(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】認知機能評価装置
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20220822BHJP
G09B 19/00 20060101ALN20220822BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B10/00 Y
G09B19/00 G
(21)【出願番号】P 2018082115
(22)【出願日】2018-04-23
【審査請求日】2021-04-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年10月23日 次世代ベンチャーショーに発表、平成29年11月15日 新価値創造展2017に発表、平成30年02月23日 茨城県ベンチャーピッチに発表
(73)【特許権者】
【識別番号】506185436
【氏名又は名称】株式会社ニューコム
(74)【代理人】
【識別番号】100124257
【氏名又は名称】生井 和平
(72)【発明者】
【氏名】小川 保二
(72)【発明者】
【氏名】大藏 倫博
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-010640(JP,A)
【文献】特開2003-102870(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1527680(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0195018(US,A1)
【文献】特開昭56-155894(JP,A)
【文献】特開2010-284293(JP,A)
【文献】特開2018-033692(JP,A)
【文献】特開2010-054372(JP,A)
【文献】登録実用新案第3012816(JP,U)
【文献】国際公開第2013/000559(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107661598(CN,A)
【文献】実開昭61-026505(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/00
A61B 5/16-5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者の認知機能を評価可能な認知機能評価装置であって、該認知機能評価装置は、
保管穴又は挿入穴へ挿入される端部の一方に磁性体が設けられ、他方に導電体が設けられ、操作者が指で摘まんで移動挿入操作可能な複数の操作対象物と、
前記操作対象物を保管する保管エリアに配置され、複数の操作対象物をそれぞれ挿入可能な複数の保管穴と、
前記操作対象物を保管エリアから移動操作する操作エリアに配置され、操作対象物を保管穴から移動して挿入可能な複数の挿入穴と、
前記操作対象物の挿入穴への移動挿入操作指示を挿入穴近傍にそれぞれ表示する指示表示部と、
前記操作対象物の挿入穴への挿入状態を検出可能
であり、電磁誘導センサからなり操作対象物に提供される磁性体又は導電体を検出することで操作対象物の挿入状態を検出可能であり、磁性体か導電体かを判別することで操作対象物の挿入方向も検出可能である、検出センサと、
前記検出センサにより検出される挿入状態が、指示表示部による移動挿入操作指示と一致するか否かの判定結果を報知可能な報知部と、
操作対象物の移動挿入操作に要する時間を計測可能なタイム計測部と、
前記タイム計測部による時間を基に認知機能評価情報を出力する出力部と、
を具備することを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項2】
操作者の認知機能を評価可能な認知機能評価装置であって、該認知機能評価装置は、
磁性体又は導電体を収容するための収容溝を有し、保管穴又は挿入穴へ挿入される端部の一方に磁性体が設けられ、他方に導電体が設けられ、操作者が指で摘まんで移動挿入操作可能な複数の操作対象物と、
前記操作対象物を保管する保管エリアに配置され、複数の操作対象物をそれぞれ挿入可能な複数の保管穴と、
前記操作対象物を保管エリアから移動操作する操作エリアに配置され、操作対象物を保管穴から移動して挿入可能な複数の挿入穴と、
前記操作対象物の挿入穴への移動挿入操作指示を挿入穴近傍にそれぞれ表示する指示表示部と、
前記操作対象物の挿入穴への挿入状態を検出可能
であり、磁性体か導電体かを判別することで操作対象物の挿入方向も検出可能であり、収容溝に収容される磁性体又は導電体が直接接触しないような、検出センサと、
前記検出センサにより検出される挿入状態が、指示表示部による移動挿入操作指示と一致するか否かの判定結果を報知可能な報知部と、
操作対象物の移動挿入操作に要する時間を計測可能なタイム計測部と、
前記タイム計測部による時間を基に認知機能評価情報を出力する出力部と、
を具備することを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の認知機能評価装置において、前記報知部は、検出センサにより検出される挿入状態が指示表示部による移動挿入操作指示と異なる場合に、操作対象物に反応を与える反応提供手段を有することを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の認知機能評価装置において、前記反応提供手段は、挿入穴から操作対象物を放出する方向に力を加えることを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項5】
請求項
3に記載の認知機能評価装置において、前記反応提供手段は、操作対象物に振動を与えることを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項6】
操作者の認知機能を評価可能な認知機能評価装置であって、該認知機能評価装置は、
操作者が指で摘まんで移動挿入操作可能な複数の操作対象物と、
前記操作対象物を保管する保管エリアに配置され、複数の操作対象物をそれぞれ挿入可能な複数の保管穴と、
前記操作対象物を保管エリアから移動操作する操作エリアに配置され、操作対象物を保管穴から移動して挿入可能な複数の挿入穴と、
前記操作対象物の挿入穴への移動挿入操作指示を挿入穴近傍にそれぞれ表示する指示表示部と、
前記操作対象物の挿入穴への挿入状態を検出可能な検出センサと、
前記検出センサにより検出される挿入状態が、指示表示部による移動挿入操作指示と一致するか否かの判定結果を報知可能
であると共に、検出センサにより検出される挿入状態が指示表示部による移動挿入操作指示と異なる場合に、挿入穴から操作対象物を放出する方向に力を加える反応提供手段を有する、報知部と、
操作対象物の移動挿入操作に要する時間を計測可能なタイム計測部と、
前記タイム計測部による時間を基に認知機能評価情報を出力する出力部と、
を具備することを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項7】
操作者の認知機能を評価可能な認知機能評価装置であって、該認知機能評価装置は、
操作者が指で摘まんで移動挿入操作可能な複数の操作対象物と、
前記操作対象物を保管する保管エリアに配置され、複数の操作対象物をそれぞれ挿入可能な複数の保管穴と、
前記操作対象物を保管エリアから移動操作する操作エリアに配置され、操作対象物を保管穴から移動して挿入可能な複数の挿入穴と、
前記操作対象物の挿入穴への移動挿入操作指示を挿入穴近傍にそれぞれ表示する指示表示部と、
前記操作対象物の挿入穴への挿入状態を検出可能な検出センサと、
前記検出センサにより検出される挿入状態が、指示表示部による移動挿入操作指示と一致するか否かの判定結果を報知可能
であると共に、検出センサにより検出される挿入状態が指示表示部による移動挿入操作指示と異なる場合に、操作対象物に振動を与える反応提供手段を有する、報知部と、
操作対象物の移動挿入操作に要する時間を計測可能なタイム計測部と、
前記タイム計測部による時間を基に認知機能評価情報を出力する出力部と、
を具備することを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項8】
請求項
6又は請求項7に記載の認知機能評価装置において、前記操作対象物は、保管穴又は挿入穴へ挿入される端部に磁性体又は導電体が提供され、
前記検出センサは、電磁誘導センサからなり操作対象物に提供される磁性体又は導電体を検出することで操作対象物の挿入状態を検出可能である、
ことを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の認知機能評価装置において、前記操作対象物は、検出センサに磁性体又は導電体が直接接触しないように、磁性体又は導電体を収容するための収容溝を有することを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項10】
請求項
8又は請求項
9に記載の認知機能評価装置において、前記操作対象物は、保管穴又は挿入穴へ挿入される端部の一方に磁性体が設けられ、他方に導電体が設けられ、
前記検出センサは、磁性体か導電体かを判別することで操作対象物の挿入方向も検出可能である、
ことを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項
10の何れかに記載の認知機能評価装置であって、さらに、前記検出センサによる操作対象物の挿入穴への挿入状態の検出に基づき、認知機能評価装置への設定が行えるように構成される設定手段を具備することを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項12】
操作者の認知機能を評価可能な認知機能評価装置であって、該認知機能評価装置は、
操作者が指で摘まんで移動挿入操作可能な複数の操作対象物と、
前記操作対象物を保管する保管エリアに配置され、複数の操作対象物をそれぞれ挿入可能な複数の保管穴と、
前記操作対象物を保管エリアから移動操作する操作エリアに配置され、操作対象物を保管穴から移動して挿入可能な複数の挿入穴と、
前記操作対象物の挿入穴への移動挿入操作指示を挿入穴近傍にそれぞれ表示する指示表示部と、
前記操作対象物の挿入穴への挿入状態を検出可能な検出センサと、
前記検出センサにより検出される挿入状態が、指示表示部による移動挿入操作指示と一致するか否かの判定結果を報知可能な報知部と、
操作対象物の移動挿入操作に要する時間を計測可能なタイム計測部と、
前記タイム計測部による時間を基に認知機能評価情報を出力する出力部と、
前記検出センサによる操作対象物の挿入穴への挿入状態の検出に基づき、認知機能評価装置への設定が行えるように構成される設定手段と、
を具備することを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項13】
請求項
11又は請求項12に記載の認知機能評価装置において、前記指示表示部は、さらに、設定手段への設定操作指示を表示可能に構成されることを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項14】
請求項1
乃至請求項13の何れかに記載の認知機能評価装置において、前記検出センサは、操作対象物の保管穴への挿入状態も検出可能であることを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項15】
請求項1
乃至請求項14の何れかに記載の認知機能評価装置において、前記操作対象物及び検出センサは、操作対象物の挿入方向が検出可能に構成されることを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項
15の何れかに記載の認知機能評価装置において、前記操作対象物は、保管穴又は挿入穴へ挿入される端部の一方と他方とで色分けされており、
前記検出センサは、光センサからなり操作対象物の色の違いを検出することで操作対象物の挿入方向も検出可能である、
ことを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項17】
請求項1乃至請求項
16の何れかに記載の認知機能評価装置において、前記指示表示部は、報知部による判定結果も表示可能に構成されることを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項18】
請求項1乃至請求項
17の何れかに記載の認知機能評価装置において、前記指示表示部は、出力部により出力される認知機能評価情報も表示可能に構成されることを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項19】
請求項1乃至請求項
18の何れかに記載の認知機能評価装置において、前記報知部は、スピーカであることを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項20】
請求項1乃至請求項
19の何れかに記載の認知機能評価装置において、前記タイム計測部は、操作対象物の移動挿入操作に要する時間を、挿入穴の位置毎にそれぞれ計測可能であることを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項21】
請求項1乃至請求項
20の何れかに記載の認知機能評価装置において、前記出力部は、少なくとも表示装置、印刷装置、メッセージ送信装置、クラウドサーバの何れかからなることを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項22】
請求項1乃至請求項
21の何れかに記載の認知機能評価装置において、前記出力部が出力する認知機能評価情報は、過去の履歴情報を含むことを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項23】
請求項1乃至請求項
22の何れかに記載の認知機能評価装置であって、さらに、操作者に関する情報、タイム計測部による時間、タイム計測部によるタイム計測日時を少なくとも記憶するデータベースを具備することを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項24】
請求項1乃至請求項
23の何れかに記載の認知機能評価装置であって、さらに、操作者を識別するための生体認証センサを具備することを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項25】
請求項1乃至請求項
24の何れかに記載の認知機能評価装置であって、さらに、操作者の声を検出可能なマイクを具備することを特徴とする認知機能評価装置。
【請求項26】
請求項1乃至請求項
25の何れかに記載の認知機能評価装置であって、さらに、操作者の表情を検出可能なカメラを具備することを特徴とする認知機能評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は認知機能評価装置に関し、特に、操作者の認知機能を評価可能な認知機能評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化に伴い、認知症予防の重要性が益々高まっている。認知症の予防には、早期発見が重要である。このため、簡単な検査により認知機能を評価する装置の開発が望まれている。
【0003】
認知機能を把握する認知機能評価装置として、幾つかの技術が提案されている。その中でもペグ移動時間計測による認知機能評価装置が知られている(例えば特許文献1)。これは、操作者が指で摘まんで移動挿入操作可能なペグの移動時間を計測することで、認知機能を評価するものである。盤には複数の挿入穴が設けられており、ペグを操作する順番がシールやシートを用いて盤に示されている。順番通りにすべてのペグを挿入穴に挿入し、そのときの操作時間を測定する。測定されたペグの操作時間が長い程、操作者の認知機能が低下していると評価するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来の認知機能評価装置は、ペグを操作する手順がシールやシートを用いて盤に示されるものであり、シールを貼り替えたりシートを交換したりする手間がかかるものであった。また、操作者の操作が指示された順番通りか否かは、管理者により確認する必要があり、管理者の労力が問題となっていた。さらに、管理者は、順番確認だけでなく、操作時間も計測する必要があり、手軽に認知機能を評価できるものではなかった。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑み、正確且つ容易に計測可能であり、飽きることなく長期的に使用でき、認知機能の経過観測も可能な認知機能評価装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明による認知機能評価装置は、操作者が指で摘まんで移動挿入操作可能な複数の操作対象物と、操作対象物を保管する保管エリアに配置され、複数の操作対象物をそれぞれ挿入可能な複数の保管穴と、操作対象物を保管エリアから移動操作する操作エリアに配置され、操作対象物を保管穴から移動して挿入可能な複数の挿入穴と、操作対象物の挿入穴への移動挿入操作指示を挿入穴近傍にそれぞれ表示する指示表示部と、操作対象物の挿入穴への挿入状態を検出可能な検出センサと、検出センサにより検出される挿入状態が、指示表示部による移動挿入操作指示と一致するか否かの判定結果を報知可能な報知部と、操作対象物の移動挿入操作に要する時間を計測可能なタイム計測部と、タイム計測部による時間を基に認知機能評価情報を出力する出力部と、を具備するものである。
【0008】
ここで、検出センサは、操作対象物の保管穴への挿入状態も検出可能であっても良い。
【0009】
また、操作対象物及び検出センサは、操作対象物の挿入方向が検出可能に構成されるものであっても良い。
【0010】
また、操作対象物は、保管穴又は挿入穴へ挿入される端部に磁性体又は導電体が提供され、検出センサは、電磁誘導センサからなり操作対象物に提供される磁性体又は導電体を検出することで操作対象物の挿入状態を検出可能であれば良い。
【0011】
また、操作対象物は、検出センサに磁性体又は導電体が直接接触しないように、磁性体又は導電体を収容するための収容溝を有するものであれば良い。
【0012】
また、操作対象物は、保管穴又は挿入穴へ挿入される端部の一方に磁性体が設けられ、他方に導電体が設けられ、検出センサは、磁性体か導電体かを判別することで操作対象物の挿入方向も検出可能であっても良い。
【0013】
また、操作対象物は、保管穴又は挿入穴へ挿入される端部の一方と他方とで色分けされており、検出センサは、光センサからなり操作対象物の色の違いを検出することで操作対象物の挿入方向も検出可能であっても良い。
【0014】
また、指示表示部は、報知部による判定結果も表示可能に構成されても良い。
【0015】
また、指示表示部は、出力部により出力される認知機能評価情報も表示可能に構成されても良い。
【0016】
また、報知部は、スピーカであれば良い。
【0017】
また、報知部は、検出センサにより検出される挿入状態が指示表示部による移動挿入操作指示と異なる場合に、操作対象物に反応を与える反応提供手段を有するものであっても良い。
【0018】
また、反応提供手段は、挿入穴から操作対象物を放出する方向に力を加えるものであっても良い。
【0019】
また、反応提供手段は、操作対象物に振動を与えるものであっても良い。
【0020】
また、タイム計測部は、操作対象物の移動挿入操作に要する時間を、挿入穴の位置毎にそれぞれ計測可能であっても良い。
【0021】
また、出力部は、少なくとも表示装置、印刷装置、メッセージ送信装置、クラウドサーバの何れかからなるものであれば良い。
【0022】
また、出力部が出力する認知機能評価情報は、過去の履歴情報を含むものであっても良い。
【0023】
さらに、検出センサによる操作対象物の挿入穴への挿入状態の検出に基づき、認知機能評価装置への設定が行えるように構成される設定手段を具備するものであっても良い。
【0024】
また、指示表示部は、さらに、設定手段への設定操作指示を表示可能に構成されるものであっても良い。
【0025】
さらに、操作者に関する情報、タイム計測部による時間、タイム計測部によるタイム計測日時を少なくとも記憶するデータベースを具備するものであっても良い。
【0026】
さらに、操作者を識別するための生体認証センサを具備するものであっても良い。
【0027】
さらに、操作者の声を検出可能なマイクを具備するものであっても良い。
【0028】
さらに、操作者の表情を検出可能なカメラを具備するものであっても良い。
【発明の効果】
【0029】
本発明の認知機能評価装置には、正確且つ容易に計測可能であり、飽きることなく長期的に使用でき、認知機能の経過観測も可能であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明の認知機能評価装置の全体像を説明するための概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の認知機能評価装置の指示表示部の表示例である。
【
図3】
図3は、本発明の認知機能評価装置の出力部から出力される認知機能評価情報の一例である。
【
図4】
図4は、本発明の認知機能評価装置の出力部から出力される認知機能評価情報の他の例である。
【
図5】
図5は、本発明の認知機能評価装置の操作対象物の具体例を説明するための概略断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の認知機能評価装置の検出センサの具体例を説明するための概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の認知機能評価装置の操作対象物の挿入方向を検出可能に構成した具体例を説明するための操作対象物の概略断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の認知機能評価装置の操作対象物の挿入方向を検出可能に構成した他の具体例を説明するための操作対象物の概略断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の認知機能評価装置の報知部の他の例を説明するための概略断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の認知機能評価装置の報知部のさらに他の例を説明するための概略断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の認知機能評価装置の挿入穴を用いて各種設定が可能なように構成した場合の指示表示部の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。
図1は、本発明の認知機能評価装置の全体像を説明するための概略斜視図である。図示の通り、本発明の認知機能評価装置は、操作対象物10と、保管穴20と、挿入穴30と、指示表示部40と、検出センサ50と、報知部60と、タイム計測部70と、出力部80とから主に構成されている。そして、図示例のように、保管穴20と、挿入穴30と、指示表示部40と、検出センサ50と、報知部60と、タイム計測部70と、出力部80とが、例えば筐体1に配置されていれば良い。本発明の認知機能評価装置は、操作者に操作対象物10を摘まんで移動操作させることで、操作者の認知機能を評価するものである。複数の操作対象物であるペグを移動操作する時間を測るテスト結果は、認知レベルと相関が高いことが知られている。また、これらの移動操作が認知機能低下予防に有効であることも知られている。本発明の認知機能評価装置は、このようなペグ移動時間計測による認知機能評価手法を基にしている。
【0032】
操作対象物10は、操作者が指で摘まんで移動挿入操作可能なものである。これは、ペグと呼ばれるものであり、例えば所定の径で所定の長さを有する円筒形の棒状の木片や金属片であれば良い。このような操作対象物10が、複数本用いられれば良い。図示例では、25本の操作対象物10が用いられる例を示したが、本発明はこれに限定されず、本数は任意に決定されれば良い。また、操作対象物10は、操作者が指で摘まめる程度の大きさであれば良いが、手で握る程度の大きさのものも含むものである。
【0033】
保管穴20は、保管エリア21に複数配置されるものである。保管エリア21は、操作対象物10を保管しておくエリアである。具体的には、筐体1の例えば上半分に保管エリア21が設けられており、ここに複数の保管穴20が配置されている。保管穴20は、操作対象物10の本数に対応して設けられれば良い。即ち、図示例では、25個の保管穴20が設けられている。複数の操作対象物10は、複数の保管穴20にそれぞれ挿入可能に構成されている。
【0034】
挿入穴30は、操作エリア31に複数配置されるものである。操作エリア31は、操作対象物10を保管エリア21から移動操作するエリアである。ここに複数の挿入穴30が配置されている。挿入穴30も、操作対象物10の本数に対応して設けられれば良い。即ち、図示例では、25個の挿入穴30が設けられている。複数の操作対象物10は、保管穴20から移動して挿入穴30に挿入可能に構成されている。
【0035】
指示表示部40は、操作対象物10の挿入穴30への移動挿入操作指示を、挿入穴30近傍にそれぞれ表示するものである。具体的には、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイであれば良い。ここで、移動挿入操作指示とは、例えば各挿入穴30に対する挿入の順番を通し番号で指示するものであれば良い。具体的には、図示例のように25本の操作対象物10を用いる場合には、例えば1から25の数字がランダムに表示されるものであれば良い。また、ひらがな等をあいうえお順に表示するものであっても良い。
【0036】
図2に、本発明の認知機能評価装置の指示表示部の表示例を示す。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、各指示表示部40にそれぞれランダムに通し番号を表示することで、その近傍の挿入穴30への操作対象物10の挿入操作を指示する。図示例の指示表示部40では、挿入穴30の個数に合わせてそれぞれ挿入穴30近傍にディスプレイを配置した例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば縦の列を1つのディスプレイで繋げて、挿入穴30近傍に移動挿入操作指示を表示するものであっても良い。さらに、例えばフレキシブルな形状とすることが可能なディスプレイを用いて、操作エリア31全体をディスプレイとして構成し、ディスプレイに挿入穴30が設けられるものであっても良い。この場合も、挿入穴30近傍に移動挿入操作指示を表示するように構成すれば良い。
【0037】
指示表示部40は、上述のように任意の指示を任意に表示することが可能であるため、計測する度に異なる指示パターンとすることが可能である。したがって、操作者は飽きることなく認知機能評価装置を利用し続けることができる。また、例えば1から25の数字をランダムに表示するだけでなく、数字とひらがなを組み合わせて、数字とひらがなを交互に操作させるように表示することも可能である。さらに、ランプが表示されたところに操作対象物10を挿入していくような、所謂モグラ叩きゲームのように構成しても良い。また、最初に移動挿入操作指示として任意の数字を表示し、その後に数字を隠してから計測をスタートするような、所謂神経衰弱ゲームのように構成しても良い。本発明の認知機能評価装置では、このような遊び感覚での計測も可能となる。このように、指示表示部40は、種々の移動挿入操作指示を任意に表示可能である。
【0038】
検出センサ50は、操作対象物10の挿入穴30への挿入状態を検出可能なものである。即ち、検出センサ50は、操作エリア31に設けられ、個々の挿入穴30に操作対象物10が挿入されていないこと、及び挿入されたこと、さらには抜かれたことが検出できるものであれば良い。検出センサ50は、例えば電磁誘導センサ、静電誘導センサ、磁気センサ、光センサ等であれば良い。接点を用いるような電気スイッチでは、操作対象物10の挿入操作に対する耐久性に問題が出る可能性があるため、非接触なセンサであることが好ましい。
【0039】
ここで、検出センサ50は、操作対象物10の保管穴20への挿入状態も検出可能に構成されても良い。即ち、例えば
図2に示されるように、検出センサ50は、保管エリア21にも設けられても良い。検出センサ50により、個々の保管穴20に操作対象物10が挿入されていないこと、及び挿入されたこと、さらには抜かれたことが検出できるように構成される。これにより、例えば計測前に保管穴20に操作対象物10がすべて挿入されているか、操作対象物10が紛失していないかといったことが検出可能となる。
【0040】
報知部60は、検出センサ50により検出される挿入状態が、指示表示部40による移動挿入操作指示と一致するか否かの判定結果を報知可能なものである。具体的には、指示表示部40に表示された挿入の順番通りに操作対象物10が挿入された場合には、例えばチャイム音を鳴らし、誤った順番で挿入された場合には、ブザー音を鳴らすようなスピーカであれば良い。また、また、正しい場合には〇を、誤った場合には×を表示するようなディスプレイであっても良い。このように、報知部60は、判定結果を光や音等により報知可能なものであれば良い。報知部60により判定結果を報知することで、操作者のモチベーションも高まり、継続的に計測してもらえるようにもなる。
【0041】
ここで、報知部60の判定結果は、上述の指示表示部40に表示するように構成しても良い。即ち、例えば
図2にも示されるように、操作対象物10を挿入した挿入穴30近傍の指示表示部40に対して、正しい操作の場合には〇を、誤った操作の場合には×を表示するように構成しても良い(
図2の符号60')。即ち、指示表示部40は、報知部60による判定結果も表示可能に構成されても良い。
【0042】
タイム計測部70は、操作対象物10の移動挿入操作に要する時間を計測可能なものである。これは、計測開始から終了までのトータル時間であっても良いし、操作対象物10毎の挿入時間をそれぞれ計測するものであっても良い。具体的には、例えば指示表示部40により移動挿入操作指示が最初に表示されてから検出センサ50により最後の操作対象物10の挿入状態の変化が検出されるまでの時間、即ち、トータル操作時間を計測するものであれば良い。また、前の挿入状態の変化から次の挿入状態の変化が検出されるまでの時間であっても良い。即ち、ある挿入穴30への移動挿入操作から次の挿入穴30への移動挿入操作に要する時間を挿入穴30の位置毎に計測するようにしても良い。さらに、検出センサ50が保管穴20への挿入状態も検出可能に構成される場合には、保管穴20から操作対象物が抜かれたことが検出できるため、操作対象物10を保管穴20から抜いたときから挿入穴30へ挿入されたときまでの時間をより正確に検出可能となる。
【0043】
タイム計測部70は、操作対象物10の移動挿入操作に要する時間を、挿入穴30の位置毎に関連付けてそれぞれ計測可能に構成されることが好ましい。これにより、挿入穴30の配置位置と、移動操作に要する時間の相関関係が把握可能となる。したがって、操作者個々の特性、例えば脳卒中や緑内障等による視界の狭さや欠陥等を把握することも可能となる。
【0044】
出力部80は、タイム計測部70による時間を基に認知機能評価情報を出力するものである。移動挿入操作に要する時間と認知機能には、一定の相関関係がある。即ち、認知機能が低下すると、移動挿入操作時間が長くなる。これを利用して、認知機能評価情報は、移動挿入時間に基づき認知機能を評価した情報である。例えば、認知機能評価情報は、5段階評価や10段階評価であれば良い。評価に際しては、例えば年齢や性別等の情報を加味することが好ましい。これにより、より正確な認知機能の評価が可能となる。このようにして評価された認知機能評価情報が、出力部80に出力される。出力部80は、例えば表示装置、印刷装置、メッセージ送信装置、クラウドサーバの何れかであれば良い。即ち、出力部80は、表示装置としてディスプレイを筐体1に配置されたもので構成しても良い。また、指示表示部40を出力部80として、認知機能評価情報も表示可能に構成しても良い。また、出力部80は、印刷装置として例えばレシートプリンタを接続することで実現しても良い。さらに、携帯電話会社によるSMS(Short Message Service)を用いて認知機能評価情報を送信しても良い。SMSにより例えば操作者や操作者の保護者の携帯電話にメッセージとして認知機能評価情報をセキュアな状態で送ることができる。また、認知機能評価情報を所定のサーバに出力し、クラウドに保存するようにしても良い。
【0045】
ここで、出力部80が出力する認知機能評価情報には、過去の履歴情報が含まれても良い。これにより、認知機能の経過観測が可能となる。経過観測を行う際には、例えば操作者に関する情報、タイム計測部による時間、タイム計測部によるタイム計測日時を少なくとも記憶するデータベースを具備するようにすれば良い。これにより継続的な経過観測データを蓄積可能となる。経過観測を行うことで、早期に認知機能の低下を発見することができる。さらに、例えばリハビリテーションに用いた場合には、認知機能の向上も観察することが可能となる。データベースは、外部記憶装置であっても良いし、内蔵メモリであっても良いし、SDカード等のメモリカードであっても良い。出力部80は、このようなデータベースに蓄積された履歴情報を出力するように構成されても良い。
【0046】
本発明の認知機能評価装置を用いた認知機能の評価手法としては、まず保管エリア21に複数の操作対象物10を格納しておく。そして、評価スタート時に指示表示部40にランダムに数字が表示される。具体的には、例えば1から25の数字がランダムに表示される。そして、保管エリア21の複数の操作対象物10を1本ずつ抜いて、指示表示部40に表示された数字の順番にその近傍の挿入穴30に操作対象物10を挿入していく(
図2に示された状態)。順番が正しいか誤っているかを、報知部60により報知し、誤った場合には、挿入穴30から操作対象物10を抜いて、正しい挿入穴30へ挿入し直す。25本のすべての操作対象物10を保管エリア21から操作エリア31へ移動し終えると、出力部80に認知機能評価情報が表示される。
【0047】
図3や
図4を用いて、出力部80により出力される認知機能評価情報の一例について説明する。
図3は、本発明の認知機能評価装置の出力部から出力される認知機能評価情報の一例である、挿入時間の時系列データである。また、
図4は、本発明の認知機能評価装置の出力部から出力される認知機能評価情報の他の例である、各挿入穴の位置毎の挿入時間データである。認知機能評価情報は、単なる点数表示だけでなく、図示のように詳細な情報を出力することが可能である。例えば
図3の例のデータでは、第15番目、第19番目、第24番目の操作対象物の移動時間が著しく長いことが分かる。したがって、このようなパニック状態が測定中に何回起きたかを結果に合わせて表示することで、例えば冷静さを判断する指標ともなり得る。また、
図4の例のデータからは、右手前辺りの操作対象物の移動時間が長いことが分かる。したがって、例えば脳卒中後の右半側空間無視といった症状を把握することも可能となり得る。また、経過観測により位置による偏りが無くなってくるか確認することも可能となるため、リハビリテーションにも応用可能となる。
【0048】
以下、本発明の認知機能評価装置の操作対象物及び検出センサの具体例を、
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は、本発明の認知機能評価装置の操作対象物の具体例を説明するための概略断面図である。また、
図6は、本発明の認知機能評価装置の検出センサの具体例を説明するための概略図であり、
図6(a)が平面図であり
図6(b)が一部拡大断面図である。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
図5に示される通り、操作対象物10は、その端部に磁性体11又は導電体12が提供されている。磁性体11は、例えばフェライトシート等であれば良い。また、導電体12は、例えば銅箔等であれば良い。図示のように、操作対象物10には、収容溝13が設けられていても良い。収容溝13は、磁性体11又は導電体12を収容するためのものである。収容溝13の深さは、検出センサ50に磁性体11又は導電体12が直接接触しないように設定されれば良い。これにより、磁性体11又は導電体12により検出センサ50の表面が削られることや、磁性体11又は導電体12が擦り減ることを防止可能である。
【0049】
そして、このような磁性体11や導電体12が設けられた操作対象物10を検出可能な検出センサ50は、電磁誘導センサからなるものである。
図6に示される通り、電磁誘導センサからなる検出センサ50は、発振器51と、検出器52と、複数の駆動コイルループ53と、複数の検出コイルループ54とから構成されている。複数の駆動コイルループ53は発振器51に接続され、複数の検出コイルループ54は検出器52に接続されている。そして、複数の駆動コイルループ53と複数の検出コイルループ54は、それぞれ垂直に交差するように配置されている。具体的には、複数の駆動コイルループ53が縦方向に平行に配置され、複数の検出コイルループ54が横方向に平行に配置されている。この際、交差する位置がそれぞれの挿入穴30に対応する位置に一致するように配置される。そして、この交差する位置が二重コイルとなるように構成されている。具体的には、駆動コイルループ53には、コイル形状部が挿入穴30に対応する位置に設けられている。また、検出コイルループ54には、駆動コイルループ53のコイル形状部よりも一回り大きいコイル形状部が挿入穴30に対応する位置に設けられている。二重コイルの部分は、図示例のように、駆動コイルループ53と検出コイルループ54が同一平面上に設けられるように構成されれば良い。しかしながら、本発明はこれに限定されず、両面基板等を用いて駆動コイルループ53と検出コイルループ54を表裏に配置しても良い。そして、駆動コイルループ53に対して発振器51から高周波電流を流しておき、検出コイルループ54に誘導してくる誘導電流を検出器52で検出する。この際、駆動させる駆動コイルループ53と検出する検出コイルループ54の位置を把握可能なように制御する。即ち、例えば端から順に駆動コイルループ53を駆動しながら順に検出コイルループ54から誘導電流を検出する。どの駆動コイルループ53を駆動したときにどの検出コイルループ54から誘導電流が変化したかにより、その交点の位置に対応する挿入穴30に操作対象物10が挿入されたことが検出できる。このように、二重コイルの部分の各交点の誘導電流がマトリクス状に検出可能に構成されている。
【0050】
このように構成された検出センサ50では、磁性体11が二重コイルの部分に近づくと磁束が強まるため、検出器52により検出される誘導電流が増加する。また、導電体12が二重コイルの部分に近づくと磁束を打ち消すように導電体12に渦電流が流れるため、検出器52により検出される誘導電流が減少する。したがって、例えば収容溝13内に磁性体11が設けられる操作対象物10が用いられた場合、検出器52により検出される誘導電流が増加した交点に対応する挿入穴30に、操作対象物10が挿入されたことが検出可能である。また、例えば収容溝13内に導電体12が設けられる操作対象物10が用いられた場合、検出器52により検出される誘導電流が減少した交点に対応する挿入穴30に、操作対象物10が挿入されたことが検出可能である。このように、操作対象物10に提供される磁性体11又は導電体12を検出センサ50により検出できるため、操作対象物10の挿入状態が検出可能となる。
【0051】
なお、検出センサ50が保管エリア21に設けられる例の場合には、二重コイルが配置される交差する位置は、保管穴20に対応する位置に一致するように配置されれば良い。これにより、操作エリア31と同様に保管エリア21でも操作対象物10の保管穴20への挿入状態を検出可能である。
【0052】
さらに、本発明の認知機能評価装置では、操作対象物10及び検出センサ50が、操作対象物10の挿入方向が検出可能に構成されても良い。即ち、棒状の操作対象物10のどちらの端部が挿入穴30に挿入されたかを検出可能に構成されれば良い。
図7は、本発明の認知機能評価装置の操作対象物の挿入方向を検出可能に構成した具体例を説明するための操作対象物の概略断面図である。図中、
図5と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、操作対象物10は、挿入穴30へ挿入される端部の一方に磁性体11が設けられ、他方に導電体12が設けられている。
図5の例と同様に、操作対象物10には、磁性体11や導電体12が収容される収容溝13が設けられれば良い。そして、検出センサ50は、
図6に示されるように、電磁誘導センサを用いれば良い。即ち、検出器52により検出される誘導電流が増加すれば磁性体11が設けられた端部が挿入されたと判断でき、減少すれば導電体12が設けられた端部が挿入されたと判断することが可能である。このように構成されることで、検出センサ50は、操作対象物10の各端部に設けられた磁性体11と導電体12を判別することが可能となるため、操作対象物10の挿入方向が検出可能である。このように挿入方向も検出できるようにすることで、より複雑な挿入操作を行わせることも可能となる。
【0053】
また、本発明の認知機能評価装置において、操作対象物10の挿入方向が検出可能な構成は上述の図示例には限定されない。例えば検出センサ50が光センサからなる場合、操作対象物10の挿入された端部の色を判別することで挿入方向を検出できるようにしても良い。
図8は、本発明の認知機能評価装置の操作対象物の挿入方向を検出可能に構成した他の具体例を説明するための操作対象物の概略断面図である。図中、
図5等と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、この例では、操作対象物10は、挿入穴30へ挿入される端部の一方と他方とで色分けされている。例えば、操作対象物10の上側端部を白に、下側端部を赤に色分けすれば良い。そして、検出センサ50が光センサからなる場合には、光センサにより操作対象物10の色の違いを検出できるように構成すれば良い。これにより、操作対象物10の挿入方向が検出可能となる。
【0054】
上述の図示例では、操作対象物10が指示表示部40に表示された指示通りに挿入された場合には、報知部60として例えばスピーカを用いて正誤を音で報知したり、指示表示部40を用いて〇×を表示したりすることで報知する例を説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、報知部60が以下のように操作対象物10に反応を与えるようにしても良い。即ち、報知部60は、検出センサ50により検出される挿入状態が指示表示部40による移動挿入操作指示と異なる場合に、操作対象物10に反応を与える反応提供手段を有するように構成しても良い。以下、図面を用いてより詳細に説明する。
図9は、本発明の認知機能評価装置の報知部の他の例を説明するための概略断面図である。図中、
図1等と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、挿入穴30が筒状になっており、その周辺に報知部60の反応提供手段としてコイル61が巻回されている。そして、操作対象物10には、例えば着磁した磁性体11が埋め込まれている。コイル61に電流を流すと、電磁誘導により挿入穴30から操作対象物10を放出する方向に力を加えることが可能である。したがって、検出センサ50により検出される挿入状態が指示表示部40による移動挿入操作指示と異なる場合に、報知部60は、反応提供手段であるコイル61に電流を流すように制御すれば良い。なお、図示例のように操作対象物10の端部近傍まで磁性体11が埋め込まれていれば、電磁誘導センサからなる検出センサ50により挿入状態を検出可能である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、検出センサ50は、
図5や
図6に記載のような端部に提供される磁性体や導電体を検出するものであっても良い。
【0055】
また、反応提供手段は、操作対象物10に振動を与えるように構成しても良い。
図10を用いて具体的に説明する。
図10は、本発明の認知機能評価装置の報知部のさらに他の例を説明するための概略断面図である。図中、
図1等と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、図示例では、検出センサ50として光センサを用いた例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、電磁誘導センサ等であっても良い。図示の通り、例えば挿入穴30が筒状になっているが、筐体1とは独立している。そして、筒状の挿入穴30には、反応提供手段としてバイブレータ用のモータ62が設置されている。モータ62を駆動すると、挿入穴30が振動し、操作対象物10に振動を与えることが可能である。したがって、検出センサ50により検出される挿入状態が指示表示部40による移動挿入操作指示と異なる場合に、報知部60は、反応提供手段であるモータ62に電流を流すように制御すれば良い。
【0056】
なお、報知部60は、上述のディスプレイやスピーカ、反応提供手段をそれぞれ適宜組み合わせて用いても良い。
【0057】
このように構成された本発明の認知機能評価装置を用いて認知機能を評価する際に、装置に各種設定を行うことが可能なように構成しても良い。認知機能の評価は、例えば年齢や性別を加味したほうがより正確な評価を行うことが可能である。そこで、これらの情報を入力できるような設定手段を設けても良い。これは、例えば専用の選択ボタンや登録ボタン等を設けることで実現可能である。さらに、パーソナルコンピュータやスマートフォンを有線通信や無線通信を用いて接続することで、外部から入力することも可能である。
【0058】
さらに、認知機能評価装置の挿入穴を用いて各種設定を行えるようにしても良い。
図11は、本発明の認知機能評価装置の挿入穴を用いて各種設定が可能なように構成した場合の指示表示部の表示例である。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、例えば指示表示部40を用いて、設定手段への設定操作指示を表示する。具体的には、例えば生年月日や性別の選択肢を表示する。そして、指示表示部40近傍の挿入穴30に操作対象物10を挿入することで、選択肢を順に選択する。検出センサ50は、操作対象物10の挿入穴30への挿入状態を検出できるため、これに基づいて、設定手段が、指示表示部40に表示された選択肢を挿入穴30で選択したと判断し、この内容を認知機能評価装置に設定すれば良い。設定手段としては、マイコンや中央処理部であれば良い。このように構成することで、新たにスイッチ等を設ける必要も無くなる。
【0059】
本発明の認知機能評価装置は、特定の操作者だけが使用するものではなく、任意の操作者が使用可能なものとして構成可能である。この場合、操作者が操作前に上述のように各種設定を毎回認知機能評価装置に入力しても良いが、操作者を識別することで、初期設定のみ行えば良いようにも構成可能である。即ち、操作者を識別するための生体認証センサを設けても良い。生体認証センサは、例えば指紋センサや静脈センサ、網膜センサ、声紋センサ等、公知のセンサ又は今後開発されるべきあらゆる生体認証センサが適用可能である。
【0060】
また、本発明の認知機能評価装置は、操作者の声を検出可能なマイクを具備するものであっても良い。マイクにより上述のような生体認証を行っても良いし、遠隔地のオペレータ等と会話するように構成しても良い。例えば報知部60にスピーカを用いる場合には、マイクとスピーカによる会話が可能である。
【0061】
さらに、本発明の認知機能評価装置は、操作者の表情を検出可能なカメラを具備するものであっても良い。カメラにより上述のような生体認証を行っても良いし、操作者の操作中の表情を確認するのに利用も可能である。操作者の表情は脳の血流とも関係するため、認知機能とも関連するので、認知機能評価のパラメータの1つとして加えることも有用である。さらに、表情から操作者に対して適宜アドバイスを行うこと等も可能となる。
【0062】
なお、本発明の認知機能評価装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
1 筐体
10 操作対象物
11 磁性体
12 導電体
13 収容溝
20 保管穴
21 保管エリア
30 挿入穴
31 操作エリア
40 指示表示部
50 検出センサ
51 発振器
52 検出器
53 駆動コイルループ
54 検出コイルループ
60 報知部
61 コイル
62 モータ
70 タイム計測部
80 出力部