(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】管腔構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20220822BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20220822BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12N5/07
(21)【出願番号】P 2021507436
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2020012567
(87)【国際公開番号】W WO2020189792
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2019048229
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】中山 功一
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特許第4517125(JP,B1)
【文献】特許第6334837(JP,B1)
【文献】特開2015-213452(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047737(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106137456(CN,A)
【文献】ARAI, Kenichi,Fabrication of scaffold-free tubular cardiac constructs using a Bio-3D printer,PLOS ONE,2018年12月07日,Vol. 13, No. 12,e0209162
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 3/00
C12N 5/07
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を有する板状の支持体の厚み方向の面に針状体が櫛状に配列された、管腔状細胞構造体製造用治具部材であって、前記厚み方向の面に隣接する前記長手方向に沿った面は、前記針状体の先端側に向かってテーパー状に形成されたものである、前記部材。
【請求項2】
前記支持体の両端側の一部の領域が、前記針状体の長さ方向に沿って突出した形状である、請求項1に記載の部材。
【請求項3】
複数の部品にモジュール化されたものである、請求項1又は2に記載の部材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の部材を、前記長手方向に沿った面を対面させて前記針状体の先端が円の中心を向くように円弧状に配列させた、管腔状細胞構造体製造用治具。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の部材を把持するための把持部材を用いて配列させた、請求項4に記載の治具。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の部材の針状体の先端領域に細胞塊を配置させ、当該細胞塊配置後の部材を、前記長手方向に沿った面を対面させて前記針状体の先端が円の中心を向くように円弧状に配列させ、前記細胞塊を培養することを特徴とする、管腔状細胞構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、櫛状に針状体を配列させた剣山状部材を用いて、細胞の管腔構造体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞凝集塊(スフェロイド)を、剣山状に配列させた針に仮固定することにより、細胞の立体構造体を製造する技術が知られている(特許文献1)。この技術によれば、細胞だけで立体化できる点が特徴であり、血管などの管腔構造体を構築することも可能である。
【0003】
血管などの細長い管腔構造体を製造するには、その構造体の目的とする長さの針を有する剣山を用意して、そこにスフェロイドを積層する必要がある。
しかしながら、使用する針は極細針であるため、針が長すぎる場合は、自立した剣山状部材を作製することが困難である。
他方、剣山の針の長さに収まる長さの管腔構造体を複数製造し、管腔構造体の先端部同士を接触させて培養することにより、構造体を連結して長い管腔構造体を得ることができる。
しかし、この方法では、つなぎ目が残る可能性があり、また技術者の熟練を要するため再現性及び量産性に課題が残る。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特許第4517125号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、技術者の熟練を要さず、つなぎ目のない長いチューブ状構造体を容易に製造する方法が望まれていた。
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、櫛状に配列させた剣山状部材にスフェロイドを設置し、この剣山状部材を円弧状に配列することにより目的の管腔状構造体を製造することに成功し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)長手方向を有する板状の支持体の厚み方向の面に針状体が櫛状に配列された、管腔状細胞構造体製造用治具部材であって、前記厚み方向の面に隣接する前記長手方向に沿った面は、前記針状体の先端側に向かってテーパー状に形成されたものである、前記部材。
(2)前記支持体の両端側の一部の領域が、前記針状体の長さ方向に沿って突出した形状である、(1)に記載の部材。
(3)複数の部品にモジュール化されたものである、(1)又は(2)に記載の部材。
(4) (1)~(3)のいずれか1項に記載の部材を、前記長手方向に沿った面を対面させて前記針状体の先端が円の中心を向くように円弧状に配列させた、管腔状細胞構造体製造用治具。
(5) (1)~(3)のいずれか1項に記載の部材を把持するための把持部材を用いて配列させた、(4)に記載の治具。
(6) (1)~(3)のいずれか1項に記載の部材の針状体の先端領域に細胞塊を配置させ、当該細胞塊配置後の部材を、前記長手方向に沿った面を対面させて前記針状体の先端が円の中心を向くように円弧状に配列させ、前記細胞塊を培養することを特徴とする、管腔状細胞構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、細長いチューブ状の細胞構造体を容易に製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】管腔状細胞構造体製造用の治具部材を示す図である。
【
図2】管腔状細胞構造体製造用の治具部材を示す図である。
【
図3】本発明の治具部材のテーパー角を示す図である。
【
図4】管腔状細胞構造体製造用の治具部材の針状体の先端にスフェロイドを1列に配列させた図である。
【
図5】針状体の先端にスフェロイドを1列に配列させた管腔状細胞構造体製造用の治具部材を、針状体の先端を円の中心に向けて配列させたことを示す図である。
【
図6】針状体の先端を円の中心に向けて配列させたことを示す図である。
【
図7】本発明の管腔状細胞構造体製造用治具を示す図である。
【
図8】管腔状細胞構造体製造用治具部材を機械化によりセットすることを示す図である。
【
図9】管腔状細胞構造体製造用のモジュール式治具部材を示す図である。
【
図10】実施例により作製した管腔状細胞構造体製造用治具を示す図である。
【
図11】実施例により作製した管腔状細胞構造体製造用治具を示す図である。
【
図12】管腔状細胞構造体製造用の治具部材の針状体の先端にスフェロイドを1列に配列させた図である。
【
図13】
図12に示す治具部材を円の中心に向けて配列させた図である。
【
図14】本発明の管腔状細胞構造体製造用治具を用いて作製した管腔状細胞構造体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、長手方向を有する板状の支持体の厚み方向の面に針状体が櫛状に配列された、管腔状細胞構造体製造用治具部材であって、前記厚み方向の面に隣接する前記長手方向に沿った面は、前記針状体の先端に向かってテーパー状に形成されたものである、前記部材に関する。
【0010】
図1は、本発明の管腔状細胞構造体製造用治具部材10の斜視図である。
図1において、管腔状細胞構造体製造用治具部材(以下「部材」という)10は、長手方向を有する板状の支持体101の厚み方向の面105に針状体102が櫛状に配列されている。そして、部材の厚み方向の面105に隣接する、長手方向に沿った面103は、針状体102の先端側に向かってテーパー状に形成されている。
また、本発明において、「管腔状細胞構造体」とは、空洞を有する略円柱状の細胞製組織(ストロー又はマカロニ形状の組織)であり、細胞が凝集してできた細胞塊(スフェロイド)同士が融合することにより形成されたものである。このような「管腔状細胞構造体」は、空洞を有する限り特に限定されるものではなく、例えば血管、消化管、気管、末梢神経、尿管、尿道など管腔臓器に使用される。
【0011】
本発明において、前記支持体101の両端側の一部の領域は針状体102を設けない領域を有する端部部材104であり、後述する治具の把持部材が把持する領域を形成する。端部部材104は、針状体102の長さ方向に沿って突出した形状の突出部を設けることができるが(
図1A)、突出部を設けなくてもよい(
図1B)。
また、針状体102の素材として、ステンレス製、ポリプロピレン製、ナイロン製等のものを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
図2は、本発明の部材10の正面図(A)及び部材10の前方(X
1方向)からy
1-y
2の面で見た断面図(B)である。
図2Bに示すように、長手方向に沿った面103は、針状体102の先端側に向かってテーパー状に形成されている。
本発明において、部材10におけるテーパー形状のテーパー角は特に限定されることはない。
【0013】
図3は、部材10におけるテーパー形状のテーパー角を示す模式図である。
図3Aにおいて、支持体10の底面の幅をD、上面の幅をd
2、端部部材104の突出部の幅をd
1とすると、テーパー比は(D-d
1)/L
1又は(D-d
2)/L
2で表すことができる。
(D-d
1)/L
1は、
図1又は
図2における端部部材104の突出部の形状を基準として、部材10の前方(
図2におけるx
1方向)から見たときのテーパー比を表し、(D-d
2)/L
2は、支持体101の形状を基準としてy
1-y
2方向で部材10を切断した断面(
図2B)を部材10の前方(x
1方向)から見たときのテーパー比を表す。
【0014】
図3Bにおいて、勾配θは、次式:
Tanθ°=((D-d
1)/2)/L
1
で表すことができるため、勾配は、次式:
【数1】
となる(L
2及びd
2を用いた場合も同様の式で表すことができる)。
【0015】
従って、本発明のテーパー角をαとすると、
α=2θ
となる。
テーパー角αは、部材10の大きさや針状体102の長さに基づいて任意に設定することができる。
【0016】
図3Cにおいて、L
3は、部材10の底部から針状体102の先端までの距離、L
4は針状体102の先端からテーパー角αの中心点Pまでの距離、L
5は、部材10の底部から中心点Pまでの距離を表す。この場合、本発明の部材は、針状体102の先端が中心点Pを向くように、部材10を、Pを中心として半径L
5の円を描くように円弧状に配列することができる(
図5B,詳細は後述する)。従って、テーパー角αを例えば10°とすると、部材10は36個配列できることとなる。
【0017】
図4は、本発明の部材10の針状体102の先端側領域に、細胞が凝集して形成した細胞塊(スフェロイド)401を部材10の長手方向に沿って配置させた態様を示す図である。細胞塊401は、部材10を
図5Bのように円弧状に配列させたときに、細胞塊が1層になるように、すなわち管腔状細胞構造体の表層が1層で構成されるように、1つの針状体あたり1個を配置させることも、複数層になるように複数個を配置させることもできる。
【0018】
ここで、細胞塊401を針状体102に「配置させる」とは、細胞塊401同士が融合できるように細胞塊401を針状体102に接触させることを意味し、細胞塊401を針状体102に突き刺す態様でも、針状体102同士の間に配置して細胞塊401を自然凝集させる態様でもよい。針状体と針状体との間隔が細胞塊401の直径と略同等又は直径よりも狭ければ、細胞塊401を針状体102に刺さなくても、例えば針状体401を水平にして(すなわち部材10を水平にして)その上に細胞塊401を乗せることにより、細胞塊401が自然凝集して一本の糸のように一列の線状の構造体を形成することができる。
なお、説明の便宜のため、
図4は、細胞塊401を針状体102に突き刺した態様を示す。
【0019】
細胞塊401を針状体102の長手方向に配置する個数は、管腔状細胞構造体の厚さとして反映されるため、目的とする管腔状細胞構造体に応じて、細胞凝集体401を配置する個数を適宜決定することができる。また、針状体401の一端から他端までの距離は、管腔状細胞構造体の長さとして反映される。従って、目的とする管腔状細胞構造体の長さに応じて、細胞塊401を配置する針状体の本数を適宜決定することができる。針状体401の一端から他端までの距離は、特に限定されるものではなく、例えば0.5cm~30cmであり、0.5cm、1cm、2cm、3cm、5cm、10cm、15cm、20cmのように設定することができる。また、一の針状体とその隣の針状体との距離も限定されるものではなく、0.1mm~2mmとすることができる。
【0020】
図5は、
図4に示す、細胞塊401を針状体102の先端に刺した部材10を、針の先端を円(多角形であるが、円とみなす。以下同様。)の中心点(
図3のP)に向けて配列したことを示す図であり、
図6は、部材10を配列させた後の針状体102の先端部拡大図である(細胞塊401は一部表示)。
図5Aは、針状体102に細胞塊401を1層に刺したことを示し、A
1は一部拡大図である。なお、
図5においても、細胞塊401を針状体102に刺した態様を示す。ここで、針状体102の先端側領域において、細胞塊401を刺す位置は、針状体102の先端が細胞塊401を貫通させる領域であればよく、細胞塊401の端と針状体102の先端とが同じ位置である必要はない。例えば、
図5A又はA
1に示すように、針状体102の先端から少し奥の位置に細胞塊401を刺すことができる。
【0021】
図5Bは、36枚の部材10を、その長手方向に沿った面103を対面させて針状体102の先端が円の中心を向くように円弧状に配列させた管腔状細胞構造体製造用治具20を示す。すなわち、管腔状細胞構造体製造用治具20は、
図3において針の先端を中心点Pに向けて円の半径がL
5となるように配列させた形態となっている。
図5Bに示すように、部材10の長手方向に沿った面103を対面させて前記針状体の先端が円の中心を向くように円弧状に配列させると、例えば一の部材10aに刺さった細胞塊は、隣りの部材10bに刺さった細胞塊と融合し、全体でリング状となる。そして、細胞塊401を刺した針状体102の本数分の長さが、管腔状構造体の長さとなる(
図4、
図5A等)。
【0022】
また、
図3において、中心点Pから針状体102の先端までの距離L
4は、針状体102の先端を結んで描かれる円の半径となる。従って、細胞塊401から前記中心点Pまでの距離が管腔状構造体の内腔部の半径となる。例えば、
図6の右パネルに示すように、細胞塊401を針状体102の先端から少し差し込むと(図では、針の尖った部分を除く針状体本体から0.3mm差し込む)、作製される管腔状細胞構造体の内腔の直径は、(
図3Cに示すL
4と差し込んだ距離の和)×2で示される。
図6左パネルは、細胞塊の中心を結んだ線を円周としたときの直径C
1が6mmであることを示している。
細胞塊同士が融合した後は、部材10を引き抜くことで、所定の長さ及び内腔径を有する管腔状細胞構造体を得ることができる。
【0023】
図7は、本発明の部材10を配列させた管腔状細胞構造体製造用治具20(以下「治具20」という。)を表す。
本発明の一態様において、本発明の部材10を配列させるために、部材10の両端側領域を把持するための把持部材30を用いることができる。
図7Aは、部材10をスロットインで嵌め込むためのフラップ状の突出部301を示す。突出部301は、歯車状で弾力性のある部材(例えばポリエチレン製、ポリスチレン製等)であり、根元側と入口側が少し厚く、中央部が薄い形状となっている。把持部材30の一の突出部とその隣りの突出部との間の空間に、部材10の両端の端部部材104を嵌め込むと(
図7B)、部材10が把持部材30により固定される。把持部材30に1枚の部材10をスライドしてセットした後の図を
図7Bに示す。部材10を円弧状に全て嵌め込むと(つまり、
図3のテーパー角αが360°になるまで部材10を嵌め込むと)、全体として円筒形の管腔状細胞構造体製造用治具20が得られる(
図7C)。
【0024】
本発明においては、把持部材301に、細胞塊を刺した部材10を嵌め込むために自動化することができる。
例えば、
図8は、自動化ロボットのアーム40に部材10を把持させて、把持部材301に嵌め込み、又は抜去する作業を行わせることを示した図である。
【0025】
また本発明の一つの態様において、部材10は、複数の部品に要素分割し、モジュール式の部材とすることができる。
図9は、部材10を4つの部品に分割したモジュール式部材の態様を示す。部材10において、針状体102を配置させた部材と、針状体を配置させない両端側の端部部材104を部品とすることで、任意の長さの部材10とすることができる。端部部材104a
1及び104a
2は、針の長手方向に向かって突出部を有する態様であり、端部部材104b
1及び104b
2は、突出部を有さない態様である。端部部材104には、連結する方向(部材10の長手方向)に凸部107と凹部106を設け、針状体102が配置され部品となった部材101a、101bにも凸部107と凹部106を設け、それぞれ凹部と凸部とが篏合するように成形することができる。これにより、部品となった部材101a、部材101b、部材101c(図示せず)、・・・のように複数個の部材を篏合連結させて、部材10の長さを任意に調整することができる。その結果、作製される管腔状細胞構造体の長さが適宜調整される。なお、凸部と凹部の形状は部材同士を連結できる限り特に限定されるものではなく、方形でも円形でもよい。
【0026】
本発明においては、部材10の針状体102の先端領域に細胞塊401を配置させた後(
図4)、
図5に示すように細胞塊401を配置した後の部材10を、長手方向に沿った面103を対面させて前記針状体102の先端が円の中心を向くように円弧状に配列させ、細胞塊401を培養することにより、管腔状細胞構造体を製造することができる。
【0027】
本発明において使用される細胞の種類は特に限定されるものではなく、細胞塊(スフェロイド)を形成する任意の細胞を使用することができる。スフェロイドを形成する細胞としては、幹細胞(ES細胞、臍帯血由来細胞、未分化間葉系幹細胞、成体間葉系幹細胞等)などの未分化細胞又はその分化型細胞が挙げられる。これらの細胞が由来する組織は、例えば、関節軟骨、骨、脂肪組織、靱帯、腱、歯、耳介、鼻、肝臓、すい臓、血管、神経、心臓などが挙げられ、中でも肝臓細胞、心筋細胞などが好ましい。また、スフェロイドは、必ずしも単一の種類の細胞の凝集体として形成される必要はなく、スフェロイドが形成される限り、複数種類の細胞種から形成されてもよい。
また、細胞構造体を形成するまでの培養期間は、一般的培養条件(例えば37℃、5%CO2雰囲気下)で概ね3日~21日である。
このようにして形成された細胞構造体は、細胞塊同士が融合して継ぎ目のないシームレス状の管腔状形態をとることができる。
【0028】
実施例
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
【0029】
図10、
図11は、本発明の管腔状細胞構造体製造用治具40の試作例である。
長さ5cmのステンレス針を0.4ミリの等間隔で保持できるようポリカーボネートなどの樹脂をCNCで微細加工した。この試作例では36個で円を保持できるよう加工した。
[実施例2]
実施例1で作製した治具を用いて、針状体にスフェロイドを配置し、これを36枚配列させて管腔状細胞構造体を製造した。スフェロイドは市販の皮膚線維芽細胞を10日培養することにより作製し、得られたスフェロイドを上記治具に配置した。1本の針状体あたりスフェロイドを100個用いた。この治具を36枚配列させて、37℃、5%CO
2雰囲気下で7日培養することにより、針状体に配置したスフェロイド同士を融合させた(
図12、13)。
図12は、管腔状細胞構造体製造用の治具部材の針状体の先端にスフェロイドを1列に配置させた図であり、
図13は、
図12に示す治具部材を円の中心に向けて配列させたときの中心部である。スフェロイド同士が融合して円柱状の構造体を形成していた。
治具部材を除去し、最終的に得られた管腔状細胞構造体を
図14に示す。
図14に示すように、作製された管腔状細胞構造体は、部材101の長手方向に針状体を設置したときの一端の針から他端の針までの距離分の長さを有しており、しかも、構造体はつなぎ目のない形態となっていた。
【符号の説明】
【0030】
10:管腔状細胞構造体製造用治具部材、20:管腔状細胞構造体製造用治具、30:把持部材、40:アーム
101:支持体、102:針状体、103:長手方向に沿った面、104:端部部材、105:厚み方向の面
301:突出部、401:細胞塊