(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23D 14/62 20060101AFI20220822BHJP
F23N 1/02 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
F23D14/62
F23N1/02 104Z
(21)【出願番号】P 2018099929
(22)【出願日】2018-05-24
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】金澤 広輝
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-111035(JP,A)
【文献】特開平01-111114(JP,A)
【文献】実開昭59-071039(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 1/00- 5/26
F23K 5/00- 5/22
F23D 14/00-14/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナと、
前記バーナへ燃料ガスを供給するガス供給路と、
前記バーナへ燃焼用空気を供給するファンと、
前記ファンの下流側で前記ガス供給路と接続され、燃焼用空気に燃料ガスを混合して混合気を生成する混合部と、
前記ガス供給路に設けられ、所定の一次圧で供給された燃料ガスを所定の信号圧に応じた二次圧に調整して前記混合部に供給するゼロガバナと、を含んでなる燃焼装置であって、
前記混合部
が、前記ファンの回転によって空気が流
れる絞り部を有し、前記絞り部を空気が流れる際に生じる減圧によって前記ゼロガバナから供給される燃料ガスを吸い込む
筒状のベンチュリー
であり、
前記ベンチュリーは、前記バーナを備えた箱体内に設けられて保持孔を貫通形成したベンチュリー保持部の前記保持孔内に保持されて、前記保持孔内で前記ベンチュリーの周囲に、前記箱体内とシールされた筒状空間が形成されると共に、前記ベンチュリーには、前記絞り部の下流側で前記ベンチュリー内を前記筒状空間と連通させるスリットが形成されて、前記筒状空間に前記ガス供給路が接続される一方、
前記箱体内で前記ベンチュリーの下流側には、前記バーナと連通する混合室が仕切形成されて、
前記ゼロガバナへの信号圧
が、前記混合室から取り出されていることを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
前記保持孔及び
前記ベンチュリーが
それぞれ複数設けられると共に、前記ガス供給路が前記ゼロガバナの下流で複数に分岐形成されてそれぞれ前記
筒状空間に接続され、少なくとも1つの前記ガス供給路に、当該ガス供給路を開閉する開閉手段が設けられて、燃料ガスが供給される前記ガス供給路の数及び混合気が生成される前記ベンチュリーを切り替え可能としたことを特徴とする請求項1に記載の燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼用空気と燃料ガスとの混合気を燃焼させるバーナを備えて給湯装置等で使用される燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置等に使用される燃焼装置では、燃料ガスと、ファンによって供給される燃焼に必要な全ての空気とを混合させた混合気を燃焼させる予混合式(全一次空気式)のバーナを用いたものが知られている。このような全一次空気式のバーナを使用する場合、ファンから供給される燃焼用空気と燃料ガスとの混合形態として、ファンの下流側(空気の出口側)で燃焼用空気と燃料ガスとを混合する方式(以下、「正圧式」という。)と、ファンの上流側(空気の入口側)で燃焼用空気と燃料ガスとを混合する方式(以下、「負圧式」という。)とが知られている。
正圧式の燃焼装置の例として、特許文献1には、ファンの下流側の空気流路形成部に、燃料ガスが供給される燃料供給路形成部材を接続して、ファンの下流側で燃焼用空気と燃料ガスとを混合する構造が開示されている。特にここでは、燃料供給路の上流側に調圧装置(ゼロガバナ)を設けて、ゼロガバナの信号圧室に設けた信号圧導入口をファンの吐出側と接続して、ゼロガバナのガス吐出口から排出される燃料ガスの圧力を、信号圧導入口の圧力に依存して変化させるようにしている。すなわち、ゼロガバナの信号圧をファンの吐出側から検知して、当該信号圧に相関する二次圧で燃料ガスを放出するようにして、バーナへの空気量とガス量との比率を略一定としたものである。
【0003】
一方、負圧式の燃焼装置の例として、特許文献2には、ファンを有する通風路の上流側に、通風路に対して燃料ガスを供給する燃料供給路を接続して、ファンの上流側において燃料ガスと燃焼用空気とを混合する構造が開示されている。特にここでは、通風路への燃焼用空気の吸引部に可動ダンパーを、燃料供給路に燃料調整弁を設けて、要求されるインプットの大小に応じて可動ダンパー及び燃料調整弁を調整すると共に、ファンの回転数を制御することでバーナの燃焼状態を安定させるようにしている。また、燃料供給路にはゼロガバナを設けて、ゼロガバナへの燃料ガスの圧力や大気圧が変動した場合でも、二次圧が大気圧となるよう調整可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-127577号公報
【文献】特開2001-173949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の負圧式の燃焼装置では、燃料供給路に設けたゼロガバナへの燃料ガスの一次圧が低下しても、二次圧に影響が表れないため、安定した燃焼が得られる。しかし、ガス量の変化幅はファンの回転数の変化幅と等しくなるため、ファンの回転数が1000~6000rpm程度であることを踏まえると、ターンダウン比は最大でも1:6程度となってしまう。
この点特許文献1の正圧式の燃焼装置では、ファンによる送風量の増減に追従して燃料ガスの供給圧力が変化するのに加えて、燃料供給路を分岐させて各供給路に設けた開閉弁により燃焼するバーナの本数を変更可能としているため、ターンダウン比を大きくすることができる。しかし、ゼロガバナへの信号圧をファンの下流側から得ているため、燃料ガスの二次圧を信号圧以上としないと、ガス量が低下して燃料供給路から燃料ガスが供給されなくなってしまう。このため、燃料ガスの一次圧が低下すると、安定した燃焼が得られなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、ファンの下流で混合気を生成する正圧式において、燃料ガスの一次圧が低下しても安定した燃焼を維持することができる燃焼装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、バーナと、バーナへ燃料ガスを供給するガス供給路と、バーナへ燃焼用空気を供給するファンと、ファンの下流側でガス供給路と接続され、燃焼用空気に燃料ガスを混合して混合気を生成する混合部と、ガス供給路に設けられ、所定の一次圧で供給された燃料ガスを所定の信号圧に応じた二次圧に調整して混合部に供給するゼロガバナと、を含んでなる燃焼装置であって、
混合部が、ファンの回転によって空気が流れる絞り部を有し、絞り部を空気が流れる際に生じる減圧によってゼロガバナから供給される燃料ガスを吸い込む筒状のベンチュリーであり、
ベンチュリーは、バーナを備えた箱体内に設けられて保持孔を貫通形成したベンチュリー保持部の保持孔内に保持されて、保持孔内でベンチュリーの周囲に、箱体内とシールされた筒状空間が形成されると共に、ベンチュリーには、絞り部の下流側でベンチュリー内を筒状空間と連通させるスリットが形成されて、筒状空間にガス供給路が接続される一方、
箱体内でベンチュリーの下流側には、バーナと連通する混合室が仕切形成されて、
ゼロガバナへの信号圧が、混合室から取り出されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、保持孔及びベンチュリーがそれぞれ複数設けられると共に、ガス供給路がゼロガバナの下流で複数に分岐形成されてそれぞれ筒状空間に接続され、少なくとも1つのガス供給路に、当該ガス供給路を開閉する開閉手段が設けられて、燃料ガスが供給されるガス供給路の数及び混合気が生成されるベンチュリーを切り替え可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、混合部を、ファンの回転によって空気が流れ、その際に生じる減圧によってゼロガバナから供給される燃料ガスを吸い込むベンチュリーとする一方、ゼロガバナへの信号圧を、ベンチュリーを保持する箱体内でベンチュリーよりも下流側に仕切形成された混合室から取り出したことで、ファンの下流で混合気を生成する正圧式において、燃料ガスの一次圧が低下しても安定した燃焼を維持することができる。よって、使い勝手の向上が期待できる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、ベンチュリー保持部の保持孔及びベンチュリーを複数設けると共に、ガス供給路をゼロガバナの下流で複数に分岐形成してそれぞれベンチュリーの周囲に形成された筒状空間に接続し、少なくとも1つのガス供給路に、当該ガス供給路を開閉する開閉手段を設けて、燃料ガスが供給されるガス供給路の数及び混合気が生成されるベンチュリーを切り替え可能としているので、バーナの切り替えが可能となり、ターンダウン比を大きく取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】バーナユニット及びファンユニットの上方からの斜視図である。
【
図5】バーナユニット及びファンユニットの下方からの斜視図である。
【
図6】バーナユニット及びファンユニットの上方からの分解斜視図である。
【
図7】バーナユニット及びファンユニットの下方からの分解斜視図である。
【
図10】ベンチュリーの説明図で、(A)は斜視、(B)は平面、(C)はC-C線断面をそれぞれ示す。
【
図13】給排気系統での圧力の変化を示すグラフである。線断面をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、燃焼装置の一例である給湯装置の斜視図、
図2は正面図、
図3は
図2のA-A線断面図である。
この給湯装置1は、上からバーナユニット3、一次熱交換器4、二次熱交換器5の順に設けられる本体2と、本体2の後方で上向きに設けられる排気部6と、本体2の右側方でバーナユニット3に連結されるファンユニット7と、ファンユニット7の下側でバーナユニット3に連結される調圧ユニット8とを備えている。
【0011】
(バーナユニットの説明)
図4は、バーナユニット3及びファンユニット7の上方からの斜視図、
図5は下方からの斜視図、
図6は上方からの分解斜視図、
図7は下方からの分解斜視図である。
バーナユニット3は、前面及び後面、下面を開口して上下方向に所定深さを有する平面視横長矩形状の上箱10と、上箱10の下面に取り付けられる下板11と、上箱10の前面に取り付けられて上箱10内に燃料ガスを供給するノズル部12とを備えている。上箱10の上面には、上方へ突出して右斜め前に開口する深底部13が形成され、深底部13の開口にファンユニット7が接続されている。
【0012】
上箱10内には、保持ブロック14が設けられている。この保持ブロック14は、
図8にも示すように、上箱10の後面を閉塞する背板部15と、深底部13との間を前側を除いて部分的に閉塞する天板部16とを有し、天板部16の下面側には、
図9にも示すように、横断面が略正方形状で前後方向に貫通する保持孔18,18・・を左右方向に4つ並設したベンチュリー保持部17が、上箱10内で前後に空間を空けた状態で突設されている。ベンチュリー保持部17の後面と背板部15との間には、各保持孔18,18間を仕切る位置で3つの仕切板19,19・・が形成されて、ベンチュリー保持部17の後方空間を4つに分割している。各仕切板19は、ベンチュリー保持部17の下面においても前端まで延設されており、このうち左側2つの仕切板19,19の下端には、下板11の後述する炎孔板46まで延びる2つの区画板20,20が設けられている。
【0013】
この区画板20,20により、上箱10内は、最も広い右半分側の第1混合室21と、左半分側で第1混合室21に隣接する第2混合室22と、左端の第3混合室23とに区画されている。上箱10の右側面には、第1混合室21と連通する信号圧取り出し口24が設けられている。
また、保持ブロック14には、上箱10の下端から左右及び前後に突出して上箱10の下端を周回する外形矩形状のフランジ25が周設されている。各区画板20の下端は、フランジ25よりも下方へ突出する側面視円弧状に形成されて、左右側方へ折り曲げられる帯状部26が形成されている。
【0014】
ベンチュリー保持部17の各保持孔18には、ベンチュリー30がそれぞれ設けられている。このベンチュリー30は、
図10にも示すように、前後方向に延びる筒状体で、前端外周には、正面視正方形状の取付板31が一体に設けられている。
ベンチュリー30の内面には、前端から、前後方向に等径となる入口部32と、入口部32の後端から後方へ行くに従って徐々に中心側へ曲面状に縮径する絞り部33と、絞り部33の後端から後方へ行くに従って僅かに拡径する前段拡径部34と、前段拡径部34の後端から後方へ行くに従って前段拡径部34よりも大きい角度で拡径する後段拡径部35と、後段拡径部35の後端から前後方向に等径となる出口部36とを備えている。すなわち、入口部32から吸い込まれる空気が絞り部33で絞られて通路面積の小さい前段拡径部34を通過するノズル形状となっている。また、絞り部33と前段拡径部34との間には、周方向に4つのスリット37,37・・が等間隔で形成されて、ベンチュリー30の内部を保持孔18内と連通させている。
【0015】
ここではベンチュリー30が前方から保持孔18に挿通して、ベンチュリー保持部17の前面に取付板31が、シール板38を介してネジ止めされることで、ベンチュリー30は、後端がベンチュリー保持部17から後方へ突出して保持孔18の後端との間がOリング39によってシールされる。これにより各保持孔18内でベンチュリー30の周囲には、ベンチュリー保持部17の前後空間とシールされた筒状空間40が形成される。この筒状空間40はスリット37を介してベンチュリー30内と連通している。また、取付板31におけるベンチュリー30の下側には、筒状空間40と連通する透孔41が形成されている。
【0016】
下板11は、上箱10のフランジ25と同じ矩形状の外形を有して下方からフランジ25にネジ止めされる。下板11において、上箱10の下面の開口に当たる中央部分には、前後方向の中央が最も深くなる円弧状の膨出部45が形成されている。この膨出部45の中央部分に設けた平面視矩形状の開口には、複数のスリット状の炎孔47,47・・が形成された炎孔板46が設けられて、炎孔板46の表面(下面)で燃料ガスと燃焼に必要な全ての燃焼用空気との混合気が燃焼する全一次空気式のバーナ48が形成されている。但し、炎孔板46において、ベンチュリー保持部17に設けた区画板20,20の下端の帯状部26,26が当接する部位には、炎孔47が形成されない2つの無炎孔部49,49(
図6)が前後方向へ帯状に形成されて、炎孔板46の下面には、炎孔47のない炎孔板46の外周部及び無炎孔部49,49を覆う枠体50が設けられている。よって、炎孔板46の表面には、第1混合室21に連通する第1燃焼面51と、第2混合室22に連通する第2燃焼面52と、第3混合室23に連通する第3燃焼面53とがそれぞれ独立して形成されることになる。
【0017】
ノズル部12は、
図11,12に示すように、調圧ユニット8に設けたガス管110が接続される分配板55と、分配板55の後面にネジ止めされて上箱10の前面を閉塞する前板56と、前板56の後面に組み付けられるノズル板57と、分配板55と前板56との間に介在される前シール板58と、前板56とノズル板57との間に介在される後シール板59とを含んでなる。
分配板55は、右側上部に円形のガス入口60を有する正面視横長矩形状で、外周には、後方へ向けた周壁部61が一体形成され、ガス入口60には、ガス管110が接続される管継手62が前方からネジ止めされている。また、分配板55の背面には、ガス入口60を左右に仕切って周壁部61の下側部分に繋がる上下方向の第1リブ63が形成されている。
さらに、分配板55の背面には、ガス入口60の左半分を途中まで上下に仕切るように左方向へ延びた後、下方へ折曲して周壁部61の下側部分に繋がる倒L字状の第2リブ64が、第1リブ63の左側面から連続して形成されている。
【0018】
この第1、第2リブ63,64により、分配板55の背面には、第1リブ63の右側でガス入口60の右半分と連通する第1分配室65と、第2リブ64の下側でガス入口60の左半分下側と連通する第2分配室66と、第2リブ64の上側でガス入口60の右半分上側と連通する第3分配室67がそれぞれ区画形成される。
ガス入口60内には、
図6,7に示すように、第1、第2リブ63,64で3つに分割される開口部分にそれぞれ対応する3つの透孔69A,69B,69Bを形成した円形プレート68,68が、各透孔69A,69Bの位相を合わせて2枚重ねた状態で前方からネジ止めされている。この透孔69A,69Bは、第1分配室65に対応する透孔69Aが最も大径で、第2、第3分配室66,67に対応する透孔69Bが透孔69Aよりも小径となっている。この2枚の円形プレート68,68により、ガス入口60内には、第1~第3分配室65~67にそれぞれ対応してガス量を調整する3つのオリフィス70A,70B,70Bが形成される。よって、透孔69A,69Bの径が異なる円形プレート68の選択により、ガス量の選択が可能となっている。
【0019】
また、分配板55の前面で管継手62の下方には、第1、第2分配室65,66にそれぞれ対応する2つの第1、第2電磁弁71,72が設けられている。この第1、第2電磁弁71,72は、図示しない弁軸を分配板55に貫通させて、第1、第2分配室65,66内の下端に位置する弁体73をそれぞれ備えている。
この分配板55と前板56との間の前シール板58は、分配板55と略同じ外形を有し、分配板55が前板56にネジ止めされた状態で、分配板55と前板56との間を閉塞するが、第1~第3分配室65~67に対応する下端には、開口74がそれぞれ形成されている。
【0020】
前板56には、各開口74越しに第1~第3分配室65~67と対応する3つの円形状の通過孔75A,75B,75Cがそれぞれ形成されている。ここでは第1分配室65と対応する通過孔75Aが最も大径で、第2、第3分配室66,67と対応する通過孔75B,75Cが通過孔75Aよりも小径となっている。このうち通過孔75A,75Bに対しては、第1、第2電磁弁71,72の弁体73がそれぞれ着座して閉塞しており、各電磁弁71,72の通電によって弁軸と共に弁体73が通過孔75A,75Bから離間するようになっている。
また、前板56の後面で通過孔75A~75Cのやや下側には、後方へ突出する3つの突起76,76・・が左右方向へ所定間隔をおいて突設されている。
【0021】
後シール板59は、通過孔75A~75Cと重なる領域で左右に延びる帯状で、通過孔75A~75Cと対応する位置には、通過孔75A~75Cよりも大径の円形孔77,77・・がそれぞれ形成されて、そのやや下側には、各突起76に対応した3つの小孔78,78・・がそれぞれ形成されている。よって、小孔78に突起76をそれぞれ貫通させると、各円形孔77が通過孔75A~75Cに同軸で位置する状態で後シール板59は前板56に支持される。
【0022】
ノズル板57は、後シール板59よりも一回り大きく、左右に長い帯状を有する基部80と、基部80の下端から後方へ突出する突出部81とを有して前面を開口した側面視L字状の中空体で、基部80の開口を後シール板59に当接させた状態で前板56に固定されることで、後シール板59の円形孔77越しに通過孔75A~75Cと連通している。但し、ノズル板57の内部には、通過孔75A~75Cの間に位置する2つの仕切リブ82,82が設けられて、ノズル板57の内部に、通過孔75Aと連通する右端の導入部83Aと、通過孔75Bと連通する中央の導入部83Bと、通過孔75Cと連通する左端の導入部83Cとをそれぞれ区画形成している。突出部81には、導入部83Aと連通する左右一対のノズル孔84A,84Aと、導入部83Bと連通する1つのノズル孔84Bと、導入部83Cと連通する1つのノズル孔84Cとがそれぞれ形成されている。
このノズル板57は、前板56を上箱10の前面に組み付けることで、
図8に示すように、上箱10内でベンチュリー保持部17の前側空間に突出し、ノズル孔84A~84Cが、ぞれぞれベンチュリー30の取付板31に設けた透孔41に同軸で対向して連通することになる。ノズル孔84A~84Cの周囲で各取付板31との間は、シールリング88によってシールされている。
【0023】
よって、ノズル部12には、管継手62から供給される燃料ガスが、オリフィス70A,70B,70Bによって3つに分岐して、分配板55の第1分配室65から前シール板58の開口74を介して前板56の通過孔75Aを通過した後、後シール板59の円形孔77を介してノズル板57内の導入部83Aに進入し、ノズル孔84A,84Aから透孔41,41を通って右側2つのベンチュリー30,30の外周の筒状空間40,40に至る第1ガス供給路85と、分配板55の第2分配室66から開口74を介して前板56の通過孔75Bを通過した後、円形孔77を介してノズル板57内の導入部83Bに進入し、ノズル孔84Bから透孔41を通って右から3番目のベンチュリー30の外周の筒状空間40に至る第2ガス供給路86と、分配板55の第3分配室67から開口74を介して前板56の通過孔75Cを通過した後、円形孔77を介してノズル板57内の導入部83Cに進入し、ノズル孔84Cから透孔41を通って左端のベンチュリー30の外周の筒状空間40に至る第3ガス供給路87とが形成される。
但し、第1、第2電磁弁71,72の作動によって通過孔75A,75Bを選択的に開閉することで、第1~第3ガス供給路85~87の全ての使用状態と、第1、第3ガス供給路85,87の使用状態と、第2、第3ガス供給路86,87の使用状態と、第3ガス供給路87のみの使用状態とが選択可能となっている。
【0024】
(一次熱交換器及び二次熱交換器の説明)
一次熱交換器4は、
図3に示すように、バーナユニット3が取り付けられる中ケーシング90内の下部に、複数のフィン91,91・・を左右方向へ所定間隔をおいて並設すると共に、各フィン91を蛇行状に貫通する伝熱管92を配設し、中ケーシング90の右側面に伝熱管92の端部をそれぞれ突出させて、奥側下部に入側接続口93を、手前側上部に出側接続口94を設けている。出側接続口94には図示しない出湯管が接続される。
二次熱交換器5は、中ケーシング90と連通する下ケーシング95内に、凹凸を形成した複数の伝熱プレート96,96・・を前後方向へ所定間隔をおいて並設して、伝熱プレート96,96・・間で連続する内部流路を形成し、下ケーシング95の正面側下部に設けた入口97と正面側上部に設けた出口98とを内部流路と接続してなる。入口97に図示しない給水管が接続され、出口98が図示しない配管を介して一次熱交換器4の入側接続口93と接続される。下ケーシング95の下部には、ドレンを受ける下カバー99が設けられて、ドレン排出口100を前面下部に突出させている。
【0025】
(排気部及びファンユニットの説明)
排気部6は、下部前面を下ケーシング95の下部後面と連通させた四角筒状で、バーナユニット3を超えて上方に延びる上端には、排気筒101が設けられて、図示しない排気管が接続される。
ファンユニット7は、
図9に示すように、平面視が円形状のファンケース102の上面中央にファンモータ103を下向きに取り付け、ファンケース102内に突出する回転軸104に遠心ファン105を固着してなる。ファンケース102の下面中央には吸込口106が、側面には吹出口107がそれぞれ形成されて、ファンケース102の左側面がバーナユニット3の上箱10の深底部13に連結されて、吹出口107を深底部13の内部と連通させている。吸込口106には、図示しない給気管が接続される。
【0026】
(調圧ユニットの説明)
調圧ユニット8は、
図1,2に示すように、ノズル部12の管継手62に接続されるガス管110と、ガス管110の上流端に設けられるゼロガバナ111とを備えている。ゼロガバナ111は、図示しないダイヤフラムによって動作するバルブを備えて二次側の圧力を一定に保つ周知の構成で、入口には、図示しないコントローラによって制御される電磁弁によりガス流路が開閉されるガス導入管が接続されて、一次圧P1の燃料ガスが供給可能となっている。
また、ゼロガバナ111には、信号圧導入口112が設けられており、この信号圧導入口112は、図示しない配管を介してバーナユニット3の信号圧取り出し口24と接続されている。
よって、このゼロガバナ111では、ガス導入管から供給される燃料ガスの一次圧P1が上昇側に変動した際には、ゼロガバナ111からの二次圧P2も上昇側に変動するが、二次圧P2の圧力変動に伴ってバルブが移動し、二次圧P2が信号圧導入口112から得られる信号圧となるように調圧される。一方、信号圧が上昇側に変動した際には、その圧力変動に伴ってバルブが移動し、二次圧P2が上昇側に変動して信号圧となるように調圧される。すなわち、一次圧P1や信号圧の変動にかかわらず、二次圧P2が信号圧となるように調圧されることになる。
【0027】
(給湯装置の動作説明)
以上の如く構成された給湯装置1は、器具内に通水されると、リモコン等で要求される燃焼量に応じた回転数でコントローラがファンモータ103を駆動させて遠心ファン105を回転させる。
すると、ファンユニット7では、遠心ファン105の回転数に比例した空気が給気管を介して吸込口106から吸い込まれ、
図8,9に点線矢印Aで示すように、吹出口107からバーナユニット3の深底部13内に吹き出され、ベンチュリー保持部17の天板部16と前板56との間からベンチュリー保持部17の前側空間に進入する。そして、空気Aは、4つのベンチュリー30,30・・に分岐して、各ベンチュリー30を通って第1~第3混合室21~23へそれぞれ別々に流れる。このとき、各ベンチュリー30を通過する空気Aは、入口部32から絞り部33に至る通路面積の縮小により、流速を上げて前段拡径部34へ流れるため、前段拡径部34で減圧されて負圧が生じる。
【0028】
同時にガス導入管からは燃料ガスが供給され、ゼロガバナ111を通ってガス管110を介してノズル部12に至り、
図8,9に実線矢印Gで示すように、オリフィス70A,70B,70Bから第1~第3ガス供給路85~87に分岐して流れる。各ガス供給路85~87を流れる燃料ガスGは、ノズル板57のノズル孔84A~84Cから各ベンチュリー30の周囲の筒状空間40に流れ、ベンチュリー30で生じる負圧との差圧に応じた量でスリット37,37・・を通ってベンチュリー30に吸い込まれ、空気Aと混合されて、
図8に一点鎖線で示す混合気AGが生成される。
ここで、ゼロガバナ111では、第1混合室21から取り出される信号圧で燃料ガスの二次圧P2が制御されるので、ベンチュリー30に吸い込まれるガス量は、ベンチュリー30で生じる負圧と当該信号圧との差圧により決定される。
また、遠心ファン105の回転数が変化して風量が変化し、遠心ファン105の吹出口107での出口圧と、ベンチュリー30で生じる負圧との関係が変化すると、ベンチュリー30で生じる負圧と当該信号圧との関係も関連して変化することになる。ベンチュリー30では大きく減圧されるため、その下流で低い信号圧を取り出すことができ、結果、使用に耐えうる一次圧P1を低くすることができる。
【0029】
こうしてベンチュリー30で生成された混合気AGは、第1~第3混合室21~23を下降して炎孔板46の各炎孔47から噴出し、図示しない点火電極によって点火されて燃焼する。
バーナユニット3からの燃焼排気は、一次熱交換器4の中ケーシング90で各フィン91,91の間を通過することで、伝熱管92内を流れる水と熱交換し、顕熱が回収される。その後、二次熱交換器5の下ケーシング95内で各伝熱プレート96の間を通過することで、伝熱プレート96の内部流路を流れる水と熱交換し、潜熱が回収される。そして、排気部6内を上昇して排気筒101及び排気管から排出される。
【0030】
図13は、給湯装置1における給排気系統での圧力の変化を示すグラフである。遠心ファン105の回転により空気が吸い込まれると、給気管では圧力が負圧となった後((1)-(2))、遠心ファン105で上昇に転じ、吹出口107で最大となる((2)-(3))。そして、ベンチュリー30を通過する際に大きく減圧され((3)’)、スリット37から燃料ガスが噴出するタイミング((4))では負圧となるまで低下する。その後、ベンチュリー30を混合気として流れることで再び上昇し、第1~第3混合室21~23に至って低下する((3)’-(5))。その後はバーナ48((5)-(6))、一次、二次熱交換器4,5((6)-(7))、排気部6から排気筒101及び排気管((7)-(8))を流れるにつれて徐々に低下することになる。なお、
図13では給気管及び排気管が比較的短い場合で示しているが、長い場合は、遠心ファン105の入口側の圧力が短い場合よりも低く、遠心ファン105の出口側の圧力が短い場合よりも高くなって、それ以降は全体的に短い場合よりも高めの状態で短い場合と同様に変化する。
【0031】
図13に示す点線Lは、混合部がベンチュリー30のようにベンチュリー形状となっていない場合の圧力変化を示すもので、この場合にゼロガバナ111への信号圧を(5)から得ると、ゼロガバナ111で調圧される二次圧P2より混合部内の圧力が高くなるため、混合部へ燃料ガスが噴出されなくなる。
しかし、本形態のように混合部をベンチュリー30とすれば、最低圧を(3)’の位置で(3)から-Ps1となるまで下げられるので、信号圧を(5)から得ても燃料ガスを噴出させることができる。すなわち、混合部をベンチュリー構造として信号圧を(5)から得ることで、
図13に示すPs2だけゼロガバナ111の二次圧P2を下げることができるため、一次圧P1の低下に対する余裕ができるのである。
【0032】
そして、要求されるバーナユニット3での燃焼量が小さい場合、コントローラは、第1、第2電磁弁71,72の一方又は両方を駆動させて、第1、第3ガス供給路85,87の使用状態と、第2、第3ガス供給路86,87の使用状態と、第3ガス供給路87のみの使用状態との何れかを選択する。
例えば、第1、第2電磁弁71,72の弁体73,73によって通過孔75A,75Bが閉塞されると、第1、第2ガス供給路85,86(第1、第2混合室21,22)からは燃料ガスが供給されなくなり、最低では左端のベンチュリー30で混合される混合気のみが第3混合室23を通って炎孔板46の炎孔47から噴出する。このため、バーナ48では、第3燃焼面53のみで燃焼炎が形成されることになる。他の使用状態の場合も同様に、使用されるガス供給路に応じた燃焼面のみで燃焼炎が形成される。
なお、このように燃料ガスの供給が切り換えられても、遠心ファン105からの空気は全ての第1~第3混合室21~23に流れて炎孔板46から噴出することになるが、炎孔板46には第1~第3燃焼面51~53間を仕切る無炎孔部49,49が形成されているため、燃料ガスが燃料する燃焼面で火炎が冷却されることがない。よって、燃焼の悪化は生じない。
【0033】
(給湯装置に係る発明の効果)
このように、上記形態の給湯装置1によれば、混合部を、遠心ファン105の回転によって空気が流れ、その際に生じる減圧によってゼロガバナ111から供給される燃料ガスを吸い込むベンチュリー30とする一方、ゼロガバナ111への信号圧を、ベンチュリー30よりも下流側から取り出したことで、遠心ファン105の下流で混合気を生成する正圧式において、燃料ガスの一次圧が低下しても安定した燃焼を維持することができる。よって、使い勝手の向上が期待できる。
特にここでは、ベンチュリー30を複数設けると共に、第1~第3ガス供給路85~87をゼロガバナ111の下流で複数に分岐形成してそれぞれベンチュリー30に接続し、2つの第1、第2ガス供給路85,86に、当該ガス供給路85,86を開閉する開閉手段(第1、第2電磁弁71,72)を設けて、燃料ガスが供給される第1~第3ガス供給路85~87の数及び混合気が生成されるベンチュリー30を切り替え可能としているので、バーナ48での第1~第3燃焼面51~53の切り替えが可能となり、ターンダウン比を大きく取ることができる。
【0034】
なお、上記形態では、ゼロガバナへの信号圧を第1混合室から取り出しているが、他の混合室でもよいし、複数の混合室に信号圧取り出し口を設けて、各信号圧を混合させて平均化した信号圧をゼロガバナへ入れるようにしてもよい。
また、信号圧はできるだけ低い方が望ましいため、ベンチュリーとバーナとの間に限らず、バーナと一次熱交換器との間(
図13に示す(6))、一次熱交換器と二次熱交換器との間、二次熱交換器と排気部との間(
図13に示す(7))等から取り出すようにしても差し支えない。複数の箇所から取り出した信号圧を平均化させることもできる。
さらに、ガス供給路及びベンチュリーの数も上記形態に限らず、適宜増減可能で、開閉手段となる電磁弁の数や位置も上記形態に限定されない。逆に、ガス供給路及びベンチュリーを1つずつとすることもできる。ガス供給路及びベンチュリーの具体的な構造も適宜変更可能である。
【0035】
一方、ファンとしては遠心ファンに限らず、シロッコファン等の他のファンも採用できる。
その他、給湯装置自体の構成も上記形態に限らず、顕熱用の一次熱交換器のみ備えて二次熱交換器がない構造であったりしても各発明は適用可能である。また、上側にバーナユニット、下側に熱交換器が配置されているが、上下の向きを逆にして熱交換器の上側に排気部を配置してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1・・給湯装置、2・・本体、3・・バーナユニット、4・・一次熱交換器、5・・二次熱交換器、6・・排気部、7・・ファンユニット、8・・調圧ユニット、10・・上箱、11・・下板、12・・ノズル部、13・・深底部、14・・保持ブロック、17・・ベンチュリー保持部、18・・保持孔、19・・仕切板、21・・第1混合室、22・・第2混合室、23・・第3混合室、24・・信号圧取り出し口、30・・ベンチュリー、31・・取付板、32・・入口部、33・・絞り部、34・・前段拡径部、35・・後段拡径部、36・・出口部、37・・スリット、40・・筒状空間、46・・炎孔板、47・・炎孔、48・・バーナ、55・・分配板、56・・前板、57・・ノズル板、60・・ガス入口、62・・管継手、63・・第1リブ、64・・第2リブ、65・・第1分配室、66・・第2分配室、67・・第3分配室、68・・円形プレート、69A,69B・・透孔、70A,70B・・オリフィス、71・・第1電磁弁、72・・第2電磁弁、73・・弁体、75A~75C・・通過孔、84A~84C・・ノズル孔、85・・第1ガス供給路、86・・第2ガス供給路、87・・第3ガス供給路、90・・中ケーシング、95・・下ケーシング、101・・排気筒、105・・遠心ファン、110・・ガス管、111・・ゼロガバナ、112・・信号圧導入口、A・・空気、G・・燃料ガス、AG・・混合気。