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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】ブレーキ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/1761 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
B60T8/1761
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021502213
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2020007176
(87)【国際公開番号】W WO2020175391
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2019032164
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄也
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 利行
(72)【発明者】
【氏名】高田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】姫野 浩志
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特許第6375310(JP,B2)
【文献】特開2018-122623(JP,A)
【文献】特開2018-069796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12 - 8/1769
8/32 - 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と、当該車輪に制動力を付与するブレーキ機構と、前記車輪を駆動する駆動源と、前記車輪に付与される前記制動力を調整する制動力調整機構と、を備えた車両のブレーキ制御装置であって、
前記車両に設けられる第1操作入力部を介して実行される、前記車両の電源をオンにするオン操作および当該電源をオフにするオフ操作と、前記第1操作入力部とは別個に前記車両に設けられる第2操作入力部を介して実行される、前記駆動源を作動する作動操作および前記駆動源の作動を停止する停止操作と、を検出する検出部と、
前記制動力調整機構を制御することで、前記車輪のロックを抑制するアンチロック制御と、当該アンチロック制御よりも前記車輪のロックの抑制度合を低減するアンチロック低減制御と、を選択的に実行する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記アンチロック低減制御の実行中に前記停止操作が検出され、前記駆動源が停止し、かつ前記車両が停止した場合に、前記アンチロック低減制御から切り替えて前記アンチロック制御を実行し、
前記制御部は、前記アンチロック低減制御の実行中に前記停止操作が検出されて前記駆動源が停止した後、前記車両が停止する前に前記作動操作が検出された場合、前記アンチロック低減制御の実行を継続する、
ブレーキ制御装置。
【請求項2】
車輪と、当該車輪に制動力を付与するブレーキ機構と、前記車輪を駆動する駆動源と、前記車輪に付与される前記制動力を調整する制動力調整機構と、を備えた車両のブレーキ制御装置であって、
前記車両に設けられる第1操作入力部を介して実行される、前記車両の電源をオンにするオン操作および当該電源をオフにするオフ操作と、前記第1操作入力部とは別個に前記車両に設けられる第2操作入力部を介して実行される、前記駆動源を作動する作動操作および前記駆動源の作動を停止する停止操作と、を検出する検出部と、
前記制動力調整機構を制御することで、前記車輪のロックを抑制するアンチロック制御と、当該アンチロック制御よりも前記車輪のロックの抑制度合を低減するアンチロック低減制御と、を選択的に実行する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記アンチロック低減制御の実行中に前記停止操作が検出された場合、前記駆動源の停止と前記車両の停止とが成立するか否かを判定する判定制御を実行し、当該判定制御において前記駆動源の停止と前記車両の停止とが成立すると判定された場合に、前記アンチロック低減制御から切り替えて前記アンチロック制御を実行し、
前記制御部は、前記アンチロック低減制御の実行中であって前記駆動源の作動中に前記停止操作が検出された場合は前記判定制御を実行し、前記アンチロック低減制御の実行中であって前記駆動源の停止中に前記停止操作が検出された場合は前記判定制御の実行を回避することで、前記アンチロック制御へ移行することを防止する、
ブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記アンチロック低減制御の実行中に前記停止操作が検出された後、前記駆動源が停止する前に前記作動操作が検出された場合、前記アンチロック低減制御の実行を継続する、
請求項1または2に記載のブレーキ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイールシリンダの圧力の減圧、保持、および増圧を適宜切り替えながら実施することで、制動時における車輪のロック(車輪速と実際の車速との乖離、スリップ)を抑制するアンチロック制御を実行する機能を備えたブレーキ制御装置が知られている。このような構成においては、たとえばオフロードの走行時などといった所定の状況で、アンチロック制御の効果を制限し、車輪を意図的にロックさせることが望まれる場合がある。そこで、アンチロック制御から、当該アンチロック制御よりも車輪のロックの抑制度合を低減するアンチロック低減制御への切り替えを、たとえばドライバの操作に応じて実現することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-213512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、アンチロック制御は、法規(たとえばECE R78)の要請により、たとえドライバの操作に応じてアンチロック低減制御が実行されている場合であっても、たとえばドライバがエンジンを一旦停止した後に再始動するという条件が成立した場合には、アンチロック低減制御からアンチロック制御への強制的な切り替えを実行する必要が生じることがある。
【0005】
しかしながら、上記の条件は、たとえば意図しないエンジンストールやドライバの操作ミスなどといった不意の事象の発生によっても成立する。法規では、このような不意の事象の発生時にまでアンチロック低減制御からアンチロック制御への強制的な切り替えを実行することは要請されていないので、単純にエンジンの再始動のみを制御の切り替えの基準として設定すると、不意の事象の発生時に再びアンチロック低減制御に戻すための操作の負担などにより、利便性が損なわれることがある。
【0006】
そこで、本開示の課題の一つは、アンチロック低減制御からアンチロック制御への切り替えを、ドライバの意図に沿った形で、利便性を損なうことなく実現することが可能なブレーキ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一例としてのブレーキ制御装置は、車輪と、当該車輪に制動力を付与するブレーキ機構と、車輪を駆動する駆動源と、車輪に付与される制動力を調整する制動力調整機構と、を備えた車両のブレーキ制御装置であって、車両に設けられる第1操作入力部を介して実行される、車両の電源をオンにするオン操作および当該電源をオフにするオフ操作と、第1操作入力部とは別個に車両に設けられる第2操作入力部を介して実行される、駆動源を作動する作動操作および駆動源の作動を停止する停止操作と、を検出する検出部と、制動力調整機構を制御することで、車輪のロックを抑制するアンチロック制御と、当該アンチロック制御よりも車輪のロックの抑制度合を低減するアンチロック低減制御と、を選択的に実行する制御部と、を備え、制御部は、アンチロック低減制御の実行中に停止操作が検出され、駆動源が停止し、かつ車両が停止した場合に、アンチロック低減制御から切り替えてアンチロック制御を実行する。
【0008】
上述したブレーキ制御装置によれば、ドライバが意図的に停止操作を実行し、駆動源が停止するとともに車両が停止した場合にのみ、アンチロック低減制御からアンチロック制御への強制的な切り替えが実行される。したがって、アンチロック低減制御からアンチロック制御への切り替えを、ドライバの意図に沿った形で、利便性を損なうことなく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態にかかる車両のブレーキシステムの構成を示した例示的かつ模式的な図である。
図2図2は、実施形態にかかるブレーキECUの機能を示した例示的かつ模式的なブロック図である。
図3図3は、実施形態にかかるブレーキECUが実行する制御の状態遷移を示した例示的かつ模式的なブロック図である。
図4図4は、実施形態にかかるブレーキECUがエンジンスイッチの操作に応じてABS禁止制御からABS許可制御への切り替えを実行する際の一連の処理を示した例示的かつ模式的なフローチャートである。
図5図5は、実施形態にかかるブレーキECUがABSスイッチの操作に応じてABS許可制御からABS禁止制御への切り替えを実行する際の一連の処理を示した例示的かつ模式的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0011】
図1は、実施形態にかかる車両10の構成を示した例示的なブロック図である。以下では、実施形態にかかる車両10が二輪車である例について説明するが、本開示の技術は、たとえば四輪自動車などといった二輪車以外の車両にも適用可能である。
【0012】
図1に示されるように、車両10は、フロント側の車輪である前輪2Fに圧力を付与することで制動力を発生させるブレーキ機構110と、リヤ側の車輪である後輪2Rに圧力を付与することで制動力を発生させるブレーキ機構120と、前輪2F側のブレーキ機構110を制御するブレーキECU(Electronic Control Unit)200と、を備えている。
【0013】
また、車両10は、車輪(後輪駆動の場合は後輪2Rのみ)を駆動する駆動源としてのエンジン300と、当該エンジン300を制御するエンジンECU400と、を備えている。ブレーキECU200とエンジンECU400とは、たとえばCAN(Controller Area Network)などといった車載通信ネットワークを介して互いに通信可能に接続されている。
【0014】
後輪2R側のブレーキ機構120は、ブレーキペダル121の操作に応じて加圧するマスタシリンダ122と、マスタシリンダ122からの圧力(液圧)に基づいて摩擦制動部材を加圧することで後輪2Rを制動するホイールシリンダ123と、を備えている。
【0015】
また、前輪2F側のブレーキ機構110は、ブレーキレバー111の操作に応じて加圧するマスタシリンダ112と、マスタシリンダ112からの圧力(液圧)に基づいて摩擦制動部材を加圧することで前輪2Fを制動するホイールシリンダ123と、マスタシリンダ112とホイールシリンダ123との間に設けられる液圧制御回路124と、を備えている。液圧制御回路124は、ホイールシリンダ123に与えられる液圧を調整する液圧調整部125と、下流側(ホイールシリンダ123側)のフルードを上流側(マスタシリンダ112側)へ戻す還流機構126と、を含んでいる。
【0016】
液圧調整部125は、開状態と閉状態とを電気的に切り替える電磁弁125aおよび125bと、電磁弁125aに並列に設けられたチェック弁125cと、を有している。また、還流機構126は、ブレーキ液(フルード)を一時的に貯蔵するリザーバ126aと、リザーバ126aからフルードを汲み上げるポンプ126bと、ポンプ126bを駆動するモータ126cと、を有している。なお、電磁弁125aは、ホイールシリンダ123とマスタシリンダ112との間に設けられており、電磁弁125bは、ホイールシリンダ123とリザーバ126aとの間に設けられている。
【0017】
ブレーキECU200は、プロセッサやメモリなどといった通常のコンピュータと同様のハードウェアを備えた制御ユニットである。ブレーキECU200は、車輪(図1に示される例では前輪2F)に付与される制動力を調整する制動力調整機構としての液圧制御回路124を制御する。また、ブレーキECU200は、前輪2Fの回転速度(回転数)を検出する車輪速センサ501の出力値と、エンジンECU400から取得されるエンジン300の回転数と、車両10に設けられる各種の操作入力部(ABSスイッチ502や電源スイッチ503、エンジンスイッチ504など、詳細は後述する)を介して入力されるドライバの操作とを、制御に利用することができる。
【0018】
なお、ブレーキECU200と同様、エンジンECU400も、プロセッサやメモリなどといった通常のコンピュータと同様のハードウェアを備えた制御ユニットである。エンジンECU400は、アクセルグリップ113や電源スイッチ503、エンジンスイッチ504などを介して入力されるドライバの操作に基づいて、エンジン300の出力を制御する。
【0019】
ここで、実施形態において、ブレーキECU200は、ブレーキ機構110の電磁弁125aおよび125bとモータ126cとを制御することで、前輪2Fのホイールシリンダ123に発生させる圧力(制動力)を、昇圧したり、維持したり、減圧したりする。これにより、ブレーキECU200は、車両10の制動中に前輪2Fがロックするのを抑制するアンチロック制御としてのABS(Antilock Blaking System)制御を実行することができる。
【0020】
なお、以下では、ABS制御の対象が前輪2Fのみである例について説明するが、本開示の技術は、ABS制御の対象が後輪2Rのみである例にも、ABS制御の対象が前輪2Fおよび後輪2Rの両方である例にも適用可能である。
【0021】
ところで、アンチロック制御としてのABS制御を実行する機能を備えた上記のような構成においては、たとえばオフロードの走行時などといった所定の状況で、アンチロック制御の効果を制限し、車輪を意図的にロックさせることが望まれる場合がある。したがって、アンチロック制御から、当該アンチロック制御よりも車輪のロックの抑制度合を低減するアンチロック低減制御への切り替えを、たとえばドライバの操作に応じて実現することが検討されている。
【0022】
一方、アンチロック制御は、法規(たとえばECE R78)の要請により、たとえドライバの操作に応じてアンチロック低減制御が実行されている場合であっても、たとえばドライバがエンジン300を一旦停止した後に再始動するという条件が成立した場合には、アンチロック低減制御からアンチロック制御への強制的な切り替えを実行する必要が生じることがある。
【0023】
しかしながら、上記の条件は、たとえば意図しないエンジンストールやドライバの操作ミスなどといった不意の事象の発生によっても成立する。法規では、このような不意の事象の発生時にまでアンチロック低減制御からアンチロック制御への強制的な切り替えを実行することは要請されていないので、単純にエンジン300の再始動のみを制御の切り替えの基準として設定すると、不意の事象の発生時に再びアンチロック低減制御に戻すための操作の負担などにより、利便性が損なわれることがある。特に、エンジンスイッチ504を持つ車両10では、電源スイッチ503がオンの状態で、エンジンスイッチ504によるエンジン300の停止操作がなされた場合に、ドライバの意図に沿ってアンチロック低減制御からアンチロック制御への切り替えを行うことが求められる。
【0024】
そこで、実施形態は、以下に説明するような機能をブレーキECU200に持たせることで、アンチロック低減制御からアンチロック制御への切り替えを、ドライバの意図に沿った形で、利便性を損なうことなく実現することを可能にする。なお、以下では、アンチロック低減制御として、ABS制御の効果を完全にカットするABS禁止制御が実行される構成が例示されるが、本開示の技術において、アンチロック低減制御は、たとえば、後輪2Rのロックのみを許容する制御や、所定の車輪のABS制御を通常の制御に対してより大きなスリップを許容する制御に変更するなどといった、ABS制御の効果の少なくとも一部を低減する制御であればよい。また、以下では、ABS禁止制御との対比を明確化するため、ABS制御を、ABS許可制御と記載することがある。
【0025】
図2は、実施形態にかかるブレーキECU200の機能を示した例示的かつ模式的なブロック図である。図2に示される機能は、たとえば、ブレーキECUのプロセッサがメモリに記憶されたプログラムを読み出して実行した結果として実現される。なお、実施形態では、図2に示される機能の一部または全部が、専用のハードウェア(回路)のみによって実現されてもよい。
【0026】
図2に示されるように、ブレーキECU200は、通信処理部201と、取得部202と、検出部203と、制御部204と、を有している。
【0027】
通信処理部201は、エンジンECU400や、後述するABSスイッチ502が設けられるメータ(不図示)の制御を司るメータECU(不図示)などとの間で実行される、CANなどを介した通信を制御する。
【0028】
取得部202は、車輪速センサ501などといった、車両10に設けられる各種のセンサの出力値を取得する。
【0029】
検出部203は、ABSスイッチ502や電源スイッチ503、エンジンスイッチ504などといった、車両10に設けられる各種の物理的な操作入力部を介したドライバの操作を検出する。なお、電源スイッチ503は、「第1操作入力部」の一例であるとともに、エンジンスイッチ504は、「第2操作入力部」の一例である。
【0030】
ABSスイッチ502は、ABS許可制御とABS禁止制御とを切り替える操作を受け付ける。また、電源スイッチ503は、ブレーキECU200およびエンジンECU400を含む、車両10の電子装置(全体)の電源のオン/オフを切り替える操作を受け付ける。また、エンジンスイッチ504は、電源スイッチ503とは別個にエンジン300の作動/停止を切り替える操作を受け付ける。なお、エンジンスイッチ504は、たとえば、エンジン300を作動する作動スイッチとエンジン300を停止させる停止スイッチとの2つのスイッチで構成されてもよいし、1つのスイッチを用いて、所定の操作をすることでエンジン300を作動し、別の操作をすることでエンジン300を停止させるような構成であってもよい。後者のエンジンスイッチ504の例として、たとえば、シーソースイッチやトグルスイッチなどと呼ばれる1つのスイッチを一方向に動かすことでエンジン300を作動し、当該一方向とは別の方向に操作することでエンジン300を停止する構成が考えられる。
【0031】
なお、ABSスイッチ502は、たとえば車両10の速度などを表示するメータ(不図示)の近傍に設けられ、電源スイッチ503およびエンジンスイッチ504は、たとえばブレーキレバー111やアクセルグリップ113を含むハンドルの近傍に設けられる。
【0032】
制御部204は、液圧制御回路124を制御することで、ABS許可制御とABS禁止制御とを選択的に実行する。制御部204は、ABSスイッチ502の操作に応じて、ABS許可制御からABS禁止制御への切り替え、またはABS禁止制御からABS許可制御への切り替えを実行する。
【0033】
なお、詳細は後述するが、実施形態において、ABSスイッチ502による制御の切り替えは、ABSスイッチ502の操作が所定時間t11未満でかつ所定時間t12より長く継続された場合にのみ実行される。
【0034】
また、実施形態において、ABSスイッチ502による制御の切り替えは、以下の(a1)~(a5)の条件の全てを満たす所定の場合にのみ許可される。
(a1)車両10が(完全に)停止している。
(a2)フェールセーフとしてABS機能自体が禁止に設定されていない。
(a3)ABSスイッチ502が設けられるメータ(不図示)の制御を司るメータECU(不図示)がブレーキECU200に向けて定期的に送信する信号が正常に受信されている。
(a4)通信処理部201に異常が無い。
(a5)整備や点検などのために通信処理部201による通信が禁止に設定されていない。
(a6)ブレーキECU200に対して正常に電源が供給されている。
【0035】
ここで、実施形態において、制御部204は、前述したような法規の要請を満たすように、ABSスイッチ502の操作に関わらず、状況に応じて、ABS禁止制御からABS許可制御への強制的な切り替えを実行する。しかしながら、前述したように、制御の切り替えの基準の設定如何によっては、ドライバの意図に反した形で制御の切り替えが実行され、利便性が損なわれることがある。
【0036】
そこで、実施形態において、制御部204は、次の図3に示されるような状態遷移図に従い、ABS禁止制御の実行時に、当該ABS禁止制御からABS許可制御への切り替えの条件を3段階で判定する。
【0037】
図3は、実施形態にかかるブレーキECU200が実行する制御の状態遷移を示した例示的かつ模式的なブロック図である。図3に示されるように、実施形態において、ブレーキECU200(の制御部204)は、第1判定制御と、第2判定制御と、第3判定制御と、の3つの制御モードの間を遷移しながら、ABS禁止制御を実行する。
【0038】
ABS禁止制御が開始すると、制御部204は、まず、第1判定制御を実行する。第1判定制御は、エンジンスイッチ504を介して実行される、エンジン300の作動を停止するための停止操作が検出部203により検出されたか否かを判定する制御である。
【0039】
エンジン300の作動中(たとえばエンジン300の回転数が所定値Xを超えている場合)の第1判定制御において停止操作が検出されたと判定された場合、操作ミスであるか否かは不明であるものの、少なくともドライバによるエンジンスイッチ504の操作が実行されたことは分かる。したがって、この場合、制御部204は、第1判定制御から、停止操作に応じてエンジン300が完全に停止したか否かを判定する第2判定制御に処理を移行し、当該第2判定制御において、第1判定制御において検出された停止操作が操作ミスであるか否かを判定する(矢印A301参照)。
【0040】
一方、エンジン300の停止中(たとえばエンジン300の回転数が所定値X未満の場合)の第1判定制御において停止操作が検出されたと判定された場合、当該停止操作は、エンジン300を作動させるための作動操作のミスであると推定できる。したがって、この場合、制御部204は、第2判定制御に処理を移行することなく、引き続き第1判定制御を実行する(矢印A302参照)。
【0041】
ここで、第2判定制御において、エンジン300が完全に停止する(たとえばエンジン300の回転数がゼロになる)前に作動操作が実行され、かつ、当該作動操作が所定時間t1以上継続した場合、第1判定制御において検出された停止操作は、作動操作のミスであると推定できる。したがって、この場合、制御部204は、第2判定制御から第1判定制御に処理を移行し、再び停止操作の検出を待つ(矢印A303参照)。
【0042】
一方、第2判定制御において、停止操作が維持されているか、または作動操作が実行されてからの経過時間が所定時間t1未満の状態で、エンジン300が完全に停止した場合、制御部204は、第2判定制御から第3判定制御に処理移行する(矢印A304参照)。第3判定制御は、エンジン300の完全な停止に応じて車両10が停止したか否か(たとえば車輪速センサ501の検出結果に基づく車輪の回転速度が所定値Y以下になったか否か)を判定する制御である。
【0043】
なお、制御部204は、第1判定制御への移行条件と第3判定制御への移行条件とのいずれか一方が成立するまでは、第2判定制御を継続して実行し、エンジン300の完全な停止を待つ(矢印A305参照)。
【0044】
ここで、第3判定制御において、エンジン300が完全に停止し、かつ、車両10が停止してからの経過時間が所定時間t2を超えた場合、前述した不意の事象の発生に起因して車両10が停止したのではなく、ドライバが意図的に車両10を停止させたものだと推定できる。したがって、この場合、法規の要請に従って次のエンジン300の作動時にABS許可制御を実行すべき状況であると推定できるので、制御部204は、第3判定制御からABS許可制御に処理を移行する(矢印A306参照)。
【0045】
一方、第3判定制御において、エンジン300が完全に停止した後、車両10が停止してからの経過時間が所定時間t2を超える前に、エンジンスイッチ504の操作や押しがけなどによってエンジン300が再始動した(たとえばエンジン300の回転数が所定値Xを超えた)場合、ドライバに車両10を停止させる意思は無く、ABS禁止制御のままで走行を継続する意思があると推定できる。したがって、この場合、制御部204は、第3判定制御から第1判定制御に処理を移行し、再び停止操作の検出を待つ(矢印A307参照)。
【0046】
なお、制御部204は、ABS許可制御への移行条件と第2判定制御への移行条件とのいずれか一方が成立するまでは、第3判定制御を継続して実行し、車両10の停止を待つ(矢印A308参照)。
【0047】
なお、実施形態において、上述した第1~第3判定制御間における制御の移行は、以下の(b1)~(b7)の条件の全てを満たす所定の場合にのみ許可される。以下の(b1)~(b7)の条件のうち少なくとも1つが満たされない場合、制御部204は、第2判定制御または第3判定制御の実行中であったとしても、第1判定制御に処理を戻すように設定される。
(b1)ABS禁止制御が実行されている。
(b2)フェールセーフとしてABS機能自体が禁止に設定されていない。
(b3)通信処理部201に異常が無い。
(b4)整備や点検などのために通信処理部201による通信が禁止に設定されていない。
(b5)エンジンECU400の通信機能に異常が発生していない。
(b6)エンジンECU400がブレーキECU200に向けて定期的に送信する信号が正常に受信されている。
(b7)ブレーキECU200に対して正常に電源が供給されている。
【0048】
このように、実施形態において、制御部204は、ABS禁止制御の実行中のエンジン300の再始動に応じて機械的にABS許可制御への切り替えを実行することなく、ABS禁止制御の実行中に停止操作が検出され、エンジン300が完全に停止し、かつ車両10が停止した場合に、ABS禁止制御から切り替えてABS許可制御を実行する。
【0049】
より具体的に、制御部204は、ABS禁止制御とともに、停止操作が検出されたか否かを判定する第1判定制御を実行し、当該第1判定制御において停止操作が検出されたと判定された場合に、エンジン300が完全に停止したか否かを判定する第2判定制御を実行する。このとき、制御部204は、エンジン300の作動中の第1判定制御において停止操作が検出されたと判定された場合は第2判定制御を実行し、エンジン300の停止中の第1判定制御において停止操作が検出されたと判定された場合は第1判定制御の実行を継続する。そして、制御部204は、第2判定制御においてエンジン300が完全に停止したと判定された場合に、車両10が停止したか否かを判定する第3判定制御を実行し、当該第3判定制御において車両10が停止したと判定された場合に、ABS禁止制御から切り替えてABS許可制御を実行する。
【0050】
なお、制御部204は、ABS禁止制御の実行中に停止操作が検出された後、エンジン300が完全に停止する前に作動操作が検出された場合、ABS禁止制御の実行を継続する。また、制御部204は、ABS禁止制御の実行中に停止操作が検出されてエンジン300が完全に停止した後、車両10が停止する前に作動操作が検出された場合、ABS禁止制御の実行を継続する。
【0051】
次に、実施形態において実行される処理の流れについて説明する。
【0052】
図4は、実施形態にかかるブレーキECU200がエンジンスイッチ504の操作に応じてABS禁止制御からABS許可制御に制御を切り替える際に実行する一連の処理を示した例示的かつ模式的なフローチャートである。この図4に示される一連の処理は、ABSスイッチ502の操作に応じてABS許可制御からABS禁止制御への切り替え(後述する図5も参照)が実行された場合に開始する。なお、図4では、エンジンスイッチ504が、「EGスイッチ」として記載されている。
【0053】
図4に示されるように、実施形態では、まず、ステップS401において、ブレーキECU200の制御部204は、第1判定制御を実行し、次の(c1)~(c3)の条件の全てが成立したか否かを判定する。
(c1)エンジンスイッチ504を介した停止操作が検出部203により検出された。
(c2)通信処理部201によりエンジンECU400から取得されるエンジン300の回転数が所定値Xを超えている(エンジン300の回転数が所定値Xより大きくなっていると読み替えてもよい)。
(c3)上記の(b1)~(b7)の条件の全ての成立に応じてエンジンスイッチ504による制御の切り替えが許可されている。
【0054】
ステップS401の処理は、上記の(c1)~(c3)の全てが成立したと判定されるまで繰り返し実行される。そして、ステップS401において、上記の(c1)~(c3)の全てが成立したと判定された場合、ステップS402に処理が進む。
【0055】
そして、ステップS402において、ブレーキECU200の制御部204は、第2判定制御を実行し、次の(d1)および(d2)の両方の条件が成立したか否かを判定する。
(d1)上記の(b1)~(b7)の条件の全ての成立に応じてエンジンスイッチ504による制御の切り替えが許可されている。
(d2)エンジンスイッチ504を介した停止操作が維持されている、または、エンジンスイッチ504を介した作動操作が実行されてからの経過時間が所定時間t1未満である。
【0056】
ステップS402において、上記の(d1)および(d2)のうち少なくとも一方の条件が成立しないと判断された場合、ステップS401に処理が戻る。一方、ステップS402において、上記の(d1)および(d2)の両方の条件が成立したと判断された場合、ステップS403に処理が進む。
【0057】
そして、ステップS403において、ブレーキECU200の制御部204は、エンジン300が完全に停止したか否か(たとえばエンジン300の回転数がゼロになったか否か)を判定する。
【0058】
ステップS403において、エンジン300が完全には停止していないと判定された場合、ステップS402に処理が戻る。一方、ステップS403において、エンジン300が完全に停止したと判定された場合、ステップS404に処理が進む。
【0059】
そして、ステップS404において、ブレーキECU200の制御部204は、第3判定制御を実行し、上記の(b1)~(b7)の条件の全ての成立に応じてエンジンスイッチ504による制御の切り替えが許可されているか否かを判定する。
【0060】
ステップS404において、エンジンスイッチ504による制御の切り替えが許可されていないと判定された場合、ステップS401に処理が戻る。一方、ステップS404において、エンジンスイッチ504による制御の切り替えが許可されていると判定された場合、ステップS405に処理が進む。
【0061】
そして、ステップS405において、ブレーキECU200の制御部204は、次の(e1)および(e2)の両方の条件が成立したか否かを判定する。
(e1)エンジン300が完全に停止している。
(e2)車両10が停止してから(たとえば車輪速センサ501の検出結果に基づく車輪の回転速度が所定値Y以下になってから)の経過時間が所定時間t2を超えている。
【0062】
ステップS405において、上記の(e1)および(e2)のうち少なくとも一方の条件が成立しないと判定された場合、ステップS406に処理が進む。そして、ステップS406において、エンジン300の回転数が所定値Xを超えたか否か(エンジン300の回転数が所定値X以上になったか否かと読み替えてもよい)を判定する。
【0063】
ステップS406において、エンジン300の回転数が所定値Xを超えたと判定された場合、ステップS401に処理が戻り、ブレーキECU200の制御部204は、第3判定制御から切り替えて第1判定制御を実行する。しかしながら、ステップS406において、エンジン300の回転数が所定値X未満であると判定された場合、ステップS404に処理が戻り、ブレーキECU200の制御部204は、引き続き第3判定制御を実行する。
【0064】
なお、ステップS405において、上記の(e1)および(e2)の両方の条件が成立したと判定された場合、ステップS407に処理が進む。そして、ステップS407において、ブレーキECU200の制御部204は、第3判定制御からABS許可制御に処理を移行する。そして、処理が終了する。
【0065】
このようにして、実施形態にかかるブレーキECU200は、ABS禁止制御の実行中に停止操作が検出され、エンジン300が完全に停止し、かつ車両10が停止した場合に、ABSスイッチ502の操作に関わらず、ABS禁止制御から切り替えてABS許可制御を実行する。
【0066】
一方、ABS許可制御からABS禁止制御への移行の流れは次の図5に示されるような形になる。
【0067】
図5は、実施形態にかかるブレーキECU200がABSスイッチ502の操作に応じてABS許可制御からABS禁止制御への切り替えを実行する際の一連の処理を示した例示的かつ模式的なフローチャートである。
【0068】
図5に示されるように、実施形態では、まず、ステップS501において、ブレーキECU200の制御部204は、次の(f1)および(f2)の両方の条件が成立したか否かを判定する。
(f1)上記の(a1)~(a5)の条件の全ての成立に応じてABSスイッチ502による制御の切り替えが許可されている。
(f2)ABSスイッチ502を介して実行される、ドライバによるABS禁止制御の実行の要求を示す禁止操作が検出部203により検出されている。
【0069】
ステップS501の処理は、上記の(f1)および(f2)の両方の条件が成立したと判定されるまで繰り返し実行される。そして、ステップS501において、上記の(f1)および(f2)の両方の条件が成立したと判定された場合、ステップS502に処理が進む。
【0070】
そして、ステップS502において、ブレーキECU200の制御部204は、次の(g1)および(g2)の両方の条件が成立したか否かを判定する。
(g1)上記の(a1)~(a5)の条件の全ての成立に応じてABSスイッチ502による制御の切り替えが許可されている。
(g2)禁止操作の継続時間が所定時間t11未満である。
【0071】
ステップS502において、上記の(g1)および(g2)のうち少なくとも一方が成立しないと判定された場合、ステップS501に処理が戻る。一方、ステップS502において、上記の(g1)および(g2)の両方の条件が成立したと判定された場合、ステップS503に処理が進む。
【0072】
そして、ステップS503において、ブレーキECU200の制御部204は、禁止操作の解除が検出部203により検出されたか否かを判定する。
【0073】
ステップS503において、禁止操作の解除が検出されていないと判定された場合、ステップS502に処理が戻る。一方、ステップS503において、禁止操作の解除が検出されたと判定された場合、ステップS504に処理が進む。
【0074】
そして、ステップS504において、ブレーキECU200の制御部204は、禁止操作が実行されてから解除されるまでの継続時間が上記の所定時間t11よりも短い所定時間t12を超えているか否かを判定する。
【0075】
ステップS504において、禁止操作の継続時間が所定時間t12以下であると判定された場合、検出された禁止操作は操作ミスであると推定することができる。したがって、この場合、ステップS501に処理が戻る。
【0076】
一方、ステップS504において、禁止操作の継続時間が所定時間t12を超えていると判定された場合、検出された禁止操作は操作ミスではないと推定することができる。したがって、この場合、ステップS502に処理が進み、当該ステップS502において、ブレーキECU200の制御部204は、ABS許可制御からABS禁止制御に処理を移行する。そして、処理が終了する。
【0077】
このようにして、実施形態にかかるブレーキECU200は、ABSスイッチ502を介した禁止操作が所定時間t12より長くかつ所定時間t11よりも短い所定の時間継続された場合にのみ、ABS許可制御から切り替えてABS禁止制御を実行する。
【0078】
なお、詳細な説明は省略するが、実施形態では、ABSスイッチ502によるABS禁止制御からABS許可制御への切り替えも、図5に示されるフローチャートと同様のフローチャートに従って実現されうる。つまり、実施形態にかかるブレーキECU200は、図4に示されるフローチャートに従った一連の処理とは別個に、ABSスイッチ502を介した所定の操作が所定の時間継続された場合に、ABS禁止制御から切り替えてABS許可制御を実行しうる。なお、ABSスイッチ502を介した所定の操作の継続時間は、たとえば所定の操作がなされた場合に直ちにABS禁止制御から切り替えてABS許可制御を実行するような、十分に小さい値に設定されてもよい。
【0079】
以上説明したように、実施形態にかかるブレーキECU200は、検出部203と、制御部204と、を備えている。検出部203は、車両10に設けられる電源スイッチ503を介して実行される、車両10の電源をオンにするオン操作および当該電源をオフにするオフ操作と電源スイッチ503とは別個に車両10に設けられるエンジンスイッチ504を介して実行される、エンジン300を作動する作動操作およびエンジン300の作動を停止する停止操作と、を検出する。制御部204は、液圧制御回路124を制御することで、車輪のロックを抑制するアンチロック制御としてのABS許可制御と、当該アンチロック制御よりも車輪のロックの抑制度合を低減するアンチロック低減制御としてのABS禁止制御と、を選択的に実行する。
【0080】
ここで、実施形態において、制御部204は、ABS禁止制御の実行中に停止操作が検出され、エンジン300が(完全に)停止し、かつ車両10が停止した場合に、ABS禁止制御から切り替えてABS許可制御を実行する。このような構成によれば、ドライバが意図的に停止操作を実行し、エンジン300が停止するとともに車両10が停止した場合にのみ、ABS禁止制御からABS許可制御への強制的な切り替えが実行される。したがって、ABS禁止制御からABS許可制御への切り替えを、ドライバの意図に沿った形で、利便性を損なうことなく実現することができる。
【0081】
さらに、実施形態では、前述したように、エンジンスイッチ504が、メータ(不図示)に設けられたABSスイッチ502に比べてドライバが操作しやすいハンドル(不図示)に設けられている。このような構成によれば、ABS禁止制御からABS許可制御への切り替えを簡単に実行することができる。
【0082】
また、実施形態において、制御部204は、ABS禁止制御の実行中に停止操作が検出された場合、エンジン300の停止と車両10の停止とが成立するか否かを判定する判定制御を実行し、当該判定制御においてエンジン300の停止と車両10の停止とが成立すると判定された場合に、ABS禁止制御から切り替えてABS許可制御を実行する。
【0083】
より具体的に、実施形態において、制御部204は、ABS禁止制御とともに、停止操作が検出されたか否かを判定する第1判定制御を実行し、当該第1判定制御において停止操作が検出されたと判定された場合に、エンジン300が停止したか否かを判定する第2判定制御を実行し、当該第2判定制御においてエンジン300が停止したと判定された場合に、車両10が停止したか否かを判定する第3判定制御を実行し、当該第3判定制御において車両10が停止したと判定された場合に、ABS禁止制御から切り替えてABS制御を実行する。このような構成によれば、ドライバの意図的な停止操作に応じてエンジン300および車両10が停止した場合にのみ、ABS禁止制御からABS許可制御への切り替えを実行することができる。
【0084】
また、実施形態において、制御部204は、ABS禁止制御の実行中であってエンジン300の作動中に停止操作が検出された場合は判定制御を実行し、ABS禁止制御の実行中であってエンジン300の停止中に停止操作が検出された場合は判定制御の実行を回避する。
【0085】
より具体的に、実施形態において、制御部204は、エンジン300の作動中の第1判定制御において停止操作が検出されたと判定された場合は第2判定制御を実行し、エンジン300の停止中の第1判定制御において停止操作が検出されたと判定された場合は第1判定制御の実行を継続する。このような構成によれば、ドライバの操作ミスである可能性が高いエンジン300の停止中の停止操作の検出を条件として、ABS禁止制御からABS許可制御への切り替えの前段階のステップである判定制御が実行されるのを回避することができる。より具体的に、たとえば車両10が停止して制御状態がABS禁止制御に移行した後、エンジン300の作動操作が行われる際に、誤ってエンジン300の停止操作が行われた場合に、ドライバの意図に反して制御状態がABS許可制御へ移行することを防止することができる。
【0086】
また、実施形態において、制御部204は、ABS禁止制御の実行中に停止操作が検出された後、エンジン300が停止する前に作動操作が検出された場合、ABS禁止制御の実行を継続する。このような構成によれば、不意の事象の発生に起因する停止操作をキャンセルするための操作である可能性が高いエンジン300が停止する前の作動操作の検出を条件として、ABS禁止制御からABS許可制御への切り替えが実行されるのを抑制することができる。
【0087】
また、実施形態において、制御部204は、ABS禁止制御の実行中に停止操作が検出されてエンジン300が停止した後、車両10が停止する前に作動操作が検出された場合、ABS禁止制御の実行を継続する。このような構成によれば、不意の事象の発生に起因する停止操作およびエンジン300の停止をキャンセルするための操作である可能性が高い車両10が停止する前の作動操作の検出を条件として、ABS禁止制御からABS許可制御への切り替えが実行されるのを抑制することができる。
【0088】
以上、本開示の実施形態を説明したが、上述した実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、または変更を行うことができる。また、上述した実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
2F 前輪(車輪)
2R 後輪(車輪)
10 車両
110、120 ブレーキ機構
124 液圧制御回路(制動力調整機構)
200 ブレーキECU(ブレーキ制御装置)
203 検出部
204 制御部
300 エンジン(駆動源)
図1
図2
図3
図4
図5