖線で示している。
【0052】
また、使用者は、水平固定具104または垂直固定具106における固定長バンド104a,106aと可変長バンド104c,106cとを互いに分離させて固定長バンド104a,106aおよび可変長バンド104c,106cにおける各一方の端部のみが操作把持体101に繋がって下垂する状態の水平固定具104または垂直固定具106を把持することもできる。この場合、使用者は、長さの短い固定長バンド104a,106aまたは長さの長い可変長バンド104c,106cを把持してトレーニングまたはリハビリを行うことができる。すなわち、水平固定具104および垂直固定具106は、本発明に係る紐状把持部としても機能する。
【0053】
また、使用者は、水平把持部103が不要な場合には水平把持部103を垂直把持部102から取り外して垂直把持部102のみを用いてトレーニングまたはリハビリを行うことができる。また、使用者は、垂直把持部102が不要な場合には受け体105を起立棒110から取り外すとともに垂直把持部102から水平把持部103を取り外した後、この水平把持部103を起立棒110に取り付けることで水平把持部103のみを用いてトレーニングまたはリハビリを行うことができる。これらにより、トレーニング器具100は、起立棒110に対して設定した傾倒硬さに応じた操作負荷を使用者に与えることができる。
【0054】
上記作動方法の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、トレーニング器具100は、操作把持体101が垂直把持部102および水平把持部103をそれぞれ備えているため、使用者は手Hまたは腕の障害の程度または回復の程度に応じて操作把持体101の把持の仕方を変えながらリハビリまたはトレーニングを行うことができ、リハビリまたはトレーニングの種類および使用者の範囲を広げることができる。
【0055】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記各変形例において、上記実施形態と同様の構成部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0056】
例えば、上記実施形態においては、操作把持体101は、垂直把持部102に対して水平把持部103および受け体105を着脱自在に構成した。しかし、操作把持体101は、垂直把持部102に対して水平把持部103および受け体105を一体的に構成してもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、操作把持体101は、垂直把持部102が起立棒110と同軸上に形成、すなわち、垂直方向に延びて形成されるように構成した。しかし、操作把持体101は、垂直把持部102が起立棒110に対して傾斜した状態、すなわち、垂直方向に対して傾斜(概ね45°以下)した状態で形成されていてもよい。これによれば、トレーニング器具100は、起立した状態の使用者、椅子に着座した状態の使用者またはベッド上に横になっている使用者における各姿勢においても把持性および操作性を向上させることができる。
【0058】
また、上記実施形態においては、垂直把持部102および水平把持部103の各表面を平滑な表面に形成した。しかし、垂直把持部102および水平把持部103は、各表面に梨地またはエンボスなどの微小な凹凸を有する形状に形成することができる。これによれば、操作把持体101は、垂直把持部102および水平把持部103の把持の際のグリップ力を増すことができるとともに、使用者に対して凹凸による刺激を与えてリハビリ効果を高めることができる。
【0059】
また、操作把持体101は、受け体105を省略して垂直把持部102が直接起立棒110の上端部に連結されるように構成することもできる。
【0060】
また、上記実施形態においては、受け体105は、垂直把持部102の外周面からフランジ状に張り出して形成した。この場合、受け体105は、外径が水平把持部103の外径よりも小径に形成した。しかし、受け体105は、垂直把持部102を把持する使用者の手Hが垂直把持部102から下方に外れることを防止できればよく、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。したがって、受け体105は、例えば、外径が水平把持部103の外径と同じまたは同外径よりも大径に形成してもよいし、垂直把持部102の外周面上における一部が張り出す形状に形成してもよいし、平面視で円形以外の形状に形成することもできる。
【0061】
また、上記実施形態においては、水平固定具104および垂直固定具106は、固定長バンド104a,106a、バックル104b,106bおよび可変長バンド104c,106cで構成した。しかし、水平固定具104および垂直固定具106は、使用者の手Hを水平把持部103および垂直把持部102にそれぞれ固定することができればよく、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。例えば、水平固定具104および垂直固定具106は、バックル104b,106bに相当する部品を垂直把持部102および/または水平把持部103に設けることにより、固定長バンド104a,106aを省略することもできる。
【0062】
また、水平固定具104および垂直固定具106は、使用者の手Hを水平把持部103および垂直把持部102にそれぞれ固定するとともに、水平把持部103および垂直把持部102を把持して引っ張ることでリハビリまたはトレーニングが行なえるように構成した。しかし、水平固定具104および垂直固定具106は、使用者の手Hを水平把持部103および垂直把持部102にそれぞれ固定するのみのものとして構成することもできる。
【0063】
また、操作把持体101は、水平固定具104および垂直固定具106に代えてまたは加えて、使用者が把持して引っ張ることで起立棒110を傾倒させることができる紐状の紐状把持部120を備えることもできる。この場合、紐状把持部120は、使用者の手Hを水平把持部103および垂直把持部102にそれぞれ固定する機能は有せず、起立棒110を傾倒させることができる単なる紐状に形成することができる。また、これらの場合、紐状把持部120は、
図6に示すように、環状に形成することにより使用者の手H、指、手首または腕を引っ掛け易くすることができる。なお、
図6においては、使用者が環状の紐状把持部120内に手Hを挿入して操作把持体101を引っ張る様子を二点鎖線で示している。
【0064】
また、上記実施形態においては、操作把持体101は、水平固定具104および垂直固定具106を備えて構成した。しかし、操作把持体101は、水平固定具104および垂直固定具106の一方または両方を省略して構成することもできる(
図6参照)。また、操作把持体101は、1つの垂直把持部102および/または水平把持部103に対して2つ以上の垂直固定具106および水平固定具104をそれぞれ設けることができる。この場合、例えば、垂直把持部102は、2つの垂直固定具106を垂直把持部102の径方向に対向した位置にそれぞれ設けることができる。
【符号の説明】
【0065】
H…使用者の手、
100…トレーニング器具、101…操作把持体、102…垂直把持部、103…水平把持部、104…水平固定具、104a…固定長バンド、104b…バックル、104c…可変長バンド、104d…留め具、105…受け体、106…垂直固定具、106a…固定長バンド、106b…バックル、106c…可変長バンド、106d…留め具、
110…起立棒、111…ベース体、112…起立棒支持体、112a…ボールジョイント、112b…調整子、113…ベース本体、
120…紐状把持部。