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特許7126841透明両面導電性カバーテープと帯電防止層用樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】透明両面導電性カバーテープと帯電防止層用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   B65D 73/02 20060101AFI20220822BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220822BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220822BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20220822BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220822BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220822BHJP
   B65D 85/90 20060101ALI20220822BHJP
   H05F 1/02 20060101ALI20220822BHJP
   H05F 1/00 20060101ALI20220822BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20220822BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220822BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20220822BHJP
   C08L 25/18 20060101ALI20220822BHJP
   C08K 5/52 20060101ALI20220822BHJP
   C08K 5/41 20060101ALI20220822BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20220822BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20220822BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20220822BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
B65D73/02 K
B32B27/18 D
B32B27/36
B32B7/025
B32B27/30 B
B32B27/32 C
B32B27/30 A
B65D85/90 300
H05F1/02 K
H05F1/00 K
C08L67/00
C08L63/00 A
C08L65/00
C08L25/18
C08K5/52
C08K5/41
C08K5/3415
C08K5/053
C08L23/04
C08L53/02
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2018059265
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019064739
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2017191670
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】富永 信之
(72)【発明者】
【氏名】武市 浩
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013801(JP,A)
【文献】国際公開第2012/173119(WO,A1)
【文献】特開2004-231208(JP,A)
【文献】特開2009-137618(JP,A)
【文献】特開平09-216317(JP,A)
【文献】特開平07-251860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 73/02
B65D 85/90
B32B 1/00-43/00
H05F 1/02
H05F 1/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアテープ用の透明両面導電性カバーテープであって、
前記透明両面導電性カバーテープは、帯電防止層と、基材層と、帯電防止ヒートシール層とを有し、
前記帯電防止層と帯電防止ヒートシール層は、前記透明両面導電性カバーテープの最表面層であり、
前記帯電防止層は、バインダー樹脂と帯電防止剤と滑剤とを含む帯電防止層用樹脂組成物から形成された層であり
前記バインダー樹脂は、ポリエステル系樹脂と、グリシジル基を有するアクリル系樹脂とを含有し、熱硬化性樹脂組成物であり
前記ポリエステル系樹脂は、水酸基及び/またはカルボキシル基を有するポリエステル樹脂を含有し、
前記帯電防止剤は、導電性ポリマーを含み、
前記滑剤の含有量は、前記帯電防止層中に1質量%以上、10質量%以下であり、
前記帯電防止層の表面抵抗率は、1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満であり、
帯電防止ヒートシール層の表面抵抗率は、1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満である、
透明両面導電性カバーテープ。
【請求項2】
前記導電性ポリマーが、ポリエチレンジオキシチオフェンと、ポリスチレンスルホン酸系の化合物とを含むことを特徴とする、請求項1記載の透明両面導電性カバーテープ。
【請求項3】
前記帯電防止層中の、
前記導電性ポリマーの含有量が、3質量%以上、50質量%以下であり、
前記ポリエステル系樹脂の含有量が、15質量%以上、96質量%以下である、
請求項1または2に記載の透明両面導電性カバーテープ。
【請求項4】
前記滑剤が、リン酸エステルである、請求項1~3の何れか1項に記載の透明両面導電性カバーテープ。
【請求項5】
前記帯電防止層の表面の、20℃~120℃における、鏡面真鍮との静止摩擦係数は、0.1以上、0.4未満である、請求項1~4の何れか1項に記載の透明両面導電性カバーテープ。
【請求項6】
前記帯電防止ヒートシール層が、酸化錫系または酸化亜鉛系の導電微粒子を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の透明両面導電性カバーテープ。
【請求項7】
前記帯電防止層の厚みが、0.01μm以上、2μm以下であり、
前記帯電防止ヒートシール層の厚みが、0.3μm以上、2.5μm以下である、
請求項1~6の何れか1項に記載の透明両面導電性カバーテープ。
【請求項8】
前記導電性カバーテープが、前記基材層と前記帯電防止ヒートシール層との間に、更に、クッション層を有し、
前記クッション層は、密度が0.900~0.940g/cm3のポリオレフィンで形成された層である、
請求項1~7の何れか1項に記載の透明両面導電性カバーテープ。
【請求項9】
前記導電性カバーテープが、前記基材層と前記帯電防止ヒートシール層との間に、更に、クッション層を有し、
前記クッション層は、密度0.900~0.940g/cm3のエチレン-α・オレフィン共重合体と、スチレン/ブタジエンの質量比が50/50~90/10であるスチレン-ブタジエンブロック共重合体とを含み、
且つ、前記エチレン-α・オレフィン共重合体と前記スチレン-ブタジエンブロック共重合体の質量比が20/80~80/20である、
請求項1~8の何れか1項に記載の透明両面導電性カバーテープ。
【請求項10】
前記帯電防止ヒートシール層が、ガラス転移温度-10~100℃のアクリル系樹脂を含む、請求項1~9の何れか1項に記載の透明両面導電性カバーテープ。
【請求項11】
前記ポリエステル系樹脂が、熱によって架橋する官能基を有する樹脂を含有する、熱硬化性ポリエステル系樹脂組成物である、請求項1~10の何れか1項に記載の透明両面導電性カバーテープ。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載の、帯電防止層を形成するための帯電防止層用樹脂組成物であって、
前記帯電防止層用樹脂組成物は、バインダー樹脂と帯電防止剤と滑剤とを含み、
前記バインダー樹脂は、ポリエステル系樹脂と、グリシジル基を有するアクリル系樹脂とを含有し、熱硬化性樹脂組成物であり、
前記ポリエステル系樹脂は、水酸基及び/またはカルボキシル基を有するポリエステル樹脂を含有し、
前記帯電防止剤は、導電性ポリマーを含み、
前記滑剤の含有量は、前記帯電防止層用樹脂組成物の全固形分中に、1質量%以上、10質量%以下である、
前記帯電防止層用樹脂組成物から作製されたフィルムの表面抵抗率は、1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満である、帯電防止層用樹脂組成物。
【請求項13】
前記導電性ポリマーが、ポリエチレンジオキシチオフェンと、ポリスチレンスルホン酸系の化合物とを含むことを特徴とする、請求項12記載の帯電防止層用樹脂組成物。
【請求項14】
前記帯電防止層用樹脂組成物の全固形分中に、
前記導電性ポリマーの含有量が3質量%以上、50質量%以下であり、
前記ポリエステル系樹脂の含有量が、15質量%以上、96質量%以下である、
請求項12または13に記載の帯電防止層用樹脂組成物。
【請求項15】
前記滑剤が、リン酸エステルである、請求項1214の何れか1項に記載の帯電防止層用樹脂組成物。
【請求項16】
前記ポリエステル系樹脂が、熱によって架橋する官能基を有する樹脂を含有する、熱硬化性ポリエステル系樹脂組成物である、請求項1215の何れか1項に記載の帯電防止層用樹脂組成物。
【請求項17】
前記帯電防止層用樹脂組成物は、更に、導電性向上剤を含む、請求項1216の何れか1項に記載の帯電防止層用樹脂組成物。
【請求項18】
前記導電性向上剤が、水と相溶または混和する液体であり、1気圧における沸点が150℃以上、250℃以下である、
請求項17に記載の帯電防止層用樹脂組成物。
【請求項19】
前記帯電防止層用樹脂組成物中の前記導電性向上剤の含有量が、全固形分に対して、1質量%以上、300質量%以下である、請求項17または18に記載の帯電防止層用樹脂組成物。
【請求項20】
前記帯電防止層用樹脂組成物は、更に、溶剤を含む、請求項1219の何れか1項に記載の帯電防止層用樹脂組成物。
【請求項21】
前記溶剤が、水、または、有機溶剤と水との混合物であり、
前記有機溶剤は、1気圧における沸点が、50℃以上、150℃未満であり、水に相溶または混和するものである、
請求項1220の何れか1項に記載の帯電防止層用樹脂組成物。
【請求項22】
前記導電性向上剤が、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、グリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなる群から選択される、1種または2種以上である、
請求項1221の何れか1項に記載の帯電防止層用樹脂組成物。
【請求項23】
前記導電性向上剤が、ジメチルスルホキシドであり、
前記溶剤が、水とイソプロピルアルコールとの混合物である、
請求項1222の何れか1項に記載の帯電防止層用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明であり、両面に導電性を有する、透明両面導電性カバーテープに関する。より詳細には、半導体素子等の電子部品を収容するポケット部を設けたキャリアテープに対して、該ポケットの開口部を覆う蓋材として使用される、透明両面導電性カバーテープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICチップやコンデンサ等の電子部品は、テーピング包装され、電子回路基板への表面実装に供せられる。テーピング包装は、エンボス成形によりポケット部を連続的に形成したキャリアテープにおいて、各ポケット部に電子部品を収納し、ポケットの開口部をカバーテープで覆い、ヒートシールすることによって密封する包装形態である。
【0003】
キャリアテープからカバーテープを剥離する際に静電気が発生すると、内部の電子部品に劣化や静電破壊が生じるため、キャリアテープ及びカバーテープには、高い帯電防止性が要求される。
【0004】
また、製品の欠陥を検知したり、製品上に印刷されたコード等を認識するために、テーピング包装体は未開封の状態で、カバーテープの上からカメラ検査が行われる。そのため、カバーテープには、高い透明性も要求される。
【0005】
さらに、電子部品を収納したテーピング包装体は、輸送及び保管時には密封状態が保持され、且つ、電子部品の実装時にカバーテープを安定して滑らかに剥離できるよう、ジップアップ(剥離の進行に伴う剥離強度の最大値と最小値との差)が小さいことが要求される。
【0006】
ジップアップが大きいと、カバーテープの剥離時にキャリアテープが振動し、ポケット部に収容されていた電子部品が飛び出したり、所望の位置に装填できないという問題が生じる。
【0007】
これらの要求に対し、安定した易剥離性を有する透明導電性カバーテープとして、電子部品と直接接触するヒートシール層に金属酸化物微粒子等の導電防止材料を練り込んだり、塗布してなるカバーテープが知られている(例えば、特許文献1)。
【0008】
しかしながら、電子部品の包装体として要求される帯電防止性を得るためには、多量の導電防止材料を使用する必要があり、これにより、透明性が低下し、カメラ検査による内部確認が困難になるという問題がある。
【0009】
また、キャリアテープ上にヒートシールしたときに、所望のシール強度が得られないという問題がある。これは、近年普及しているポリスチレン製又はポリカーボネート製キャリアテープにおいて特に深刻であり、テーピング包装体の輸送及び保管中にカバーテープが剥離し、内部の電子部品が脱落するという問題が知られている。
【0010】
一方、透明性及びシール強度を確保するために導電防止材料の添加量を減らすと、十分な帯電防止性能が発揮されず、静電気の発生を防ぐことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平7-251860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の問題点を解決して、十分なシール強度と安定した易剥離性を有し、高い透明性を保持したまま、電子部品の包装に適用可能な優れた帯電防止性を発揮する透明両面導電性カバーテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、種々研究の結果、帯電防止層と、基材層と、帯電防止ヒートシール層とを有し、前記帯電防止層と帯電防止ヒートシール層は、前記両面導電性カバーテープの最表面層であり、前記帯電防止層は、特定のバインダー樹脂と特定の帯電防止剤と滑剤とを含み、前記滑剤の含有量は、前記帯電防止層中に質量1%以上、10質量%以下であり、前記帯電防止層の表面抵抗率は、1×104Ω/□以上、1×1010であり、帯電防止ヒートシール層の表面抵抗率は、1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満である、キャリアテープ用の透明両面導電性カバーテープが、上記の目的が達成されることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.キャリアテープ用の透明両面導電性カバーテープであって、
前記両面導電性カバーテープは、帯電防止層と、基材層と、帯電防止ヒートシール層とを有し、
前記帯電防止層と帯電防止ヒートシール層は、前記両面導電性カバーテープの最表面層であり、
前記帯電防止層は、バインダー樹脂と帯電防止剤と滑剤とを含み、
前記バインダー樹脂は、ポリエステル系樹脂を含み、
前記帯電防止剤は、導電性ポリマーを含み、
前記滑剤の含有量は、前記帯電防止層中に1質量%以上、10質量%以下であり、
前記帯電防止層の表面抵抗率は、1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満であり、
帯電防止ヒートシール層の表面抵抗率は、1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満である、
透明両面導電性カバーテープ。
2.前記導電性ポリマーが、ポリエチレンジオキシチオフェンと、ポリスチレンスルホン酸系の化合物とを含むことを特徴とする、上記1記載の透明両面導電性カバーテープ。
3.前記帯電防止層中の、
前記導電性ポリマーの含有量が、3質量%以上、50質量%以下であり、
前記ポリエステル系樹脂の含有量が、15質量%以上、96質量%以下である、
上記1または2に記載の透明両面導電性カバーテープ。
4.前記滑剤が、リン酸エステルである、上記1~3の何れかに記載の透明両面導電性カバーテープ。
5.前記帯電防止層の表面の、20℃~120℃における、鏡面真鍮との静止摩擦係数は、0.1以上、0.4未満である、上記1~4の何れかに記載の透明両面導電性カバーテープ。
6.前記帯電防止ヒートシール層が、酸化錫系または酸化亜鉛系の導電微粒子を含む、上記1~5の何れかに記載の透明両面導電性カバーテープ。
7.前記帯電防止層の厚みが、0.01μm以上、2μm以下であり、
前記帯電防止ヒートシール層の厚みが、0.3μm以上、2.5μm以下である、
上記1~6の何れかに記載の透明両面導電性カバーテープ。
8.前記導電性カバーテープが、前記基材層と前記帯電防止ヒートシール層との間に、更
に、クッション層を有し、
前記クッション層は、密度が0.900~0.940g/cm3のポリオレフィンで形成された層である、
上記1~7の何れかに記載の透明両面導電性カバーテープ。
9.前記導電性カバーテープが、前記基材層と前記帯電防止ヒートシール層との間に、更に、クッション層を有し、
前記クッション層は、密度0.900~0.940g/cm3のエチレン-α・オレフィン共重合体と、スチレン/ブタジエンの質量比が50/50~90/10であるスチレン-ブタジエンブロック共重合体とを含み、
且つ、前記エチレン-α・オレフィン共重合体と前記スチレン-ブタジエンブロック共重合体の質量比が20/80~80/20である、
上記1~8の何れかに記載の透明両面導電性カバーテープ。
10.前記帯電防止ヒートシール層が、ガラス転移温度-10~100℃のアクリル系樹脂を含む、上記1~9の何れかに記載の透明両面導電性カバーテープ。
11.前記ポリエステル系樹脂が、熱によって架橋する官能基を有する樹脂を含有する、熱硬化性ポリエステル系樹脂組成物である、上記1~10の何れかに記載の透明両面導電性カバーテープ。
12.前記バインダー樹脂は、更に、グリシジル基を有するアクリル系樹脂を含有し、
前記バインダー樹脂に含まれる前記ポリエステル系樹脂は、水酸基及び/またはカルボキシル基を有するポリエステル樹脂を含有し、
前記バインダー樹脂は、熱硬化性樹脂組成物である、
上記1~11の何れかに記載の透明両面導電性カバーテープ。
13.キャリアテープ用のカバーテープの帯電防止層用樹脂組成物であって、
前記帯電防止層用樹脂組成物は、バインダー樹脂と帯電防止剤と滑剤とを含み、
前記バインダー樹脂は、ポリエステル系樹脂を含み、
前記帯電防止剤は、導電性ポリマーを含み、
前記滑剤の含有量は、前記帯電防止層用樹脂組成物の全固形分中に、1質量%以上、10質量%以下である、
前記帯電防止層用樹脂組成物から作製されたフィルムの表面抵抗率は、1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満である、帯電防止層用樹脂組成物。
14.前記導電性ポリマーが、ポリエチレンジオキシチオフェンと、ポリスチレンスルホン酸系の化合物とを含むことを特徴とする、上記13記載の帯電防止層用樹脂組成物。
15.前記帯電防止層用樹脂組成物の全固形分中に、
前記導電性ポリマーの含有量が3質量%以上、50質量%以下であり、
前記ポリエステル系樹脂の含有量が、15質量%以上、96質量%以下である、
上記13または14に記載の帯電防止層用樹脂組成物。
16.前記滑剤が、リン酸エステルである、上記13~15の何れかに記載の帯電防止層用樹脂組成物。
17.前記ポリエステル系樹脂が、熱によって架橋する官能基を有する樹脂を含有する、熱硬化性ポリエステル系樹脂組成物である、上記13~16の何れかに記載の帯電防止層用樹脂組成物。
18.前記バインダー樹脂は、更に、グリシジル基を有するアクリル系樹脂を含有し、
前記バインダー樹脂に含まれる前記ポリエステル系樹脂は、水酸基及び/またはカルボキシル基を有するポリエステル樹脂を含有し、
前記バインダー樹脂は、熱硬化性樹脂組成物である、
上記13~17の何れかに記載の帯電防止層用樹脂組成物。
19.前記帯電防止層用樹脂組成物は、更に、導電性向上剤を含む、
上記13~18の何れかに記載の帯電防止層用樹脂組成物。
20.前記導電性向上剤が、水と相溶または混和する液体であり、1気圧における沸点が150℃以上、250℃以下である、
上記19に記載の帯電防止層用樹脂組成物。
21.前記帯電防止層用樹脂組成物中の前記導電性向上剤の含有量が、
全固形分に対して、1質量%以上、300質量%以下である、
上記19または20に記載の帯電防止層用樹脂組成物。
22.前記帯電防止層用樹脂組成物は、更に、溶剤を含む、
上記13~21の何れかに記載の帯電防止層用樹脂組成物。
23.前記溶剤が、水、または、有機溶剤と水との混合物であり、
前記有機溶剤は、1気圧における沸点が、50℃以上、150℃未満であり、水に相溶または混和するものである、
上記13~22の何れかに記載の帯電防止層用樹脂組成物。
24.前記導電性向上剤が、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、グリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなる群から選択される、1種または2種以上である、
上記13~23の何れかに記載の透明両面導電性カバーテープ。
25.前記導電性向上剤が、ジメチルスルホキシドであり、
前記溶剤が、水とイソプロピルアルコールとの混合物である、
上記13~24の何れかに記載の帯電防止層用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、特定の樹脂や帯電防止材料の組み合わせからなる層を、特定の順番で積層することにより、フィルムの帯電性が大幅に減少することを見出したものである。
【0016】
したがって、本発明の透明両面導電性カバーテープは、少量の帯電防止材料で、高い帯電防止効果が得られ、同時に、高い透明性と良好なシール強度と易剥離性とを発揮することができる。
【0017】
本発明の透明両面導電性カバーテープは、特に、ポリスチレン製又はポリカーボネート製のキャリアテープにも好適に使用することができ、上記の効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の透明両面導電性カバーテープを示す、概略的断面図である。
図2】本発明の別態様の透明両面導電性カバーテープを示す、概略的断面図である。
図3】本発明の透明両面導電性カバーテープを蓋材として、キャリアテープとヒートシールした状態の一例を示す、概略的断面図である。
図4】静止摩擦係数と動摩擦係数を測定するための治具(滑り片)を示す図である。
図5】静止摩擦係数と動摩擦係数を測定するための治具(滑り片)へ表面処理基材フィルムの固定方法を示す図である。
図6】静止摩擦係数と動摩擦係数を測定するため測定装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上記の本発明について、以下に更に詳しく説明する。
<本発明の透明導電性カバーテープの層構成>
図1は、本発明の透明導電性カバーテープを示す概略的断面図である。
本発明の透明導電性カバーテープは、図1に示されるように、帯電防止層1と、基材層2と、帯電防止ヒートシール層3とを有し、帯電防止層1と帯電防止ヒートシール層3は、両面導電性カバーテープの最表面層である。
【0020】
図2は、本発明の別態様の透明導電性カバーテープを示す概略的断面図である。図1
構成に対してクッション層4を、基材層2と帯電防止ヒートシール層3との間に有する層構成である。
クッション層4は、組成の異なるクッション層4aと4b等の多層からなっていてもよい。
【0021】
更には、図示はしないが、各層間には、必要に応じて、接着剤層があってもよい。
また更には、図示はしないが、クッション層以外の、各種機能層を有することもできる。
【0022】
図3は、本発明の透明導電性カバーテープを蓋材として、キャリアテープとヒートシールした状態の一例を示す、概略的断面図である。
【0023】
<帯電防止層>
本発明において、帯電防止層は、バインダー樹脂と帯電防止剤と滑剤とを含む層であり、透明両面導電性カバーテープの片側の最表面に積層された層である。
【0024】
帯電防止層は、レベリング剤、消泡剤等の各種添加剤を、必要に応じて、適宜含むこともできる。
帯電防止層の表面抵抗率は、1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満が好ましく、1×105Ω/□以上、1×109Ω/□未満がより好ましく、1×105Ω/□以上、1×108Ω/□未満が更に好ましい。この範囲よりも小さいと、外部からの電気を通電する可能性が高くなり、好ましくない。この範囲よりも大きいと、帯電防止効果が十分に発揮され難くなり易い。
【0025】
前記帯電防止層の表面の、20℃~120℃における、鏡面真鍮との静止摩擦係数は、0.1以上、0.4未満が好ましい。この範囲よりも大きいと、ヒートシール時にスティッキング不良が発生し易くなり、この範囲よりも小さくすることは困難であり、作業性への影響も特に変わらない。
【0026】
前記帯電防止層の厚みは、0.01μm以上、2μm以下が好ましい。この範囲よりも薄いと十分な帯電防止効果を発揮することは困難になり易く、この範囲よりも厚くても帯電防止効果は特に大きくは変わらない。
【0027】
(バインダー樹脂)
帯電防止層に含まれるバインダー樹脂は、ポリエステル系樹脂を含み、好ましくは、更に、熱硬化性を有する樹脂を含むことができる。
【0028】
前記バインダー樹脂に含まれる前記ポリエステル系樹脂は、好ましくは、水酸基及び/またはカルボキシル基を有するポリエステル樹脂を含有し、より好ましくは、熱硬化性ポリエステル系樹脂を含有する。ポリエステル系樹脂が水酸基及び/またはカルボキシル基を有することによって、バインダー樹脂中の他の樹脂成分との親和性が向上し、均質な帯電防止層を得易くなる。
【0029】
あるいは、前記ポリエステル系樹脂が、熱によって架橋する官能基を有する樹脂、すなわち、熱硬化性を有する樹脂を含有する、熱硬化性ポリエステル系樹脂組成物であってもよい。
【0030】
ポリエステル系樹脂が熱硬化性ポリエステル系樹脂脂組成物であることによって、帯電防止層は強固になり、剥落等の不良が発生し難くなる。熱硬化反応は、上記の水酸基及び/またはカルボキシル基を用いた熱硬化反応であってもよく、他の官能基による熱硬化反
応であってもよい。
【0031】
前記帯電防止層中の、前記ポリエステル系樹脂の含有量は、15質量%以上、96質量%以下が好ましい。上記範囲よりも少ないと、上記のポリエステル系樹脂の効果が発現し難くなり、上記範囲よりも多いと、帯電防止効果が低下する傾向になる。
【0032】
帯電防止層のバインダー樹脂に含まれる熱硬化性を有する樹脂は、好ましくは、グリシジル基を有するアクリル系樹脂を含有する。グリシジル基を有することによって、バインダー樹脂中の他の樹脂成分との親和性が向上し、均質な帯電防止層を得易くなる。更には、グリシジル基の反応によって重合し、安定した帯電防止層を形成することができ、また更には、水酸基及び/またはカルボキシル基を有するポリエステル樹脂の熱硬化反応に加わることも可能になる。
【0033】
ポリエステル系樹脂及び/またはアクリル系樹脂が熱硬化性を有する場合には、バインダー樹脂は、熱硬化性樹脂組成物であり、安定した帯電防止層を形成することができる。
【0034】
(滑剤)
帯電防止層に滑剤を含むことによって、ヒートシール作業時の走行安定性が増すという効果が得られる。
【0035】
帯電防止層に含まれる滑剤には、公知のものを用いることができるが、リン酸エステルが好ましい。
【0036】
前記帯電防止層中の滑剤の含有量は、質量1%以上、10質量%以下が好ましく、上記範囲よりも少ないと、添加効果が発現し難い傾向になり、上記範囲よりも多いと、滑剤が過剰にブリードし易くなり、ヒートシール性が低下し易くなる。
【0037】
(帯電防止剤)
帯電防止層は、帯電防止剤として、導電性ポリマーを含む。
【0038】
導電性ポリマーには、公知のものを用いることが出来るが、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)と、ポリスチレンスルホン酸系の化合物(PSS)とを含むことが好ましい。
【0039】
帯電防止層中の導電性ポリマーの含有量は、3質量%以上、50質量%以下が好ましい。上記範囲よりも少ないと、帯電防止層の表面抵抗率が高くなり易く、十分な帯電防止効果を得難くなる傾向になる。上記範囲よりも多いと、帯電防止層が柔らかくなり過ぎて不安定になり易い。
【0040】
<帯電防止層用樹脂組成物>
帯電防止層用樹脂組成物は、帯電防止層を形成する樹脂組成物であり、上記帯電防止層を構成する成分と、更に、粘度や作業性を調製するための溶剤や、導電性向上剤を含有することができる。
【0041】
帯電防止層用樹脂組成物における固形分とは、不揮発分であって、帯電防止層中に残留する成分であり、帯電防止層用樹脂組成物中の導電性向上剤と溶剤以外の成分であり、具体的には、不揮発性の、バインダー樹脂、帯電防止剤、滑剤、レベリング剤、消泡剤等の各種添加剤等が該当する。
各固形分の好ましい含有比率は、帯電防止層における含有比率と同じである。
【0042】
(溶剤)
帯電防止層用樹脂組成物に含有される溶剤としては、水、または、水に相溶または混和する有機溶剤と水との混合物が好ましい。該有機溶剤は、1気圧における沸点が、50℃以上、150℃未満のものがより好ましく、60℃以上、100℃以下のものが更に好ましい。
溶剤は、帯電防止層用樹脂組成物の各固形分を溶解させるものでなくてもよく、帯電防止層用樹脂組成物はエマルジョン型であってもよい。
【0043】
帯電防止層形成時の消泡性を高める為に、溶剤は、イソプロピルアルコール(沸点82.4℃)やメタノール(沸点64.7℃)等のアルコール系溶剤を含むことが好ましい。
有機溶剤は、1種または2種以上を混合して用いることができる。
溶剤としては、水/イソプロピルアルコールの混合物を、特に好ましく用いることができる。水/イソプロピルアルコールの混合比は、固形分の分散性や消泡性、帯電防止層用樹脂組成物の塗布対象である基材への濡れ性を鑑みて、適宜調製することができる。
【0044】
帯電防止層用樹脂組成物中の溶剤の含有量は、全固形分に対して、50質量%以上、2000質量%以下が好ましい。上記範囲よりも少ないと、帯電防止層用樹脂組成物の粘度が高過ぎて作業性に劣る為に均質な帯電防止層を得難くなり易く、上記範囲よりも多いと、粘度が低すぎて充分な厚みの帯電防止層を1度の塗布乾燥で得ることが困難になり易い。
【0045】
(導電性向上剤)
導電性向上剤は、水と相溶または混和する液体であり、1気圧における沸点が、水よりも高いものが好ましく、150℃以上、250℃以下のものがより好ましい。
沸点が上記範囲よりも低いと充分な導電性向上効果を得ることが困難になり易く、上記範囲よりも高いと帯電防止層形成時の乾燥性が悪化して作業性が低下し易い傾向になる。
また、導電性向上剤は、導電性ポリマーと親和性の高いものが好ましいが、帯電防止層用樹脂組成物中の各固形分を溶解させるものでなくてもよい。
【0046】
導電性向上剤には、一般的に水系高沸点液体と呼ばれるものを用いることができ、例えば、DMSO(ジメチルスルホキシド)、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、2-ピロリドン、GBL(γ-ブチロラクトン)、グリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、等が挙げられる。これらは単体で用いても、2種以上を併用してもよい。
上記の中でも、特に、DMSOが、帯電防止層の導電性向上効果に優れ、また、帯電防止層形成時の泡立ちが少なくて作業性にも優れる。
【0047】
導電性向上剤は、必要に応じて配合されるものである。帯電防止層用樹脂組成物中に導電性向上剤を含有する場合には、帯電防止層用樹脂組成物中の導電性向上剤の含有量は、全固形分に対して、1質量%以上、300質量%以下が好ましく、25質量%以上、250質量%以下がより好ましく、50質量%以上、200質量%以下が更に好ましい。上記範囲よりも少ないと、充分な導電性向上効果を得難くなる傾向になり、上記範囲よりも多いと、帯電防止層用樹脂組成物の分散性低下や泡立ちが発生し易くなる。
【0048】
帯電防止層用樹脂組成物が高沸点を有する導電性向上剤を含有することで、帯 電防止層の導電性が向上する。
【0049】
<基材層>
本発明の透明両面導電性カバーテープを構成する基材層フィルムには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン
等のポリオレフィン、ナイロン等のポリアミド、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムを、一軸又は二軸方向に延伸してなるフィルムを使用することができる。
【0050】
これらは単独で使用してもよく、又は、同種又は異種の2又はそれ以上のフィルムを、任意の積層手段によって積層して使用することもできる。
【0051】
カバーテープに好適な透明性、耐熱性及び耐湿性を示す点から、PETフィルムを特に好ましく使用することができる。
【0052】
必要に応じて、接着剤層との接着強度を強固にするために、接着剤層と接する側の表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、サンドブラスト処理等の表面処理を予め施しておくこともできる。
【0053】
基材フィルムの厚さは、当業者が適宜に設定することができるが、カバーテープに適切な強度や腰を付与する目的から、例えば3~25μmが好ましい。
<帯電防止ヒートシール層>
本発明において、帯電防止ヒートシール層は、前記両面導電性カバーテープの最表面層である。
【0054】
そして、帯電防止ヒートシール層の表面抵抗率は、22℃、40%RH下において、1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満であることが好ましい。
【0055】
上記の表面抵抗率が1010Ω/□以上だと、静電気拡散効果が極端に悪くなり易く、電子部品を静電気破壊から保護することが困難になりがちである。また、104Ω/□未満になると、外部から蓋材を介して電子部品に電気が通電する可能性があり、電子部品が電気的に破壊される危険性がある。
【0056】
前記帯電防止ヒートシール層の厚みは、0.1μm以上、5μm以下が好ましく、0.2μm以上、2.5μm以下がより好ましく、0.3μm以上、2μm以下が更に好ましい。
【0057】
上記範囲よりも薄いと密封性と帯電防止効果が不十分になり易く、上記範囲よりも厚いと透明性が損なわれ易い。
【0058】
また、帯電防止ヒートシール層は、23±5℃、12±3%RH下において、5000Vから99%減衰するまでに要する電荷減衰時間が1秒以下であり、優れた静電気特性を有することが好ましい。
【0059】
一方、静電気により発生する電荷の拡散速度の目安である電荷減衰時間が1秒を超える場合、静電気拡散効果が極端に悪くなり易くなり、電子部品を静電気破壊から保護することが困難になりがちである。尚、上記の表面抵抗率および電荷減衰時間は、米国の軍規格であるMIL-B-81705Cに準拠して測定することができる。
【0060】
帯電防止ヒートシール層は、好ましくは、アクリル系樹脂中に導電性微粒子を分散させてなる透明導電性ヒートシール材からなる層である。
【0061】
透明導電性ヒートシール材は、易剥離性、ヒートシール性及びブロッキング性の点から好ましくは20~100℃、より好ましくは30~60℃のガラス転移点を有する。ガラス転移点が低すぎると、ヒートシール層が柔らかくなり、塗膜形成性及び易剥離性が損なわれる。逆に、ガラス転移点が高すぎると、ヒートシール層が硬くなり、十分なシール強
度が得られない。
【0062】
なお、本発明において、ガラス転移点は、JIS K7121に準拠して測定される値である。
【0063】
帯電防止ヒートシール層には、必要に応じて分散安定剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含有させることができる。
【0064】
帯電防止ヒートシール層は、グラビアコート法、エアドクターコート法、ブレードコート法、ナイフコート法、ロッドコート法、ダイレクトロールコート法、リバースロールコート法、スライドコート法、スロットオリフィルコート法等のコーティング方法により、透明導電性ヒートシール材を用いて塗布形成することができる。
また、帯電防止ヒートシール層の密着性を強くする為に、プライマー層を介して積層することもできる。
【0065】
(アクリル系樹脂)
帯電防止ヒートシール層に含まれるアクリル系樹脂は、アクリル単量体の単独重合体及び共重合体を包含する。アクリル単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
但し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートをいう。また、これらと共重合可能な単量体としては、スチレン系単量体、例えばスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、t-ブチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。具体的には、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート-ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレートとスチレンとのランダム、ブロック又はグラフト共重合体、エチル(メタ)アクリレートとスチレンとのランダム、ブロック又はグラフト共重合体等が挙げられる。
【0067】
塗膜形成性等の点から、特に、スチレンとの共重合体を好ましく使用することができる。
【0068】
アクリレートとスチレンとの共重合体におけるスチレン含有率は、塗布対象層を形成する樹脂及び所望の易剥離性に応じて、当業者が適宜に定めることができるが、例えば、好ましくは、スチレン含有率が0.1~30質量%、より好ましくは0.1~20質量%である。
【0069】
スチレン含有率が高すぎると、ガラス転移点が低下して、塗膜形成性及び易剥離性が損なわれる場合がある。逆に、スチレン含有率が少ない場合は、均質な塗膜を形成しにくい場合がある。
【0070】
透明導電性ヒートシール材のバインダーとしてこれらのアクリル系樹脂を用いることにより、所望のヒートシール性や易剥離性が達成されるだけでなく、例えば、基材フィルムとして特に好ましいPETフィルムを使用する場合にも、ブロッキングの発生を防ぎ易くなる。
帯電防止ヒートシール層に含まれるアクリル系樹脂のガラス転移温度は-10~100℃が好ましく、20~90℃がより好ましい。
【0071】
(導電性微粒子)
帯電防止ヒートシール層中に分散される導電性微粒子は、酸化錫系または酸化亜鉛系の粒子が好ましく、アルミニウムドーピング酸化亜鉛やアルミニウムドーピング酸化錫の粒子がより好ましい。
【0072】
導電性微粒子の形状は、特に限定されないが、針状または微球状であることが好ましい。
【0073】
アルミニウムドーピング酸化亜鉛とアルミニウムドーピング酸化錫は、イオンドーピング法により、酸化亜鉛分子上または酸化錫上の酸素原子を、アルミニウム原子で置換することにより得られる。このアルミニウムドーピング酸化亜鉛やアルミニウムドーピング酸化錫からなる粒子を、本発明において好適に使用することができる。
【0074】
導電性微粒子として、アルミニウムドーピング酸化亜鉛の針状粒子を使用することにより、少量の導電性微粒子で、高い導電性と帯電防止特性が達成される。したがって、ヒートシール層を薄く設定することができ、また、透明性が損なわれない。
【0075】
針状粒子の粒子サイズは、平均長(平均長径)が100~2000nmが好ましく、200~2000nmがより好ましい。また、平均長(平均長径)/平均径(平均短径)のアスペクト比は、10以上、35以下が好ましく、20以上、30以下がより好ましい。
【0076】
また、微球状のアルミニウムドーピング酸化亜鉛を用いることにより、多量のアルミニウムドーピング酸化亜鉛を添加することが可能になって、高い導電性が得られる。
【0077】
なお、本発明において、平均長及び平均径は、電子顕微鏡(SEM)で観察することにより任意の30個を測定して得られた平均値である。
【0078】
更にまた、針状と微球状のアルミニウムドーピング酸化亜鉛を併用することもできる。
【0079】
本発明において好適に用いられる微球状粒子は、真球状または楕円球状の粒子であり、平均長(平均長径)は10~200nmが好ましく、20~200nmがより好ましい。また、平均長(平均長径)/平均径(平均短径)のアスペクト比は1~3が好ましく、1~1.5がより好ましい。
【0080】
帯電防止ヒートシール層中の導電性微粒子の含有率は、9質量%以上、80質量%以下が好ましい。
【0081】
導電性微粒子の量が上記の範囲よりも多くなると、塗膜の透明性が悪化し易くて好ましくない。一方、導電性微粒子の量が上記の範囲よりも少ないと、必要な帯電防止性能が得られ難くなり好ましくない。
【0082】
<クッション層>
本発明の透明両面導電性カバーテープは、基材層と帯電防止ヒートシール層との間に、更に、クッション層を有することができる。
【0083】
透明両面導電性カバーテープは、クッション層を有することによって、ポリスチレン製又はポリカーボネート製キャリアテープとヒートシールした際に、良好なシール強度及び剥離強度を達成し易くなり、優れた密封性と易剥離性とを両立することができる。
【0084】
クッション層の密度は、0.900g/cm3以上、0.940g/cm3以下であることが好ましく、0.915g/cm3以上、0.940g/cm3以下であることがより好
ましい。
【0085】
クッション層は、ポリオレフィン系樹脂を含有していることが好ましい。
【0086】
具体的なポリオレフィン系樹脂としては、エチレン-αオレフィン共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、ポリスチレン、スチレン・ブタジエングラフト共重合体、スチレンとイソプレンとのブロック又はグラフト共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ハイインパクトポリスチレン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を含有することができる。
【0087】
エチレン-αオレフィン共重合体としては、ポリエチレン系樹脂が好ましく用いられる。
【0088】
ポリエチレン系樹脂としては、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレン、ポリエチレン系樹脂あるいはポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、又は、これらの2種又はそれ以上の混合物等が挙げられる。
【0089】
直鎖状低密度ポリエチレンは、メタロセン触媒等のシングルサイト触媒又はチーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト系触媒を用いて、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとを低温、低圧で共重合させて得られるコポリマーである。炭素数3~20のα-オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン等が挙げられる。
【0090】
また、共重合方法としては、エチレン及びα-オレフィンを、低圧法、スラリー法、溶液法、気相法等の重合方法が挙げられる。
【0091】
スチレン-ブタジエンブロック共重合体としては、スチレン/ブタジエンの質量比が50/50~90/10であるスチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンの質量比が10/90~50/50であるスチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物が好ましく用いられる。
【0092】
スチレン-ブタジエンブロック共重合体を構成するスチレン系単量体としては、例えばスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、t-ブチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0093】
また、これらスチレン系単量体と共重合可能な単量体としては、ブタジエンの他に、イソプレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を含んでもよい。
【0094】
スチレン由来単位の割合が多すぎると、製膜性が低下し、透明性が低下する一方で、層間の密着性が高まり、易剥離性が低下する傾向がある。
【0095】
エチレン・α-オレフィン共重合体とスチレン・ブタジエンブロック共重合体とのブレンド比を調整することにより、帯電防止ヒートシール層との層間接着強度を制御し、所望の易剥離性及び密封性を両立することができる。
【0096】
本発明の透明両面導電性カバーテープが、キャリアテープからの開封に際し、シール部において、クッション層と帯電防止ヒートシール層との層間に層間剥離が生じるように、易剥離性を調整することも可能である。この場合、ヒートシール層とキャリアテープとのヒートシール条件に左右されない安定した剥離性能を発揮することができる。
【0097】
ここで、両者のブレンド比は、使用するスチレン・ブタジエンブロック共重合体中のスチレン由来単位の含有量と、所望のシール強度(剥離強度)等に応じて、当業者が適宜に調整することができる。
【0098】
カバーテープとして好適なシール強度及び易開封性を得るために、ビカット軟化点が70~110℃であることが好ましく、82~85℃がより好ましい。
【0099】
上記の範囲を超えて、スチレン含量が少なく、ビカット軟化点が高すぎると、層の柔軟性が不足し、密封性及び層間の密着性が損なわれる。逆に、スチレン含量が多く、ビカット軟化点が低すぎると、ジップアップが大きくなり、易剥離性が損なわれる。
【0100】
上記ビカット軟化点を得る為に、例えば、エチレン・α-オレフィン共重合体/スチレン・ブタジエンブロック共重合体の混合物の場合には、質量比は、20/80~80/20が好ましく、30/70~70/30がより好ましく、50/50~70/30が更に好ましく、55/45~70/30が特に好ましい。
【0101】
上記の範囲を超えて、スチレン含量が少なく、ビカット軟化点が高すぎると、層の柔軟性が不足し、密封性及び層間の密着性が損なわれる。逆に、スチレン含量が多く、ビカット軟化点が低すぎると、ジップアップが大きくなり、易剥離性が損なわれる。
【0102】
なお、本発明において、ビカット軟化点は、JISK7206のA120法に基づいて測定される値である。
【0103】
ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、20,000~100,000であることが好ましい。
【0104】
また、クッション層は、発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、任意の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、樹脂フィルムの成形加工性や生産性、各種の物性を調整するために一般に使用される種々の樹脂用添加剤を用いることができる。ただし、透明性、層間密着性及び易剥離性等への影響から、導電性微粒子等の粒子は含まない。
【0105】
クッション層は、インフレーション法、Tダイ法等の慣用の製膜法により積層することができ、多層を共押出することにより形成してもよい。予めフィルム化して、接着層を介して積層してもよい。
【0106】
フィルムの表面には、必要に応じて、接着強度を高めるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、サンドブラスト処理等の表面処理を予め施しておいてもよい。
【0107】
クッション層の厚みは、15~50μmが好ましく、20~45μmがより好ましい。
【0108】
上記範囲より薄いと、クッション層の製膜が不安定になり、均一なフィルムを製膜することが困難になり易く、積層後に十分なクッション性が発揮され難く、シール強度が低下し易い。
【0109】
上記範囲よりも厚いと、十分なシール強度を得る為には、シール温度を高く、シール時間を長くすることが必要になり、好ましくない。
クッション層は、第一のクッション層と第二のクッション層のように、多層からなる層であってもよい。
【0110】
(第一のクッション層)
第一のクッション層は、基材フィルム側に位置するクッション層である。
【0111】
この層は、カバーテープにクッション性を付与し、キャリアテープとのシール強度を担保すると同時に、好ましくは接着剤層を介して基材フィルムと高い層間接着強度を達成することができる。さらに、第二のクッション層を裏打ちして支持する役割を担い、共押出製膜時の製膜安定性を高めることができる。
【0112】
第一のクッション層は、ポリオレフィン系樹脂として、エチレン・α-オレフィン共重合体を含有していることが好ましい
エチレン・α-オレフィン共重合体としては、ポリエチレン系樹脂がより好ましく、シール強度を担保し、製膜安定性を高める機能を十分に発揮し、カバーテープに良好な柔軟性及び透明性を付与するためには、直鎖状低密度ポリエチレンが更に好ましい。
【0113】
また更に、透明性が向上し、剥離強度の制御を容易にする為には、ポリオレフィン系樹脂として、特に、エチレン・α-オレフィン共重合体及び/またはスチレン・ブタジエンブロック共重合体を含有していることが好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体としては、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0114】
(第二のクッション層)
第二のクッション層は、帯電防止ヒートシール層側に位置するクッション層である。この層は、帯電防止ヒートシール層と安定した層間接着強度を発揮し、密封性と易剥離性との両立に寄与することができる。
第二のクッション層は、上記の方法によって、帯電防止ヒートシール層との層間接着強度を制御し、所望の易剥離性及び密封性を両立することが好ましい。
【0115】
カバーテープとして好適なシール強度及び易開封性を得るために、第二のクッション層は、ビカット軟化点が70~110℃であることが好ましく、82~85℃がより好ましい。
【0116】
また、第二のクッション層の厚さは、2~20μmが好ましく、5~15μmがより好ましい。上記範囲より薄いとシール強度が低くなり好ましくない。逆に、上記範囲より厚いと、第二のクッション層製膜時にシワや偏肉、ピンホールが発生しやすくなり好ましくない。
【0117】
<接着剤層>
本発明の透明両面導電性カバーテープを構成する各層間は、接着剤層を介して積層することができる。例えば、基材層フィルムの一方の面に、接着剤層を介して、帯電防止ヒートシール層や、クッション層を貼合する。ここで、接着剤としては、任意のドライラミネート用接着剤を使用することができる。
【0118】
ドライラミネート用接着剤としては、1液又は2液硬化型のビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系等の溶剤型、水性型、又はエマルジョン型等のラミネート用接着剤を使用すること
ができる。
【0119】
また、接着剤の塗布は、グラビアコーティング、ロールコーティング等であってよく、その方法を問うものではない。
【0120】
接着剤層の厚さは、適宜調整することができるが、例えば、透明両面導電性カバーテープに適度な剛性を与えるように、1~10g/m2であり、好ましくは、2~5g/m2である。1g/m2より薄いと、接着強度を均一にできず、またジップアップを小さくして
安定させるのに必要な剛性をもたせることができない。
【0121】
また、10g/m2より厚いと、価格面で不利であるばかりでなく、剛性が強くなり過
ぎて、透明両面導電性カバーテープに亀裂を生ずることがある。
【0122】
<機能層>
機能層は、必要に応じて、種々の機能を透明両面導電性カバーテープに付与する層であり、基材層と帯電防止ヒートシール層との間に設けられる。
【0123】
具体的な機能としては、例えば、剛性、ガスバリア性等が挙げられ、透明両面導電性カバーテープの機能を損なわない範囲内で、剛性の高い樹脂フィルム、金属蒸着膜、ガスバリア性樹脂フィルム等を用いることが出来る。
【0124】
<導電性カバーテープ>
本発明の透明両面導電性カバーテープは、全光線透過率が70%以上、且つヘイズ値が30%以下となるような透明性を有している。
【0125】
より好ましくは、全光線透過率が75%以上、且つヘイズ値が25%以下であり、特に好ましくは、全光線透過率が80%以上であり、且つヘイズ値が23%以下である。
【0126】
したがって、本発明の透明両面導電性カバーテープを用いたテーピング包装体は、カバーテープの上から、未開封の状態で、目視又はカメラ検査により、内容物の有無、充填状態等を検査、確認することができる。
【0127】
そして、本発明の透明両面導電性カバーテープは、キャリアテープからの開封に際し、シール部において、必要に応じて、クッション層と帯電防止ヒートシール層との層間に層間剥離が生じるように、クッション層を調整することもできることから、ヒートシール層とキャリアテープとのヒートシール条件に左右されない安定した剥離性能を発揮することもできる。
【0128】
この際の、クッション層と帯電防止ヒートシール層間の層間接着強度(剥離強度)は、帯電防止ヒートシール層とキャリアテープとの剥離強度より弱いものであり、100~1200gf/15mmの範囲であることが好ましい。
【0129】
上記範囲よりも小さいと包装体の輸送及び保管中に剥離が生じ易くなり、内容物が脱落する危険性が生じる。上記範囲よりも大きいと、透明両面導電性カバーテープを剥離する際に、キャリアテープが振動して内容物が飛び出したりすることがあり好ましくない。
【0130】
なお、本発明において、剥離強度は、23℃相対湿度40%の雰囲気下における180度剥離(剥離速度300mm/分)の値である。
【0131】
また、ジップアップは、50gf/1mm以下が好ましい。ジップアップが50gf/
1mmを超えると、カバーテープを剥離する際にキャリアテープが振動して内容物が飛び出す恐れがあり好ましくない。
【0132】
なお、ここでいうジップアップとは、カバーテープとキャリアテープとを、2本の0.5mm幅のヒートシールバーを用いてヒートシールし、それを剥離したときの剥離強度の最大値と最小値との差をいう。
【0133】
ジップアップの測定条件は、23℃、相対湿度40%の雰囲気下において、剥離速度300mm/分の条件で測定長さ20mmを180度剥離したときの数値である。
【0134】
<キャリアテープ>
本発明の透明両面導電性カバーテープを適用するキャリアテープの材質としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ABS等が挙げられるが、ポリスチレン及びポリカーボネートが特に好ましい。
【0135】
また、これらの樹脂に、帯電防止対策として、導電性カーボンブラック微粒子、金属微粒子、金属酸化物に導電性をもたせた導電性微粒子、有機ケイ素化合物あるいは界面活性剤を練り込むことも可能であり、また、これらを含むものを塗布してもよい。
【0136】
次に、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。
【実施例
【0137】
用いた原材料は下記の通り。
導電性ポリマー1:総研化学(株)社製VERAZOL WED-SM。
導電性ポリマー2:総研化学(株)社製VERAZOL IW-1035。ポリエステル樹脂を含有し、固形分中の導電性ポリマー含有量は4~50質量%。
ポリエステル樹脂1:高松油脂(株)社製ペスレジン、A-645GH、アクリル樹脂含有。熱硬化性。
ポリエステル樹脂2:互応化学工業(株)社製、プラスコート、Z-565、熱可塑
性。
ポリエステル樹脂3:高松油脂(株)社製ペスレジン、A-684G、カルボキシル基含有熱硬化性。
ポリナフタレン樹脂1:互応化学工業(株)社製、プラスコート PENグレード、
Z-592。
滑剤1:第一工業製薬(株)社製プライサーフA212C。リン酸エステル系。
滑剤2:第一工業製薬(株)社製プライサーフA219B。リン酸エステル系。
導電性向上剤1:DMSO(ジメチルスルホキシド)。沸点189℃。
導電性向上剤2:NMP(N-メチル-2-ピロリドン)。沸点204℃。
導電性向上剤3:GBL(γ-ブチロラクトン)。沸点204℃。
導電性向上剤4:プロピレングリコール。沸点188℃。
溶剤1:水/IPA混合品(質量比1/1)
ポリオレフィン系樹脂1:(株)プライムポリマー製エボリューSP2520、直鎖状低密度ポリエチレン。密度0.925。
ポリオレフィン系樹脂2:(株)プライムポリマー製ウルトゼックス2021L、直鎖状低密度ポリエチレン。密度0.919。
ポリオレフィン系樹脂3:旭化成ケミカルズ(株)製アサフレックス810、スチレン・ブタジエンブロック共重合体。スチレン含有率65質量%。
二軸延伸PETフィルムA:東洋紡製、E5100。12μm厚。
接着剤A:ロックペイント(株)社製、RU-40/H-4。
アクリレート系樹脂1:三菱ケミカル(株)社製、商品名ダイヤナールLRシリーズ

導電性微粒子1:石原産業(株)社製、FSS-10M。アンチモンをドーピングした酸化錫の針状粒子を68質量%含有するスラリー。
導電性微粒子2:三井金属鉱業(株)社製、商品名パストランAZO。アルミニウム
をドーピングした酸化亜鉛の球状粒子を72質量%含有するスラリー。
【0138】
[実施例1]
下記原料を混合し、液状の帯電防止層用樹脂組成物を得た。
導電性ポリマー1、ポリエステル樹脂1および滑剤1の固形分量が下記分量になるように各原料を混合し、導電性向上剤および溶剤1は固形分100質量部に対して下記分量を混合した。
導電性ポリマー1 3質量部
ポリエステル樹脂1 92質量部
滑剤1 5質量部
導電性向上剤 125質量部
溶剤1 1863質量部
得られた帯電防止層用樹脂組成物を二軸延伸PETフィルムA上に塗布乾燥して、厚み0.05μmの帯電防止層を形成して、ヘイズ値測定用試験片を作製した。
次に、エボリューSP2520が第一のクッション層(厚み20μm)、ウルトゼックス2021L/アサフレックス810混合物(60/40質量比、ビカット軟化点85℃)が第二のクッション層(厚み10μm)となるように、共押出により製膜し、総厚み30μmのクッション層積層フィルムを得た。
【0139】
そして、クッション層積層フィルムの、第一のクッション層側表面と、二軸延伸PETフィルムAのコロナ処理面とを、接着剤Aからなる接着剤層を介してドライラミネーションにより貼り合わせた。
【0140】
次いで、下記原料を混合して帯電防止ヒートシール材を調整した。
【0141】
スチレン-メタアクリレート共重合体1 28.6質量部
導電性微粒子1 71.4質量部
そして、上記のクッション層積層フィルムの二軸延伸PETフィルムAとは反対面に、上記で調製した帯電防止ヒートシール材をロールコート法によって塗布、乾燥し、透明両面導電性カバーテープ前駆体を得た。
【0142】
次に、得られた透明両面導電性カバーテープ前駆体の基材層表面に、上記で調製した液状の帯電防止層用樹脂組成物を塗布、乾燥して帯電防止層を形成して、透明両面導電性カバーテープを得た。
【0143】
帯電防止層の厚みは0.05μm、帯電防止ヒートシールは、厚みが2μm、ガラス転移点が50℃だった。
【0144】
得られた透明両面導電性カバーテープについて、各種評価を行った。評価結果を下記の表1に示した。
【0145】
[実施例2~13、比較例1~3]
表1の配合に従って、実施例1と同様に、液状の帯電防止層用樹脂組成物と帯電防止ヒートシール材を調整し、クッション層積層フィルムを作製し、透明両面導電性カバーテープを得て、評価した。評価結果を下記の表1に示した。
【0146】
[評価結果まとめ]
実施例1~13は、好適な全光線透過率、ヘイズ、表面抵抗率、密着性、静止摩擦係数を示した。
【0147】
比較例1は静止摩擦係数が大きく、比較例2は密着性が弱かった。
【0148】
<評価>
(表面抵抗率)
透明両面導電性カバーテープを試験片にして、22℃、40%RH下において、三菱化学アナリテック(株)製のハイレスタUPにて測定した。
(ヘイズ値及び全光線透過率)
ヘイズ値測定には、作成した帯電防止層(0.05μm厚)/二軸延伸PETフィルムA(12μm厚)の試験片を、全光線透過率測定には作成したカバーテープ試験片を用いて、(株)東洋精機製作所製のヘイズガードIIにて測定した。
(剥がれ有無(密着性))
透明両面導電性カバーテープ試験片をキャリアテープにヒートシールし、剥がれている部分の有無を確認した。
(静止摩擦係数)
図4に記載のSUS製治具(滑り片)を、図5に記載のように、カットした透明両面導電性カバーテープの非帯電防止層側の面上に乗せて、透明両面導電性カバーテープの端を上に折って前記治具の上部で両面テープにより透明両面導電性カバーテープを固定した。そして、透明両面導電性カバーテープを貼り付けた治具を、ヒーターによって所定の温度に調節された鏡面真鍮板上に置き、更に前記治具の上に錘を置いた。
【0149】
そして、図6に記載のように、透明両面導電性カバーテープを貼り付けた治具を、テンシロンを用いて一定速度で引っ張り、荷重の変化をチャート紙にグラフで記録した。
【0150】
チャート紙上のグラフにおいて、治具が動き出す直前の最大荷重値をFsとし、最初の
最大荷重を過ぎて最低を示したところからの、荷重値の積算平均をチャートから読み取り、これをFdとした。
【0151】
そして、μs、μdを下記式から算出した。
μs=Fs/Fp
μd=Fd/Fp
μs:静止摩擦係数
μd:動摩擦係数
s:静止摩擦力
d:動摩擦力
p:接触力(本測定においては、1133gfである。)
測定は個々に5回行い、その平均値を求めた。
詳細条件は下記の通り。
【0152】
使用機器:
イマダ製デジタルフォースゲージ ZP-5N。ロードセル500g。
イマダ製縦型電動計測スタンド MX-500N。
イマダ製摩擦係数測定治具(滑り片及び鏡面真鍮板等一式) COF-10N-V。
鏡面真鍮板サイズ:幅70mm×長さ800mm×厚さ4mm
鏡面真鍮板温度:20℃、120℃
SUS製治具(滑り片)重量:133gf
帯電防止フィルムサイズ:長手方向に10cm、幅方向に10cm
錘重量:1000gf
テンシロン引っ張りスピード:50mm/分
鏡面真鍮板温度:25℃、または120℃
合否判定基準:0.1以上、0.4未満を合格とした。
【0153】
【表1】
【符号の説明】
【0154】
1.帯電防止層
2.基材層
3.帯電防止ヒートシール層
4.クッション層
4a.クッション層a
4b.クッション層b
5.キャリアテープ
6.キャリアテープポケット部
11.滑り片
12.フィルム
13.錘
14.鏡面真鍮板
15.ヒーター
16.滑車
17.フォースゲージ
18.縦型電動計測スタンド
図1
図2
図3
図4
図5
図6