IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パロマの特許一覧

<>
  • 特許-給湯器 図1
  • 特許-給湯器 図2
  • 特許-給湯器 図3
  • 特許-給湯器 図4
  • 特許-給湯器 図5
  • 特許-給湯器 図6
  • 特許-給湯器 図7
  • 特許-給湯器 図8
  • 特許-給湯器 図9
  • 特許-給湯器 図10
  • 特許-給湯器 図11
  • 特許-給湯器 図12
  • 特許-給湯器 図13
  • 特許-給湯器 図14
  • 特許-給湯器 図15
  • 特許-給湯器 図16
  • 特許-給湯器 図17
  • 特許-給湯器 図18
  • 特許-給湯器 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】給湯器
(51)【国際特許分類】
   F23K 5/00 20060101AFI20220822BHJP
   F24H 1/14 20220101ALI20220822BHJP
【FI】
F23K5/00 301B
F24H1/14 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018217514
(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公開番号】P2020085290
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】太田 剛
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-197971(JP,A)
【文献】特開2012-127595(JP,A)
【文献】特開平7-42917(JP,A)
【文献】特開平8-86416(JP,A)
【文献】特開2006-207957(JP,A)
【文献】特開2013-210164(JP,A)
【文献】特開2015-143588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00 - 5/22
F23D 14/00 - 14/84
F23N 1/00
F23N 5/26
F24H 1/06 - 1/16
F24H 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に、
複数のバーナが左右方向に並設されてなるバーナユニットと、
前記バーナユニットを収容するインナーケースとを有し、
前記インナーケースの前面に、各前記バーナへ燃料ガスを供給する複数のノズルを左右方向に並設すると共に、前記ノズルを所定数毎に区画した複数の分配部及び、各前記分配部の下部へそれぞれ傾斜状に接続される複数の通路部を有する本体と、前記本体の前面に取り付けられて前記分配部及び前記通路部を覆う蓋体とを含んでなるガス分配ユニットが取り付けられる給湯器であって、
各前記通路部の下端には、燃料ガスの入口がそれぞれ形成される一方、
前記本体の少なくとも1つの前記分配部には、当該分配部に接続される前記通路部の燃焼ガスの主流の延長上に位置する延長上ノズル領域と、前記主流の延長上に位置しない非延長上ノズル領域とが左右方向に並設され、
前記本体における前記通路部と前記延長上ノズル領域との間には、前記通路部から流れる燃料ガスの一部を前記非延長上ノズル領域側へ振り分ける後側分流突起が設けられていることを特徴とする給湯器。
【請求項2】
前記後側分流突起は、正面視が左右方向に延びる横長矩形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の給湯器。
【請求項3】
前記後側分流突起は、前記通路部に近い側の端部から遠い側の端部へ行くに従って徐々に低くなるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の給湯器。
【請求項4】
前記蓋体における前記通路部と前記延長上ノズル領域との間で前記後側分流突起と前後方向でオーバーラップする位置には、前記通路部からの燃料ガスの一部を前記非延長上ノズル領域側へ振り分ける前側分流突起が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバーナからなるバーナユニットと、そのバーナユニットの各バーナに燃料ガスを分配供給するガス分配ユニットとを備えた給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器は、筐体内に、複数のバーナを左右方向に並設してなるバーナユニットを備えた燃焼装置と、燃焼装置の上部に配置される熱交換器とを備え、燃料ガスと燃焼用空気との混合気に点火して燃焼するバーナユニットの燃焼排気により、熱交換器を通過する水を加熱して出湯させる。
また、燃焼装置の前面には、特許文献1に開示されるように、バーナユニットの各バーナへ燃料ガスを供給するためのマニホールド(ガス分配ユニット)が設けられている。このガス分配ユニットは、バーナに向けてノズルを突設させた本体と、本体の前側に取り付けられる蓋板と、本体と蓋板との間をシールするシール部材とからなり、本体の内面に設けた凹部と蓋体の内面に設けた隆起部とにより、燃料ガスが供給される下流側のガス通路と、ガス通路と連通し、数が異なるノズル領域をそれぞれ有する複数の分配通路とを形成している。
ここではガス通路と分配通路との間のガス流通孔を電磁弁で開閉制御することで、燃焼させるバーナ群を選択して燃焼能力を変更可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-143588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のガス分配ユニットにおいては、供給される燃料ガスの勢いを殺すために左右方向に長いガス通路を形成しており、このためガス分配ユニットのコンパクト化が難しくなっている。そこで、コンパクト化のためにガス通路を省略することが考えられるが、ノズルが左右方向に並んで配設される領域に対して、斜め下方から減勢されない燃料ガスが流れると、燃料ガスの主流の延長上に位置するノズル領域に燃料ガスが過剰に供給され、当該延長上から外れるノズル領域には燃料ガスが過小に供給されて、1つの分配通路内でも燃料ガスを各ノズル領域へ均一に分配供給できなくなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、燃料ガスを減勢するためのガス通路を左右方向へ延びるように形成しなくても各ノズル領域へ燃料ガスを均一に分配供給可能として、ガス分配ユニットの小型、軽量化を図ることができる給湯器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、筐体内に、複数のバーナが左右方向に並設されてなるバーナユニットと、バーナユニットを収容するインナーケースとを有し、インナーケースの前面に、各バーナへ燃料ガスを供給する複数のノズルを左右方向に並設すると共に、ノズルを所定数毎に区画した複数の分配部及び、各分配部の下部へそれぞれ傾斜状に接続される複数の通路部を有する本体と、本体の前面に取り付けられて複数の分配部及び複数の通路部を覆う蓋体とを含んでなるガス分配ユニットが取り付けられる給湯器であって、
各通路部の下端には、燃料ガスの入口が形成される一方、本体の少なくとも1つの分配部には、当該分配部に接続される通路部の燃焼ガスの主流の延長上に位置する延長上ノズル領域と、主流の延長上に位置しない非延長上ノズル領域とが左右方向に並設され、本体における通路部と延長上ノズル領域との間には、通路部から流れる燃料ガスの一部を非延長上ノズル領域側へ振り分ける後側分流突起が設けられていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、後側分流突起は、正面視が左右方向に延びる横長矩形状に形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、後側分流突起は、通路部に近い側の端部から遠い側の端部へ行くに従って徐々に低くなるように形成されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、蓋体における通路部と延長上ノズル領域との間で後側分流突起と前後方向でオーバーラップする位置には、通路部からの燃料ガスの一部を非延長上ノズル領域側へ振り分ける前側分流突起が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、後側分流突起の採用により、延長上ノズル領域へ向けて流れる燃料ガスの主流を非延長上ノズル領域に分流させることができ、燃料ガスが流れ込みにくい非延長上ノズル領域にも燃料ガスを供給することができる。よって、燃料ガスを減勢するためのガス通路を左右方向へ延びるように形成しなくても各ノズル領域へ燃料ガスを均一に分配供給することができ、ガス分配ユニットの小型、軽量化を図ることができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、後側分流突起を、正面視が左右方向に延びる横長矩形状に形成しているので、燃料ガスを非延長上ノズル領域へ確実に分流させることができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加えて、後側分流突起を、通路部に近い側の端部から遠い側の端部へ行くに従って徐々に低くなるように形成しているので、延長上ノズル領域付近の圧損が過度に高まることを防止できる。よって、適度の燃料ガスを後側分流突起を乗り越えさせて延長上ノズル領域へ導くことができる。さらに、通路部に近い側を高くすることで、非延長上ノズル領域へ分流した燃料ガスが分流突起を越えて延長上ノズル領域側へ流出することを抑制でき、非延長上ノズル領域への流出量を確保可能となる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れかの効果に加えて、蓋体にも前側分流突起を設けたことで、後側分流突起と相まってより確実に燃料ガスを分流させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】フロントカバーを外した状態での給湯器の正面図である。
図2】燃焼装置の斜視図である。
図3】燃焼装置及びガス分配ユニットの分解斜視図である。
図4】本体の正面図である。
図5】本体の背面図である。
図6】ハーネス保持部の説明図で、(A)は後方下側からの拡大斜視、(B)は前方下側からの拡大斜視をそれぞれ示す。
図7】後側分流突起による燃料ガスの分流作用の説明図である。
図8】蓋体の正面図である。
図9】蓋体の背面図である。
図10】蓋体の前方からの斜視図である。
図11】蓋体の後方からの斜視図である。
図12】前側分流突起による燃料ガスの分流作用の説明図である。
図13】ガス分配ユニットの正面図である。
図14】(A)は図13のA-A線断面図、(B)はB-B線断面図である。
図15】(A)は図13のC-C線断面図、(B)はD-D線断面図である。
図16】(A)はガス分配ユニットの平面図、(B)はE-E線断面図である。
図17】(A)は図14のA部拡大図、(B)はB部拡大図である。
図18】(A)は図15のC部拡大図、(B)はD部拡大図である。
図19】後側及び前側分流突起による燃料ガスの分流作用の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、給湯器の一例を示す説明図で、前面のフロントカバーを外した筐体2を正面から示している。給湯器1は、四角箱状の筐体2内に、燃焼装置3と、熱交換器4と、排気フード5とを下方から順番に設置してなる。燃焼装置3の前面には、燃焼装置3内の後述するバーナユニット21に燃料ガスを分配供給するためのガス分配ユニット6が組み付けられ、燃焼装置3の下面には、燃焼用空気を供給する給気ファン7が組み付けられる。給気ファン7の前方側で燃焼装置3の下方には、電装基板を収容してなるコントローラ8が、筐体2の内底面上で横向きに立設されている。
熱交換器4は、ケーシング内部に図示しない複数のフィンを左右方向に所定間隔をおいて備えると共に、各フィンを蛇行状に貫通する伝熱管9を備えて、下方からフィン間を通過する燃焼排気と伝熱管9内を流れる水との熱交換が可能となっている。
排気フード5は、前面に横長長円状の排気筒10を備えてフロントカバーを貫通して前方へ突出させており、熱交換器4を通過した燃焼排気を外部へ排出可能となっている。
【0010】
筐体2の下面には、外部のガス管が接続されるガス入口11と、水道管が接続される水入口12と、給湯栓への配管が接続される湯出口13とが設けられている。このうちガス入口11は、筐体2内で、元弁や比例弁等を備えたガス供給部14を介してガス分配ユニット6に接続される。また、水入口12は、給水管15を介して熱交換器4の伝熱管9の上流端に接続され、湯出口13は、出湯管16を介して伝熱管9の下流端に接続されている。
【0011】
そして、燃焼装置3は、図2,3に示すように、筐体2内に収まる角箱状のインナーケース20内に、複数の扁平状の濃淡バーナ22,22・・を左右方向に並設したバーナユニット21を、側面視L字状の内板23を介して収容している。各濃淡バーナ22は、前方に開口して燃料ガス及び一次空気が導入される図示しない淡側導入口と濃側導入口とを上下に有し、上端に、中央の淡炎孔及びその左右両側の濃炎孔からなる炎孔部24を備えている。内板23の前面には、各濃淡バーナ22の淡側導入口と濃側導入口とにそれぞれ対応して、長円状のバーリング孔である下側の淡ガス供給孔25と、円形状のバーリング孔である上側の濃ガス供給孔26とが左右方向に並設されて、インナーケース20の前面下部に形成した開口に露出させている。インナーケース20の前面上部には、インナーケース20を貫通してバーナユニット21の上方に突出する点火用の放電電極27及び炎検出用のフレームロッド28と、覗き窓29とが設けられている。
【0012】
ガス分配ユニット6は、インナーケース20の前面下部の開口を塞ぐ格好でインナーケース20の前面に組み付けられている。このガス分配ユニット6は、後側の本体30と、前側の蓋体31と、本体30と蓋体31との間に介在されるシール体32とからなる扁平状で、本体30の下端後面にガス供給部14が連結される。
【0013】
(本体の説明)
まず、本体30は、アルミダイカスト製のプレート状で、図4にも示すように、左右横長の上板部33と、上板部33の左側から下向きに連結される下板部34とからなる正面視倒L字状を有し、上板部33及び下板部34の外周側には、インナーケース20へのネジ止め用の透孔35,35・・が形成されている。また。上板部33の右端縁には、図6に示すように、前方へ突出する2つの凸部37,37と、前方へ突出した後、右側へ折曲するL字状の2つの爪部38,38とが交互に配置されてなるハーネス保持部36が形成されている。すなわち、熱交換器4側に設けた温度センサ等のハーネスをコントローラ8へ引き回す際、図6に二点鎖線で示すように、凸部37と爪部38とにハーネス39(複数でも可)を交互に係止させることで、ハーネス39を上板部33の右端縁に沿って直線状に保持することができるようになっている。
【0014】
特に、上側の爪部38が設けられる上板部33の右端縁には、左側へ凹む切欠部33aが形成されて、当該爪部38は上下の凸部37,37よりも左側へずれて配置されている。よって、上下の凸部37,37の間で爪部38に引っ掛かるハーネス39は、右側へ飛び出すことなく直線状に引き回されることになる。これにより、熱交換器4の出湯管16に設けられるヒータ18(図1)が上板部33の右側に近接するような場合でも、ハーネス39とヒータ18との距離を確保して、ヒータ18の熱によるハーネス39への悪影響を防止することができる。
【0015】
本体30の前面で各透孔35で囲まれる内側領域には、無端状の突条41によって囲まれるガス分配部40が形成されている。このガス分配部40の上側は、内板23に設けられた各濃淡バーナ22の淡ガス供給孔25と濃ガス供給孔26との形成領域と前後方向にオーバーラップする領域を囲む四角形状となっており、ガス分配部40の下側は、下方へ行くに従って下方左側へ傾斜すると共に、幅が徐々に狭くなる先細り状となっている。ガス分配部40の上側の領域には、図5及び図6に示すように、各濃淡バーナ22の淡ガス供給孔25と濃ガス供給孔26とに対応して上下一組で設けられ、後方側へ突出形成される上下一組のノズル42,42が、濃淡バーナ22の数に合わせて左右方向へ複数並設されている。
但し、突条41内には、左右でノズル42,42の組数(濃淡バーナ22の数)が異なる(ここでは右側のノズル42の組数が左側のノズル42の組数よりも多くなる)ように上側の領域を区切り、下側の領域もノズル42,42の組数に合わせて右側の幅が左側の幅よりも大きくなるように左右に区切る中突条43が連続形成されている。
【0016】
よって、ガス分配部40には、中突条43の右側でノズル42,42の組が多くなる第1分配部44と、その第1分配部44の左端下部から下方へ繋がる幅広傾斜状の第1通路部45と、中突条43の左側でノズル42,42の組が少なくなる第2分配部46と、その第2分配部46の左端下部から下方へ繋がる幅狭傾斜状の第2通路部47とが形成される。第1通路部45と第2通路部47との下部は、それぞれ下方へ行くに従って後方へ深くなるように形成されており、最も深くなる各通路部45,47の下端には、ガス入口48,48が形成されている。このガス入口48,48は、ガス供給部14に設けられた電磁弁17,17によって開閉される。
また、突条41及び中突条43には、蓋体31をネジ止めするためのネジ孔49,49・が所定間隔をおいて形成されている。突条41の最上部の水平部分では、下向きに短突条50,50・・が、左右方向に所定間隔をおいて連続形成されて、各短突条50の下端にもネジ孔49が形成されている。さらに、突条41の前面には、シール体32の位置決め突起51,51・・が前向きに突設されている。
【0017】
第1通路部45の上部は、右側へ向けて傾斜すると共に、正面視への字状に屈曲する中突条43の上側傾斜部分43aと突条41の傾斜部分41aとにより、上方へ行くに従って通路幅が先細りとなるように形成されて、第1分配部44の左端の下方に通路幅が最も狭くなる狭小部52を形成している。狭小部52の下流側は、右側へ拡開して第1分配部44の下端全体と連通する拡開部53となっている。
これにより第1分配部44は、狭小部52に最も近い左端の第1ノズル領域E1と、第1ノズル領域E1と1つの短突条50を介して隣接する第2ノズル領域E2と、第2ノズル領域E2と隣接して狭小部52から最も離れる2つの第3ノズル領域E3,E3とに半仕切りされる。ここでは第2ノズル領域E2が、第1通路部45の形状に沿って流れて先細り部分の略中央部で狭小部52に向かう燃料ガスの主流Sの延長上に位置しており、第1ノズル領域E1は主流Sの延長上から左側に外れた位置に、第3ノズル領域E3,E3は主流Sの延長上から右側に外れた位置となっている。
【0018】
そして、主流Sにおける狭小部52よりも下流側には、後側分流突起55が形成されている。この後側分流突起55は、図7にも示すように、正面視が横長矩形状で、前面は、左側面56が中突条43よりやや低い高さとなるように形成されている。但し、後側分流突起55の前面は、左側面56の前端から右側へ行くに従って徐々に低くなり、下面57を右下がり傾斜状に形成する傾斜面58となっている。この後側分流突起55は、左下角部59を狭小部52の略中央下流際に位置させて、第1分配部44と第1通路部45との境界で左右方向に配置されている。
【0019】
よって、第1通路部45の狭小部52を越えて流れる燃料ガスの主流Sの一部は、まず後側分流突起55の左下角部59に当接して左右に分かれ、左側面56側に分流した燃料ガスの一部は、実線矢印aで示すようにそのまま左側面56に沿って上方へ案内されて第1ノズル領域E1に流れる。下面57側に分流した燃料ガスの一部は、主流Sの慣性によって下面57を乗り越え、実線矢印bで示すように後側分流突起55の前方を通過して第2ノズル領域E2に流れる。また、下面57側に分流した燃料ガスの他の一部は、実線矢印cで示すようにそのまま下面57に沿って右側へ案内されて拡開部53から第3ノズル領域E3,E3に流れる。こうして燃料ガスの主流Sの一部は、後側分流突起55によって第1~第3ノズル領域E1~E3へそれぞれ振り分けられることになる。
【0020】
(蓋体の説明)
蓋体31は、図8,9に示すように、正面視が本体30のガス分配部40と略同じ形状で、ガス分配部40を前方から覆うようにプレス成形された金属板となっている。蓋体31の外周には、図10,11に示すように、本体30の突条41の外周を覆う周縁部65が折り返し形成されており、蓋体31の前面には、第1分配部44と第1通路部45とに跨がって重なり、前方へ膨らむ第1膨出部66と、第2分配部46と第2通路部47とに跨がって重なり、前方へ膨らむ第2膨出部67とが形成されている。両膨出部66,67の外側及び間には、ネジ止め用の透孔68,68・・が形成されている。
また、蓋体31において、第1、第2ノズル領域E1,E2を覆う部位は、前方へ膨らまない平坦部69となっており、平坦部69の下端(第1膨出部66の上端)は、第1分配部44と第1通路部45との境界部分に対応して前方下向きに立ち上がる左右方向の立ち上がり部70となっている。
【0021】
そして、この立ち上がり部70の左寄りの部位で第1膨出部66には、図12にも示すように、正面視が略四角形状となる前側分流突起71が、後方(内側)へ向けて突出するように絞り成形されている。この前側分流突起71は、図13~16に示すように、拡開部53の左端部寄りで、本体30の後側分流突起55の左上側へ前後方向に重なり、左下角部72を後側分流突起55の左下角部59よりも主流Sの下流側に位置させている。この状態で前側分流突起71と後側分流突起55との間には、前後方向に隙間が形成される。
【0022】
よって、第1通路部45の狭小部52を越えて第1膨出部66内を流れる主流Sの一部は、前側分流突起71の左下角部72に当接して左右に分かれ、左側面73側に分流した燃料ガスの一部は、点線矢印aで示すように、そのまま左側面73に沿って上方へ案内され、立ち上がり部70を乗り越えて第1ノズル領域E1側に流れる。下面74側に分流した燃料ガスの一部は、主流Sの慣性によって点線矢印bで示すように前側分流突起71の後方を潜って後側分流突起55との隙間を通過するか、或いは点線矢印cで示すように下面74に案内されて前側分流突起71の右側へ流れる。しかし、蓋体31では第2ノズル領域E2への入口が平坦部69で狭められている上、第1膨出部66の上端には左右方向に立ち上がり部70が形成されているので、点線矢印dで示すように、当該一部の燃料ガスは殆どが立ち上がり部70によって右側へ案内されて第3ノズル領域E3,E3へ流れることになる。すなわち、第1膨出部66では平坦部69を潜った一部の燃料ガスのみが第2ノズル領域E2に流れることになる。
【0023】
シール体32は、コルクやゴム等で形成され、図3に示すように、本体30の突条41及び中突条43、短突条50に沿って形成されて、ネジ孔49との対応部分に透孔80を、位置決め突起51との対応部分に小孔81をそれぞれ有している。また、透孔80の部分を繋ぐ繋ぎ部82,82・・も備えた網目状となっている。
【0024】
このガス分配ユニット6は、本体30の前面にシール体32を、各ネジ孔49の位置に各透孔80を合わせて位置決め突起51を小孔81に差し込み、突条41及び中突条43、短突条50の前面にセットする。この状態で蓋体31を前方から被せて、前方から蓋体31の透孔68及びシール体32の透孔80を貫通させたボルト85,85・・を各ネジ孔49にねじ込むと、図13~16に示すようにガス分配ユニット6の組み立てが完了する。
この状態で本体30側の第1分配部44及び第1通路部45は、蓋体31によって前面が閉塞されると共に、第1膨出部66が第1分配部44及び第1通路部45に跨がって前方から被さり、図16~18にも示すように、立ち上がり部70が第1分配部44と第1通路部45との境界位置の前方に位置し、前側分流突起71が後側分流突起55の前方に位置する。同様に、本体30側の第2分配部46及び第2通路部47も、蓋体31によって前面が閉塞されると共に、第2膨出部67が第2分配部46及び第2通路部47に跨がって前方から被さる。
こうして組み立てたガス分配ユニット6の本体30を、インナーケース20の前面下部に前方からネジ86,86・・(図1)によってネジ止めすると共に、本体30の下端後面にガス供給部14をネジ止めすれば、燃焼装置3へのガス分配ユニット6の組み付けは完了する。
【0025】
以上の如く構成された給湯器1において、湯出口13の配管に接続される給湯栓を開栓して器具内に通水させると、これを検知したコントローラ8がガス供給部14のガス流路を開いてガス分配ユニット6へ燃料ガスを供給させると共に、給気ファン7を作動させて燃焼用空気を供給させる。よって、ガス分配ユニット6のノズル42から供給される燃料ガスは、内板23の各淡ガス供給孔25及び濃ガス供給孔26から一次空気と共に各淡側導入口及び濃側導入口を介して各濃淡バーナ22に供給される。そして、コントローラ8により放電電極27が連続放電すると、各濃淡バーナ22の炎孔部24から噴出する混合気が燃焼する。バーナユニット21の燃焼排気は、給水管15から熱交換器4の伝熱管9を通過する水と熱交換され、設定温度の湯となって出湯管16から出湯される。コントローラ8は、必要な燃焼量に合わせてガス供給部14の電磁弁17,17を作動させてガス入口48,48を開閉制御することで、バーナユニット21での濃淡バーナ22の燃焼本数を三段階に制御する。
【0026】
ここで、ガス分配ユニット6の第1分配部44及び第1通路部45から燃料ガスを供給する場合、第1分配部44及び第1膨出部66では、前述のように第1通路部45から狭小部52を経た燃料ガスの主流Sの一部が、本体30の後側分流突起55に当接することで、図7及び図19の実線矢印a~cのように分流される。また、主流Sの他の一部が、蓋体31の前側分流突起71及び平坦部69の下端に位置する立ち上がり部70に当接することで、図12及び図19の点線矢印a~dのように分流される。よって、燃料ガスは、主流Sの延長上となる第2ノズル領域E2に集中することなく、第1ノズル領域E1と第3ノズル領域E3にも均等に分配される。
なお、第2分配部46及び第2通路47から燃料ガスを供給する場合は、第2通路47を流れる燃料ガスの主流は第2分配部46の略中央に流れるため、分流突起がなくても燃料ガスは各ノズル42へ均等に分配される。
【0027】
(本体の後側分流突起の発明に係る効果)
このように、上記形態の給湯器1によれば、各通路部45,47の下端には、ガス入口48がそれぞれ形成される一方、本体30の第1分配部44には、第1分配部44に接続される第1通路部45の燃焼ガスの主流Sの延長上に位置する第2ノズル領域E2(延長上ノズル領域)と、第1通路部45の主流Sの延長上に位置しない第1、第3ノズル領域E1,E3(非延長上ノズル領域)とが左右方向に並設され、本体30における第1通路部45と第2ノズル領域E2との間には、第1通路部45から流れる燃料ガスの一部を第1、第3ノズル領域E1,E3側へ振り分ける後側分流突起55が設けられているので、第2ノズル領域E2へ向けて流れる燃料ガスの主流Sを第1ノズル領域E1と第3ノズル領域E3とに分流させることができ、燃料ガスが流れ込みにくい第1、第3ノズル領域E1,E3にも燃料ガスを供給することができる。よって、燃料ガスを減勢するためのガス通路を左右方向へ延びるように形成しなくても、各ノズル領域E1~E3へ燃料ガスを均一に分配供給することができ、ガス分配ユニット6の小型、軽量化を図ることができる。
【0028】
特にここでは、後側分流突起55を、正面視が左右方向に延びる横長矩形状に形成しているので、燃料ガスを第1ノズル領域E1と第3ノズル領域E3とに確実に分流させることができる。
また、後側分流突起55は、第1通路部45に近い側の端部から遠い側の端部へ行くに従って徐々に低くなるように形成されているので、第2ノズル領域E2側を同じ高さの分流突起で閉塞する場合と比較して第2ノズル領域E2付近の圧損が過度に高まることを防止できる。よって、適度の燃料ガスを後側分流突起55を乗り越えさせて第2ノズル領域E2へ導くことができる。さらに、狭小部52に近い側を高くすることで、第1ノズル領域E1へ分流した燃料ガスが後側分流突起55を越えて第2ノズル領域E2側へ流出することを抑制でき、第1ノズル領域E1への流出量を確保可能となる。
そして、蓋体31における第1通路部45と第2ノズル領域E2との間で後側分流突起55と前後方向でオーバーラップする位置には、第1通路部45からの燃料ガスの一部を第1、第3ノズル領域E1,E3側へ振り分ける前側分流突起71が設けられているので、後側分流突起55と相まってより確実に燃料ガスを分流させることができる。
【0029】
なお、後側分流突起の形状は上記形態に限らず、例えば正面視形状を長円形や楕円形としたり、縦壁部と横壁部とからなる正面視倒L字状として、横壁部を徐々に低くなるように傾斜形成したり等、適宜変更可能である。後側分流突起を複数設けてもよいし、別体の後側分流突起を本体の前面に取り付けてもよい。
また、後側分流突起に係る発明では前側分流突起をなくして後側分流突起のみで燃料ガスを振り分けることも可能である。蓋体の平坦部も省略できる。
さらに、第2分配部と第2通路部との形態によっては後側分流突起を第2分配部と第2通路部との間にも設けることができる。分配部と通路部とが3組以上設けられる場合も同様である。
【0030】
(蓋体の前側分流突起の発明に係る効果)
このように、上記形態の給湯器1によれば、各通路部45,47の下端には、ガス入口48がそれぞれ形成される一方、本体30の第1分配部44には、第1分配部44に接続される第1通路部45の燃焼ガスの主流Sの延長上に位置する第2ノズル領域E2と、第1通路部45の主流Sの延長上に位置しない第1、第3ノズル領域E1,E3とが左右方向に並設され、蓋体31における第1通路部45と第2ノズル領域E2との間の前方部位には、第1通路部45から流れる燃料ガスの一部を第1、第3ノズル領域E1,E3側へ振り分ける前側分流突起71が設けられているので、第2ノズル領域E2へ向けて流れる燃料ガスの主流Sを第1ノズル領域E1と第3ノズル領域E3とに分流させることができ、燃料ガスが流れ込みにくい第1、第3ノズル領域E1,E3にも燃料ガスを供給することができる。よって、燃料ガスを減勢するためのガス通路を左右方向へ延びるように形成しなくても各ノズル領域E1~E3へ燃料ガスを均一に分配供給することができ、ガス分配ユニット6の小型、軽量化を図ることができる。
【0031】
特にここでは、前側分流突起71が設けられる第1通路部45には、通路幅が最も狭くなる狭小部52が形成されており、前側分流突起71は、狭小部52の下流側に配置されているので、燃料ガスの主流Sをより効果的に分流させることができる。
また、第1通路部45を、第1分配部44の左端部寄りに接続して、狭小部52の下流側を、右端部側へ拡開して接続される拡開部53とし、前側分流突起71を、拡開部53における左端部寄りに配置しているので、第1通路部45が狭小部52から右方向に拡開した形状であっても、前側分流突起71によって燃料ガスを均一に供給することができる。
さらに、蓋体31を、プレス成形される金属板とし、前側分流突起71を金属板に絞り成形しているので、製造コストを安価に抑えることができる。
【0032】
なお、前側分流突起の形状も上記形態に限らず、後側分流突起のように正面視が左右方向に延びる横長矩形状となるように形成したり、倒L字状に絞り成形したりしても差し支えない。後側分流突起のように深さを左端から右側へ行くに従って徐々に浅くすることもできる。前側分流突起も別体として蓋体の内面に取り付けることも可能である。
また、前側分流突起に係る発明では後側分流突起をなくして前側分流突起のみで燃料ガスを振り分けることも可能である。蓋体の平坦部も省略できる。
【0033】
(蓋体の平坦部の発明に係る効果)
このように、上記形態の給湯器1によれば、各通路部45,47の下端には、ガス入口48がそれぞれ形成される一方、本体30の第1分配部44には、第1分配部44に接続される第1通路部45の燃焼ガスの主流Sの延長上に位置する第2ノズル領域E2と、第1通路部45の主流Sの延長上に位置しない第1、第3ノズル領域E1,E3とが左右方向に並設され、蓋体31における第1通路部45と第1、第3ノズル領域E1,E3とを覆う部位には、前方へ膨出する第1膨出部66が形成される一方、第2ノズル領域E2を覆う部位には、前方へ膨出しない平坦部69(非膨出部)が形成されているので、第2ノズル領域E2へ燃料ガスが過剰に供給されることを防止して、第1、第3ノズル領域E1,E3にも万遍なく燃料ガスを供給可能となる。
【0034】
特にここでは、第1通路部45と第2ノズル領域E2との間に対応する第1膨出部66と平坦部69との境界部分(立ち上がり部70)を、第2ノズル領域E2の下端に沿って左右方向に形成しているので、燃料ガスの流れを左右方向に導くことができる。よって、狭小部52から離れて燃料ガスが供給されにくい第3ノズル領域E3にも燃料ガスの供給を促すことができ、第3ノズル領域E3にも燃料ガスを均一に供給することが可能となる。
【0035】
なお、上記形態では、蓋体における第1ノズル領域の前側も平坦部としているが、第2ノズル領域の前側のみを平坦部としてもよい。平坦部の下端も第1分配部と第1通路部との境界部分に限らず、当該境界部分より上側又は下側に設定しても差し支えない。立ち上がり部の形状や左右方向の長さも適宜変更可能である。非膨出部としては平坦部に限らず、後方へ凹む凹部とすることもできる。
また、蓋体の平坦部に係る発明では、後側分流突起と前側分流突起とをなくして平坦部のみで燃料ガスの分配を図ることもできる。
【0036】
(本体のハーネス保持部の発明に係る効果)
このように、上記形態の給湯器1によれば、本体30の右端部の前面には、前方へ向けて突出する凸部37と、先端が右外側へ向けて突出する爪部38とを上下方向へ交互に配置してなるハーネス保持部36が形成されているので、ガス分配ユニット6の本体30を利用して、温度センサ等の電子部品のハーネス39を部品点数を増やすことなく簡単にとりまとめ可能となる。
特にここでは、爪部38の1つは、上下に位置する凸部37,37よりも本体30の左右方向中央部側へずれて配置されているので、ハーネス39の一部を凸部37よりも中央部側で直線状に引っ掛けることができる。よって、熱交換器4の出湯管16に設けられるヒータ18が上板部33の右側に近接するような場合でも、ハーネス39をヒータ18から離してヒータ18の熱による悪影響を防止することができる。
【0037】
なお、凸部と爪部との数は上記形態に限らず、適宜増減可能で、1つでなく複数の爪部を上下の凸部よりも中央部側へずらしてて配置してもよい。また、ハーネス保持部を左側の端部に設けてもよいし、両端部に設けてもよい。凸部と爪部との形状も適宜変更可能である。
【0038】
そして、各発明に共通して、給湯器自体の構成は上記形態に限らず、副熱交換器を備えた潜熱回収型であったり、排気フードが筐体から上向きに突出する排気筒を備えるものであったり、バーナユニットの各バーナが濃淡バーナでなく、導入口及び供給孔がそれぞれ1つずつ設けられるものであったりしても、上記各発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1・・給湯器、2・・筐体、3・・燃焼装置、4・・熱交換器、6・・ガス供給ユニット、7・・給気ファン、8・・コントローラ、14・・ガス供給部、18・・ヒータ、20・・インナーケース、21・・バーナユニット、22・・濃淡バーナ、24・・炎孔部、30・・本体、31・・蓋体、32・・シール体、36・・ハーネス保持部、37・・凸部、38・・爪部、39・・ハーネス、40・・ガス分配部、41・・突条、41a・・傾斜部分、42・・ノズル、43・・中突条、43a・・上側傾斜部分、44・・第1分配部、45・・第1通路部、46・・第2分配部、47・・第2通路部、48・・ガス入口、52・・狭小部、53・・拡開部、55・・後側分流突起、56,73・・左側面、57,74・・下面、58・・傾斜面、59,72・・左下角部、66・・第1膨出部、67・・第2膨出部、69・・平坦部、70・・立ち上がり部、71・・前側分流突起、E1・・第1ノズル領域、E2・・第2ノズル領域、E3・・第3ノズル領域、S・・主流。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19