(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】撮像レンズ及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20220822BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
G02B13/04 D
G02B13/18
(21)【出願番号】P 2018107099
(22)【出願日】2018-06-04
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【氏名又は名称】吉村 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(74)【代理人】
【識別番号】100169247
【氏名又は名称】小野 佳世
(72)【発明者】
【氏名】萩原 宏行
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-017724(JP,A)
【文献】特開昭59-142512(JP,A)
【文献】特開平09-043512(JP,A)
【文献】特開2010-079252(JP,A)
【文献】特開2011-053663(JP,A)
【文献】特開2011-013469(JP,A)
【文献】特開2010-266577(JP,A)
【文献】特開2018-025591(JP,A)
【文献】特開2017-173807(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105044885(CN,A)
【文献】特開昭57-064207(JP,A)
【文献】特開昭61-162021(JP,A)
【文献】特開昭60-263916(JP,A)
【文献】特開2003-057542(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0177491(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0207998(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に配置される、物体側が凸面であり負の屈折力を有する第1レンズと、物体側が凹面である第2レンズと、第3レンズと、第4レンズと、第5レンズと、第6レンズとから実質的に構成される撮像レンズであって、
前記第3レンズは、両面が凸面であり、且つ、正の屈折力を有し、
前記第6レンズは、像側が凸面の正レンズであり、
以下の条件を満足することを特徴とする撮像レンズ。
1.30 < R11/f < 10.0 ・・・(1)
-1.4 < f1/f < -0.8 ・・・(3)
1.0 < f3/f < 5.0 ・・・(6)
但し、
R11:前記第1レンズの物体側面の近軸曲率半径
f :当該撮像レンズの焦点距離
f1:前記第1レンズの焦点距離
f3:前記第3レンズの焦点距離
【請求項2】
物体側から順に配置される、物体側が凸面であり負の屈折力を有する第1レンズと、物
体側が凹面である第2レンズと、第3レンズと、第4レンズと、第5レンズと、第6レン
ズとから実質的に構成される撮像レンズであって、
前記第6レンズは、像側が凸面の正レンズであり、
以下の条件を満足することを特徴とする撮像レンズ。
1.30 < R11/f < 10.0 ・・・(1)
-1.4 < f1/f < -0.8 ・・・(3)
3.0 < f2/f < 10.0 ・・・(5-1)
但し、
R11:前記第1レンズの物体側面の近軸曲率半径
f :当該撮像レンズの焦点距離
f1:前記第1レンズの焦点距離
f2:前記第2レンズの焦点距離
【請求項18】
請求項1から
請求項17のいずれか一項に記載の撮像レンズと、当該撮像レンズが形成する光学像を受光して電気的画像信号に変換する撮像素子とを備えることを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、撮像レンズ及び撮像装置に関し、特に、センシングカメラに好適な撮像レンズ及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の固体撮像素子を用いた撮像装置が普及している。具体的には、一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラ、デジタルスチルカメラ等のユーザによって携帯可能な撮像装置の他、車載用撮像装置、監視用撮像装置、防犯用撮像装置等の特定の目的の下で使用される撮像装置(以下、「車載用撮像装置等」と称する)の普及も進んでいる。いずれの撮像装置においても、その高性能化、小型化の進展は著しく、これらの撮像装置に用いられる撮像レンズ(撮像光学系)についても一層の高性能化、小型化等が求められている。特に、近年のイメージセンサの高画素化の進展に伴い、撮像レンズには小型軽量を維持しつつ、広い範囲を撮像可能であり、且つ、高い解像力が求められるようになってきている。
【0003】
また、近年では車載用撮像装置をセンシングカメラとして用い、車載用撮像装置で取得した画像を解析することにより種々の運転支援が行われている。今後の自動運転システムへの実現に向けて、センシングカメラとしての車載用撮像装置の重要性が増している。
【0004】
車載用撮像装置等に適用可能な撮像レンズとして、最も物体側に負レンズを配置した比較的画角の広い撮像レンズが種々提案されている。
例えば、特許文献1には、物体側から順に負レンズ、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズ、両凸形状の正レンズ、負レンズ、正レンズ及び非球面を有するレンズの6枚のレンズから構成された撮像レンズが提案されている。当該撮像レンズでは、第5レンズ及び第6レンズをプラスチックレンズとすることで軽量化及び低コスト化を図っている。
【0005】
また、特許文献2には、物体側から順に、負レンズ、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズ、正レンズ、正レンズ及び負レンズの接合レンズ、正レンズの6枚のレンズから構成された撮像レンズが提案されている。当該撮像レンズは、最も物体側に配置された第1レンズの物体側の面の曲率と、当該第1レンズの光軸上の厚みとを規定することにより、周辺よりも光軸付近の角度分解能を高め、光軸付近の物体を周辺の物体よりも大きく表示させることを可能としている。但し、「撮像画角1度当たりのイメージセンサ(撮像素子)上の画素数」を「角度分解能」と定義するものとする。
【0006】
さらに、特許文献3に開示の撮像レンズは、物体側から順に、物体側が平面の負レンズ、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズ、正レンズ、正レンズ及び負レンズの接合レンズ、正レンズの6枚のレンズから構成された撮像レンズが提案されている。当該撮像レンズは内視鏡用対物レンズであり、最も物体側に配置される負レンズの物体側を平面とすることで、当該撮像レンズの洗浄・消毒を可能とし、洗浄・消毒時に最物体側面に水滴が残ることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-37119号公報
【文献】特開2017-173807号公報
【文献】特開2018-40849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、車載用撮像装置等は車両等屋内外の所定の場所に設置され、長期間継続して使用される。屋外に駐車した車内の温度は氷点下から100度以上まで変化することがある。一方、車載用撮像装置等では、一般に、低コスト化の観点から、ピント調整のためのアクチュエータを備えていない固定焦点の撮像レンズが用いられることが多い。そのため、車載用撮像装置等の撮像レンズには、雰囲気温度が変化してもピント変動が小さく、且つ、常温下だけでなく、高温環境下及び低温環境下においても長期間に亘って良好な結像性能を維持することが求められる。
【0009】
特許文献1に開示の撮像レンズは、第5レンズ及び第6レンズがプラスチックレンズである。プラスチックレンズはガラスレンズと比較すると線膨張係数が大きく、雰囲気温度の変化によって屈折率が変化する。また、プラスチックレンズは、高温環境下で変質又は変形する場合がある。そのため、特許文献1に記載の撮像レンズを車載用撮像装置等に適用した場合、雰囲気温度の変化によってピント変動が生じ、高温環境下及び低温環境下では良好な結像性能を得ることが困難になる。
【0010】
また、車載用撮像装置等は夜間等の低照度下においても、被写体を鮮明に撮像可能であることが求められている。特許文献1に開示の撮像レンズのFnoは2.0と比較的明るい口径比を達成しているものの、低照度下において鮮明な被写体像を得るには、明るさが十分ではない。
【0011】
特許文献2に開示の撮像レンズは、光軸付近の角度分解能を高めるために第1レンズの物体側面の曲率を小さくしているため、諸収差の補正が困難であり良好な結像性能を得ることができない。また、光軸付近の角度分解能を高めるために第1レンズの光軸上の厚みを大きくしているため、当該撮像レンズの小型化を図ることが困難である。
【0012】
特許文献3に開示の撮像レンズは、Fnoが3.0程度であり、低照度下において鮮明な被写体像を得るには明るさが不足している。また、当該撮像レンズの最も物体側に配置される第1レンズの物体側面が平面であるため、像面において反射した光が第1レンズの物体側面において再反射し、それが結像面に入射するとゴーストとなる。センシングカメラにおいてゴーストが発生すると物体等の誤認識につながり、当該撮像レンズをセンシングカメラに適用することはできない。
【0013】
そこで、本件発明の課題は、全体を小型に構成しつつ、光軸付近の物体を高解像度で結像することができる画角の広い撮像レンズ及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本件発明に係る撮像レンズは、物体側から順に、物体側が凸面であり負の屈折力を有する第1レンズと、物体側が凹面である第2レンズとを備え、実質的に6枚のレンズから構成される撮像レンズであって、以下の条件を満足することを特徴とする。
1.30 < R11/f < 10.0 ・・・(1)
但し、
R11:前記第1レンズの物体側面の近軸曲率半径
f :当該撮像レンズの焦点距離
【0015】
また、上記課題を解決するため、本件発明に係る撮像装置は、上記記載の撮像レンズと、当該撮像レンズが形成する光学像を受光して電気的画像信号に変換する撮像素子とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、全体を小型に構成しつつ、光軸付近の物体を高解像度で結像することができる画角の広い撮像レンズ及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本件発明の実施例1の撮像レンズのレンズ構成例を示す断面図である。
【
図2】実施例1の撮像レンズの無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図3】本件発明の実施例2の撮像レンズのレンズ構成例を示す断面図である。
【
図4】実施例2の撮像レンズの無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図5】本件発明の実施例3の撮像レンズのレンズ構成例を示す断面図である。
【
図6】実施例3の撮像レンズの無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図7】本件発明の実施例4の撮像レンズのレンズ構成例を示す断面図である。
【
図8】実施例4の撮像レンズの無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図9】本件発明の実施例5の撮像レンズのレンズ構成例を示す断面図である。
【
図10】実施例5の撮像レンズの無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図11】本件発明の実施例6の撮像レンズのレンズ構成例を示す断面図である。
【
図12】実施例6の撮像レンズの無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本件発明に係る撮像レンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。
【0019】
1.撮像レンズ
1-1.撮像レンズの光学構成
まず、本件発明に係る撮像レンズの実施の形態を説明する。本実施の形態の撮像レンズは、物体側から順に配置される、物体側が凸面であり負の屈折力を有する第1レンズと、物体側が凹面である第2レンズと、第3レンズと、第4レンズと、第5レンズと、第6レンズとから実質的に構成される。ここで、「実質的に構成される」とは、当該撮像レンズを実質的に構成する光学要素は上記第1レンズから第6レンズの6枚のレンズであるが、それ以外に実質的にパワーを持たないレンズや、絞りやカバーガラス等のレンズ以外の光学要素等を備えることは許容されることを意味する。
【0020】
当該撮像レンズでは、最も物体側に配置される第1レンズは、物体側が凸面であり、且つ、負の屈折力を有する。そのため、第1レンズの像側は凹面となる。また、第2レンズの物体側は凹面である。従って、第1レンズと第2レンズとの間に形成される空気レンズは両凸形状となる。この両凸形状の空気レンズにより諸収差を良好に補正することができるため、第1レンズに配置する負の屈折力を強めることができ、第1レンズの外径を小さくすることができる。その結果、良好な結像性能を実現しつつ、全体が小型の撮像レンズを実現することができる。
【0021】
また、第1レンズと第2レンズとの間に形成される空気レンズを両凸形状とすることにより、球面収差及び像面湾曲の補正が容易になり、広角化を図ったときも結像性能の良好な撮像レンズを実現することが容易になる。
【0022】
ところで、車載用撮像装置を車両に設置する場合、車載用撮像装置の存在が車両の外側から目立ちにくいことが求められる。特に、前方センシングを行うセンシングカメラの場合、車両のフロントガラスとバックミラーとの間の狭小スペース内に外部から視認し得る状態で車載用撮像装置を設置する必要がある。当該撮像レンズでは、第1レンズの外径を小さくすることができるため、撮像装置全体を小型化することが容易であり、車載用撮像装置の存在を目立ちにくくすることができるため、これらの撮像光学系に好適である。監視用撮像装置、防犯用撮像装置等の建造物や車両等の移動体に据付固定される他の撮像装置についても同様のことがいえる。
【0023】
以下、当該撮像レンズの光学構成に関してより詳細に説明する。
【0024】
(1)第1レンズ
i)物体側面
第1レンズは、負の屈折力を有し、その物体側は凸面である。第1レンズの物体側を凸面とすることで、当該撮像レンズに入射した光が像面において反射し、それが第1レンズの物体側面に入射したときに、その再反射光が像面に入射するのを防ぐことができる。すなわち、第1レンズの物体側面を凸面とすることで、ゴーストの発生を抑制することができる。また、第1レンズの物体側面が凹面である場合、当該撮像レンズの広角化を図ると、当該撮像レンズに対して入射する光が第1レンズの物体側面において全反射してしまい、所望の画角を得ることができず好ましくない。
【0025】
ii)像側面
第1レンズは負の屈折力を有し、その物体側が凸面である。そのため、既述のとおり、第1レンズの像側は凹面となる。また、第2レンズの物体側は凹面である。これらのことから、第1レンズにのみ強い負の屈折力を配置せずとも、所定の画角を得るために第1レンズの像側面と、第2レンズの物体側面に負の屈折力を分散配置することができ、諸収差の発生を抑制し、結像性能の高い撮像レンズを得ることができる。
【0026】
iii)非球面
第1レンズは少なくとも1面が非球面であることが好ましい。少なくとも物体側面又は像側面を非球面とすることで、少ないレンズ枚数で良好な結像性能を確保することが容易になる。また、光軸付近、周辺部共に良好な結像性能を確保することが容易になり、像面湾曲の補正が容易になる。
【0027】
第1レンズの少なくとも1面が非球面であれば上記の効果を得ることができるが、より良好な結像性能を実現するという観点から、第1レンズの両面は非球面であることが好ましい。また、第1レンズの両面を非球面とすることにより、第1レンズの面間偏芯量を測定することが容易になる。なお、面間偏芯量とは、第1レンズの物体側面の面頂位置と、第1レンズの像側面の面頂位置との偏芯方向差分をいう。すなわち、光軸に平行な軸をz軸とし、z軸に垂直な面をxy平面としたとき、第1レンズの面間偏芯量は、物体側面と像側面の各面頂位置のx軸方向の差分と、y軸方向の差分とで表される面頂位置のずれ量をいう。面間偏芯量の測定が容易になることで、第1レンズの品質管理が容易になり、面間偏芯に起因する片ボケや偏芯コマ収差などの発生を抑制することができる。
【0028】
(2)第2レンズ
第2レンズは物体側が凹面であればよく、その屈折力は正であってもよく、負であってもよい。例えば、第2レンズの屈折力が正であれば、第1レンズにおいて発散した光束を上記空気レンズだけでなく、第2レンズにおいて収斂することができる。従って、第2レンズの屈折力を正とすれば、広角化を図りつつ、第1レンズの外径を第3レンズ以降のレンズの外径より小さくすることができる。そして、第2レンズに適切な大きさの正の屈折力を配置することで、当該撮像レンズの一層の小型化と高性能化を図ることができる。従って、当該撮像レンズを車載用撮像装置の撮像光学系に適用すれば、車載用撮像装置の一層の小型化が容易になり、当該車載用撮像装置の存在を車両の外側(物体側)からより目立ちにくくすることができる。また、当該車載用撮像装置の一層の小型化を図ることで、より狭小なスペースにも設置することができるため、車載用撮像装置の設置の自由度が高くなる。
【0029】
(3)第3レンズ
当該撮像レンズにおいて、第3レンズに配置する屈折力の正負の別や、そのレンズ面形状は特に限定されるものではない。例えば、第3レンズに正の屈折力を配置すれば、第2レンズから入射する光束を収斂することができ、当該撮像レンズ全体の小型化を図ることができて好ましい。一方、第3レンズに負の屈折力を配置した場合、色収差を良好に補正することはできる。しかしながら、この場合、当該撮像レンズの小型化を図るには、第2レンズに強い正の屈折力を配置する必要がある。この場合、第2レンズの偏芯敏感度が高くなるため、偏芯時の性能劣化が大きくなるため好ましくない。第2レンズが正の屈折力を有する場合、第3レンズに正の屈折力を配置することにより、第2レンズと第3レンズとに正の屈折力を分散配置することができる。そのため、第2レンズの偏芯敏感度が高くなり過ぎることを抑制することができ、歩留まりを向上する上でも好ましい。
【0030】
第3レンズに正の屈折力を配置する場合、第3レンズは両面が凸面であることが好ましい。第3レンズの両面を凸面とすることにより、第3レンズに配置する正の屈折力を物体側と像側の両面に分散配置することができる。そのため、第3レンズに比較的強い正の屈折力を配置したときも、偏芯による諸収差の劣化を抑制することができる。
【0031】
さらに、第3レンズは少なくとも1面が非球面であることが好ましい。少なくとも物体側面又は像側面を非球面とすることで、球面収差を良好に補正することができ、少ないレンズ枚数で良好な結像性能を確保することができ、明るい撮像レンズを得ることができる。第3レンズの両面を非球面とすれば、より良好な結像性能を実現することが可能になる他、第1レンズに記載した理由と同様の理由から、品質管理面においても好ましい。
【0032】
(4)第4レンズ
当該撮像レンズにおいて、第4レンズに配置する屈折力の正負の別や、そのレンズ面形状は特に限定されるものではない。例えば、第4レンズに正の屈折力を配置すれば、当該撮像レンズの像側において光束をさらに収斂することができ、当該撮像レンズ全体の小型化を図ることができて好ましい。
【0033】
(5)第5レンズ
当該撮像レンズにおいて、第5レンズに配置する屈折力の正負の別や、そのレンズ面形状は特に限定されるものではない。但し、色収差の補正を良好に行う上で、第5レンズの屈折力は、第4レンズの屈折力とは逆の符号であることが好ましい。例えば、第4レンズが正の屈折力を有する場合、第5レンズに負の屈折力を配置すれば、色収差の補正を良好に行うことができる。なお、色収差の補正をより良好に行う上で、第4レンズには正の屈折力を配置し、第5レンズには負の屈折力を配置することがより好ましい。
【0034】
また、第4レンズと第5レンズは接合されていることがより好ましい。第4レンズと第5レンズとが接合されて一体化されていると、当該撮像レンズを製造するときのレンズの光軸合わせ等の配列調整が容易になり、偏芯敏感度を低くすることができる。さらに、第4レンズと第5レンズとが接合されているとき、当該接合レンズの合成焦点距離は負であることが好ましい。当該接合レンズに発散効果を持たせることで、当該撮像レンズの小型化を図りつつ、所望の像高まで光線を跳ね上げ、有効像円を大きくすることができる。すなわち、当該撮像レンズを小型に構成しつつ、画素数の多いより大型の撮像素子を用いることができる。
【0035】
(6)第6レンズ
当該撮像レンズにおいて、第6レンズに配置する屈折力の正負の別や、そのレンズ面形状は特に限定されるものではない。例えば、第6レンズの像側を曲率を有する面とすることで、当該撮像レンズに入射した光が像面において反射し、それが第6レンズの像側面に入射したときに、その再反射光が像面に入射するのを防ぐことができる。すなわち、再反射光を像面の外側に入射させるようにすることで、ゴーストの発生を抑制することができる。ゴーストの発生をより効果的に抑制する上で、第6レンズの像側は凸面であることがより好ましく、第6レンズの両面がそれぞれ凸面であることがさらに好ましい。
【0036】
(7)レンズ硝材
当該撮像レンズを構成する第1レンズから第6レンズはいずれもガラスレンズであることが好ましい。ガラスレンズは、プラスチックレンズと比較して、熱的安定性が高く、雰囲気温度の変化に伴う膨張・収縮の程度が小さい。そのため、当該撮像レンズを構成する全てのレンズをガラスレンズとすることで、雰囲気温度が変化してもピント(焦点位置)変動や画角変動を良好に抑制することができる。
【0037】
(8) 絞り
当該撮像レンズにおいて、絞り(開口絞り)の配置場所は、特に限定されるものではない。しかしながら、適切な位置に絞りを配置することで、周辺像高の不要光をカットしつつ、Fnoの小さい明るい撮像レンズを得ることができる。ここで、絞りは瞳位置を規定する。当該撮像レンズにおいて、入射瞳位置が物体側により近い程、前玉径の小型化に寄与する。一方、射出瞳位置が像面に近い程当該撮像レンズの小型化に寄与する。しかしながら、射出瞳位置が撮像レンズの像面に近くなる程、像面に対する結像光の入射角度が大きくなり、撮像素子に配置されるフォトダイオードに適切に入射することが困難となる。その結果、適正露出の確保が困難となるため、感度ムラ(シェーディングムラ)や周辺の色付きが発生してしまう。従って、明るく、感度ムラや周辺の色付き等を抑制するという観点から、絞りは第4レンズよりも物体側に配置されることが好ましく、第2レンズと第4レンズとの間に配置されることがより好ましく、第2レンズと第3レンズとの間に配置されることが最も好ましい。
【0038】
1-2.条件式
当該撮像レンズでは、上述した構成を採用すると共に、次に説明する条件式を少なくとも1つ以上満足することが好ましい。
【0039】
1-2-1.条件式(1)
当該撮像レンズは、以下の条件を満足することが好ましい。
1.30 < R11/f < 10.0 ・・・(1)
但し、
R11:第1レンズの物体側面の近軸曲率半径
f :当該撮像レンズの焦点距離
なお、近軸曲率半径の符号は、レンズ面の曲率中心がそのレンズ面に対して像側にある場合を正(+)とし、物体側にある場合を負(-)とする。
【0040】
上記条件式(1)は、当該撮像レンズ全系の焦点距離fに対する第1レンズの物体側面の近軸曲率半径R11の比を規定した式である。当該撮像レンズでは、第1レンズの物体側が凸面である。このとき、条件式(1)を満足させることにより、第1レンズの物体側面の曲率が適正な範囲内となり、当該撮像レンズに入射した光が像面において反射し、それが第1レンズの物体側面に入射したときに、その再反射光が像面に入射するのをより有効に防ぐことができ、ゴーストの発生を良好に抑制することができる。また、条件式(1)を満足させることにより、周辺よりも光軸付近の角度分解能を高め、光軸付近の物体を周辺の物体よりも大きく表示させることできる。なお、上述したとおり、「撮像画角1度当たりのイメージセンサ(撮像素子)上の画素数」を「角度分解能」と定義するものとする。また、光軸付近とは、光軸中心を含む像高の4割程度の範囲内をいうものとする。すなわち、条件式(1)を満足させることにより、光軸付近の物体については高解像度で結像することができる画角の広い撮像レンズを実現することができる。従って、当該撮像レンズをセンシングカメラの撮像光学系に適用し、車両の進行方向前方をセンシングすれば、車両の周囲の物体(障害物、信号機、道路交通標識等)を広く認識しつつ、先行車などの遠方の物体を精度よく検出することができる。
【0041】
これに対して、条件式(1)の数値が上限値以上になると、第1レンズの物体側面の曲率が緩く、ゴーストの発生を有効に抑制することが困難になる。また、この場合、遠方の物体を高解像で取得するために要求される角度分解能を維持しようとすると、条件式(1)を満足する場合と比較すると画角が狭くなる。従って、当該撮像レンズにより遠方の物体を高解像度で結像することを優先させた場合、広画角化を図ることが困難になるため好ましくない。
【0042】
一方、条件式(1)の数値が下限値以下になると、第1レンズの物体側面の曲率がきつく、光軸付近の角度分解能を周辺部と比較して高くすることは容易になる。しかしながら、第1レンズの物体側面の近軸曲率半径が上限値以上になると歪曲が増大するように、コマ収差や像面湾曲などの諸収差も増大する。そのため、良好な光学性能を確保することが困難になるため好ましくない。
【0043】
上記効果を得る上で、条件式(1)の上限値は7.5であることが好ましく5.0であることがより好ましい。また、条件式(2)の下限値は1.32であることが好ましく、1.35であることがより好ましい。なお、この条件式(1)の好ましい数値条件に関して、上記条件式(1)の不等号(<)を等号付き不等号(≦)に置き換えてもよい。以下に説明する他の条件式においても同様である。但し、他の条件式において下限値及び/又は上限値が等号付き不等号(≦)で表されている場合は、好ましい数値条件に関して等号付き不等号(≦)を不等号(<)に置き換えてもよい。
【0044】
1-2-2.条件式(2)
当該撮像レンズは以下の条件を満足することが好ましい。
0.05 < D1/f < 0.50 ・・・(2)
但し、
D1:第1レンズの光軸上の厚み
【0045】
条件式(2)は、第1レンズの光軸上の厚み(第1レンズの物体側面と像側面との光軸上の間隔)と当該撮像レンズの焦点距離との比を規定した式である。上記構成を有する撮像レンズにおいて、条件式(2)を満足させることで、当該撮像レンズを小型に維持しつつ、諸収差の発生を抑制することができ、結像性能の良好な撮像レンズを得ることができる。
【0046】
これに対して、条件式(2)の数値が下限値以下になると、十分な耐久性を確保できない場合があるため好ましくない。すなわち、条件式(2)の数値が下限値以下になると第1レンズの厚みが薄くなりすぎ、大きな衝撃が加わったときに、その衝撃の大きさによってはレンズが破損するおそれがあるため好ましくない。
【0047】
一方、条件式(2)の数値が上限値以上になると、第1レンズの厚みが確保されるため、第1レンズの屈折力を無理なく強めることができ、光軸付近の角度分解能を周辺部と比較して高くすることが容易になる。しかしながら、第1レンズの厚みが厚くなりすぎると、当該撮像レンズの小型化を図ることが困難になるため好ましくない。
【0048】
上記効果を得る上で、条件式(2)の上限値は0.45であることが好ましく、0.40であることがより好ましく、0.35であることがさらに好ましい。また、条件式(2)の下限値は0.08であることが好ましく、0.10であることがより好ましい。
【0049】
1-2-3.条件式(3)
当該撮像レンズは、以下の条件を満足することが好ましい。
-1.5 < f1/f < -0.8 ・・・(3)
但し、
f1:第1レンズの焦点距離
【0050】
条件式(3)は、第1レンズの焦点距離と当該撮像レンズの焦点距離との比を規定した式である。条件式(3)を満足する場合、第1レンズの屈折力が適正な範囲内となり、第1レンズの外径を小型に維持すると共に、良好な結像性能が得られ、広範囲に取得した近距離物体像についても精度のよいセンシングが可能になる。
【0051】
これに対して、条件式(3)の数値が上限値以上になると、第1レンズの屈折力が弱くなり、大口径化を図ると共に良好な結像性能を維持するには、第1レンズの外径を大きくする必要があり、当該撮像レンズの小型化を図ることが困難になるため好ましくない。一方、条件式(3)の数値が下限値以下になると、第1レンズの屈折力が強くなり、第1レンズの外径の小型化を図る上では好ましい。しかしながら、この場合、像面湾曲などの諸収差の補正が困難になり、当該撮像レンズの光学性能が劣化する。そのため、精度のよいセンシングを行うことが困難になるため、好ましくない。
【0052】
上記効果を得る上で、条件式(3)の上限値は、-1.0であることが好ましく、-1.1であることがより好ましい。また、条件式(3)の下限値は-1.4であることが好ましく、-1.3であることがより好ましい。
【0053】
1-2-4.条件式(4)
当該撮像レンズは、以下の条件を満足することが好ましい。
0.2 < d1-2 / f < 1.5 ・・・(4)
但し、
d1-2:第1レンズと第2レンズとの光軸上の空気間隔
【0054】
条件式(4)は第1レンズと第2レンズとの光軸上の空気間隔と当該撮像レンズの焦点距離との比を規定する式である。この「d1-2」の値は、第1レンズと第2レンズとの間に形成される空気レンズの厚み(面間隔)に相当する。当該撮像レンズでは、最も物体側に負の屈折力を有する第1レンズを配置している。条件式(4)を満足させることにより、第1レンズと第2レンズとの間に形成される空気レンズにより諸収差を良好に補正することができ、結像性能の高い撮像レンズを得ることができる。また、条件式(4)を満足させることにより、第1レンズと第2レンズとの光軸上の空気間隔が適切な範囲内となり、第1レンズにおいて発散した光束の径が大きくなり過ぎる前に第2レンズに入射させることができる。そのため、当該撮像レンズの小型化を図ることがより容易になる。
【0055】
これに対して、条件式(4)の数値が上限値以上になると、光軸上の空気間隔が当該撮像レンズ全系の焦点距離に対して広くなり、第2レンズの外径を大きくする必要があり、光学全長も長くなる。そのため当該撮像レンズの小型化を図る上で好ましくない。一方、条件式(4)の数値が下限値以下になると、第1レンズと第2レンズとの光軸上の空気間隔が当該撮像レンズ全系の焦点距離に対して狭くなり、第1レンズと第2レンズとの間に形成される空気レンズにより諸収差を補正することが困難になり、良好な結像性能が得られなくなる。
【0056】
上記効果を得る上で、条件式(4)の上限値は、1.2であることが好ましく、1.0であることがより好ましく、0.9であることがさらに好ましい。また、条件式(4)の下限値は、0.25であることが好ましく、0.3であることがより好ましい。
【0057】
1-2-5.条件式(5)
当該撮像レンズは、以下の条件を満足することが好ましい。
2.0 < f2/f < 10.0 ・・・(5)
但し、
f2:第2レンズの焦点距離
【0058】
条件式(5)は、第2レンズの焦点距離と当該撮像レンズの焦点距離との比を規定した式である。条件式(5)を満足する場合、第2レンズは正の屈折力を有する。そのため、上述したように、第1レンズにおいて発散した光束を第2レンズにおいて収斂することができ、広角化を図りつつ、第1レンズの外径を第3レンズ以降のレンズの外径より小さくすることが容易になる。また、条件式(5)を満足させることで、第2レンズに配置する正の屈折力が適正な範囲内となり、コマ収差や像面湾曲の発生を抑制しつつ、当該撮像レンズの小型化を図ることが容易になる。
【0059】
これに対して、条件式(5)の数値が上限値以上になると、第2レンズに配置される正の屈折力が弱く、第1レンズから入射した光束を第2レンズで十分に収斂することが困難になる。そのため、第2レンズよりも像側に配置されるレンズの外径が大きくなる。また、第2レンズと第3レンズとの光軸上の空気間隔も大きくなり、光学全長も長くなる。これらのことから、当該撮像レンズの小型化を図ることが困難になる。
【0060】
一方、条件式(5)の数値が下限値以下になると、第2レンズの屈折力が強く、第1レンズから入射した光束を第2レンズで収斂する効果が強くなる。そのため、当該撮像レンズの小型化を図る上では好ましい。しかしながら、第2レンズの屈折力が強くなりすぎると、当該第2レンズの物体側面及び像側面の形状を調整してもコマ収差や像面湾曲の発生を抑制することが困難になるため好ましくない。
【0061】
上記効果を得る上で、条件式(5)の上限値は、8.0であることが好ましく、7.0であることがより好ましく、6.0であることがさらに好ましく、5.5であることが一層好ましい。また、条件式(5)の下限値は、3.0であることが好ましく、3.5であることがより好ましく、4.0であることが一層好ましい。
【0062】
1-2-6.条件式(6)
当該撮像レンズは、以下の条件を満足することが好ましい。
1.0 < f3/f < 5.0 ・・・(6)
但し、
f3:第3レンズの焦点距離
【0063】
条件式(6)は、第3レンズの焦点距離と当該撮像レンズの焦点距離との比を規定した式である。条件式(6)を満足させることにより、より良好な結像性能が得られると共に、第3レンズ以降に配置される各レンズの外径を小さくすることができ、当該撮像レンズの一層の小型化を図ることができる。
【0064】
このとき、第3レンズの両面が凸面であることがより好ましい。第3レンズの両面が凸面であれば、上記条件式(6)を満足するような屈折力を第3レンズの両面に分散配置することができるため、球面収差の発生を抑制し、さらに良好な結像性能を得ることができる。
【0065】
これに対して、条件式(6)の数値が上限値以上になると、第3レンズに配置される正の屈折力が弱くなり、光学全長も長くなる。そのため、当該撮像レンズの小型化を図ることが困難になる。一方、条件式(6)の数値が下限値以下になると、第3レンズに配置される正の屈折力が強くなり、当該第3レンズの物体側面及び像側面の形状を調整しても球面収差の発生を抑制することが困難になるため好ましくない。
【0066】
上記効果を得る上で、条件式(6)の上限値は、4.0であることが好ましく、3.5であることがより好ましく、3.0であることがさらに好ましく、2.8であることが一層好ましい。また、条件式(6)の下限値は、1.2であることが好ましく、1.4であることがより好ましい。
【0067】
1-2-7.条件式(7)
当該撮像レンズは、以下の条件を満足することが好ましい。
1.0 < f6/f < 5.0 ・・・(7)
但し、
f6:第6レンズの焦点距離
【0068】
条件式(7)は、第6レンズの焦点距離と当該撮像レンズの焦点距離との比を規定した式である。条件式(7)を満足させることにより、より良好な結像性能が得られると共に、第6レンズの外径を小さくすることができ、当該撮像レンズの一層の小型化を図ることができる。
【0069】
これに対して、条件式(7)の数値が上限値以上になると、第6レンズに配置される正の屈折力が弱くなり、第6レンズの外径が大きくなり、当該撮像レンズの小型化を図ることが困難になる。一方、条件式(7)の数値が下限値以下になると、第6レンズに配置される正の屈折力が強くなる。この場合、第1レンズで発生した像面湾曲を第6レンズにより補正することが困難になり、良好な結像性能を得ることが困難になるため好ましくない。
【0070】
上記効果を得る上で、条件式(7)の上限値は、4.5であることが好ましく、4.0であることがより好ましく、3.5であることがさらに好ましい。また、条件式(7)の下限値は、1.5であることが好ましく、2.0であることがより好ましい。
【0071】
1-2-8.条件式(8)
当該撮像レンズは、以下の条件を満足することが好ましい。
50 < ν3,6 ・・・(8)
但し、
ν3,6:第3レンズ及び第6レンズのd線(587.56mm)に対する平均アッベ数
なお、ν3を第3レンズのアッベ数、ν6を第6レンズのアッベ数としたとき、「ν3,6=(ν3+ν6)/2」で表される。
【0072】
条件式(8)は、第3レンズ及び第6レンズのd線(587.56mm)に対する平均アッベ数を規定した式である。条件式(8)を満足する場合、第3レンズ及び第6レンズの分散が小さくなるため、色収差の良好な撮像レンズが得られる。また、条件式(8)を満足する場合、第3レンズ及び第6レンズは、雰囲気温度が変化したときの屈折率の変化が小さい硝材、或いは、雰囲気温度が変化したときの屈折率の変化(dn/dT)が負の値を示す硝材からなることを意味する。そのため、第3レンズ及び第6レンズが当該条件を満足する場合、雰囲気温度が変化してもピント変動や画角変動が小さく、常温下だけでなく、高温環境下及び低温環境下においても長期間に亘って良好な結像性能を有する撮像レンズを得ることができる。
【0073】
これに対して、条件式(8)の数値が下限値以下になると、第3レンズ及び第6レンズの平均アッベ数が小さくなり、分散が大きくなる。そのため、色収差の補正が困難になる他、硝材によっては雰囲気温度が変化したときにピント変動や画角変動が生じる場合があり、雰囲気温度の変化が大きい環境下で当該撮像レンズが使用された場合、長期間に亘って良好な結像性能を維持することが困難になるため好ましくない。
【0074】
条件式(8)は、上述のとおり、第3レンズ及び第6レンズの平均アッベ数を規定した式であるため、第3レンズ及び第6レンズの平均アッベ数が下限値よりも大きければ上記効果を得ることができ、その上限値を設ける必要は特にない。しかしながら、分散の小さな硝材、すなわちアッベ数の大きな硝材は一般に高価である。従って、上記効果と経済的なバランスを考慮した場合、条件式(8)の上限値は、80であることが好ましく、70であることがより好ましい。また、条件式(8)の下限値は、52であることが好ましく、54であることがより好ましく、56であることが更に好ましく、60であることが一層好ましい。
【0075】
1-2-9.条件式(9)
当該撮像レンズは、以下の条件を満足することが好ましい。
45° < θ ・・・(9)
但し、
θ:当該撮像レンズの半画角(ω)
【0076】
条件式(9)は、当該撮像レンズの半画角を規定した式である。条件式(9)を満足させることにより、比較的広い画角を確保しつつ、近軸付近において角度分解能の高い撮像レンズを実現することができる。そのため、遠方の物体を高解像度で結像することができ、同程度の焦点距離を有する撮像レンズと比較すると画角の広い撮像レンズを実現することができる。そのため、当該撮像レンズをセンシングカメラの撮像光学系に適用し、車両の進行方向前方をセンシングすれば、車両の周囲の物体(障害物、信号機、道路交通標識等)を広く認識しつつ、先行車などの遠方の物体を精度よく検出することができる。
【0077】
条件式(9)の数値が下限値になると、画角が狭くなる。そのため、遠方の物体を高解像度で結像する上では好ましいが、広い範囲を撮像することが困難になる。従って、当該撮像レンズをセンシングカメラの撮像光学系に適用した場合、車両の周囲の物体(障害物、信号機、道路交通標識等)を広く認識することが困難になるため、好ましくない。
【0078】
上記条件式(9)の数値が小さくなるほど、画角が広くなり撮像可能な範囲が広くなる。当該観点から、条件式(9)の下限値は、50°であることが好ましく、55°であることがより好ましい。一方、撮像可能な範囲の広い撮像レンズを実現するという観点において、上限値は特に規定する必要はない。しかしながら、半画角の最大値は90°である。従って、上限値は90°であることが求められる。また、半画角が大きくなりすぎると、歪曲が大きくなるため周辺部に写り込んだ物体の認識が困難になる。従って、当該撮像レンズをセンシングカメラの撮像光学系として用いる場合、良好に物体を認識するという観点から、条件式(9)の上限値は85°以下であることが好ましく、80°以下であることがより好ましい。
【0079】
1-2-10.条件式(10)
当該撮像レンズは、以下の条件を満足することが好ましい。
EN/f < 1.5 ・・・(10)
但し、
EN:第1レンズの物体側面と当該撮像レンズの入射瞳位置との間の光軸上の距離
【0080】
条件式(10)は、第1レンズの物体側面と当該撮像レンズの入射瞳位置との間の光軸上の距離と、当該撮像レンズの焦点距離との比を規定した式である。条件式(10)を満足させることで、第1レンズの有効径を小さくして、第1レンズの小径化と撮像レンズ全体の小型化を図りつつ、良好な結像性能を維持することができる。
【0081】
これに対して、条件式(10)の数値が上限値以上になると、入射瞳位置が物体側から遠くなるため、諸収差を補正する上では好ましい。しかしながら、入射瞳位置が像面に近くなると、第1レンズの有効径を小さくすることが困難になり、当該撮像レンズの小型化を図ることが困難になる。
【0082】
上記効果を得る上で、条件式(10)の上限値は、1.2であることが好ましく、1.0であることがより好ましい。ここで、条件式(10)の数値が小さいほど、第1レンズの有効径を小さくする上で有利である。しかしながら、条件式(10)の数値が小さくなり過ぎると、歪曲収差やコマ収差などを補正することが困難になる場合がある。そこで、より高い光学性能を実現する上で、条件式(10)の下限値は、0より大きいことが好ましく、0.2であることがより好ましく、0.4であることがさらに好ましい。
【0083】
1-2-11.条件式(11)
当該撮像レンズは、以下の条件を満足することも好ましい。
f/(4×YS1) ≦ 1.0 ・・・(11)
但し、
YS1:第1レンズの物体側面における軸上光線の上線最大高さ
【0084】
条件式(11)を満足する場合、Fnoが2.0以下の明るい大口径の撮像レンズとなる。そのため、夜間などの暗い環境下においても鮮明な被写体像を取得することができる。そのため、当該撮像レンズをセンシングカメラの撮像光学系に適用した場合、昼夜問わず、良好な遠距離センシング及び近距離センシングを実現することができる。
【0085】
条件式(11)の数値が小さいほど、Fnoが小さく明るい撮像レンズを実現することができる。従って、上記条件式の上限値は、0.9であることが好ましく、0.8であることがより好ましい。下限値は特に規定する必要はないが、0.5程度であることが好ましく、0.6程度であってもよい。
【0086】
1-2-12.条件式(12)
当該撮像レンズは、以下の条件を満足することも好ましい。
(Ymax-f×tanθ)/(f×tanθ) < -0.3 ・・・(12)
但し、
Ymax:有効像円の像高
θ:当該撮像レンズの半画角(ω)
【0087】
条件式(12)を満足する場合、通常の撮像レンズと比較したときに大きな負の歪曲を発生させることができ、広い画角を確保しつつ、近軸付近において角度分解能の高い撮像レンズを実現することができる。
【0088】
条件式(12)の数値が小さいほど負の歪曲が大きくなり、上記効果を得る上で好ましい。当該観点から、条件式(12)の上限値は、-0.35であることがより好ましく、-0.40であることがさらに好ましい。しかしながら、負の歪曲が大きくなると、歪曲が大きくなるため周辺部に写り込んだ物体の認識が困難になる。従って、当該撮像レンズをセンシングカメラの撮像光学系として用いる場合、良好に物体を認識するという観点から、条件式(12)の下限値は、-0.70であることがより好ましく、-0.60であることがさらに好ましい。
【0089】
1-2-13.条件式(13)
当該撮像レンズにおいて、第4レンズは正の屈折力を有し、第5レンズは負の屈折力を有するものとしたとき、以下の条件を満足することが好ましい。
-10.0 < f45/f < -1.0 ・・・(13)
但し、
f45:第4レンズ及び第5レンズの合成焦点距離
【0090】
条件式(13)は、第4レンズ及び第5レンズの合成焦点距離と、当該撮像レンズの焦点距離との比を規定する式である。ここで、第4レンズと第5レンズとは接合されていることがより好ましい。
【0091】
条件式(13)を満足させることにより、当該撮像レンズの光学全長が長くなるのを抑制しつつ、諸収差の補正を良好に行うことが可能になり、光学性能の高い撮像レンズを実現することがより容易になる。
【0092】
これに対して、条件式(13)の数値が上限値以上になると、第4レンズ及び第5レンズの合成屈折力が強くなりすぎて、像面湾曲の補正が困難になる。そのため、良好な光学性能を得ることが困難になる。一方、条件式(13)の数値が下限値以下になると、第4レンズ及び第5レンズの合成屈折力が弱く、入射光束の発散効果が弱くなる。そのため、所望の像高を確保するには、当該光学系の全長を長くする必要があり、当該光学系の小型化を図ることが困難になる。
【0093】
上記効果を得る上で、条件式(13)の上限値は、-1.5であることがより好ましく、-2.0であることがさらに好ましい。また、条件式(13)の下限値は、-9.0であることがより好ましく、-8.0であることがさらに好ましい。
【0094】
1-2-14.条件式(14)
当該撮像レンズにおいて、上記第4レンズ及び第5レンズは接合されているものとし、以下の条件式(14)を満足することが好ましい。
0 ≦ |α4-α5| < 50×10-7 ・・・(14)
但し、
α4:第4レンズを構成する硝材の-30℃から70℃における平均線膨張係数(1×10-7/K)
α5:第5レンズを構成する硝材の-30℃から70℃における平均線膨張係数(1×10-7/K)
【0095】
条件式(14)は、第4レンズを構成する硝材の平均線膨張係数と、第5レンズを構成する硝材の平均線膨張係数の差を規定する式である。硝材は雰囲気温度の変化に伴い膨張・収縮する。条件式(14)を満足する場合、雰囲気温度の変化に対する両硝材の膨張・収縮の程度が同程度になる。従って、雰囲気温度が-30℃から70℃の間で変化した場合も、両硝材が同程度に膨張・収縮するため、両レンズが接合部において分離することを防止することができる。従って、当該撮像レンズが車載用撮像装置等の撮像光学系に適用される場合など、過酷な雰囲気温度の変化に供される場合も、第4レンズ及び第5レンズの接合を維持することができ、耐温度特性の高い撮像レンズを実現することができる。
【0096】
上記効果を得る上で、条件式(14)の上限値は42×10-7であることが好ましく、36×10-7であることがより好ましく、30×10-7であることがさらに好ましく、20×10-7であることが一層好ましく、10×10-7であることがさらに一層好ましい。
【0097】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係る撮像レンズと、当該撮像レンズが形成する光学像を受光して電気的画像信号に変換する撮像素子とを備えることを特徴とする。
【0098】
ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCDセンサ(Charge Coupled Device)やCMOSセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの固体撮像素子等も用いることができる。本件発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやビデオカメラ等のこれらの固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよいし、一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラ等のレンズ交換式の撮像装置であってもよいのは勿論である。
【0099】
本件発明に係る撮像装置は、鑑賞目的で被写体を撮像するために用いられる一般の撮像装置の他、車載用撮像装置等のように、車両あるいは建造物等に据付固定され、監視、或いはセンシング等の特定の目的の下で使用される据付固定型の撮像装置に用いることができる。本件発明に係る撮像レンズは、全体を小型に構成しつつ、光軸付近の物体を高解像度で結像することができ、且つ、画角の広いレンズである。そのため、遠方の物体を高解像度で撮像することができ、広い範囲を撮像することができる。さらに、いわゆる前玉径を小さくすることができるため、撮像装置の存在を車両等の外側から目立ちにくくするとともに、1台の撮像装置で遠方に位置する物体を撮像することができ、且つ、周囲を広い範囲で撮像することができる。従って、当該撮像装置は車載用撮像装置等に好適であり、特に、各種移動体(陸上移動体、空中移動体、海上移動体)に搭載され、各移動体の進行方向前方及び周囲の物体を検出或いは認識するために用いられるセンシングカメラに特に好適である。なお、上記移動体には自動車、飛行機、船舶等の乗り物の他、無人航空機(ドローン等)或いは無人探査機等、さらには、自立二足歩行型ロボット等の自立移動機能を備えたロボット(掃除ロボット等含む)の各種移動体を含むものとする。
【0100】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下に挙げる各実施例の撮像レンズは、デジタルカメラ、ビデオカメラ、銀塩フィルムカメラ等の撮像装置(光学装置)に用いられる撮像レンズであり、特に、車載用撮像装置等に好ましく適用することができ、各種移動体に搭載されるセンシングカメラに好ましく適用することができる。また、各レンズ断面図において、図面に向かって左方が物体側、右方が像側である。
【実施例1】
【0101】
(1)撮像レンズの光学構成
図1は、本件発明に係る実施例1の撮像レンズの構成を示すレンズ断面図である。当該撮像レンズは、物体側から順に、負の屈折力を有し、物体側が凸面であり、物体側に凸のメニスカス形状の第1レンズG1と、正の屈折力を有し、物体側が凹面であり、像側に凸のメニスカス形状の第2レンズG2と、正の屈折力を有する両凸形状の第3レンズG3と、像側が凸面の正の屈折力を有する第4レンズG4及び両凹形状の第5レンズG5が接合された接合レンズと、正の屈折力を有し、両凸形状の第6レンズG6とから構成されている。開口絞り
SPは、第2レンズG2の像側に配置されている。当該撮像レンズは焦点距離が固定の固定焦点レンズである。第1レンズG1の両面、第3レンズG3の両面はそれぞれ非球面である。
【0102】
なお、図中、「IP」は像面を示す。当該像面は、上述した、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子の撮像面である。当該撮像レンズの物体側から入射した光は、像面に結像する。固体撮像素子は受光した光学像を電気的画像信号に変換する。撮像装置等が備える画像処理部(画像処理プロセッサ等)により、撮像素子から出力された電気的画像信号に基づき、被写体の像に対応したデジタル画像が生成される。当該デジタル画像は、例えば、HDD(Hard Disk Device)やメモリカード、光ディスク、磁気テープなどの記録媒体に記録することが可能である。なお、像面は、銀塩フィルムのフィルム面であってもよい。
【0103】
また、像面IPの物体側に示す「G」は光学ブロックである。当該光学ブロックGは、光学フィルタや、フェースプレート、水晶ローパスフィルタ、赤外カットフィルタ等に相当する。これらの符号(IP、G)は、他の実施例で示す各図においても同様のものを示すため、以下では説明を省略する。
【0104】
(2)数値実施例
実施例1で採用した撮像レンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表1に当該撮像レンズのレンズデータを示す。表1において、「面番号」は物体側から数えたレンズ面の番号、「r」はレンズ面の曲率半径(但し、rの値がINFである面は、その面が平面であることを示す。)、「d」は物体側からi番目(iは自然数)のレンズ面と、i+1番目のレンズ面とのレンズ面の光軸上の間隔、「nd」はd線(波長λ=587.56nm)に対する屈折率、「νd」はd線に対するアッベ数を示している。但し、レンズ面が非球面である場合、表中の面番号の前に「※」を付している。また、非球面である場合には、「r」の欄にはその近軸曲率半径を示している。
【0105】
表2に、当該撮像レンズの諸データを示す。具体的には、当該撮像レンズの焦点距離(mm)、Fナンバー(F値)、半画角(°)、像高(mm)、レンズ全長(mm)、バックフォーカス(BF(in air))(mm)を示している。ここで、レンズ全長は、第1レンズの物体側面から最も像側に配置された第nレンズ、ここでは第6レンズG6の像側面までの光軸上の距離に、バックフォーカスを加えた値である。また、バックフォーカスは第nレンズの像側面から近軸像面までの距離を空気換算した値である。
【0106】
表3に非球面データを示す。非球面データとして、表1に示した非球面について、その形状を下記式で定義した場合の非球面係数を示す。なお、非球面係数は、光軸からの高さhの位置での光軸方向の変位を面頂点基準として、以下の非球面式により表すことができる。
【0107】
z=ch2/[1+{1-(1+k)c2h2}1/2]+A4h4+A6h6+A8h8+A10h10・・・
但し、cが曲率(1/r)、hが光軸からの高さ、kが円錐係数(コーニック定数)、A4、A6、A8、A10・・・が各次数の非球面係数である。また、非球面係数及びコーニック定数の数値における「E±m」(mは整数を表す。)という表記は、「×10±m」を意味している。
【0108】
表4は、第4レンズ及び第5レンズを構成する硝材の-30℃~70℃における平均線膨張係数(単位:1×10-7/K(1e-7/K))を示す。
【0109】
また、表25に当該撮像レンズの各条件式の数値を示す。これらの各表に関する事項は、他の実施例で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0110】
図2に、当該撮像レンズの無限遠合焦時における縦収差図を示す。
図2に示す縦収差図は、図面に向かって左側から順に、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)である。球面収差を表す図において、縦軸は開放F値(Fno)を表す。実線はd線(波長587.56nm)における球面収差、長破線はC線(波長656.27nm)における球面収差、短破線はg線(波長435.84nm)における球面収差を示している。
【0111】
非点収差を表す図において、縦軸は像高(y)を表す。実線はd線(波長587.56nm)におけるサジタル方向を示し、破線はd線におけるメリディオナル方向を示している。
【0112】
歪曲収差を表す図において、縦軸に像高(y)を取り、d線(波長587.56nm)における歪曲収差(ディストーション)を示している。
図2に示すとおり、当該撮像レンズは大きな負の歪曲収差を有する。これらの縦収差図に関する事項は、他の実施例で示す縦収差図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0113】
[表1]
面番号 r d nd νd
※1 12.632 1.000 1.8478 40.12
※2 3.634 2.662
3 -14.900 4.640 1.7521 25.05
4 -9.730 0.150
5(絞り) INF 3.044
※6 21.297 3.220 1.5925 66.92
※7 -7.662 0.150
8 40.750 3.040 1.6030 65.46
9 -8.400 0.700 1.7618 26.61
10 15.530 0.150
11 12.050 3.140 1.6180 63.41
12 -36.500 1.900
13 INF 0.900 1.5163 64.15
14 INF 5.303
【0114】
[表2]
焦点距離 5.3295(mm)
Fナンバー 1.6
半画角 59.19(°)
像高 4.46(mm)
レンズ全長 30(mm)
BF(in air) 7.785(mm)
【0115】
[表3]
面番号 k A4 A6 A8 A10
1 -2.1882E-01 -2.3791E-03 1.0054E-04 -3.9881E-06 7.4205E-08
2 -1.0526E+00 -5.8081E-04 2.2769E-04 -1.3098E-05 4.9203E-07
6 0.0000E+00 -9.2597E-05 -8.1720E-06 5.5678E-07 -1.7474E-08
7 0.0000E+00 3.0574E-04 -5.8183E-06 4.9641E-07 -1.3388E-08
【0116】
[表4]
第4レンズ 93(1e-7/K)
第5レンズ 84(1e-7/K)
【実施例2】
【0117】
(1)撮像レンズの光学構成
図3は、本件発明に係る実施例2の撮像レンズの構成を示すレンズ断面図である。当該撮像レンズは、物体側から順に、負の屈折力を有し、物体側が凸面であり、物体側に凸のメニスカス形状の第1レンズG1と、正の屈折力を有し、物体側が凹面であり、像側に凸のメニスカス形状の第2レンズG2と、正の屈折力を有する両凸形状の第3レンズG3と、像側が凸面の正の屈折力を有する第4レンズG4及び両凹形状の第5レンズG5が接合された接合レンズと、正の屈折力を有し、両凸形状の第6レンズG6とから構成されている。開口絞り
SPは、第2レンズG2の像側に配置されている。当該撮像レンズは焦点距離が固定の固定焦点レンズである。第1レンズG1の両面、第3レンズG3の両面はそれぞれ非球面である。
【0118】
(2)数値実施例
次に、実施例2で採用した撮像レンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表5~表8に当該撮像レンズのレンズデータ、当該撮像レンズの諸データ、非球面データ、第4レンズ及び第5レンズを構成する硝材の-30℃~70℃における平均線膨張係数(単位:1×10
-7/K)をそれぞれ示す。また、表25に当該撮像レンズの各条件式の数値を示す。また、
図4に、当該撮像レンズの無限遠合焦時における縦収差図を示す。
【0119】
[表5]
面番号 r d nd νd
※1 7.780 1.000 1.8411 40.04
※2 2.943 2.333
3 -21.774 4.930 1.8081 22.76
4 -11.651 0.608
5(絞り) INF 2.848
※6 22.292 3.160 1.5920 67.02
※7 -7.880 0.150
8 33.098 3.250 1.6030 65.46
9 -8.000 0.700 1.7618 26.61
10 26.023 0.150
11 19.336 2.650 1.6180 63.41
12 -26.047 1.000
13 INF 0.900 1.5163 64.15
14 INF 6.321
【0120】
[表6]
焦点距離 5.3345(mm)
Fナンバー 1.6
半画角 59.07(°)
像高 4.46(mm)
レンズ全長 30(mm)
BF(in air) 7.903(mm)
【0121】
[表7]
面番号 k A4 A6 A8 A10
1 -1.5057E+00 -5.6702E-03 3.1030E-04 -1.0347E-05 1.5386E-07
2 -2.7781E+00 2.6087E-03 -1.6268E-04 2.1555E-05 -7.3796E-07
6 0.0000E+00 -9.8803E-05 -3.2297E-06 1.9857E-07 -8.7236E-09
7 0.0000E+00 2.6671E-04 -6.0984E-06 4.9488E-07 -1.3612E-08
【0122】
[表8]
第4レンズ 93(1e-7/K)
第5レンズ 84(1e-7/K)
【実施例3】
【0123】
(1)撮像レンズの光学構成
図5は、本件発明に係る実施例3の撮像レンズの構成を示すレンズ断面図である。当該撮像レンズは、物体側から順に、負の屈折力を有し、物体側が凸面であり、物体側に凸のメニスカス形状の第1レンズG1と、正の屈折力を有し、物体側が凹面であり、像側に凸のメニスカス形状の第2レンズG2と、正の屈折力を有する両凸形状の第3レンズG3と、像側が凸面の正の屈折力を有する第4レンズG4及び両凹形状の第5レンズG5が接合された接合レンズと、正の屈折力を有し、両凸形状の第6レンズG6とから構成されている。開口絞り
SPは、第2レンズG2の像側に配置されている。当該撮像レンズは焦点距離が固定の固定焦点レンズである。第1レンズG1の両面、第3レンズG3の両面、第6レンズG6の両面はそれぞれ非球面である。
【0124】
(2)数値実施例
次に、実施例3で採用した撮像レンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表9~表12に当該撮像レンズのレンズデータ、当該撮像レンズの諸データ、非球面データ、第4レンズ及び第5レンズを構成する硝材の-30℃~70℃における平均線膨張係数をそれぞれ示す。また、表25に当該撮像レンズの各条件式の数値を示す。また、
図6に、当該撮像レンズの無限遠合焦時における縦収差図を示す。
【0125】
[表9]
面番号 r d nd νd
※1 9.200 1.060 1.8513 40.1
※2 3.413 2.206
3 -17.850 6.200 1.8081 22.76
4 -10.350 0.184
5(絞り) INF 2.512
※6 13.875 3.730 1.5920 67.02
※7 -8.204 0.150
8 17.260 3.000 1.7725 49.61
9 -9.880 0.700 1.8081 22.69
10 7.810 2.565
※11 14.281 3.490 1.8513 40.1
※12 -499.513 1.000
13 INF 0.900 1.5163 64.15
14 INF 2.304
【0126】
[表10]
焦点距離 5.3287(mm)
Fナンバー 1.6
半画角 63.08(°)
像高 4.52(mm)
レンズ全長 30(mm)
BF(in air) 3.895(mm)
【0127】
[表11]
面番号 k A4 A6 A8 A10
1 -5.6465E-01 -4.6442E-03 2.2679E-04 -6.2466E-06 7.4370E-08
2 -3.5828E+00 3.4297E-03 -2.6920E-04 3.0042E-05 -8.9093E-07
6 1.9441E-01 -2.9544E-04 -8.1230E-06 3.5242E-07 -1.5261E-08
7 -4.3080E-02 2.2795E-04 -4.6133E-06 2.5449E-07 -1.0877E-08
11 -9.6812E-02 -5.7700E-04 2.1224E-06 -6.8277E-07 2.3953E-08
12 -3.3333E-04 -1.2341E-03 1.2296E-05 -3.2676E-07 1.0563E-08
【0128】
[表12]
第4レンズ 58(1e-7/K)
第5レンズ 93(1e-7/K)
【実施例4】
【0129】
(1)撮像レンズの光学構成
図7は、本件発明に係る実施例4の撮像レンズの構成を示すレンズ断面図である。当該撮像レンズは、物体側から順に、負の屈折力を有し、物体側が凸面であり、物体側に凸のメニスカス形状の第1レンズG1と、正の屈折力を有し、物体側が凹面であり、像側に凸のメニスカス形状の第2レンズG2と、正の屈折力を有する両凸形状の第3レンズG3と、像側が凸面の正の屈折力を有する第4レンズG4及び両凹形状の第5レンズG5が接合された接合レンズと、正の屈折力を有し、両凸形状の第6レンズG6とから構成されている。開口絞り
SPは、第2レンズG2の像側に配置されている。当該撮像レンズは焦点距離が固定の固定焦点レンズである。第1レンズG1の両面、第3レンズG3の両面はそれぞれ非球面である。
【0130】
(2)数値実施例
次に、実施例4で採用した撮像レンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表13~表16に当該撮像レンズのレンズデータ、当該撮像レンズの諸データ、非球面データ、第4レンズ及び第5レンズを構成する硝材の-30℃~70℃における平均線膨張係数をそれぞれ示す。また、表25に当該撮像レンズの各条件式の数値を示す。また、
図8に、当該撮像レンズの無限遠合焦時における縦収差図を示す。
【0131】
[表13]
面番号 r d nd νd
※1 23.544 1.746 1.8478 40.12
※2 4.572 4.619
3 -38.415 4.800 1.8081 22.76
4 -15.244 0.150
5(絞り) INF 5.093
※6 26.218 3.338 1.5925 66.92
※7 -11.179 0.981
8 16.438 4.800 1.7292 54.67
9 -10.241 0.700 1.7521 25.05
10 9.551 1.718
11 9.856 4.800 1.6180 63.41
12 -166.826 1.900
13 INF 0.900 1.5163 64.15
14 INF 2.470
【0132】
[表14]
焦点距離 5.3306(mm)
Fナンバー 1.634
半画角 59.13(°)
像高 4.46(mm)
レンズ全長 38.015(mm)
BF(in air) 4.952(mm)
【0133】
[表15]
面番号 k A4 A6 A8 A10
1 4.3221E-03 -1.2567E-03 4.6270E-05 -1.1569E-06 1.3316E-08
2 -1.0609E+00 -8.0063E-04 8.8794E-05 -2.8040E-06 6.1943E-08
6 0.0000E+00 -2.5227E-05 -6.8084E-07 -9.4821E-09 6.4165E-10
7 0.0000E+00 1.1878E-04 5.7520E-07 -3.7237E-08 8.4484E-10
【0134】
[表16]
第4レンズ 56(1e-7/K)
第5レンズ 64(1e-7/K)
【実施例5】
【0135】
(1)撮像レンズの光学構成
図9は、本件発明に係る実施例5の撮像レンズの構成を示すレンズ断面図である。当該撮像レンズは、物体側から順に、負の屈折力を有し、物体側が凸面であり、物体側に凸のメニスカス形状の第1レンズG1と、正の屈折力を有し、物体側が凹面であり、像側に凸のメニスカス形状の第2レンズG2と、正の屈折力を有する両凸形状の第3レンズG3と、像側が凸面の正の屈折力を有する第4レンズG4及び両凹形状の第5レンズG5が接合された接合レンズと、正の屈折力を有し、両凸形状の第6レンズG6とから構成されている。開口絞り
SPは、第2レンズG2の像側に配置されている。当該撮像レンズは焦点距離が固定の固定焦点レンズである。第1レンズG1の両面、第3レンズG3の両面はそれぞれ非球面である。
【0136】
(2)数値実施例
次に、実施例5で採用した撮像レンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表17~表20に当該撮像レンズのレンズデータ、当該撮像レンズの諸データ、非球面データ、第4レンズ及び第5レンズを構成する硝材の-30℃~70℃における平均線膨張係数をそれぞれ示す。また、表25に当該撮像レンズの各条件式の数値を示す。また、
図10に、当該撮像レンズの無限遠合焦時における縦収差図を示す。
【0137】
[表17]
面番号 r d nd νd
※1 10.436 0.700 1.8478 40.12
※2 3.351 1.750
3 -10.981 4.800 1.8081 22.76
4 -8.073 0.150
5(絞り) INF 1.840
※6 10.290 3.328 1.5925 66.92
※7 -6.867 0.150
8 52.377 2.550 1.7292 54.67
9 -7.854 0.700 1.7521 25.05
10 7.307 2.613
11 8.864 4.800 1.6180 63.41
12 -54.282 1.900
13 INF 0.900 1.5163 64.15
14 INF 0.970
【0138】
[表18]
焦点距離 5.3268(mm)
Fナンバー 1.6
半画角 59.27(°)
像高 4.46(mm)
レンズ全長 27.15(mm)
BF(in air) 3.452(mm)
【0139】
[表19]
面番号 k A4 A6 A8 A10
1 -6.3820E-01 -5.6239E-03 4.7467E-04 -2.7748E-05 7.1321E-07
2 -2.4350E+00 2.5196E-04 6.1177E-04 -5.9906E-05 2.9538E-06
6 0.0000E+00 -3.7188E-04 7.3101E-06 -5.3021E-07 2.7372E-08
7 0.0000E+00 6.1847E-04 1.0525E-05 -6.7956E-07 3.4378E-08
【0140】
[表20]
第4レンズ 56(1e-7/K)
第5レンズ 64(1e-7/K)
【実施例6】
【0141】
(1)撮像レンズの光学構成
図11は、本件発明に係る実施例6の撮像レンズの構成を示すレンズ断面図である。当該撮像レンズは、物体側から順に、負の屈折力を有し、物体側が凸面であり、物体側に凸のメニスカス形状の第1レンズG1と、正の屈折力を有し、物体側が凹面であり、像側に凸のメニスカス形状の第2レンズG2と、正の屈折力を有する両凸形状の第3レンズG3と、像側が凸面の正の屈折力を有する第4レンズG4と、両凹形状の第5レンズG5と、正の屈折力を有し、両凸形状の第6レンズG6とから構成されている。開口絞り
SPは、第2レンズG2の像側に配置されている。当該撮像レンズは焦点距離が固定の固定焦点レンズである。第1レンズG1の両面、第3レンズG3の両面はそれぞれ非球面である。
【0142】
(2)数値実施例
次に、実施例6で採用した撮像レンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表21~表24に当該撮像レンズのレンズデータ、当該撮像レンズの諸データ、非球面データ、第4レンズ及び第5レンズを構成する硝材の-30℃~70℃における平均線膨張係数をそれぞれ示す。また、表25に当該撮像レンズの各条件式の数値を示す。また、図12に、当該撮像レンズの無限遠合焦時における縦収差図を示す。
【0143】
[表21]
面番号 r d nd νd
※1 7.190 1.240 1.8513 40.1
※2 2.996 3.257
3 -21.075 4.800 1.6129 37.01
4 -10.369 3.025
5(絞り) INF 1.283
※6 15.349 4.350 1.5920 67.02
※7 -9.148 0.414
8 21.443 4.690 1.6030 65.46
9 -9.190 0.150
10 -9.349 0.700 1.7618 26.61
11 7.758 0.357
12 8.599 4.270 1.7292 54.67
13 -68.349 1.000
14 INF 0.900 1.5163 64.15
15 INF 3.146
【0144】
[表22]
焦点距離 5.33(mm)
Fナンバー 1.6
半画角 59.1(°)
像高 4.46(mm)
レンズ全長 33.58(mm)
BF(in air) 4.727(mm)
【0145】
[表23]
面番号 k A4 A6 A8 A10
1 -2.0375E+00 -4.5404E-03 1.8782E-04 -4.3223E-06 4.2152E-08
2 -2.9909E+00 2.5856E-03 -2.9708E-04 2.5203E-05 -7.3918E-07
6 0.0000E+00 -2.4765E-04 -2.7521E-06 -4.5816E-08 -3.0895E-09
7 0.0000E+00 1.5283E-04 8.7627E-07 -1.7680E-07 2.5664E-09
【0146】
[表24]
第4レンズ 93(1e-7/K)
第5レンズ 84(1e-7/K)
【0147】
[表25]
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 実施例5 実施例6
(1) R11/f 2.37 1.46 1.73 4.42 1.96 1.35
(2) D1/f 0.19 0.19 0.20 0.33 0.13 0.23
(3) f1/f -1.19 -1.17 -1.31 -1.31 -1.14 -1.31
(4) (d1-2)/f 0.50 0.44 0.41 0.87 0.33 0.61
(5) f2/f 5.05 4.77 4.18 5.37 4.08 5.34
(6) f3/f 1.86 1.92 1.74 2.57 1.41 1.94
(7) f6/f 2.82 3.44 3.07 2.85 2.38 2.01
(8) ν3,6 65.17 65.22 53.56 65.17 65.17 60.85
(9) θ 59.19 59.07 63.08 59.13 59.27 59.10
(10) EN/f 0.67 0.70 0.73 0.89 0.56 0.96
(11) f/(4×YS1) 0.80 0.80 0.80 0.82 0.80 0.80
(12) (Ymax-f×tanθ)/(f×tanθ) -0.50 -0.50 -0.57 -0.50 -0.50 -0.50
(13) f45/f -3.66 -6.44 -3.57 -7.41 -2.10 -2.55
(14) |α4-α5| (1e-7/K) 9.00 9.00 35.00 8.00 8.00 9.00
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明によれば、全体を小型に構成しつつ、光軸付近の物体を高解像度で結像することができる画角の広い撮像レンズ及び撮像装置を提供することができる。そのため、各種移動体(陸上移動体、空中移動体、海上移動体)に搭載される撮像装置、監視用撮像装置、防犯用撮像装置等の種々の建造物等に据付固定される撮像装置に好適であり、特に、各種移動体に搭載され、各移動体の進行方向前方及び周囲の物体を検出或いは認識するために用いられるセンシングカメラに好適である。
【符号の説明】
【0149】
G1・・・第1レンズ
G2・・・第2レンズ
G3・・・第3レンズ
G4・・・第4レンズ
G5・・・第5レンズ
G6・・・第6レンズ
SP・・・開口絞り
IP・・・像面