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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】鋼製セル構造物およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
E02B3/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018128040
(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公開番号】P2020007744
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】509200613
【氏名又は名称】株式会社横河NSエンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】竹内 大輔
(72)【発明者】
【氏名】関口 修史
(72)【発明者】
【氏名】西 遥輝
(72)【発明者】
【氏名】中村 直志
(72)【発明者】
【氏名】松原 朋裕
(72)【発明者】
【氏名】笠原 宏紹
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】実公昭48-026806(JP,Y1)
【文献】特開2001-152441(JP,A)
【文献】特開2013-119696(JP,A)
【文献】実開昭59-089120(JP,U)
【文献】特開昭50-006118(JP,A)
【文献】実開昭55-118021(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に中詰材を充填してなる円筒状の鋼製セル構造物において、前記鋼製セルを水平断面が弧状のアーク部材と前記アーク部材どうしを連結する継手部材とで構成し、前記アーク部材として前記鋼製セル構造物の前面側および背面側の外殻を構成する外部アーク部材と前記鋼製セル構造物の内部を仕切る内部アーク部材とを用い、前記前面側と背面側の外部アーク部材と前記内部アーク部材とで形成される円筒状の鋼製セルが、隣り合う円筒状の鋼製セルどうしの間で互いにオーバーラップしており、オーバーラップさせた部分が隣り合う円筒状の鋼製セルを構成する隣り合う内部アーク部材に挟まれた閉空間となっており、前記外部アーク部材および前記内部アーク部材は、主体となる前記弧状鋼板と、該弧状鋼板を補剛する補剛リブと、該弧状鋼板の両端に設けた継手部とを構成要素とすることを特徴とする鋼製セル構造物。
【請求項2】
請求項1記載の鋼製セル構造物において、前記継手部材は、水平断面を十字状とした鋼材の各端部に継手部を形成した継手部材であることを特徴とする鋼製セル構造物。
【請求項3】
請求項1または2記載の鋼製セル構造物の施工方法であって、
前記鋼製セルの設置位置に前記継手部材を複数先行して設置固定する工程と、
前記継手部材間に前記外部アーク部材および前記内部アーク部材を順次連結しながら設置する工程と、
前記外部アーク部材および前記内部アーク部材で区画された空間に、順次中詰材を充填する工程と、
を順次繰り返すことを特徴とする鋼製セル構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、護岸、ドルフィン、係船岸などの海洋・港湾構造物あるいは砂防ダムなどの陸上構造物に使用される鋼製セル構造物およびその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な鋼製セルは、主に鋼板セルと鋼矢板セルとがあり、鋼板セルは円筒体のセルとそれをつなぐ円弧状のアークからなる鋼製外殻に土砂を中詰めして構成される壁体で、あらかじめ一体化されたセルを海底の地盤中に打ち込んで中詰めする根入れ式鋼板セルと、海底地盤状にセルを設置して中詰めを施す置き鋼板セルがあり、岸壁や護岸構造に用いられている。その他、砂防ダムなどにも用いられている。また、鋼矢板セルは、直線型鋼矢板を円形または円弧状に組立てて外殻を構成するものである。
【0003】
中詰め土圧に対しては、外殻の鋼板が引っ張り力で抵抗する合理的な構造であるため、経済性の高い構造であるが、セル体が非常に大きいため、分割された部材からなる鋼製セルに関する発明が種々なされており、例えば特許文献1~5に開示された発明がある。
【0004】
特許文献1には、複数の鋼製部材を周方向に連設させた鋼製セルが記載されている。材軸方向に連結するための縦継部が各々に掲載された5枚以上の鋼製部材を備え、その鋼製部材は、周方向で所定の箇所に連続して設けられており、各々の縦継部が材軸方向の位置をすべて異ならせて配置されている。
【0005】
特許文献2には、上下に分割された鋼板セル・アークの設置工法が記載されている。第1セルを形成する筒状の第1銅板を胴軸心方向に沿って地盤中に打ち込み、第1セルの上方から第2セルを吊り下ろし、第1銅板の上端部で内周面または外周面に取り付けられた接続部材に、第2セルを形成する筒状の第2銅板を嵌め合わせて、第1セル上に第2セルを接続し、第1銅板の上端部と第2銅板の下端部とを周方向溶接により接合する。
【0006】
特許文献3には、円筒状鋼板セルが、円筒軸方向に延長する分割を有する複数の鋼板セル構成ユニットと、隣り合う鋼板セル構成ユニットの対向部分に設けられて円筒軸方向に延長している嵌合継手とにより構成されている。
【0007】
特許文献4には、複数枚の鋼矢板セグメントの端部を集合して連結し鋼矢板セル構造物を構築するための鋼矢板セル構造物用のセグメント継手が記載されている。
【0008】
特許文献5には、ガイドパイルとエレメントセルからなる多角形筒状セルが記載されている。左右の側面に継手を有するガイドパイルが、構築するセルの外周に沿って所定の間隔で水底地盤に打設され、側面に継手を備えた幅広の平板状鋼板からなるエレメントセルがガイドパネル間に継手を係合されて水底地盤に打設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-061780号公報
【文献】特許第5769608号公報
【文献】実開昭60-091623号公報
【文献】特開2001-152441号公報
【文献】特開平10-054018号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】港湾の施設の技術上の基準・同解説、日本社団法人日本港湾協会、平成11年4月、下巻、pp.718、726、729
【文献】才村幸生・森本清洋・高瀬幸紀、根入れ式鋼板セル中詰土の現場計測結果、土木学会第36回年次学術講演会講演概要集、第3部、pp.562-563、1981
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の鋼製セルは、従来の鋼製セルは、海底に打込む前に円筒に組み立てるため、大規模な製作ヤードが必要であり、運搬や打込みには大型の建設重機を使用しなければならない。セル体は求められる壁高さに応じて直径も非常に大きくなるため、これを組み立て、ストックしておくために広大な敷地と巨大な重機が必要になる欠点も持っている。
【0012】
施工時の波浪などに対しては、鋼殻構造のみでは抵抗できない薄肉鋼殻であるため、安定性を確保するためには円形セル鋼殻を地中に打ち込むあるいは埋め込んで、早期に中詰めをすることが必要である。ただし、円形セルは巨大なため、中詰めを一気にすることも困難である。
【0013】
特許文献1~5には、鋼製セルの製作過程あるいは運搬における種々の分割形態が示されているが、現場に施工される鋼製セル構造物の形態としては円筒状の鋼製セルと鋼製セルどうしをつなぐアークとから構成され、特に鋼製セル内部の中詰めにおいては一回の中詰め量が膨大で、鋼製セルが中詰め材から受ける土圧も非常に大きなものとなる。
【0014】
非特許文献1には、鋼製セルの肉厚はセル殻に作用する最大水平方向張力などに基づいて決定すべきことが述べられており、一方、アークに生じる最大水平方向張力の算定において、セルの中心間隔とセル直径の比が1.5以下なら、アーク部の中詰土圧係数はセル本体の1/2とすればよいことが述べられている。
【0015】
本発明は、上述のような背景のもと、建設重機を省力化して、製作ヤードを不要とし、経済性および施工性に優れ、構造的にも安定した鋼製セル構造物、および鋼製セル構造物の施工方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、内部に中詰材を充填してなる円筒状の鋼製セル構造物において、前記鋼製セルを水平断面が弧状のアーク部材と前記アーク部材どうしを連結する継手部材とで構成し、前記アーク部材として前記鋼製セル構造物の前面側および背面側の外殻を構成する外部アーク部材と前記鋼製セル構造物の内部を仕切る内部アーク部材とを用い、前記前面側と背面側の外部アーク部材と前記内部アーク部材とで形成される円筒状の鋼製セルが、隣り合う円筒状の鋼板セルどうしの間で互いにオーバーラップしており、オーバーラップさせた部分が隣り合う円筒状の鋼製セルを構成する隣り合う内部アーク部材に挟まれた閉空間となっていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の鋼製セル構造物では、巨大なセルを作り上げるために、外部アーク部材と内部アーク部材を組み合せ、弧状のアーク部材と継手部材だけで円筒状の鋼製セルを構成し、この鋼製セルを隣り合う円筒状の鋼製セルについてオーバーラップさせた形態とし、かつ内部が内部アーク部材で仕切られることで円筒に作用する土圧を低減する構造となっている。
【0018】
すなわち、従来のセル構造物においても、上述した非特許文献1の記載にあるように、円筒状のセル本体に対し、アーク部については、セル本体の中心間隔とセル直径の比が1.5以下であれば、中詰土圧係数はセル本体の1/2とすればよいとされているが、本発明の構造においてはオーバーラップさせた部分について円筒の内部が内部アーク部材で仕切られるため、円筒部分に作用する土圧自体が低減されることになる。
【0019】
また、アーク部材と継手部材だけであれば、製作に必要な重機もそれほど大きくなくて済むうえ、アーク部材は段積も可能なのでストックに広大な敷地を必要とせず、輸送もしやすい。さらに、従来行なっていた溶接作業が不要となり、急速施工が可能である。
【0020】
外部アーク部材および内部アーク部材は、弧状鋼板を主体とするものであるが、従来の鋼製セルあるいはアークと同様に補剛リブを設け、構造的に安定した経済的な構造とすることができる。また、従来のアークと同様、弧状鋼板の両端に継手部を形成しておくことで、アーク部材どうしを連結する継手部材に直接連結することができる。
【0021】
本発明の鋼製セル構造物では、継手部材を介して、外部アーク部材および内部アーク部材を順次連結して行き、内部に中詰め材を充填することによって、護岸、岸壁などとしての鋼板セル構造物が構築される。
【0022】
このとき、外部アーク部材および内部アーク部材に囲まれた部分に、順次、中詰め材を充填しながら、次のアーク部材を連結して行くことで、構造的に常に安定した状態で施工を進めることができる。
【0023】
本発明の鋼製セル構造物の施工方法は、上述のような本発明の鋼製セル構造物の施工手順に関するものであり、
(1)鋼製セルの設置位置に継手部材を複数先行して設置固定する工程と、
(2)継手部材間に外部アーク部材および内部アーク部材を順次連結しながら設置する工程と、
(3)外部アーク部材および内部アーク部材で区画された空間に、順次中詰材を充填する工程と、
を順次繰り返すことを特徴とするものである。
【0024】
施工においては、継手部材がアーク部材に対するガイド部材の役目をするため、継手部材を先に根入れし、もしくは置いた状態で、弧長を調整した各アーク部材を順次差し込んでいけばよい。
【0025】
(3)の外部アーク部材および内部アーク部材で区画された空間に、順次中詰材を充填する工程に関しては、鋼板セル構造物の一方向に、順次、充填する方法と、円筒状の鋼製セルをオーバーラップさせた部分の内部アーク部材で挟まれた閉空間に先行して中詰材を充填して小島部を形成し、その後に両側の小島部で挟まれる空間に充填する方法とが考えられる。
【0026】
前者の場合、一方向に順次充填していくため工程が煩雑にならないという利点があり、後者のオーバーラップさせた部分に先行して充填する場合、小島部の充填は中詰材の量が少ないため、早期に構造体の安定が図れるという利点がある。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、以上のような構成からなり、次のような効果が得られる。
【0028】
(1)主要な構造体は外部アーク部材および内部アーク部材と継手部材のみからなるため、各部材を段積することができ、ストックや運搬がしやすくなる。アーク部材だけであれば、鋼製セルを構築する際の建設重機もそれほど大きくなくて済む。
【0029】
(2)アーク部材と継手部材をそのまま海底地盤などに設置することができるため、従来のようにあらかじめ組立てをする必要がなく、大規模な製作ヤードが不要になる。また、大組立て時に行っていた溶接作業がなくなり、溶接する際の品質管理も不要となる。これらの効果は、作業の省力化に繋がり、建設コストが抑制され、結果的にトータルコストを抑制することができる。
【0030】
(3)ガイド部材の役目となる継手部材を先に根入れ、もしくは置いて、弧長を調整して各アーク部材を順次差し込んでいくだけで鋼製セル構造物を構築することができ、構造的に安定した鋼製セルを従来よりも容易に構築することが可能となる。
【0031】
(4)外部アーク部材で構成される外殻内に内部アーク部分で囲まれた小島部があることで、小島部間に挟まれる中詰め土が拘束されるため、外部アークを押し出す土圧が軽減され、その効果でアーク板厚が低減でき、経済性を高めることができる。
【0032】
(5)鋼板セルの壁のせん断抵抗性は、小島部に内部アーク部材が2枚あることから、通常の鋼製セル構造よりも大きくなる。
【0033】
(6)内部アーク部分で挟まれた小島部を先に中詰めする場合、小島部に一度に必要とされる土量は少なく、また、小島部を先に中詰めした時点で早期に安定が得られるメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の鋼製セルの構造を概略的に示したものであり、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
図2】(a)、(b)は本発明で用いる継手部材の一実施形態を示す平面図である。
図3】(a)、(b)はそれぞれ本発明で用いる継手部材の他の実施形態を示す平面図である。
図4】本発明の鋼製セル構造物の施工方法の一実施形態における施工手順を示す斜視図である。
図5図4に続く施工手順を示す斜視図である。
図6図5に続く施工手順を示す斜視図である。
図7図6に続く施工手順を示す斜視図である。
図8図7に続く施工手順を示す斜視図である。
図9図8に続く施工手順を示す斜視図である。
図10図9に続く施工手順を示す斜視図である。
図11図10に続く施工手順を示す斜視図である。
図12図11に続く施工手順を示す斜視図である。
図13図12に続く施工手順を示す斜視図である。
図14図13に続く施工手順を示す斜視図である。
図15図14に続く施工手順を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の具体的な実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明における鋼板セル構造物1の一実施形態を示したものであり、(a)は概要図、(b)は平面図である。
【0036】
本実施形態において、鋼板セル構造物1は、前面側および背面側の外殻を構成する外部アーク部材2と、内部を仕切る内部アーク部材3と、これら外部アーク部材2および内部アーク部材3どうしを連結する継手部材4と、内部に充填した中詰材5を主要な構成要素としている。
【0037】
外部アーク部材2と、内部アーク部材3は、基本的には従来の鋼板セル構造物におけるアーク部材と同様の弧状の鋼板からなる構造部材であり、アークの内側に縦方向および周方向の補剛リブを設けたものなどが用いられる。
【0038】
本実施形態では、図1に示すように、鋼板セル構造物1の前面側と背面側の2枚の外部アーク部材2と、その円弧に連続する円弧を描く2枚の内側アーク部材3とが4つの継手部材4を介して円筒状のセルを形成し、かつ隣り合う円筒状のセルどうしが内側アーク部材3部分でオーバーラップし、オーバーラップした部分に内側アーク部材3で挟まれる平面形状が紡錘状の小断面の閉空間を形成し、両側の紡錘状の小断面の閉空間に挟まれる部分に平断面が鼓状の大断面の閉空間を形成している。
【0039】
そのため、各継手部材4は4つアーク部材の端部を連結する必要があり、図1の実施形態では継手部材4として十字継手4aを用いている。
【0040】
セル内に中詰材5を充填することで、紡錘状の小断面の閉空間が小島部5aとなり、間に鼓状の一般部5bを有する鋼板セル構造物1が構築される。
【0041】
このような構成において、鋼板セル構造物1の内部が内部アーク部材2で仕切られることで、前述のようにセルの円筒に作用する土圧を低減する構造となっている。
【0042】
図2(a)、(b)は、それぞれ本発明で用いる継手部材4の一実施形態を示したものである。図2(a)に示した十字継手4aは、例えば直線鋼矢板を使用したものでもよく、1つの直線鋼矢板を縦に分割し、それをもう1つの直線鋼矢板に対して、交差するように溶接することで製造することができる。
【0043】
図に示すように直線鋼矢板を用いた十字継手4aであれば、端部が一般的なC字型の継手形状となっており、内部アーク部材2と外部アーク部材3の端部を十字継手4aと同様のC字型の形状としておけば、十字継手4aの端部に内部アーク部材2もしくは外部アーク部材3の端部を嵌め込むだけで連結することができる。
【0044】
図2(a)に示したアーク兼用継手4bは、円弧状部材12に半切の直線鋼矢板11を溶接したものである。図に示すように円弧状部材12を用いた継手であれば、継手をアークの一部とすることができる。
【0045】
図3(a)、(b)はそれぞれ本発明で用いる継手部材の他の実施形態を示したものである。
図3(a)に示した継手部材4cは、鋼管13に約90度ごと半切の直線鋼矢板11を溶接したものである。
【0046】
図3(b)に示した継手部材4dは、鋼管13に約90度ごとアーク継手を溶接したもの、すなわちL字部材を向かい合わせて隙間を作り、その中に内部アーク部材2と外部アーク部材3の端部に形成したT字の継手を嵌合させ、隙間にモルタルを充填するようにしたものである。
【0047】
図4図15は、本発明の鋼板セル構造物の施工方法の一実施形態における施工手順を示したものである。
【0048】
まず、1つ目の鋼板セル1aを構築するために、整地した海底地盤に波浪抵抗の少ない(波の流体力の当たる面積が少ない)の十字継手4aを4か所に打設する(図4参照)。ここでは継手部材として十字継手4aを示しているが、複数継手部材を組んだフレームを沈設、着底してもよい。また、置きセルの場合は十字継手4aだけ根入れすればよい。
【0049】
十字継手4aを設置した後、十字継手4aの間に2つの外部アーク部材2と2つの内部アーク部材3を順次打設して行き(図5参照)、1つの円筒状の鋼板セル1aの外殻を構築する(図6参照)。
【0050】
次に、2つ目の鋼板セル1aを構築するため、十字継手4aを2か所に打設する(図7参照)。そして、前の鋼板セル1aを構築する時に打設した2か所の十字継手4aと合わせて4か所の十字継手4aの間に2つの外部アーク部材2と2つの内部アーク部材3を打設する。
【0051】
2つの内部アーク部材2のうち1つは、前に構築した鋼板セル1の内側に打設することになる(図8参照)。図8のように内部アーク部材2で囲まれて形成された小断面の閉空間を介して、隣接する2つの鋼板セル1aが重なって構築されることになる。
【0052】
2つめの鋼板セル1aの外殻まで構築した後、1つ目の鋼板セル1aを中詰めする(図9参照)。内部アーク部材2で囲まれた小島部5aから先行して中詰めする手順とした場合、構造的にも早期に安定し、一度に大量の土を用意する必要がなくなり、作業性も向上する。
【0053】
1つ目の鋼板セル1に中詰めした後、3つ目の鋼板セル1を構築するための十字継手4aを2つ打設し(図10参照)、その後外部アーク部材2と内部アーク部材3を打設して、3つ目の鋼板セル1aの外殻を構築する(図11参照)。
【0054】
その後、2つ目の鋼板セル1aの内部を中詰めする(図12参照)。それ以降は同じ作業の繰り返しであり、複数の鋼板セル1aを重ねて構築して行く(図13図15参照)。
【0055】
これとは異なる施工手順として、十字継手4aを施工した後、内部アーク2枚を先行して打設して、2枚の内部アーク部材3で囲まれた小島部5aを中詰めすることで、小さな安定部分を作り出し、それを基準にして、外部アーク部材2を順次嵌め込んで、その中に土を中詰めしてもよい。
【0056】
なお、施工手順は、波向き、既設ケーソンとの取り合いなどを考慮して検討する必要がある。
【符号の説明】
【0057】
1…鋼板セル構造物、1a…鋼板セル(単位)、2…外部アーク部材、3…内部アーク部材、4…継手部材、4a…十字継手、4b…アーク兼用継手、4c…鋼管利用継手部材、4c…鋼管利用継手部材、5…中詰材、5a…小島部、5b…一般部、
10…直線鋼矢板、11…半切の直線鋼矢板、12…円弧状部材、13…鋼管、14…L字部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15