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特許7126744新規のウメクリジニウム合成中間体の製法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】新規のウメクリジニウム合成中間体の製法
(51)【国際特許分類】
   C07D 453/02 20060101AFI20220822BHJP
   A61K 31/439 20060101ALN20220822BHJP
   A61P 11/00 20060101ALN20220822BHJP
【FI】
C07D453/02 CSP
A61K31/439
A61P11/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019566363
(86)(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 IB2018053767
(87)【国際公開番号】W WO2018220501
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】102017000058796
(32)【優先日】2017-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513275425
【氏名又は名称】オロン ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】OLON SPA
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジオ ベルトリーニ
(72)【発明者】
【氏名】コラード コッリ
(72)【発明者】
【氏名】フィリッポ ニシク
(72)【発明者】
【氏名】マーラ サダ
(72)【発明者】
【氏名】ステファニア ベルトゥオーロ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァーノ ロンツォーニ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ マヨラナ
(72)【発明者】
【氏名】ロマーノ ディ ファビオ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-524832(JP,A)
【文献】特表2007-534769(JP,A)
【文献】米国特許第05626798(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 453/02
A61K 31/439
A61P 11/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(I)
の化合物及びその塩の1つを製造する方法であって、該方法は、式(II)
【化2】
(II)
の化合物を、好適な溶媒中、フェニルリチウム及び臭化フェニルマグネシウムから選ばれる化合物と反応させ、任意に、得られた化合物を単離し、及び任意に、該化合物をその塩の1つに転化させることを含んでなる製法。
【請求項2】
溶媒が非プロトン性溶媒から選ばれるものであることを特徴とする請求項1に記載の製法。
【請求項3】
フェニルリチウムを、式(II)の化合物の1モル当たり1.2~1.3モルの割合で使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の製法。
【請求項4】
請求項1において定義される式(I)の化合物を製造する方法であって、該方法は、
式(III)
【化3】
(III)
(式中、Xは、ハロゲン、トシル、メシル、トリフラートから選ばれる脱離基である)の化合物を、好適な溶媒中で、強塩基と反応させて、請求項1において定義される式(II)の化合物を生成し、及び続いて、
式(II)の化合物を,好適な溶媒中、フェニルリチウム及び臭化フェニルマグネシウムから選ばれる化合物と反応させて、式(I)の化合物を生成する
ことを含んでなる製法。
【請求項5】
請求項1において定義される式(I)及び(II)の化合物の製法であって、該製法は、
キヌクリジンのワインレブアミドを、フェニルリチウム又は臭化フェニルマグネシウムと反応させ、このようにして、式(II)の化合物を得ること、及び任意に
式(II)の化合物を、好適な溶媒中、フェニルリチウム又は臭化フェニルマグネシウムと反応させて、式(I)の化合物を得ること
を含んでなる製法。
【請求項6】
請求項1において定義される式(II)
【化4】
(II)
の化合物又はその塩の1つ。
【請求項7】
請求項1において定義される式(II)の化合物及び/又は請求項4において定義される式(III)の化合物の、請求項1において定義される式(I)の化合物又はその塩の1つ及び/又はウメクリジニウムの製造における中間体としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規かつ多用途の合成中間体の製法及びウメクリジニウムの製造における当該中間体の使用に関する。本発明は、ウメクリジニウムの製造において繰り返し発生する微量不純物の検出を許容するいくつかの標準物質及びそれらの製法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ウメクリジニウム、特に、ウメクリジニウム臭化物は、慢性閉塞性肺疾患に罹った患者の治療に使用される化合物である。
【0003】
国際公開第2005/104745号及び国際公開第2014/027045号には、ウメクリジニウムの合成における重要な中間体の製法が記載されており、下記の反応:
【化1】
(ここで、Halはハロゲン原子である)、及び、続く、式(b)の化合物に対して過剰量のフェニルリチウムによる)前記化合物(b)の処理が提供されている。
【0004】
キヌクリジン環を生成する環化は、一般に、アルカリ金属、例えば、リチウムのビス(トリメチルシリル)アミド、又はアルカリ金属のジイソプロピルアミドの存在下で行われる。これらの塩基は、非常に高価であることに加えて、高度に不安定であり、その場で調製されなければならず、或は、非常に希釈された有機溶媒溶液として購入されなければならない。
【0005】
さらに、続く、2つのフェニルの同時導入をもたらす反応(慣習的にフェニルリチウムにより行われる)は、明らかなように、フェニルリチウム2当量以上を使用する。発明者らは、さらに、市販のフェニルリチウム中には、ビフェニルリチウムタイプの不純物が存在し、反応生成物中においても、対応する不純物を発生させる及びこのような不純物(所望の化合物についても同様)は、その除去が困難であるとの知見を得ている。
【0006】
上記ファクターは、全て、収率を低減させ、このようなウメクリジニウム合成中間体を生成するために要求されるコスト及び工業資源を増大させるとの欠点である。
【0007】
従って、従来技術の欠点を排除するウメクリジニウム中間体の他の製法を提供することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高度に精製された形の新規かつ多目的の中間体、及びそれらの製法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、ウメクリジニウムの製造におけるこのような中間体の使用を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、良好な収率及び純度を提供し、工業的に簡便であるウメクリジニウムの製法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、異なった方法で官能化されて、一方では、ウメクリジニウムの重要な中間体を生成し、他方では、より頻繁に検出されるウメクリジニウム不純物を生成する非常に多目的で、新規な中間体を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、ウメクリジニウムの製造において繰り返し発生する微量不純物を検出するためのいくつかの標準物質及びそれらの製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
その態様の1つによれば、本発明の目的は、式(I)
【化2】
(I)
の化合物及びその塩の製法にあり、該製法は、式(II)
【化3】
(II)
の化合物を、好適な溶媒中、フェニルリチウム及び臭化フェニルマグネシウムから選ばれる化合物と反応させ、任意に、化合物を単離し、及び任意に、化合物をその塩の1つに転化させることを含んでなる。
【0014】
好ましくは、反応は、好ましくは、非プロトン性溶媒から選ばれる溶媒、例えば、特に、テトラヒドロフラン(THF)又はメチル-3級-ブチルエーテル(MTBE)、又は脂肪族又は芳香族炭化水素、好ましくは、トルエン中で行われる。溶媒混合物も使用できる。
【0015】
好適な1具体例によれば、反応は、不活性雰囲気下、例えば、窒素雰囲気下で行われる。
【0016】
フェニルリチウムは、式(II)の化合物に対して化学量論量、又は好ましくは、わずかに過剰量、例えば、式(II)の化合物1モル当たりフェニルリチウム1.2~1.3モルで使用される。有利には、フェニルリチウムは、式(II)の化合物及び溶媒を含有する反応混合物に滴加される。
【0017】
反応は室温において行われ、非常に短い時間で、実際には、滴下の終了時に完了し、式(I)の化合物を、従来技術に従って、例えば、抽出によって単離できる。
【0018】
式(II)の化合物は新規化合物であり、その塩とともに、発明の更なる目的である。このような塩は、薬学上許容される又は医薬外で許容されるものである。やはり、薬学上許容される塩が好ましい。
【0019】
式(II)の化合物の塩は、好ましくは、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、及びリン酸塩の中から選ばれる。他の塩も調製される。
【0020】
式(II)の化合物は、好適な溶媒中、強塩基の存在下で、式(III)
【化4】
(III)
(式中、Xは、脱離基、例えば、ハロゲン、トシル、メシル、トリフラート等、好ましくは、ハロゲン、より好ましくは、塩素を表す)を反応させることによって調製される。
【0021】
強塩基としては、例えば、アルカリ金属水素化物、例えば、水素化ナトリウムが使用される。しかし、公知技術の方法とは対照的に、上記欠点を有するLDM又はLiHMDSのような塩基を使用する必要はない。
【0022】
上記反応において使用される溶媒は、好ましくは、トルエン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、3級-ブタノールの中から選ばれ、より好ましくは、ジメチルホルムアミドである。
【0023】
好適な具体例によれば、反応は、不活性雰囲気下、例えば、窒素雰囲気下で行われる。
【0024】
好ましくは、反応混合物を、40~70℃、有利には、45~55℃に加熱する。
【0025】
その完了は、公知の方法、例えば、クロマトグラフィー技術を使用することによって監視される。ついで、式(II)の化合物を、従来技術に従って、例えば、抽出によって単離できる。
【0026】
或いは、本発明の他の具体例によれば、化合物(II)は、下記に示すように、キヌクリジンのワインレブアミドから出発しても製造される。下記の反応スキームに従って、前記アミドを、1以上の好適な溶媒中、例えば、テトラヒドロフラン中で、フェニルリチウム、又は臭化フェニルマグネシウムと反応させて、化合物(II)を生成する。
【化5】
ワインレブアミド (II)
【0027】
本発明の反応のいくつかの例を、本明細書の実験の項に示す。
【0028】
本発明の目的は、式(I)の化合物を製造する方法であって、
上述のように定義される式(III)の化合物を、好適な溶媒中で、強塩基と反応させて、式(II)の化合物を生成し、及び続いて、
式(II)の化合物を,好適な溶媒中、フェニルリチウムと反応させて、式(I)の化合物を生成する
ことを含んでなる式(I)の化合物の製法にもある。
【0029】
或いは、本発明の目的は、式(I)及び(II)の化合物の製法であって、
キヌクリジンのワインレブアミドを、フェニルリチウム又は臭化フェニルマグネシウムと反応させ、このようにして、式(II)の化合物を得ること、及び任意に
式(II)の化合物を、好適な溶媒中、フェニルリチウム又は臭化フェニルマグネシウムと反応させて、式(I)の化合物を得ること
を含んでなる式(I)及び(II)の化合物の製法にもある。
【0030】
上述の好適及び有利な具体例は、後者の方法にも適用される。
【0031】
式(III)の化合物は当分野において既知であり、例えば、Eur.J.Med.Chem,(1997),3:651-659(ここでは、化合物5として記載されている)に記載されているようにして調製される。
【0032】
上述のキヌクリジンアミドのワインレブも、それ自体、当分野において既知であり、例えば、、国際公開第99/21855号に記載されている。
【0033】
他の態様によれば、本発明の目的は、式(II)及び式(III)の化合物の、式(I)の化合物の製造のため及び特に、ウメクリジニウム(ただし、これ以外にも)の合成中間体としての使用にある。
【0034】
式(I)の化合物の製造のための本発明の反応は、少ない量のフェニルリチウムを使用することができ、その結果、得られる反応副生物が少ないため、従来技術を超えるいくつかの利点を提供することが容易に理解されるであろう。さらに、式(II)の化合物におけるケトンに対してα位の水素は、従来技術において使用されるイソニコペンチン酸エチル誘導体の対応する水素よりも活性であり、従って、反応に必要なカルボアニオンが、より容易に形成され、一般的な塩基(例えば、アルカリ金属水素化物)の使用が可能であり、このようにして、先に列挙したような特別な及び問題を含む塩基を使用する必要性を回避できる。
【0035】
さらに、従来技術の方法によって得られるものに対して、本発明に従って得られる式(I)の化合物は、反応副生物の量が少なく、特に、式(IV)
【化6】
(IV)
の不純物の量は少ない。
【0036】
他の態様によれば、本発明の目的は、式(IV)の化合物、特に、下記の式
【化7】
(V)、
【化8】
(VI)、
【化9】
(VII)
を有する化合物にある。
【0037】
実験の項において説明するように、従来技術の方法に従って製造される式(I)の化合物及びウメクリジニウムは、多くの不純物を含有する。主に医薬分野では、不純物の存在は、できる限り少量でなければならないことはよく知られている。
【0038】
実験の項において説明されるように、本発明の目的である式(II)の化合物によって得らえる式(I)の化合物の純度を、同じ原料を使用することにより、従来技術(国際公開第2005/104745号)に従って得られる同じ化合物の純度と比較したところ、本発明に従って得らえる化合物は、約半分の量の一般式(IV)の不純物を含有することが観察された。
【0039】
このような不純物の存在を、UPLC-MSによって検出し、定量した。
【0040】
他の態様によれば、本発明の目的は、式(IV)の化合物の1以上を、2%未満、好ましくは、1.5%未満、例えば、約1~1.3%の量で含有する式(I)の化合物にある。
【0041】
他の態様によれば、本発明の目的は、式(IV)の化合物の1以上を、2%未満、例えば、0.5~2%未満、好ましくは、1.5%未満、例えば、約1~1.3%の量で含有する式(I)の化合物の、ウメクリジニウムの製造における使用にある。
【0042】
式(I)の化合物は、当分野において公知の方法に従って、例えば、国際公開第2014/027045号に記載のようにして、ウメクリジニウムに転化される。
【0043】
式(I)の化合物をウメクリジニウムに転化する際、該化合物は、自身とともに、不純物(式(IV)化合物)を伴い、不純物は、一般式(VIII)
【化10】
(VIII)
の対応する化合物に転化される。
【0044】
本発明の他の態様によれば、本発明の目的は、一般式(IV)及び(VIII)の化合物、特に、化合物(VI)、(VI)、(VII)、式(IX)
【化11】
(IX)、
式(X)
【化12】
(X)、及び
式(XI)
【化13】
(XI)
の化合物、及び当該化合物の、式(I)の化合物、ウメクリジニウム、及びそれを含有する医薬組成物におけるこのような不純物の存在及び量を検出するための標準物質としての使用にある。
【0045】
他の態様によれば、本発明の目的は、化合物(II)を、好適な溶媒、例えば、テトラヒドロフラン中で、ビフェニルリチウム異性体と反応させることを含んでなる、式(IV)の化合物、特に、式(V)、(VI)及び(VII)の化合物を製造する方法にある。
【0046】
式(IX)、(X)及び(XI)の化合物は、例えば、化合物(V)、(VI)及び(VII)の化合物のエチルベンジルエーテル臭化物での4級化によって調製される。
【0047】
本発明の方法の実施例のいくつかを、下記の実験の項に示すが、これらは、説明のためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】式(II)の化合物を出発原料として調製したジフェニル-キヌクリジン-4-イル-メタノールのUPLC-MSを表す。
図2】従来技術に従って調製したジフェニル-キヌクリジン-4-イル-メタノールのUPLC-MSを表す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
実験の項
器具
UPLC-MS:
SWaters Acquity(商標名)超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)
固定相:Acquity UPLCTM BEH SHIELD RP18、1.7μm、2.1×50mm
勾配:水含有アセトニトリル+TFA 4分で5~100%
NMR:
mBruuker Avance 2300MHz
【実施例1】
【0050】
フェニル-キヌクリジン-4-イル-メタノン(式(II)の化合物)の調製
ジメチルホルムアミド(1ml)中にNaH(鉱油中60%分散液、64.3mg、1.61ミリモル、1.5当量)を含有する懸濁液に、不活性窒素雰囲気下、フェニル-1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-イル-メタノン(270mg、1.07ミリモル、1当量)のジメチルホルムアミド(3ml)溶液を添加した。反応塊を、反応が完了するまで、50℃に加熱し、ついで、HO(3ml)を滴加し、酢酸エチル(10ml)で抽出した。有機相を、NaSOにて乾燥し、真空下で蒸発させて、題記化合物148mgを得た。
十分に同定するため、生成物を精製し、質量分析スペクトル(図1)及びNMRスペクトル(図2)を得た。
1H NMR((DMSO-d6+TFA, 300 MHz):δ ppm:9.55 (br s, 1H);7.78-7.75 (m, 2H);7.62-7.56 (m, 1H);7.53-7.48 (m, 2H);3.37-3.32 (m, 6H);2.18-2.13 (m, 6H)
【実施例2】
【0051】
フェニル-キヌクリジン-4-イル-メタノン(式(II)の化合物)の調製
ガラスフラスコにおいて、N-メトキシ-N-メチルキヌクリジン-4-カルボキシアミド(828mg、84.12質量%、3.51mモル、1当量)を、THF(18ml)中に投入し、溶液を-20℃に冷却した。フェニルリチウムの溶液(1.9Mジブチルエーテル溶液、6.27mモル、3.3ml、1.79当量)を滴加した。水(1ml)にて反応をクエンチさせ、真空下で濃縮して、THFを除去した。残渣を、酢酸エチル及びNaCO(水性)飽和溶液にて再処理した。有機相を分離し、再度、生成物を酢酸エチルにて抽出した。有機相を合わせ、1M NaOH溶液にて洗浄し、ついで、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。クロマトグラフィーにて精製した後、フェニル(キヌクリジン-4-イル)メタノンを、黄色のオイルとして得た(496mg、UPLC純度96.94%、収率64%)。
質量分析及びNMRによって構造を確認した:
UPLC MS: m/z 216.31 (MH+)
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz): δppm: 7.66-7.63 (m, 2H); 7.52-7.42 (m, 3H); 3.82-2.78 (t, 6H), 1.77-1.72 (t, 6H)
注:δ ppm:3.32 (s):H2O;2.51 (quint):DMSO
【実施例3】
【0052】
ジフェニル-キヌクリジン-4-イル-メタノール(式(I)の化合物)の調製
トルエン1.2ml中にフェニル-キヌクリジン-4-イル-メタノン(28mg、0.130mモル、1当量)を含む溶液に、窒素雰囲気下で、フェニルリチウム溶液(1.9Mジブチルエーテル溶液、0.082ml、0.156mモル、1.2当量)を滴下した。HO(1.5ml)を添加し、酢酸エチルにて抽出した(2×7ml)。有機相を合わせ、NaSOにて乾燥し、真空下で、半分の容積まで濃縮し、このようにして固体の沈殿物を得て、該固体を濾過し、乾燥したところ、題記化合物25mgを、白色固体として得た。
生成物を、質量分析スペクトル(図3)及びNMRスペクトル(図4)によって同定した。
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz):δppm:7.54-7.52 (m, 4H);7.29-7.24 (m, 4H);7.19-7.14 (m, 2H);5.37 (s, 1H);2.70-2.65 (m, 6H);1.64-1.59 (m, 6H)
UPLC-MSによって、式(IV)の不純物(化合物(V)、(VI)、(VII)の合計)が、得られた化合物において1.5%より低いことが観察された(図1)。前記図では、1.65分において、1.16%(国際公開第2005/104745号(比較例参照)に従って、キヌクリジンエチルエステルから直接エステルによって得られるものよりも低い百分率)のピークが得られた。
【0053】
[比較例]
公知の技術によるジフェニル-キヌクリジン-4-イル-メタノールの調製
国際公開第2005/104745号に記載されているように、実施例3のフェニルリチウムの同じバッチを使用することによって(このため、同じ不純物を含有する)、題記化合物を調製した。
UPLC-MS:式(IV)の不純物が2.5%よりも多い(合計として)ことが観察された(図2)。
【0054】
標準物質(不純物)の調製
【実施例4】
【0055】
[1,1´-ビフェニル]-2-イル(フェニル)(キヌクリジン-4-イル)メタノール(式(V)の化合物)の調製
2-ブロモビフェニル(112.9mg、0.484mモル、1.90当量)を、無水THF(1.5ml)に溶解し、溶液を-78℃に冷却し、n-ブチルリチウム(1.6M n-esane溶液、0.504mモル、0.315ml、1.98当量)を滴加した。7分後、この溶液を、-26℃において、フェニル(キヌクリジン-4-イル)メタノン(55mg、0.255mモル、1当量)のトルエン(1.5ml)溶液に滴加した。水によって溶液をクエンチした。NaCO(水性)飽和溶液を添加し、EtOAcにて1回抽出した。有機相を硫酸ナトリウムにて脱水し、溶媒を、真空下で蒸発させて、粗製の[1,1´-ビフェニル]-2-イル(フェニル)(キヌクリジン-4-イル)メタノールを得た。NMR同定を行なうため、生成物を、クロマトグラフィーによって精製した。[1,1´-ビフェニル]-2-イル(フェニル)(キヌクリジン-4-イル)メタノール・トリフルオロ酢酸塩が、白色固体として得られた(26.21mg、クロマトグラフィー純度100%、収率21%)。
質量分析及びNMRによって構造を確認した。
UPLC MS: m/z 370.31 (MH+)
1H NMR (DMSO-d6 +TFA, 300 MHz, 343K):δppm:9.13 (br s, 1H);8.02-7.99 (d, 1H);7.40-7.35 (td, 1H);7.30-7.25 (td, 1H);7.15-6.90 (m, 10H), 6.52 (br m, 1H), 3.28-3.23 (t, 6H);2.07-2.02 (t, 6H)
注1:δ ppm:2.51 (quint):DMSO
注2:分解能のため、NMRチューブにTFAを添加したが、結果として、OHプロトンが見られなかった。
【実施例5】
【0056】
[1,1´-ビフェニル]-3-イル(フェニル)(キヌクリジン-4-イル)メタノール(式(VI)の化合物)の調製
3-ブロモビフェニル(37mg、0.159mモル、1.36当量)を、無水THF(0.9ml)に溶解し、溶液を-78℃に冷却し、n-ブチルリチウム(1.6M n-esane溶液、0.160mモル、0.100ml、1.37当量)を滴加した。10分後、この溶液を、-26℃において、フェニル(キヌクリジン-4-イル)メタノン(25.2mg、0.117mモル、1当量)のトルエン(0.7ml)溶液に滴加した。水(0.3ml)によって溶液をクエンチした。NaCO(水性)飽和溶液を添加し、EtOAcにて2回抽出した。有機相を合わせ、硫酸ナトリウムにて脱水し、溶媒を、真空下で蒸発させて、粗製の[1,1´-ビフェニル]-3-イル(フェニル)(キヌクリジン-4-イル)メタノールを得た。NMR同定を行なうため、生成物を、クロマトグラフィーによって精製した。[1,1´-ビフェニル]-3-イル(フェニル)(キヌクリジン-4-イル)メタノール・トリフルオロ酢酸塩が、白色固体として得られた(24.3mg、クロマトグラフィー純度99.7%、収率43%)。
質量分析及びNMRによって構造を確認した。
UPLC MS:m/z 370.31 (MH+)
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz):δppm:9.21 (s, 1H);7.74 (s, 1H);7.64-7.23 (m, 13H);6.03 (s, 1H), 3.26-3.21 (br t, 6H);2.02-1.97 (br t, 6H)
注:δ ppm:2.51 (quint):DMSO、衛星ピークを有する
【実施例6】
【0057】
[1,1´-ビフェニル]-4-イル(フェニル)(キヌクリジン-4-イル)メタノール(式(VII)の化合物)の調製
4-ブロモビフェニル(482mg、2.07mモル、1.07当量)を、無水THF(5ml)に溶解し、溶液を-78℃に冷却し、n-ブチルリチウム(1.6M n-esane溶液、2.08mモル、1.3ml、1.08当量)を滴加した。5分後、この溶液を、-26℃において、フェニル(キヌクリジン-4-イル)メタノン(416mg、1.93mモル、1当量)のトルエン(7ml)溶液に滴加した。水(1ml)によって溶液をクエンチした。NaCO(水性)飽和溶液(20ml)を添加し、EtOAcにて抽出した(2×40ml)。有機相を合わせ、硫酸ナトリウムにて脱水し、溶媒を、真空下で蒸発させて、[1,1´-ビフェニル]-4-イル(フェニル)(キヌクリジン-4-イル)メタノールを、白色固体として得た(816mg、クロマトグラフィー純度77.5%、収率88.6%)。
NMR同定を行なうため、一部を、クロマトグラフィーによって精製した。
質量分析及びNMRによって構造を確認した。
UPLC MS:m/z 370.28 (MH+)
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz):δppm:9.17 (s, 1H);7.67-7.58 (m, 8H);7.49-7.44 (t, 2H);7.39-7.32 (m, 3H), 7.28-7.23 (m, 1H);5.97 (s, 1H);3.24 (br t, 6H), 2.01-1.96 (br t, 6H)
注:δ ppm:3.46 (s):H2O;2.51 (quint):DMSO、衛星ピークを有する
【実施例7】
【0058】
4-([1,1´-ビフェニル]-2-イル(ヒドロキシ)(フェニル)メチル)-1-(2-(ベンジルオキシ)エチル)キヌクリジン-1-io臭化物(式(IX)の化合物)の調製
[1,1´-ビフェニル]-2-イル(フェニル)(キヌクリジン-4-イル)メタノール(3.08mg、0.00834mモル、1当量)を、アセトン(0.6ml)中に懸濁させ、((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼン(2.5mg、0.0116mモル、1.39当量)を添加し、11時間、還流させた。室温に冷却し、混合物を遠心分離し、上澄み液を除去し、白色の固体をアセトンにて洗浄することによって操作を繰り返した。4-([1,1´-ビフェニル]-2-イル(ヒドロキシ)(フェニル)メチル)-1-(2-(ベンジルオキシ)エチル)キヌクリジン-1-io臭化物が得られた(1.6mg、クロマトグラフィー純度98.35%、収率32%)。上澄み液を濃縮することによって、さらに、純度71%を有する生成物5.3mgを得ることができた。
質量分析及びNMRによって構造を確認した:
UPLC MS:m/z 504.50 (M+)
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz, 342K):δppm:8.01-7.98 (d, 1H);7.42-6.91 (m, 17H);6.53 (br s, 1H);4.87 (s, 1H);4.53 (s, 2H);3.87-3.84 (t, 2H);3.53-3.48 (t, 6H);3.40-3.37 (t, 2H);2.15-2.10 (br t, 6H)
注:δ ppm: 3.10 (s):H2O;2.51 (quint):DMSO
【実施例8】
【0059】
4-([1,1´-ビフェニル]-3-イル(ヒドロキシ)(フェニル)メチル)-1-(2-(ベンジルオキシ)エチル)キヌクリジン-1-io臭化物(式(X)の化合物)の調製
[1,1´-ビフェニル]-3-イル(フェニル)(キヌクリジン-4-イル)メタノール(14.13mg、0.0382mモル、1当量)を、アセトン(1ml)中に溶解し、((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼン(11mg、0.0511mモル、1.34当量)を添加し、11時間、還流させた。室温に冷却し、ジエチルエーテルを添加し、真空下で濃縮して小容量とし、固体を濾過した。最少量の6/1ジエチルエーテル/アセトン混合物にて洗浄することによって、4-([1,1´-ビフェニル]-3-イル(ヒドロキシ)(フェニル)メチル)-1-(2-(ベンジルオキシ)エチル)キヌクリジン-1-io臭化物が得られた(20mg、クロマトグラフィー純度90%、収率80%)。
質量分析及びNMRによって構造を確認した:
UPLC MS:m/z 504.57 (M+)
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz):δppm:7.74 (br t, 1H);7.65-7.23 (m, 18H);6.07 (s, 1H);4.50 (s, 2H);3.82 (br t, 2H);3.51-3.46 (t, 6H);3.37 (br t, 2H);2.08-2.03 (br t, 6H)
注:δppm:3.32 (s):H2O;2.51 (quint):DMSO、衛星ピークを有する;2.09 (s):アセトン
【実施例9】
【0060】
4-([1,1´-ビフェニル]-4-イル(ヒドロキシ)(フェニル)メチル)-1-(2-(ベンジルオキシ)エチル)キヌクリジン-1-io臭化物(式(XI)の化合物)の調製
[1,1´-ビフェニル]-4-イル(フェニル)(キヌクリジン-4-イル)メタノール(6.74mg、0.0182mモル、1当量)を、アセトン(0.5ml)中に懸濁させ、((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼン(4.7mg、0.0219mモル、1.2当量)を添加し、11時間、還流させた。溶液を、真空下で濃縮して、小容量とし、生成物を濾過し、最少量のアセトンにて洗浄することによって、4-([1,1´-ビフェニル]-4-イル(ヒドロキシ)(フェニル)メチル)-1-(2-(ベンジルオキシ)エチル)キヌクリジン-1-io臭化物が得られた(9.91mg、クロマトグラフィー純度93%、収率87%)。
質量分析及びNMRによって構造を確認した:
UPLC MS:m/z 504.50 (M+)
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz):δppm:7.67-7.59 (m, 8H);7.49-7.44 (t, 2H);7.39-7.24 (m, 9H);6.01 (s, 1H);4.50 (s, 2H);3.83 (br t, 2H);3.51-3.47 (br t, 6H);3.38 (br t, 2H);2.07-2.02 (br t, 6H)
注:δppm:3.32 (s):H2O;2.51 (quint):DMSO、衛星ピークを有する
図1
図2