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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】過熱保護回路及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
G05F1/56 320H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018224786
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020087250
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂口 薫
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-282118(JP,A)
【文献】特開2015-176327(JP,A)
【文献】特開2011-061966(JP,A)
【文献】米国特許第6867573(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置を過熱から保護する過熱保護回路であって、
前記半導体装置の温度に応じた感温電流を流す感温素子と、
前記感温素子に第一の定電流を供給する第一の定電流源と、
前記感温素子と前記第一の定電流源の間に設けられた第一のトランジスタと、
前記半導体装置の出力電流に応じたセンス電流に基づく電圧で前記第一のトランジスタのゲート電圧を制御する出力電流検出回路と、
前記感温電流と前記第一の定電流の比較結果に基づいた過熱検出信号を出力する出力回路と、
を備えたことを特徴とする過熱保護回路。
【請求項2】
前記出力電流検出回路は、
ゲートに前記半導体装置の出力電流に応じた電圧が入力される第二のトランジスタと、
前記第二のトランジスタの電流を制限する第二の定電流源と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の過熱保護回路。
【請求項3】
前記出力電流検出回路は、
前記第二のトランジスタと並列に接続され、ゲートに前記過熱検出信号に応じた電圧が入力される第三のトランジスタと、を備え、
前記出力回路が前記過熱検出信号を出力している間は、前記第三のトランジスタがオンして、前記第一のトランジスタが前記半導体装置の出力電流に関わらない所定の電流を流すように前記第一のトランジスタのゲート電圧を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の過熱保護回路。
【請求項4】
出力トランジスタと、
前記出力トランジスタのゲートに制御電圧を出力する駆動回路と、
前記駆動回路の制御電圧に応じて前記出力トランジスタのゲート電圧を制御する請求項1から3のいずれかに記載の過熱保護回路と、
を備えたことを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱保護回路及びそれを備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自己発熱する出力トランジスタを備えた半導体装置において、一般的に過熱保護回路が備えられる。過熱保護回路は、半導体装置の温度を測定し、測定温度が所定の過熱検出温度を超えると出力トランジスタの動作を停止して過熱を抑制することで、熱に起因する半導体装置の信頼性の低下を防止することが出来る。
【0003】
そのような過熱保護回路を備えた半導体装置において、出力トランジスタが所定の電流値以上の出力電流を流した場合に、過熱保護回路の温度検出手段にバイアス電流を供給するように構成することで、消費電流を低減する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4934491号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、消費電流を低減するように構成された特許文献1の過熱保護回路において、コンパレータにバイアス電流が常に供給されているため、更なる低消費電流化が困難である。コンパレータのバイアス電流を小さくした場合は、コンパレータの応答速度が低下する。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みて為され、応答速度を低下させることなく、消費電流を少なくした過熱保護回路と、それを備えた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の過熱保護回路を備えた半導体装置は、半導体装置の温度に応じた感温電流を流す感温素子と、感温素子に第一の定電流を供給する第一の定電流源と、感温素子と第一の定電流源の間に設けられた第一のトランジスタと、半導体装置の出力電流に応じたセンス電流に基づく電圧で第一のトランジスタのゲート電圧を制御する出力電流検出回路と、感温電流と第一の定電流の比較結果に基づいた過熱検出信号を出力する出力回路と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の過熱保護回路を備えた半導体装置によれば、過熱保護回路に流れる電流が出力トランジスタの出力電流に応じて少なくなるため、応答速度を低下させることなく、消費電流を小さくすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態の半導体装置を説明するための回路図である。
図2】本実施形態の過熱保護回路の他の例を説明するための回路図である。
図3】本実施形態の過熱保護回路の特性を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態の半導体装置を説明するための回路図である。
【0012】
本実施形態の半導体装置10は、出力トランジスタ30と、抵抗31、32と、基準電圧回路33と、誤差増幅器34と、過熱保護回路100と、を備えている。抵抗31、32と基準電圧回路33と誤差増幅器34は、出力トランジスタ30の駆動回路を構成している。
過熱保護回路100は、感温素子であるダイオード110と、出力電流検出回路111と、制御回路112と、定電流源120、121と、PMOSトランジスタ130と、NMOSトランジスタ131、133と、調整端子を備えたNMOSトランジスタ132とを備えている。出力電流検出回路111は、PMOSトランジスタ134、135と、定電流源122を備えている。制御回路112は、PMOSトランジスタ136、138と、NMOSトランジスタ137を備えている。
【0013】
半導体装置10の各構成要素の接続について説明する。
出力トランジスタ30は、ソースが電源端子12に、ドレインが出力端子13に接続されている。直列に接続された抵抗31と抵抗32は、出力端子13と接地端子11の間に接続されている。誤差増幅器34は、非反転入力端子に抵抗31と抵抗32の節点が接続され、反転入力端子に基準電圧回路33の出力端子が接続され、出力端子が出力トランジスタ30のゲートと過熱保護回路100の入出力端子14に接続されている。
【0014】
出力電流検出回路111は、第一入力端子15に入出力端子14が接続され、第二入力端子16に制御回路112の第二出力端子20が接続され、出力端子17がNMOSトランジスタ132のゲート及びドレインとNMOSトランジスタ133のゲートに接続されている。NMOSトランジスタ132のソースは、接地端子11に接続されている。NMOSトランジスタ133は、ソースがダイオード110のアノードに接続され、ドレインが定電流源120の一方の端子とPMOSトランジスタ130及びNMOSトランジスタ131のゲートに接続されている。ダイオード110のカソードは、接地端子11に接続されている。定電流源120の他方の端子は、電源端子12に接続されている。PMOSトランジスタ130は、ソースが電源端子12に接続され、ドレインがNMOSトランジスタ131のドレインと制御回路112の入力端子18に接続されている。定電流源121は、一方の端子がNMOSトランジスタ131のソースに接続され、他方の端子が接地端子11に接続されている。制御回路112は、第一出力端子19が入出力端子14に接続され、第二出力端子20がNMOSトランジスタ132の調整端子に接続されている。
【0015】
PMOSトランジスタ134は、ゲートが出力電流検出回路111の第一入力端子15に接続され、ソースが定電流源122の一方の端子とPMOSトランジスタ135のソースに接続され、ドレインが出力電流検出回路111の出力端子17とPMOSトランジスタ135のドレインに接続されている。PMOSトランジスタ135のゲートは、第二入力端子16に接続されている。定電流源122の他方の端子は、電源端子12に接続されている。
【0016】
PMOSトランジスタ136は、ゲートがNMOSトランジスタ137のゲートと制御回路112の入力端子18に接続され、ドレインがNMOSトランジスタ137のドレインとPMOSトランジスタ138のゲートと制御回路112の第二出力端子20に接続されている。PMOSトランジスタ136のソースは、電源端子12に接続されている。NMOSトランジスタ137のソースは、接地端子11に接続されている。PMOSトランジスタ138は、ドレインが制御回路112の第一出力端子19に接続され、ソースが電源端子12に接続されている。
【0017】
ここで、NMOSトランジスタ132は、調整端子に入力される信号に応じてW長とL長の比であるW/Lが調整されるものとする。
【0018】
掛かる構成の半導体装置10の動作について、以下に説明する。
【0019】
基準電圧回路33は、接地端子11の電圧Vssを基準とした一定の基準電圧Vrefを出力する。誤差増幅器34は、電圧Vfbが基準電圧Vrefと一致するように、出力トランジスタ30のゲート電圧を制御する。その結果、出力端子13の電圧Voutは、基準電圧Vrefに基づく所定の電圧となるように制御される。
【0020】
ダイオード110が順方向にバイアスされている時、ダイオード110の両端に発生する順方向電圧Vfは、接合温度に対しておおよそ-2mV/℃の負の温度係数を有する。
【0021】
出力電流検出回路111は、第一入力端子15に誤差増幅器34の出力電圧が入力され、出力トランジスタ30の出力電流Ioutに比例した第一センス電流であるセンス電流Is1をNMOSトランジスタ132のドレインに出力する。
【0022】
PMOSトランジスタ134は、出力トランジスタ30の出力電流Ioutに比例したセンス電流Is1を出力端子17に出力する。センス電流Is1は、第二入力端子16に過熱検出状態を示す信号、Lレベルが入力されていない場合、定電流源122が流す定電流値Ib2で飽和する。
【0023】
NMOSトランジスタ132は、ゲートに発生するセンス電流Is1に基づいたセンス電圧Vs1をNMOSトランジスタ133のゲートに出力する。ここで、センス電圧Vs1は、出力電流Ioutの変化に比例したセンス電流Is1に応じて連続的に変化する。
【0024】
出力電流Ioutが小さい時、センス電流Is1もそれに比例して小さいため、センス電圧Vs1は低くなる。センス電圧Vs1が低い場合、NMOSトランジスタ133と直列に接続されたダイオード110に流れる感温電流Itempは非常に小さい値となる。定電流源120の出力する定電流Ib1と比較して感温電流Itempが小さいと、定電流源120とNMOSトランジスタ133の節点N1は、定電流Ib1によって電源電圧Vinに固定される。節点N1の電圧がVinレベルである時、PMOSトランジスタ130はオフしNMOSトランジスタ131はオンするため、制御回路112の入力端子18は接地端子11の電圧Vss、Lレベルの電圧が入力される。即ち、過熱非検出状態である。
【0025】
制御回路112は、入力端子18にLレベルの信号が入力されると、PMOSトランジスタ136がオンするので、第二出力端子20の電圧はHレベルとなり、第一出力端子19は開放状態となる。従って、出力電流検出回路111は、第一入力端子15に入出力端子14の電圧が入力され、第二入力端子16にHレベルが入力される。そして、出力電流検出回路111は、出力トランジスタ30の出力電流Ioutに比例したセンス電流Is1を出力端子17に出力する。
【0026】
出力電流Ioutが大きい時、センス電流Is1もそれに比例して大きいため、センス電圧Vs1が高くなる。ここで、半導体装置10の接合温度が所定の過熱検出温度より低い場合、ダイオード110の順方向電圧Vfが高いため、NMOSトランジスタ133が流す感温電流Itempは非常に小さい値となる。従って、出力電流Ioutが小さい時と同様に、定電流Ib1と比較して感温電流Itempが小さいため、制御回路112の入力端子18にはLレベルの電圧が入力される。
【0027】
センス電圧Vs1が高く、且つ、半導体装置10の接合温度が所定の過熱検出温度より高い場合、ダイオード110の順方向電圧Vfが低くなるため、NMOSトランジスタ133が流す感温電流Itempが大きい値となる。定電流Ib1と比較して感温電流Itempが大きいと、節点N1の電圧は低下する。節点N1の電圧が低下しPMOSトランジスタ130がオンすると、制御回路112の入力端子18には電源端子12の電圧Vin、Hレベルの電圧が入力される。即ち、過熱検出状態である。
【0028】
PMOSトランジスタ130がオンしていれば、NMOSトランジスタ131がオフしない場合であっても、NMOSトランジスタ131の電流能力は定電流源121によって制限されるため、PMOSトランジスタ130によって制御回路112の入力端子はHレベルとなる。
【0029】
制御回路112は、過熱非検出状態において、第一出力端子19が開放状態で、出力トランジスタ30のゲートを制御しない。また、第二出力端子20からHレベルの信号が出力電流検出回路111の第二入力端子16とNMOSトランジスタ132の調整端子に出力される。そして、出力電流検出回路111は、PMOSトランジスタ135がオフするので、出力電流Ioutに比例したセンス電流Is1をNMOSトランジスタ132に出力する。また、NMOSトランジスタ132は、W/Lを過熱非検出状態における所定のW/Lに設定される。
【0030】
制御回路112は、過熱検出状態において、第一出力端子19からHレベルの電圧を出力トランジスタ30のゲートに出力し、出力トランジスタ30をオフすることで半導体装置10の過熱を抑制する。また、第二出力端子20からLレベルの信号が出力電流検出回路111の第二入力端子16とNMOSトランジスタ132の調整端子に出力される。そして、出力電流検出回路111は、PMOSトランジスタ135がオンするので、定電流源122が流す定電流値Ib2をセンス電流Is1としてNMOSトランジスタ132に出力する。従って、過熱検出状態において、出力トランジスタ30がオフして出力電流Ioutが小さくなっても、出力電流Ioutが大きい時と同様に過熱を検出し続けることが可能である。
【0031】
また、NMOSトランジスタ132は、W/Lを過熱検出状態における所定のW/Lに設定される。ここで、NMOSトランジスタ132の過熱検出状態のW/Lは、過熱非検出状態よりも小さく設定される。即ち、過熱検出温度は、過熱検出状態よりも過熱非検出状態の方が低く設定される。これにより、過熱検出温度付近でヒステリシスを有するので、過熱検出状態と過熱非検出状態の状態遷移において、回路が不安定になることを防止することが出来る。
【0032】
また、過熱保護回路100は、このような回路構成としたので、過熱非検出状態における消費電流はセンス電流Is1と感温電流Itempで決まる。即ち、過熱非検出状態であって出力電流Ioutが小さい場合は、センス電流Is1と感温電流Itempは微小であるため、過熱保護回路100の消費電流は非常に小さくなる。
【0033】
そして、出力電流Ioutが大きい場合はセンス電流Is1も大きいため、過熱検出時の遅延時間は短くなる。従って、応答速度を低下させることなく、消費電流を少なくした過熱保護回路と、それを備えた半導体装置を提供することが出来る。
【0034】
なお、出力電流検出回路111は、定電流源122を備えて、センス電流Is1が定電流値Ib2で飽和する構成としたが、出力電流Ioutに対する過熱検出温度の変化を大きくしたい場合は、定電流源122を備えなくてもよい。
【0035】
また、本実施形態において、出力端子13の電圧VOUTが一定の電圧となるような定電圧回路を例にして説明したが、自己発熱する出力トランジスタ30を備えた他の半導体装置にも、本実施形態の過熱保護回路100を適用することが出来る。
【0036】
図2は、本実施形態の過熱保護回路の他の例を説明するための回路図である。図2の回路図において、図1と同様の構成については、同一の符号を付与して、詳細な説明は省略する。
【0037】
過熱保護回路200は、図1の過熱保護回路100の構成要素から定電流源123とPMOSトランジスタ148を加え、且つ、出力電流検出回路111に代えて出力電流検出回路211を、制御回路112に代えて制御回路212を備えて構成される。
【0038】
出力電流検出回路211は、PMOSトランジスタ139、140、141、145、146と、NMOSトランジスタ142、143、144、147と、定電流源124、125と、を備えている。
【0039】
PMOSトランジスタ139は、ゲートが出力電流検出回路211の第一入力端子15に接続され、ソースが電源端子12に接続され、ドレインがPMOSトランジスタ140のソースに接続されている。PMOSトランジスタ140は、ゲートがPMOSトランジスタ141のゲートとドレインとNMOSトランジスタ143のドレインに接続され、ドレインがNMOSトランジスタ142のゲートとドレインとNMOSトランジスタ143のゲートとNMOSトランジスタ144のゲートに接続されている。PMOSトランジスタ141のソースは半導体装置10の出力端子13に接続されている。NMOSトランジスタ142、143、144の各ソースは接地端子11に接続されている。PMOSトランジスタ145は、ソースが電源端子12に接続され、ゲートとドレインがNMOSトランジスタ144のドレインと定電流源124の一方の端子とPMOSトランジスタ146のゲートに接続されている。定電流源124の他方の端子は、NMOSトランジスタ147のドレインに接続されている。NMOSトランジスタ147は、ゲートが出力電流検出回路211の第二入力端子16に接続され、ソースが接地端子11に接続されている。PMOSトランジスタ146は、ソースが定電流源125の一方の端子に接続され、ドレインが出力電流検出回路211の出力端子17に接続されている。定電流源125の他方の端子は、電源端子12に接続されている。
【0040】
定電流源123は、一方の端子が電源端子12に接続され、他方の端子がPMOSトランジスタ148のソースに接続されている。PMOSトランジスタ148は、ゲートがPMOSトランジスタ145のゲートに接続され、ドレインが節点N1に接続されている。制御回路212の第二出力端子20は、制御回路212の入力端子18に接続されている。
【0041】
過熱保護回路200の動作について説明する。
PMOSトランジスタ148の出力する第二センス電流であるセンス電流Is2は、出力トランジスタ30の出力電流Ioutに比例し、定電流源123が流す定電流で飽和する。
【0042】
節点N1の電圧は、定電流源120が出力する定電流Ib1とセンス電流Is2の和の電流と感温電流Itempの比較結果に基づいて変動する。このときの過熱保護回路200の動作は、先述の過熱保護回路100と同様である。
【0043】
過熱保護回路100は定電流Ib1が一定であるのに対して、過熱保護回路200は、比較対象となる感温電流Itempとセンス電流Is2が共に出力電流Ioutに対して相関を持って変化するため、過熱検出温度の出力電流Ioutに対する変化が小さい。更に、出力電流Ioutが大きい場合にセンス電流Is2が増加することで節点N1のインピーダンスが低下するため、ノイズに対して節点N1の電圧が変動し難くなり、動作が安定する。
【0044】
以上説明したように、過熱保護回路200を用いれば、過熱保護回路100の効果に加えて、出力電流Ioutの変化に対する過熱検出温度の変化を抑制し、ノイズ耐性を高くすることが出来る。
【0045】
次に、出力電流検出回路211の動作について説明する。
PMOSトランジスタ139は、出力トランジスタ30の出力電流Ioutに比例した電流を出力する。その電流は、PMOSトランジスタ140を介してNMOSトランジスタ142に入力される。NMOSトランジスタ142とカレントミラー接続されたNMOSトランジスタ143及び144は、NMOSトランジスタ142の入力電流に比例した電流を出力する。PMOSトランジスタ140及び141のゲート・ソース間電圧が一致するように設計することで、PMOSトランジスタ140のソース電圧は出力端子13の電圧Voutと略等しくなる。従って、PMOSトランジスタ139と出力トランジスタ30のソースドレイン間電圧が略等しくなり、電源電圧Vinに依存せずPMOSトランジスタ139は精度よく出力電流Ioutに比例した電流を流すことが出来る。
【0046】
NMOSトランジスタ144の出力する電流は、PMOSトランジスタ145に入力される。PMOSトランジスタ145とカレントミラー接続されたPMOSトランジスタ146及び148は、PMOSトランジスタ145の入力電流に比例した電流を出力する。PMOSトランジスタ146が出力端子17に出力するセンス電流Is1は、出力トランジスタ30の出力電流Ioutに比例し、定電流源125の電流で飽和する。
【0047】
第二入力端子16に過熱非検出状態を示すLレベルの信号が入力されていると、NMOSトランジスタ147はオフしているので、NMOSトランジスタ144の出力する電流がPMOSトランジスタ145に入力される。
【0048】
第二入力端子16に過熱検出状態を示すHレベルの信号が入力されると、NMOSトランジスタ147はオンするため、定電流源124の電流がPMOSトランジスタ145に入力される。この時、出力端子17に出力されるセンス電流Is1は、定電流源125の電流となる。ここで、定電流源124は、NMOSトランジスタ147がオンしたときに流れる電流を制限するために設けられている。
【0049】
以上説明したように過熱保護回路200は、PMOSトランジスタ139が電源電圧Vinに依存しない出力電流Ioutに比例したセンス電流を流すことが出来るため、過熱検出温度の電源電圧依存性を小さくすることが出来る。
【0050】
なお、出力電流検出回路111の定電流源122と出力電流検出回路211の定電流源123、125は、電流を制限する機能があれば良く、抵抗で構成しても良い。
【0051】
図3は、本実施形態の過熱保護回路の出力電流Ioutと過熱検出温度の特性を説明するための図である。図3において、横軸は出力トランジスタ30の出力電流Iout、縦軸は過熱検出温度TSDである。
【0052】
図中の点線Aは、従来の過熱保護回路の特性である。従来の過熱保護回路は、所定の出力電流値以下では過熱検出せず、所定の出力電流以上では一定の温度で過熱検出する。
【0053】
実線Bは、過熱保護回路100及び200の特性である。過熱検出温度は、出力電流Ioutが小さい領域では出力電流Ioutが小さい程高くなり、出力電流Ioutが大きい領域ではほぼ一定となる。出力電流Ioutが小さい領域において、過熱検出を停止することがないので、半導体装置の信頼性を高くすることが出来る。このような特性は、出力電流検出回路111の出力するセンス電流Is1が所定の出力電流値以上で飽和するよう構成することで得ることが出来る。
【0054】
破線Cは、過熱保護回路100及び200において、出力電流検出回路111の定電流源122に代えて抵抗を用いたときの特性である。過熱検出温度は、出力電流Ioutが小さい領域では出力電流Ioutが小さい程高くなり、出力電流Ioutが大きい領域で徐々に低下する。出力電流Ioutが大きい領域において、急な発熱時の検出速度が速くなるので、半導体装置が高温となることを抑制して、半導体装置の信頼性を更に高くすることが出来る。
【0055】
本発明の実施形態の半導体装置における過熱検出温度TSDは凡そ下式(1)に従う。
【0056】
【数1】
ここで、Tは半導体装置の接合温度、Vfはダイオードの順方向電圧、Is1はセンス電流、Ib1は定電流、Vf0は基準温度におけるダイオードの順方向電圧を示す定数である。K132、K133は夫々NMOSトランジスタ132、133のドレイン電流の比例定数K値であり、変数の添え字が各トランジスタの番号と対応している。
【0057】
過熱保護回路の各構成要素の設計定数の調整により、狙った過熱検出温度TSDとその出力電流Iout依存性を任意に定めることが出来る。例えば、NMOSトランジスタ132、133のW/Lを変更することで、特定の出力電流Ioutにおける過熱検出温度TSDを変更することが出来る。また、出力電流Ioutに対するセンス電流Is1の電流比を調整することで、Ioutに対するTSDの依存性を調整することが出来る。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
10 半導体装置
11 接地端子
12 電源端子
13 出力端子
30 出力トランジスタ
33 基準電圧回路
34 誤差増幅器
100、200 過熱保護回路
110 ダイオード
111、211 出力電流検出回路
112、212 制御回路
120、121、122、123、124、125 定電流源
図1
図2
図3