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特許7126810クランプ装置、クランプシステム及びクランプアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】クランプ装置、クランプシステム及びクランプアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/00 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
B23Q3/00 A
【請求項の数】 22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017110749
(22)【出願日】2017-06-05
(65)【公開番号】P2018001399
(43)【公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-02-27
(31)【優先権主張番号】00829/16
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】502454802
【氏名又は名称】エロワ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】EROWA AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ヘディガー
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-348835(JP,A)
【文献】特開2005-305638(JP,A)
【文献】特開2010-023223(JP,A)
【文献】特開平10-138068(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00694364(EP,A1)
【文献】特開昭60-080535(JP,A)
【文献】特開2003-266260(JP,A)
【文献】特開2010-099785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/00
B23Q 3/02
B23Q 3/18
B23Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプチャック(1)と、該クランプチャック(1)にクランプ可能なクランプ要素(2)とを備え、前記クランプチャック(1)は、前記クランプ要素(2)のための収容開口(7)と、前記クランプ要素(2)を前記収容開口(7)内にてクランプするためのクランプ部材(20)とを有しているクランプ装置において、
前記クランプ要素(2)が、X方向又はY方向に延びる細長形状を有し、前記クランプチャック(1)に、前記クランプ要素(2)のためのX方向又はY方向に延びる細長スロット状の収容開口(7)が設けられ、弾性的な可撓性を有する少なくとも1個の芯出し要素(9)が、前記クランプチャック(1)における前記収容開口(7)の差し込み領域に配置され、該芯出し要素(9)により、前記クランプ要素(2)が前記収容開口(7)内に差し込まれる際に前記収容開口(7)の長手方向軸線(L)に対して直角に整列されることを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクランプ装置であって、前記少なくとも1個の芯出し要素(9)に、細長の芯出し開口(11)が設けられ、前記クランプチャック(1)における前記収容開口(7)及び前記芯出し開口(11)の両者が、長手方向において、前記クランプ要素(2)よりも長く形成されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のクランプ装置であって、前記クランプ部材(20)が、細長のスライダとして構成されると共に、前記クランプ要素(2)のクランプ面(33)に係合することを特徴とするクランプ装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のクランプ装置であって、前記クランプチャック(1)に、互いに平行に配置された2個のクランプ部材(20)が設けられていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のクランプ装置であって、前記各クランプ部材(20)が、長手方向において、前記クランプ要素(2)よりも長く構成されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項6】
請求項2に記載のクランプ装置であって、前記芯出し要素(9)が、耐錆性を有する鋼で構成された一体的な芯出しディスク(9a)として形成され、該芯出しディスク(9a)が、前記クランプチャック(1)における前記収容開口(7)の差し込み領域に配置され、前記芯出し開口(11)が、前記芯出しディスク(9a)に形成されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載のクランプ装置であって、前記クランプ要素(2)における2つの長手方向側面のそれぞれに沿ってクランプ面(33)が設けられ、前記各クランプ部材(20)が、前記クランプ面(33)に摩擦係合的及び/又は形状密着的に当接することにより、前記クランプ要素(2)が前記クランプチャック(1)内に引き込まれてクランプされることを特徴とするクランプ装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載のクランプ装置であって、前記クランプ要素(2)における2つの長手方向側面のそれぞれに沿って、テーパ付けされた芯出し面(35)と、クランプ面(33)とが設けられ、該クランプ面(33)が、前記クランプ要素(2)の差し込み方向に見て、芯出し面(35)の上方に配置され、前記クランプ部材(20)が、細長のスライダとして構成されると共に、前記クランプ要素(2)の各クランプ面(33)に係合することを特徴とするクランプ装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載のクランプ装置であって、前記クランプチャック(1)における前記各クランプ部材(20)に、直線的にシフト可能な少なくとも1個の作動ピストン(24)が設けられ、該少なくとも1個の作動ピストン(24)が、ピストンハウジング(8a, 8b)内に収容されると共に、前記各クランプ部材(20)に機械的に接続されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項10】
請求項に記載のクランプ装置であって、前記各作動ピストン(24)及び/又は前記各クランプ部材(20)が、圧縮ばね(25, 38)により、収容開口(7)に向けて負荷され、前記各作動ピストン(24)が、空圧により、前記ばね(25, 38)力に抗してシフト可能であることを特徴とするクランプ装置。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載のクランプ装置であって、前記クランプ要素(2)における2つの長手方向側面のそれぞれに、テーパ付けされた芯出し面(35)が設けられ、該各芯出し面(35)が、2段状に構成されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載のクランプ装置であって、前記クランプチャック(1)の全長に亘って途切れることなく延びるよう形成された収容開口(7)が設けられていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項13】
請求項1~12の何れか一項に記載のクランプ装置であって、前記クランプチャック(1)の上側に、前記収容開口(7)の両側にて延びる隆起支持面(15a, 15b)が設けられていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項14】
請求項1~13の何れか一項に記載の少なくとも2個のクランプ装置を備えるクランプシステムであって、前記少なくとも2個のクランプ装置は、クランプ支持部上に配置された少なくとも2個のクランプチャック(1a, 1b, 1c, 1d)と、ワークキャリア上に配置されると共に、前記クランプチャック(1a, 1b, 1c, 1d)と同数のクランプ要素(2a, 2b, 2c, 2d)とを有しているクランプシステムにおいて、
少なくとも2個の前記クランプチャック(1a, 1b, 1c, 1d)が、60°、72°、90°、又は120°の角度で互いにオフセット配置され、前記ワークキャリア上に、前記クランプチャック(1a, 1b, 1c, 1d)に対応するようクランプ要素(2a, 2b, 2c, 2d)が配置されていることを特徴とするクランプシステム。
【請求項15】
クランプ支持部上に互いにオフセット配置された少なくとも2個、特に、クランプ支持部(42)上に60°、72°、90°又は120°の角度で互いにオフセット配置された少なくとも3個のクランプチャック(1a, 1b, 1c, 1d)と、ワークキャリア上に配置されると共に、前記クランプチャック(1a, 1b, 1c, 1d)と同数のクランプ要素(2a, 2b, 2c, 2d)とを備え、各クランプチャック(1a, 1b, 1c, 1d)は、前記クランプ要素(2a, 2b, 2c, 2d)のための収容開口と、前記クランプ要素(2a, 2b, 2c, 2d)を前記収容開口内にてクランプするためのクランプ部材とを有しているクランプシステムにおいて、
前記クランプ要素(2a, 2b, 2c, 2d)と、前記クランプチャック(1a, 1b, 1c, 1d)におけるスロット状の収容開口が、何れもX方向又はY方向に延びる細長形状を有し、弾性的な可撓性を有する芯出し要素が、前記クランプチャック(1a, 1b, 1c, 1d)における前記収容開口の差し込み領域に配置され、該芯出し要素により、前記クランプ要素(2a, 2b, 2c, 2d)が、前記収容開口内に差し込まれる際に、前記収容開口の長手方向軸線に対して直角に整列されることを特徴とするクランプシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のクランプシステムであって、前記クランプ支持部(42)上に、90°の角度で互いにオフセットさせた4個のクランプチャック(1a, 1b, 1c, 1d)が配置され、前記ワークキャリア(40)上に、該ワークキャリア(40)を前記クランプ支持部(42)にクランプするための4個のクランプ要素(2a, 2b, 2c, 2d)が配置されているクランプシステムにおいて、
2個のクランプチャック(1b, 1d)における前記収容開口の差し込み領域に、前記ワークキャリア(40)を第1方向に整列させるための芯出しディスク(9b, 9d)が設けられ、他の2個の前記クランプチャック(1a, 1c)における前記収容開口の差し込み領域に、前記ワークキャリア(40)を第1方向に直交する第2方向に整列させるための芯出しディスク(9a, 9c)が設けられていることを特徴とするクランプシステム。
【請求項17】
請求項15に記載のクランプシステムであって、前記クランプ支持部(42, 42a)上に、少なくとも4個のクランプチャック(1a~1d;1e~1k)が配置され、少なくとも2個のクランプチャック(1a, 1c;1f, 1h)が、互いに一方向に整列され、少なくとも1個の更なるクランプチャック(1b, 1d;1g, 1k;1e, 1i)が、前記互いに一方向に整列された少なくとも2個のクランプチャック(1a, 1c;1f, 1h)に対して、前記クランプ支持部(42, 42a)上に90°の角度で配置されていることを特徴とするクランプシステム。
【請求項18】
請求項15に記載のクランプシステムであって、前記クランプ支持部(42, 42a)上に、少なくとも4個のクランプチャック(1a~1d;1e~1k)が配置され、少なくとも2個のクランプチャック(1a, 1c;1f, 1h)が、互いに第1方向に整列され、少なくとも2個の更なるクランプチャック(1b, 1d;1f, 1h)が、互いに第2方向に整列され、前記互いに第1方向に整列された少なくとも2個の各クランプチャック(1a, 1c;1f, 1h)に、前記各クランプ要素を第1方向に整列させるための芯出しディスク(9a, 9c; 9f, 9h)が設けられ、前記互いに第2方向に整列された少なくとも2個の各クランプチャック(1b, 1d; 1g, 1k)に、前記クランプ要素を第1方向に対して90°の角度でオフセットさせた第2方向に整列させるための芯出しディスク(9b, 9d; 9g, 9k)が設けられていることを特徴とするクランプシステム。
【請求項19】
請求項15に記載のクランプシステムであって、前記クランプ支持部上に、3個、4個、5個又は6個のクランプチャックが円周に沿って分布するよう配置されていることを特徴とするクランプシステム。
【請求項20】
請求項15~19の何れか一項に記載のクランプシステムであって、前記クランプチャック(1)における前記収容開口(7)及び前記芯出し要素に形成された芯出し開口(11)の両者が、長手方向において、前記各クランプ要素(2)よりも長く形成されていることを特徴とするクランプシステム。
【請求項21】
請求項15~20に記載のクランプシステムであって、前記各クランプチャック(1)が、細長のスライダとして構成されると共に、互いに平行に配置されたクランプ部材(20)を有し、該クランプ部材(20)が、前記各クランプ要素(2)のクランプ面(33)に係合することを特徴とするクランプシステム。
【請求項22】
下側クランプ部分(42)及びワークキャリア(40)を備え、前記下側クランプ部分(42)は、少なくとも4個のクランプチャック(1a, 1b, 1c, 1d)を有し、前記ワークキャリア(40)は、前記クランプチャック(1a, 1b, 1c, 1d)と同数のクランプ要素(2a, 2b, 2c, 2d)を有し、該クランプ要素(2a, 2b, 2c, 2d)により、前記ワークキャリア(40)が前記下側クランプ部分(42)上の正確な位置に再現的にクランプ可能なクランプアセンブリにおいて、
前記クランプ要素(2a, 2b, 2c, 2d)が、X方向又はY方向に延びる細長形状を有し、前記各クランプチャック(1a, 1b, 1c, 1d)に、前記クランプ要素(2a, 2b, 2c, 2d)のためのX方向又はY方向に延びる細長スロット状の収容開口が設けられ、2個のクランプチャック(1b, 1d)における前記収容開口の差し込み領域に、弾性的な可撓性を有すると共に、前記各クランプ要素のための細長の芯出し開口(11)を有する芯出しディスク(9b, 9d)が設けられ、これにより前記クランプ要素(2a, 2b, 2c, 2d)が、前記収容開口に差し込まれる際に一方向に整列され、前記クランプチャック(1)における前記収容開口(7)及び前記芯出し開口(11)の両者が、長手方向において、前記クランプ要素(2)よりも長く形成されていることを特徴とするクランプアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に係るクランプ装置、請求項14の前提部に係る、クランプ装置を備えるクランプシステム、並びに請求項22の前提部に係るクランプアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の対象とするクランプ装置は、クランプ要素をクランプチャックに所定位置でクランプするために機能する。各クランプチャックは、通常、工作機械の作業台に固定配置されるのに対して、各クランプ要素は、基本的に、ワークキャリア(ワークパレット)上に配置される。
【0003】
特許文献1(欧州特許出願公開第0614725号明細書)には、ワークを工作機械の作業台上で正確にクランプするための装置が開示されている。この装置は、加工機械の作業台に固定される支持部と、その支持部上に配置可能であると共にクランプ可能なワークキャリアとにより構成されている。ワークキャリアは、4個のクランプジャーナルを有するため、支持部上に対応するように配置された4個のクランプ手段にクランプすることができる。ワークキャリアを支持部に対して整列可能とするため、支持部には、芯出し定規状に構成された第1整列部材が設けられているのに対して、ワークキャリアは、溝付きプレート状に構成された更なる整列部材を有する。ワークキャリアを支持部上に固定する際、上述した芯出し定規が溝付きプレートの溝に係合することにより、ワークキャリアがX及びY方向に位置決めされるだけでなく、Z軸線周りの角度位置に関しても位置決めされる。Z軸線に関する位置決めは、ワークキャリアがクランプ手段により支持部に対して引っ張られ、ワークキャリアの平坦な底面が、支持部における環状支持面に当接することによって達成される。特許文献1に開示のクランプ装置は、実用的であることが証明されてはいるが、大型又は超大型のワークキャリアのクランプに関しては条件付きでのみ適している。これは、ワークキャリアの大きさが増加するにつれ、例えば熱による影響を受けて、ワークキャリアの絶対的長さ変化も増加するからである。この点が問題になるのは、例えば、ワークキャリアを構成する材料と、上方にクランプチャックが配置された作業台を構成する材料とが異なることが多いためである。即ち、下側クランプ部分、特にクランプチャックが固定された作業台と、上側クランプ部分、特にクランプ要素が配置されたワークキャリアとが有する熱膨張係数は異なることが多い。熱膨張係数が異なるというこの問題とは別に、個々のクランプ要素が互いに1m以上離間し得る大型のワークキャリアにおいては、各クランプ要素をワークキャリアに正確に固定し、対応するクランプチャックの間隔に正確に一致させなければならないという問題も存在する。言うまでもなく、この点は、特に円形のクランプ要素において問題となる。
【0004】
大型のワークキャリアを正確な位置でクランプ可能とするには、一般的に、複数個のクランプチャックが使用されると共に、クランプチャックと同数のクランプ要素がワークキャリアに設けられる。芯出し要素が設けられた複数個のクランプチャックが使用される場合、ワークキャリアのクランプに関連してX‐Y平面内に過剰寸法の問題が生じ得る。
【0005】
このような過剰寸法を回避するため、特許文献2(欧州特許出願公開第0403428号明細書)には、ワークを正確にクランプするための装置が開示されている。この装置は、芯出しピンが設けられた少なくとも2個のクランプチャックと、クランプチャックの個数に対応すると共に、クランプジャーナルが固定された上側部分とを備える。上側部分は、ワーク収容部上に配置されている。各上側部分には、芯出しピンに対応する芯出しスロットが設けられている。各上側部分は更に、クランプ球部により、各クランプチャックにおける中央収容部分にクランプ可能な円形の引張りピン(引張りボルト)を有する。各クランプチャックには、4個の芯出しピンが設けられているのに対し、上側部分には、その1個にのみ4つの芯出しスロットが設けられている。他の上側部分には、それぞれ、2つの芯出しスロットしか設けられていない。これにより、ワーク収容部の位置は、X方向及びY方向に関しては4つの芯出しスロットが設けられた1個の上側部分によって規定されるのに対して、Z軸線周りの角度位置に関してのみ他の上側部分によって規定される。
【0006】
特許文献2に開示の装置は、その実用性が認められてはいるが、構成が比較的複雑である上、大型で重いワークキャリアの反復的かつ正確なクランプに関しては条件付きでのみ適している。特に、各クランプチャックにおける円形の中央収容部分に対して、円形の各クランプピンを高精度で位置決めする必要があるからである。更に、この装置では、極めて大きな保持力を発揮することができない。
【0007】
特許文献3(欧州特許出願公開第0267352号明細書)には、ワーク又はツールをクランプするためのクランプ装置が開示されている。この装置は、工作機械に固定された第1結合部と、ワーク用の第2結合部(キャリア)とを備える。これら2個の結合部には、互いに協働する結合部材が対として設けられている。その協働を可能とするため、第1結合部上には、軸受ブロック状の収容手段が配置され、キャリアには、収容手段の溝に位置決めのために係合する剛性輪郭部が配置されている。例示的な実施形態においては、キャリアを第1結合部にクランプするために、アンダーカットの傾斜面に係合するクランプ状突出部が設けられている。
【0008】
更に、特許文献4(欧州特許出願公開第1595641号明細書)には、クランプチャックと、これに対して着脱自在に取り付けられるパレットとを備えるクランプ装置が開示されている。クランプチャックには、互いに90°の角度でオフセットさせた4つの芯出し溝が設けられており、パレットには、芯出し溝に対応して配置された4個の芯出しピンが設けられている。芯出し溝における一方の側面は、芯出しピンを芯出しするために機能し、芯出し溝における他方の側面は、各芯出しピンを溝にクランプ可能とするクランプ要素によって構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許出願公開第0614725号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0403428号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0267352号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1595641号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上述した従来技術に属するクランプ装置において、構成を簡略化すると共に、一方では、大きなクランプ力又は保持力を発揮し、他方では、付属する各クランプ要素の位置決め又は配置に関する公差を少なくとも一方向、特にX方向又はY方向に補償可能とすることである。本発明のクランプ装置は、クランプシステムを構成するためのモジュールとしても適することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題は、請求項1の特徴により解決される。本発明によれば、クランプ装置は、クランプチャックと、クランプチャックにクランプ可能なクランプ要素とを備える。クランプチャックは、クランプ要素が差し込まれる収容開口と、クランプ要素をクランプするためのクランプ部材とを有する。クランプ要素は、細長形状を有し、クランプチャックには、クランプ要素用の細長収容開口が設けられる。弾性的な可撓性を有する少なくとも1個の芯出し要素は、クランプチャックにおける収容開口の差し込み領域に配置され、クランプ要素は、収容開口内に差し込まれる際に、少なくとも1個の芯出し要素により、収容開口の長手方向軸線に対して直角に整列される。
【0012】
本発明に係るクランプ装置は、細長収容開口及び細長クランプ要素を備えるため、一方では、クランプ要素が大きなクランプ力又は保持力を受けるための基本条件が満たされる。この構成と、収容開口領域に配置されると共に、弾性的な可撓性を有する芯出し要素とを組み合わせれば、他方では、長手方向における収容開口にクランプ要素を正確に合わせる必要がない。更に、本発明に係るクランプ装置は、比較的単純な構成を有する。各クランプ要素は、クランプ機能のみならず芯出し機能も有しており、従って芯出し要素を個別に設ける必要がないからである。
【0013】
本発明に係るクランプ装置の好適な実施形態及び更なる発展形態は、従属請求項に記載したとおりである。
【0014】
他の好適な実施形態において、各芯出し要素には、細長芯出し開口が設けられ、クランプチャックにおける収容開口及び芯出し開口の両者がクランプ要素よりも長く形成される。これにより、クランプ要素は、長手方向、即ちクランプ要素又は芯出し開口の長手軸線方向における中央部に正確に差し込まれずに数 mmだけオフセットさせて差し込まれてもよい。この構成とすれば、クランプ支持部上に適切に配置された各クランプチャックにより、ワークキャリアの長さ変化を「補償」することが可能となる。
【0015】
特に好適な実施形態において、クランプ部材は、クランプ要素のクランプ面に係合する細長スライダとして構成される。これにより、大きなクランプ力及び保持力がクランプ要素に伝達される。
【0016】
クランプチャックには、好適には、互いに平行に配置された2個のクランプ部材が設けられる。このようなクランプチャックは、複数個のクランプ要素、例えばクランプ球部を備えるクランプチャックとは異なり、製造が容易であると共に安価であり、その作動も比較的容易である。
【0017】
他の好適な実施形態において、各クランプ部材は、クランプ要素よりも長い。この構成により、クランプ要素がクランプチャックにおける収容開口の長手方向の中央部から僅かにオフセットさせて差し込まれる場合であっても、クランプ部材がクランプ要素におけるクランプ面の全長に亘って当接することが保証される。
【0018】
他の好適な実施形態において、芯出し要素は、耐錆性を有する鋼で構成された一体的なばねディスクとして形成される。このばねディスクは、クランプチャックにおける収容開口の差し込み領域に配置される。芯出し開口は、ばねディスクに形成される。このようなばねディスクは、一方では、製造が容易で安価であり、他方では、クランプチャックに容易かつ迅速に取り付けることができる。
【0019】
他の好適な実施形態において、クランプ要素における2つの長手方向側面に沿ってそれぞれクランプ面が設けられる。この場合、各クランプ部材は、クランプ面に摩擦係合的及び/又は形状密着的に当接することにより、クランプ要素がクランプチャック内に引き込まれてクランプされる。この構成により、大きなクランプ面が得られるため、大きな力を受けると共に伝達することが可能となる。
【0020】
特に好適には、クランプ要素における2つの長手方向側面のそれぞれに沿って、テーパ付けされた芯出し面と、クランプ面とが設けられる。この場合、クランプ面は、クランプ要素の差し込み方向に見て、芯出し面の上方に配置される。また、クランプ部材は、細長スライダとして構成されると共に、クランプ要素の各クランプ面に係合する。このようなクランプ要素は、製造が容易であると共に大きなクランプ力を受けることができ、しかも芯出し機能を有する。
【0021】
クランプチャックは、好適には、各クランプ部材につき、直線的にシフト可能な少なくとも1個の作動ピストンを有し、その少なくとも1個の作動ピストンは、ピストンハウジング内に収容されると共に、各クランプ部材に機械的に結合される。このようなピストンにより、割り当てられたクランプ部材が信頼性良くシフト可能である。更に、このようなピストンは、容易かつ安価に製造可能である。
【0022】
各作動ピストン及び/又は各クランプ部材は、特に好適には、圧縮ばねにより、収容開口に向けて負荷される。この場合、作動ピストンは、空圧により、ばね力に抗してシフト可能である。この構成により、クランプ装置は、自動的かつ機械的にロックされるのみならず、エネルギが供給されない状態であっても、クランプ力が維持される。更に、クランプチャックは、空圧によって容易に開放することができる。
【0023】
他の好適な実施形態において、クランプ要素における2つの長手方向側面のそれぞれには、テーパ付けされた芯出し面が設けられる。各芯出し面は、特に2段状に構成される。このような芯出し面は、容易に形成することができる。更に、この場合、大雑把な芯出しと、その後の細かい芯出しによる2段階の芯出しが可能である。
【0024】
他の好適な実施形態において、クランプチャックには、その全長に亘って途切れることなく延びるよう形成された収容開口が設けられるため、クランプチャックを容易に洗浄することができる。この場合、生じ得る汚れ粒子は、収容開口から横方向に流出させることができる。更に、このような実施形態は、容易かつ安価に実現することができる。
【0025】
他の好適な実施形態において、クランプチャックの上側には、収容開口の両側にて延びる隆起支持面が設けられる。この構成により、Z方向において、ワークキャリアのために大面積を有する支持部を実現することができる。
【0026】
本発明の更なる課題は、本発明に従って構成されたクランプ装置が特に効果的に配置されるクランプシステムを提供することである。
【0027】
この課題は、請求項14の特徴により解決される。本発明によれば、クランプシステムは、請求項1~13の何れか一項に記載の少なくとも2個のクランプ装置を備える。クランプ装置は、クランプ支持部上に配置された少なくとも2個のクランプチャックと、ワークキャリア上に配置されると共に、クランプチャックと同数のクランプ要素とを有する。少なくとも2個のクランプチャックは90°の角度で互いにオフセット配置され、ワークキャリア上には、クランプチャックに対応するようクランプ要素が配置される。クランプチャックのこのように配置すれば、一方では、ワークキャリアのクランプに際してその位置がX方向及びY方向に規定され、他方では、クランプチャックに対するクランプ要素の位置及び配置が比較的大雑把な設定で足りることとなる。
【0028】
本発明の更に他の課題は、大型又は超大型のワークキャリアであっても、高精度かつ反復可能に位置決め及びクランプするのに特に有利なクランプシステムを提供することである。このようなクランプシステムは、特に、ワークキャリアに取り付けられる際のクランプ要素の正確な位置決めに関して、及び/又は、クランプ要素の製造公差に関して、及び/又は、芯出し要素の製造公差に関して、及び/又は、クランプチャックの製造公差に関しても影響を受け難く、例えば、温度によるワークキャリアの長さ変化に関しても影響を受け難い。
【0029】
この課題は、請求項15の特徴を有するクランプシステムにより解決される。本発明によれば、このクランプシステムは、クランプ支持部上に互いにオフセット配置された少なくとも2個、特に、クランプ支持部上に60°、72°、90°又は120°の角度で互いにオフセット配置された少なくとも3個のクランプチャックと、ワークキャリア上に配置されると共に、クランプチャックと同数のクランプ要素とを備える。各クランプチャックは、クランプ要素のための収容開口と、クランプ要素を収容開口内にてクランプするためのクランプ部材とを有する。クランプ要素及びクランプチャックにおける収容開口は、細長形状を有し、弾性的な可撓性を有する芯出し要素は、少なくとも2個のクランプチャックにおける収容開口の差し込み領域に配置される。クランプ要素は、収容開口内に差し込まれる際に、芯出し要素により、収容開口の長手方向軸線に対して直角に整列される。
【0030】
本発明に係るクランプシステムの他の好適な実施形態は、従属請求項16~21に記載したとおりである。
【0031】
他の好適な実施形態において、クランプ支持部上には、90°の角度で互いにオフセットさせた4個のクランプチャックが配置され、ワークキャリア上には、ワークキャリアをクランプ支持部にクランプするための4個のクランプ要素が配置される。2個のクランプチャックにおける収容開口の差し込み領域には、ワークキャリアを第1方向に整列させるための芯出しディスクが設けられ、他の2個のクランプチャックにおける収容開口の差し込み領域には、ワークキャリアを第1方向に直交する第2方向に整列させるための芯出しディスクが設けられる。この実施形態におけるクランプシステムは、中型のワークキャリアを反復可能かつ正確にクランプするのに適している。
【0032】
他の好適な実施形態において、支持部上には、少なくとも4個のクランプチャックが配置される。この場合、少なくとも2個のクランプチャックは、互いに一方向に整列され、少なくとも1個の更なるクランプチャックは、互いに一方向に整列された少なくとも2個のクランプチャックに対して、支持部上に90°の角度で配置される。この実施形態におけるクランプシステムにより、中型から大型又は超大型のワークキャリアを反復可能かつ正確にクランプするための前提条件が満たされる。
【0033】
他の好適な実施形態において、クランプ支持部上には、少なくとも4個のクランプチャックが配置される。この場合、少なくとも2個のクランプチャックは、互いに第1方向に整列され、少なくとも2個の更なるクランプチャックは、互いに第2方向に整列される。互いに第1方向に整列された少なくとも2個の各クランプチャックには、各クランプ要素を第1方向に整列させるための芯出しディスクが設けられ、互いに第2方向に整列された少なくとも2個の各クランプチャックには、クランプ要素を第1方向に対して90°の角度でオフセットさせた第2方向に整列させるための芯出しディスクが設けられる。この実施形態において、クランプシステムのゼロ点は、互いに整列された各2個のクランプチャックを通過する2つの直線の交点により規定される。
【0034】
他の好適な実施形態において、クランプ支持部上には、3個、4個、5個又は6個のクランプチャックが円周に沿って分布するよう配置される。この実施形態は、特に、円形のワークが設けられる円形のワークキャリアに適している。
【0035】
特に好適には、クランプチャックにおける収容開口及び芯出し要素に形成された芯出し開口の両者は、各クランプ要素よりも長く形成される。このような構成は、クランプ支持部に対するワークキャリアに生じ得る長さ変化に関して特に影響を受けにくい。
【0036】
他の好適な実施形態において、各クランプチャックは、細長スライダとして構成されると共に、互いに平行に配置されたクランプ部材を有し、それらクランプ部材は、各クランプ要素のクランプ面に係合する。このようなスライダは、製造が容易であると共に安価でもある。更に、このようなスライダにより、大きなクランプ力及び保持力をクランプ要素に伝達可能である。
【0037】
本発明に係る他の有利な実施形態及び特徴の組み合わせについては、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲に記載する。
【0038】
以下、例示的な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】クランプチャック及びクランプ要素で構成されたクランプ装置の斜視図である。
図2図1のクランプ装置を、ワークキャリアに固定されたクランプ要素と、クランプチャックが互いに離間した状態で示す断面図である。
図3図2におけるクランプ装置を、ワークキャリアがクランプチャックに緩く取り付けられた状態で示す断面図である。
図4図2におけるクランプ装置を、ワークキャリアがクランプチャックにクランプされた状態で示す断面図である。
図5】クランプチャックを、収容開口に収容されたクランプ要素と共に示す平面図である。
図6】クランプチャックにおける一方の半部を、ワークキャリア上に配置されたクランプ要素と共に内側から示す説明図である。
図7】クランプ支持部及び上側クランプ部を備えるクランプシステムの斜視図である。
図8】大型又は超大型ワークキャリアのクランプに適したクランプ支持部の説明図である。
図9】クランプチャックの代替的な実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、クランプ装置における2個の主要素を示す斜視図である。図示のクランプ装置は、クランプチャック1と、クランプチャック1内でクランプ可能なクランプ要素2とを備える。クランプチャック1は、通常、工作機械の加工台に固定されるのに対して、クランプ要素2は、ワークキャリア(ワークパレット)の底面に固定される。図1において、クランプチャック1は上から見た状態で表され、クランプ要素2はワークキャリア40と共に下から見た状態で表されている。クランプ要素2を収容開口7内にクランプするため、クランプチャック1には、2つの細長クランプ部材(図示せず)が設けられている。
【0041】
クランプチャック1は、ほぼ同一構造を有する2個のクランプチャック半部4a, 4bで構成されている。クランプチャック半部4a, 4bには、それぞれ、ハウジング5a, 5bが設けられ、これら2個のハウジング5a, 5bが底部領域にてねじ結合されることにより、ハウジング全体5が構成されている。各クランプチャック半部4a, 4bは更に、ピストンハウジング8a, 8bを有し、それぞれの内部にピストン(図示せず)が配置されている。
【0042】
クランプチャック1には、細長に構成されたクランプ要素2をクランプするための細長スロット状収容開口7が設けられている。クランプチャック1上における収容開口7の差し込み領域には、弾性的な可撓性をZ方向に有すると共に、ディスク9a状に構成された芯出し要素9が配置されている。ここにZ方向とは、一般的な意味において、垂直方向、即ち加工台表面に対して垂直方向を指し、これに対してX方向及びY方向とは、クランプチャック1がクランプされる加工台に対して平行に延びる方向を指す。芯出しディスク9aは、ねじ10により、クランプチャック1におけるハウジング5又は2個のハウジング部分5a, 5bに固定されている。芯出しディスク9aは更に、2個のハウジング部分5a, 5bを補強するものでもある。芯出しディスク9aには、実質的に矩形に形成された細長芯出し開口11が形成されている。芯出し開口11により、芯出しディスクにおける長手方向側面に沿って互いに平行に延びる2つの側壁12a, 12bが形成されている。2つの側壁12a, 12bは、クランプ要素2が収容開口7内に差し込まれる際に、その長手方向軸線Lに対して直角に配向される。これら2つの側壁12a, 12bは、弾性的な可撓性をZ方向に有する一種の舌状部を構成している。クランプチャック1の配置に応じて、クランプ要素2は、収容開口7内に差し込まれる際にX方向又はY方向に配向される。何れにせよ、クランプ要素2は、2つの側壁12a, 12bを介して差し込まれる際に、収容開口7又はクランプチャック1の長手方向軸線Lに対して直角に配向される。この配向を可能とするため、クランプ要素2には、その後部領域又は上部領域にて、以下に説明するように、テーパ付けされた側面が設けられている。クランプ要素2は、クランプチャック1内に差し込まれる際に、芯出しディスク9a上に直線的に当接し、汚れワイパーのように機能するため、例えば汚れ耐性に関して有利である。
【0043】
クランプチャック1には、芯出しディスク9aの両側にて、ワークキャリアのクランプに際して、Z方向における支持部として機能する細長隆起支持面15a, 15bが設けられている。これら支持面15a, 15bは、収容開口7の長手方向軸線Lに対して平行に延びている。クランプチャック1の底部領域の端面16には、圧縮空気が導入可能な2つのチャネル17, 18が開口している。この場合、第1チャネル17は、クランプチャック1を開放するために機能し、第2チャネル18は、クランプ部材の締め直しをするために設けられている。一方では、2つのチャネル17, 18は、クランプチャック1を通過して他方の端面に延びている。他方では、各チャネル17, 18は、クランプチャック半部4a, 4bの両者に接続されている。何れにせよ、各チャック半部4a, 4bは、各端面に、圧縮空気供給ラインに接続されたチャネルを有する。この構成により、複数個のクランプチャックの直列結合も可能となる。
【0044】
クランプ要素2は、細長ビーム状に構成され、その細長ビームの断面は、鉄道トラックに類似している。クランプ要素2は、一方では、クランプチャック1内にクランプすることができ、他方では、クランプ面に加えて、芯出し面を有し、これら芯出し面により、クランプチャック1内に差し込まれる際に、収容開口7の長手方向軸線Lに対して直角に配向される。クランプ要素2は、平坦な後側を有し、ねじ固定される際にワークキャリア40の底面に当接する。クランプ要素2には、固定ねじを収容するための孔30が設けられている。クランプ要素2は、クランプチャック1を指向する前側において、T字状に形成されているため、突出部32として形成されたヘッド部が構成されている。後側領域において、クランプ要素2の各長手方向側面には、芯出し面35が設けられている。それら芯出し面35は、好適には、2段状に構成されている。ワークキャリア40は、クランプ要素2がクランプされる際に、その平坦な底面が支持面15a, 15b上に当接する。
【0045】
特に、クランプチャック1の構成と、クランプ時におけるクランプ要素2の作動原理は、クランプチャック1を、ワークキャリアに固定されたクランプ要素2と共に、図2図4の断面図に基づいて詳述する。クランプ要素2は、複数個のねじにより、概略的に表されたワークキャリア40の底面に固定されている。
【0046】
図2は、開放状態のクランプチャック1を、取り付け又はクランプ前のワークキャリア40と共に示す断面図であり、図3は、開放状態のクランプチャック1を、該クランプチャック1に緩く取り付けられたワークキャリア40と共に示す断面図である。図4は、クランプチャック1を、ワークキャリアがクランプされた状態で示す断面図である。クランプチャック1は、2個の実質的に左右対称のクランプチャック半部4a, 4bで構成されているため、一方のクランプチャック半部4aにおける各要素には、他方のクランプチャック半部4bにおける対応の各要素と同一参照符号が付されている。
【0047】
図2に示すように、クランプチャック1の内部には、スライダとして構成された2個のクランプ部材20が配置されている。2個のクランプ部材20は、互いに対向するよう配置され、細長に構成され、更には互いに平行に配置されている。2個のクランプ部材20は、一体的に構成されると共に、極めて頑丈に構成されている。2個のクランプ部材20は、好適には、窒化鋼で構成されている。各クランプ部材20は、複数個の圧縮ばね25により、収容開口7に向けて負荷されている(各クランプ部材20につき、1個の圧縮ばね25のみを図示)。圧縮ばね25は、その後側にて、ピストンハウジング8a, 8bにより支持されている。各クランプ部材20には、突起21が設けられ、その突起21の下側には、クランプ面22を有する。このクランプ面22により、クランプ部材20は、クランプ要素2における突出部32の後側のクランプ面33上に係合することができる。これにより、クランプ要素2が引き込まれ、ワークキャリア40と共にクランプチャック1にクランプされる。クランプ要素2には、その2つの長手方向側面に沿って、このようなクランプ面33が設けられている。これら2つのクランプ面33は、クランプ要素2におけるアンダーカットにより形成されている。各クランプ部材20において、突起21上に配置されたクランプ面22は、クランプ要素2におけるクランプ面33に適合されているため、クランプ要素2は、2個のクランプ部材20による大きな力で、下方に又はクランプチャック1内に引っ張られる。各クランプ部材20は、細長スライダとして構成されているため、クランプ要素2の全長に亘って、クランプ要素2に広範囲で当接可能であり、ワークキャリア40をクランプチャック1に大きな力でクランプすることができる。これにより、クランプ要素2、従ってワークキャリア40も大きな力、特に大きな横方向力を吸収することができる。更に、図示の実施形態においては、以下に説明するように、ハウジング5の底部領域に形成されたチャネル17が明示されている。全部で2個のクランプ部材を設ける代わりに、各側には、例えば、2個又は3個のクランプ部材を設けてもよく、従って全部で4個又は6個のクランプ部材が設けられる構成としてもよい。なお、これは単なる例示であり、限定的に解釈すべきものではない。
【0048】
各クランプ部材20は、圧力ロッド36を介して、同一平面上に配置されたピストンに接続されている。各ピストン24は、関連するピストンハウジング8a, 8b内に配置され、側方方向にシフトさせることができる。各ピストン24は、関連するクランプ部材20に対して同一平面上に水平方向に配置されているため、ピストン24からの力が各クランプ部材20に対して直接に、即ち逸脱することなく伝達される。更に、この構成により、クランプチャック1全体の高さを小さくし、コンパクトな構造とすることが可能である。2個のピストン24により、関連するクランプ部材20を互いに独立して移動させることができる。この点には、特に、クランプ要素2をクランプチャック1の横方向における中央部に正確に差し込む必要がないという利点がある。この点は、以下に説明するように、特に複数個のクランプチャックを備える大型のクランプシステムにおいて有利である。
【0049】
各ピストン24とピストンハウジング8a, 8bのベース面との間のチャンバ26は、圧力チャンバと称されるのに対して、各ピストン24の後側と側方方向ハウジングカバー37との間のチャンバ27は、締め直しチャンバと称される。チャンバ26, 27は、内部チャネル(図示せず)を介して、過圧で負荷することができる。図示の実施形態においては、ケーブルチャネル17も表されており、そのチャネル17は、例えばセンサケーブルを収容するのに適している。
【0050】
圧縮ばね25は、各ピストン24を負荷するよう配置かつ構成され、従って2個のクランプ部材20が収容開口7に向けて負荷されるよう構成されている。これにより、クランプ要素2がばね25力でクランプチャック1内にてクランプされ又はクランプされ続ける。各ピストン24を、機械的に結合されたクランプ部材20と共に図示の押し戻し位置に位置付けるためには、各圧力チャンバ26に空圧を作用させる必要がある。押し戻し位置への位置付けを可能とするためには、圧力チャンバ26内に、各クランプ部材20を負荷するばね力と、場合によっては更なる圧力ばねによるばね力と、摩擦抵抗とに打ち克つ圧力を発生させる必要がある。
【0051】
言うまでもなく、クランプ要素2がクランプチャック1内に差し込まれ、その内部でクランプされるには、2個のクランプ部材20が押し戻し位置に位置する必要がある。
【0052】
クランプ要素2がクランプチャック1における収容開口7内に差し込まれる際、まず、クランプ要素2の前側部分がその2つのクランプ面33と共に差し込まれる。その後の差し込みプロセスの最終段階においては、クランプ要素2の芯出し面35が芯出しディスク9aに当接する。何れにせよ、クランプ要素2のクランプ面33は、差し込み方向に見て、芯出し面35の上方に配置されている。
【0053】
図3は、クランプチャック1を、クランプチャック1上に緩く配置されたワークキャリア40と共に示す。ここに「緩く配置される」とは、ワークキャリア40がクランプチャック1上に自重と、場合によってはワークキャリア40上に固定されたワークだけを有する状態で載置されていることを意味する。ワークキャリア40をクランプチャック1上に配置する際、クランプ要素2の芯出し面35が芯出しディスク9a(図2参照)上に当接し、収容開口7の長手方向軸線に対して直角に整列する。何れにせよ、クランプ要素2の芯出し面は、芯出しディスクに対して寸法化及び適合化されているため、クランプ要素は、芯出し開口又は収容開口に差し込まれる際に、クランプ要素の長手方向軸線L(図5参照)に対して直角に整列し、又は収容開口の長手方向軸線に対して直角に整列する。クランプ要素上に配置された芯出し面は2段状に構成されているため、大雑把な整列が先に生じ、その後に正確な整列が生じる。
【0054】
図3に示すように、軽量のワークキャリア40であれば、そのワークキャリア40が載置された後に、ワークキャリアにおける平坦な底面41と支持面15上との間に小さなギャップが残留し得る。これは、各クランプ要素2が、Z方向において芯出しディスク9a上に支持されるからである。言うまでもなく、ワークキャリア40が緩く配置された後に上述したようなギャップが残留するか否かは、芯出しディスクの芯出し開口に対するクランプ要素2における芯出し面の形状、芯出しディスクの剛性、更にはワークキャリアの総重量によるものである。芯出しディスクは、好適には、2 mm~5 mmの厚さを有するため、芯出しディスク9aにより、ある程度の横方向力が吸収可能である。
【0055】
ワークキャリアが載置された後に、その底面41及び支持面15の間にギャップが残留していれば、芯出しディスクの弾性的な可撓性を利用しつつ、ワークキャリアの位置決めがZ方向に行われる。クランプ部材の作用によりクランプ要素がクランプチャック内に更に引っ張られると、底面41及び支持面15の間のギャップは消失する。クランプチャック内へのこの更なる引張りに際して、収容開口の長手方向軸線に対して直角をなすクランプ要素の位置はもはや変化することがない。なぜなら、ワークキャリアが載置された後、ワークキャリア又はクランプ要素は、Z方向に極めて僅かにしか移動しないからである。ワークキャリア40は、クランプ要素2の整列後、クランプチャック1の隆起面部分15上に当接するまで、典型的にはZ方向に数十分の一mmだけ移動する。このような位置決めの基本原理は、欧州特許第0111092号明細書により既知である。
【0056】
図4は、クランプチャック1を、ワークキャリア40及びクランプ要素2と共に、ワークキャリア40がクランプされた状態で示す断面図である。図4は更に、各ピストン24の後側及び側方方向ハウジングカバー37の間にクランプされた過負荷ばね38を示す。図4には、ピストン24毎に1個の過負荷ばね38しか表されていないが、各ピストン24には、複数個の過負荷ばね38が設けられている。これら過負荷ばね38により、ピストン24がクランプチャック内側に向けて負荷され、上述した圧縮ばね25に加えて、各ピストンに摩擦結合されたクランプ部材20のクランプ力が増加する。このような過負荷ばね38を使用すれば、機械的なクランプ力を効果的に高めることができる。言うまでもなく、各ピストン24を空圧によって押し戻す際には、過負荷ばね38の力にも対抗する必要がある。
【0057】
2個のクランプ部材20を作動位置又はクランプ位置に向けて内側にシフト可能とするために、圧力チャンバ26内の圧力は減圧されるか又は圧力チャンバ26が大気に対して開放される。この場合、2個のピストン24は、これらピストン24に摩擦結合されたクランプ部材20と共に、圧縮ばね25, 38力により内側に向けて移動する。この場合、各クランプ部材20におけるクランプ面22は、対応するクランプ要素2におけるクランプ面33に当接し(図2参照)、ワークキャリア40がクランプチャック1の隆起面部分に当接するまで、クランプ要素2がワークキャリア40と共にZ方向に下方に引っ張られる。図4に概略的に示すように、Z方向における位置決めにおいて、芯出しディスク9aは、芯出し開口領域にてクランプチャックの内側に向けて弾性変形する。本発明に係る形式のクランプ装置においては、ばね25, 38力により、自動的にロックが生じる。更に、エネルギが供給されない状態であっても、クランプ力が維持される。必要に応じてクランプ力又は引き込み力を増加させる場合には、締め直しチャンバ27を空圧で負荷することができる。
【0058】
図5は、クランプチャック1を、収容開口7に収容されたクランプ要素2と共に示す平面図である。図5に明らかなように、芯出しディスク9aに形成された芯出し開口11は、クランプ要素2に比べて大幅に長い。図5において、クランプ要素2の長さはAで表されているのに対して、芯出し開口11の長さはBで表されている。図5に更に明らかなように、収容開口7は、クランプチャック1の全長に亘って長手方向に延びており、従ってやはりクランプ要素2に比べて長い。芯出し開口11及び収容開口7の長さは、好適には、クランプ要素2の長さに比べて少なくとも5%、特に好適には少なくとも10%、更に好適には少なくとも20%大きい。このような構成とすれば、クランプ要素2は、クランプチャック1の中央部に正確に差し込む必要がない。即ち、クランプ要素2は、長手方向において、換言すればクランプ要素2又は芯出し開口11の長手軸線方向において、数 mm又は場合によっては数 cmに亘ってシフトさせつつ、クランプチャック1における芯出し開口11又は収容開口7に差し込むことができる。この点は、以下に説明するように、特に大型のワークキャリア又はクランプシステムにおいて有利である。
【0059】
図6は、クランプチャックにおける一方の半部4bを内側から示す略図である。図6には更に、クランプ要素2が配置されたワークキャリア40がやはり概略的に表されている。図6においては、特にクランプチャックハウジング5におけるスライド開口28内に収容されたクランプ部材20が明示されている。図6においても、クランプ要素2の長さは符号Aで表され、クランプ部材20の長さは符号Cで表されている。クランプ部材20は、好適には、クランプ要素2に比べて僅かに長い。これにより、クランプ部材20は、クランプ要素2におけるクランプ面の全長に沿って当接させることができる。この点は重要である。なぜなら、各クランプ要素2は、必ずしもクランプチャック1の長手方向の中央部に差し込まれるとは限らないからである。クランプ要素2が必ずしも中央部に差し込まれない理由は、本発明に係る形式のクランプチャックに、異なるワークキャリア40がクランプされ得るからである。
【0060】
図1図6に示すクランプ装置は、クランプシステムを構成する基本要素である。クランプシステムを使用することにより、特に大型のワーク又はワークキャリア及び/又は重いワーク又はワークキャリアを工作機械、例えば、フライス盤、研削盤、放電加工機械、又は旋盤の作業領域にクランプすることができる。ここに大型又は超大型のワークキャリアとは、少なくとも一方向に約1 m以上の幅又は長さを有するワークキャリアを指し、実際には10 mまでの大きさも有し得るものである。このようなワークキャリアに、数1000 kgに達する総重量を有するワークを固定することができる。何れにせよ、本発明に係るクランプ装置はモジュールとして機能し、大型又は超大型のクランプシステムが構成可能である。
【0061】
図7は、クランプ支持部42と、上側クランプ部とを備える本発明に係るクランプシステムを示す。クランプ支持部42は、4個のクランプチャック1a~1dを有するのに対して、上側クランプ部は、クランプ要素2a~2dが配置されたワークキャリア40を有する。各クランプチャックは、工作機械(図示せず)の作業台43上にて、隣接する2個のクランプチャックに対して90°の角度でオフセット配置されているのに対して、4個のクランプ要素2a~2dは、クランプチャック1a~1dに対応するようワークキャリア40の下側に配置されている。図示の実施形態におけるクランプシステムは、作業台43上に配置された4個の芯出しピン45と、ワークキャリア40上に配置された4個の芯出しスリーブ46とで構成される4個の予芯出し手段を更に備える。これら予芯出し手段を使用すれば、ワークキャリア40に配置されたクランプ要素2a~2dをクランプ支持部42に対してガイドしたときに、クランプ要素2a~2dが4個のクランプチャック1a~1dに比較的容易かつ迅速に整列可能である。これにより、ワークキャリア40の下降時にクランプ要素2a~2dが各クランプチャック1a~1dに対して正確に整列していない場合であっても、クランプ要素2a~2dによってクランプチャック1a~1dが損傷することがない。即ち、数100~数1000 kgの重量を有し得るワークキャリア40は、通常、クレーン等を使用してクランプ支持部42上に取り付けられる。ワークキャリア40自体は、典型的には、少なくとも約200~300 kgの重量を有し、数千 kgまでの重量を支持することができる。ワークキャリア40がクランプ支持部42に対して正確に整列していない場合、芯出しピン45は、ワークキャリア40の下側に当接し、これによりワークキャリア40の更なる下降が回避され、従ってクランプチャック1a~1dに対する損傷が回避される。
【0062】
図7に係る実施形態において、4個のクランプチャック1a~1dの全てには、芯出しディスク9a~9dが設けられ、4個のクランプ要素2a~2dの全てには、各芯出しディスク9a~9d上での整列を可能とする芯出し面が設けられている。この場合、基本的には、X-Y面内に機械的冗長性が生じるが、芯出しディスクの弾性的な可撓性により、その大部分が補償される。このような構成は、特に小型又は中型のクランプシステムに適している。
【0063】
図8は、大型又は超大型のクランプシステムに適したクランプ支持部42aの例示的な実施形態を示す。図示のクランプ支持部42aには、大型又は超大型のクランプシステムに使用される合計で6個のクランプチャック1e~1kが設けられている。これら6個のクランプチャック1e~1kのうち、中央部における2個のクランプチャック1g, 1kが互いに整列している。また、上部外側における2個のクランプチャック1f, 1hも互いに整列している。これに対して、下部外側における2個のクランプチャック1e, 1iは、他の4個のクランプチャック1f, 1g, 1h, 1kの何れとも整列していない。
【0064】
この場合に整列とは、各クランプチャック1g, 1k;1f, 1hの長手方向中心軸線が、それぞれ、線(軸線)A1, A2上に位置していることを意味する。
【0065】
図示の実施形態において、芯出しディスクは、全てのクランプチャックに設けられている訳ではなく、中央部に配置されると共にY方向を規定する2個のクランプチャック1g, 1kと、上部外側に配置されると共にX方向を規定する2個のクランプチャック1f, 1hにのみ設けられている。下部外側に配置された2個のクランプチャック1e, 1iには芯出しディスクが設けられておらず、パレット上に配置されたクランプ要素をクランプするためだけに機能する。図示の実施形態においては、芯出しディスクが設けられたクランプチャック1f, 1h;1g, 1kを通過する軸線A1, A2の交点により、クランプシステムのゼロ点Nが規定されている。
【0066】
言うまでもなく、少なくとも個々のクランプチャックは、互いに可及的に離間して配置されるため、各ワークキャリアに取り付けられたクランプ要素も、対応するように、ワークキャリアの外側に可及的に離間させて配置することができる。
【0067】
下部外側に配置された2個のクランプチャック1e, 1fに芯出しディスクを設けないことにより、一方では機械的冗長性が回避され。他方では大型又は超大型のワークキャリアがクランプ可能となる。上述したように、各ワークキャリアの大きさが増加するにつれ、例えば熱による影響を受けて、ワークキャリアの絶対的長さ変化も増加するからである。本発明に係るクランプ装置の構成及び配置により、上述したような長さ変化は、ワークキャリアの反復可能かつ正確なクランプに関して、特に悪影響を及ぼすことがない。クランプチャックにおける2個のクランプ部材20は、各ピストンにより、互いに独立して移動させることができるため、各クランプ要素は、各クランプチャックの中央部に正確に差し込む必要はない。この点は、特に、芯出しディスクが設けられない2個のクランプチャック1e, 1iに関して有利である。これにより、主に熱膨張に起因するワークキャリアの長さ変化が補償される。
【0068】
クランプ支持部42aは、4個のクランプ要素を有するワークキャリアをクランプする場合にも適している。この場合に使用可能なワークキャリアのクランプ要素は、中央部に配置された2個のクランプチャック1g, 1kと、右側に配置された2個のクランプチャック1e, 1fか又は左側に配置された2個のクランプチャック1h, 1iと協働する。
【0069】
このように構成されたクランプシステムは、ワークキャリア上に配置されたクランプ要素の正確な位置決めに関する影響を受け難いのみならず、クランプ要素及び芯出し要素の製造公差に関する影響も受け難い。なぜなら、一方では、ばねディスクにより、ある程度の不正確さが補償され、他方では、クランプチャックについて上述した配置により、例えば温度変化に起因するワークキャリアの長さ変化が補償されるからである。
【0070】
図8に係る例示的な実施形態の代案として、全てのクランプチャックに芯出しディスクを設けてもよい。この場合、好適には、幾つかのクランプ要素については芯出し面35が設けられない。従って、各クランプ要素は、クランプチャックにクランプされる際に芯出しディスクに当接することがなく、クラップチャック内でクランプされるだけである。言うまでもなく、両者を組み合わせることもできる。この場合、幾つかのクランプチャックにおいては芯出しディスクが設けられず、幾つかのクランプチャックにおいては芯出し面が設けられない。
【0071】
各クランプ支持部42, 42aには、好適には、ワークキャリアの存在を検出するための素子が更に設けられている。構成、配置、更には作動原理に応じて、そのような検出素子によりワークキャリアが正確にクランプされているか否かを検出することも可能である。検出素子としては、例えば、機械的、誘導的、容量的、光学的、又は磁気的な市販の近接スイッチを使用することができる。
【0072】
図9は、クランプチャック1の特に好適な実施形態を例示する断面図である。この場合、クランプチャック1を全体としてより安定的で強固なものとするために、2個のクランプチャック半部4a, 4bは、その上側領域にて、2本のストラット47により互いに結合されている(図9には1本のストラットのみを示す)。各ストラット47は、間隔スリーブ48及びクランプねじ49で構成されている。図示のクランプチャック1は、両端部領域にて、ストラット47により補強されている。2本のストラット47間のクリアランスは、クランプ要素の長さに比べてより大きい。2本のストラット47間のクリアランスは、好適には、芯出しディスク9a(図1参照)に設けられた芯出し開口11の長さに実質的に等しいため、上述した利点、即ちクランプ要素が、長手方向、より具体的にはクランプ要素又は芯出し開口の長手軸線方向中央部に対して正確にではなく、数 mmのオフセットをもって差し込まれても差し支えないという利点が維持される。更に、2本のストラット47は、2個のクランプチャック半部4a, 4bの同一構造が維持されるよう構成され、かつ取り付けられている。
【0073】
言うまでもなく、上述した例示的な実施形態は限定的なものではない。従って、円周上に分布配置された複数個のクランプチャックを備えるクランプシステムを構成することも可能である。この場合、例えば、3個、4個、5個又は6個のクランプチャックが円周に沿って分布するようクランプ支持部上に配置される。
【0074】
本発明に基づくクランプ装置又はクランプシステムの利点を列記すれば、以下のとおりである。
・極めて大きなクランプ力及び保持力を実現することができる。
・個々のクランプチャックは、極めて大きな横方向力を吸収することができる。
・クランプチャックは、クランプ要素と共に、異なる大きさ及び構造のクランプシステムを構成するためのモジュールとして適している。
・モジュールとして機能するクランプチャックにより、極めて重い超大型のワークキャリアを支持するための超大型のクランプシステムを構成することができる。
・超大型のワークキャリアであっても、約10~20 μmの反復精度でクランプ支持部にクランプすることができる。
・様々な構成のワークキャリアに、クランプ要素を容易かつ迅速に取り付けることができる。
・弾性的な可撓性を有する芯出しディスクにより、生じ得る機械的冗長性をほぼ回避し、又は補償することができる。
・クランプチャックの取り付け高さが大きい。
・クランプチャックは、簡略化された構成を有し、使用時の信頼性が高く、安価に製造可能である。
・クランプチャックは、同一構成を有する2個の半部で構成される。
・各クランプ要素がクランプチャック内で圧縮ばねにより機械的に固定される。
・エネルギが供給されない状態であっても、圧縮ばねによりクランプ力が維持される。
・クランプチャックは、空圧的に直列結合させることができる。
・クランプチャックは、汚れ耐性を有する。
・クランプチャックは、容易に洗浄することができる。
・クランプシステムは、ワークキャリア上に配置されたクランプ要素の正確な位置決めに関する影響を受けにくい。
・クランプシステムは、クランプ要素の製造公差に関する影響を受けにくい。
・クランプシステムは、芯出し要素の製造公差に関する影響を受けにくい。
・クランプシステムは、ワークキャリアの長さの温度変化に関する影響を受けにくい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9