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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20220822BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20220822BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/03 100B
B60C11/12 D
B60C11/12 B
B60C11/03 B
B60C5/00 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018108545
(22)【出願日】2018-06-06
(65)【公開番号】P2019209875
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 直也
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-205459(JP,A)
【文献】特開2016-020207(JP,A)
【文献】特開2016-199118(JP,A)
【文献】特開2014-162295(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0991322(KR,B1)
【文献】特開2014-184948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0129289(US,A1)
【文献】特開2014-240230(JP,A)
【文献】特開2017-074842(JP,A)
【文献】特開2016-040156(JP,A)
【文献】特開2017-024454(JP,A)
【文献】特開2017-124712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00
B60C 11/00-11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、
前記複数の主溝及び接地端によって区画される複数の陸部と、を備え、
前記複数の陸部の少なくとも一つは、タイヤ周方向に沿って延びる周サイプと、前記周サイプと交差するように延びる複数の幅サイプと、を備え、
前記周サイプの深さは、前記複数の幅サイプの深さよりも、浅い、空気入りタイヤであって、
前記幅サイプは、幅が一定であるサイプ部と、タイヤ径方向外側に向けて幅を広くする切欠部と、を備え、
前記サイプ部は、前記主溝に対して傾斜するように、前記主溝に連接され、
前記切欠部は、前記サイプ部が前記主溝と交差する角部のうち、鋭角で交差する角部のみに、配置され、
前記切欠部は、前記サイプ部に沿って延び、前記周サイプと交差するように延びる、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記切欠部のトレッド面における幅は、前記主溝に向けて、広い、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記切欠部による空体積は、前記主溝に向けて、大きい、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、
前記複数の主溝及び接地端によって区画される複数の陸部と、を備え、
前記複数の陸部は、車両装着時に最も外側に配置される外側ショルダー陸部を含み、
前記外側ショルダー陸部は、タイヤ周方向に沿って延びる周サイプと、前記周サイプと交差するように延びる複数の幅サイプと、を備え、
前記周サイプの深さは、前記複数の幅サイプの深さよりも、浅い、空気入りタイヤであって、
前記幅サイプは、幅が一定であるサイプ部と、タイヤ径方向外側に向けて幅を広くする切欠部と、を備え、
前記サイプ部は、前記主溝に対して傾斜するように、前記主溝に連接され、
前記切欠部は、前記サイプ部が前記主溝と交差する角部のうち、鋭角で交差する角部のみに、配置され、
前記切欠部は、トレッド面に対して傾斜する傾斜面を備え、
前記傾斜面が前記トレッド面と交差する角度は、車両装着時の外側に向けて、大きい、空気入りタイヤ。
【請求項5】
タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、
前記複数の主溝及び接地端によって区画される複数の陸部と、を備え、
前記複数の陸部は、タイヤ幅方向の寸法が最も大きい第1陸部を含み、
前記第1陸部は、タイヤ周方向に沿って延びる周サイプと、前記周サイプと交差するように延びる複数の幅サイプと、を備え、
前記周サイプの深さは、前記複数の幅サイプの深さよりも、浅く、
前記幅サイプは、幅が一定であるサイプ部と、タイヤ径方向外側に向けて幅を広くする切欠部と、を備え、
前記サイプ部は、前記主溝に対して傾斜するように、前記主溝に連接され、
前記切欠部は、前記サイプ部が前記主溝と交差する角部のうち、鋭角で交差する角部のみに、配置される、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、空気入りタイヤの陸部は、タイヤ周方向に沿って延びる陸溝と、陸溝と交差するように延びる複数のサイプとを備えている(例えば、特許文献1)。これにより、陸部の剛性が高くなり過ぎることを抑制することができている。しかしながら、陸部の剛性が低くなり過ぎた場合には、偏摩耗が発生し易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2012/098895号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、課題は、幅サイプを境にしてタイヤ周方向で偏摩耗が発生することを抑制することができる空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
空気入りタイヤは、タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、前記複数の主溝及び接地端によって区画される複数の陸部と、を備え、前記複数の陸部の少なくとも一つは、タイヤ周方向に沿って延びる周サイプと、前記周サイプと交差するように延びる複数の幅サイプと、を備え、前記周サイプの深さは、前記複数の幅サイプの深さよりも、浅い。
【0006】
また、空気入りタイヤにおいては、前記幅サイプは、幅が一定であるサイプ部と、タイヤ径方向外側に向けて幅を広くする切欠部と、を備え、前記サイプ部は、前記主溝に対して傾斜するように、前記主溝に連接され、前記切欠部は、前記サイプ部が前記主溝と鋭角で交差する角部に、配置される、という構成でもよい。
【0007】
また、空気入りタイヤにおいては、前記切欠部のトレッド面における幅は、前記主溝に向けて、広い、という構成でもよい。
【0008】
また、空気入りタイヤにおいては、前記切欠部による空体積は、前記主溝に向けて、大きい、という構成でもよい。
【0009】
また、空気入りタイヤにおいては、前記複数の陸部の少なくとも一つは、タイヤ幅方向の最も外側に配置される陸部を含み、前記切欠部は、トレッド面に対して傾斜する傾斜面を備え、前記傾斜面が前記トレッド面と交差する角度は、タイヤ幅方向の外側に向けて、大きい、という構成でもよい。
【0010】
また、空気入りタイヤにおいては、前記複数の陸部の少なくとも一つは、タイヤ幅方向の寸法が最も大きい陸部を含む、という構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午面における要部断面図である。
図2図2は、同実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面の要部展開図である。
図3図3は、図2のIII領域拡大図である。
図4図4は、図3のIV-IV線拡大断面図である。
図5図5は、図3のV-V線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、図1図5を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0013】
各図において、第1の方向D1は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1の回転中心であるタイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ1の直径方向であるタイヤ径方向D2であり、第3の方向D3は、タイヤ回転軸周りのタイヤ周方向D3である。
【0014】
なお、タイヤ幅方向D1のうち、第1側D11は、第1幅方向側D11ともいい、第2側D12は、第2幅方向側D12ともいう。また、タイヤ周方向D3のうち、第1側D31は、第1周方向側D31ともいい、第2側D32は、第2周方向側D32ともいう。
【0015】
タイヤ赤道面S1とは、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ1のタイヤ幅方向D1の中心に位置する面のことであり、タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸を含む面で且つタイヤ赤道面S1と直交する面のことである。また、タイヤ赤道線とは、タイヤ1のタイヤ径方向D2の外表面(後述する、トレッド面2a)とタイヤ赤道面S1とが交差する線のことである。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ1は、ビードを有する一対のビード部1aと、各ビード部1aからタイヤ径方向D2の外側に延びるサイドウォール部1bと、一対のサイドウォール部1bのタイヤ径方向D2の外端部に連接され、タイヤ径方向D2の外表面が路面に接地するトレッド部2とを備えている。本実施形態においては、タイヤ1は、内部に空気が入れられる空気入りタイヤ1であって、リム20に装着される。
【0017】
また、タイヤ1は、一対のビードの間に架け渡されるカーカス層1cと、カーカス層1cの内側に配置され、空気圧を保持するために、気体の透過を阻止する機能に優れるインナーライナ層1dとを備えている。カーカス層1c及びインナーライナ層1dは、ビード部1a、サイドウォール部1b、及びトレッド部2に亘って、タイヤ内周に沿って配置されている。
【0018】
タイヤ1は、タイヤ赤道面S1に対して非対称となる構造である。本実施形態においては、タイヤ1は、車両への装着向きを指定されたタイヤであり、リム20に装着する際に、タイヤ1の左右何れを車両に対面するかを指定されたタイヤである。なお、トレッド部2のトレッド面2aに形成されるトレッドパターンは、タイヤ赤道面S1に対して非対称となる形状としている。
【0019】
車両への装着の向きは、サイドウォール部1bに表示されている。具体的には、サイドウォール部1bは、タイヤ外表面を構成すべく、カーカス層1cのタイヤ幅方向D1の外側に配置されるサイドウォールゴム1eを備え、該サイドウォールゴム1eは、表面に、車両への装着の向きを表示する表示部を有している。
【0020】
例えば、車両装着時に内側(以下「車両内側」ともいう)に配置される一方のサイドウォール部1bは、車両内側となる旨の表示(例えば、「INSIDE」等)を付されている。また、例えば、車両装着時に外側(以下「車両外側」ともいう)に配置される他方のサイドウォール部1bは、車両外側となる旨の表示(例えば、「OUTSIDE」等)を付されている。本実施形態においては、第1幅方向側D11は、車両内側であり、第2幅方向側D12は、車両外側である。
【0021】
トレッド部2は、路面に接地するトレッド面2aを有するトレッドゴム2bと、トレッドゴム2bとカーカス層1cとの間に配置されるベルト層2cとを備えている。そして、トレッド面2aは、実際に路面に接地する接地面を有しており、当該接地面のうち、タイヤ幅方向D1の外側端は、接地端2d,2eという。なお、該接地面は、タイヤ1を正規リム20にリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤ1を平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地するトレッド面2aを指す。
【0022】
正規リム20は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ1ごとに定めるリム20であり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば「Design Rim」、ETRTOであれば「Measuring Rim」となる。
【0023】
正規内圧は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1ごとに定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATIONPRESSURE」であるが、タイヤ1が乗用車用である場合には180kPaとする。
【0024】
正規荷重は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1ごとに定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」であるが、タイヤ1が乗用車用である場合には内圧180kPaの対応荷重の85%とする。
【0025】
図1及び図2に示すように、トレッドゴム2bは、タイヤ周方向D3に延びる複数の主溝3a~3dを備えている。主溝3a~3dは、タイヤ周方向D3に連続して延びている。本実施形態においては、主溝3a~3dは、タイヤ周方向D3に沿ってストレート状に延びている、という構成であるが、斯かる構成に限られず、例えば、屈折を繰り返してジグザグ状に延びている、という構成でもよく、また、例えば、湾曲を繰り返して波状に延びている、という構成でもよい。
【0026】
主溝3a~3dは、例えば、摩耗するにしたがって露出することで摩耗度合が分かるように、溝を浅くしてある部分、所謂、トレッドウエアインジケータ(図示していない)を備えている。また、例えば、主溝3a~3dは、接地端2d,2e間の距離(タイヤ幅方向D1の寸法)の3%以上の溝幅を有している。また、例えば、主溝3a~3dは、5mm以上の溝幅を有している。
【0027】
タイヤ幅方向D1の最も外側に配置される一対の主溝3a,3bは、ショルダー主溝3a,3bといい、また、一対のショルダー主溝3a,3b間に配置される主溝3c,3dは、センター主溝3c,3dという。なお、主溝3a~3dの数は、特に限定されないが、本実施形態においては、四つとしている。
【0028】
トレッドゴム2bは、複数の主溝3a~3d及び一対の接地端2d,2eによって区画される複数の陸部4a~4eを備えている。なお、陸部4a~4eの数は、特に限定されないが、本実施形態においては、五つとしている。
【0029】
ショルダー主溝3a,3bと接地端2d,2eによって区画される陸部4a,4bは、ショルダー陸部4a,4bといい、隣接される一対の主溝3a~3dによって区画される陸部4c~4eは、ミドル陸部4c~4eという。なお、ショルダー主溝3a,3bとセンター主溝3c,3dとによって区画される陸部4c,4dは、クオーター陸部(「メディエイト陸部」ともいう)4c,4dともいい、一対のセンター主溝3c,3dによって区画される陸部4eは、センター陸部4eともいう。
【0030】
車両外側D12のショルダー陸部4bのタイヤ幅方向D1の寸法W2は、全ての陸部4a~4eのタイヤ幅方向D1の寸法W1~W5の中で、最も大きくなっている。即ち、車両外側D12のショルダー陸部4bは、タイヤ幅方向D1の寸法W2が最も大きい陸部4bである。なお、センター陸部4eは、タイヤ赤道面S1を含むように配置されている。
【0031】
陸部4a~4eは、幅が2.0mmよりも広い陸溝5と、幅(後述する「サイプ部6a,7a」の幅)が2.0mm以下であるサイプ6,7とを備えている。サイプ6,7は、タイヤ周方向D3に沿って延びる周サイプ6と、タイヤ周方向D3に対して交差するように延びる幅サイプ7とを備えている。
【0032】
本実施形態においては、陸溝5は、車両内側D11のショルダー陸部4aに設けられ、周サイプ6は、車両外側D12のショルダー陸部4b及びクオーター陸部4dに設けられ、幅サイプ7は、全ての陸部4a~4eに設けられている。なお、陸溝5及びサイプ6,7が設けられる陸部4a~4eは、斯かる構成に限定されない。
【0033】
ここで、車両外側D12のショルダー陸部(以下、「外側ショルダー陸部」ともいう)4bの構成について、図3図5を参照しながら説明する。
【0034】
まず、外側ショルダー陸部4bは、タイヤ幅方向D1の寸法W2が最も大きい陸部4bである。これにより、外側ショルダー陸部4bの剛性は、高くなっている。そこで、図3に示すように、幅サイプ7は、周サイプ6と交差するように延びている。これにより、外側ショルダー陸部4bの剛性が高くなり過ぎることを抑制することができる。したがって、外側ショルダー陸部4bの接地長を長くする、即ち、外側ショルダー陸部4bの接地面積を大きくすることができる。
【0035】
ところで、周サイプ6及び幅サイプ7の深さW6,W7が、深すぎると、外側ショルダー陸部4bの剛性が低くなり過ぎる場合がある。そこで、周サイプ6の深さW6は、幅サイプ7の深さW7よりも、浅くなっている(図4参照)。これにより、外側ショルダー陸部4bの剛性が低くなり過ぎることを抑制することができる。
【0036】
しかも、幅サイプ7の深さW7が十分に確保されているため、幅サイプ7の踏み込み側及び蹴り出し側がそれぞれ均一の接地圧力で路面に接地する。これにより、幅サイプ7を境にしてタイヤ周方向D3で偏摩耗(所謂、ヒールアンドトウ摩耗)が発生することを抑制することができる。なお、幅サイプ7の深さW7に対する周サイプ6の深さW6の比は、特に限定されないが、例えば、75%~95%であることが好ましく、80%~90%であることがより好ましい。
【0037】
幅サイプ7は、タイヤ幅方向D1の中途部で、周サイプ6と交差している。また、幅サイプ7は、幅が一定であるサイプ部7aと、タイヤ径方向D2の外側に向けて幅を広くする切欠部7bとを備えている。なお、周サイプ6も、幅が一定であるサイプ部6aと、タイヤ径方向D2の外側に向けて幅を広くする切欠部6bとを備えており、ショルダー主溝3bも、タイヤ径方向D2の外側に向けて幅を広くする切欠部3eを備えている。
【0038】
そして、幅サイプ7のサイプ部7aは、ショルダー主溝3bに対して傾斜するように、ショルダー主溝3aに連接されている。これにより、外側ショルダー陸部4bは、幅サイプ7のサイプ部7aがショルダー主溝3bと鋭角θ1で交差する第1角部4fと、幅サイプ7のサイプ部7aが周サイプ6と鋭角θ2で交差する第2角部4gとを備えている。
【0039】
ところで、鋭角である角部4f,4gの剛性は、低くなる。これにより、接地時に、角部4f,4gで滑り等が発生し易いため、角部4f,4gは、摩耗し易い。そこで、幅サイプ7の切欠部7bは、第1及び第2角部4f,4gに配置されている。具体的には、幅サイプ7の切欠部7bは、サイプ部7aの第1周方向側D31のエッジに沿って延び、第1及び第2角部4f,4gに亘って配置されている。
【0040】
これにより、接地時に、第1及び第2角部4f,4gで滑り等が発生することを抑制することができるため、第1及び第2角部4f,4gが摩耗し過ぎることを抑制することができる。したがって、第1及び第2角部4f,4gの位置において、幅サイプ7を境にしてヒールアンドトウ摩耗が発生することを抑制することができる。
【0041】
しかも、幅サイプ7の切欠部7bのトレッド面2aにおける幅W8は、ショルダー主溝3bに向けて、広くなっている。これにより、切欠部7bのエッジがショルダー主溝3bと交差する角度θ3は、第1角部4fの鋭角θ1よりも大きくなる。したがって、幅サイプ7がショルダー主溝3bに連接される部分において、剛性が低下することを抑制することができるため、幅サイプ7を境にしてヒールアンドトウ摩耗が発生することを抑制することができる。
【0042】
同様に、切欠部7bのエッジが周サイプ6と交差する角度θ4は、第2角部4gの鋭角θ2よりも大きくなる。したがって、幅サイプ7が周サイプ6と交差する部分において、剛性が低下することを抑制することができるため、幅サイプ7を境にしてヒールアンドトウ摩耗が発生することを抑制することができる。
【0043】
また、図4及び図5に示すように、幅サイプ7の切欠部7bの深さW9は、ショルダー主溝3bに向けて、深くなっている。そして、幅サイプ7の切欠部7bによる空体積V1は、ショルダー主溝3bに向けて、大きくなっている。これにより、切欠部7bの内部の水がショルダー主溝3bに向けて流れ易くなる。したがって、切欠部7bからショルダー主溝3bに向けて、効率的に排水することができるため、排水性能を向上させることができる。
【0044】
なお、切欠部7bの深さW9は、ショルダー主溝3bに向けて、連続的に深くなっていてもよく、また、断続的に深くなっていてもよい。同様に、切欠部7bによる空体積V1は、ショルダー主溝3bに向けて、連続的に大きくなっていてもよく、また、断続的に大きくなっていてもよい。
【0045】
また、切欠部7bは、トレッド面2aに対して傾斜する傾斜面7cを備えている。そして、傾斜面7cがトレッド面2aと交差する角度(ゴムが存在する側、即ち、鈍角側の角度)θ5は、タイヤ幅方向D1の外側、即ち、車両外側D12に向けて大きくなっている。これにより、ショルダー陸部4bの剛性は、タイヤ幅方向D1の外側、即ち、車両外側D12に向けて、高くなる。したがって、旋回時の操縦安定性能を向上させることができる。
【0046】
なお、傾斜面7cがトレッド面2aと交差する角度θ5は、タイヤ幅方向D1の外側に向けて、連続的に大きくなっていてもよく、また、断続的に大きくなっていてもよい。本実施形態においては、当該角度θ5は、周サイプ6よりも車両外側D12の傾斜面7cで一定(例えば、127°~137°)となっており、また、周サイプ6よりも車両内側D11の傾斜面7cで一定(例えば、117°~127°)となっている。
【0047】
また、詳細な説明はしないが、図1に示すように、車両外側D12のクオーター陸部4dは、タイヤ周方向D3に沿って延びる周サイプ6と、周サイプ6と交差するように延びる複数の幅サイプ7とを備えている。そして、車両外側D12のクオーター陸部4dにおいては、周サイプ6の深さW6は、複数の幅サイプ7の深さW7よりも、浅くなっている。
【0048】
以上より、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向D3に沿って延びる複数の主溝3a~3dと、前記複数の主溝3a~3d及び接地端2d,2eによって区画される複数の陸部4a~4eと、を備え、前記複数の陸部4a~4eの少なくとも一つ4b,4dは、タイヤ周方向D3に沿って延びる周サイプ6と、前記周サイプ6と交差するように延びる複数の幅サイプ7と、を備え、前記周サイプ6の深さW6は、前記複数の幅サイプ7の深さW7よりも、浅い。
【0049】
斯かる構成によれば、周サイプ6が、タイヤ周方向D3に沿って延びており、複数の幅サイプ7が、周サイプ6と交差するように延びている。これにより、陸部4b,4dの剛性が高くなり過ぎることを抑制することができるため、当該陸部4b,4dの接地長を長くする、即ち、当該陸部4b,4dの接地面積を大きくすることができる。
【0050】
また、周サイプ6の深さW6が、複数の幅サイプ7の深さW7よりも、浅くなっているため、陸部4bの剛性が低くなり過ぎることを抑制することができる。しかも、幅サイプ7の深さW7が十分に確保されているため、幅サイプ7を境にしてタイヤ周方向D3で偏摩耗が発生することを抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記幅サイプ7は、幅が一定であるサイプ部7aと、タイヤ径方向D2外側に向けて幅を広くする切欠部7bと、を備え、前記サイプ部7aは、前記主溝3bに対して傾斜するように、前記主溝3bに連接され、前記切欠部7bは、前記サイプ部7aが前記主溝3bと鋭角で交差する角部4fに、配置される、という構成である。
【0052】
斯かる構成によれば、接地時に、角部4fが滑ることによって、角部4fが摩耗し易いことに対して、切欠部7bは、角部4fに配置されている。これにより、接地時に、角部4fが滑ることを抑制することができるため、角部4fが摩耗し過ぎることを抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記切欠部7bのトレッド面2aにおける幅W8は、前記主溝3bに向けて、広い、という構成である。
【0054】
斯かる構成によれば、切欠部7bのトレッド面2aにおける幅W8が、主溝3bに向けて広くなっているため、切欠部7bのエッジが主溝3bと交差する角度θ3は、角部4fの角度θ1よりも大きくなる。これにより、幅サイプ7が主溝3bに連接される部分において、剛性が低下することを抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記切欠部7bによる空体積V1は、前記主溝3bに向けて、大きい、という構成である。
【0056】
斯かる構成によれば、切欠部7bによる空体積V1が、主溝3bに向けて大きくなっているため、切欠部7bの内部の水が主溝3bに向けて流れ易くなる。これにより、切欠部7bから主溝3bに向けて、効率的に排水することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記複数の陸部4a~4eの少なくとも一つ4b,4dは、タイヤ幅方向D1の最も外側に配置される陸部4bを含み、前記切欠部7bは、トレッド面2aに対して傾斜する傾斜面7cを備え、前記傾斜面7cが前記トレッド面2aと交差する角度θ5は、タイヤ幅方向D1の外側に向けて、大きい、という構成である。
【0058】
斯かる構成によれば、傾斜面7cがトレッド面2aと交差する角度θ5が、タイヤ幅方向D1の外側に向けて大きくなっている。これにより、タイヤ幅方向D1の最も外側に配置される陸部4bの剛性は、タイヤ幅方向D1の外側に向けて、高くなる。
【0059】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記複数の陸部4a~4eの少なくとも一つ4b,4dは、タイヤ幅方向D1の寸法W2が最も大きい陸部4bを含む、という構成である。
【0060】
斯かる構成によれば、タイヤ幅方向D1の寸法W2が最も大きい陸部4bは、剛性が高くなり易い。それに対して、周サイプ6が、タイヤ周方向D3に沿って延びており、複数の幅サイプ7が、周サイプ6と交差するように延びている。これにより、陸部4bの剛性が高くなり過ぎることを抑制することができるため、当該陸部4bの接地長を長くする、即ち、当該陸部4bの接地面積を大きくすることができる。
【0061】
なお、空気入りタイヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0062】
(1)上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、二つの陸部(具体的には、全体がタイヤ赤道面S1よりも車両外側D12に配置される全ての陸部)4b,4dが、周サイプ6と、周サイプ6と交差し、周サイプ6よりも深い複数の幅サイプ7とを備えている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。少なくとも一つの陸部4a~4eが、周サイプ6と、周サイプ6と交差し、周サイプ6よりも深い複数の幅サイプ7とを備えている、という構成であればよい。
【0063】
(2)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、幅サイプ7の切欠部7bは、サイプ部7aが主溝3bと鋭角θ1で交差する角部4fに、配置される、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、幅サイプ7の切欠部7bは、サイプ部7aが主溝3bと鈍角で交差する角部に、配置される、という構成でもよい。また、例えば、幅サイプ7は、切欠部7bを備えていない、という構成でもよい。
【0064】
(3)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、幅サイプ7の切欠部7bのトレッド面2aにおける幅W8は、主溝3bに向けて広い、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、幅サイプ7の切欠部7bのトレッド面2aにおける幅W8は、主溝3bに向けて狭い、という構成でもよく、また、一定である、という構成でもよい。
【0065】
(4)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、幅サイプ7の切欠部7bによる空体積V1は、主溝3bに向けて大きい、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、幅サイプ7の切欠部7bによる空体積V1は、主溝3bに向けて小さい、という構成でもよく、また、一定である、という構成でもよい。
【0066】
(5)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、傾斜面7cがトレッド面2aと交差する角度θ5は、タイヤ幅方向D1の外側に向けて、大きい、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、傾斜面7cがトレッド面2aと交差する角度θ5は、タイヤ幅方向D1の外側に向けて、小さい、という構成でもよく、一定である、という構成でもよい。
【0067】
(6)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1は、車両への装着向きを指定されたタイヤである、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、空気入りタイヤ1は、車両への装着向きを指定されていないタイヤである、という構成でもよい。具体的には、トレッドパターンは、タイヤ赤道線上の任意点に対して点対称となるトレッドパターンでもよく、また、タイヤ赤道線に対して線対称となるトレッドパターンでもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…空気入りタイヤ、1a…ビード部、1b…サイドウォール部、1c…カーカス層、1d…インナーライナ層、1e…サイドウォールゴム、2…トレッド部、2a…トレッド面、2b…トレッドゴム、2c…ベルト層、2d…接地端、2e…接地端、3a…ショルダー主溝、3b…ショルダー主溝、3c…センター主溝、3d…センター主溝、3e…切欠部、4a…ショルダー陸部、4b…ショルダー陸部、4c…クオーター陸部(ミドル陸部)、4d…クオーター陸部(ミドル陸部)、4e…センター陸部(ミドル陸部)、4f…第1角部、4g…第2角部、5…陸溝、6…周サイプ、6a…サイプ部、6b…切欠部、7…幅サイプ、7a…サイプ部、7b…切欠部、7c…傾斜面、20…リム、D1…タイヤ幅方向、D2…タイヤ径方向、D3…タイヤ周方向、D11…第1幅方向側(車両内側)、D12…第2幅方向側(車両外側)、D31…第1周方向側、D32…第2周方向側、S1…タイヤ赤道面
図1
図2
図3
図4
図5