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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】自動予熱装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 37/00 20060101AFI20220822BHJP
   B23K 9/235 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
B23K37/00 A
B23K9/235 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018146179
(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公開番号】P2020019052
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】中島 一希
(72)【発明者】
【氏名】早乙女 辰也
(72)【発明者】
【氏名】狼 嘉彰
(72)【発明者】
【氏名】日比谷 孟俊
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-015780(JP,A)
【文献】特開平09-019770(JP,A)
【文献】特開昭54-028243(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第03910280(DE,A1)
【文献】特開平09-141438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00-10/02,31/00,37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に沿って延設される被溶接部を有する被溶接物と、前記被溶接物の側方において前記被溶接部の延設方向に沿って移動するとともに、前記被溶接部の溶接を行う溶接装置と、ともに用いられる自動予熱装置であって、
前記被溶接物の側方において前記溶接装置の前方に配置され、前記被溶接物に対して前記被溶接部の延設方向に沿って移動可能な予熱用台車と、
前記予熱用台車に設けられ、前記被溶接物を加熱可能なバーナーと、
前記予熱用台車に設けられ、前記バーナーを支持し、駆動状態に応じて前記バーナーを前記被溶接物に対して移動させる駆動部材と、
前記予熱用台車の前記被溶接物に対する移動及び前記駆動部材の駆動状態を制御する制御装置であって、前記駆動部材の駆動状態を制御することにより、前記被溶接部の前記延設方向に対して交差する方向について前記被溶接部を含む移動範囲で前記バーナーを移動させるとともに、前記被溶接部の前記延設方向に対して交差する前記方向についての前記バーナーの前記移動範囲を調整することにより、前記バーナーによる前記被溶接物に対する予熱幅を調整する制御装置と、
を備える自動予熱装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記予熱用台車と前記溶接装置との距離と前記予熱用台車の移動速度を算出し、前記距離の算出結果と前記移動速度の算出結果に基づいて、前記距離が所定の範囲よりも小さい場合に前記移動速度を加速させ、前記距離が前記所定の範囲よりも大きい場合に前記移動速度を減速させることにより、前記距離が前記所定の範囲内になるように前記移動速度を制御する、
請求項1の自動予熱装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記予熱用台車と前記溶接装置との距離が第1の距離以下であることに基づいて、前記溶接装置の移動速度以上の移動速度で前記予熱用台車を前記被溶接物に対して移動させ、
前記予熱用台車と前記溶接装置との距離が前記第1の距離よりも大きい第2の距離より大きいことに基づいて、前記予熱用台車の前記被溶接物に対する移動を停止させる、
請求項1の自動予熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の被溶接物に対する自動溶接において、被溶接部を溶接の前に予め加熱する自動予熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、溶接装置に対して先行して走行し、被溶接部の予熱を行う自動予熱装置が開示されている。この自動予熱装置は、レール上を走行可能な台車と、台車上に設けられた高周波予熱ヒータを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-19770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような自動予熱装置を用いて建設機械に設けられるブームのような薄板を被溶接物として加熱する場合、被溶接物において予熱による歪みが発生する可能性がある。このため、被溶接物において歪みが発生しないように予熱が行われることが求められている。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、被溶接物において予熱による歪みが発生しにくい自動予熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明のある態様は、所定の方向に沿って延設される被溶接部を有する被溶接物と、前記被溶接物の側方において前記被溶接部の延設方向に沿って移動するとともに、前記被溶接部の溶接を行う溶接装置と、ともに用いられる自動予熱装置であって、前記被溶接物の側方において前記溶接装置の前方に配置され、前記被溶接物に対して前記被溶接部の延設方向に沿って移動可能な予熱用台車と、前記予熱用台車に設けられ、前記被溶接物を加熱可能なバーナーと、前記予熱用台車に設けられ、前記バーナーを支持し、駆動状態に応じて前記バーナーを前記被溶接物に対して移動させる駆動部材と、前記予熱用台車の前記被溶接物に対する移動及び前記駆動部材の駆動状態を制御する制御装置であって、前記駆動部材の駆動状態を制御することにより、前記被溶接部の前記延設方向に対して交差する方向について前記被溶接部を含む移動範囲で前記バーナーを移動させるとともに、前記被溶接部の前記延設方向に対して交差する前記方向についての前記バーナーの前記移動範囲を調整することにより、前記バーナーによる前記被溶接物に対する予熱幅を調整する制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被溶接物において予熱による歪みが発生しにくい自動予熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る自動予熱システムを概略的に示す斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る予熱装置の構成を概略的に示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る予熱装置の制御構成を概略的に示すブロック図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る予熱装置の制御装置のプロセッサが自動予熱処理において行う処理を示すフローチャートである。
図5図5は、第1の実施形態に係る予熱装置による自動予熱において予熱用台車が設定実行位置に移動した状態を概略的に示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る予熱装置による自動予熱において予熱時におけるロボットアーム及びバーナーの動作を概略的に示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る予熱装置による自動予熱において予熱装置が点火待機状態となった様子を上側から視た概略図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る予熱装置による自動予熱において予熱装置が点火待機状態となった様子を概略的に示す斜視図である。
図9図9は、第1の実施形態に係る予熱装置による自動予熱において予熱用台車が予熱開始位置に移動した状態を概略的に示す図である。
図10図10は、第1の実施形態に係る予熱装置の制御装置のプロセッサが協調予熱処理において行う処理を示すフローチャートである。
図11図11は、第1の実施形態に係る予熱装置による自動予熱において予熱装置が予熱開始位置から進行側へ向かって移動する様子を示す概略図である。
図12図12は、第1の実施形態に係る予熱装置による自動予熱において予熱用台車が先行待機位置に移動した状態を上側から視た概略図である。
図13図13は、第1の実施形態に係る予熱装置による自動予熱において予熱用台車が先行待機位置に移動した状態を概略的に示す斜視図である。
図14図14は、第1の実施形態に係る予熱装置による自動予熱において、予熱用台車が先行待機位置に移動した状態で溶接装置による溶接が行われている様子を概略的に示す図である。
図15図15は、第1の実施形態に係る予熱装置による自動予熱において予熱装置の溶接装置との協調予熱が行われている様子を概略的に示す図である。
図16図16は、第1の実施形態に係る予熱装置による自動予熱において溶接装置と予熱装置との間の距離が大きく離れた状態を概略的に示す図である。
図17図17は、第1の実施形態に係る予熱装置による自動予熱において予熱用台車が予熱終了位置に移動した状態を概略的に示す図である。
図18図18は、第1の実施形態に係る予熱装置による自動予熱において予熱用台車が退避位置に移動した状態を概略的に示す図である。
図19図19は、第2の実施形態に係る予熱装置の制御装置のプロセッサが協調予熱処理において行う処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本実施形態の自動溶接システム1を示す図である。自動溶接システム1は、溶接装置2と、予熱装置3と、レール4と、設置部5を備える。予熱装置3は、本実施形態における自動予熱装置である。自動溶接システム1は、例えば、長尺の被溶接物の溶接に用いられる。レール4は、溶接装置2及び予熱装置3のそれぞれが走行可能な走路である。設置部5には、長尺の被溶接物が設置される。本実施形態では、設置部5には、被溶接物として、クレーンなどの建設機械に設けられるブーム6が設置されている。レール4は、ブーム6の側方に設置されている。レール4の延設方向とブーム6の延設方向(長手方向)は一致している。
【0010】
溶接装置2及び予熱装置3は、ブーム6の延設方向に沿って、レール4上を移動可能である。ここで、ブーム6の延設方向のうち、進行側(図1の矢印X1側)と手前側(図1の矢印X2側)とを規定する。進行側及び手前側は、互いに対して反対である。予熱装置3の進行方向と溶接装置2の進行方向は一致している。このため、予熱装置3の移動方向は、溶接装置2の移動方向と一致する。進行側は、予熱装置3及び溶接装置2の移動方向における前方側であり、手前側は、予熱装置3及び溶接装置2の移動方向における後方側である。また、鉛直方向に対して交差し(略直交し)、かつ、ブーム6の延設方向(ブーム6の長手方向)に対して交差する(略直交する)方向を、ブーム6の幅方向とする。
【0011】
予熱装置3は、レール4上において、溶接装置2よりも進行側に位置し、溶接装置2に対して先行して走行する。したがって、予熱装置3は、移動方向において、溶接装置2の前方に配置される。
【0012】
溶接装置2は、溶接用台車21と、溶接トーチ22と、溶接用制御装置23と、を備える。溶接用台車21は、レール4上を走行可能である。溶接トーチ22及び溶接用制御装置23は、溶接用台車21上に設置され、溶接用台車21と一緒にレール4上を移動する。溶接トーチ22は、ブーム6の溶接を行う。溶接用制御装置23は、溶接用台車21の走行及び溶接トーチ22の作動を制御する。
【0013】
図2は、予熱装置3の構成を示す図である。また、図3は、予熱装置3の制御構成を示す図である。予熱装置3は、予熱用台車31と、制御装置32と、ロボットアーム34と、バーナー35とを備える。予熱用台車31は、台車モータ33が駆動されることにより、レール4上を移動方向に沿って走行可能である。制御装置32、ロボットアーム34及びバーナー35は、予熱用台車31上に設置され、予熱用台車31と一緒にレール4上を移動する。
【0014】
バーナー35は、例えば、ガスバーナーである。バーナー35は、ロボットアーム34に固定される。バーナー35は、燃焼ガスが供給された状態で作業者による点火作業が行われることにより、点火される。また、バーナー35は、点火した状態で燃焼ガスの供給が停止されることにより、消火される。
【0015】
予熱装置3には、遮断弁36が設けられている。遮断弁36は、バーナー35への燃焼ガスの供給を制御する制御弁であり、バーナー35への燃焼ガスの供給を遮断可能である。遮断弁36は、例えば、空気圧によって駆動される。遮断弁36は、例えば、予熱用台車31上に設置される。遮断弁36が閉じた状態では、バーナー35へ燃焼ガスは供給されない。遮断弁36が開いた状態では、バーナー35へ燃焼ガスが供給される。
【0016】
ロボットアーム34は、予熱用台車31上に設置されている。ロボットアーム34は、本実施形態における駆動部材の一例である。ロボットアーム34は、複数のアームと、アームのそれぞれを駆動させる複数のアクチュエータとを備える。ロボットアーム34の先端部には、バーナー35が固定されている。これにより、ロボットアーム34は、バーナー35を支持している。アクチュエータが駆動されることにより、ロボットアーム34が駆動され、ロボットアーム34の先端部に固定されたバーナー35の位置、向き、及び、高さなどが変化する。したがって、ロボットアーム34のアクチュエータのそれぞれの駆動を制御することにより、バーナー35の位置、向き及び高さなどを調整し、バーナー35の動作などを調整することができる。
【0017】
また、予熱装置3には、測距センサ37が設けられている。測距センサ37は、溶接装置2が配置される側を向く状態で、例えば予熱用台車31に取付けられている。測距センサ37は、予熱装置3と溶接装置2との間の距離Dを検出する。測距センサ37は、例えば、レーザー光を発信し、測定対象に反射したレーザー光を受信し、測定対象との距離を算出するレーザー式センサである。測距センサ37は、制御装置32と電気的に接続されている。測距センサ37は、検出結果を制御装置32に伝達する。
【0018】
また、予熱装置3には、エッジ検出センサ38が設けられている。エッジ検出センサ38は、設置部5を向く状態で、例えば予熱用台車31に取付けられている。エッジ検出センサ38は、予熱用台車31において、手前側の端部と進行側の端部に1つずつ設けられている。エッジ検出センサ38は、設置部5に設置されたブーム6を検出する。エッジ検出センサ38は、例えば、レーザー光を発信し、測定対象において反射したレーザー光を検出するレーザー式センサである。エッジ検出センサ38は、検出結果を制御装置32に伝達する。
【0019】
また、予熱装置3は、インバータ(インバータユニット)39を備える。インバータ39は、コンバータ回路、コンデンサ及びインバータ回路等を備え、電源(図示しない)から台車モータ33に供給される交流電力の電圧及び周波数を調整する。
【0020】
また、予熱装置3は、操作装置41を備える。操作装置41では、各種の操作入力が行われ、操作入力に応じた電気信号を制御装置32に伝達する。操作装置41は、例えば、タッチパネルを有するタブレット端末である。
【0021】
制御装置32は、プロセッサ44と記憶部45とを備える。プロセッサ44は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application specific integrated circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を備える集積回路又は回路構成(circuitry)等である。プロセッサ44は、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。プロセッサ44での処理は、プロセッサ44又は記憶部45に記憶されたプログラムに従って行われる。また、記憶部45には、プロセッサ44で用いられる処理プログラム、及び、プロセッサ44での演算で用いられるパラメータ、関数及びテーブル等が記憶される。本実施形態では、プロセッサ44によって、予熱装置3を制御する制御装置が構成される。
【0022】
プロセッサ44は、測距センサ37及びエッジ検出センサ38からの検出結果を取得する。プロセッサ44は、測距センサ37での検出結果に基づいて、予熱装置3と溶接装置2との距離Dを算出する。また、プロセッサ44は、エッジ検出センサ38での検出結果に基づいて、予熱装置3のブーム6に対する位置関係を判断する。プロセッサ44は、例えば、エッジ検出センサ38での検出結果に基づいて、予熱用台車31が予熱開始位置A1に移動したか否か、及び、予熱用台車31が予熱終了位置A2に移動したか否か、を判断する。予熱開始位置A1は、予熱装置3の移動方向において例えば、ブーム6の手前側の端部(始端)が配置される位置である。予熱終了位置A2は、例えば、ブーム6の進行側の端部(終端)が配置される位置である。プロセッサ44は、各取得結果及び算出結果に基づいて、台車モータ33、ロボットアーム34、及び、遮断弁36のそれぞれの作動を制御する。
【0023】
また、プロセッサ44は、ロボットアーム34の駆動状態を制御することにより、バーナー35の位置、向き及び高さなどを調整する。また、プロセッサ44は、ブーム6の幅方向についてのバーナー35の移動範囲を調整することにより、バーナー35によるブーム6に対する予熱幅Wを調整する。
【0024】
本実施形態では、プロセッサ44は、インバータ39から台車モータ33に供給される交流電力を調整することにより、台車モータ33の回転速度を制御する。そして、プロセッサ44は、台車モータ33の回転速度を制御することにより、予熱用台車31の移動速度Vを制御する。なお、ある実施形態では、台車モータ33の回転速度を検出するエンコーダが設けられる。そして、プロセッサ44は、エンコーダでの検出結果に基づいて予熱用台車31の移動速度Vを算出し、移動速度Vの算出結果に基づいて台車モータ33の回転速度を制御することにより、予熱用台車31の移動速度Vを制御する。
【0025】
次に、本実施形態の自動溶接システム1の作用及び効果について説明する。
【0026】
本実施形態の自動溶接システム1は、例えば、クレーンなどの建設機械に設けられるブーム6の自動溶接において用いられる。ブーム6の自動溶接では、被溶接部Mにおいて、溶接装置2による溶接に先行して、被溶接部Mを予め加熱する予熱処理が行われる。
【0027】
ブーム6の被溶接部Mは、ブーム6の延設方向に沿って略直線形に形成されている。ブーム6の被溶接部Mは、例えば、ブーム6を形成する2つの構成部材の間の継手部である。ブーム6の被溶接部Mは、例えば、補強板とブーム6の構成部材との間の重ね継手部であってもよい。この場合、補強板は、ブーム6を形成する2つの構成部材の間に取付けられる。
【0028】
ブーム6の自動溶接では、ブーム6が設置部5の所定の位置に設置される。このとき、溶接装置2の溶接用台車21及び予熱装置3の予熱用台車31は、それぞれの初期位置に位置する。溶接用台車21及び予熱用台車31の初期位置は、ブーム6の予熱開始時における予熱用台車31の予熱開始位置A1よりも手前側に位置する。予熱用台車31の予熱開始位置A1は、ブーム6の溶接開始時における溶接用台車21の溶接開始位置と一致する。また、予熱用台車31が初期位置に位置する状態では、遮断弁36は、閉じた状態に制御される。プロセッサ44は、例えば操作装置41において自動予熱を開始する操作入力が行われたことに基づいて、自動予熱処理を開始する。
【0029】
図4は、自動予熱処理において制御装置32のプロセッサ44が行う処理を示すフローチャートである。自動予熱処理は、記憶部45に記憶された自動予熱プログラムに基づいて、実行される。また、図5図18は、自動予熱処理による自動予熱工程を示す図である。
【0030】
自動予熱処理では、プロセッサ44は、まず、図5に示すように、予熱装置3の予熱用台車31を初期位置から進行側へ走行させ、予熱用台車31を設定実行位置に移動させる(S101)。設定実行位置は、ブーム6の予熱開始時における予熱用台車31の予熱開始位置A1よりも進行側に位置する。
【0031】
次に、プロセッサ44は、予熱用台車31が設定実行位置に位置する状態で、バーナー35によるブーム6の予熱時におけるロボットアーム34の動作の設定を行う(S102)。予熱時におけるロボットアーム34の動作の設定は、例えば、ティーチングにより行われる。また、予熱時におけるロボットアーム34の動作設定には、例えば、予熱開始時における被溶接部Mに対するバーナー35の先端位置の設定(センタ合わせ)等が、含まれる。設定結果は、例えば、記憶部45に記憶される。
【0032】
ここで、図6を用いて、予熱時におけるロボットアーム34及びバーナー35の動作を説明する。予熱時には、プロセッサ44は、予熱用台車31を進行側へ移動させるとともに、ロボットアーム34の駆動状態を制御することにより、ロボットアーム34の支持部分を中心として、バーナー35をブーム6に対して繰り返し揺動(スウィング)させる。本実施形態では、予熱時における予熱用台車31の移動速度Vは、インバータ39から台車モータ33への出力が調整されることにより制御される。
【0033】
バーナー35の揺動範囲は、例えば、ティーチングによって設定され、記憶部45に記憶される。バーナー35の揺動範囲は、予め設定され、記憶部45に記憶されていてもよい。バーナー35がブーム6に対して揺動することにより、バーナー35及びバーナー35の先端がブーム6の幅方向について移動する。バーナー35の先端のブーム6の幅方向についての移動範囲(移動幅)は、バーナー35の揺動範囲に応じて変化する。
【0034】
バーナー35が点火した状態で、バーナー35の先端がブーム6の幅方向についての移動を繰り返しながら、予熱用台車31が進行側へ移動することにより、ブーム6は、予熱装置3の移動方向に沿って手前側から進行側に向かって加熱される。ブーム6の幅方向についての予熱幅Wは、バーナー35の先端のブーム6の幅方向についての移動範囲に応じて変化する。ブーム6の幅方向についてのバーナー35の先端の移動範囲は、被溶接部Mを含む。したがって、ブーム6は、被溶接部Mを含む範囲において加熱される。被溶接部Mは、例えば、ブーム6の幅方向について予熱幅Wの中央に位置する。 次に、プロセッサ44は、予熱装置3を点火待機状態にする(S103)。点火待機状態では、バーナー35の先端(放出口)は、作業者による点火操作が実行可能な位置に配置される。点火待機状態では、例えば、図7及び図8に示すように、バーナー35の先端(放出口)は、予熱時の位置よりも鉛直上側に位置し、かつ、ブーム6の真上から離れた位置に配置される。予熱装置3を点火待機状態にする予熱用台車31の位置及びロボットアーム34の駆動状態は、例えば、記憶部45に記憶されている。また、点火待機状態では、プロセッサ44は、遮断弁36を開く。遮断弁36が開いた状態となることにより、バーナー35に燃焼ガスが供給される。
【0035】
点火待機状態において、例えば作業者によってバーナー35の点火作業が行われることにより、バーナー35が点火する。なお、点火待機状態になったこと、又は、点火を行うことを示す操作入力が行われたことに基づいて、自動的にバーナー35が点火されてもよい。
【0036】
バーナー35が点火されると(S104-Yes)、プロセッサ44は、図9に示すように、ロボットアーム34の駆動状態を制御することにより、バーナー35を待機姿勢にする。待機姿勢では、バーナー35は、点火した状態のまま、ブーム6を加熱しない位置に配置される。バーナー35が待機姿勢である状態では、バーナー35の先端(放出口)は、例えば、予熱時の位置よりも鉛直上側に位置し、かつ、ブーム6の真上から離れた位置に位置する。バーナー35を待機姿勢にするロボットアーム34の駆動状態は、例えば、記憶部45に記憶されている。
【0037】
そして、プロセッサ44は、バーナー35を待機姿勢にした状態で、予熱用台車31をブーム6の予熱開始位置A1へ移動させる(S105)。予熱開始位置A1は、例えば、レール4の延設方向においてブーム6の手前側の端部が配置される位置である。プロセッサ44は、例えば、バーナー35が点火されたことを示す操作信号が入力されたことに基づいて、予熱用台車31を予熱開始位置A1へ移動させる。
【0038】
ここで、ブーム6の予熱開始位置A1は、例えば、エッジ検出センサ38での検出結果に基づいて算出される。例えば、予熱用台車31が予熱開始位置A1よりも手前側に位置している場合、プロセッサ44は、予熱用台車31を進行側へ走行させ、エッジ検出センサ38においてブーム6が検出されない状態からブーム6が検出される状態に変化したことに基づいて、予熱装置3が予熱開始位置A1に到達したと判断する。また、例えば、予熱用台車31が予熱開始位置A1よりも進行側に位置している場合、プロセッサ44は、予熱用台車31を手前側へ走行させ、エッジ検出センサ38においてブーム6が検出される状態からブーム6が検出されない状態に変化したことに基づいて、予熱装置3が予熱開始位置A1に到達したと判断する。なお、ブーム6の予熱開始位置A1を示す位置座標などが記憶部45等に予め保存されていてもよい。
【0039】
予熱用台車31がブーム6の予熱開始位置A1に移動すると、プロセッサ44は、溶接装置2との協調予熱処理を開始する(S106)。図10は、本実施形態での協調予熱処理において制御装置32のプロセッサ44が行う処理を示すフローチャートである。協調予熱処理では、プロセッサ44は、ロボットアーム34の駆動を制御することにより、図11に示すように、バーナー35の先端をブーム6における予熱範囲内の真上に移動させ、バーナー35の先端を鉛直下側へ移動させる。そして、プロセッサ44は、予熱用台車31を進行側へ移動させるとともに、予熱時におけるロボットアーム34の前述の動作を実行する(S111)。これにより、バーナー35による加熱が開始され、所定の予熱幅Wの範囲内においてブーム6の予熱が行われる。
【0040】
次に、プロセッサ44は、予熱用台車31が所定の待機位置A3に到達したか否かを判断する(S112)。図12に示すように、待機位置A3は、ブームの予熱開始位置A1よりも進行側に位置する。待機位置A3の座標は、例えば、記憶部45に記憶されている。予熱用台車31が待機位置A3に位置した状態では、溶接装置2の溶接用台車21と予熱装置3の予熱用台車31との距離Dは、後述する基準距離Dth1よりも大きい。
【0041】
図12及び図13に示すように、予熱用台車31が待機位置A3に到達すると(S112-Yes)、プロセッサ44は、予熱用台車31の進行側への移動を停止させるとともに、予熱時におけるロボットアーム34の前述の動作を停止させる(S113)。これにより、予熱装置3の移動速度Vは0になる。そして、プロセッサ44は、バーナー35を前述の待機姿勢にする。
【0042】
予熱用台車31が待機位置A3において待機状態になると、溶接装置2によるブーム6の溶接が開始される。例えば、溶接用制御装置23において溶接装置2の移動を開始させる操作が入力されることにより、溶接装置2によるブーム6の溶接が開始される。溶接装置2によるブーム6の溶接では、溶接装置2は、ブーム6の被溶接部Mの溶接を行いながら、初期位置から進行側へ向かってレール4上を移動する。これにより、ブーム6の被溶接部Mが、予熱開始位置A1から進行側へ向かって順次溶接される。溶接装置2の移動速度は、一定の速度V1に制御される。次に、プロセッサ44は、溶接装置2と予熱装置3との間の距離Dが基準距離Dth1以下であるか否かを判断する(S114)。基準距離Dth1は、例えば、協調予熱に適した、溶接装置2と予熱装置3との間の距離である。基準距離Dth1は、例えば、記憶部45に記憶されている。
【0043】
距離Dが基準距離Dth1より大きい場合(S114-No)、プロセッサ44は、予熱用台車31の移動が停止した状態を維持し、予熱用台車31を待機位置A3で待機させる。
【0044】
図14に示すように、距離Dが基準距離Dth1以下である場合(S114-Yes)、プロセッサ44は、予熱用台車31を進行側へ移動させるとともに、予熱時におけるロボットアーム34の前述の動作を実行する(S115)。これにより、図15に示すように、溶接装置2及び予熱装置3のそれぞれが進行側へ走行し、溶接装置2による溶接及び予熱装置3による加熱が同時に行われる。予熱装置3は、溶接装置2に対して先行して走行する。このため、ブーム6の被溶接部Mでは、予熱装置3の加熱によって予熱が行われた状態で、溶接装置2による被溶接部Mの溶接が行われる。プロセッサ44は、予熱装置3の移動速度Vを、例えば、溶接装置2の移動速度である速度V1に設定する。速度V1は、例えば、記憶部45に記憶されている。
【0045】
次に、プロセッサ44は、距離Dの値に応じて、予熱装置3の移動速度Vを制御する。距離Dが閾値Dth2よりも小さい場合(S116-Yes)、プロセッサ44は、予熱装置3を加速させる。閾値Dth2は、基準距離Dth1よりも小さい。プロセッサ44は、例えば、予熱装置3の移動速度Vを速度V1よりも大きい速度V2にする(S117)。これにより、予熱装置3の移動速度Vが、溶接装置2の移動速度よりも大きくなる。
【0046】
距離Dが閾値Dth3よりも大きく(S118-Yes)、かつ、閾値Dth4以下である場合(S120-No)、プロセッサ44は、予熱装置3を減速させる。閾値Dth3は、基準距離Dth1よりも大きい。また、閾値Dth4は、閾値Dth3よりも大きい。プロセッサ44は、予熱装置3の移動速度Vを、速度V1よりも小さい速度V3にする(S121)。
【0047】
距離Dが閾値Dth2以上で(S116-No)、かつ、距離Dが閾値Dth3以下である場合(S118-No)、プロセッサ44は、予熱装置3の移動速度Vを速度V1に維持する(S119)。
【0048】
また、図16に示すように、距離Dが閾値Dth4よりも大きい場合(S120-Yes)、処理はS113に戻り、プロセッサ44は、予熱用台車31の進行側への移動を停止させるとともに、予熱時におけるロボットアーム34の前述の動作を停止させる。また、プロセッサ44は、バーナー35を前述の待機姿勢にする。そして、S113以降の処理が再び実行され、距離Dが基準距離Dth1以下になると、予熱装置3の走行が再開され、溶接装置2による溶接及び予熱装置3による加熱が同時に行われる。
【0049】
このように、プロセッサ44は、距離Dが閾値Dth2から閾値Dth3までの間の範囲である場合、すなわち、距離Dが基準距離Dth1に対して大きく離れていない場合、予熱装置3の移動速度Vを速度V1に維持する。また、プロセッサ44は、距離Dが許容範囲から離れた場合、予熱装置3の移動速度Vを調整することにより、距離Dの値を一定の範囲内に制御する。
【0050】
プロセッサ44は、予熱用台車31がブーム6の予熱終了位置A2に到達したか否かを判断する(S122)。予熱装置3がブーム6の予熱終了位置A2に到達していない場合(S122-No)、処理はS116に戻る。
【0051】
予熱終了位置A2は、例えば、レール4の延設方向においてブーム6の進行側の端部が配置される位置である。ブーム6の予熱終了位置A2は、例えば、エッジ検出センサ38での検出結果に基づいて算出される。例えば、プロセッサ44は、ブーム6の予熱開始位置A1の検出と同様にして、予熱装置3が予熱終了位置A2に到達したか否かを判断する。
【0052】
図17に示すように、予熱用台車31がブーム6の予熱終了位置A2に到達した場合(S122-Yes)、プロセッサ44は、協調予熱処理を終了する。次に、プロセッサ44は、バーナー35の消火処理を行う(S107)。消火処理では、プロセッサ44は、遮断弁36を閉じる。遮断弁36が閉じることにより、バーナー35への燃焼ガスの供給が停止され、バーナー35が消火される。
【0053】
次に、プロセッサ44は、図18に示すように、予熱用台車31を退避位置に移動させる(S108)。退避位置は、ブーム6の予熱終了位置A2よりも進行側に位置する。予熱用台車31が退避位置に移動したことに基づいて、プロセッサ44は、自動予熱処理を終了する。
【0054】
本実施形態では、制御装置32は、予熱用台車31を進行側へ移動させるとともに、点火した状態のバーナー35の先端をブーム6の幅方向について移動させる。したがって、ブーム6の被溶接部Mの延設方向に沿ったバーナー35の加熱によるブーム6の予熱が、自動的に行われる。この際、ブーム6が所定の温度まで加熱されることにより、ブーム6の被溶接部Mの近傍において水素成分(水分)が排除される。本実施形態では、バーナー35によるブーム6の予熱が自動で行われることにより、作業者が手動でバーナーを用いた予熱作業を行う場合に比べて、コストの削減、予熱による温度ムラの抑制、及び、予熱の正確性の向上等が実現される。
【0055】
また、本実施形態では、予熱装置3はバーナー35を備え、バーナー35を用いてブーム6の被溶接部Mの加熱が行われる。このため、ブーム6の加熱に電気エネルギーを利用するヒータ等が用いられる場合に比べて、電力消費量を抑制することができ、予熱装置3を安価で製造可能であり、また、予熱装置3の軽量化及びコンパクト化が実現される。
【0056】
また、本実施形態では、ロボットアーム34を用いてバーナー35をブーム6の幅方向について移動させることにより、バーナー35の加熱によるブーム6の予熱を任意の予熱幅Wの範囲内において自動的に行うことができる。このため、本実施形態によれば、簡便な加熱方式であるガスバーナー方式を用いて、任意の予熱幅Wにおいて予熱を行うことができる。
【0057】
また、本実施形態では、バーナー35による予熱幅Wの設定を変更することにより、予熱幅Wを容易に変更することができる。このため、例えば、ブームの種類ごとの予熱幅Wの設定値を予め記憶部45に記憶しておくことで、多種のブームに対応可能な自動予熱装置を実現することができる。また、例えば、バーナー35の位置を調整することにより、被溶接物の板厚の違いなどによる加熱量の変更を容易に行うことができる。また、例えば、外気温度などの環境条件に応じて、加熱量等の予熱に関する各設定条件を変更することにより、多様な環境条件に対応可能な自動予熱装置を実現することができる。
【0058】
また、本実施形態では、バーナー35がブーム6の幅方向について移動しながらバーナー35による加熱が行われる。このため、ブーム6の被溶接部Mを均一に加熱することができる。また、ブーム6の被溶接部Mの加熱を均一に行うことにより、ブーム6のように薄板に対する加熱を行う場合であっても、加熱による歪みの発生及び変形が抑制される。
【0059】
また、本実施形態では、予熱装置3の移動速度Vを制御することにより、溶接装置2及び予熱装置3は、距離Dが均一に保たれた状態で走行する。これにより、所定の距離を保ちながら溶接と予熱が同時に行われる。すなわち、本実施形態によれば、溶接装置2と予熱装置3との協調動作を完全自動で実現することができる。
【0060】
また、本実施形態では、予熱装置3と溶接装置2との間の距離Dが離れすぎた場合、予熱装置3は停止する。そして、溶接装置2が再び接近すると、走行を再開する。このため、予期しない外因により溶接装置2と予熱装置3との間が離れすぎた場合でも、予熱装置3と溶接装置2との間の距離Dが適切な距離に保たれる。
【0061】
なお、本実施形態では、溶接装置2及び予熱装置3の両方がレール4上を走行するがこれに限るものではない。例えば、レール4とは異なるレールがレール4の内側に設けられ、このレール上を溶接装置2が走行してもよい。すなわち、溶接装置2と予熱装置3のそれぞれが異なるレール上を走行してもよい。
【0062】
また、レール4は設けられなくてもよい。例えば、溶接装置2及び予熱装置3の移動における走行ルートが制御装置等によって設定されてもよい。
【0063】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について、以下に説明する。本実施形態は、第1の実施形態の構成を次の通り変形したものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0064】
図19は、本実施形態の協調予熱処理において制御装置32のプロセッサ44が行う処理を示すフローチャートである。図19に示すように、本実施形態のS131~S133の処理は、第1の実施形態のS111~S113処理と同じである。
【0065】
本実施形態では、プロセッサ44は、S133の処理の後に、溶接装置2と予熱装置3との間の距離Dが閾値Dth5以下であるか否かを判断する(S134)。閾値(第1の距離)Dth5は、例えば、協調予熱において許容される最小の距離である。閾値Dth5は、例えば、基準距離Dth1と同じ値が用いられる。閾値Dth5は、例えば、記憶部45に記憶されている。
【0066】
距離Dが閾値Dth5より大きい場合(S134-No)、プロセッサ44は、予熱用台車31の進行側への移動を停止させるとともに、予熱時におけるロボットアーム34の前述の動作を停止させる。そして、プロセッサ44は、バーナー35を前述の待機姿勢にする。このため、予熱用台車31の移動が停止した状態が維持され、予熱用台車31の移動速度Vは0になる。
【0067】
距離Dが閾値Dth5以下である場合(S134-Yes)、プロセッサ44は、予熱用台車31を進行側へ移動させるとともに、予熱時におけるロボットアーム34の前述の動作を実行する(S135)。これにより、溶接装置2及び予熱装置3のそれぞれが進行側へ走行し、溶接装置2による溶接及び予熱装置3による加熱が同時に行われる。このとき、プロセッサ44は、予熱装置3の移動速度Vを速度V4にする。速度V4は、例えば、溶接装置2の移動速度(速度V1)よりも僅かに大きい値である。速度V4は、例えば、記憶部45に記憶されている。速度V4は、溶接装置2の移動速度と同じであってもよい。
【0068】
予熱装置3が溶接装置2に先行して進行側へ移動することにより、ブーム6の被溶接部Mの近傍では、第1の実施形態と同様にして、予熱装置3による加熱が予め行われた後に溶接装置2による溶接が行われる。このとき、予熱装置3が溶接装置2よりも大きい移動速度で先行して移動することにより、溶接装置2と予熱装置3との間の距離Dは、閾値Dth5(基準距離Dth1)から徐々に大きくなる。
【0069】
次に、プロセッサ44は、溶接装置2と予熱装置3との間の距離Dが閾値Dth6より大きいか否かを判断する(S136)。閾値(第2の距離)Dth6は、協調予熱において許容される最大の距離である。閾値Dth6は、閾値Dth5より大きく、基準距離Dth1よりも大きい。閾値Dth6は、例えば、閾値Dth4と同じ値が用いられる。閾値Dth6は、例えば、記憶部45に記憶されている。
【0070】
距離Dが閾値Dth6よりも大きい場合(S136-Yes)、処理はS133に戻り、プロセッサ44は、予熱用台車31の進行側への移動を停止させるとともに、予熱時におけるロボットアーム34の前述の動作を停止させる。これにより、予熱用台車31の移動速度Vは0になる。また、プロセッサ44は、バーナー35を前述の待機姿勢にする。
【0071】
距離Dが閾値Dth6以下である場合(S136-No)、プロセッサ44は、速度V4での予熱用台車31の移動、及び、予熱時におけるロボットアーム34の前述の動作の実行を維持する。
【0072】
次に、プロセッサ44は、予熱装置3がブーム6の予熱終了位置A2に到達したか否かを判断する(S137)。予熱装置3がブーム6の予熱終了位置A2に到達していない場合(S137-No)、処理はS136に戻る。
【0073】
予熱装置3がブーム6の予熱終了位置A2に移動した場合(S137-Yes)、プロセッサ44は、協調予熱処理を終了する。
【0074】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0075】
本実施形態では、協調予熱処理において、予熱装置3と溶接装置2との間が所定の値(Dth5)よりも接近した時、予熱装置3が溶接装置2と同時に走行する。このとき、予熱装置3は、溶接装置2の移動速度よりも大きい速度で移動する。このため、予熱装置3と溶接装置2との間の距離Dは、所定の値Dth5よりも大きい値に保たれる。これにより、予熱装置3と溶接装置2との間が近づきすぎることが防止される。
【0076】
また、予熱装置3と溶接装置2との間の距離Dが離れすぎた場合、予熱装置3は停止する。そして、溶接装置2が再び接近すると、予熱装置3は再び走行する。このため、予熱装置3と溶接装置2との間の距離Dが適切な範囲内に保たれる。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0078】
1…自動溶接システム、2…溶接装置、3…予熱装置、4…レール、5…設置部、6…ブーム、21…溶接用台車、22…溶接トーチ、23…溶接用制御装置、31…予熱用台車、32…制御装置、33…台車モータ、34…ロボットアーム、35…バーナー、36…遮断弁、37…測距センサ、38…エッジ検出センサ、39…インバータ、41…操作装置、44…プロセッサ、45…記憶部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
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図19