(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】ナースコールシステム
(51)【国際特許分類】
H04M 9/00 20060101AFI20220822BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20220822BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20220822BHJP
A61G 12/00 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
H04M9/00 B
G08B25/04 K
G08B21/02
A61G12/00 E
(21)【出願番号】P 2018203369
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(72)【発明者】
【氏名】菊池 修
【審査官】大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-136559(JP,A)
【文献】特開2018-119350(JP,A)
【文献】特開2005-349088(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0278104(US,A1)
【文献】特開2017-038758(JP,A)
【文献】特開平09-231488(JP,A)
【文献】特開2017-164350(JP,A)
【文献】特開2001-126174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 9/00-11/00
G08B 21/00-25/00
A61G 9/00、12/00
A47K 17/00
E03D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ内に設置され、緊急度の高い呼び出しを行うための呼出ボタンと、この呼出ボタンの操作時の緊急度を低くするために操作される緊急度低減操作部と、前記トイレ内の便座への
患者の着座を検知する着座検知部と、この着座検知部が前記患者の着座を検知している状態で前記緊急度低減操作部が操作された場合に前記呼出ボタンが操作されると緊急度の低い呼出信号を生成し、それ以外の場合に前記呼出ボタンが操作されると緊急度の高い呼出信号を生成する制御部と、前記制御部にて生成された呼出信号を出力するインターフェースとを備えたトイレ内ユニットと、
前記トイレ内ユニットから出力された前記呼出信号を入力する親機インターフェースと、この親機インターフェースが呼出信号を入力した場合に呼出信号の緊急度に応じて異なる報知を行う報知部と、前記報知に対して応答するために操作される応答操作部と、
前記親機インターフェースが前記呼出信号を入力した場合に、前記報知部を動作させるとともに、この報知に対して前記応答操作部が操作されたときに前記報知部の動作を停止する制御部とを備えたナースコール親機と、
を有するナースコールシステム。
【請求項2】
トイレ内に設置され、緊急度の高い呼び出しを行うための呼出ボタンと、この呼出ボタンの操作時の緊急度を低くするために操作される緊急度低減操作部と、時間を計測するタイマーと、前記緊急度低減操作部が操作された場合に前記タイマーが所定時間を計測するまで前記呼出ボタンが操作されると緊急度の低い呼出信号を生成し、それ以外の場合に前記呼出ボタンが操作されると緊急度の高い呼出信号を生成する制御部と、前記制御部にて生成された呼出信号を出力するインターフェースとを備えたトイレ内ユニットと、
前記トイレ内ユニットから出力された前記呼出信号を入力する親機インターフェースと、この親機インターフェースが呼出信号を入力した場合に呼出信号の緊急度に応じて異なる報知を行う報知部と、前記報知に対して応答するために操作される応答操作部と、
前記親機インターフェースが前記呼出信号を入力した場合に、前記報知部を動作させるとともに、この報知に対して前記応答操作部が操作されたときに前記報知部の動作を停止する制御部とを備えたナースコール親機と、
を有するナースコールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者や被介護者が看護師や介護者を呼び出すためのナースコールシステムに関し、特に、患者や被介護者がトイレなどの共用部から看護師や介護者を呼び出すためのナースコールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、病院や介護施設などでは、ナースコールシステムが用いられている。ナースコールシステムは、病院の患者が看護師の介助を必要とする際、または、介護施設の被介護者が介護者の介助を必要とする際に、患者や被介護者(以下、患者と記載する)がナースコール子機の呼出ボタンを操作することによって看護師や介護者(以下、看護師と記載する)を呼び出すことができるように成されたシステムである。
【0003】
ここで、病院や介護施設などにおいて、介助を必要とする患者がトイレを使いたいときは、ベッドサイドの呼出ボタンを操作して看護師を呼び出す。これに応じて看護師は、患者のベッドからの立ち上がり動作およびトイレへの移動、便座への着座動作を介助する。患者が用便を終了するまでに時間がかかる場合、看護師はいったんトイレから外に出る。そして、患者は、用便終了後にトイレ内に設置された呼出ボタンを操作して(例えば、特許文献1に記載)、看護師を再度呼び出す。この呼び出しを受けた看護師は、患者の便座からの立ち上がり動作、ベッドへの移動を介助する。
【0004】
ところで、上述したトイレ内に設置された呼出ボタンは、用便終了後に患者が看護師を呼び出すためだけではなく、患者がトイレ内で体調不良となった場合にも用いられる場合がある。この場合、看護師の患者への対応は一刻を争うため、トイレ内に設置された呼出ボタンによる呼び出しの緊急度を、ベッドサイドに設置された呼出ボタンによる呼び出しの緊急度よりも高くする必要がある。ここで、緊急度を高くするためには、トイレ内からの呼び出しの優先度を高くしたり、トイレ内からの呼び出しの報知音のメロディを異ならせたりすることが一般的である。このときの報知音のメロディは、緊急度を感じさせるブザー音やアラーム音などが考えられる。
【0005】
しかしながら、上述したように、トイレ内に設置された呼出ボタンからの呼び出しの緊急度を、ベッドサイドに設置された呼出ボタンからの呼び出しの緊急度よりも高くした場合、患者が用便終了後にトイレ内に設置された呼出ボタンを操作して看護師を再度呼び出した場合、患者がそれほど急いでいないときでも、呼び出しの緊急度が高くなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、トイレ内に設置された呼出ボタンからの呼び出しの緊急度を、ベッドサイドに設置された呼出ボタンからの呼び出しの緊急度よりも高くした場合でも、患者が用便終了後にトイレ内に設置された呼出ボタンを操作して看護師を再度呼び出したときに呼び出しの緊急度を高くしないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明では、トイレ内に設置され、緊急度の高い呼び出しを行うための呼出ボタンと、この呼出ボタンの操作時の緊急度を低くするために操作される緊急度低減操作部と、トイレ内の便座への着座を検知する着座検知部とを備え、この着座検知部が患者の着座を検知している状態で緊急度低減操作部が操作された場合に、呼出ボタンの操作時の緊急度を低減するようにしている。
【0009】
また、本発明の他の態様によれば、着座検知部の代わりにタイマーを備え、緊急度低減操作部が操作された場合に、タイマーが所定時間を計測するまで、呼出ボタンの操作時の緊急度を低減するようにしている。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した本発明によれば、介助を行った看護師が患者を便座に座らせてから緊急度低減操作部を操作することで、一定の期間(患者が離座したり、タイマーが所定時間を計測したりするまで)、トイレ内に設置された呼出ボタンによる操作が行われても、その呼び出しの緊急度が低減されるので、患者が用便終了後にトイレ内に設置された呼出ボタンを操作して看護師を再度呼び出したときに呼び出しの緊急度を高くしないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態によるナースコールシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態によるナースコールシステムの変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、ここでは病院に設置される看護支援用のナースコールシステムを例にとって説明するが、本実施形態のナースコールシステムは、病院に設置されるものに限定されない。例えば、介護施設等に設置される場合にも適用可能である。
図1は、本実施形態によるナースコールシステムの構成例を示すブロック図である。
図1において、1はトイレ内ユニットであり、トイレ内に設置されたりトイレの壁面などに埋め込まれて設置されたりしている。ここで、トイレ内ユニット1は、制御部2、呼出ボタン3、緊急度低減操作部4、着座検知部5、インターフェース6を備えて構成されている。
【0013】
10はナースコール親機であり、看護師が常駐するナースステーションなどに設置され、看護師によって患者からの呼び出しに応答する際に使用される。ここで、ナースコール親機10は、親機制御部11、親機インターフェース12、記憶部13、報知部14、応答操作部15を備えて構成されている。
【0014】
また、ナースコール親機10には、ベッドサイドに設置されているナースコール子機(図示せず)が接続されている。そして、トイレ内ユニット1およびナースコール子機とナースコール親機10との間には、廊下灯や制御機(ともに図示せず)が接続されている。廊下灯は、トイレ内の患者が呼び出しを行った場合や病室内の患者が呼び出しを行った場合に、呼び出しが行われたことを表示する。また、制御機は、トイレ内ユニット1およびナースコール子機とナースコール親機10との通信の制御を行う。
【0015】
まず、トイレ内ユニット1の各構成要素について説明する。制御部2は、トイレ内ユニット1の各構成要素を後述するように制御するためのものであり、CPU(Central Processing Unit)などにより構成されている。呼出ボタン3は、患者が看護師を呼び出す際に操作するためのものであり、比較的緊急度の高い呼び出しを行うためのものである。ここで、呼出ボタン3は、便座に座っている患者が操作可能な位置に設置されている。また、呼出ボタン3が操作されると、制御部2は、呼出信号を生成する。ここで、この呼出信号には、このトイレ内ユニット1を他のトイレ内ユニット1と識別するための施設識別情報が付加されている。また、この呼出信号には、この呼び出しの緊急度を示す緊急度情報も付加されている。この緊急度情報は少なくとも二段階の緊急度を示す情報である。
【0016】
緊急度低減操作部4は、看護師が自身の介助した患者を便座に座らせた後に操作するためのものであり、呼出ボタン3による呼び出しの緊急度を低くするために操作され、ボタンなどにより構成されている。ここで、緊急度低減操作部4は、患者によって不用意に操作されることを防ぐため、便座に座っている患者から見え難い位置や操作し難い位置に設置されることが好ましい。また、緊急度低減操作部4が操作されていない状態で呼出ボタン3が操作された場合、制御部2は、緊急度高の呼出信号を生成する。一方、緊急度低減操作部4が操作された状態で呼出ボタン3が操作された場合、制御部2は、緊急度低の呼出信号を生成する。
【0017】
着座検知部5は、便座へ患者などが着座しているか否かを検知するためのものであり、測距センサーや荷重センサーなどにより構成されている。ここで、緊急度低減操作部4の操作は、着座検知部5が便座への患者の着座を検知している場合のみ有効としている。
【0018】
インターフェース6は、トイレ内ユニット1の各機器とナースコール親機10とを接続して通信を行うためのものであり、呼出ボタン3が操作された際に制御部2にて生成される呼出信号をナースコール親機10へ送信する。
【0019】
次に、ナースコール親機10の各構成要素について説明する。親機制御部11は、ナースコール親機10の各構成要素を後述するように制御するためのものであり、CPUなどにより構成されている。親機インターフェース12は、ナースコール親機10とトイレ内ユニット1およびナースコール子機とを接続して通信を行うためのものである。ここで、親機インターフェース12は、トイレ内ユニット1およびナースコール子機から出力された呼出信号を識別可能に入力する。
【0020】
記憶部13は、トイレ内ユニット1の施設識別情報と、このトイレ内ユニット1の名称や場所などを特定するための施設情報とを関連付けて予め記憶している。また、記憶部13は、ナースコール子機の子機識別情報(例えば、ベッド番号など)と、この子機識別情報によって特定されるナースコール子機を使用する患者を特定するための患者情報(例えば、患者の氏名など)とを関連付けて予め記憶している。これにより、呼び出しを行った場所や患者を特定することができる。
【0021】
報知部14は、患者が看護師を呼び出していることを音声や表示などで報知するためのものであり、スピーカーなどの音声出力装置やディスプレイなどの表示装置、ランプなどの点灯装置の少なくともひとつの装置により構成されている。ここで、親機インターフェース12が呼出信号を入力した場合に、親機制御部11は報知部14を動作させる。このとき、親機制御部11は、呼出信号に含まれる施設識別情報や子機識別情報に関連付けて記憶部13に記憶されている施設情報や患者情報を読み出し、スピーカーから報知音を出力させたり、ディスプレイに呼び出しが行われていることおよび呼び出しを行った患者の患者情報を表示させたり、ランプを点滅させたりする。
【0022】
また、報知部14は、呼出信号に含まれる緊急度情報に応じて、スピーカーから出力される報知音や、ディスプレイの表示内容、ランプの点灯方法などを異ならせる。具体的には、呼出信号に含まれる緊急度情報が緊急度高である場合、呼出信号に含まれる緊急度情報が緊急度低である場合と比較して、報知部14は、看護師が気付きやすい報知音や表示内容、点灯方法により報知を行う。
【0023】
ここで、本実施形態では、緊急度低減操作部4が操作されていない状態で呼出ボタン3が操作された場合の緊急度を高、緊急度低減操作部4が操作されている状態かつ着座検知部5が患者の便座への着座を検知している状態で呼出ボタン3が操作された場合の緊急度を低としており、各病室に設置されるナースコール子機からの呼び出しの緊急度も低としている。
【0024】
なお、呼び出しの緊急度を三段階とした場合、緊急度低減操作部4が操作されている状態かつ着座検知部5が患者の便座への着座を検知している状態で呼出ボタン3が操作された場合の緊急度と、各病室に設置されるナースコール子機からの呼び出しの緊急度とを異ならせるようにしても良い。この場合、どちらの呼び出しの緊急度を高くするかは任意に設定することが可能である。
【0025】
応答操作部15は、報知部14が動作している状態で、看護師が患者からの呼び出しに対して応答する際に使用される。ここで、応答操作部15は、ハンドセットなどにより構成されており、看護師はハンドセットをオフフックすることで応答することが可能である。ここで、応答操作部15が操作されることにより、親機制御部11は、報知部14の動作を停止させる。
【0026】
次に、本実施形態の動作を説明する。自力でトイレに行くことが困難な患者がトイレに行きたいと考えた場合、患者はベッドサイドのナースコール子機を操作して看護師を呼び出す。この呼び出しを受けた看護師は、患者の居る病室へ行き、患者を介助してトイレへ連れて行く。
【0027】
看護師が患者をトイレの便座に座らせると、着座検知部5が患者の着座を検知する。ここで、便座に座らせた患者がトイレから緊急性の高い呼び出しを行う可能性の高い患者であると看護師が判断した場合(換言すると、患者が体調不良を訴える可能性が高いと看護師が判断した場合)、看護師は緊急度低減操作部4を操作せずにトイレを離れる。このとき、患者が呼出ボタン3を操作すると、制御部2は緊急度高の呼出信号を生成し、インターフェース6より出力する。
【0028】
一方、便座に座らせた患者がトイレから緊急性の高い呼び出しを行う可能性の低い患者であると看護師が判断した場合(換言すると、患者が体調不良を訴える可能性が低いと看護師が判断した場合)、看護師は緊急度低減操作部4を操作してトイレを離れる。このとき、患者の便座への着座が着座検知部5により検知されている間は、患者が呼出ボタン3を操作すると、制御部2は緊急度低の呼出信号を生成し、インターフェース6より出力する。
【0029】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、トイレ内に設置され、緊急度の高い呼び出しを行うための呼出ボタン3と、この呼出ボタン3の操作時の緊急度を低くするために操作される緊急度低減操作部4と、トイレ内の便座への着座を検知する着座検知部5とを備え、この着座検知部5が患者の着座を検知している状態で緊急度低減操作部4が操作された場合に、呼出ボタン3の操作時の緊急度を低減するようにしている。
【0030】
これにより、介助を行った看護師が患者を便座に座らせてから緊急度低減操作部4を操作することで、患者が離座するまで、トイレ内に設置された呼出ボタン3による操作が行われても、その呼び出しの緊急度が低減されるので、患者が用便終了後にトイレ内に設置された呼出ボタン3を操作して看護師を再度呼び出したときに呼び出しの緊急度を高くしないようにすることができる。
【0031】
なお、前述した実施形態では、呼出ボタン3の操作時の緊急度を低減する期間は、着座検知部5が患者の着座を検知している間であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、着座検知部5の代わりに
図2に示すようなタイマー7を設け、緊急度低減操作部4が操作された場合に、タイマー7が所定時間を計測するまで、呼出ボタン3の操作時の緊急度を低減するようにしても良い。
【0032】
また、前述した実施形態の着座検知部5と上述した変形例のタイマー7とを併用するようにしても良い。この場合、着座検知部5が患者の着座を検知した場合にタイマー7を動作させ、タイマー7が所定時間を計測するまでは呼出ボタン3の操作時の緊急度を低減し、タイマー7が所定時間を計測した後は呼出ボタン3の操作時の緊急度を高くするようにしても良い。これにより、患者が長時間着座した後の呼び出しを患者の体調不良によるものとすることができる。
【0033】
その他、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 トイレ内ユニット
2 制御部
3 呼出ボタン
4 緊急度低減操作部
5 着座検知部
6 インターフェース
7 タイマー
10 ナースコール親機
11 親機制御部
12 親機インターフェース
13 記憶部
14 報知部
15 応答操作部