(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】ろう付固定方法、構造体の製造方法、および、固定構造
(51)【国際特許分類】
B23K 1/00 20060101AFI20220822BHJP
B23K 33/00 20060101ALI20220822BHJP
B23K 35/14 20060101ALI20220822BHJP
B23K 1/14 20060101ALI20220822BHJP
B23K 1/008 20060101ALN20220822BHJP
【FI】
B23K1/00 J
B23K33/00 310A
B23K35/14 Z
B23K1/14 D
B23K1/008 Z
(21)【出願番号】P 2018203559
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000239426
【氏名又は名称】福田金属箔粉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】望月 美代
(72)【発明者】
【氏名】山下 真彦
(72)【発明者】
【氏名】望月 裕郎
(72)【発明者】
【氏名】石原 章博
(72)【発明者】
【氏名】河原田 敬
(72)【発明者】
【氏名】永井 省三
(72)【発明者】
【氏名】萩野 博紀
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-110235(JP,A)
【文献】特開2015-110236(JP,A)
【文献】特開2006-224139(JP,A)
【文献】特開2001-010873(JP,A)
【文献】特開2014-049321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00-3/08、31/02、33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の金属部材をろう付によって互いに固定するろう付固定方法であって、
前記金属部材に拡散して前記金属部材と固着する固定ろう材と、金属粉末を含む支持金属材とを準備する工程と、
前記固定ろう材と、前記支持金属材との少なくとも一方を前記一対の金属部材のうちの一方の金属部材に配置して係合部を形成する係合部形成工程と、
前記固定ろう材と、前記支持金属材との少なくとも他方を前記一対の金属部材のうちの他方の金属部材に配置して被係合部を形成する被係合部形成工程と、
前記係合部と前記被係合部とが係合するように、前記一対の金属部材を配置した状態で、前記係合部と前記被係合部との係合体に含まれる前記固定ろう材を溶融して前記支持金属材に含浸させることによって前記一対の金属部材を互いに固定する固定工程と、を備える、
ろう付固定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のろう付固定方法であって、
前記係合部形成工程では、前記固定ろう材と、前記支持金属材との少なくとも一方を用いて前記係合部に凹部を形成し、
前記被係合部形成工程では、前記固定ろう材と、前記支持金属材との少なくとも他方を用いて前記被係合部に凸部を形成し、
前記固定工程では、前記凹部と前記凸部とを係合することによって、前記一対の金属部材の位置決めを行う、
ろう付固定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のろう付固定方法であって、
前記係合体に含まれる前記固定ろう材の体積の合計は、前記係合体に含まれる前記支持金属材の体積の合計の2倍以上である、
ろう付固定方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のろう付固定方法であって、
前記係合体において、前記係合部は、前記被係合部によって少なくとも互いに直交する2方向への移動が規制される、
ろう付固定方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のろう付固定方法であって、
前記一方の金属部材と前記他方の金属部材との少なくとも一方は、管状に形成されており、
前記係合部と前記被係合部との少なくとも一方は、曲面上に形成されている、
ろう付固定方法。
【請求項6】
一対の金属部材と、前記一対の金属部材を互いに固定する固定部と、を備える構造体の製造方法であって、
前記金属部材に拡散して前記金属部材と固着する固定ろう材と、金属粉末を含む支持金属材とを準備する工程と、
前記固定ろう材と、前記支持金属材との少なくとも一方を前記一対の金属部材のうちの一方の金属部材に配置して係合部を形成する係合部形成工程と、
前記固定ろう材と、前記支持金属材との少なくとも他方を前記一対の金属部材のうちの他方の金属部材に配置して被係合部を形成する被係合部形成工程と、
前記係合部と前記被係合部とが係合するように、前記一対の金属部材を配置した状態で、前記係合部と前記被係合部との係合体に含まれる前記固定ろう材を溶融して前記支持金属材に含浸させることによって前記固定部を形成する固定部形成工程と、を備える、
構造体の製造方法。
【請求項7】
一対の金属部材をろう付によって互いに固定するために用いられる固定構造であって、
前記金属部材に拡散して前記金属部材と固着する固定ろう材と、金属粉末を含む支持金属材との少なくとも一方であって、前記一対の金属部材のうちの一方の金属部材に配置される係合部と、
前記固定ろう材と、前記支持金属材との少なくとも他方であって、前記一対の金属部材のうちの他方の金属部材に配置される被係合部と、を備え、
前記係合部と前記被係合部とは、係合可能に形成されている、
固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろう付固定方法、構造体の製造方法、および、固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の金属部材をろう付によって互いに固定するろう付固定方法が知られている。例えば、特許文献1には、一対の金属部材をろう付する接合ろう材と、接合ろう材と共晶反応可能な金属粉末の集合体とから形成される複合ろう材を用いて、一対の金属部材のうちの一方の金属部材を他方の金属部材にろう付によって固定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の複合ろう材は、一方の金属部材に設けられる。特許文献1に記載の複合ろう材を用いて一対の金属部材が互いに固定されている構造体を製造するとき、複合ろう材が設けられている一方の金属部材と他方の金属部材とを所定の位置関係で対向させたのち複合ろう材を加熱する。このとき、複合ろう材に含まれる接合ろう材は溶融するため、他方の金属部材に対する一方の金属部材の位置がずれるおそれがある。このため、一対の金属部材の位置決めの精度が低下する場合がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、一対の金属部材をろう付によって互いに固定するろう付固定方法において、一対の金属部材の位置決めの精度を向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、一対の金属部材をろう付によって互いに固定するろう付固定方法が提供される。ろう付固定方法は、前記金属部材に拡散して前記金属部材と固着する固定ろう材と、金属粉末を含む支持金属材とを準備する工程と、前記固定ろう材と、前記支持金属材との少なくとも一方を前記一対の金属部材のうちの一方の金属部材に配置して係合部を形成する係合部形成工程と、前記固定ろう材と、前記支持金属材との少なくとも他方を前記一対の金属部材のうちの他方の金属部材に配置して被係合部を形成する被係合部形成工程と、前記係合部と前記被係合部とが係合するように、前記一対の金属部材を配置した状態で、前記係合部と前記被係合部との係合体に含まれる前記固定ろう材を溶融して前記支持金属材に含浸させることによって前記一対の金属部材を互いに固定する固定工程と、を備える。
【0008】
この構成によれば、固定工程において、他方の金属部材に対して一方の金属部材を位置決めするとき、一方の金属部材に配置されている係合部と、他方の金属部材に配置されている被係合部とを係合する。これにより、固定ろう材を溶融すると、一方の金属部材と他方の金属部材とは、係合部と被係合部とが係合していた状態で固定される。したがって、他方の金属部材に対する一方の金属部材の位置ずれを防止することができるため、一対の金属部材の位置決めの精度を向上することができる。
【0009】
(2)上記形態のろう付固定方法において、前記係合部形成工程では、前記固定ろう材と、前記支持金属材との少なくとも一方を用いて前記係合部に凹部を形成し、前記被係合部形成工程では、前記固定ろう材と、前記支持金属材との少なくとも他方を用いて前記被係合部に凸部を形成し、前記固定工程では、前記凹部と前記凸部とを係合することによって、前記一対の金属部材の位置決めを行ってもよい。この構成によれば、他方の金属部材に対して一方の金属部材を位置決めするとき、係合部の凹部に被係合部の凸部が差し込まれるため、係合部と被係合部とを係合するときの係合部と被係合部との密着度が高くなる。これにより、一対の金属部材を互いに固定したときの一方の金属部材と他方の金属部材との密着度を高めることができる。
【0010】
(3)上記形態のろう付固定方法において、前記係合体に含まれる前記固定ろう材の体積の合計は、前記係合体に含まれる前記支持金属材の体積の合計の2倍以上であってもよい。この構成によれば、固定ろう材と支持金属材および金属部材とを共晶反応によって確実に結合することができるため、一の金属部材と他の金属部材とをより強固に接合することができる。
【0011】
(4)上記形態のろう付固定方法において、前記係合体において、前記係合部は、前記被係合部によって少なくとも互いに直交する2方向への移動が規制されてもよい。この構成によれば、一方の金属部材と他方の金属部材との相対移動の自由度を少なくすることができるため、一対の金属部材の位置決めの精度をさらに向上することができる。
【0012】
(5)上記形態のろう付固定方法において、前記一方の金属部材と前記他方の金属部材との少なくとも一方は、管状に形成されており、前記係合部と前記被係合部との少なくとも一方は、曲面上に形成されていてもよい。この構成によれば、曲面から形成されているため位置決めを行うことが困難な管状の金属部材を精度よく固定することができる。
【0013】
(6)本発明の別の形態によれば、一対の金属部材と、前記一対の金属部材を互いに固定する固定部と、を備える構造体の製造方法が提供される。構造体の製造方法は、前記金属部材に拡散して前記金属部材と固着する固定ろう材と、金属粉末を含む支持金属材とを準備する工程と、前記固定ろう材と、前記支持金属材との少なくとも一方を前記一対の金属部材のうちの一方の金属部材に配置して係合部を形成する係合部形成工程と、前記固定ろう材と、前記支持金属材との少なくとも他方を前記一対の金属部材のうちの他方の金属部材に配置して被係合部を形成する被係合部形成工程と、前記係合部と前記被係合部とが係合するように、前記一対の金属部材を配置した状態で、前記係合部と前記被係合部との係合体に含まれる前記固定ろう材を溶融して前記支持金属材に含浸させることによって前記固定部を形成する固定部形成工程と、を備える。この構成によれば、一対の金属部材の相対位置が高精度に調整された構造体を製造することができる。
【0014】
(7)本発明のさらに別の形態によれば、一対の金属部材をろう付によって互いに固定するために用いられる固定構造が提供される。固定構造は、前記金属部材に拡散して前記金属部材と固着する固定ろう材と、金属粉末を含む支持金属材との少なくとも一方であって、前記一対の金属部材のうちの一方の金属部材に配置される係合部と、前記固定ろう材と、前記支持金属材との少なくとも他方であって、前記一対の金属部材のうちの他方の金属部材に配置される被係合部と、を備え、前記係合部と前記被係合部とは、係合可能に形成されている。この構成によれば、固定構造によって、一対の金属部材の相対位置を高精度に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の構造体の製造前の構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態のろう付固定方法のフローチャートである。
【
図3】第1実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図5】第2実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図6】第3実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図7】第4実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図8】第5実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図9】第6実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図10】第7実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図11】第8実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図12】第9実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図13】第10実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図14】第11実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
【
図15】第7実施形態の変形例の固定構造を説明する模式図である。
【
図16】第7実施形態の別の変形例の固定構造を説明する模式図である。
【
図17】第7実施形態のさらに別の変形例の固定構造を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の構造体10(ろう付構造体)の製造前の構成を示す模式図である。
図2は、第1実施形態のろう付固定方法のフローチャートである。
図3は、第1実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。
図4は、第1実施形態の構造体10の模式図である。第1実施形態のろう付固定方法は、
図1に示す一対の金属部材11、12をろう付によって互いに固定し、構造体10を製造する。
【0017】
本実施形態のろう付固定方法は、
図2に示すように、準備工程と、係合部形成工程と、被係合部形成工程と、固定工程と、を備える。
準備工程(S11)では、後段の係合部形成工程と被係合部形成工程とにおいて使用する金属部材11、12と、係合部21として機能する金属シート材と、被係合部22として機能する固定ろう材と、を準備する。金属部材11、12は、平板状の部材であって、例えば、ステンレス鋼からなる。
【0018】
係合部21は、金属粉末の集合体をシート状に形成したものであって、具体的には、金属粉末と、当該金属粉末の粉末同士を接着させるバインダ、例えば、有機系溶剤とを混合させたものを、乾燥させて厚さを一定にしたシート状の部材である。本実施形態では、係合部21は、
図1(a)および
図3(a)に示すように、矩形の環形状となるように形成される。金属粉末としては、金属部材11と同じ材料であるステンレス鋼の粉末であって、粒径が10~45μmのものが用いられる。また、バインダは、後述する固定工程における加熱炉内の温度以下で蒸発するものが用いられる。
【0019】
被係合部22は、金属部材11、12に拡散し、金属部材11、12と固着可能な材料である。具体的には、被係合部22は、金属部材11、12を形成する材料に対して融点が低く、かつ、金属部材11、12を形成する材料と共晶反応可能な材料、例えば、ニッケル基ろう材、鉄基ろう材、銀基ろう材、チタン基ろう材、から形成される。本実施形態では、被係合部22は、
図3(a)に示すように、係合部21と同じ体積であって、矩形の環形状となるように形成される。
【0020】
係合部形成工程(S12)では、金属部材11の平面13上に係合部21を形成する。具体的には、
図1(a)の白抜き矢印F21で示されているように、金属部材11の平面13側から係合部21を金属部材11に近づけ、平面13上に係合部21を配置する。これにより、金属部材11と係合部21とは、
図1(b)のような状態となる。本実施形態では、係合部21は、
図3(a)に示すように、金属部材11の平面13において金属部材11の外縁に沿うように設けられている。係合部21が所定の位置に配置された金属部材11を、組合せ部材16とする。
【0021】
被係合部形成工程(S13)では、金属部材12の平面14上に被係合部22を形成する。具体的には、
図1(a)の白抜き矢印F22で示されているように、金属部材12の平面14側から被係合部22を金属部材12に近づけ、平面14上に被係合部22を配置する。これにより、金属部材12と被係合部22とは、
図1(c)のような状態となる。本実施形態では、被係合部22は、
図3(a)に示すように、係合部21に比べ一回り小さくなるように形成される。具体的には、一対の金属部材11、12を互いに固定するとき、被係合部22は、外周面24が係合部21の内周面23に接触可能なように形成される。被係合部22が所定の位置に配置された金属部材12を、組合せ部材17とする。
【0022】
次に、固定工程(S14)では、一対の金属部材11、12を互いに固定する。具体的には、係合部21の内周面23と被係合部22の外周面24とが接触し係合部21と被係合部22とが係合するように、組合せ部材16と組合せ部材17とを配置する。これにより、組合せ部材16と組合せ部材17とは、
図3(c)に示す状態となり、係合部21と係合部22との係合体20が形成される。その後、図示しない加熱炉によって、被係合部22を溶融させる。なお、加熱炉内の温度は、被係合部22は溶融するが、金属部材11、12は溶融しないように、例えば、1100°Cに設定されている。
【0023】
固定工程において被係合部22を溶融させると、金属粉末から形成されている係合部21内に溶融した固定ろう材から形成されている被係合部22が吸引される。これにより、被係合部22が係合部21に含浸し金属粉末の表面と固定ろう材とが共晶反応する。
【0024】
さらに、係合部21に含浸した被係合部22は、金属部材11、12との接合界面で拡散し、金属部材11、12と共晶反応する。この後、金属部材11、12とともに係合部21に含浸した被係合部22を冷却させることによって、金属部材11と金属部材12とは、ろう付によって固定される。これにより、金属部材11、12と、係合体20から生成された固定部15と、を備える構造体10が製造される(
図3(d)参照)。このとき、構造体10における金属部材11の平面13と金属部材12の平面14との間の距離は、一つ目の配置工程において金属部材11の平面13上に配置された係合部21の厚みと同じになる。
【0025】
本実施形態のろう付固定方法によって製造される構造体10は、
図4に示すように、一対の金属部材11、12と、固定部15と、を備える。金属部材11、12は、
図4(a)のA-A線断面図である
図4(b)に示すように、固定部15によって、金属部材11の平面13と、金属部材12の平面14とが対向するように互いに固定されている。
【0026】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程において、金属部材12に対して金属部材11を位置決めするとき、金属部材11に配置されている係合部21と、金属部材12に配置されている被係合部22とを係合する。固定ろう材から形成されている被係合部22が溶融すると、金属部材11と金属部材12とは、係合部21と被係合部22とが係合していた状態で互いに固定される。また、金属粉末から形成されている係合部21は、金属部材11と金属部材12との間において二つの金属部材11、12間の距離を所定の距離とする支柱となる。これにより、金属部材12に対する金属部材11の位置ずれを防止することができるため、一対の金属部材11、12の位置決めの精度を向上することができる。
【0027】
また、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程において、金属部材12に対して金属部材11を位置決めするための手段が不要となるため、構造体10の製造コストを低減することができる。
【0028】
また、本実施形態のろう付固定方法によれば、金属部材11と金属部材12とをろう付する前に、金属部材11に係合部21として金属シート材を定量的に配置し、金属部材12に被係合部22として固定ろう材を定量的に配置する。これにより、金属部材11と金属部材12とを必要量で互いに固定できるため、一対の金属部材11、12の固定に使用する材料の量を低減することができるとともに、一対の金属部材11、12を互いに固定したときの金属部材11と金属部材12との密着度を高めることができる。
【0029】
また、本実施形態のろう付固定方法によれば、係合体20の厚みを適正化することができるため、接合界面における固定ろう材の組成拡散を十分に行うことができるとともに、共晶組織を制御することができる。また、係合体20の適正厚さを確保することで、接合界面の面積内で被係合部22の固定ろう材と金属部材11、12とを確実に共晶反応させることができる。
【0030】
また、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程において金属部材11と金属部材12とを配置するとき、環状に形成されている係合部21の内周面23と、被係合部22の外周面24とを接触させる。これにより、被係合部22は、係合部21によって囲まれるため、金属部材11と金属部材12とは、被係合部22が係合部21に囲まれる方向、具体的には、平面14上での少なくとも互いに直交する2方向、への移動が規制される。これにより、一対の金属部材11、12の位置決めの精度をさらに向上することができる。
【0031】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。第2実施形態のろう付固定方法は、第1実施形態のろう付固定方法(
図3)と比較すると、係合部および被係合部の形状が異なる。
【0032】
本実施形態の係合体25は、係合部26と被係合部27とが係合することによって形成される。係合部26は、金属部材11に設けられ、被係合部27は、金属部材12に設けられる。
【0033】
係合部26は、
図5(a)に示すように、矩形の環形状となるように形成されている金属シート材26a、26bと、矩形の環形状となるように形成されている固定ろう材26cと、から構成されている。金属シート材26aは、金属部材11の平面13において金属部材11の外縁に沿うように設けられている。金属シート材26bは、金属部材11の平面13において金属シート材26aの内側に設けられている。固定ろう材26cは、金属部材11の平面13において金属シート材26aと金属シート材26bとの間に設けられている。固定ろう材26cの厚みは、金属シート材26a、26bの厚みより薄い。これにより、
図5(b)に示すように、係合部26は、断面形状が凹状となる。係合部26が所定の位置に配置された金属部材11を、組合せ部材16とする。
【0034】
被係合部27は、
図5(a)に示すように、矩形の環形状となるように形成されている固定ろう材であって、本実施形態では、
図5(b)に示すように、金属部材12の平面14に設けられ、平面14から突出するよう凸状に形成されている。被係合部27が所定の位置に配置された金属部材12を、組合せ部材17とする。
【0035】
本実施形態では、ろう付固定方法の固定工程において、組合せ部材16と組合せ部材17とを組み合わせるとき、金属シート材26aと金属シート材26bとの間の隙間26dに被係合部27を挿入し、被係合部27が固定ろう材26cに当接するように、組合せ部材16と組合せ部材17とを配置する(
図5(c)参照)。その後、加熱炉によって係合部26の固定ろう材26cと被係合部27とを溶融させ、金属部材11と金属部材12とをろう付によって固定し、構造体10を製造する。これにより、本実施形態では、係合体25から生成される固定部15は、
図5(d)に示すように、固定ろう材26cと被係合部27との幅の分の間隔をあけて2つ配置される。
【0036】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程において、金属部材12に対して金属部材11を位置決めするとき、凸状の被係合部27が凹状の係合部26に差し込まれるため、係合部26と被係合部27との密着度が高くなる。これにより、一対の金属部材11、12を互いに固定したときの金属部材11と金属部材12との密着度を高めることができる。
【0037】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。第3実施形態のろう付固定方法は、第1実施形態のろう付固定方法(
図3)と比較すると、係合部および被係合部の形状が異なる。
【0038】
本実施形態の係合体30は、係合部31と被係合部32とが係合することによって形成される。係合部31は、金属部材11に設けられ、被係合部32は、金属部材12に設けられる。
【0039】
係合部31は、
図6(a)に示すように、矩形の環形状となるように形成されている金属シート材31aと、矩形の環形状となるように形成されている固定ろう材31bと、から構成されている。金属シート材31aは、金属部材11の平面13において金属部材11の外縁に沿うように設けられている。固定ろう材31bは、金属部材11の平面13において金属シート材31aの内側に設けられている。固定ろう材31bの厚みは、金属シート材31aの厚みより薄い。これにより、
図6(b)に示すように、係合部31は、断面形状が、金属部材11の外側から内側に向かって高さが低くなる階段状となる。係合部31が所定の位置に配置された金属部材11を、組合せ部材16とする。
【0040】
被係合部32は、
図6(a)に示すように、矩形の環形状となるように形成されている金属シート材32aと、矩形の環形状となるように形成されている固定ろう材32bと、から構成されている。金属シート材32aは、金属部材12の平面14において金属部材12の外縁に沿うように設けられている。固定ろう材32bは、金属部材12の平面14において金属シート材32aの内側に設けられている。固定ろう材32bの厚みは、金属シート材32aの厚みより厚い。これにより、
図6(b)に示すように、被係合部32は、断面形状が、金属部材12の外側から内側に向かって高さが高くなる階段状となる。被係合部32が所定の位置に配置された金属部材12を、組合せ部材17とする。
【0041】
本実施形態では、ろう付固定方法の固定工程において、組合せ部材16と組合せ部材17とを組み合わせるとき、
図6(c)に示すように、金属シート材31aの内周面と固定ろう材32bの外周面とが接触するように、組合せ部材16と組合せ部材17とを配置する。その後、加熱炉によって固定ろう材31b、32bを溶融させ、金属部材11と金属部材12とをろう付によって固定し、構造体10を製造する。これにより、本実施形態では、係合体30から生成される固定部15は、
図6(d)に示すように、金属部材11と金属部材12とが対向する方向に沿って並ぶように2つ設けられる。
【0042】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程において、金属シート材31aの内周面と固定ろう材32bの外周面とが接触するように、係合部31と被係合部32とを係合する。係合部31の固定ろう材31bと被係合部32の固定ろう材32bとを溶融すると、金属部材11と金属部材12とは、係合部31と被係合部32とが係合していた状態で互いに固定される。これにより、金属部材12に対する金属部材11の位置ずれを防止することができるため、一対の金属部材11、12の位置決めの精度を向上することができる。
【0043】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。第4実施形態のろう付固定方法は、第1実施形態のろう付固定方法(
図3)と比較すると、金属シート材に対する固定ろう材の体積の比が異なる。
【0044】
本実施形態の係合体35は、係合部21と被係合部37とが係合することによって形成される。被係合部37は、金属部材12に設けられる。
【0045】
被係合部37は、固定ろう材であって、本実施形態では、
図7(a)に示すように、矩形の環形状となるように形成されている。被係合部37は、金属部材12の平面14に設けられ、
図7(a)に示すように、係合部21に比べ一回り小さくなるように形成されている。具体的には、係合体35を用いて金属部材11と金属部材12とを互いに固定するとき、被係合部37は、外周面39が係合部21の内周面23に接触するように形成されている。被係合部37は、
図7(b)に示すように、金属部材11と金属部材12とが対向する方向に沿った方向の高さが係合部21と略同じであるが、平面14に沿って金属部材12の内側に延びるよう形成されており、係合部21の2倍の体積を有している。被係合部37が所定の位置に配置された金属部材12を、組合せ部材17とする。
【0046】
本実施形態では、ろう付固定方法の固定工程において、組合せ部材16と組合せ部材17とを組み合わせるとき、
図7(c)に示すように、係合部21の内周面23と被係合部37の外周面39とが接触するように、組合せ部材16と組合せ部材17とを配置する。その後、加熱炉によって被係合部37を溶融させ、金属部材11と金属部材12とをろう付によって固定し、構造体10を製造する。これにより、本実施形態では、係合体35から生成される固定部15は、
図7(d)に示すように、金属部材11を金属部材12に対して固定する。
【0047】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程において、金属シート材の2倍の体積を有する固定ろう材によって、金属部材11と金属部材12とを固定する固定部15が生成される。これにより、固定ろう材と金属シート材および金属部材11、12との共晶反応を確実に行うことができるため、金属部材11と金属部材12とをより強固に接合することができる。
【0048】
<第5実施形態>
図8は、第5実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。第5実施形態のろう付固定方法は、第1実施形態のろう付固定方法(
図3)と比較すると、金属シート材に対する固定ろう材の体積の比が異なる。
【0049】
本実施形態の係合体40は、係合部41と被係合部42とが係合することによって生成される。係合部41は、金属部材11に設けられ、被係合部42は、金属部材12に設けられる。
【0050】
係合部41は、矩形の環形状となるように形成されている金属シート材41aと、矩形の環形状となるように形成されている固定ろう材41bと、から構成されている。金属シート材41aは、金属部材11の平面13において金属部材11の外縁に沿うように設けられている。固定ろう材41bは、金属部材11の平面13において金属シート材41aの内側に設けられている。固定ろう材41bの厚みは、金属シート材41aの厚みと同じである(
図8(b)参照)。係合部41が所定の位置に配置された金属部材11を、組合せ部材16とする。
【0051】
被係合部42は、固定ろう材であって、本実施形態では、
図8(a)に示すように、矩形の環形状となるように形成されている。被係合部42は、金属部材12の平面14に設けられ、
図8(a)に示すように、係合部41の固定ろう材41bに比べ一回り小さくなるように形成されている。具体的には、係合体40を用いて金属部材11と金属部材12とを固定するとき、被係合部42は、外周面44が係合部41の内周面43に接触するように形成されている。被係合部42は、固定ろう材41bの体積と同じ体積を有している。被係合部42が所定の位置に配置された金属部材12を、組合せ部材17とする。
【0052】
本実施形態では、ろう付固定方法の固定工程において、組合せ部材16と組合せ部材17とを組み合わせるとき、
図8(c)に示すように、係合部41の内周面43と被係合部42の外周面44とが接触するように、組合せ部材16と組合せ部材17とを配置する。その後、加熱炉によって固定ろう材41bと被係合部37とを溶融させ、金属部材11と金属部材12とをろう付によって固定し、構造体10を製造する。これにより、本実施形態では、係合体40から生成される固定部15は、
図8(d)に示すように、金属部材11を金属部材12に対して固定する。
【0053】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程において、金属シート材41aの2倍の体積を有する固定ろう材によって、一対の金属部材11、12を互いに固定する固定部15が生成される。これにより、固定ろう材と金属シート材41aおよび金属部材11、12との共晶反応を確実に行うことができるため、金属部材11と金属部材12とをより強固に接合することができる。
【0054】
<第6実施形態>
図9は、第6実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。第6実施形態のろう付固定方法は、第1実施形態のろう付固定方法(
図3)と比較すると、金属シート材に対する固定ろう材の体積の比が異なる。
【0055】
本実施形態の係合体45は、係合部21と被係合部47とが係合することによって形成される。被係合部47は、金属部材12に設けられる。
【0056】
被係合部47は、固定ろう材であって、本実施形態では、
図9(a)に示すように、矩形の環形状となるように形成されている。被係合部47は、金属部材12の平面14に設けられ、
図9(a)に示すように、係合部21に比べ一回り小さくなるように形成されている。具体的には、係合体45を用いて一対の金属部材11、12を互いに固定するとき、被係合部47は、外周面49が係合部21の内周面23に接触するように形成されている。被係合部47は、
図9(b)に示すように、平面14に沿った方向の長さが係合部21と略同じであるが、金属部材11と金属部材12とが対向する方向に沿った方向の高さが係合部21より高く、係合部21の体積の2倍の体積を有している。被係合部47が所定の位置に配置された金属部材12を、組合せ部材17とする。
【0057】
本実施形態では、ろう付固定方法の固定工程において、組合せ部材16と組合せ部材17とを組み合わせるとき、
図9(c)に示すように、係合部21の内周面23と被係合部47の外周面49とが接触するように、組合せ部材16と組合せ部材17とを配置する。その後、加熱炉によって被係合部37を溶融させ、金属部材11と金属部材12とをろう付によって固定し、構造体10を製造する。これにより、本実施形態では、係合体45から生成される固定部15は、
図9(d)に示すように、金属部材11を金属部材12に対して固定する。
【0058】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程において、係合部21の2倍の体積を有する被係合部47の固定ろう材によって、一対の金属部材11、12を互いに固定する固定部15を成形する。これにより、固定ろう材と金属シート材および金属部材11、12との共晶反応を確実に行うことができるため、金属部材11と金属部材12とをより強固に接合することができる。
【0059】
<第7実施形態>
図10は、第7実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。第7実施形態のろう付固定方法は、第1実施形態のろう付固定方法(
図3)と比較すると、一対の金属部材の形状、および、係合体の形状が異なる。
【0060】
本実施形態の構造体10は、一対の金属部材51、52と、金属部材51と金属部材52とを接合する固定部と、を備える。
金属部材51、52は、管状に形成されている部材であって、例えば、ステンレス鋼からなる。本実施形態では、「一方の金属部材」としての金属部材51と「他方の金属部材」としての金属部材52とは、金属部材51の側面53と、金属部材52の側面54とが対向するように固定される。本実施形態の固定部は、
図10に示す係合部56と被係合部57が係合することによって形成される係合体55に含まれる固定ろう材が溶融する温度まで加熱されることによって生成される。
【0061】
係合部56は、金属部材51の側面53に設けられる金属シート材であって、本実施形態では、構造体10を製造する前の
図10(a)および
図10(b)のB-B線断面図である
図10(c)に示すように、金属部材51の軸線方向に沿うように形成されている。係合部56が所定の位置に配置された金属部材51を、組合せ部材16とする。
【0062】
被係合部57は、金属部材52の側面54に設けられる固定ろう材であって、本実施形態では、
図10(a)および
図10(c)に示すように、金属部材52の軸線方向に沿うように形成されている。被係合部57が所定の位置に配置された金属部材52を、組合せ部材17とする。なお、
図10(c)では、金属部材51に配置される係合部56と金属部材52に配置される被係合部57とを区別しやすくするため、被係合部57を、点線で示している。
【0063】
本実施形態では、ろう付固定方法の固定工程において、組合せ部材16と組合せ部材17とを組み合わせるとき、
図10(b)に示すように、係合部56の側面58と被係合部57の側面59とが係合するように、組合せ部材16と組合せ部材17とを配置する。例えば、被係合部57の側面59を係合部56の径方向外側の端面56aに押しつけつつ被係合部57を軸線回りの反時計方向に回転し、係合部56の側面58と被係合部57の側面59とを係合させる。その後、加熱炉によって被係合部57を溶融させ、金属部材51と金属部材52とをろう付によって固定し、構造体10を製造する。
【0064】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程において、金属部材51に配置されている係合部56と、金属部材52に配置されている被係合部57とを係合する。被係合部57の固定ろう材を溶融すると、金属部材51と金属部材52とは、係合部56と被係合部57とが係合していた状態で互いに固定される。金属部材52に対する金属部材51の位置ずれを防止することができるため、一対の金属部材51、52の位置決めの精度を向上することができる。
【0065】
また、金属部材51、52は、管状の部材であるため、側面53、54同士を接合する場合、曲面同士で位置合わせすることなり位置決めが困難となるため、金属部材52に対して金属部材51を位置決めするための手段が別途必要となる。しかしながら、本実施形態のろう付固定方法によれば、係合部56の側面58と被係合部57の側面59とを係合させることによって別の位置決め手段を用いることなく、一対の金属部材51、52を精度よく固定することができる。
【0066】
<第8実施形態>
図11は、第8実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。第8実施形態のろう付固定方法は、第7実施形態のろう付固定方法(
図10)と比較すると、係合体の形状が異なる。
【0067】
本実施形態の係合体60は、係合部61と被係合部62とが係合することによって形成される。係合部61は、金属部材51に設けられ、被係合部62は、金属部材52に設けられる。
【0068】
係合部61は、2つの金属シート材61aと、固定ろう材61bと、から構成されている。2つの金属シート材61aは、金属部材51、52の側面図である
図11(a)に示すように、金属部材51の側面53において金属部材51の軸線方向に沿うように形成されており、所定の間隔を維持した状態で側面53に配置されている。固定ろう材61bは、
図11(a)に示すように、2つの金属シート材61aに対して金属部材51の周方向側と、1つの金属シート材61aの軸線方向の一端側と、もう1つの金属シート材61aの軸線方向の他端側と、に配置されている。係合部61が所定の位置に配置された金属部材51を、組合せ部材16とする。
【0069】
被係合部62は、金属シート材62aと、固定ろう材62bと、から構成されている。金属シート材62aは、金属部材51と金属部材52とを固定するとき2つの金属シート材61aの間に位置することが可能なように、金属部材52の側面54に設けられている。固定ろう材62bは、
図11(a)に示すように、金属シート材62aに対して金属部材52の周方向側であって、金属部材51と金属部材52とを接合するとき金属シート材62aを挟んで固定ろう材61bとは反対側に位置するように配置されている。固定ろう材62bの軸線方向の両端は、金属部材51と金属部材52とを接合するとき固定ろう材61bの軸線方向の両端のそれぞれに接触するように形成されている。被係合部62が所定の位置に配置された金属部材52を、組合せ部材17とする。なお、
図11(b)のC-C線断面図である
図11(c)では、金属部材51に配置される係合部61と金属部材52に配置される被係合部62とを区別しやすくするため、被係合部62を、点線で示している。
【0070】
本実施形態では、ろう付固定方法の固定工程において、組合せ部材16と組合せ部材17とを組み合わせるとき、
図11(c)に示すように、金属シート材61aの側面61cと固定ろう材62bの側面62dとが接触し、かつ、固定ろう材61bの側面61dと金属シート材62aの側面62cとが接触するように、組合せ部材16と組合せ部材17とを配置する。その後、加熱炉によって固定ろう材61b、62bを溶融させ、金属部材51と金属部材52とをろう付によって固定し、構造体10を製造する。
【0071】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程において、金属部材51に設けられている係合部61と、金属部材52に設けられている被係合部62とを係合する。固定ろう材61b、62bを溶融すると、金属部材51と金属部材52とは、係合部61と被係合部62とが係合していた状態で互いに固定される。これにより、一対の金属部材51、52の位置決めの精度を向上することができる。
【0072】
また、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程において金属部材51と金属部材52とを配置するとき、金属シート材62aは、金属部材51と金属部材52とを固定するとき2つの金属シート材61aの間に位置する。これにより、係合体60は、金属部材51、52の軸線方向と周方向とへの位置ずれを防止することができる。したがって、一対の金属部材51、52の位置決めの精度をさらに向上することができる。
【0073】
<第9実施形態>
図12は、第9実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。第9実施形態のろう付固定方法は、第7実施形態のろう付固定方法(
図10)と比較すると、係合体の形状が異なる。
【0074】
本実施形態の係合体65は、係合部66と被係合部67とが係合することによって形成される。係合部66は、金属部材51に設けられ、被係合部67は、金属部材52に設けられる。
【0075】
係合部66は、2つの金属シート材66aと、固定ろう材66bと、から構成されている。2つの金属シート材66aは、金属部材51、52の側面図である
図12(a)に示すように、金属部材51の側面53において金属部材51の軸線方向に沿うように形成されており、所定の間隔を維持した状態で側面53に配置されている。固定ろう材66bは、
図12(a)に示すように、2つの金属シート材66aに対して金属部材51の周方向側と、1つの金属シート材61aの軸線方向の一端側と、に配置されている。係合部66が所定の位置に配置された金属部材51を、組合せ部材16とする。
【0076】
被係合部67は、金属シート材67aと、固定ろう材67bと、から構成されている。金属シート材67aは、金属部材51と金属部材52とを接合するとき2つの金属シート材67aの間に位置することが可能なように、金属部材52の側面54に設けられている。固定ろう材67bは、
図12(a)に示すように、金属シート材67aに対して金属部材52の周方向側であって、金属部材51と金属部材52とを接合するとき金属シート材67aを挟んで固定ろう材61bとは反対側に位置するように配置されている。固定ろう材67bの軸線方向の一端は、金属部材51と金属部材52とを接合するとき固定ろう材61bの軸線方向の一端に接触するように形成されている。被係合部67が所定の位置に配置された金属部材52を、組合せ部材17とする。なお、
図12(b)のD-D線断面図である
図12(c)では、金属部材51に配置される係合部66と金属部材52に配置される被係合部67とを区別しやすくするため、被係合部67を、点線で示している。
【0077】
本実施形態では、ろう付固定方法の固定工程において、組合せ部材16と組合せ部材17とを組み合わせるとき、
図12(c)に示すように、金属シート材66aの側面66cと固定ろう材67bの側面67dとが接触し、かつ、固定ろう材66bの側面66dと金属シート材67aの側面67cおよび固定ろう材67bの側面67dとが接触するように、組合せ部材16と組合せ部材17とを配置する。その後、加熱炉によって固定ろう材61b、62bを溶融させ、金属部材51と金属部材52とをろう付によって固定し、構造体10を製造する。
【0078】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程において、金属部材51に設けられている係合部66と、金属部材52に設けられている被係合部67とを係合する。固定ろう材66b、67bを溶融すると、金属部材51と金属部材52とは、係合部66と被係合部67とが係合していた状態で互いに固定される。これにより、一対の金属部材51、52の位置決めの精度を向上することができる。
【0079】
また、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程において、係合部66と被係合部67とを係合するとき、金属シート材67aは、2つの金属シート材66aの間に位置する。これにより、係合体65は、金属部材51、52の軸線方向と周方向とへの位置ずれを防止することができる。したがって、一対の金属部材51、52の位置決めの精度をさらに向上することができる。
【0080】
<第10実施形態>
図13は、第10実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。第10実施形態のろう付固定方法は、第7実施形態のろう付固定方法(
図10)と比較すると、係合体の形状が異なる。
【0081】
本実施形態の係合体70は、係合部71と被係合部72とが係合することによって形成される。係合部71は、金属部材51に設けられ、被係合部72は、金属部材52に設けられる。
【0082】
係合部71は、金属部材51の側面53に設けられる金属シート材であって、本実施形態では、金属部材51、52の側面図である
図13(a)に示すように、金属部材51の軸線方向に沿うように形成されている。本実施形態では、係合部71は、金属部材51の軸線方向の長さが、金属部材51の軸線方向の長さより短い。係合部71が所定の位置に配置された金属部材51を、組合せ部材16とする。
【0083】
被係合部72は、金属部材52の側面54に設けられる固定ろう材であって、本実施形態では、
図13(a)に示すように、金属部材51と金属部材52とを固定するとき係合部71を囲むことが可能な矩形の環形状となるように形成されている。被係合部72が所定の位置に配置された金属部材52を、組合せ部材17とする。なお、
図13(b)のE-E線断面図である
図13(c)では、金属部材51に配置される係合部71と金属部材52に配置される被係合部72とを区別しやすくするため、被係合部72を、点線で示している。
【0084】
本実施形態では、ろう付固定方法の固定工程において、組合せ部材16と組合せ部材17とを組み合わせるとき、
図13(c)に示すように、係合部71の軸線方向に沿っている2つの側面73および軸線方向に対して略垂直な2つの側面74と、環状に形成されている被係合部72の内周面とが係合するように、組合せ部材16と組合せ部材17とを配置する。その後、加熱炉によって被係合部72を溶融させ、金属部材51と金属部材52とをろう付によって固定し、構造体10を製造する。
【0085】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、固定工程において、金属部材51に設けられている係合部71と、金属部材52に設けられている被係合部72とを係合する。被係合部72を溶融すると、金属部材51と金属部材52とは、係合部71と被係合部72とが係合していた状態で互いに固定される。これにより、一対の金属部材51、52の位置決めの精度を向上することができる。
【0086】
また、本実施形態のろう付固定方法によれば、係合部71は、被係合部72に囲まれるように係合部71に係合するため、係合体70は、金属部材51、52の軸線方向と周方向とへの位置ずれを防止することができる。これにより、一対の金属部材51、52の位置決めの精度をさらに向上することができる。
【0087】
<第11実施形態>
図14は、第11実施形態のろう付固定方法を説明する模式図である。第11実施形態のろう付固定方法は、第7実施形態のろう付固定方法(
図10)と比較すると、係合体の形状が異なる。
【0088】
本実施形態の係合体75は、係合部76と被係合部77とが係合することによって形成される。係合部76は、金属部材51に設けられ、被係合部77は、金属部材52に設けられる。
【0089】
係合部76は、金属部材51の側面53に設けられる金属シート材であって、本実施形態では、金属部材51、52の側面図である
図14(a)に示すように、金属部材51の軸線方向に沿うように形成されている。本実施形態では、係合部76は、金属部材51の軸線方向の長さが、金属部材51の軸線方向の長さより短い。係合部76は、金属部材51の軸線に沿うよう形成されている2つの側面78a、78bと、金属部材51の軸線に対して略垂直となるように形成されている2つの端面78c、78dと、を有する。係合部76が所定の位置に配置された金属部材51を、組合せ部材16とする。
【0090】
被係合部77は、金属部材52の側面54に設けられる固定ろう材であって、本実施形態では、5つの固定ろう材77a、77b、77c、77d、77eを有する。固定ろう材77aは、金属部材52の軸線方向に沿うように形成され、
図14(a)に示すように、金属部材52の軸線方向において金属部材52の略中央に設けられている。固定ろう材77aは、係合部76の側面78aに接触可能に形成されている。2つの固定ろう材77b、77cは、金属部材52の軸線方向に沿うように形成され、所定の間隔を維持した状態で係合部76の側面78bに接触可能なように側面53に配置されている。固定ろう材77dは、係合部76の側面78aに接触可能であって、係合部76の端面78cに接触可能なように形成されている。固定ろう材77eは、係合部76の一端の側面78aに接触可能であって、係合部76の他端の端面78dに接触可能なように形成されている。被係合部77が所定の位置に配置された金属部材51を、組合せ部材17とする。なお、
図14(b)のF-F線断面図である
図14(c)では、金属部材51に配置される係合部76と金属部材52に配置される被係合部77とを区別しやすくするため、被係合部77を、点線で示している。
【0091】
本実施形態では、ろう付固定方法の固定工程において、組合せ部材16と組合せ部材17とを組み合わせるとき、
図14(c)に示すように、係合部76の側面78aと固定ろう材77a、77d、77eとが接触し、係合部76の側面78bと固定ろう材77b、77cとが接触し、係合部76の端面78cと固定ろう材77dとが接触し、係合部76の端面78dと固定ろう材77eとが接触するように、組合せ部材16と組合せ部材17とを配置する。その後、加熱炉によって固定ろう材77a、77b、77c、77d、77eを溶融させ、金属部材51と金属部材52とをろう付によって固定し、構造体10を製造する。
【0092】
以上説明した、本実施形態のろう付固定方法によれば、金属部材51と金属部材52とを互いに固定する固定工程において、金属部材51に設けられている係合部76と、金属部材52に設けられている被係合部77とを係合する。固定ろう材77a、77b、77c、77d、77eを溶融すると、金属部材51と金属部材52とは、係合部76と被係合部77とが係合していた状態で互いに固定される。これにより、一対の金属部材51、52の位置決めの精度を向上することができる。
【0093】
また、本実施形態のろう付固定方法によれば、係合部76は、被係合部77に囲まれるように被係合部77に係合するため、係合体70は、金属部材51、52の軸線方向と周方向とへの位置ずれを防止することができる。これにより、一対の金属部材51、52の位置決めの精度をさらに向上することができる。
【0094】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0095】
[変形例1]
図15は、第7実施形態の変形例の固定構造を説明する模式図である。
図15(a)に示す変形例では、金属部材11に配置される係合部81は、直線状の金属シート材である。金属部材12に配置される被係合部82は、一対の金属部材11、12を固定するときに係合部81の長手方向の両側において係合部81に係合可能な2つの固定ろう材83、84である。この変形例では、係合部81と被係合部82とは、平板状の金属部材11、12の縁部以外に配置されている。これによっても、一対の金属部材11、12の位置決めの精度を向上することができる。
【0096】
[変形例2]
また、
図15(b)に示す変形例では、金属部材11に配置される係合部81は、直線状の金属シート材81aと、金属シート材81aの両端に位置する2つの固定ろう材81b、81cから構成されている。金属部材12に配置される被係合部82は、一対の金属部材11、12を固定するときに係合部81の長手方向の両側において係合部81に係合可能な二つの固定ろう材83、84であって、長手方向の長さが、金属シート材81aと同じである。これにより、一対の金属部材11、12を固定するとき、被係合部82は、互いに直交する係合部81の長手方向と当該長手方向に直交する方向との2方向において係合部81と係合する。これによっても、一対の金属部材11、12の位置決めの精度を向上することができるとともに、当該2方向への金属部材11、12の移動を規制することができる。
【0097】
[変形例3]
図16は、第7実施形態の別の変形例の固定構造を説明する模式図である。
図16(a)に示す変形例では、金属部材11に配置される係合部86は、直線状の金属シート材86aと、直線状の固定ろう材86bとから構成されており、金属シート材86aと固定ろう材86bとは、
図16(a)に示すように、それぞれの長手方向においてずれて配置されている。金属部材12に配置される被係合部87は、直線状の金属シート材87aと、直線状の固定ろう材87bとから構成されており、金属シート材87aと固定ろう材87bとは、
図16(a)に示すように、それぞれの長手方向においてずれて配置されている。
図16(a)の変形例において、金属部材11と金属部材12とを固定するとき、金属シート材86aと固定ろう材87bとを係合し、金属シート材87aと固定ろう材86bとを係合させる。これによっても、一対の金属部材11、12の位置決めの精度を向上することができるとともに、当該2方向への金属部材11、12の移動を規制することができる。
【0098】
[変形例4]
また、
図16(b)に示す変形例では、金属部材11に配置される係合部86は、長さが金属部材11の長さより短い直線状の金属シート材86aと、長さが金属部材11の長さと同じ程度の直線状の固定ろう材86bとから構成されている。金属部材12に配置される被係合部87は、一対の金属部材11、12を固定するときに金属シート材86aの両端に位置することが可能な二つの金属シート材87aと、長さが金属部材12の長さと同じ程度の直線状の固定ろう材87bとから構成されている。一対の金属部材11、12を固定するとき、固定ろう材86bと固定ろう材87bとの間に、金属シート材86aと2つの金属シート材87aとが一列に並ぶよう位置する。これによっても、一対の金属部材11、12の位置決めの精度を向上することができるとともに、当該2方向への金属部材11、12の移動を規制することができる。
【0099】
[変形例5]
図17は、第7実施形態のさらに別の変形例の固定構造を説明する模式図である。
図17に示す変形例では、金属部材11に配置される係合部91は、長さが金属部材11の長さよりやや短い直線状の金属シート材である。金属部材12に配置される被係合部92は、固定ろう材であって、一対の金属部材11、12を固定するとき、係合部91の長手方向に沿った側面91aと、係合部91の両端の端面91b、91cと、に接触可能に形成されている。これによっても、一対の金属部材11、12の位置決めの精度を向上することができるとともに、当該2方向への金属部材11、12の移動を規制することができる。
【0100】
[変形例6]
第1実施形態の係合体では、係合部21は金属シート材であって、被係合部22は固定ろう材であるとした。第3実施形態では、係合部31、32は金属シート材と固定ろう材とであるとした。しかしながら、係合体の構成はこれに限定されない。係合部が、金属シート材と固定ろう材との少なくとも一方であって、他方のろう材が、金属シート材と固定ろう材との少なくとも他方であればよい。
【0101】
[変形例7]
第1実施形態の係合体では、係合部21と、被係合部22とは、環状に形成されるとした。しかしながら、係合部21、22の形状はこれに限定されない。金属部材11に配置される係合部21と金属部材12に配置される被係合部22とが係合可能であればよい。
【0102】
[変形例8]
第1実施形態の係合体では、係合部21は、金属部材の縁に設けられ、被係合部22は、組合せ部材16と組合せ部材17とを組み合わせるとき、係合部21の内側に位置するよう設けられるとした。しかしながら、係合部および被係合部が設けられる位置はこれに限定されない。係合部21は、金属部材の略中央に配置され、被係合部22が係合部21に係合可能な位置に配置されていてもよい。
【0103】
[変形例9]
第1実施形態のろう付固定方法では、係合部21は、金属粉末の集合体をシート状に形成した「支持金属材」としての金属シート材であるとした。しかしながら、「支持金属材」の形状は、シート状に限定されない。
【0104】
[変形例10]
第2実施形態では、係合部に凹部が形成され、被係合部に凸部が形成されるとした。しかしながら、係合部に凸部が形成され、被係合部に凹部が形成されてもよい。
【0105】
[変形例11]
第7実施形態のろう付固定方法は、管状の金属部材51と管状の金属部材52とを接合するとした。しかしながら、一方が管状の金属部材であって、他方が平板状の金属部材であってもよい。
【0106】
[変形例12]
第2実施形態から第6実施形態の係合体25、30、35、40、45の構成を、第7実施形態に記載の管状の金属部材51、52に適用してもよいし、第8実施形態から第11実施形態の係合体60、65、70、75の構成を、第1実施形態に記載の平板状の金属部材11、12に適用してもよい。また、変形例1から変形例5の構成を、管状の金属部材51、52に適用してもよい。
【0107】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0108】
10…構造体
11、12、51、52…金属部材
13、14…平面
15…固定部
16、17…組合せ部材
20、25、30、35、40、45、55、60、65、70、75…係合体
21、26、31、41、56、61、66、71、76、81、86、91…係合部
22、27、32、37、42、47、57、62、67、72、77、82、87、92…被係合部
23、43…内周面
24、39、44、49…外周面
26a、26b、31a、32a、41a、61a、62a、66a、67a、81a、86a、87a…金属シート材
26c、31b、32b、41b、61b、62b、66b、67b、77a、77b、77c、77d、77e、81b、81c、83、84、86b、87b…固定ろう材
26d…隙間
53、54、58、59、61c、61d、62d、66c、66d、67c、67d、73、74、78a、78b、91a…側面
56a、78c、78d、91b、91c…端面