IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大同化学工業株式会社の特許一覧

特許7126735未脱脂焼鈍鋼板用水溶性調質圧延液組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】未脱脂焼鈍鋼板用水溶性調質圧延液組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 173/02 20060101AFI20220822BHJP
   C10M 133/44 20060101ALN20220822BHJP
   C10M 133/46 20060101ALN20220822BHJP
   C10M 133/48 20060101ALN20220822BHJP
   C10M 135/36 20060101ALN20220822BHJP
   C10M 133/06 20060101ALN20220822BHJP
   C10M 133/12 20060101ALN20220822BHJP
   C10M 133/16 20060101ALN20220822BHJP
   C10M 133/30 20060101ALN20220822BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220822BHJP
   C10N 40/24 20060101ALN20220822BHJP
【FI】
C10M173/02
C10M133/44
C10M133/46
C10M133/48
C10M135/36
C10M133/06
C10M133/12
C10M133/16
C10M133/30
C10N30:00 Z
C10N40:24 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022021254
(22)【出願日】2022-02-15
【審査請求日】2022-04-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207399
【氏名又は名称】大同化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷 充
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 克昭
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6087255(JP,B2)
【文献】特許第5994075(JP,B1)
【文献】特開昭58-052394(JP,A)
【文献】特開2016-094526(JP,A)
【文献】特開2008-190029(JP,A)
【文献】特開昭58-104999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸、アルカノールアミン及び水を主成分として含む水溶性調質圧延液組成に(A)含窒素複素環式化合物と(B)両性界面活性剤を併用含有する未脱脂焼鈍鋼板用水溶性調質圧延液組成物であって、
前記(A)成分は、窒素が1~3原子を含む複素環式化合物の1種類又は2種類以上で、その質量配合量は組成物全量基準で0.5wt%(質量%)から5.0wt%であり、前記(B)成分は、両性界面活性剤の1種類又は2種類以上で、その質量配合量は、組成物全量基準で0.5wt%から5.0wt%であることを特徴とする、未脱脂焼鈍鋼板用水溶性調質圧延液組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、インドール、イソオキサゾール、2-エチル-2-オキサゾリン、2-エチル-2-オキサゾリン、2-ベンソチアゾールチオール、ピラゾール、ベンズインダゾール、4メチルベンゾイミダゾール、4メチルイミダゾール、2メチルイミダゾール、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、ジメチルベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、エチルメチルベンゾトリアゾール、ジエチルベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール、3-メルカプト-1、2、4トリアゾールからなる群から選択される1種類又は2種類以上である請求項1に記載の未脱脂焼鈍鋼板用水溶性調質圧延液組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、ラウリルアミノプロピオン酸、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、β-ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム、コカミドプロピオン酸ナトリウム、ラウリルイミノジプロピオン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルべタイン、ラウリン酸アミドプロピルべタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸べタイン、ココアンホジ酢酸ナトリウム、ラウリルアミノオオキシドからなる群から選択される1種類又は2種類以上である請求項1又は2に記載の未脱脂焼鈍鋼板用水溶性調質圧延液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未脱脂焼鈍鋼板の調質圧延後において、極微細な未脱脂焼鈍残渣(単に焼鈍残渣とも記す)の局部的な濃化偏在による変色模様現象が発生し難いことを特徴とする未脱脂焼鈍鋼板用水溶性調質圧延液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板の製造における冷間圧延後の工程としては、大別して2つの工程方法が実施されている。一つ目は、一般的な工程として、冷間圧延後、鋼板残存圧延油および鉄粉等をアルカリ電解脱脂洗浄等の脱脂工程により除去してから焼鈍され、その後調質圧延が行われる工程がある。
【0003】
二つ目は、やや特殊な工程として、設備能力不足、或いは省力化等のため、冷間圧延後のアルカリ電解脱脂洗浄等の脱脂工程を省略して焼鈍され、その後調質圧延が行われる工程がある。この工程で冷間圧延後、脱脂工程を省略して焼鈍された鋼板は、未脱脂焼鈍鋼板(材)と称されている。その他にミルクリ-ン鋼板(材)及び焼鈍直送鋼板(材)などとも称されている。
【0004】
上記の焼鈍工程であるが、冷間圧延後の鋼鈑は、結晶粒が変形し、転位がからみあい、延伸しながら内部にひずみが蓄積され、そのままでは材料が硬くて脆いため、焼鈍にて、内部歪を除去し、結晶粒度を調整してからみあった転位を消滅させ、鋼板に必要な機械的、物理的性質を与えるための工程である。焼鈍工程には、連続焼鈍とバッチ(箱)焼鈍の2種類があり、一般冷延鋼板では連続焼鈍が、未脱脂焼鈍鋼板ではバッチ焼鈍が行われている。バッチ(箱)焼鈍は、コイルごと焼鈍が行われ、雰囲気ガスは水素と窒素の混合ガスを使用し、約700℃で20~30時間加熱、その後約2~3日間かけて徐冷するため長時間を要する。
【0005】
二つ目の工程では圧延油が脱脂されていないので、焼鈍により圧延油成分は熱分解される。圧延油成分の主成分は鉱物油(炭化水素化合物)であることから、完全に分解されれば、鉱物油中の炭素(C)と雰囲気中の水素(H2)が反応しCH4等の炭化水素ガス形態となり、鋼板上から鉱物油が除去される。
【0006】
しかし、不完全分解(完全に分解されない)の場合、鉱物油がガス形態にならず、鋼板上にススなどの炭化物形態として残ってしまい、この残渣のことを焼鈍残渣と称している。
【0007】
一つ目の工程においては、良質な鋼板が製造できるが、二つ目の工程においては、鋼板の清浄性が劣り、鋼板の表面や特にダル鋼板の場合、ダル目の凹の部分の所謂、ダル目深部には残留した圧延油の不完全分解により未脱脂焼鈍残渣が生じる。焼鈍残渣が残存した未脱脂焼鈍鋼板を調質圧延した場合、鋼板表面に付着している焼鈍残渣は調質圧延時に調質圧延液により洗い流されるが、ダル目深部に固着した大半の焼鈍残渣は鋼板が塑性変形を受けることにより離脱浮上しミル出側で鋼板表面上に残存したままコイル状に巻き取られる。コイル状に巻き取られた鋼板上には、調質圧延液の主要成分である有機酸アミン塩等が吸着(付着)するが、その他に調質圧延液中の水分及びフリーアミンが残存し、時間経過とともに揮発性のある水分及び高蒸気圧アミンは蒸発・揮散する。
【0008】
残存した水溶性調質圧延液中の水分及びフリーアミンの蒸発揮散に伴い、鋼板上では極微細な焼鈍残渣が泳動濃化により偏在するため、残存水分量によっては局部電池が形成されやすく、鉄イオンが溶出する。ここで、泳動濃化とは、焼鈍残渣は極微細な粒子状物質であり、その粒子が移動(泳動)し、凝集(濃化)することをいう。
【0009】
その溶出した鉄イオンは、コイル間の間隙に含まれる酸素及び水溶性調質圧延液中の残存水分と反応し酸化膜が形成されることとなるが、酸素と水分は限られた量しかないため、酸化膜は、安定な酸化第二鉄(赤錆)まで進行せず、その前段階で進行が止まるものもあり、温湿度や間隙に存在する酸素量や水分量により、様々な形態や色相(黒~青~黄~褐色等)の酸化膜、いわゆる低級酸化膜を形成し、変色模様として出現する。変色模様は、通常、調質圧延後から約半日~1日程度後に出現することが多い。
【0010】
上述した未脱脂焼鈍鋼板に使用できる調質圧延液として使用可能と言及した先行技術文献として、特許文献1、特許文献2があり、また、水溶性調質圧延液組成物として両性界面活性剤に言及した先行技術文献としては、特許文献3が、開示されている。
【0011】
上述した先行技術文献の内、特許文献1、2は未脱脂焼鈍鋼板にも使用できる調質圧延液の耐ビルドアップ現象に関する先行技術であるが、未脱脂焼鈍鋼板で問題となっている変色模様に関する記述が全くない。また特許文献3は調質圧延液組成物に両性界面活性剤を含む先行技術であり、ステインについての記述があるが、ステインは、高温多湿のスタック条件下で発生する錆やシミの問題に対し、未脱脂焼鈍鋼板特有の焼鈍残渣が存在することにより発生する変色模様に関する記述は全くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第5994075号
【文献】特許第6087255号
【文献】特開2016-94526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述した微細な焼鈍残渣による変色模様現象を解決し得る未脱脂焼鈍鋼板用調質圧延液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者らは前述した課題を解決するために、従来技術の抱える問題点を解決する手段として鋭意研究を重ねた結果、一般的な適宜公知の水溶性調質圧延液組成に(A)含窒素複素環式化合物と(B)両性界面活性剤を併用含有することにより、上記問題を解決できることを見出し、以下に示す本発明を完成するに至った。
【0015】
1.(A)含窒素複素環式化合物と(B)両性界面活性剤を含有する未脱脂焼鈍鋼板用水溶性調質圧延液組成物であって、
前記(A)成分は、窒素が1~3原子を含む複素環式化合物の1種類又は2種類以上で、その質量配合量は組成物全量基準で0.5wt%(質量%)から5.0wt%であり、前記(B)成分は、両性界面活性剤の1種類又は2種類以上で、その質量配合量は、組成物全量基準で0.5wt%から5.0wt%であることを特徴とする、未脱脂焼鈍鋼板用水溶性調質圧延液組成物。
2.前記(A)成分が、インドール、イソオキサゾール、2-エチル-2-オキサゾリン、2-エチル-2-オキサゾリン、2-ベンソチアゾールチオール、ピラゾール、ベンズインダゾール、4メチルベンゾイミダゾール、4メチルイミダゾール、2メチルイミダゾール、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、ジメチルベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、エチルメチルベンゾトリアゾール、ジエチルベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール、3-メルカプト-1、2、4トリアゾールからなる群から選択される1種類又は2種類以上である項1に記載の未脱脂焼鈍鋼板用水溶性調質圧延液組成物。
3.前記(B)成分が、ラウリルアミノプロピオン酸、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、β-ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム、コカミドプロピオン酸ナトリウム、ラウリルイミノジプロピオン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルべタイン、ラウリン酸アミドプロピルべタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸べタイン、ココアンホジ酢酸ナトリウム、ラウリルアミノオオキシドからなる群から選択される1種類又は2種類以上である項1又は2に記載の未脱脂焼鈍鋼板用水溶性調質圧延液組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、未脱脂焼鈍鋼板の調質圧延後において、極微細な未脱脂焼鈍残渣の局部的な濃化偏在による変色模様現象が発生し難いという効果がある。
【0017】
本発明の(A)含窒素複素環式化合物と(B)両性界面活性剤を添加した水溶性調質圧延液が、変色模様を抑制するメカニズムについては、明確ではないが、以下のように推定される。
【0018】
変色模様現象の抑制は、(A)含窒素複素環式化合物と(B)両性界面活性剤を併用することで、ダル鋼板のダル目深部から離脱した微細な焼鈍残渣を3次元的な構造の吸着被膜により分散・固定化し、水やフリーアミンの蒸発揮散に伴い起こる泳動濃化を抑制するためと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の未脱脂焼鈍鋼板用に用いる水溶性調質圧延液は、一般的な適宜公知の水溶性調質圧延液組成に(A)含窒素複素環式化合物と(B)両性界面活性剤を併用含有する。
【0020】
一般的な公知の水溶性調質圧延液成分構成としては、数種類の有機酸(脂肪族脂肪酸及び芳香族脂肪酸や二塩基酸等/以下、単に脂肪酸或いはカルボン酸とも記す)とアルカノールアミン及び水を主成分とし、少量の界面活性剤を含む。また、製鉄所による工程や設備構成によっては、キレート剤や無機アルカリや水溶性ポリマー及び微量の殺菌防腐剤や消泡剤を含むことがある。
【0021】
水溶性の調質圧延液に使用される有機酸は、防錆性、溶解性、潤滑性、臭気などの観点から炭素数5~21前後のもので、主に炭素数5~12前後のものが多用されている。しかし、炭素数5以上の有機酸は、そのままでは水に殆ど溶解しないため、主要成分であるアルカノールアミンで中和して有機酸アミン塩の形態で水溶液化し、水溶性調質圧延液のpHを中性以上に保持するため、フリーのアルカノールアミンを過剰に含む。以上の事から、基本的な構成の水溶性調質圧延液は、数種類の有機酸アミン塩とフリーのアルカノールアミンが水に溶解している事になり、一般的な成分構成割合から有機酸アミン塩が溶解成分の大部分を占める事になる。
【0022】
水溶性調質圧延液を構成する主成分の有機酸及びアルカノールアミンとしては下記のものを例示することが出来る。
【0023】
脂肪族飽和および不飽和モノカルボン酸としては特に限定されないが、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2-ブチルオクタン酸、ノナン酸、イソノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキン酸、イソアラキン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、リノール酸などが挙げられる。脂肪族飽和および不飽和ジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、フマル酸、メサコン酸、イタコン酸、C21二塩基脂肪酸などが挙げられる。その他の脂肪族系カルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、クエン酸などが挙げられる。
【0024】
芳香族モノおよび芳香族ポリカルボン酸としては特に限定されないが、安息香酸、o‐、m‐及びp‐メチル安息香酸、o‐、m‐及びp‐ニトロ安息香酸、p‐n‐、p‐sec‐及びp‐tert‐ブチル安息香酸、o‐、m‐及びp‐ベンゼンジカルボン酸、2-ベンゾチアゾリルチオプロピオン酸、2-ベンゾチアゾリルチオ酢酸などが挙げられる。
【0025】
アルカノールアミンとしては特に限定されないが、比較的蒸気圧の高いモノイソプロパノールアミン〔=1‐アミノ‐2‐プロパノール〕、モノエタノールアミン〔=2‐アミノエタノール〕、ジメチルアミノエタノール〔=N,N-ジメチル-2‐アミノエタノール〕、N-メチルエタノールアミン、2‐アミノ‐2‐メチルプロパノールなどや蒸気圧が上記のものより低いジイソプロパノールアミン〔=1,1’‐イミノジ‐2‐プロパノール〕、トリイソプロパノールアミン〔=トリス(2-ヒドロキシプロピル)アミン〕、ジエタノールアミン〔=2,2’‐イミノジエタノール〕、トリエタノールアミンなどが単独又は併用される。
【0026】
その他として特に限定されないが、キレート剤としてはニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸及びそのナトリウム塩やアンモニウム塩などを挙げる事ができる。無機アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、殺菌防腐剤としては、トリアジン系やチアゾリン系の殺菌防腐剤、水溶性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテル類、消泡剤としてはシリコーン系消泡剤など、界面活性剤としてはノニオン系界面活性剤を挙げる事ができる。
【0027】
本発明を構成する、(A)含窒素複素環式化合物としては、窒素が1~3原子を含む複素環式化合物で、窒素が1原子を含む複素環式化合物は、インドール、イソオキサゾール、2-エチル-2-オキサゾリン、2-エチル-2-オキサゾリンなど、窒素が2原子を含む複素環式化合物では、2-ベンソチアゾールチオール、ピラゾール、ベンズインダゾール、4メチルベンゾイミダゾール、4メチルイミダゾール、2メチルイミダゾール、イミダゾールなど、窒素が3原子を含む複素環式化合物では、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、ジメチルベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、エチルメチルベンゾトリアゾール、ジエチルベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール、3-メルカプト-1、2、4トリアゾールなどが挙げられ、これらからなる群から選択される1種類又は2種類以上を選んで0.5wt%(質量%)から5.0wt%添加する。組成物全量基準で0.5%wt以下の添加の場合は、微細な焼鈍残渣の分散・固定化効果が不充分であり、一方5.0wt%以上添加しても効果が向上しないので、経済的に劣る。
【0028】
本発明を構成する、(B)両性界面活性剤としては、アミノ酸型両面界面活性剤では、ラウリルアミノプロピオン酸、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、β-ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウムなど、アラニン型両面界面活性剤では、コカミドプロピオン酸ナトリウム、ラウリルイミノジプロピオン酸ナトリウムなど、ベタイン型両面界面活性剤では、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルべタイン、ラウリン酸アミドプロピルべタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸べタインなど、イミダゾリン型両面界面活性剤では、ココアンホジ酢酸ナトリウムなど、アミンオキシド型両面界面活性剤では、ラウリルアミノオオキシドなどが挙げられ、これらの群から選択される1種又は2種類以上を選んで0.5wt%から5.0wt%添加する。0.5wt%以下の添加の場合は、微細な焼鈍残渣の分散・固定化効果が不充分であり、一方5.0wt%以上添加しても効果が向上しないので、経済的に劣る。
【0029】
本発明では変色模様を実験室で再現する手法として、未脱脂焼鈍鋼板から採取した焼鈍残渣を用いることで、変色模様の再現が可能となる。
【実施例
【0030】
表1に実施例1~6と比較例1~6の水溶性調質圧延液の配合組成(wt%)と変色模様評価試験結果を示す。なお、変色模様評価試験方法と判定は下記に従って行なった。
【0031】
JIS G3141に規定するSPCC-SD鋼板を脱脂後、実施例1~6と比較例1~
6液をイオン交換水で7vo%に希釈した液に浸漬し、液切りした試験片(10cm×10cm×0.8cm)を2枚作製。実施例1~6と比較例1~6液をイオン交換水で7vo%に希釈した液に未脱脂焼鈍鋼板から採取した焼鈍残渣を7.0wt%添加し充分に攪拌した試験液を調製。一枚の試験片に試験液を50μl滴下し、もう一枚の試験片を重ね、約25℃前後の室温に1日間静置する。静置後、重ねた鋼板を開放し、鋼板表面を下記判定基準に従って評価した。
×:明らかに変色模様の発生が認められる場合
△:変色模様が若干認められる場合
○:変色模様が認められない場合
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
表1に示す様に、比較例1~6に比べ実施例1~6を使用する事により変色模様現象が抑制され、結果的に品質欠陥を減少できる事が確認された。
【0035】
以上、現時点において実践的であり、且つ有効と考えられる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本特許出願書中に開示した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および出願書全体から読取れる発明の要旨や思考に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更をともなう水溶性調質圧延液もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解され得るものでなければならない。
【0036】
尚、本発明は、一般的な工程である、冷間圧延後にアルカリ電解脱脂洗浄等を行なった調質圧延時にも使用可能である。
【要約】
【課題】
未脱脂焼鈍鋼板の調質圧延後において、極微細な未脱脂焼鈍残渣(単に焼鈍残渣とも記す)の泳動濃化による変色模様現象が発生し難いことを特徴とする未脱脂焼鈍鋼板用水溶性調質圧延液を提供すること。
【解決手段】
未脱脂焼鈍鋼板用に用いる水溶性調質圧延液にあっては、一般的な適宜公知の水溶性調質圧延液組成に(A)窒素が1~3原子を含む含窒素複素環式化合物の1種類又は2種類以上と(B)両性界面活性剤の1種類又は2種類以上を併用含有し、その質量配合量は(A)成分及び(B)成分とも組成物全量基準で0.5~5.0wt%であることを特徴とすること。
【選択図】 なし