(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】袋状容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
B65D81/34 U
(21)【出願番号】P 2017206298
(22)【出願日】2017-10-25
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(72)【発明者】
【氏名】渡部 早紀
(72)【発明者】
【氏名】大原 菜桜子
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-001394(JP,A)
【文献】実開昭61-053343(JP,U)
【文献】特開2000-327046(JP,A)
【文献】特表2012-518559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
A47J 27/00
B65D 30/00-33/38
B65D 67/00-79/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料で構成された胴部シートで構成された胴部と、
前記胴部シートと接着される樹脂材料で構成された底部シートで構成された底面部、前記胴部シート及び前記底部シートで構成された脚部、並びに、前記脚部に設けられ、電磁波を吸収して前記脚部を構成する前記樹脂材料の結晶化温度に発熱する発熱部を有する底部と、
を備える袋状容器。
【請求項2】
前記底部シートは、一方向に長く構成され、長手方向の両端にそれぞれ、短手方向に二つ設けられた切欠部を有する矩形状に形成され、前記短手方向の端部から前記切欠部までの幅は、前記脚部の下端から前記袋状容器の内部空間の下端までの高さと同じに構成され
、
前記発熱部は、前記脚部の下端から前記袋状容器の内部空間の下端より下方に前記短手方向に一定の幅で設けられる請求項1に記載の袋状容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジで加熱する内容物を収容する袋状容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を収容する容器として、自立性を有する袋状容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような袋状容器は、二つ折りされた底テープ及び二枚の本体フィルムをシールすることで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような袋状容器は、食品等の内容物を収容する場合には、開封した容器のまま内容物を食することができるほどに自立性は高くなく、使用性が悪い、と言う問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、自立性を向上することができる袋状容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、袋状容器は、樹脂材料で構成された胴部シートで構成された胴部と、前記胴部シートと接着される樹脂材料で構成された底部シートで構成された底面部、前記胴部シート及び前記底部シートで構成された脚部、並びに、前記脚部に設けられ、電磁波を吸収して前記脚部を構成する前記樹脂材料の結晶化温度に発熱する発熱部を有する底部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自立性を向上することができる袋状容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る袋状容器の構成を示す斜視図。
【
図2】同袋状容器の構成であって、使用の一例を示す斜視図。
【
図4】同袋状容器に用いられる胴部シートの構成を示す断面図。
【
図5】同袋状容器に用いられる底部シートの構成を示す平面図。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る袋状容器の構成を示す側面図。
【
図10】同袋状容器の底部シートの構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る袋状容器1の構成を、
図1乃至
図6を用いて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る袋状容器1の構成を示す斜視図、
図2は、袋状容器1の構成であって、使用の一例を示す斜視図、
図3は、袋状容器1の構成を示す側面図、
図4は、袋状容器1に用いられる胴部シート11の構成を示す断面図、
図5及び
図6は、袋状容器1に用いられる底部シート12の構成を示す平面図及び断面図である。
【0010】
袋状容器1は、食品等の内容物を収容し、電子レンジで加熱できる容器である。
図1に示すように、袋状容器1は、胴部2と、胴部2と一体に設けられる底部3と、を備える。袋状容器1は、矩形状の一対の胴部シート11及び一方向に長い矩形状の一枚の底部シート12を接着することで、胴部2及び底部3を有する袋状に構成される。
【0011】
胴部2は、一対の胴部シート11により構成される。胴部シート11は、
図4に示すように、第1基材層21と、第1シール層22と、有する。胴部シート11は、第1基材層21が袋状容器1の外面側に配置される。
【0012】
第1基材層21は、樹脂フィルムにより形成される。第1基材層21に用いる樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂や、ナイロン6等のポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂フィルムが好適である。第1基材層21に用いる樹脂フィルムは、用途に応じて複数の樹脂フィルムを積層することで形成されていてもよい。
【0013】
第1シール層22は、熱接着性を有するシーラントフィルムにより形成される。第1シール層22のシーラントフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂が好適である。
【0014】
底部3は、胴部シート11の下端部及び底部シート12により構成される。底部3は、袋状容器1の底面を構成する底面部3aと、袋状容器1を自立させる一対の脚部3bと、を備える。底面部3aは、底部シート12の一部により構成される。脚部3bは、一対の胴部シート11の一部及び底部シート12の一部により構成される。また、底部3は、袋状容器1としたときの袋状容器1の内部空間の胴部シート11側の下部が側面視で下方に向かって突出する円弧状となる、所謂船底形状に構成され、そして、同内部空間の中央側が内部空間に向かって突出するように構成される。このような構成の底部3においては、当該円弧状の下端が、袋状容器1の内部空間の下端となる。
【0015】
即ち、袋状容器1は、一対の胴部シート11の下端に、短手方向の中心を通る長手方向に沿った折り線に沿って二つ折りにされた底部シート12を、二つ折りにされた底部シート12が袋状容器1内に向かって突出する姿勢で挟み、一対の胴部シート11の対向する辺部、並びに、一対の胴部シート11及び底部シート12の対向する辺部をヒートシールや接着剤等によって接着することで有底の袋状に構成される。また、胴部シート11及び底部シート12の底部3の脚部3bを構成する下端部の上縁は、下方に突出する円弧状に接着される。
【0016】
底部シート12は、長手方向の両縁部に、それぞれ長手方向に沿った中心軸に関して対称となるように配置される二つの半円状の切欠部12aを有する。底部シート12は、
図5に示すように、マイクロ波を吸収することによって発熱する発熱部12bと、マイクロ波を透過して発熱しない非発熱部12cとを有する。
【0017】
底部シート12の短手方向に並ぶ二つの切欠部12aは、袋状容器1を形成するために底部シート12が二つ折りされたときに対向する。即ち、袋状容器1を形成するときに底部シート12の短手方向に並ぶ二つの切欠部12aが対向することで、当該切欠部12aにおいて、一対の胴部シート11は、切欠部12aを介して互いの第1シール層22同士が接着する。
【0018】
発熱部12bは、底部シート12の短手方向の両縁部に、底部シート12の長手方向に沿ってそれぞれ設けられる。例えば、発熱部12bは、底部シート12の短手方向の幅が脚部3bの長さと同じで、且つ、一定に構成される。発熱部12bは、短手方向で切欠部12aよりも底部シート12の端部側に配置される。
【0019】
具体例として、発熱部12bは、底部シート12の短手方向で切欠部12aから底部シート12の短手方向の端部(辺部)まで、又は、切欠部12aよりも底部シート12の短手方向の端部側から当該端部までの範囲に一定の幅で設けられる。また、発熱部12bは、袋状容器1が構成する内部空間の下端部から底部シート12の短手方向の端部まで、又は、当該内部空間の下端部よりも底部シート12の短手方向の端部側から当該端部までの範囲に設けられる。
【0020】
例えば、発熱部12bは、底部シート12の短手方向の端部からの幅が10mm以下に設定される。この発熱部12bの全部又は一部は、胴部シート11及び底部シート12が接着されることで、底部3の脚部3bに配置される。
【0021】
底部シート12は、発熱部12bにおいて、
図6に示すように、第2基材層31と、発熱体層32と、第2シール層33と、を備える。
【0022】
第2基材層31は、樹脂フィルムにより形成される。第2基材層31に用いる樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂や、ナイロン6等のポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂フィルムが好適である。また、第2基材層31は、用途に応じて複数の樹脂フィルムを積層することで形成してもよい。
【0023】
発熱体層32は、第2基材層31に設けられたフィルム層32aと、フィルム層32aに設けられた金属蒸着膜32bと、金属蒸着膜32bに設けられた保護層32cと、を備える。発熱体層32は、袋状容器1内の内容物を電子レンジで加熱したときに、底部シート12の第2基材層31及び第2シール層33、及び、底部シート12の発熱体層32が設けられた領域に接着された胴部シート11を構成する樹脂材料を少なくとも結晶化温度に到達するまで発熱可能に設定される。
【0024】
フィルム層32aは、例えばPETフィルムが用いられる。例えば、フィルム層32aは、第2基材層31と一体に構成された多層フィルムの一層である。
【0025】
金属蒸着膜32bは、導電性物質の蒸着膜、導電性インク、金属箔等による薄膜から形成される。導電性物質としては、アルミニウム、錫、亜鉛、鉄、銅等の金属や、これら金属の酸化物の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0026】
保護層32cは、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂により構成される。なお、保護層32cは、金属蒸着膜32bを底部シート12において部分的に形成する際に、必要となるものである。具体例としては、保護層32cは、フィルム層32aに全面的に形成した金属蒸着膜32b上に部分的に形成され、保護層32cが形成されていない金属蒸着膜32bを除去することで、底部シート12の一部に部分的に金属蒸着膜32bを形成するためのものである。このため、金属蒸着膜32bを底部シート12の全面に形成する場合は、保護層32cを設けなくてもよい。
【0027】
本実施形態では、フィルム層32aとしてPETフィルムが用いられ、金属蒸着膜32bがアルミニウムと酸化アルミニウムとの混合物により形成される。
【0028】
第2シール層33は、熱接着性を有するシーラントフィルムにより形成される。第2シール層33のシーラントフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂が好適である。
【0029】
また、底部シート12は、非発熱部12cにおいて、
図6に示すように、第2基材層31と、フィルム層32aと、第2シール層33と、を備える。即ち、底部シート12は、発熱部12bの領域に金属蒸着膜32b及び保護層32cを設け、非発熱部12cの領域の金属蒸着膜32bを除去することで構成される。
【0030】
このように構成された袋状容器1は、少なくとも脚部3bに発熱体層32を備え、発熱体層32は、マイクロ波を吸収することで、脚部3bを構成する樹脂材料が結晶化温度へ到達する熱を生じさせることが可能に構成される。このため、袋状容器1は、袋状容器1に収容した内容物を加熱したときに、発熱体層32が発熱し、脚部3bを構成する樹脂材料が結晶化温度に到達することで結晶化度を増し、結果、脚部3bの硬度が増加する。加えて、発熱体層32の発熱によって、脚部3bは収縮することから、当該収縮によっても脚部3bは硬度を増す。さらに、脚部3bが収縮するが、底面部3aは収縮しないことから、脚部3bの長手方向、換言すると袋状容器1の幅方向で、脚部3bの長さが縮小するため、底面部3aの短手方向の長さ、換言すると、袋状容器1の厚さ方向に、底面部3aが広がる。
【0031】
このように、袋状容器1は、電子レンジ加熱によって脚部3bの硬度が増し、そして、底面部3aの形状が上面視で大きくなることから、脚部3bが安定的に、胴部2を支持でき、結果、袋状容器1の自立性が向上する。
【0032】
また、袋状容器1は、胴部シート11の下端部と底部シート12の短手方向の発熱体層32が設けられた辺部とを接着し、脚部3bに発熱体層32を配置することで、効率的に脚部3bを加熱することが可能となる。結果、胴部シート11及び底部シート12の接着部分を効率的に加熱することができることから、補強効果をより高めることができる。
【0033】
また、袋状容器1は、底部シート12に切欠部12aを設け、当該切欠部12aにおいて一対の胴部シート11同士が接着する構成とし、発熱部12bを袋状容器1の内部空間の下端及び切欠部12aの下端までか、これら下端よりも下方まで設ける構成である。このため、袋状容器1は、袋状容器1の下端、即ち加熱前の脚部3bの下端から一定の高さ範囲をバランス良く均一に硬化することができるため、電子レンジ加熱後に、安定して自立性を得ることができる。さらに、発熱体層32は、袋状容器1の下端から上方に15mm以内、より好ましくは10mm以内の範囲に形成されていることにより、十分な自立性を付与することができる。
【0034】
次に、このように構成された袋状容器1の評価試験及び評価結果を、以下説明する。なお、評価試験は本発明の特徴をより具体的にするためのものであり、本発明の範囲は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
[評価試験1]
評価試験1として、以下の実施例1乃至実施例3の袋状容器1を作製し、内部に内容物として水を収容した。次いで、袋状容器1を電子レンジ(日立製作所株式会社:MRO-MS7)で出力500Wの条件で加熱を行い、加熱後の袋状容器1の安定感及び外観不良を目視確認した。袋状容器1の安定感として、自立し、且つ、内容物を取り出す際に倒れないものを○、自立し、且つ、内容物を取り出す際に倒れず、ぐらつきがないものを◎、自立しないか、又は、内容物を取り出す際に安定しないか又は倒れたものを×として評価した。また、外観に不良、例えば、一部だけ収縮する、底部3が溶解する等が生じている場合には×を、外観に不良が生じていない場合には○とした。
【0036】
[実施例1]
実施例1として、袋状容器1に以下の構成のものを用いた。胴部シート11は、第1基材層21として、厚さ12μmのPET(東洋紡株式会社:エスペットフィルムE5100)を用い、第1シール層22として厚さ40μmのCPP(東洋紡株式会社:パイレンフィルムP1146)を用いた。底部シート12は、第2基材層31として、厚さ12μmのPET(東洋紡株式会社:エスペットフィルムE5100)を用い、第2シール層33として厚さ40μmのCPP(東洋紡株式会社:パイレンフィルムP1146)を用いた。また、底部シート12として、発熱部12b及び非発熱部12cを有し、発熱部12bの発熱体層32には、フィルム層32aに相当するPETフィルムにアルミニウムと酸化アルミニウムとの混合物を薄膜状に蒸着したサセプター(東レフィルム加工社製1015HT)を用いた。
【0037】
また、発熱部12bは、袋状容器1の下端(脚部3bの下端)から袋状容器1の内部空間の下端及び切欠部12aの下端まで一定の幅で設け、脚部3bの下端から当該内部空間の下端及び切欠部12aの下端までの距離を5mmとした。
【0038】
[実施例2]
実施例2として、実施例1と同一の層構成の胴部シート11及び底部シート12を用いた。また、発熱部12bは、袋状容器1の下端(脚部3bの下端)から袋状容器1の内部空間の下端及び切欠部12aの下端まで一定の幅で設け、脚部3bの下端から当該内部空間の下端及び切欠部12aの下端までの距離を10mmとした。
【0039】
[実施例3]
実施例3として、実施例1及び実施例2と同一の層構成の胴部シート11及び底部シート12を用いた。また、発熱部12bは、袋状容器1の下端(脚部3bの下端)から袋状容器1の内部空間の下端及び切欠部12aの下端まで一定の幅で設け、脚部3bの下端から当該内部空間の下端及び切欠部12aの下端までの距離を15mmとした。
【0040】
[評価試験1の結果]
図7に示すように、評価試験1の結果としては、実施例1乃至実施例3の袋状容器1の全てで、電子レンジでの加熱後に、高い安定感で自立し、また、外観不良は全てに生じていなかった。なお、実施例1と比較して、実施例2及び実施例3はより袋状容器1の自立性が向上していた。ただし、実施例3の袋状容器1は、電子レンジによる加熱時の脚部3bの変形時に、転倒した。これは、電子レンジ加熱中に脚部3bの変形の過程で、変形が不均一に生じた場合に、実施例3のように脚部3bの下端から当該内部空間の下端及び切欠部12aの下端までの距離が長いと、不安定になる虞があるためである。
【0041】
このような評価試験1の結果から、本実施形態の袋状容器1は、電子レンジで加熱することで、内容物の加熱に加え、発熱部12bが発熱して脚部3bの硬度が増加し、且つ、底面部3aの平面視での面積が増加することで、自立性が向上することが明らかとなった。
【0042】
[評価試験2]
評価試験2として、以下の実施例4、及び、比較例1乃至比較例3の袋状容器1を作製し、内部に内容物として水を収容した。次いで、袋状容器1を電子レンジ(日立製作所株式会社:MRO-MS7)で出力500Wの条件で加熱を行い、加熱後の袋状容器1の形状を確認し、評価した。
【0043】
[実施例4]
実施例4として、袋状容器1に以下の構成のものを用いた。胴部シート11は、第1基材層21として、厚さ12μmのPET(東洋紡株式会社:エスペットフィルムE5100)を用い、第1シール層22として厚さ40μmのCPP(東洋紡株式会社:パイレンフィルムP1146)を用いた。底部シート12は、第2基材層31として、厚さ12μmのPET(東洋紡株式会社:エスペットフィルムE5100)を用い、第2シール層33として厚さ40μmのCPP(東洋紡株式会社:パイレンフィルムP1146)を用いた。また、底部シート12の発熱体層32は、フィルム層32aに相当するPETフィルムにアルミニウムと酸化アルミニウムとの混合物を薄膜状に蒸着したサセプター(東レフィルム加工社製1015HT)を用いた。
【0044】
また、発熱部12bは、袋状容器1の下端(脚部3bの下端)から袋状容器1の内部空間の下端及び切欠部12aの下端まで一定の幅で設け、脚部3bの下端から当該内部空間の下端及び切欠部12aの下端までの距離を10mmとした。
【0045】
[比較例1]
比較例1として、袋状容器1に以下の構成のものを用いた。胴部シート11及び底部シート12に、実施例4の胴部シート11と同じ層構成のものを用いた。即ち、比較例1の袋状容器1は、発熱部12b(発熱体層32)を有さない構成とした。また、袋状容器1は、脚部3bの下端から当該内部空間の下端及び切欠部12aの下端までの距離を10mmとした。
【0046】
[比較例2]
比較例2として、袋状容器1に以下の構成のものを用いた。胴部シート11は、第1基材層21として、厚さ12μmのPET(東洋紡株式会社:エスペットフィルムE5100)を用い、第1シール層22として厚さ40μmのCPP(東洋紡株式会社:パイレンフィルムP1146)を用いた。また、胴部シート11は、第1基材層21及び第1シール層22の間であって、且つ、全面に渡って発熱体層32を設けた。発熱体層32は、フィルム層32aに相当するPETフィルムにアルミニウムと酸化アルミニウムとの混合物を薄膜状に蒸着したサセプター(東レフィルム加工社製1015HT)を用いた。底部シート12は、第2基材層31として、厚さ12μmのPET(東洋紡株式会社:エスペットフィルムE5100)を用い、第2シール層33として厚さ40μmのCPP(東洋紡株式会社:パイレンフィルムP1146)を用いた。
【0047】
また、袋状容器1は、脚部3bの下端から当該内部空間の下端及び切欠部12aの下端までの距離を10mmとした。
【0048】
[比較例3]
比較例3として、袋状容器1に以下の構成のものを用いた。胴部シート11は、比較例2と同じ層構成とした。即ち、胴部シート11は、第1基材層21として、厚さ12μmのPET(東洋紡株式会社:エスペットフィルムE5100)を用い、第1シール層22として厚さ40μmのCPP(東洋紡株式会社:パイレンフィルムP1146)を用いた。また、胴部シート11は、第1基材層21及び第1シール層22の間であって、且つ、全面に渡って発熱体層32を設けた。発熱体層32は、フィルム層32aに相当するPETフィルムにアルミニウムと酸化アルミニウムとの混合物を薄膜状に蒸着したサセプター(東レフィルム加工社製1015HT)を用いた。底部シート12は、第2基材層31として、厚さ12μmのPET(東洋紡株式会社:エスペットフィルムE5100)を用い、第2シール層33として厚さ40μmのCPP(東洋紡株式会社:パイレンフィルムP1146)を用いた。また、底部シート12は、第2基材層31及び第2シール層33の間であって、且つ、全面にわたって発熱体層32を設けた。発熱体層32は、フィルム層32aに相当するPETフィルムにアルミニウムと酸化アルミニウムとの混合物を薄膜状に蒸着したサセプター(東レフィルム加工社製1015HT)を用いた。
【0049】
また、袋状容器1は、脚部3bの下端から当該内部空間の下端及び切欠部12aの下端までの距離を10mmとした。
【0050】
[評価試験2の結果]
図8に示すように、評価試験2の結果としては、実施例4の袋状容器1は、脚部3bが収縮し、且つ、効果することで、高い自立性を得ることができた。
【0051】
これに対し、比較例1は、電子レンジ加熱で脚部3bが変形せず、自立性はあるものの、内容物の取り出し等において外力が印加されると転倒するなど、安定性を欠いた。比較例2は、内容物と接する領域を除き、胴部シート11及び底部シート12が収縮して硬化した。脚部3bも硬化したことから自立し、且つ、安定性を確保できたものの、内容物を収容した入り味位置よりも上方の胴部2も収縮したことから、袋状容器1の胴部2の形状を保つことができなかった。
【0052】
比較例2と同様に、比較例3も、内容物を収容した領域を除き収縮し、硬化したことから、自立性を有するものの、袋状容器1の胴部の形状を保つことができなかった。また、胴部シート11及び底部シート12の双方に発熱体層32を有することから、底部3が変形した。なお、比較例2及び比較例3の袋状容器1において、内容物を収容した領域において、胴部シート11及び底部シート12の収縮や欠損等が生じず、当該領域の形状が保たれた理由としては、発熱体層32で生じた熱が内容物に移動し、胴部シート11及び底部シート12が収縮する温度まで上昇しなかったためと考えられる。
【0053】
このように、評価試験2から、本実施形態の袋状容器1は、電子レンジで加熱することで、内容物の加熱に加え、発熱部12bが発熱して脚部3bの硬度が増加し、且つ、底面部3aの平面視での面積が増加することで、自立性が向上することが明らかとなった。
【0054】
上述したように、本発明の第1の実施形態に係る袋状容器1によれば、脚部3bに電子レンジ加熱で発熱する発熱部12bを設け、電子レンジ加熱時に発熱した熱によって脚部3bを硬化させることで、自立性を向上することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る袋状容器1Aについて
図9及び
図10を用いて説明する。なお、第2の実施形態に係る袋状容器1Aの構成のうち、上述した第2の実施形態に係る袋状容器1Aと同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0055】
袋状容器1Aは、食品等の内容物を収容し、電子レンジで加熱できる容器である。
図9に示すように、袋状容器1Aは、胴部2と、胴部2と一体に設けられる底部3Aと、を備える。袋状容器1Aは、矩形状の一対の胴部シート11及び一方向に長い矩形状の一枚の底部シート12Aを接着することで、胴部2及び底部3Aを有する袋状に構成される。
【0056】
底部3Aは、胴部シート11の下端部及び底部シート12Aにより構成される。底部3Aは、底面部3aと、袋状容器1Aを自立させる一対の脚部3bと、を備える。即ち、底部3Aは、上述した第1の実施形態に係る袋状容器1の底部3と同一形状を有し、底部3Aを構成する底部シート12Aの構成が、底部3を構成する底部シート12と異なる構成である。
【0057】
底部シート12Aは、長手方向の両縁部に、それぞれ長手方向に沿った中心軸に関して対称となるように配置される二つの半円状の切欠部12aを有する。底部シート12Aは、
図9に示すように、マイクロ波を吸収することによって発熱する発熱部12bが全面に形成される。即ち、底部シート12Aは、全面に発熱部12bが設けられる構成において、非発熱部12c及び発熱部12bが設けられる底部シート12と異なる。
【0058】
底部シート12Aは、全面に渡って第2基材層31と、発熱体層32と、第2シール層33と、を備える。このため、底部シート12の発熱体層32は、保護層32cを有する構成であっても、保護層32cを有さない構成であってもよい。
【0059】
このように構成された袋状容器1Aは、底部3の全領域に渡って発熱体層32を備えることから、発熱体層32は、マイクロ波を吸収することで、脚部3bを構成する樹脂材料が結晶化温度へ到達する熱を生じさせることが可能に構成される。このため、袋状容器1Aは、袋状容器1Aに収容した内容物を加熱したときに、発熱体層32が発熱し、脚部3bを構成する樹脂材料が結晶化温度に到達することで結晶化度を増し、結果、脚部3bの硬度が増加する。加えて、発熱体層32の発熱によって、脚部3bは収縮することから、当該収縮によっても脚部3bは硬度を増す。さらに、脚部3bが収縮するが、底面部3aは内容物に接触することから、底面部3aは収縮しない。即ち、第1の実施形態の評価試験2の比較例2及び比較例3の結果からも明らかなように、底面部3aで生じた熱は内容物に移動することから、底面部3aが結晶化温度へ到達すること及び底面部3aが収縮する温度となることがない。
【0060】
このため、底部3Aは、脚部3bの長手方向、換言すると袋状容器1の幅方向で、脚部3bの長さが縮小するため、底面部3aの短手方向の長さ、換言すると、袋状容器1の厚さ方向に、底面部3aが広がる。
【0061】
このように、袋状容器1Aは、上述した袋状容器1と同様に、電子レンジ加熱によって脚部3bの硬度が増し、そして、底面部3aの形状が上面視で大きくなることから、脚部3bが安定的に胴部2を支持でき、結果、袋状容器1Aの自立性が向上する。
【0062】
また、発熱部12bは、脚部3bの下端から袋状容器1の内部空間の下端より下方に一定の幅で設けられることにより、底部シート12の長手方向において脚部3bを均一に加熱することができる。その結果、袋状容器1Aは、脚部3b近傍の胴部シート11及び底部シート12の熱収縮がバランス良く行われ、収縮後の脚部3bのバランスをより保つことができる。
【0063】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されない。例えば、上述した例では、発熱体層32は、底部3、3Aを構成する底部シート12の短手方向で両端部の脚部3bを構成する領域、又は、底部シート12Aの全領域に設ける構成を説明したがこれに限定されない。即ち、袋状容器1、1Aの脚部3bが電子レンジ加熱時に発熱して結晶化温度及び収縮温度となればよく、このため、胴部シート11の脚部3bを構成する領域に発熱体層32を設ける構成であってもよく、また、胴部シート11及び底部シート12の双方に設ける構成であってもよい。また、自立性が求められる容器であれば、袋状容器1、1Aの形状は、上記形状に限定されない。
【0064】
また、上述した例では、底部シート12は、半円状の切欠である切欠部12aを有する構成を説明したがこれに限定されず、一対の胴部シート11同士が接着可能であれば、切欠部12aは、矩形状や多角形状の切り欠きであってもよい。
【0065】
即ち、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1]
樹脂材料で構成された胴部シートで構成された胴部と、
前記胴部シートと接着される樹脂材料で構成された底部シートで構成された底面部、前記胴部シート及び前記底部シートで構成された脚部、並びに、電磁波を吸収して発熱する発熱部を有する底部と、
を備える袋状容器。
[2]
前記発熱部は前記脚部に設けられる、[1]に記載の袋状容器。
[3]
前記底部シートは、一方向に長く構成され、長手方向の両端にそれぞれ、短手方向に二つ設けられた切欠部を有する矩形状に形成され、前記短手方向の端部から前記切欠部までの幅は、前記脚部の下端から前記袋状容器の内部空間の下端までの高さと同じに構成される、[1]に記載の袋状容器。
[4]
前記発熱部は、前記脚部の下端から前記袋状容器の内部空間の下端より下方に前記短手方向に一定の幅で設けられる[3]に記載の袋状容器。
【符号の説明】
【0066】
1…袋状容器、1A…袋状容器、2…胴部、3…底部、3A…底部、3a…底面部、3b…脚部、11…胴部シート、12…底部シート、12A…底部シート、12a…切欠部、12b…発熱部、12c…非発熱部、21…第1基材層、22…第1シール層、31…第2基材層、32…発熱体層、32a…フィルム層、32b…金属蒸着膜、32c…保護層、33…第2シール層。