IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ファンケルの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】ビタミンE含有油性組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/355 20060101AFI20220822BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220822BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220822BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
A61K31/355
A61K47/14
A61K9/08
A61K9/48
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018219145
(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公開番号】P2020083806
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 幸子
(72)【発明者】
【氏名】平田 愛奈
(72)【発明者】
【氏名】上野 宏大
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-245205(JP,A)
【文献】特開2014-012656(JP,A)
【文献】特開2020-015669(JP,A)
【文献】特表2003-506476(JP,A)
【文献】特開2006-056816(JP,A)
【文献】特開2017-088835(JP,A)
【文献】特開2014-193132(JP,A)
【文献】特開2014-051445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンEと下記A成分及びB成分を含有する油性組成物。
A成分:モノカプリル酸グリセリル及びモノカプリル酸ポリグリセリル-2のいずれか或いは両方。
B成分:モノオレイン酸ポリグリセリル-4、モノオレイン酸ポリグリセリル-5、モノオレイン酸ポリグリセリル-10、及びジオレイン酸ポリグリセリル-5から選ばれた1種以上。
(但し、下記の重量割合でA、B、C及びD成分を含有し、かつ、A、B及びC成分を合計量で5~90重量%含有する組成物からなる脂溶性ビタミン類含有プレ乳化物を除く。
A:脂溶性ビタミン類:0.0001~40重量%、
B:デカグリセリンのオレイン酸モノエステル:4~32重量%、
C:ペンタグリセリンのオレイン酸モノエステル:1~18重量%、
D:グリセリン:10~95重量%)
【請求項2】
油性組成物の質量あたりA成分を5質量%以上、B成分を10質量%以上含有する請求項1に記載の油性組成物。
【請求項3】
油性組成物の質量あたりA成分を5~15質量%、B成分を10~30質量%含有する請求項1に記載の油性組成物。
【請求項4】
A成分がカプリル酸グリセリル又はカプリル酸ジグリセリルのいずれか或いは両方、B成分がオレイン酸ポリグリセリル-4、オレイン酸ポリグリセリル-5、オレイン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-5から選択される1以上の物質である請求項1~3のいずれかに記載の油性組成物。
【請求項5】
油性組成物の質量あたりビタミンEを5~50質量%含有する請求項1~4のいずれかに記載の油性組成物。
【請求項6】
ビタミンEがα-トコフェロール及び/又はトコトリエノールである請求項1~5のいずれかに記載の油性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の油性組成物を含むソフトカプセル製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンEを含有する水分散性に優れた油性組成物及びそれを含有するソフトカプセル製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンE(Vitamin E)は、脂溶性ビタミンの1種であり、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノールなどの一連の化合物が知られている。ビタミンEは、水に不溶性でかつ、脂溶性が高く、そのため経口摂取したとき、体内吸収性が低いことが知られている。ビタミンEを経口投与製剤とする場合は、一般的に上記のトコフェロール類を高濃度に含有する植物油やグリセリンなどの油性組成物を内包させたソフトカプセル剤が一般的に採用されている。
【0003】
特許文献1には、ビタミンEと相溶性のある油にビタミンEを65%以上溶解させた組成物を内包するソフトカプセル製剤が記載されている。しかしこのような油に溶解した組成物は、経口で摂取した場合、胃や小腸内で乳化された後吸収されるが、乳化が速やかに起こらないため吸収性が劣ることが知られている。
特許文献2には、ポリフェノール類、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、オリーブオイル、ビタミンEを含む組成物を内包するソフトカプセル剤が記載されている。この組成物中にはビタミンEを5~15質量%配合できることが記載されている。この組成物は比較的容易に水に分散することが予想される。
一般的には、油溶性が高く難水溶性の物質を経口投与ソフトカプセル剤とするためには、このように界面活性剤を加えて水分散性を有する油性組成物を調製し、乳化微粒子として吸収を促進する技術が多く知られている。
【0004】
特許文献3には、アスタキサンチン及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種、油性成分、水、グリセリン及び還元水飴からなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコール、及び酵素分解レシチンを含有する乳化組成物、並びに、ソフトカプセル製剤が記載されている。
【0005】
特許文献4には、アスタキサンチンおよびポリグリセリンオレイン酸エステルを含有する組成物と、この該組成物を水性液体に分散してなる水中油型乳化物とこれを内包するソフトカプセル剤が記載されている。
特許文献5には、結晶性カロテノイドを含み、結晶性カロテノイドの少なくとも90質量%が非結晶であるカロテノイド成分と、グリセリン単位の数が1~6であり脂肪酸単位の数が1~6であって、グリセリン単位の水酸基を少なくとも1つ有する(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルと、芳香族カルボン酸類、ケイ皮酸類及びエラグ酸類からなる群より選択される少なくとも1種のフェノール系酸化防止剤と、を含むカロテノイド含有組成物が記載されている。この組成物は、非結晶カロテノイドを安定に含有する。
【0006】
また、脂溶性が高く体内吸収性の低い成分の体内効率を高める手段として、カロテノイド類と同様の特性を持つコエンザイムQ10の場合には、O/W(D)製剤(OD乳化製剤)とすることが知られている(特許文献4)。コエンザイムQ10のO/W(D)製剤(別名D相乳化製剤)は、コエンザイムQ10、リゾレシチン、グリセリン、水を含有し、実質的に油脂を含有しない液状の組成物である。しかし、従来のO/W(D)形式の乳化製剤は、水を一定量含有するため、ソフトカプセルが品質劣化しやすく、不安定化しやすいアスタキサンチン、ルテイン、β-カロテンなどのカロテノイド類を内包するソフトカプセル剤には適用しにくかった。
特許文献6には、水難溶性で脂溶性の高いスクワレンを1~60質量%、乳化剤として1種又は2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを40~99質量%含有するスクワレン含有油性組成物が開示されている。このスクワレン含有油性組成物中の乳化剤のHLB値は、6~15に調整されており、安定な乳化組成物となることが記載されている。
【0007】
特許文献7には、乳化剤としてポリグリセリンラウリン酸エステルとポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを組み合わせ、これに脂溶性物質を溶解分散させた組成物及びこれを内包するソフトカプセル剤が開示されている。この組成物は安定で、かつ水中で自己ミセルを形成するため、水難溶性の物質のソフトカプセル剤として有用であることが記載されている。
このように近年、水に対して難溶性の生理活性成分を含む機能性食品、医薬品、化粧品等において、生理活性成分の体内への利用率又は吸収率の改善のため様々な技術が試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-335481号公報
【文献】特開2011-079786号公報
【文献】特開2017-186320号公報
【文献】特開2008-179619号公報
【文献】特開2012-184221号公報
【文献】国際公開第2008/004509号
【文献】特開2016-037479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
水に難溶性のビタミンEを含有し、水への分散性に優れた油性組成物及びこの油性組成物を含むソフトカプセル製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の主な構成は次の通りである。
(1)ビタミンEと下記A成分及びB成分を含有する油性組成物。
A成分:グリセリン又はジグリセリンに、カプリル酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステル又はジグリセリン脂肪酸エステル。
B成分:グリセリン単位の数が4~10であるポリグリセリンに、オレイン酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステル。
(2)油性組成物の質量あたりA成分を5質量%以上、B成分を10質量%以上含有する(1)に記載の油性組成物。
(3)油性組成物の質量あたりA成分を5~15質量%、B成分を10~30質量%含有する(1)に記載の油性組成物。
(4)A成分がカプリル酸グリセリル又はカプリル酸ジグリセリルのいずれか或いは両方、B成分がオレイン酸ポリグリセリル-4、オレイン酸ポリグリセリル-5、オレイン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-5から選択される1以上の物質である(1)~(3)のいずれかに記載の油性組成物。
(5)油性組成物の質量あたりビタミンEを5~50質量%含有する(1)~(4)のいずれかに記載の油性組成物。
(6)ビタミンEがα-トコフェロール及び/又はトコトリエノールである(1)~(5)のいずれかに記載の油性組成物。
(7)(1)~(6)のいずれかに記載の油性組成物を含むソフトカプセル製剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、水に難溶性のビタミンEを含有し、ビタミンEの水分散性の高い油性組成物が提供される。この油性組成物は、ビタミンEの水分散性が高まることによって、ビタミンEが消化管内で吸収されやすくなる。このため本発明の油性組成物は、経口で摂取したときのビタミンEの吸収性が向上する。このため、1回あたり経口摂取するビタミンEの量を減量することができ、その結果製剤を小型化することができる。このため、本発明のビタミンE含有カプセル製剤は、嚥下能力の低下した高齢者や、小児でも楽に嚥下することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ビタミンEを含有する水分散性に優れた油性組成物の発明である。
また本発明は、上記の油性組成物を含むソフトカプセル製剤の発明である。
【0013】
本発明の油性組成物は、水に難溶性の生理活性成分であるビタミンEを含有し、乳化剤としてグリセリンまたはジグリセリンにカプリル酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステルまたはジグリセリン脂肪酸エステルと、グリセリン単位の数が4~10であるポリグリセリンにオレイン酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することによって、水系液体中への分散性が向上する。
【0014】
本発明でいうビタミンEとは、トコフェロールとトコトリエノールであり、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノールからなる群から選ばれる1種類又は2種類以上の混合物をいう。好ましくは、トコフェロールとしてα-トコフェロール及びトコトリエノールである。トコトリエノールとしては、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノールのいずれか1以上である。
【0015】
本発明の油性組成物の分散性は、油性組成物をピペットで採取してその1滴(約0.1mL)を100mLの水に滴下した後3分間撹拌したときの分散粒子の平均粒子径が20μm以下を示す場合を、組成物が好ましい分散性を有すると評価する。水中で油相粒子が20μm以下の粒子サイズを維持することでビタミンEが、速やかに吸収される。
難水溶性で油溶性を示す化合物は、このような分散性が付与されると経口投与による吸収性が高まり、血中濃度が上昇する。ビタミンEも、このような水分散性が付与されることで経口投与時の胃内又は小腸での吸収性が向上する。
なお分散性の測定の詳細は実施例において具体的に説明する。
【0016】
また、本発明の油性組成物は、ビタミンEの経口摂取のための製剤として使用可能である。通常は、ゼラチンソフトカプセルに内包して経口剤として摂取できる。
【0017】
本発明の組成物の配合成分について説明する。
<ビタミンE>
本発明に用いるビタミンEとしては、通常医薬品或いは飲食品にビタミンEとして使用可能なものであればどのようなものであっても使用可能である。具体的には、トコフェロールとトコトリエノールである。トコフェロールとしては、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールであれば、いずれであっても使用可能である。トコトリエノールとしては、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノールがある。トコトリエノールはこれらの混合物であっても使用可能である。なかでもα-トコトリエノールは、ビタミンE活性としてα-トコフェロールの100倍の活性、β-トコトリエノールは50倍の活性があるため、本発明の目的に適しており、本発明に使用するために特に好ましい。
<油性成分>
本発明の油性組成物は、油性成分を含有する。
本発明の組成物に含まれる、油性成分は、ビタミンEを溶解分散させるための食用油由来及び、ソフトカプセルに組成物を充填するための分散媒として機能する。油性成分は、食品用の中鎖脂肪酸トリグリセライド及び動植物性油脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
中鎖脂肪酸トリグリセライドの例としては、トリグリセライドを構成する脂肪酸の炭素数が8~10である中鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる。
動植物性油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、綿実油、ひまわり油、サフラワー油、やし油、小麦胚芽油、コーン胚芽油、オリーブ油、米ぬか油等の植物性油脂、肝油、魚油、鯨油等の動物性油脂が挙げられる。
これらの油性成分のなかでも、中鎖脂肪酸トリグリセライドが好ましい。
本発明の油性組成物にあっては、油性組成物質量あたり油性成分を5~95質量%、好ましくは5~90質量%、特に好ましくは5~70質量%を含有する。
【0018】
本発明の油性組成物は、A成分としてグリセリンまたはジグリセリンに、カプリル酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステルまたはジグリセリン脂肪酸エステルのいずれか或いは両方、B成分としてグリセリン単位の数が4~10であるポリグリセリンにオレイン酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化剤として含有する。
【0019】
<A.グリセリンまたはジグリセリンに、カプリル酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステルまたはジグリセリン脂肪酸エステル>
グリセリン単位1であるグリセリンにカプリル酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステルは、モノカプリル酸グリセリルが好ましい。モノカプリル酸グリセリルとしては、サンソフトNo.700P-2(太陽化学株式会社)やポエムM-100(理研ビタミン株式会社)を例示できる。
ジグリセリンにカプリル酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステルは、モノカプリル酸ポリグリセリル-2が好ましい。モノカプリル酸ポリグリセリル-2は別名ジグリセリンモノカプリレートともいう。モノカプリル酸ポリグリセリル-2としては、SYグリスターMCA-150(阪本薬品工業株式会社)を例示できる。本発明の組成物にあっては、モノカプリル酸グリセリル又はモノカプリル酸ポリグリセリル-2のいずれか或いは両方を含有する。
A成分の、グリセリンまたはジグリセリンに、カプリル酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステルまたはジグリセリン脂肪酸エステルの本発明の油性組成物における質量あたり含有量は、1~30質量%、好ましくは2~25%質量、特に好ましくは5~15質量%である。
【0020】
<B.グリセリン単位の数が4~10であるポリグリセリンにオレイン酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステル>
B成分のグリセリン単位の数が4~10であるポリグリセリンにオレイン酸が1~2分子エステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノオレイン酸ポリグリセリル-4、モノオレイン酸ポリグリセリル-5、モノオレイン酸ポリグリセリル-6、モノオレイン酸ポリグリセリル-8、モノオレイン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-5が好ましい。本発明にあっては、各オレイン酸ポリグリセリルの混合物であっても良い。市販されているモノオレイン酸ポリグリセリルであって、本発明に使用可能なものとしてサンソフトA-171E(グリセリン単位5:太陽化学株式会社)、NIKKOL Decaglyn1-OV(グリセリン単位10:日光ケミカルズ株式会社)NIKKOL Decaglyn1-OVEX(グリセリン単位10:日光ケミカルズ株式会社)やポエムJ-0381V(グリセリン単位10:理研ビタミン株式会社)、SYグリスターMO-3S(グリセリン単位4:阪本薬品工業株式会社)を例示できる。
本発明の油性組成物にあっては、油性組成物の質量あたりB成分のグリセリン単位の数が4~10であるポリグリセリンにオレイン酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステルを3質量%以上、好ましくは5~40質量%、特に好ましくは10~30質量%含有する。
【0021】
<その他の成分>
本実施形態の油性組成物は、前記した各成分の他に、必要に応じて任意の他の成分(例えば、栄養成分、有効成分、薬理成分など生理活性成分、色素酸化防止剤、糖類を含有していてもよい。このような成分としては、飲食品、医薬品に使用可能なものであれば、特に制限されない。
【0022】
本発明の油性組成物は、その特性から、抗酸化剤を含有することが好ましい。
抗酸化剤としては、特に限定されず、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、ビタミンA、レチノイン酸、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、レチニルアセテート、レチニルパルミテート、レチノイン酸トコフェリルなどを例示できる。
【0023】
<油性組成物の製造方法>
本実施形態の油性組成物は、ビタミンEと油性成分、グリセリンまたはジグリセリンに、カプリル酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステルまたはジグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン単位の数が4~10であるポリグリセリンにオレイン酸が1~2分子エステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステル秤量後、50~70℃、好ましくは60℃で加温しながら撹拌し、各成分を溶解混合することで容易に調製することができる。また、必要に応じて増粘剤を添加して増粘してもよい。増粘剤として、室温で固体のグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。溶解液が気泡を含む場合は、減圧脱気などの方法で気泡を除去することが好ましい。
【0024】
<ソフトカプセル製剤の製造方法>
調製した油性組成物は、公知のソフトカプセル成型機を用いてソフトカプセル製剤とする。ソフトカプセル製剤製造に当たっては、特段の制限はなく、常法にしたがって製造可能である。
なお、ソフトカプセル皮膜(以下、単に皮膜とも称する。)を形成する基材としては、デンプン、加工デンプン、寒天、ゼラチン、ジェランガム、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等の物質を皮膜成分として使用することが可能である。
【実施例
【0025】
以下、本発明を実施例、比較例を示し具体的に説明する。
1.ビタミンEを含む油性組成物の調製
下記表1に示す各成分を用いて、60℃で加温混合し、室温に冷却して実施例1~9及び比較例1~4の油性組成物とした。
【0026】
2.水への分散性の評価
水への分散性の評価は、調製した油性組成物を採取し、これをピペットで採取し、ビーカー中の室温の水100mLに1滴(約0.1mL)を滴下し、マグネチックスターラーで 3分間撹拌後目視観察した。
滴下した油性組成物が水に均一に分散したことが観察された場合を「〇」、全く分散が観察されない場合(油滴が浮上する)を「×」と評価した。評価結果を下記表1の下段に水への分散性として記載した。
【0027】
【表1】
【0028】
また上記の実施例1~9及び比較例の分散性試験溶液を用いて、分散粒子の平均粒子径をレーザ回折式粒度分布測定装置LA-960(堀場製作所社)により測定した。測定結果を表2に示す。
油性組成物をピペットで採取して、その1滴(約0.1mL)を100mLの水に滴下した後3分間撹拌してから測定した。
【0029】
【表2】
【0030】
上記の試験の結果からA成分のグリセリンまたはジグリセリンに、カプリル酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステルまたはジグリセリン脂肪酸エステルとB成分のオレイン酸が結合したポリグリセリンは、ビタミンEを含有する油性組成物の水への分散性を保つために必須であることが理解できる。
また、B成分のオレイン酸が結合したポリグリセリンは、グリセリン単位の数が4~10であるオレイン酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することによって、水系液体中への分散性が向上することが明らかとなった。しかし比較例2、3の組成から明らかなように、グリセリン単位が2であるオレイン酸ジグリセリル-2を配合した組成は、水分散性が好ましくなかったことからB成分のグリセリン単位は4以上であることが、ビタミンEを含有する油性組成物の水への分散性を向上させるために必要であるものと考えられた。
また、ビタミンEを含有する油性組成物の水分散溶液の粒子径を測定した全ての実施例の試験溶液はいずれもその平均粒子径が20μm以下の極めて微細な粒子であった。
なお、比較例は全て水への分散性は認められず、平均粒子径を測定することが出来なかった。
【0031】
実施例1~9、比較例1~4の油性組成物の水分散性評価結果及び分散粒子径の測定結果から、油性組成物の好ましい分散性を得るためにはA成分としてカプリル酸グリセリル又はカプリル酸ジグリセリル、B成分としてオレイン酸ポリグリセリルの両方とも含有することが必須であることが明らかとなった。
なお、A成分、B成分のいずれかを含有しない比較例1~4の組成物は、いずれも分散性に劣っていた。
【0032】
3.ソフトカプセル製造
実施例1の組成物を、常法に従い4オーバルのゼラチンを主成分とするソフトカプセルを200mg/粒になるよう充填し、8kgを製造した。製造に際して特段の問題は発生しなかった。