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特許7126808情報処理装置および情報処理装置用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】情報処理装置および情報処理装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 40/56 20200101AFI20220822BHJP
   G06F 40/205 20200101ALI20220822BHJP
【FI】
G06F40/56
G06F40/205
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017024438
(22)【出願日】2017-02-13
(65)【公開番号】P2018132838
(43)【公開日】2018-08-23
【審査請求日】2019-09-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】516027018
【氏名又は名称】株式会社ICSパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(72)【発明者】
【氏名】原本 吉▲煌▼
【合議体】
【審判長】高瀬 勤
【審判官】関口 明紀
【審判官】中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-139208(JP,A)
【文献】特開平10-334084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F40/20-40/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクライアント端末に接続され、それら複数のクライアント端末から送信されてくる書面データが示す書面の内容を解析して所定の処理を行う情報処理装置であって、
前記書面データを所定のクライアント端末から受信する書面データ受信部と、
前記書面データから、前記処理を実行するために用いられる情報を示すデータである処理用データを抽出するとともに、該処理用データの示す情報の項目を特定し、該特定した項目を示すデータである処理情報項目データを生成する、書面データ解析部と、
前記処理を実行するために必要な情報の項目を示すデータである必要情報項目データを格納している格納部と、
前記必要情報項目データと前記処理情報項目データとを比較し、該書面データにおいて前記処理のために不足している情報の項目である不足情報項目を特定する特定部と、
前記不足情報項目に係る情報を特定するための質問データを生成して前記所定のクライアント端末又はその他のクライアント端末に送信する質問データ生成部とを備えており、
前記特定部は、前記質問データを受信したクライアント端末からの返信データを解析し、該返信データが示す返信情報において前記処理のためになお不足している情報がある場合は、当該情報の項目である追加不足情報項目を特定するものであり、
前記質問データ生成部は、
前記特定部によって追加不足情報項目が特定される都度、追加不足情報項目に係る情報を特定するための追加質問データを生成して前記所定のクライアント端末又はその他のクライアント端末に送信する一方で、
前記質問データおよび該追加質問データの送信回数の合計が所定回数に達した場合には、前記書面を処理できない旨を示す処理不可データを前記所定のクライアント端末又はその他のクライアント端末に送信するとともに、前記書面を自身で処理することを要求する旨を示す処理要求データを前記所定のクライアント端末又はその他のクライアント端末に送信するものであることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記特定部によって不足情報項目および追加不足情報項目が特定されない場合に、前記処理用データに基づいて、前記書面に対して前記所定の処理を行う処理実行部をさらに有する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記処理は複数の種類の処理から選択される処理であり、前記格納部は、前記複数の種類の処理のそれぞれについて、実行するために必要な情報の項目を示すデータである必要情報項目データを格納している、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記書面データ受信部が受信した書面データに基づいて、前記複数の種類の処理から前記所定の処理を自動的に選択する処理選択部をさらに有する、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記書面データ解析部は、字句解析、形態素解析および構文解析から選択される解析方法により前記書面データを解析する、請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
複数のクライアント端末に接続され、それら複数のクライアント端末から送信されてくる書面データが示す書面の内容を解析して所定の処理を行う情報処理装置用のプログラムであって、前記処理を実行するために必要な情報の項目を示すデータである必要情報項目データを格納している格納部を有する情報処理装置を、
前記書面データを所定のクライアント端末から受信する書面データ受信部と、
前記書面データから、前記処理を実行するために用いられる情報を示すデータである処理用データを抽出するとともに、該処理用データの示す情報の項目を特定し、該特定した項目を示すデータである処理情報項目データを生成する、書面データ解析部と
記必要情報項目データと前記処理情報項目データとを比較し、該書面データにおいて前記処理のために不足している情報の項目である不足情報項目を特定する特定部と、
前記不足情報項目に係る情報を特定するための質問データを生成して前記所定のクライアント端末又はその他のクライアント端末に送信する質問データ生成部として機能させるためのプログラムであり、
前記特定部は、前記質問データを受信したクライアント端末からの返信データを解析し、該返信データが示す返信情報において前記処理のためになお不足している情報がある場合は、当該情報の項目である追加不足情報項目を特定するものであり、
前記質問データ生成部は、
前記特定部によって追加不足情報項目が特定される都度、追加不足情報項目に係る情報を特定するための追加質問データを生成して前記所定のクライアント端末又はその他のクライアント端末に送信する一方で、
前記質問データおよび該追加質問データの送信回数の合計が所定回数に達した場合には、前記書面を処理できない旨を示す処理不可データを前記所定のクライアント端末又はその他のクライアント端末に送信するとともに、前記書面を自身で処理することを要求する旨を示す処理要求データを前記所定のクライアント端末又はその他のクライアント端末に送信するものであることを特徴とする情報処理装置用のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書面の内容を解析して所定の処理を行うための情報処理装置および情報処理装置用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間が行う作業の一部を代行することを目的として、自律的に作業を行うことが可能な(以下において、人工知能を有する、と記載することがある)情報処理装置が開発されている。
このような人工知能を有する情報処理装置として、例えば特許文献1には、ユーザーから指示(入力)された業務を自律的に処理(出力)するためのパーソナルアシスタントを備えたものが開示されている。特許文献1に開示された情報処理装置は、指示された業務の処理方法をパーソナルアシスタントが知らない場合には、パーソナルアシスタントが、当該業務の処理方法を知識ベースに追加することをユーザーに要求し、追加された処理方法に基づいて業務を処理することができる。
このような自律的に作業を行うことができる情報処理装置に期待される活用例として、例えば、会計分野において、領収書に記載されている情報に基づいて、領収書を経費別に自律的に仕分けすること、また設計分野において、仕様書に記載された内容について記載の漏れの有無のチェックを行い、記載の漏れがある場合には補完し、漏れのない仕様書を完成させる、といったことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-509301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年人工知能に関する技術が発達したとはいえ、未だ人間が行う作業の全てを完璧に代行することができないのが実情であり、人工知能を備えた情報処理装置に対する指示等の入力に対して、人間では起こし得ない誤った処理を行う可能性がある。
【0005】
例えば特許文献1に開示されるような人工知能を備えた情報処理装置は、ユーザーが指示する業務の処理方法が知識ベースに含まれていない場合には、当該業務を処理可能と判断できる程度になるまでユーザーに質問を繰り返し、最終的には情報処理装置自らの判断により業務の処理を行うものであり、すなわち、人間が行う作業の全てを情報処理装置が代行するものである。そのため、困難な業務を処理する場合には、却って誤った処理を行う可能性がある。
【0006】
また、人間が行う作業の全てを代行することを目的とする高度な人工知能を備える情報処理装置では、装置の構成が複雑なものとなり、その結果製造コストが高くなる。さらには、人工知能を備える装置が、人間が行う作業の全てを代行しようとするため、困難な業務を処理する場合には、却って、処理が長期化し、生産性が低下する可能性がある。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、困難な業務を処理する場合であっても、誤った処理を行う可能性を低減でき、業務の処理に要する時間を短縮することができ、さらには簡易な構成により低コストで製造することができる情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る情報処理装置は、複数のクライアント端末に接続され、それら複数のクライアント端末から送信されてくる書面データが示す書面の内容を解析して所定の処理を行う情報処理装置であって、前記書面データを所定のクライアント端末から受信する書面データ受信部と、前記書面データから、前記処理を実行するために用いられる情報を示すデータである処理用データを抽出するとともに、該処理用データの示す情報の項目を特定し、該特定した項目を示すデータである処理情報項目データを生成する、書面データ解析部と、前記処理を実行するために必要な情報の項目を示すデータである必要情報項目データを格納している格納部と、前記必要情報項目データと前記処理情報項目データとを比較し、該書面データにおいて前記処理のために不足している情報の項目である不足情報項目を特定する特定部と、前記不足情報項目に係る情報を特定するための質問データを生成して前記所定のクライアント端末又はその他のクライアント端末に送信する質問データ生成部とを備えており、前記特定部は、前記質問データを受信したクライアント端末からの返信データを解析し、該返信データが示す返信情報において前記処理のためになお不足している情報がある場合は、当該情報の項目である追加不足情報項目を特定するものであり、前記質問データ生成部は、前記特定部によって追加不足情報項目が特定される都度、追加不足情報項目に係る情報を特定するための追加質問データを生成して前記所定のクライアント端末又はその他のクライアント端末に送信する一方で、前記質問データおよび該追加質問データの送信回数の合計が所定回数に達した場合には、前記書面を処理できない旨を示す処理不可データを前記所定のクライアント端末又はその他のクライアント端末に送信するものである。
【0009】
このような構成であれば、書面を自動的に処理することが困難である場合には、最終的な書面の処理を行わず、ユーザーの補助を受けることができるので、誤った処理を行う可能性を低減することができる。また、人間が行う書面の処理についての全ての作業を代行することを要しないので、高度な人工知能を備える必要がなく、装置の構成を簡単にすることができ、低コストで製造することができる。さらには、書面を自動的に処理することが困難である場合に、クライアント端末との間でのデータの送受信回数を低減することができるので、最終的に書面を処理するまでに要する時間を短縮することができ、ユーザーの業務の生産性を高めることができる。
【0010】
本発明の実施形態に係る情報処理装置は、前記特定部によって不足情報項目および追加不足情報項目が特定されない場合に、前記処理用データに基づいて、前記書面に対して前記所定の処理を行う処理実行部をさらに有することが好ましい。
このような構成であれば、書面の処理を実行できる場合には自動的に処理を行うので、効率的に書面を処理することができる。
【0011】
前記処理は複数の種類の処理から選択される処理であり、前記格納部は、前記複数の種類の処理のそれぞれについて、実行するために必要な情報の項目を示すデータである必要情報項目データを格納していることが好ましい。
このような構成であれば、異なる種類の書面に対して、単一の情報処理装置により対応することができる。
【0012】
本発明の実施形態に係る情報処理装置は、前記書面データ受信部が受信した書面データに基づいて、前記複数の種類の処理から前記所定の処理を自動的に選択する処理選択部をさらに有することが好ましい。
このような態様であれば、異なる種類の書面に対して自動的に処理を行うことができるので、効率的に書面を処理することができる。
【0013】
前記質問データ生成部は、前記質問データおよび前記追加質問データの送信回数の合計が所定回数に達した場合には、前記書面を処理することを要求する旨を示す処理要求データを前記所定のクライアント端末又はその他のクライアント端末に送信することが好ましい。
このような態様であれば、最終的にはユーザー自身によってより確実に書面が処理されるので、誤った処理を行う可能性をより低減するとともに、書面の処理時間をより短縮することができる。
【0014】
前記書面データ解析部の具体的な実施態様としては、字句解析、形態素解析および構文解析から選択される解析方法により前記書面データを解析することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明の情報処理装置は、クライアント端末から受信したデータが書面を処理するのに不十分である場合には、ユーザーに質問を行うことで追加のデータを受信する一方で、質問の回数が所定の回数に達した場合には、書面を処理することを中止し、書面の処理が不可能であることをユーザーに通知するものである。すなわち、本発明の情報処理装置は、人間が行う全ての作業を代行するものではなく、書面の処理が困難な場合には、最終的な書面の処理について人間の補助を受けることができる。そのため、本発明の情報処理装置によれば、誤った処理を行う可能性を低減することができる。また、人間が行う書面の処理についての全ての作業を代行することを要しないので、高度な人工知能を備える必要がなく、構成を簡単にすることができ、低コストで製造することができる。さらには、書面の処理が困難な場合には、最終的な書面の処理について人間の補助を受けることができるので、最終的に書面を処理するまでに要する時間を短縮することができ、ユーザーの業務の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る情報処理装置110を用いた情報処理システム100の構成を示す概念図である。
図2図2は、同実施形態に係る情報処理装置110の内部機器構成を示す模式的機器構成図である。
図3図3は、同実施形態に係る情報処理装置110の機能ブロック図である。
図4図4は、同実施形態に係る情報処理装置110の動作を示すフローチャートである。
図5図5は、同実施形態に係る情報処理装置110の書面データ解析部2の機能の一例を示す概念図である。
図6図6は、同実施形態に係る情報処理装置110の書面データ受信部1、書面データ解析部2、特定部4および質問データ生成部5の機能の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。以下に説明する情報処理システムおよび情報処理装置は本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。
【0018】
本実施形態の情報処理システム100は、人間に代わって、例えば領収書の内容を解析して所定の処理、すなわち領収書等を経費別に仕分すること、を行うものである。この情報処理システム100について説明する。図1に示すように情報処理システム100は、サーバである情報処理装置110と、このサーバにインターネット等のネットワークXを介して通信可能に接続された複数のクライアント端末120とを備えている。なお、“領収書”とは、特許請求の範囲でいう“書面”のことである。
【0019】
まずクライアント端末120について説明する。クライアント端末120は、ユーザーが使用する、所謂パーソナルコンピュータであり、CPU、揮発メモリ等の記憶装置、マウスおよびキーボード等の入力部やディスプレイに接続するための入出力インターフェース等を有する。ユーザーは、入力部を介して領収書の内容をテキストデータとしてクライアント端末120に入力し、例えば電子メールにより、このテキストデータをサーバに送信することができる。領収書の内容とは、例えば、領収書の発行日、領収書を受け取る会社の名称、金額、購入品目等に関する情報である。なお、ここでいう“テキストデータ”とは、特許請求の範囲でいう“書面データ”のことである。
次に、サーバたる本実施形態の情報処理装置110の機器構成および機能について説明する。
【0020】
情報処理装置110は、クライアント端末120から送信されてくる前記書面データを解析して所定の処理を行うものである。情報処理装置110は、物理的には単一のコンピュータから構成されてもよく、また図1に示すように、ネットワークを介して接続された複数のコンピュータから構成されていてもよい。
図2は、本実施形態の情報処理装置110の内部機器構成を示す模式的機器構成図である。図2に示すように、本実施形態の情報処理装置110は、CPU10、揮発メモリまたはHDD等の記憶装置20、マウスやキーボードなどの入力部40やディスプレイ50に接続するための入出力インターフェース30等を有する。そして、情報処理装置110用プログラムを前記記憶装置20にインストールし、そのプログラムに基づいてCPU10や周辺機器を共働させることにより、この情報処理装置110が、図3の機能ブロック図に示すように、書面データ受信部1、書面データ解析部2、格納部3、特定部4および質問データ生成部5としての機能を実現するように構成されている。
各部の詳細について、図3を参照しながら説明する。
【0021】
(1)書面データ受信部1
書面データ受信部1は、前記書面データを所定のクライアント端末120から受信するものである。書面データ受信部1はまた、後述する質問データ生成部5が、不足情報項目に係る情報を特定するための質問を示す質問データを生成してクライアント端末120に送信した後、クライアント端末120から、不足情報項目に係る情報を含むテキストデータ(特許請求の範囲における「返信データ」のことをいう)を受信するものである。
【0022】
(2)書面データ解析部2
書面データ解析部2は、書面データ受信部1が受信した書面データから、処理を実行するために用いられる情報を示すデータである処理用データを抽出するものである。処理を実行するために用いられる情報とは、本実施形態においては、領収書の仕分けを行うために必要な具体的な情報であり、例えば、発行の日付、領収書を受け取る会社の名称、金額、購入品目等の個別具体的な情報である。
また書面データ解析部2は、抽出した処理用データの示す情報の項目を特定し、特定した項目を示すデータである処理情報項目データを生成するものである。抽出した処理用データの示す情報の項目(処理情報項目)とは、本実施形態においては、例えば、抽出した処理用データが示す情報が「5000円」、「8月1日」であれば、「金額」、「発行の日付」である。
【0023】
書面データ解析部2はまた、前記書面データ受信部1が返信データを受信した場合には、処理を実行するために用いられる情報を示す追加処理用データを返信データから抽出するものである。そして抽出した追加処理用データの示す情報の項目を特定し、特定した項目を示すデータである追加処理情報項目データを生成するものである。
【0024】
前記書面データからの処理用データの抽出および処理情報項目データの生成(まとめて「書面データの解析」、と記載することがある)は、既知の種々の方法を用いてよい。図5に、書面データ解析部2による、書面データの解析の一例を示す。図5に示すように、受信する書面データとしては、定型テキストデータおよび非定型テキストデータのいずれのデータであってもよい。書面データ解析部2は、字句解析、形態素解析および構文解析から選択される適切な解析方法により、書面データを解析することができる。返信データからの追加処理用データの抽出および追加処理情報項目データの作成についても同様である。
【0025】
(3)格納部3
格納部3は、記憶装置20の所定領域に設定されたものであり、処理を実行するために必要な情報の項目を示すデータである必要情報項目データを格納するものである。処理を実行するために必要な情報の項目とは、本実施形態においては、領収書の仕分けを実行するために必要な情報の項目であり、例えば、「領収書の発行の日付」、「領収書を受け取る会社の名称」、「金額」、「購入品目」等の項目である。かかる必要情報項目は、処理を行う書面の種類および行う処理の内容に応じて、ユーザーが任意に設定することができる。
【0026】
(4)特定部4
特定部4は、格納部3に格納されている必要情報項目データと、書面データ解析部2から受信した処理情報項目データとを比較して、所定のクライアント端末120から受信した書面データにおいて、実行しようとする処理のために不足している情報の項目である不足情報項目を特定するものである。特定部4が不足情報項目を特定することにより、受信した書面データが示す書面において、いかなる情報項目に係る情報が不足しているかを特定することができる。不足情報項目とは、本実施形態において、例えば、必要情報項目が「貸借」、「領収書の発行の日付」、「領収書を受け取る会社の名称」、「金額」および「購入品目」であり、処理情報項目が「貸借」、「領収書の発行の日付」、「領収書を受け取る会社の名称」および「金額」である場合には、「購入品目」である。
【0027】
特定部4は、さらに、前記返信データを解析し、返信データが示す返信情報において処理のためになお不足している情報がある場合には、当該不足している情報の項目である追加不足情報項目を特定するものである。
具体的には、書面データ受信部1から追加処理情報項目データを取り込み、前記処理情報項目データおよび前記追加処理情報項目データと、必要情報項目データとを比較して、実行しようとする処理のためになお不足している情報の項目である追加不足情報項目を特定する。そして特定した追加不足情報項目を示すデータである追加不足情報項目データを生成するものである。
追加不足情報項目とは、本実施形態において、例えば、必要情報項目が「貸借」、「領収書の発行の日付」、「領収書を受け取る会社の名称」、「金額」および「購入品目」であり、処理情報項目および追加処理情報項目が「貸借」、「領収書の発行の日付」、「領収書を受け取る会社の名称」および「金額」である場合には、「購入品目」である。
【0028】
特定部4はまた、前記処理用データが示す情報と、前記不足情報項目と、後述する返信データが示す情報との関係を学習して更新する学習機能と、前記処理用データが示す情報と、前記学習機能により学習した関係とに基づいて、不足情報項目が示す情報を類推する類推機能を有している。
例えば、処理用データが示す情報として購入品目が「パソコン」であり購入台数が「1000台」であることが含まれており、特定した不足情報項目が「貸借の区分」であるとする。その後、貸借の区分を特定するための質問データを送信後、クライアント端末からの返信データに「貸借の区分は貸方である」という情報が含まれているとする。この場合、特定部4は、処理用データが示す情報に、購入品目が「パソコン」であり、購入台数が「1000台」であることが含まれている場合は貸借の区分は「貸方」である、と学習する。そして次回以降において、処理用データが示す情報に購入品目が「パソコン」であり、購入台数が「1000台」であることが含まれており、特定した不足情報項目が「貸借の区分」である場合には、特定部4は「貸借の区分」は「貸方」と類推し、不足情報項目が示す情報を補完する。
特定部4がこの学習機能および類推機能を有することで、不足情報項目がある場合に、後述する質問データ生成部5からクライアント端末120に質問データを送信することなく、不足情報項目に係る情報を特定することができる。
【0029】
(5)質問データ生成部5
質問データ生成部5は、特定部4から受信した不足情報項目データに基づいて、不足情報項目に係る情報を特定するための直接的または間接的な質問を示す質問データを生成して、当該質問データを、例えば電子メールにより、クライアント端末120に送信するものである。この質問データは、領収書の情報を示すテキストデータを送信してきたクライアント端末(特許請求の範囲の「所定のクライアント端末」をいう)に送信されてよく、または予めメモリに記憶されているユーザー情報を参照して、最初にテキストデータを送信してきたクライアント端末を使用するユーザーとの関連性が高いユーザー(例えば、上司や同僚等)が使用するクライアント端末120(特許請求の範囲の「その他のクライアント端末」をいう)に送信されてもよい。これにより、書面の内容において処理を実行するために不足している情報がある場合には、ネットワークを介して接続されている複数のクライアント端末120のいずれかから当該不足情報を引き出すことができ、書面に不足している情報を自動的に補完することができ、書面を適切に処理できる可能性を高めることができる。
【0030】
本実施形態において、例えば、特定部4が特定した不足情報項目が「購入品目」である場合に、質問データ生成部5は、「購入品目」の内容を具体的に特定するための質問を示す質問データを生成する。例えば、「購入品目は何か?」という直接的な質問を示す質問データを、電子メールにより、複数のクライアント端末120のいずれかに送信することができる。また、「購入品目は何の用途に用いるものか?」という間接的な質問を示す質問データを送信することができる。また特定部4の類推機能により、不足情報項目に係る情報を類推できる場合には、類推した不足情報が正しいか否かを質問する旨を示す質問データを生成し、クライアント端末120に送信することができる。
【0031】
質問データ生成部5は、さらに、特定部4によって追加不足情報項目が特定される都度、追加不足情報項目に係る情報を特定するための追加質問データを作成して、複数のクライアント端末120のいずれかに送信するものである。これにより、書面の内容において処理を実行するために不足している情報を、複数のクライアント端末120のいずれかから繰り返し引き出すことができる。追加質問データの送信先であるクライアント端末は、質問データの送信先であるクライアント端末と同じ端末であってよく、また異なる端末であってもよい。すなわち、特定のユーザーが使用するクライアント端末に、質問内容を変更して追加質問データを繰り返し送信してもよい。また、同じ質問内容を示す追加質問データを、異なるユーザーが使用するクライアント端末に送信してもよい。
【0032】
質問データ生成部5は、クライアント端末120への質問データおよび追加質問データの送信回数の合計をカウントすることができ、この送信回数に応じて、追加質問データをさらに送信するか否かを判断するものである。この送信回数が、所定の値(1以上の任意の整数である。例えば3回。)に達した場合であって、特定部4がなお不足情報項目を特定する場合には、その後追加質問データを生成することなく、領収書を処理できない旨を示す処理不可データを複数のクライアント端末120のいずれかに送信するものである。処理不可データの送信先であるクライアント端末120は、領収書の情報を示す書面データを送信してきたクライアント端末でもよく、または当該クライアント端末を使用するユーザーとの関連性が高いユーザーが使用するクライアント端末120でもよい。
【0033】
上述した質問データ、追加質問データおよび処理不可データを生成する方法としては、例えば、既知の自然言語処理技術を用いることができる。
【0034】
書面データ受信部1、書面データ解析部2、特定部4および質問データ生成部5の機能の一例について、図6を用いて説明する。
図6において、点線で囲まれている領域(a)は、書面データ受信部2および書面データ解析部3の機能を示す例である。点線で囲まれている領域(b)は、特定部4の機能を示す例である。点線で囲まれている領域(c)は、質問データ生成部5の機能を示す例である。
【0035】
領域(a)では、書面データ受信部1が書面データを受信し、書面データ解析部2が、書面データから処理用データを抽出するとともに処理情報項目データを生成している。
【0036】
領域(b)では、特定部4により、必要情報項目データと処理情報項目データとを比較し、書面データにおいて処理のために不足している情報の項目である不足情報項目を特定している。具体的には、図6に示す例では、“A~Fおよび1~0”が必要情報項目を示しており、このうち、“A~C、E、G~I、1~4、6、7、9および0”が処理情報項目を示している。図6に示す例では、“過去記録”および“参照情報”を参照することにより、情報項目“D、Jおよび5”についての情報を類推し、情報項目“Fおよび8”を不足情報項目として特定している。
【0037】
領域(c)では、質問データ生成部5により、特定部4が特定した不足情報項目である“Fおよび8”に係る情報を特定するための質問データを生成して、電子メールによりクライアント端末に送信する。その後電子メールを受信したクライアント端末を使用するユーザーは、不足情報項目に係る情報を、テキストデータ(すなわち、返信データ)としてクライアント端末に入力し、電子メールにより、領域(a)の書面データ受信部1に送信する。
一方で、質問データおよび累加質問データの合計送信回数が所定の値“x+1”に達した場合には、領収書を処理できない旨を示す処理不可データを、電子メールにより、クライアント端末に送信する。
【0038】
<情報処理装置110の動作>
次に、本実施形態に係る情報処理装置110による、領収書を処理するまでの動作について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0039】
まず、書面データ受信部1が、領収書の内容を示すデータであるテキストデータを所定のクライアント端末120から受信する(ステップS1)。
【0040】
書面データ受信部1が、所定のクライアント端末120から受信したテキストデータを、書面データ解析部2に送信する。書面データ解析部2は、このテキストデータから、領収書の仕分けを実行するために用いられる情報を示すデータである処理用データを抽出するとともに、処理用データの示す情報の項目を特定し、特定した項目を示すデータである処理情報項目データを生成する(ステップS2)。
【0041】
書面データ解析部2は、生成した処理情報項目データを、特定部4に送信する。特定部4は、格納部3に格納されている必要情報項目データと、書面データ解析部2から受信した処理情報項目データとを比較して、所定のクライアント端末120から受信したテキストデータにおいて、領収書の仕分けのために不足している情報の項目である不足情報項目を特定する(ステップS3)。
【0042】
特定部4が不足情報項目を特定する場合、不足情報項目を示すデータである不足情報項目データを生成し、質問データ生成部5に送信する。質問データ生成部5は、これまでの質問データおよび追加質問データの合計送信回数をカウントし、この送信回数が、設定した所定の値(図4においてn回と表記。nは、ユーザーが設定する1以上の任意の整数。)未満であるか否かを判断する(ステップS4)。この送信回数が所定の値未満である場合には、質問データまたは追加質問データを生成して、複数のクライアント端末120のいずれかに、例えば電子メールにより送信する(ステップS5)。質問データまたは追加質問データを受信したクライアント端末120のユーザーは、不足情報項目に係る情報を、テキストデータ(すなわち“返信データ”)としてクライアント端末120に入力し、例えば電子メールにより、書面データ受信部1に送信する。その後、前記ステップS1~S4の処理を繰り返し実行する。
【0043】
特定部4が不足情報項目を特定する場合であって、質問データ生成部5からの質問データおよび追加質問データの送信回数が設定した所定の値に達している場合には、領収書の仕分けを実行できない旨を、複数のクライアント端末120に出力(または送信)する(ステップS6)。
【0044】
<本実施形態の効果>
上述したように、本実施形態の情報処理装置110は、クライアント端末120から受信した書面データが処理を実行するのに不十分である場合に、不足情報項目に係る情報を特定するための質問データを生成してクライアント端末120に送信し、一方で質問データの送信回数が所定の回数に達した場合には書面を処理できない旨を送信する質問データ生成部5を備えている。
【0045】
本実施形態の情報処理装置110は、このような質問データ生成部5を備えることにより、書面を自動的に処理することが困難である場合には、最終的な書面の処理を行わず、当該書面の処理方法を知っているユーザーの補助を受けることができる。そのため、質問データを送信することで自動的に書面を処理できる可能性を高めながらも、処理が困難な書面について誤った処理を行う可能性を低減することができる。
【0046】
さらに本実施形態の情報処理装置110は、人間が行う書面の処理についての全ての作業を代行することを要しないので、高度な人工知能を備える必要がなく、構成を簡単にすることができ、低コストで製造することができる。さらには、書面を自動的に処理することが困難である場合に、クライアント端末120と情報処理装置110との間でのデータの送受信回数を低減することができるので、最終的に書面を処理するまでに要する時間を短縮することができ、ユーザーの業務の生産性を高めることができる。
【0047】
<好ましい実施形態>
本発明に係る情報処理装置は、上述した実施形態に限定されない。
以下に、本発明に係る情報処理装置の好ましい形態について説明する。特段の説明の無いものについては、上述の実施形態に係る情報処理装置110と同じ構成を有してもよい。
【0048】
好ましい実施形態では、情報処理装置110は、特定部4によって不足情報項目および追加不足情報項目が特定されない場合に、書面データ解析部2で抽出された処理用データおよび追加処理用データに基づいて、書面に対して所定の処理を行う処理実行部6をさらに有していてもよい。処理実行部6を有することにより、情報処理装置110は、書面の処理を実行できる場合には自動的に処理を行うので、効率的に書面を処理することができる。
【0049】
情報処理装置110が処理実行部6を有する場合の、情報処理装置110の動作について、図4を参照して説明する。このような実施形態に係る情報処理装置110では、ステップS3において特定部4が不足情報項目を特定しない場合には、特定部4は処理用データおよび追加処理用データを処理実行部6に送信し、処理実行部6は書面の処理を行う(ステップS7)。
【0050】
別の好ましい実施形態では、情報処理装置110が行う所定の処理は、複数の種類の処理から選択される処理であり、格納部3は複数の種類の処理のそれぞれについて、実行するために必要な情報の項目を示すデータである必要情報項目データを格納していてもよい。このような形態であれば、異なる種類の書面に対して、単一の情報処理装置110により対応することができる。
このような実施形態においては、書面に対して行う所定の処理を、ユーザーが任意に選択して設定してもよい。また情報処理装置110が、受信した書面データに基づいて書面に対して行うべき処理を推定して自動的に選択する処理選択部をさらに有し、当該処理選択部によって自動的に処理を選択してもよい。
【0051】
別の好ましい実施形態では、質問データ生成部5は、前記質問データおよび前記追加質問データの送信回数の合計が所定回数に達した場合には、処理不可データの送信に代えて、又は処理不可データの送信と共に、書面を処理することを要求する旨を示す処理要求データを所定のクライアント端末又はその他のクライアント端末120に送信してもよい。これにより、書面の処理が困難であり、情報処理装置110によって書面を処理することができない場合に、ユーザー自身によってより確実に書面が処理されるので、誤った処理を行う可能性をより低減するとともに、書面の処理時間をより短縮することができる。
【0052】
別の好ましい実施形態において、書面データ受信部1は、画像データをテキストデータに変換するОCR(Optical Character Recognition、光学文字認識)機能を備えていることが好ましい。このような形態であれば、クライアント端末120から送信される書面データが、ユーザー等が領収書を写真撮影した画像データである場合には、書面データ受信部1において、当該画像データをОCR(Optical Character Recognition、光学文字認識)機能により自動的にテキストデータに変換することができる。
【0053】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行ってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 ・・・書面データ受信部
2 ・・・書面データ解析部
3 ・・・格納部
4 ・・・特定部
5 ・・・質問データ生成部
6 ・・・処理実行部
10 ・・・CPU
20 ・・・記憶装置
30 ・・・入出力インターフェース
40 ・・・入力部
50 ・・・ディスプレイ
100・・・情報処理システム
110・・・情報処理装置
120・・・クライアント端末
X ・・・ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6