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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】電動アシスト軽車両の給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/50 20160101AFI20220822BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20220822BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20220822BHJP
   B62M 6/40 20100101ALI20220822BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20220822BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220822BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20220822BHJP
【FI】
H02J50/50
B60L5/00 B
B60M7/00 X
B62M6/40
H01F38/14
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018040613
(22)【出願日】2018-03-07
(65)【公開番号】P2019161690
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391006049
【氏名又は名称】株式会社ベルニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100076255
【弁理士】
【氏名又は名称】古澤 俊明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕良
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-093113(JP,A)
【文献】特開2016-067189(JP,A)
【文献】特開2016-178723(JP,A)
【文献】特開平10-215531(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147295(WO,A1)
【文献】特開2010-154648(JP,A)
【文献】特開2013-207908(JP,A)
【文献】特開平10-004638(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0368943(US,A1)
【文献】特開2016-178743(JP,A)
【文献】国際公開第2014/038148(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/50
B62M 6/40
B60L 50/40
B60L 5/00
B60M 7/00
H02J 50/10
H02J 7/00
H01F 38/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪14がタイヤ25と導電性リム18を具備した電動アシスト軽車両10であって、この電動アシスト軽車両10に給電するための駐輪装置16に設けた 給電装置9の給電コイル17と、前記車輪14に設けた中継コイル11とを磁気結合して電力を伝送するようにした電動アシスト軽車両の給電装置9において、
前記中継コイル11を、前記車輪14の車軸27と前記導電性リム18との間に配置し、
前記給電コイル17を巻回したフェライトコア22を、給電時に前記車輪14が隙間を持って入れるように両側にコの字形に形成し、
このフェライトコア22の両側上部にそれぞれ、 前記給電コイル17を巻回しないで露出した磁界発生のための磁極部22aを、給電時にこれらの磁極部22aの間の磁界中に前記中継コイル11が配置されるように形成し、
前記給電コイル17による給電時に、前記両側の磁極部22aの間を通過する磁界が前記中継コイル11を通過するが、前記導電性リム18をできるだけ通過しないように、 前記磁極部22aと前記導電性のリム18との間を、3mm以上離して形成したことを特徴とする電動アシスト軽車両の給電装置。
【請求項2】
前記フェライトコア22は、両側に隙間をもって車輪14が入れるようなコ字形に一体に連結してなることを特徴とする請求項1記載の電動アシスト軽車両の給電装置。
【請求項3】
前記フェライトコア22は、両側に隙間をもって車輪14が入れるような2個の別部材からなり、それぞれのフェライトコア22の上部に、磁極部22aを形成したことを特徴とする請求項1記載の電動アシスト軽車両の給電装置。
【請求項4】
前記中継コイル11は、前記車輪14と一体に回転するように、前記磁極部22aの磁界中に配置され、この中継コイル11の他端に、コンデンサ29を介在して2段目の中継コイル11xを接続し、この2段目の中継コイル11xに受電コイル12を磁気結合してなることを特徴とする請求項1記載の電動アシスト軽車両の給電装置。
【請求項5】
前記中継コイル11は、前記車両10のフレーム19と一体に固定的に、前記磁極部22aの磁界中に配置され、この中継コイル11の他端に、コンデンサを介在して出力してなることを特徴とする請求項1記載の電動アシスト軽車両の給電装置。
【請求項6】
前記中継コイル11は、前記車輪14と一体に回転するように、前記磁極部22aの磁界中に所定の間隔で複数個を相互に並列に配置され、これらの中継コイル11の他端に、コンデンサを介在して2段目の中継コイル11xを接続し、この2段目の中継コイル11xに受電コイル12を磁気結合してなることを特徴とする請求項1記載の電動アシスト軽車両の給電装置。
【請求項7】
前記フェライトコア22に前記車輪14を入れたときの両側の隙間が20mmで、 前記磁極部22aと前記導電性のリム18との間を8mm離して形成したことを特徴とする請求項1記載の電動アシスト軽車両の給電装置。
【請求項8】
前記フェライトコア22に車輪14を入れたときの両側に隙間は、10~30mmとしたことを特徴とする請求項1記載の電動アシスト軽車両の給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モーターで駆動力の一部をアシストする自転車や車椅子等の軽車両において、その軽車両の駐輪中に、搭載したバッテリーに効率よく充電することを可能にした電動アシスト軽車両の給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駐輪中に、搭載したバッテリーに充電することを可能にした電動自転車が知られている(特許文献1)。
図15に示すように、この電動自転車10には、車輪14のリム18に互いに周方向に隣接して複数個の中継コイル11を配置し、また、フレーム19には、前記中継コイル11の両側に対峙して受電コイル12が取り付けられている。この受電コイル12は、ケーブル15によりバッテリー13に接続されている。
前記電動自転車10の駐輪装置16の路面には、前記前輪14の両側に位置して給電コイル17が埋設されている。
【0003】
このような構成において、2つの給電コイル17にそれぞれ180度異なる位相で電流を流すことにより、これら2つの給電コイル17の間に図中矢印のように磁界21が生成される。この磁界21のほとんどは、路面の近傍に配置されている中継コイル11に伝達される。路面からの距離と磁束密度の関係は、路面からの距離が近いほど大きくなる、とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-93113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す電動自転車10の給電装置は、リム18が金属製など導電率の高い材料からなる場合には、給電効率が極めて低いという問題を有することが判明した。
多くの自転車の車輪には、アルミリムが用いられており、特許文献1に示すような給電装置をアルミリムの自転車に採用しようとすると、路面に近い磁界21がアルミリムを通過し、中継コイルとの結合係数が極端に低下する。
この事実を実証するため、図13に示すような給電装置を用いて非接触給電のコイル同士の結合率が低下することを以下の実験により検証した。
【0006】
図13において、コ字形のフェライトコア22に給電コイル17を巻回した給電装置を用い、この給電装置にインバータ電源23から電力を供給し、車輪部分に設置した円形の中継コイル11に送電し、この中継コイル11から車軸に設けた回転型非接触受電コイル12を介在してバッテリー13に給電するものとする。
このような構成において、リム18がアルミからなる場合、大半の磁界21がアルミリムを通過し、中継コイル11との結合係数kが0.0330と極端に低く、給電効率ηが16.8%に低下することが判明した。
【0007】
本発明は、車輪にアルミなどの導電性リムを用いた電動アシスト軽車両において、駐輪時に伝送損失が少なく、効率よく給電することを可能にした給電装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
駐輪装置16に設けた電動アシスト軽車両10の給電装置9の給電コイル17と、前記電動アシスト軽車両10の車輪14に設けた中継コイル11を磁気結合して電力を伝送するようにした電動アシスト軽車両の給電装置9において、
前記給電装置9は、前記車輪14の両側に隙間をもって対峙して配置されたフェライトコア22と、このフェライトコア22に巻回した前記給電コイル17と、前記フェライトコア22の前記給電コイル17を巻回しないで露出した磁界発生のための磁極部22aとを有し、この磁極部22aと前記車輪14の導電性のリム18との間を3mm以上離して形成したことを特徴とする。
【0009】
前記フェライトコア22は、両側に隙間をもって車輪14が入れるようにコの字形に形成し、この両側のフェライトコア22の上部に、磁極部22aを形成したことを特徴とする。
【0010】
他の例として、前記フェライトコア22は、両側に隙間をもって車輪14が入れるような2個の別部材からなり、それぞれのフェライトコア22の上部に、磁極部22aを形成したことを特徴とする。
【0011】
前記中継コイル11は、前記車輪14と一体に回転するように、前記磁極部22aの磁界中に配置され、この中継コイル11の他端に、コンデンサ29を介在して2段目の中継コイル11xを接続し、この2段目の中継コイル11xに受電コイル12を磁気結合してなることを特徴とする。
【0012】
前記中継コイル11は、前記車両10のフレーム19と一体に固定的に取り付けてもよく、前記磁極部22aの磁界中に配置され、この中継コイル11の他端に、コンデンサを介在して出力してなることを特徴とする。
【0013】
前記中継コイル11は、前記車輪14と一体に回転するように、前記磁極部22aの磁界中に所定の間隔で複数個を相互に並列に配置され、これらの中継コイル11の他端に、コンデンサを介在して2段目の中継コイル11xを接続し、この2段目の中継コイル11xに受電コイル12を磁気結合してなることを特徴とする。
【0014】
前記磁極部22aと前記車輪14の導電性のリム18との間を少なくとも8mm離して形成したことを特徴とする。
【0015】
前記フェライトコア22に車輪14を入れたときの両側に隙間は、10~30mmとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明は、
車輪14がタイヤ25と導電性リム18を具備した電動アシスト軽車両10であって、この電動アシスト軽車両10に給電するための駐輪装置16に設けた給電装置9の給電コイル17と、前記車輪14に設けた中継コイル11とを磁気結合して電力を伝送するようにした電動アシスト軽車両の給電装置9において、
前記中継コイル11を、前記車輪14の車軸27と前記導電性リム18との間に配置し、
前記給電コイル17を巻回したフェライトコア22を、給電時に前記車輪14が隙間を持って入れるように両側にコの字形に形成し、
このフェライトコア22の両側上部にそれぞれ、前記給電コイル17を巻回しないで露出した磁界発生のための磁極部22aを、給電時にこれらの磁極部22aの間の磁界中に前記中継コイル11が配置されるように形成し、
前記給電コイル17による給電時に、前記両側の磁極部22aの間を通過する磁界が前記中継コイル11を通過するが、前記導電性リム18をできるだけ通過しないように、前記磁極部22aと前記導電性のリム18との間を、3mm以上離して形成したので、車輪14に導電性のリム18を有するものであっても、電力伝送の損失が少なく、かつ、結合効率の高い給電装置を提供することができる。
【0017】
請求項2記載の発明は、
前記フェライトコア22は、両側に隙間をもって車輪14が入れるようなコ字形に一体に連結してなるので、給電装置を簡単な構成とすることができる。
【0018】
請求項3記載の発明は、
前記フェライトコア22は、両側に隙間をもって車輪14が入れるような2個の別部材からなり、それぞれのフェライトコア22の上部に、磁極部22aを形成したので、車輪14が入れる隙間Bを車輪の幅に応じて構成でき、しかも伝送の損失が少なく、かつ、効率の良い構成とすることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、
前記中継コイル11は、前記車輪14と一体に回転するように、前記磁極部22aの磁界中に配置され、この中継コイル11の他端に、コンデンサ29を介在して2段目の中継コイル11xを接続し、この2段目の中継コイル11xに受電コイル12を磁気結合したので、磁界による伝送距離を広く設定することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、
前記中継コイル11は、前記車両10のフレーム19と一体に固定的に、前記磁極部22aの磁界中に配置され、この中継コイル11の他端に、コンデンサを介在して出力したので、駐輪時に中継コイル11が1個でも給電装置との位置合わせが必要なくなる。
【0021】
請求項6の記載によれば、
前記中継コイル11は、前記車輪14と一体に回転するように、前記磁極部22aの磁界中に所定の間隔で複数個を相互に並列に配置され、これらの中継コイル11の他端に、コンデンサを介在して2段目の中継コイル11xを接続し、この2段目の中継コイル11xに受電コイル12を磁気結合したので、駐輪時に複数個のうちのいずれかの中継コイル11が給電装置と磁気結合し、位置合わせが必要なくなる。また、車輪14の回転バランスに偏りがなくなる。
【0022】
請求項7の記載によれば、
前記フェライトコア22に前記車輪14を入れたときの両側の隙間が20mmで、前記磁極部22aと前記導電性のリム18との間を8mm離して形成したので、導電性のリム18による悪影響を排除し、伝送の損失が少なく、かつ、磁気結合効率の良い構成とすることができる。
【0023】
請求項8の記載によれば、
前記フェライトコア22に車輪14を入れたときの両側に隙間は、10~30mmとしたので、車輪14の幅の異なる多くの車両に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による電動アシスト軽車両10の給電装置9の実施例1を示す正面図である。
図2図1における本発明による電動アシスト軽車両10の給電装置9の拡大断面図である。
図3図1における本発明による電動アシスト軽車両10の給電装置9の等価回路図である。
図4】本発明による電動アシスト軽車両10の給電装置9の実施例2を示す断面図である。
図5】本発明による電動アシスト軽車両10の給電装置9の実施例3を示す正面図である。
図6図5における本発明による電動アシスト軽車両10の給電装置9の拡大断面図である。
図7図5における本発明による電動アシスト軽車両10の給電装置9の等価回路図である。
図8】本発明による電動アシスト軽車両10の給電装置9の実施例4を示す正面図である。
図9】本発明による電動アシスト軽車両10の給電装置9の実施例5を示す断面図である。
図10図9における本発明による電動アシスト軽車両10の給電装置9の等価回路図である。
図11】(a)(b)(c)は、それぞれ異なる隙間B毎のトランス損失比較図である。
図12】(a)(b)(c)は、それぞれ異なる隙間B毎のトランス効率比較図である。
図13】アルミリムの場合の結合効率の実験のための断面図である。
図14】アルミとフェライトコアとの磁界の通過を測定するための給電側と受電側のトランスの断面図である。
図15】従来の給電装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、
駐輪装置16に設けた電動アシスト軽車両10の給電装置9の給電コイル17と、前記電動アシスト軽車両10の車輪14に設けた中継コイル11を磁気結合して電力を伝送するようにした電動アシスト軽車両の給電装置9において、
前記給電装置9は、前記車輪14の両側に隙間をもって対峙して配置されたフェライトコア22と、このフェライトコア22に巻回した前記給電コイル17と、前記フェライトコア22の前記給電コイル17を巻回しないで露出した磁界発生のための磁極部22aとを有し、この磁極部22aと前記車輪14の導電性のリム18との間を3mm以上、好ましくは、8mm以上離して形成する。
【0026】
前記フェライトコア22は、両側に隙間をもって車輪14が入れるようにコの字形に形成し、この両側のフェライトコア22の上部に、磁極部22aを形成してもよく、また、前記フェライトコア22は、両側に隙間をもって車輪14が入れるような2個の別部材からなり、それぞれのフェライトコア22の上部に、磁極部22aを形成してもよい。
【0027】
前記中継コイル11は、前記車輪14と一体に回転するように、前記磁極部22aの磁界中に配置され、この中継コイル11の他端に、コンデンサ29を介在して2段目の中継コイル11xを接続し、この2段目の中継コイル11xに受電コイル12を磁気結合して構成する。
また、前記中継コイル11は、前記車両10のフレーム19と一体に固定的に、前記磁極部22aの磁界中に配置され、この中継コイル11の他端に、コンデンサを介在して出力してなるものとすることができる。
【0028】
前記中継コイル11は、前記車輪14と一体に回転するように、前記磁極部22aの磁界中に所定の間隔で複数個を相互に並列に配置され、これらの中継コイル11の他端に、コンデンサを介在して2段目の中継コイル11xを接続し、この2段目の中継コイル11xに受電コイル12を磁気結合する。
前記フェライトコア22に車輪14を入れたときの両側に隙間は、10~30mmとすることが好ましい。
【実施例1】
【0029】
本発明の実施例1を図面に基づき説明する。電動アシスト軽車両が電動自転車である場合を例にするが、車椅子その他の電動アシスト軽車両を含むものとする。
図1から図3において、駐輪装置16の車止め20に電動自転車10の車輪14を駐輪したとき、車輪14が入り込む位置に、本発明の電動アシスト軽車両10の給電装置9が設置される。
この電動アシスト軽車両10の給電装置9は、タイヤ25とリム18からなる車輪14が余裕をもって入り込めるように、両側に隙間Bを持ったコ字形のフェライトコア22と、このフェライトコア22の両側に分割して巻かれた給電コイル17とからなり、このフェライトコア22の両側上部には、それぞれ給電コイル17を巻回していない磁界発生のための磁極部22aを形成し、これらの磁極部22aの間の磁界中に中継コイル11を配置する。この中継コイル11は、前記リム18と車軸27との間のホーク24の両側に取り付けられる。
前記給電コイル17には、コンデンサ28を介してインバータ電源23が接続される。
なお、前記フェライトコア22は、コ字形に一体に連結しているものに限られず、両側のフェライトコア22、22が互いに独立して対峙しているものであってもよい。
また、中継コイル11は、前記リム18と車軸27との間のホーク24の片側だけに取り付けたものであってもよい。
【0030】
以上のような構成による電力伝送の作用を説明する。
駐輪装置16における給電装置9に、電動自転車10の車輪14を入れて、給電装置9にスイッチを入れると、インバータ電源23からの高周波信号が給電コイル17に加えられ、LC発振回路で発振してフェライトコア22における磁極部22a間に磁界21が交互に発生する。この磁界21が中継コイル11を通過してこの中継コイル11にて給電装置9からの電力を取得し、さらに2段目の中継コイル11xと受電コイル12の磁気結合により受電コイル12に電力が伝送され、整流平滑回路31で整流平滑化してバッテリー13に充電する。
ここで、磁気結合時の損失を抑制し、効率的に電力を伝送するための機構を説明する。
【0031】
前記フェライトコア22の両側上部の磁極部22aは、この磁極部22aの下端部からリム18までに距離Aをおき、リム18に磁界ができるだけ通過しないようにすることが望ましい。また、前記フェライトコア22の幅は、駐輪した車輪14との間に隙間Bを持つように設定する。この隙間Bは、種々の幅の車輪が入り込めるものであることか必要である。これらの距離Aと隙間Bは、後述する方法で設定する。
前記中継コイル11は、車軸27に取り付けられた2段目の中継コイル11xにコンデンサ29を介して接続され、この2段目の中継コイル11xは、車両10のフレーム19に取り付けられた受電コイル12と磁気結合している。
【0032】
前記給電装置9は、図3に示すような等価回路で表される。この図3において、商用電源が力率改善回路30を介してインバータ電源23に供給され、このフェライトコア22で高周波数に変換され、コンデンサ28と給電コイル17で構成されたLC発振回路で発振する。前記フェライトコア22の発振周波数は、高い周波数にすることで給電装置9を小型化して伝送距離を増やすことが可能になるが、発振回路の構成が難しくなり、また、低い発信周波数のままで伝送距離を延ばすと、給電装置9全体が大型になる。そのため、50kHz~200kHz程度、具体的には、85kHzに設定している。
前記給電コイル17に磁気結合された中継コイル11と2段目の中継コイル11xとコンデンサ29からなる2段方式のLC回路は、さらに、受電コイル12とコンデンサ32からなるLC回路に磁気結合される。
【0033】
前記磁極部22aの下端部からリム18までの距離Aは、磁気結合係数kと給電効率ηを考慮すると、8mm程度とすることが好ましく、また、前記フェライトコア22と駐輪した車輪14との隙間Bは、車輪14の太さや駐輪時の電動自転車10の出し入れの容易さなどによって異なるが、10~30mmとすることが好ましい。
【0034】
前記距離Aと隙間Bを設定するための実験の結果を説明する。
図14において、給電装置9に対応する給電側トランス33と、リム18と中継コイル11を有する受電側に対応する受電側トランス34を構成する。前記給電側トランス33は、フェライトコア22にボビン35をもって給電コイル17を巻回し、前記フェライトコア22の一端面が露出するように絶縁層36を介してアルミケース37で保護する。同様に、前記受電側トランス34は、フェライトコア38にボビン35をもって中継コイル11を巻回し、前記フェライトコア38の一端面が露出するように絶縁層40を介して前記リム18に見立てたアルミケース41で保護する。この受電側トランス34の絶縁層40の厚さが前記距離Aに対応する。
【0035】
このような構成による実験結果は、図11及び図12に示すとおりである。
図11(a)において、給電側トランス33と受電側トランス34の隙間B=10mmの時は、隙間が小さいので、距離Aが8mm、4mm、2mmの違いがあってもそれほど損失に大きな差がない。隙間B=15mmの図11(b)では、距離Aが8mmと4mmの損失の違いはあまりないが、2mmになると損失に大きな差があらわれる。隙間B=20mmになると、図11(c)のように、距離Aが8mmでの損失は少ないが、4mm、2mmになると大きな損失があらわれることを表している。
【0036】
図12(a)において、給電側トランス33と受電側トランス34の隙間B=10mmの時は、隙間が小さいので、距離Aが8mm、4mm、2mmの違いほど効率に大きな差がない。隙間B=15mmの図12(b)では、距離Aが8mmと4mmの効率の違いはあまりないが、2mmになると効率が小さくなる。隙間B=20mmになると、図12(c)のように、距離Aが2mmでの効率は小さいが、4mm、8mmになると次第に効率が大きくなる。
以上の図11及び図12から、出力電力が30Wでは、隙間B=20mmとすると、距離Aが8mmのときに損失が小さく、かつ、効率が良いことがわかる。
したがって、隙間B=20mmに設定したとき、距離Aを少なくとも8mmに設定すると、損失が小さく、かつ、効率が良いことがわかる。
【0037】
図2に示す実施例では、フェライトコア22の両側に給電コイル17を分割して巻回した例を示したが、図4に示すように、フェライトコア22の両側と底部にも給電コイル17を巻回するようにしてもよい。
図1に示す実施例では、車輪14に、扇形の中継コイル11を1つだけ設けた例を示したので、給電装置9と中継コイル11を磁気結合する位置に電動自転車10を駐輪する必要がある。そのため、図5及び図6に示すように、車輪14の全周囲に中心角120度の間隔で3個の中継コイル11(11a、11b、11c)を設けるようにすると、駐輪時の給電装置9と中継コイル11の位置合わせが必要なくなる。この時の等価回路は、図7のように示される。
【0038】
図1の例では、中心角72度程度の扇形の1個の中継コイル11を設け、図5では、中心角120度の3個の中継コイル11(11a、11b、11c)を設けたが、この例に限られるものではなく、車輪14の全周囲であれば、2個でも、4個以上でもよく、また、図8に示すように全周囲に360度の1個の中継コイル11を設けるようにしてもよい。
【0039】
以上の実施例では、中継コイル11は、車輪14と一体に回転するようにホーク24に取り付けた例を示したが、図9に示すように、車輪14の片側又は両側に位置し、前記車輪14とともに回転しないように車両10のフレーム19に一体に取り付け材42を取り付け、この取り付け材42に中継コイル11を取り付けるようにしてもよい。このようにフレーム19と一体の取り付け材42に中継コイル11を取り付けた場合には、中継コイル11の取り付け位置は、電動アシスト軽車両10の給電装置9と磁気結合する1個所だけに取り付けても電動自転車10の駐輪時に確実に磁気結合することができる。また、中継コイル11は、2段の磁気結合ではなく、図10に示すような等価回路になるような回路の接続をすればよい。
【符号の説明】
【0040】
10…電動自転車、11…中継コイル、12…受電コイル、13…バッテリー、14…車輪、15…ケーブル、16…駐輪装置、17…給電コイル、18…リム、19…フレーム、20…車止め、21…磁界、22…フェライトコア、23…インバータ電源、24…ホーク、25…タイヤ、26…台座、27…車軸、28…コンデンサ、29…コンデンサ、30…力率改善回路、31…整流平滑回路、32…コンデンサ、33…給電側トランス、34…受電側トランス、35…ボビン、36…絶縁層、37…アルミケース、38…フェライトコア、39…ボビン、40…絶縁層、41…アルミケース、42…取り付け材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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