(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】ダンパーヒンジ
(51)【国際特許分類】
F16F 9/14 20060101AFI20220822BHJP
F16C 11/10 20060101ALI20220822BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20220822BHJP
A47K 13/12 20060101ALI20220822BHJP
F16F 9/516 20060101ALI20220822BHJP
F16F 9/48 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
F16F9/14 A
F16C11/10 A
F16C11/04 F
A47K13/12
F16F9/516
F16F9/48
(21)【出願番号】P 2018148314
(22)【出願日】2018-08-07
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】513014628
【氏名又は名称】株式会社ナチュラレーザ・ワン
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】倉持 竜太
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-296267(JP,A)
【文献】特開2004-017824(JP,A)
【文献】特開2010-276085(JP,A)
【文献】米国特許第08745820(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/14
F16C 11/10
F16C 11/04
A47K 13/12
F16F 9/516
F16F 9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状を呈し内部に仕切壁部を設けたシリンダーケースと、
このシリンダーケース内の前記仕切壁部を挟んで設けられた第1収容室に前記仕切壁部の一方の側に接して回転を拘束されて設けられると共に、外周に所定間隔を空けて軸方向に向けて設けた一対のバルブ片部を有するバルブ部材と、
前記第1収容室内に前記バルブ部材に接して水密状態でかつ軸方向に移動規制されて回転可能に設けられたところの少なくともフランジ部とこのフランジ部に続いて設けられた一対の弁部材とを有する第1回転シャフトと、
前記シリンダーケース内の前記
仕切壁部を挟んだ他方の側に設けられた第2収容室内に同じく軸方向に移動規制されて設けられ、前記第1回転シャフトに対し前記仕切壁部を介して同軸かつ水密状態に連結された第2回転シャフトと、
前記第1回転シャフト側に設けられた流体ダンパー手段と、
前記第2回転シャフトの側に設けられた一方向回転付勢手段と、を含み、
前記流体ダンパー手段は、前記一対のバルブ片部の間に位置し、前記フランジ部から前記バルブ部材の面部に接して設けられた一対の弁部材と、前記一対のバルブ片部の間に設けられ内部に前記一対の弁部材をそれぞれ収容し流体が充填された第1流体室及び第2流体室と、前記第1流体室と前記第2流体室内にそれぞれ設けられたところの前記第1回転シャフトの所定の回転角度範囲において前記弁部材を介して動作する一対の第1流体通路と、前記バルブ片部に設けられたところの前記第1回転シャフトの全開閉角度範囲において同じく前記弁部材を介して動作する一対の第2流体通路と、で構成したことを特徴とする、ダンパーヒンジ。
【請求項2】
前記第1回転シャフトと前記第2回転シャフトを前記仕切壁部を介して同軸に連結するに当たり、前記仕切壁部に設けた第1軸受孔に、前記第1回転シャフトと前記第2回転シャフトのいずれか一方を軸受けさせて軸方向に連結させることを特徴とする、請求項1に記載のダンパーヒンジ。
【請求項3】
前記第1流体通路が、前記バルブ部材の面部と第1回転シャフトの側に設けた弁部材との間に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のダンパーヒンジ。
【請求項4】
前記第2流体通路が、前記バルブ部材の前記各バルブ片部とこの各バルブ片部と係合する前記シリンダーケース内部に設けられた一対の係止凸条部との間に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のダンパーヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被開閉部材に対して開閉体を開閉する際に前記開閉体の回転トルクを使用者にとって好ましく制御するのに好適なダンパーヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば洋式便器の便蓋や便座等の開閉体の開閉用に用いるヒンジは、便器本体の後部に前記開閉体の開閉トルクを制御することのできるダンパーヒンジが用いられている。かかるダンパーヒンジにあっては、下記特許文献1に示したように、流体ダンパーを用いるものと、下記特許文献2に示したように、トーションスプリングを用いるものとが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-133666号公報
【文献】WO03/065866A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1に記載の流体ダンパーを用いるものは、開閉体の閉成時における落下速度を軽減し、衝撃を吸収できるが、開閉体の開成操作時において当該開閉体を開成方向へ付勢させることはできないことから、蓋体が重く感じられるという問題があった。これに対して特許文献2に示したトーションスプリングを用いるものは、それだけであると、開閉体の開成操作時においては当該開閉体を開成方向へ付勢できるが、開閉体の閉成状態において、振動や揺れによって当該開閉体が被開閉体に対し浮き上がってしまうという傾向が多分にあった。
【0005】
本発明の目的は、従来技術の上記問題点を解決し、開閉体を軽い操作力で開閉でき、開閉体の全閉成状態時や全開成状態時における振動や揺れに対して、開閉体が浮き上がったり、自然落下するのを防止できた上で、閉成操作時に開閉体が急速に閉じられたり、開成操作時に開閉体が急速に跳ね上がったりすることを防止でき、開閉体の開閉操作時における操作フィーリングの向上を図ったダンパーヒンジを提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明の請求項1に係るダンパーヒンジは、筒状を呈し内部に仕切壁部を設けたシリンダーケースと、このシリンダーケース内の前記仕切壁部を挟んで設けられた第1収容室に前記仕切壁部の一方の側に接して回転を拘束されて設けられると共に、外周に所定間隔を空けて軸方向に向けて設けた一対のバルブ片部を有するバルブ部材と、前記第1収容室内に前記バルブ部材に接して水密状態でかつ軸方向に移動規制されて回転可能に設けられたところの少なくともフランジ部とこのフランジ部に続いて設けられた一対の弁部材とを有する第1回転シャフトと、前記シリンダーケース内の前記仕切壁部を挟んだ他方の側に設けられた第2収容室内に同じく軸方向に移動規制されて設けられ、前記第1回転シャフトに対し前記仕切壁部を介して同軸かつ水密状態に連結された第2回転シャフトと、前記第1回転シャフト側に設けられた流体ダンパー手段と、前記第2回転シャフトの側に設けられた一方向回転付勢手段と、を含み、前記流体ダンパー手段は、前記一対のバルブ片部の間に位置し、前記フランジ部から前記バルブ部材の面部に接して設けられた一対の弁部材と、前記一対のバルブ片部の間に設けられ内部に前記一対の弁部材をそれぞれ収容し流体が充填された第1流体室及び第2流体室と、前記第1流体室と前記第2流体室内にそれぞれ設けられたところの前記第1回転シャフトの所定の回転角度範囲において前記弁部材を介して動作する一対の第1流体通路と、前記バルブ片部に設けられたところの前記第1回転シャフトの全開閉角度範囲において同じく前記弁部材を介して動作する一対の第2流体通路と、で構成したことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る請求項2の発明は、第1回転シャフトと第2回転シャフトを仕切壁部を介して同軸に連結するに当たり、前記仕切壁部に設けた軸受孔に、前記第1回転シャフトと前記第2回転シャフトのいずれか一方を軸受けさせて軸方向に連結させることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る請求項3の発明は、前記第1流体通路が、前記バルブ部材の面部と第1回転シャフトの側に設けた弁部材との間に設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る請求項4の発明は、前記第2流体通路が、前記バルブ部材の各バルブ片部とこの各バルブ片部と係合する前記シリンダーケース内部に設けられた係止凸条部との間に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上のように構成したので、請求項1に記載の発明によれば、開閉体を被開閉体に対して閉じる際に、衝撃を吸収でき、開閉体を開く際には、当該開閉体本来の重さを感じさせることなく開くことができ、しかも開閉操作の途中から開閉体を自動的に開くこともできるダンパーヒンジを提供できるものである。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、仕切壁部を挟んでそれぞれ機能の異なる第1回転シャフトと第2回転シャフトを同軸に連結することができるものである。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記第1流体通路が、前記バルブ部材の面部と第1回転シャフトの弁部材の間に設けたことにより、流体ダンパー手段が動作する角度範囲を任意に定めることができるものである。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、前記第1流体通路と共に、前記第2流体通路を介して流体が流通させることができることから、より操作性の良いダンパーヒンジを提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るダンパーヒンジを示し、(a)はその斜視図、(b)はその平面図、(c)はその左側面図である。
【
図2】
図1の(c)に示すダンパーヒンジのA-A線断面図である。
【
図3】
図1に示すダンパーヒンジの分解斜視図である。
【
図4】
図1に示すダンパーヒンジのシリンダーケースを示し、(a)はその斜視図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。
【
図5】
図1に示すダンパーヒンジのシリンダーケースを示し、
図4の(b)のB-B線断面図である。
【
図6】
図1に示すダンパーヒンジの第1回転シャフトを示し、(a)はその斜視図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。
【
図7A】
図1に示すダンパーヒンジのバルブ部材を示し、(a)はその左側面図、(b)は(a)図を一方の側から見た斜視図である。
【
図7B】
図1に示すダンパーヒンジのバルブ部材を示し、(c)は
図7Aの(a)図を他方の側から見た斜視図、(d)は
図7Aの(a)図のC-C線断面図である。
【
図8】第1流通路を説明するための図面であり、(a)はその拡大側断面図、(b)は(a)図の矢印Aの側から見た断面図である。
【
図9】
図1に示すダンパーヒンジの第2回転シャフトの平面図である。
【
図10】
図1に示すダンパーヒンジの第1キャップを示し、(a)はその左側面図、(b)は(a)のD-D線断面図である。
【
図11】
図1に示すダンパーヒンジの第2キャップを示し、(a)はその左側面図、(b)は(a)のE-E線断面図である。
【
図12A】
図1に示すダンパーヒンジの動作を説明する縦断面図であり、(a)は蓋体の全開成状態を示し、(b)は蓋体の閉じ始めの状態を示している。
【
図12B】
図1に示すダンパーヒンジの動作を説明する縦断面図であり、(c)は蓋体の中間閉成状態を示し、(d)は蓋体の全閉成状態を示している。
【
図13】
図1に示すダンパーヒンジが取り付けられた洋式便器を示し、(a)は蓋体の開成状態の斜視図、(b)は蓋体の閉成状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るダンパーヒンジの1の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では、ダンパーヒンジを洋式便器の便蓋を開閉するものとして説明するが、本発明に係るダンパーヒンジはこのものに限定されず、便座や、様々な電化製品や、キャビネットの蓋体などの開閉体に、その開閉用として用いることができるものである。したがって、この理由により、以下の説明では開閉体を便蓋として説明するが、請求項では開閉体と記載する。
【0016】
図13(a)と(b)は、本発明に係るダンパーヒンジを用いた洋式便器100を示す。図面に示すように、洋式便器100は、便器本体101と、便座102と、便蓋103と、便器本体101の後部に取り付けられた一対のダンパーヒンジ1A、1Bと、水槽104を有する。実施例のダンパーヒンジ1A、1Bは便蓋103用のものであり、便座102は図示してないヒンジによって開閉される。その場合には、本発明に係るダンパーヒンジを用いる場合もあるし、他の構成のヒンジを用いる場合がある。
【0017】
ダンパーヒンジ1A、1Bは左右とも同じ構造のものであることを前提とし、以下便器本体101に向かって右側のダンパーヒンジ1Aについて説明する。もちろん左側のダンパーヒンジ1Bの構成は、右側のダンパーヒンジ1Aとその構成が異なる場合がある。
【0018】
本発明に係るダンパーヒンジ1Aは、
図1~
図11に示すように、その内部略中央部に軸心部軸方向へ貫通する第1軸受孔22aを設けた仕切壁部22を有するシリンダーケース2と、このシリンダーケース2の
仕切壁部22とこの
仕切壁部22の一側面側に固定されたバルブ部材4を挟んだ一方の側に設けられた第1収容室2A内に水密状態で、かつ回転可能に取り付けられた第1回転シャフト6と、
仕切壁部22を挟んだ他方の側に設けられた第2収容室2B内に水密状態で第1回転シャフト6共に回転可能となるように取り付けられた第2回転シャフト8と、第1回転シャフト6側に設けた流体ダンパー手段3Aと、第2回転シャフト8側に設けたトーションスプリングからなる一方向回転付勢手段3Bとで構成されている。
【0019】
シリンダーケース2は合成樹脂製の両端部側を解放させたもので、とくに
図2及び
図4に示すように、その両端部に第1収容室2Aと第2収容室2Bに向けて、やや大径の第1取付孔部2aと第2取付孔部2bが設けられると共に、これらの第1取付孔部2aと第2取付孔部2bに向けて外側から180度間隔に設けられた各一対の第1固定用孔部2c、2cと第2固定用孔2d、2dが設けられ、さらにその外周の一端部側に下方へ向けて垂設された挿入取付片2gと、他端部側の一側方向へ突設した取付孔2eを有する取付片2fが設けられている。さらに第1収容室2Aの側には、仕切壁部22から一側方向に向けて
図4(b)と
図5に示したように、180度間隔で一対の係止凸条部22b、22bが設けられると共に、第2収容室2B内には、
仕切壁部22から一体に設けた端部内周に周溝22cを有し、外周にその半径方向へ後述するトーションスプリングから成る一方向回転付勢手段3Bの弾性部材9の一端部9aを係止する係止孔22dを設けた小径筒部22eが設けられ、第1軸受孔22aはこの小径筒部22e内を貫通している。
【0020】
第1収容室内2A内には、
仕切壁部22に接して当該第1収容室2Aの内周に接する外周部を有し、その軸心部軸方向に第2軸受孔4aを有する円盤状のバルブ部材4が回転可能に設けられている。このバルブ部材4は、とくに
図7に示したように、一対のバルブ片部4c、4dが180度間隔で一側方に向けて設けられると共に、このバルブ片部4c、4dを設けた側の面部4bに第2軸受孔4aを挟んで、当該面部4bを後面側に貫通しない溝状で、円弧状を呈したところ一対の第1流体通路7a、7bが各バルブ片部4c、4dの間に設けられている。これらの第1流体通路7a、7bは、各バルブ片部4c、4dの基部からその各始端部7c、7dが始まり、面部4bの中ほどで細くなった終端部7e、7fとなって終わっている。
【0021】
第1回転シャフト6は、とくに
図3と
図6に示したように、その一端部側の取付用変形軸部6aと、この取付用変形軸部6aに続いて設けられた軸支部6bと、この軸支部6bに続いて設けられた大径部6cと、この大径部6cに続いて設けられたフランジ部6dと、このフランジ部6dに続いてこのフランジ部6dより小径の中径部6eが設けられ、この中径部6eの半径方向に180度間隔で突出させて設けられた一対の弁部材6g、6hと、中径部6eの端面からその軸心部軸方向へ断面略楕円形を呈した変形連結孔6iを有している。この第1回転シャフト6は、弁部材6g、6hを各バルブ片部の4c、4dの間に挿入させ、その中径部6eの端面をバルブ部材4の面部4bに圧接した状態で、
図2に示したように、取付用変形軸部6aの部分を除いて第1収容室2A内に後述するように水密状態で回転可能に収容されている。
【0022】
第2回転シャフト8は、とくに
図3と
図9に示したように、第1回転シャフト6に設けた変形連結孔6iへ挿入係合される変形連結軸部8aと、この変形連結軸部8aに続いて設けられた第1軸支部8bと、この第1軸支部8bに続いて設けられた大径部8cと、この大径部8cに続いて設けられた大径部8cよりも小径の第2軸支部8dとで構成されており、第2収容室2B内に、後述するように、水密状態で回転可能に第1回転シャフト6と共に回転可能に収容されている。さらに大径部8cの外周には放射状に複数の凹部8eが形成されており、第2軸支部8dには、その半径方向に貫通する係止溝8fが設けられている。
【0023】
さらにシリンダーケース2の開放端側の一方に設けた第1取付孔部2aには、その軸心部軸方向に第3軸受孔25aを設け、外周に中心部に向けて180度間隔で取付孔25b、25bを設けた第1キャップ25が挿入され、第1固定用孔2c、2cよりその取付孔25b、25bに圧入したスプリングピン28a、28aで取り付けられると共に、シリンダーケース2のもう一方の開放端に設けた第2取付孔部2bには、
図11に示したように、その軸心部内側に貫通していない軸受穴部26aを設け、外周に180度間隔で取付孔26b、26bを設けた第2キャップ26が挿入され、第2固定用孔2d、2dよりその第1取付孔部26b、26bに圧入したスプリングピン28b、28bで取り付けられている。
【0024】
バルブ部材4がシリンダーケース2の仕切壁部22に取り付けられている部分についてさらに詳しく説明すると、各バルブ片部4c、4dは、とくに
図7に示したように、その延出方向に対する直交方向の断面が略U字形状を呈したもので、両端部のやや幅の狭い取付溝部4e、4fと、この各取付溝部4e、4fの間に設けられたこれらの取付溝部4e、4fよりやや幅の広い流体ガイド溝部4g、4gを有している。この各流体ガイド溝部4g、4gは、取付溝部4e、4fを構成する両壁部4h、4i・4h、4iの頂部に設ける部分は共通であるが、両壁部4h、4i・4h、4iの一方の側4h、4hの内側には設けられていず、もう一方の側4i、4iの内側と、底面部4j、4jに設けられている。各バルブ片部4、4dの両側部の取付溝部4e、4fと流体ガイド溝部4g内にシリンダーケース2の係止凸条部22b、22bが嵌め込まれるが、取付溝部4e、4fの内幅と係止凸条部22b、22bの外幅との間には隙間4k、4kがあり、この隙間4k、4kのある分だけバルブ部材4は、ダンパーヒンジ1Aの動作時に第1回転シャフト6を支点として、前後方向へ回転して第2流体通路10a、10bの開閉動作がなされる。また、弁部材6g、6hの外側端部の部分と第1流体室2Cと第2流体室2Dの内周部分の間に図示はしてないが間隙があり、ダンパーヒンジ1Aの動作時にこの隙間を介して流体オイル13が第1流体室2C内と第2流体室内2D内を流通する。かくして、とくに
図12に示したように、バルブ部材4の面部4bに第1流体通路7a、7bが形成され、各バルブ片4c、4dの流体ガイド溝4g、4gとこの流体ガイド溝4g、4g内に嵌まり込んでいる係止凸条部22b、22bとの間に第2流体通路10a、10bが形成され、弁部材6g、6hの外側端部の部分と第1流体室2Cと第2流体室2Dの内周部分の間の上記した図示してない間隙に第3流通路4m、4mが形成される。以上の動作は後で説明する。
【0025】
次に、本発明に係るダンパーヒンジ1Aの組立手順について説明する。この説明は、まず、第2回転シャフト8をシリンダーケースに組み込み、次いで第1回転シャフト6をシリンダ-ケース2へ組み込む作業手順の順で説明する。
【0026】
まず、第2回転シャフト8のシリンダーケース2の第2収容室2B内への組付け手順であるが、トーションスプリングから成る一方向回転付勢手段3Bの弾性部材9を第2収容室2Bの開放端側から挿入させ、その一端部9aを仕切壁部22の小径筒部22eに設けた係止孔22dへ挿入係止させる。次いで、第2回転シャフト8の第1軸支部8bにOリングから成る第2シール部材12を装着させ、その変形連結軸部8aの方から弾性部材9の中を通して、シリンダーケース2の第2収容室2B内へ挿入し、変形連結軸部8aを第1回転シャフト6の変形連結孔6h内へ止まるまで挿入させると、とくに
図2に示したように、第1軸支部8bがバルブ部材4の第2軸受孔4aと仕切壁部22の第1軸受孔22aに軸受され回転可能に装着される。次いで、弾性部材9の他端部9bを第2軸支部8eの係止溝8fに係止させた上で、第2キャップ26を第2取付孔2bへ嵌め込み、その軸受穴26aに第2軸支部8dを軸受けさせた上で、スプリングピン28b、28bを用いて第2固定孔2d、2dと取付孔26b、26bへ圧入させる。このようにして第2回転シャフト8は、第2シール部材12で第2収容室2Bに対してシールされた上で、第1回転シャフト6と共に回転し、それ自身を第2収容室2Bと外部に対して水密状態で当該第2収容室2B内に装着され、弾性部材9により第2回転シャフト8の一方向回転付勢手段3Bが構成される。
【0027】
次いで、第1回転シャフト6の組み込みであるが、流体オイル13を第1収容室2A側に必要量注入した後に、第1回転シャフト6の小径部6cの外周にОリングなどの第1シール部材11を取り付けた状態で、弁部材6g、6hの側から第1収容室2A内へ挿入させる。するとフランジ部6eと弁部材6g、6hがシリンダーケース2の内径と同じ寸法の外径を有していることから、シリンダーケース2と同軸方向へ挿入される。次いで、第1キャップ25をその第3軸受孔25aへ第1回転シャフト6の軸支部6bを挿通させつつ、シリンダーケース2の第1取付孔部2aへ嵌め込むと、この第1取付孔部2aは、
図2に示したように、段付孔なので第1キャップ25はシリンダーケース2の開放端へ中に入り込み過ぎることなく装着される。同時に第1回転シャフト6のフランジ部6eの部分が第1キャップ25によって押されることにより、第1回転シャフト6の弁部材6g、6hを設けた中径部6eの側がバルブ部材4の面部4bに圧接して、動作時にオイル漏れを防ぐことができるものとなる。
【0028】
この際に第1シール部材11が変形して圧接状態をアシストする。次いでスプリングピン28a、28aを用いて第1キャップ25をシリンダーケース2に固定する。このように固定させると、とくに
図2に示したように、変形取付軸部6aがシリンダーケース2の外側に突出した状態で第1シール部材11によってシリンダーケース2と第1回転シャフト6との間が水密状態でシールされる。そして、とくに
図2と
図12に示したように、シリンダーケース2の第1収容室2A内には、内部に流体オイル13が充填されたところの、バルブ部材4とフランジ部6eと一対の弁部材6g、6hによって仕切られた第1流体室2Cと第2流体室2Dが形成されることになる。このようにして第1回転シャフト6側に流体ダンパー手段3Aが構成される。
【0029】
次に、ダンパーヒンジ1Aの動作について説明する。ダンパーヒンジ1Aは、
図13に示したように、第1回転シャフト6の取付用変形軸部6aを便蓋103の取付部103aに設けた図示してない変形取付穴へ挿入固定し、そのシリンダーケース2に設けた挿入取付片2gを便器本体101に設けた図示してない取付穴へ挿入し、取付片2fの方を便器本体101へ固着することによって当該便器本体101へ便蓋103を開閉可能に取り付ける。実施例では、一対のダンパーヒンジ1A、1Bを用いているが、以下の説明ではその動作は一方のダンパーヒンジ1Aについてのみ説明する。このダンパーヒンジ1Aは、便蓋103が
図12Aの(a)に示す開成位置から
図12B(d)に示す閉成位置に閉じる際の閉成動作と、その逆に、便蓋103を
図12Bの(d)に示す閉成位置から、
図12Aの(a)に示す開成位置に開く際の開成動作とを行う。
【0030】
便蓋103は全開成角度から閉じる際には、上述したように、
図12Aの(b)に示したように、第3流体通路4n、4nを介しての流体オイル13、13の移動に加えてダンパーヒンジ1Aのバルブ片部4c、4dを介して第2流体通路10a、10bが開かれるので、流体オイル13、13の移動がスムーズとなることから、速い閉成動作となる。また、便蓋103を閉じる際には、その途中から第1流体通路7a、7bも開くことから、蓋体103を軽い操作力で閉じさせることができるが、途中から一方向回転付勢手段3Bの反発力が強まることから、急速に閉じられることはなくゆっくりと閉じられることになる。
【0031】
まず、
図12(a)に示した便座103の全開成状態から便蓋103を閉じる場合についてさらに詳しく説明する。弁蓋103の全開成状態においては、弁部材6g、6hは第1流体通路7a、7bの始端部7c、7dの位置にあって、バルブ片部4c、4dの一側部側に位置している。この時には第2流体通路10a、10bは図示したように開いている。この全開成状態から使用者が手を用いて蓋体103を閉じ始めると、第1回転シャフト6と第2回転シャフト8は図中時計方向に回転して、まず、
図12の(b)に示したように、第2流体通路10a、10bは流体オイル13、13に押されて閉じられるが、弁部材6g、6hを介して第1流体室2C及び第2流体室2D内の流体オイル13を同一第1流体室2Cと第2流体室2D内で一方から他方へ移動させることから、速い速度でスムーズに閉じられることになる。
【0032】
次に、蓋体103がさらに閉じられると、
図12(c)に示したように、第1流体通路7a、7bが閉じられることになることから、流体オイル13、13は上記した第3流体通路4n、4nのみを介して移動することになることと、さらに第2回転シャフト8に働いている一方向回転付勢手段3Bの弾性部材9の弾力により、便蓋103はゆっくりと閉じられ、
図12(d)に示したように全閉状態となる。
【0033】
閉じられた便蓋103はその状態において一方向回転付勢手段3Bの弾性部材9が第2回転シャフト8を介して第1回転シャフト6に与える反転方向の回転トルクは、蓋体103の重量に劣ることから、便蓋103は閉成状態を安定的に保つことができるものであり、外部から多少の振動や揺れが加えられても、自然に浮き上がってしまうことはない。
【0034】
次に、
図12(d)に示した便蓋103の全閉成状態から開く場合について説明する。便蓋103が全閉成状態のときには、
図12(d)に示すように、各弁部材6g、6hは
図12(a)に示したものとは、各バルブ部材4の側部反対側に位置しているが、使用者が用をたすために便蓋103の前側に手をかけて持ち上げると、第1回転シャフト6と第2回転シャフト8は反時計方向へ回転し始め弁蓋103の開成操作を許容する。その際に、弁部材6g、6hによって押された第1流体室2Cと第2流体室2D内の流体13、13は、第2流体通路10a、10bを介して便蓋103を閉じる際とは逆方向に流れることになることと、一方向回転付勢手段3Bの弾力も加わって軽く開くことができる。
【0035】
弁蓋103が
図12(c)に示した中間開成角度(実施例では60度)まで開かれると、さらなる弁蓋103に対する開成閉作により、弁部材6g、6hが第1流体通路7a、7bの終端部7e、7fから移動し、第2流体通路10a、10bが開かれていることから、第1回転シャフト6の回転動作がよりスムーズになるので、一方向回転付勢手段3Bの弾性手段9の弾力が効き始め、 便蓋103は軽い操作力か、或は自動的に開くことも可能となり、
図12(a)に示した全開状態とすることができる。
【0036】
開かれた便蓋103はその全開状態において、第1回転シャフト8に設けた弁部材6g、6hが、バルブ片部材4c、4dに当接し、一方向回転付勢手段3Bの弾性部材9が第2回転シャフト8を介して第1回転シャフト6に便蓋103の開成方向の回転トルクを与えていることから、便蓋103はその閉成状態を安定的に保つことができるものであり、外部から多少の振動や揺れが加えられても、自動的に閉じてしまうことはない。
【0037】
以上説明したように、本発明に係るダンパーヒンジ1Aは、蓋体103の開閉操作時に、その途中で第1流体通路7a、7bが開閉されることと、閉成操作時に閉じられる第2流体通路10a、10b及び必要に応じて動作する第3流体通路4n、4nにより、流体ダンパー手段3Aの回転トルクが変化することから、単に流体ダンパー手段や一方向回転付勢手段を用いる場合に比して、より操作性の良いダンパーヒンジ1Aを提供することができるものである。
【0038】
なお、本実施例では、蓋体の全開成角度は120度であったが、本発明はこれに限定されない。全開成角度は適宜設定することができる。例えば、小用を足す場合には、必ずしも便座や便蓋を全開位置の90度以上の角度まで開く必要はないことから、60度とか70度の位置で停止保持させるように構成することも可能である。
【0039】
また、本発明に係るダンパーヒンジ1Aは、第1流体通路7a、7bを上記した実施例のものと設置位置を変えたり、ダンパーヒンジ1Aの設置位置を
図12のものとは反対方向にすることもできる。そうすると、便蓋103の 回転トルクが異なることになる。
【0040】
さらに、上述したダンパーヒンジは、洋式便器の便座や便蓋の開閉用ヒンジとして用いられるものであるが、本発明はこれに限定されない。上述したように、開閉体の開閉時に緩衝の必要のある場合や、開閉体を自立状態で保つ必要のある場合等に広く応用されるものである。例えば、電化製品やキャビネット、さらには複写機の原稿圧着板、OA機器の開閉式のディスプレイ一体等のさまざまな開閉体を挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、以上のように構成したので、簡単な構成で開閉体の開成操作時には所定の開成角度から開閉体が自動的に或は軽い操作力で開くこともでき、開閉体を閉じる際には、所定の閉成角度から加速度がつく開閉体の勢いを緩和して急激な落下を防止できるダンパーヒンジとして洋式便の便蓋や便座などの開閉体、或は電化製品及びキャビネットなどの蓋体などの開閉体のダンパーヒンジとして好適に用いられるものである。
【符号の説明】
【0042】
1A、1B ダンパーヒンジ
2A 第1収容室
2B 第2収容室
2C 第1流体室
2D 第2流体室
2 シリンダーケース
22 仕切壁部
22a 第1軸受孔
22b、22b 係止凸条部
3A 流体ダンパー手段
3B 一方向回転付勢手段
4 バルブ部材
4a 第2軸受孔
4b 面部
4c、4d バルブ片部
4g 流体ガイド溝部
6 第1回転シャフト
6a 取付用変形軸部
6b 軸支部
6d フランジ部
6g、6h 弁部材
6i 変形連結孔
7a、7b 第1流体通路
8 第2回転シャフト
8a 変形連結軸部
8d 第2軸支部
10a、10b 第2流体室
11 第1シール部材
12 第2シール部材
13 流体オイル
25 第1キャップ
25a 第3軸受孔
26 第2キャップ
26a 軸受穴