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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20220822BHJP
   A61K 8/68 20060101ALI20220822BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20220822BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220822BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K8/68
A61K8/63
A61K8/37
A61Q19/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018126369
(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公開番号】P2020007229
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】乾 まどか
(72)【発明者】
【氏名】宮地 伸幸
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-107930(JP,A)
【文献】特開2016-079183(JP,A)
【文献】特開2002-322026(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012214034(DE,A1)
【文献】Moisture Cream,ID 4630661,Mintel GNPD[online],2017年2月,[検索日2021.07.26],URL,https://www.portal.mintel.com
【文献】Koh Gen Do オールインワン モイスチャー ジェル リッチ,Cosmetic-Info.jp [online],2016年10月3日,[2021.07.26検索],URL,https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=47082
【文献】TSUDA SETSUKO スキンバリアクリーム,Cosmetic-Info.jp [online],2017年9月1日,[2021.07.26検索],URL,https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=52255
【文献】Face Lotion EX,ID 6009753 ,Mintel GNPD[online],2018年9月,[検索日2021.07.26],URL,https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
CAPLUS/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリルグルコシドと、ヒドロキシステアリン酸コレステリルと、トリエチルヘキサノインと、セラミドから選択される1種又は2種以上を含有する皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセリルグルコシドと、抱水性油剤から選択される1種又は2種以上と、セラミドから選択される1種又は2種以上を含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
グリセリルグルコシド(特許文献1)、抱水性油剤(特許文献2)、セラミド(特許文献3)を皮膚外用剤に配合することはそれぞれよく知られている。
【0003】
しかしながら、これらの成分は有効量配合するとべたつきが生じたり、結晶の析出を生じたりする課題があった。そこで、種々の成分との併用が検討されているが、その効果は限定的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-222496号公報
【文献】特開2011-046653号公報
【文献】特開2008-231061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特定の成分を併用することにより、角質水分量が相乗的に向上し、保湿効果を発揮する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、グリセリルグルコシドと、抱水性油剤から選択される1種又は2種以上と、セラミドから選択される1種又は2種以上を含有する皮膚外用剤を提供する。
またさらに抱水性油剤が、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル又はフィトステリル・べへニル・オクチルドデシル)、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリルから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする上記の皮膚外用剤を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の皮膚外用剤は、角質水分量が相乗的に向上し、高い保湿効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0009】
本発明の皮膚外用剤は、化粧品、医薬部外品、医薬品等のいずれの用途にも用いられ得る。
【0010】
本発明で使用するグリセリルグルコシドは、皮膚外用剤に配合し得るものであれば製造方法は、合成、微生物により発酵法等を問わない。具体的には、α体、β体、或いはこれらの混合物のいずれも用いることができる。
【0011】
グリセリルグルコシドの含有量は皮膚外用剤の全質量基準で、0.001~5質量%が好ましく、0.001~1質量%がより好ましい。グリセリルグルコシドの含有量が0.001質量%未満では、充分な保湿効果が得られない場合がある。グリセリルグルコシドの含有量が5質量%を超えると、べたつきの原因となる場合がある。
【0012】
本発明で使用する抱水性油剤は、皮膚外用剤に配合しうるものであれば特に限定されない。本発明において抱水性とは、以下の抱水力試験により測定される抱水力(%)を指す。抱水力試験方法は、50℃に加熱した試料10gを200mlビーカーに秤り取り、デスパミキサーにて3000rpmで攪拌しながら50℃の水を徐々に、水が試料から排液してくるまで添加し、水が排液しない最大量(質量)を測定し、この数値を試料10gで除し、100倍して抱水力(%)とした。
【0013】
本発明の抱水性油剤としては、それ自体に水を抱え込むことのできる油剤であればいずれでもよいが、特に抱水力が100%以上であると、自重と等量以上の水を抱水することができるため、好ましい。具体的には、例えば、ラノリン、還元ラノリン、ラノリン脂肪酸、ラノリンアルコール、酢酸ラノリン、ヒドロキシラノリン等のラノリン誘導体及びそれらをポリオキシアルキレンで変性したもの、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、アミノ酸フィトステロール、ヒマシ油、ステアリン酸硬化ヒマシ油、シア脂等の多価アルコール脂肪酸エステル、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル等を挙げることができ、これらを必要に応じて、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、本発明の効果の観点から、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル又はフィトステリル・べへニル・オクチルドデシル)、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリルが好ましい。本発明において抱水性油剤は1種を単独で、若しくは2種以上を併用して用いる。
【0014】
本発明における抱水性油剤の配合量は特に限定されないが、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%である。0.01質量%未満の配合では保湿効果の相乗的向上が認めらない場合がある。20質量%を超えて配合すると使用感にべたつきが生じる場合がある。
【0015】
本発明で使用するセラミドには、セラミド及びセラミド類似構造物質の両方が含まれる。
【0016】
セラミドとしては、以下に示す、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド7等の天然セラミドや、スフィンゴミエリン、スフィンゴリン脂質、スフィンゴ糖脂質、フィトスフィンゴ糖脂質等が挙げられる。
【0017】
【化1】

【0018】
セラミド類似構造物質としては、次の一般式(1)~(6)で表される化合物が挙げられる。
【0019】
【化2】


[式中、R及びRは同一又は異なり、水酸基が置換していてもよい炭素数8~26の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。]
【0020】
【化3】



[式中、Rは炭素数10~26の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、Rは炭素数9~25の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、X及びYは、水素原子又は水酸基を示し、aは0又は1の数を示し、cは0~4の数を示し、b及びdは0~3の数を示す。]
【0021】
【化4】


[式中、R及びRは同一又は異なり、炭素数1~40の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のヒドロキシル化されていてもよい炭化水素基を示し、Rは炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基又は単結合を示し、Rは水素原子、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基又は2,3-ジヒドロキシプロピルオキシ基を示す。ただしRが単結合の時はRは水素原子である。]
【0022】
【化5】


[式中、Rは炭素数4~40のヒドロキシル化されていてもよい炭化水素基を示し、R10は炭素数3~6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、R11は炭素数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基を示す。]
【0023】
【化6】


[式中、R、R、R10、R11は前記と同じ意味を示す。]
【0024】
【化7】


[式中、R、R及びRは前記と同じ意味を示し、R12は水素原子、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基又は2,3-エポキシプロピルオキシ基を示す。
ただし、Rが単結合の時R12は水素原子である]
【0025】
セラミドとしては、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6及びセラミド7からなる群より選ばれる少なくとも1種の天然セラミドを用いることが好ましく、セラミド1及び/又はセラミド3を用いることがより好ましい。このようなセラミドは、皮膚外用剤として用いた時の保湿性に優れる。
【0026】
セラミドの含有量は皮膚外用剤の全質量基準で、0.0001~1質量%が好ましく、0.0005~1質量%がより好ましく、0.0005~1質量%が更に好ましく、0.001~1質量%が特に好ましい。セラミドの含有量が0.0001質量%未満では、充分な保湿効果が得られない場合がある。セラミドの含有量が上記上限値を超す場合は、高温での加熱が必要になったりするために、分解や変性の虞が生じる。
【0027】
本発明の皮膚外用剤には、さらにグリシンを配合することが好ましい。グリシンは、アミノ酢酸とも呼ばれ、タンパク質を構成するアミノ酸の中で最も単純な形を有し、コラーゲンに多く含まれるアミノ酸である。グリシンとしては、皮膚外用剤に用いられ得るものであれば特に限定されない。
【0028】
本発明の皮膚外用剤は、上述の成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品に用いられる任意成分を、本発明の効果を阻害しない程度に配合することができる。具体的には、油剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【0029】
本発明の皮膚外用剤の剤型は、特に限定されず、水系、油系、乳化型等いずれの剤型でもよい。
【0030】
本発明の皮膚外用剤は定法により調製することができる。
【0031】
本発明の皮膚外用剤は、例えば、ローション剤、乳剤、軟膏の剤型で用いることができる。
【実施例
【0032】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。なお、配合量は特に断りのない限り質量%である。また実施例においてグリセリルグルコシドは東洋精糖社製「COSARTE2G」を使用した。
【0033】
[保湿効果試験]
・前腕内側部をあらかじめ決められた石鹸(商品名:ノブソープD)を用いて洗浄し、前腕の水分をふき取る。
・21±0.5℃、相対湿度50±5%の環境下で15分安静にし馴化する。
・左右前腕に4箇所ずつ3.0cm×3.0cmの領域を記し、塗布前の角質水分量を測定する。表1に記載の実施例若しくは比較例を合計9μL塗布して、塗布後60分後の角質水分量を測定した。
なお、被験者は、試験前1週間前腕内側に化粧料を使用しないよう指導のもと試験を行い、各測定領域につき5回測定した平均値を測定値とした。各試験のn数は20である。また、角質水分量はIBS社製SKICON-200EXを用いて測定した、角質水分量は、溶媒のみを塗布した部位の水分変化量を1とした相対値で算出し表1にあわせて示した。
【0034】
【表1】
【0035】
表1、実施例1に示した通り、グリセリルグルコシドと、ヒドロキシステアリン酸コレステリルとセラミド3を併用して用いることにより、それぞれを単独で3倍量配合した比較例より60分後の角質水分量が多くなっていた。かかることより、特定の成分を併用して用いることにより、保湿効果が相乗的に向上することが明らかとなった。
【0036】
[実施例2]乳液
(1)スクワラン 10.0(質量%)
(2)メチルフェニルポリシロキサン 4.0
(3)ヒドロキシステアリン酸コレステリル 0.5
(4)セラミド3 0.002
(5)水素添加大豆リン脂質 0.1
(6)モノステアリン酸ポリオキシエチレン
ソルビタン(20E.O.) 1.3
(7)モノステアリン酸ソルビタン 1.0
(8)グリセリン 3.0
(9)グリセリルグルコシド 1.0
(10)グリシン 0.5
(11)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(12)カルボキシビニルポリマー 0.15
(13)精製水 100とする残部
(14)アルギニン(1質量%水溶液) 20.0
製法:(1)~(7)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(8)~(13)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。冷却後40℃にて、(14)を加え、均一に混合する。
【0037】
[実施例3]クリーム
(1)スクワラン 10.0(質量%)
(2)ステアリン酸 2.0
(3)ヒドロキシステアリン酸コレステリル 0.5
(4)セラミド3 0.002
(5)水素添加大豆リン脂質 0.1
(6)セタノール 3.6
(7)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(8)グリセリン 9.0
(9)グリセリルグルコシド 1.0
(10)グリシン 0.3
(11)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(12)アルギニン(20質量%水溶液) 15.0
(13)精製水 100とする残部
(14)カルボキシビニルポリマー(1質量%水溶液) 15.0
製法:(1)~(7)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(8)~(13)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。(14)を加え、均一に混合する。