(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】薬剤揮散具
(51)【国際特許分類】
B65D 85/00 20060101AFI20220822BHJP
A01M 1/20 20060101ALI20220822BHJP
A61L 9/12 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
B65D85/00 A
A01M1/20 C
A61L9/12
(21)【出願番号】P 2017188431
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】大久保 諒子
(72)【発明者】
【氏名】三上 礼
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-195570(JP,A)
【文献】特開2008-289755(JP,A)
【文献】特開昭62-129057(JP,A)
【文献】特開2011-025941(JP,A)
【文献】特開昭61-190449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/00
A01M 1/20
A61L 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性を有する薬剤を
封入したマイクロカプセルを担持した
粒状の薬剤担持体を収容した第1の空間、及び前記薬剤担持体を通過可能な大きさを有し前記第1の空間を開放する第1の開口部を有する第1の収容部と、
前記第1の収容部の前記第1の開口部を封止して前記第1の空間を密封した密封材と、
前記薬剤担持体を受け入れ可能な第2の空間、前記薬剤担持体を通過可能な大きさを有し前記第2の空間を前記第1の収容部の前記第1の空間に連通させるための第2の開口部、前記第2の開口部に設けられ前記第2の開口部を前記第1の開口部に重ねたときに前記第1の開口部の内側に挿通されて前記密封材を破る破封部、及び前記第2の空間を外気に連通させるための揮散孔を有する第2の収容部と、を有し、
前記第2の開口部を前記第1の開口部に重ねて前記第2の空間を前記第1の空間に連通させることにより、前記第1の空間より容積の大きい収容空間が形成され、前記薬剤担持体が移動可能な空間が広が
り、
前記第2の空間を前記第1の空間に連通させた後の前記収容空間は、前記薬剤担持体が、前記薬剤担持体同士、或いは前記第1の収容部及び前記第2の収容部の内面と衝突して、前記マイクロカプセルが破袋する程度に、前記薬剤担持体が自由に移動可能な容積を有する、
薬剤揮散具。
【請求項2】
前記第2の開口部は、前記第1の開口部より小径であり、
前記第2の収容部は、前記第2の開口部を一端に有する有底の筒状体であり、
前記破封部は、前記筒状体の前記一端を軸方向に突出させた突起であり、前記第1の収容部の前記第1の開口部の内側に挿入される、
請求項1の薬剤揮散具。
【請求項3】
前記突起は、前記筒状体の前記一端の周方向に並んで複数個設けられている、
請求項2の薬剤揮散具。
【請求項4】
前記第1の収容部の外側に当該第1の収容部と一体に設けた第1のケースと、
前記第2の収容部の外側に当該第2の収容部と一体に設けた前記第1のケースと嵌合する第2のケースと、
前記第1のケースと前記第2のケースを一体に連結した可撓性を有する連結部材と、
をさらに有する請求項1の薬剤揮散具。
【請求項5】
前記第1の収容部の外側に当該第1の収容部と一体に設けた第1のケースと、
前記第2の収容部の外側に当該第2の収容部と一体に設けた前記第1のケースと螺合する第2のケースと、をさらに有し、
前記第1のケースと前記第2のケースを螺合することで前記破封部が前記第1の開口部に挿通されつつ回転される、
請求項1の薬剤揮散具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、芳香剤、消臭剤、防虫剤などの薬剤を揮散させるための薬剤揮散具に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香剤などの揮発性を有する薬剤は、空気に触れることで揮散を開始する。このため、例えば、従来の薬剤揮散具においては、芳香剤を収容した容器の開口部をシールしておき、使用開始時にシールを破るようにしている。
【0003】
例えば、特許文献1の芳香剤容器は、芳香剤を収納した収納容器体、および収納容器体を装着するケース体を有する。この芳香剤容器の使用を開始するときには、収納容器体をケース体に装着することで、収納容器体の開口部を密閉したシート蓋を破断する。これにより、収納容器体に収納した芳香剤をケース体の気散シートに浸透させて気散シートから芳香剤を放散させる。よって、特許文献1の芳香剤容器によると、シート蓋を簡単に開封することができ、芳香剤をすぐに揮散させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の芳香剤容器によると、収納容器体に挿通した浸透芯を通して芳香剤を気散シートに浸透させるため、シート蓋の開封後は、芳香剤が一定の割合で空気中に放散され続け、芳香剤の放散をコントロールすることができない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、薬剤を所望する状態で揮散させることができる薬剤揮散具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の薬剤揮散具の一態様は、揮発性を有する薬剤を封入したマイクロカプセルを担持した粒状の薬剤担持体を収容した第1の空間、及び薬剤担持体を通過可能な大きさを有し第1の空間を開放する第1の開口部を有する第1の収容部と、第1の収容部の第1の開口部を封止して第1の空間を密封した密封材と、薬剤担持体を受け入れ可能な第2の空間、薬剤担持体を通過可能な大きさを有し第2の空間を第1の収容部の第1の空間に連通させるための第2の開口部、第2の開口部に設けられ第2の開口部を第1の開口部に重ねたときに第1の開口部の内側に挿通されて密封材を破る破封部、及び第2の空間を外気に連通させるための揮散孔を有する第2の収容部と、を有する。第2の開口部を第1の開口部に重ねて第2の空間を第1の空間に連通させることにより、第1の空間より容積の大きい収容空間が形成され、薬剤担持体が移動可能な空間が広がる。第2の空間を第1の空間に連通させた後の収容空間は、薬剤担持体が、薬剤担持体同士、或いは第1の収容部及び第2の収容部の内面と衝突して、マイクロカプセルが破袋する程度に、薬剤担持体が自由に移動可能な容積を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、薬剤を所望する状態で揮散させることができる薬剤揮散具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る薬剤揮散具を示す外観斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の薬剤揮散具の取り付け例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、
図1の薬剤揮散具の一方の容器を示す外観斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4の密封シールを剥がした状態を示す概略図である。
【
図6】
図6は、
図3の容器をF6-F6に沿って切断した断面図である。
【
図7】
図7は、第1の変形例に係る破封部の構造を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、第2の変形例に係る破封部の構造を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る薬剤揮散具の2つの樹脂ケースを分離した状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1に示すように、第1の実施形態に係る薬剤揮散具10は、略球形の2つの容器2、4を環状のゴム紐6でつないだ構造を有する。ゴム紐6は、必ずしも環状である必要はなく1本の紐状部材であってもよく、必ずしも伸縮可能な材料により形成しなくてもよい。
【0011】
一方の容器2の中には、揮発性を有する薬剤(芳香剤や消臭剤など)を封入したマイクロカプセルを担持した複数個の粒状の薬剤担持体(ここでは図示せず)が収容されている。薬剤担持体は、マイクロカプセルを用いずに薬剤を粒状の担持体に直接担持させたものであってもよく、薬剤自体を固まりにした粒状のものも薬剤担持体に含むものとする。薬剤担持体の個数、形状、大きさは、任意に設定可能であり、容器2に振動を与えたときに容器2内で移動可能であればよい。
【0012】
もう一方の容器4は、容器2と同じように薬剤担持体を収容してもよく、薬剤担持体を収容しなくてもよい。2つの容器2、4の大きさや形状も同じである必要はない。容器4は、内部を空洞にする必要もない。しかし、本実施形態では、容器4を容器2と同じ構造に形成し、内部に薬剤担持体を収容した。以下の説明では、一方の容器2の構造について詳細に説明し、他方の容器4の構造については、容器2と同様に機能する構成要素に同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0013】
上記の構造を有する薬剤揮散具10は、例えば、
図2に示すように、自動車のヘッドレスト12に結び付けたり、バックミラーに括り付けたり、エアコンの吹き出し口にあるルーバーに引っ掛けて取り付けたり、後部座席の上方にあるアシストグリップに結び付けたりして使用することができる。薬剤揮散具10は、自動車の構成部品以外のいかなる吊り下げ対象物にも取り付けできる。
【0014】
薬剤揮散具10を例えば自動車の座席のヘッドレスト12に結び付ける場合、ゴム紐6をヘッドレスト12の一方の支柱12aに結び付ける。本実施形態の薬剤揮散具10は、容器2に振動を与えることで、薬剤担持体に担持したマイクロカプセルが破袋して薬剤が揮散するものであるため、自動車などの移動体に取り付けて使用するのに適している。例えば、薬剤揮散具10を自動車に取り付けると、自動車を運転しているときに芳香剤の揮散量を増加させ、駐車しているときには揮散量を抑制することができ、所望するタイミングで芳香剤の揮散量を増加させることができる。
【0015】
以下、容器2の構造について、
図3乃至
図6を参照して説明する。
容器2は、略半球状の2つの樹脂ケース2a、2bを略矩形板状の可撓性を有する連結部材8を介して一体に連結した構造を有する。本実施形態では、樹脂ケース2a、2b、および連結部材8は、樹脂による一体成形により形成されている。容器2は、
図3に示すように、各樹脂ケース2a、2bの開口部の縁を互いに嵌め合わせた構造を有し、内部に薬剤担持体を収容するための概ね円筒状の収容空間1(
図6)を有する。
【0016】
一方の樹脂ケース2aの内面には、それぞれ嵌合穴3aを有する3つのボス部3が一体に設けられている。もう一方の樹脂ケース2bの対応する部位には、樹脂ケース2aの各ボス部3の嵌合穴3aにそれぞれ嵌合する3本の嵌合ピン5が一体に設けられている。2つの樹脂ケース2a、2bを嵌合させる際には、連結部材8を湾曲させつつ2つの樹脂ケース2a、2bの開口部を対向させ、樹脂ケース2aの各嵌合穴3aに樹脂ケース2bの各嵌合ピン5を押し込む。連結部材8は、
図3に示すように環状に湾曲されてゴム紐6を挿通する挿通部として機能する。
【0017】
樹脂ケース2bは、複数個(本実施形態では8個)の例えば円形の揮散孔2cを有する。揮散孔2cは、樹脂ケース2bを貫通して収容空間1に連通する位置に設けられている。つまり、揮散孔2cは、後述する円筒壁16の内側の収容空間1bの底に設けられている。そして、揮散孔2cの形状や大きさは、薬剤担持体が通過できない形状や大きさに設計されている。この条件を満たせば、揮散孔2cの個数、形状、大きさは、任意に設定可能である。
【0018】
図4および
図5に示すように、樹脂ケース2aは、内部に円筒壁14を有する。また、樹脂ケース2bは、内部に円筒壁16(筒状体)を有する。円筒壁16の外径は、円筒壁14の内径よりわずかに小さい。円筒壁16の高さは円筒壁14より低い。これら2つの円筒壁14、16は、
図6に示すように2つの樹脂ケース2a、2bを嵌合させた状態で、同軸に配置される。また、樹脂ケース2a、2bを嵌合させると、円筒壁14の内側に円筒壁16の先端がわずかに差し込まれて、略円筒状の収容空間1が形成される。
【0019】
樹脂ケース2a内に設けた円筒壁14は、樹脂ケース2aの開口部を超えて突出した先端を有する。円筒壁14の先端には、円形の開口部14a(第1の開口部)が設けられている。開口部14aは、円筒壁16の先端を受け入れるとともに、薬剤担持体Bを挿入するための開口部として機能する。円筒壁14の内部は、予め決められた個数の薬剤担持体Bを収容することが可能な容積を有する収容空間1a(第1の空間)として機能する。円筒壁14は、使用開始前の薬剤担持体Bを収容する第1の収容部として機能する。
【0020】
円筒壁14の開口部14aは、
図5に示すように開口部14aを介して所定数の薬剤担持体Bを収容した後、
図4に示すように略円形の密封シート18(密封材)でシールされる。密封シート18は、薬剤非透過性の可撓性を有する樹脂フィルムなどで形成され、開口部14aの周りで円筒壁14の先端に密着され、開口部14aを封止する。円筒壁14が樹脂ケース2aの内部に設けられているため、密封シート18は容器2の外から見えない。このため、見栄えを気にすることなく、円筒壁14の側面まで密封シート18を被せてしっかりと密着させることができる。
【0021】
本実施形態では、円筒壁14の先端を樹脂ケース2aの開口部から突出させたため、収容空間1aの容積を比較的大きくすることができ、収容空間1aに収容する薬剤担持体Bの個数を多くすることができる。円筒壁14の径や高さは、連結部材8を中心にして樹脂ケース2bを樹脂ケース2aに向けて回動させたときに円筒壁16をスムーズに挿入できる(2つの樹脂ケース2a、2bを嵌合できる)値であればよく、薬剤担持体Bの収容数を多くするためできるだけ大きくすることが望ましい。
【0022】
もう一方の樹脂ケース2b内に設けた円筒壁16は、その先端に開口部16a(第2の開口部)を有するとともに、開口部16aの縁に沿って円筒壁16を軸方向に延長させた3つの破封爪17(破封部、突起)を備えている。3つの破封爪17は、開口部16aの周方向に沿って等間隔で設けられている。
【0023】
3つの破封爪17は、2つの樹脂ケース2a、2bを嵌合させることで、密封シート18を破封する。つまり、2つの樹脂ケース2a、2bを嵌合させると、樹脂ケース2aの円筒壁14の開口部14aを介して樹脂ケース2bの円筒壁16の先端が挿入され、3つの破封爪17が円筒壁14の内面に沿って差し込まれる。これにより、円筒壁14の開口部14aを密封した密封シート18が破封爪17によって少なくとも部分的に破られる。
【0024】
樹脂ケース2bの円筒壁16は、その内部に薬剤担持体Bを受け入れ可能な円筒状の収容空間1b(第2の空間)を有する。つまり、円筒壁16は、開口部16aを介して円筒壁14から薬剤担持体Bを受け入れることが可能な第2の収容部として機能する。
【0025】
上述したように、破封爪17によって少なくとも部分的に破られた密封シート18は、収容空間1a内の薬剤担持体Bによって押圧されることで、
図6に示すように大きく破られる。これにより、収容空間1bが収容空間1aと連通され、円筒壁14内の収容空間1aから円筒壁16内の収容空間1bへ薬剤担持体Bが移動可能となる。
【0026】
この状態で、容器2に振動が加えられると、薬剤担持体Bが収容空間1内を自由に移動して、薬剤担持体B同士、或いは円筒壁14、16の内面と衝突し、マイクロカプセルが破袋する。これにより、樹脂ケース2bの揮散孔2cを介して薬剤Yの揮散が開始される。
【0027】
このような薬剤担持体Bの移動は、円筒壁16を円筒壁14の内側に差し込んで収容空間1aより容積の大きい収容空間1を形成することで可能となる。言い換えると、円筒壁14の中に薬剤担持体Bが収容されて密封シート18で密封された状態では、薬剤担持体Bは自由に動くことができないが、密封シート18を破封して収容空間1bを収容空間1aに連通して収容空間1の容積を大きくすることで薬剤担持体Bが移動可能な空間を広げることができる。
【0028】
また、収容空間1bを収容空間1aに連通させることで、収容空間1aを揮散孔2cに連通させることができ、薬剤Yの揮散が可能となる。言い換えると、収容空間1bを収容空間1aに連通させない状態では、収容空間1aが外気と連絡していないため、薬剤Yを揮散させることができない。つまり、本実施形態によると、薬剤揮散具10の使用開始前の状態(
図4に示す状態)においては、薬剤Yが揮散する心配が無く、
図6に示すように密封シート18を破封して初めて薬剤Yの揮散が可能となり、所望するタイミングで薬剤Yの揮散を開始させることができる。このため、薬剤揮散具10の使用開始時に使用者が薬剤担持体Bに担持された薬剤Yに触れたり、薬剤担持体Bを容器2外に落下させるといった不具合を防止することができる。
【0029】
以上のように、本実施形態によると、密封シート18を破封することで薬剤担持体Bの移動空間を広げて薬剤Yの揮散を可能にした。このため、薬剤Yを多く揮散させたい場合には、容器2を振ればよく、所望するタイミングで所望する量の薬剤Yを揮散させることができる。また、例えば、本実施形態の薬剤揮散具10を自動車に取り付けて使用した場合、運転中は自動車の振動により薬剤Yを揮散させ、駐車している状態では薬剤Yの揮散を止めさせることもでき、容器2をわざわざ振る必要もない。
【0030】
(変形例)
以下、上述した第1の実施形態の変形例について
図7および
図8を参照して説明する。変形例に係る薬剤揮散具は、破封爪(破封部、突起)の形状が異なる以外、上述した第1の実施形態の薬剤揮散具10と同じ構造を有する。よって、ここでは、第1の実施形態と異なる破封爪の形状について詳細に説明し、それ以外の構造についての説明を省略する。
【0031】
第1の変形例に係る破封爪21は、
図7に示すように、円筒壁16をその軸と直交する面に対して傾斜した架空の切断面で切断した形状を有する。このように、円筒体を斜めに切断することで、円筒体の周部の一か所に先鋭な突起を設けることができる。突起をより尖らせたい場合には、切断面の傾斜を大きくすればよい。
【0032】
第2の変形例に係る破封爪31は、
図8に示すように、円筒壁16の開口部16aを設けた先端に、周方向に等間隔で並んで先鋭な突起を複数設けた形状を有する。このように、微小な突起を円筒壁16の全周に設けることで、密封シート18の略全周を切り離すことができ、収容空間1a、1bを容易に連通させることができる。
【0033】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、連結部材8を介して2つの樹脂ケース2a、2bを連結して、連結部材8を介して一方の樹脂ケース2bを樹脂ケース2aに向けて回動して両者を嵌合させるようにしたが、連結部材8を設けずに2つの樹脂ケース2a、2bをネジにより螺合させてもよい。
【0034】
図9は、第2の実施形態に係る薬剤揮散具の一方の容器2の2つの樹脂ケース2a、2bを分離した状態を示す斜視図である。第2の実施形態に係る薬剤揮散具は、2つの樹脂ケース2a、2bを連結した連結部材8、3つのボス部3、および3本の嵌合ピン5を有しておらず、樹脂ケース2aの開口部の内縁に雌ネジ41を有するとともに、樹脂ケース2bの開口部の外縁に雌ネジ41と螺合する雄ネジ42を有する。これ例外の構成は、上述した第1の実施形態と略同じであるため、ここでは第1の実施形態の薬剤揮散具10と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0035】
本実施形態によると、2つの樹脂ケース2a、2bを螺合させることで、円筒壁16の破封爪17を密封シート18に突き刺しつつ回転させることができ、密封シート18を完全に円筒壁16と切り離すことができ、収容空間1a、1bを完全に連通させることができる。
【0036】
また、本実施形態によると、連結部材8を有していないため、2つの樹脂ケース2a、2bを嵌合させる際に円筒壁14、16の干渉を気にする必要がなく、円筒壁14の高さを第1の実施形態より高くすることができる。これにより、薬剤担持体Bを収容する収容空間1aを大きくすることができ、より多くの薬剤担持体Bを収容することができる。
【0037】
以上、いくつかの実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
揮発性を有する薬剤を担持した薬剤担持体を収容した第1の空間、および前記第1の空間を開放する第1の開口部を有する第1の収容部と、
前記第1の収容部の前記第1の開口部を封止して前記第1の空間を密封した密封材と、
前記薬剤担持体を受け入れ可能な第2の空間、前記第2の空間を前記第1の収容部の前記第1の空間に連通させるための第2の開口部、前記第2の開口部に設けられ前記第2の開口部を前記第1の開口部に重ねたときに前記第1の開口部の内側に挿通されて前記密封材を破る破封部、および前記第2の空間を外気に連通させるための揮散孔を有する第2の収容部と、
を有する薬剤揮散具。
[2]
前記第2の開口部は、前記第1の開口部より小径であり、
前記第2の収容部は、前記第2の開口部を一端に有する有底の筒状体であり、
前記破封部は、前記筒状体の前記一端を軸方向に突出させた突起であり、前記第1の収容部の前記第1の開口部の内側に挿入される、
[1]の薬剤揮散具。
[3]
前記第1の収容部の前記第1の空間は、所定数の前記薬剤担持体を収容して前記第1の開口部を前記密封材により封止した状態で、前記薬剤担持体が前記第1の空間内で自由に移動することができない程度の容積を有する、
[1]の薬剤揮散具。
[4]
前記突起は、前記筒状体をその軸と直交する面に対して傾斜した架空の切断面で切断した形状を有する、
[2]の薬剤揮散具。
[5]
前記突起は、前記筒状体の前記一端の周方向に並んで複数個設けられている、
[2]の薬剤揮散具。
[6]
前記第1の収容部の外側に当該第1の収容部と一体に設けた第1のケースと、
前記第2の収容部の外側に当該第2の収容部と一体に設けた前記第1のケースと嵌合する第2のケースと、
前記第1のケースと前記第2のケースを一体に連結した可撓性を有する連結部材と、
をさらに有する[1]の薬剤揮散具。
[7]
前記第1の収容部の外側に当該第1の収容部と一体に設けた第1のケースと、
前記第2の収容部の外側に当該第2の収容部と一体に設けた前記第1のケースと螺合する第2のケースと、をさらに有し、
前記第1のケースと前記第2のケースを螺合することで前記破封部が前記第1の開口部に挿通されつつ回転される、
[1]の薬剤揮散具。
【符号の説明】
【0038】
1、1a、1b…収容空間、 2、4…容器、 2a、2b…樹脂ケース、 2c…揮散孔、 6…ゴム紐、 10…薬剤揮散具、 14、16…円筒壁、 14a、16a…開口部、 17、21、31…破封爪、 18…密封シート、 41…雌ネジ、 42…雄ネジ、 B…薬剤担持体、 Y…薬剤。