(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】ヘッドトラッキングを備えたマルチビューディスプレイ
(51)【国際特許分類】
H04N 13/366 20180101AFI20220822BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20220822BHJP
G02B 30/33 20200101ALI20220822BHJP
G09F 9/40 20060101ALI20220822BHJP
H04N 13/302 20180101ALI20220822BHJP
H04N 13/351 20180101ALI20220822BHJP
【FI】
H04N13/366
G02B5/18
G02B30/33
G09F9/40 302
H04N13/302
H04N13/351
(21)【出願番号】P 2018511752
(86)(22)【出願日】2016-09-04
(86)【国際出願番号】 US2016050321
(87)【国際公開番号】W WO2017041073
(87)【国際公開日】2017-03-09
【審査請求日】2019-07-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-02
(32)【優先日】2015-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514274546
【氏名又は名称】レイア、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LEIA INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】ファッタル,デイビッド エー.
【合議体】
【審判長】五十嵐 努
【審判官】樫本 剛
【審判官】田中 啓介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-237416(JP,A)
【文献】特開2012-103663(JP,A)
【文献】特表2007-507071(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104460115(CN,A)
【文献】特開2015-89104(JP,A)
【文献】特開2012-169858(JP,A)
【文献】特開平5-83746(JP,A)
【文献】特表2015-525497(JP,A)
【文献】特開2013-76724(JP,A)
【文献】特開2012-163854(JP,A)
【文献】特開2012-194257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 13/00
G02B 30/33
G02B 5/18
F21V 8/00
F21S 2/00
G09G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイであって、
マルチビュー画像の異なるビュー方向に対応する異なる主要角度方向を有する複数の光線を提供するように構成されたマルチビームバックライトと、
前記複数の光線のうちの光線(light beams)を変調して、シーンの複数のビューを前記マルチビュー画像(the multiview image)として提供するように構成された光弁アレイであり、前記複数のビューが、1次ビューのセット、および前記1次ビューセットに角度的に隣接する前記シーンの視点ビューを表す2次ビューを含む、光弁アレイとを含み、
前記マルチビームバックライトがマルビチーム要素のアレイを含み、前記マルチビーム要素のアレイの隣接するマルチビーム要素間の要素間距離が、隣接するマルチビューピクセル(adjacent multiview pixels)間のピクセル間距離
と実質的に等しく、マルチビューピクセル(a multiview pixel)が、個々のマルチビーム要素に対応する前記光弁アレイ内の光弁のセット(a set of light valves)を表し、
前記ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイが、ユーザのトラッキングされた場所に応じて、前記1次ビューセット、または前記2次ビューおよび前記1次ビューセットのビューのサブセットを含む拡張ビューセットのいずれかを選択的に提供するように構成される、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
【請求項2】
前記マルチビームバックライトが、
その長さに沿った伝搬方向に光を誘導するように構成された光導波路と、
前記光導波路の長さに沿って互いに離間した複数のマルチビーム要素であり、前記複数のマルチビーム要素のうちのマルチビーム要素(a multibeam element)が、前記異なる主要角度方向を有する前記複数の光線として前記誘導光の一部分を前記光導波路から外部結合するように構成される、複数のマルチビーム要素とを含み、
前記マルチビーム要素(the multibeam element)のサイズが、前記光弁アレイの光弁(a light valve)のサイズと同等である、請求項1に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
【請求項3】
前記マルチビーム要素の前記サイズが、前記光弁のサイズの50%から200%の間である、請求項2に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
【請求項4】
前記マルチビーム要素が、前記誘導光の前記一部分を前記複数の光線として回折的に外部結合するように構成された回折格子を含む、請求項2または3に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
【請求項5】
前記マルチビーム要素が、マイクロ反射要素およびマイクロ屈折要素のうちの一方または両方を含み、前記マイクロ反射要素が、前記誘導光の一部分を反射的に外部結合するように構成され、前記マイクロ屈折要素が、前記誘導光の一部分を屈折的に外部結合するように構成される、請求項2から4のいずれか一項に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
【請求項6】
前記マルチビーム要素が、前記光導波路の第1の表面および第2の表面の一方または両方に位置し、前記マルチビーム要素が、前記第1の表面を通して前記誘導光の位一部分を外部結合するように構成される、請求項2から5のいずれか一項に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
【請求項7】
前記マルチビームバックライトの入力に光学的に結合される光源をさらに含み、前記光源が、非ゼロ伝搬角を有し、かつ/または所定のコリメーション因子に従ってコリメートされた誘導光として前記マルチビームバックライト内を誘導される光を提供するように構成される、請求項2から6のいずれか一項に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
【請求項8】
前記非ゼロ伝搬角が、前記複数の光線の発出パターンを前記ユーザに向かって傾斜させるように設定される、請求項7に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイを含むヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステムであって、前記マルチビューディスプレイに対する前記ユーザの場所を決定するように構成されたヘッドトラッカをさらに含み、決定された第1の場所にいるときには、前記ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイが、前記1次ビューセットを選択的に提供するように構成され、決定された第2の場所にいるときには、前記ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイが、前記拡張ビューセットを提供するように構成される、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
【請求項10】
前記ヘッドトラッカが、
前記ユーザの画像を取り込むように構成されたカメラと、
前記取り込まれた画像内の前記ユーザの場所を決定するように構成された画像プロセッサとを含む、請求項9に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
【請求項11】
ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステムであって、
シーンの複数のビューをマルチビュー画像(a multiview image)として提供するように構成されたマルチビューディスプレイであり、前記複数のビューが、前記シーンの1次ビューのセット、および前記1次ビューセットに角度的に隣接するシーン視点を表す2次ビューを含む、マルチビューディスプレイと、
前記マルチビューディスプレイに対するユーザの場所を決定するように構成されたヘッドトラッカとを含み、
前記マルチビューディスプレイがマルチビーム要素のアレイを含み、前記マルチビーム要素のアレイの隣接するマルチビーム要素間の要素間距離が、隣接するマルチビューピクセル(adjacent multiview pixels)間のピクセル間距離
と実質的に等しく、マルチビューピクセル(a multiview pixel)が、個々のマルチビーム要素に対応する前記光弁アレイ内の光弁のセット(a set of light valves)を表し、
決定された第1の場所にいるときには、前記マルチビューディスプレイが、前記1次ビューセットを提供するように構成され、決定された第2の場所にいるときには、前記マルチビューディスプレイが、前記2次ビューおよび前記1次ビューセットのビューのサブセットを含む拡張ビューセットを提供するように構成される、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
【請求項12】
前記マルチビューディスプレイが、
前記複数のビューの異なるビュー方向に対応する異なる主要角度方向を有する複数の光線を提供するように構成されたマルチビームバックライトと、
前記複数の光線を変調して、前記複数のビューを提供するように構成された光弁アレイとを含む、請求項11に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
【請求項13】
前記マルチビームバックライトが、
その長さに沿った伝搬方向に光を誘導するように構成された光導波路と、
前記光導波路の長さに沿って互いに離間したマルチビーム要素のアレイであり、前記マルチビーム要素アレイのマルチビーム要素が、前記異なる主要角度方向を有する前記複数の光線として前記誘導光の一部分を前記光導波路から外部結合するように構成される、マルチビーム要素のアレイとを含み、
前記マルチビーム要素のサイズが、前記光弁アレイの光弁のサイズと同等である、請求項12に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
【請求項14】
前記マルチビーム要素が、前記光導波路に光学的に接続されて前記誘導光の前記一部分を外部結合する回折格子、マイクロ反射要素、およびマイクロ屈折要素のうちの1つまたは複数を含む、請求項13に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
【請求項15】
前記ヘッドトラッカが、
前記ユーザの画像を取り込むように構成されたカメラと、
前記取り込まれた画像内の前記ユーザの場所を決定するように構成された画像プロセッサとを含み、
前記決定された場所が、前記第1の場所および前記第2の場所のうちの一方に対応する、請求項11から14のいずれか一項に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
【請求項16】
前記マルチビューディスプレイから発出される光の発出パターンを、前記ヘッドトラッカから提供される前記ユーザの決定された場所に向かって選択的に傾斜させるように構成された光源をさらに含む、請求項11から15のいずれか一項に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
【請求項17】
ヘッドトラッキングを利用したマルチビュー表示動作の方法であって、
マルチビューディスプレイを用いてシーンの複数のビューを提供するステップであり、前記複数のビューが、1次ビューのセット、および前記1次ビューセットに角度的に隣接するシーン視点を表す2次ビューを含む、ステップと、
前記マルチビューディスプレイに対するユーザの場所を決定するステップであり、前記マルチビューディスプレイが、前記ユーザが第1の場所にいると決定されたときには前記1次ビューセットを選択的に提供し、前記ユーザが第2の場所にいると決定されたときには拡張ビューセットを選択的に提供する、ステップとを含み、
前記マルチビューディスプレイがマルチビーム要素のアレイを含み、前記マルチビーム要素のアレイの隣接するマルチビーム要素間の要素間距離が、隣接するマルチビューピクセル(adjacent multiview pixels)間のピクセル間距離
と実質的に等しく、マルチビューピクセル(a multiveiw pixel)が、個々のマルチビーム要素に対応する前記光弁アレイ内の光弁のセットを表し、
前記拡張ビューセットが、前記2次ビュー、および前記1次ビューセットのビューのサブセットを含む、方法。
【請求項18】
複数のビューを提供するステップが、
光導波路の長さに沿った伝搬方向に光を誘導するステップと、
前記マルチビーム要素のアレイのマルチビーム要素(a multibeam element)を用いて前記誘導光の一部分を前記光導波路から外部結合して、前記マルチビューディスプレイのそれぞれ異なるビュー方向に対応する異なる主要角度方向を有する複数の外部結合光線を提供するステップと、
複数の光弁を用いて前記複数の外部結合光線を変調して、前記シーンの前記複数のビューをマルチビュー画像として提供するステップとを含み、
前記マルチビーム要素のサイズが、前記複数の光弁の光弁のサイズと同等である、請求項17に記載のマルチビュー表示動作の方法。
【請求項19】
前記マルチビーム要素が、前記誘導光の前記一部分を外部結合するように前記光導波路に光学的に接続された回折格子、マイクロ反射要素、およびマイクロ屈折要素のうちの1つまたは複数を含む、請求項18に記載のマルチビュー表示動作の方法。
【請求項20】
前記ユーザの場所を決定するステップが、
カメラを用いて前記ユーザの画像を取り込むステップと、
画像プロセッサを用いて前記取り込まれた画像内の前記ユーザの位置を確立するステップであり、前記確立される位置が、前記決定された第1の場所および前記決定された第2の場所のうちの一方に対応する、ステップとを含む、請求項17から19のいずれか一項に記載のマルチビュー表示動作の方法。
【請求項21】
前記マルチビューディスプレイから発出される光の発出パターンを、前記ユーザの前記決定された場所に対応するように傾斜させるステップをさらに含む、請求項17から20のいずれか一項に記載のマルチビュー表示動作の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によりその全体を本明細書に組み込む、2015年9月5日出願の米国仮特許出願第62/214979号の優先権を主張するものである。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
なし
【背景技術】
【0003】
電子ディスプレイは、幅広い様々なデバイスおよび製品のユーザに情報を通信するためのほぼどこにでもある媒体である。最も一般的に利用される電子ディスプレイは、陰極線管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンスディスプレイ(EL)、有機発光ダイオード(OLED)およびアクティブマトリクスOLED(AMOLED)ディスプレイ、電気泳動ディスプレイ(EP)、ならびに電気機械的または電気流体的光変調を利用する様々なディスプレイ(例えばデジタルマイクロミラーデバイス、エレクトロウェッティングディスプレイなど)を含む。一般に、電子ディスプレイは、アクティブディスプレイ(すなわち光を発出するディスプレイ)またはパッシブディスプレイ(すなわち別の光源から供給される光を変調するディスプレイ)のいずれかに分類することができる。アクティブディスプレイの最も分かりやすい例としては、CRT、PDP、およびOLED/AMOLEDがある。発出光を考慮したときに通常パッシブに分類されるディスプレイは、LCDおよびEPディスプレイである。パッシブディスプレイは、限定されるわけではないが本質的に低消費電力であるなどの魅力的な性能特性を示すことが多いが、発光する能力がないために、多くの実用的な応用分野においてある程度使用が制限されることがある。
【0004】
発光に関連するパッシブディスプレイの制限を克服するために、多くのパッシブディスプレイは、外部光源に結合される(coupled to an external light source)。結合された光源(coupled light source)によって、本来パッシブであるこれらのディスプレイが光を発出し、実質的にアクティブディスプレイとして機能することができることもある。このような結合される光源の例は、バックライトである。バックライトは、本来パッシブであるディスプレイの背後に配置されてそのパッシブディスプレイを照明する光源(パネルバックライトであることが多い)として機能することができる。例えば、バックライトは、LCDまたはEPディスプレイに結合することができる(a backlight may be coupled to an LCD or an EP display)。バックライトは、LCDまたはEPディスプレイを通過する光を発出する。発出された光は、LCDまたはEPディスプレイによって変調され、この変調された光が、LCDまたはEPディスプレイから発出される。バックライトは、白色光を発出するように構成されることが多い。この場合には、カラーフィルタを使用して、白色光をディスプレイで使用される様々な色に変換する。カラーフィルタは、例えば、LCDまたはEPディスプレイの出力に配置してもよいし(それほど一般的ではない)、あるいはバックライトとLCDまたはEPディスプレイの間に配置してもよい。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、以下の[1]から[22]を含む。
[1]ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイであって、
マルチビュー画像の異なるビュー方向に対応する異なる主要角度方向を有する複数の光線を提供するように構成されたマルチビームバックライトと、
上記複数の光線のうちの光線を変調して、シーンの複数のビューを上記マルチビュー画像として提供するように構成された光弁アレイであり、上記複数のビューが、1次ビューのセット、および上記1次ビューセットに角度的に隣接する上記シーンの視点ビューを表す2次ビューを含む、光弁アレイとを含み、
上記ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイが、ユーザのトラッキングされた場所に応じて、上記1次ビューセット、または上記2次ビューおよび上記1次ビューセットのビューのサブセットを含む拡張ビューセットのいずれかを選択的に提供するように構成される、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
[2]上記マルチビームバックライトが、
その長さに沿った伝搬方向に光を誘導するように構成された光導波路と、
上記光導波路の長さに沿って互いに離間した複数のマルチビーム要素であり、上記複数のマルチビーム要素のうちのマルチビーム要素が、上記異なる主要角度方向を有する上記複数の光線として上記誘導光の一部分を上記光導波路から外部結合するように構成される、複数のマルチビーム要素とを含み、
上記マルチビーム要素のサイズが、上記光弁アレイの光弁のサイズと同等である、上記[1]に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
[3]上記マルチビーム要素の上記サイズが、上記光弁のサイズの50%から200%の間である、上記[2]に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
[4]上記マルチビーム要素が、上記誘導光の上記一部分を上記複数の光線として回折的に外部結合するように構成された回折格子を含む、上記[2]に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
[5]上記マルチビーム要素が、マイクロ反射要素およびマイクロ屈折要素のうちの一方または両方を含み、上記マイクロ反射要素が、上記誘導光の一部分を反射的に外部結合するように構成され、上記マイクロ屈折要素が、上記誘導光の一部分を屈折的に外部結合するように構成される、上記[2]に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
[6]上記マルチビーム要素が、上記光導波路の第1の表面および第2の表面の一方または両方に位置し、上記マルチビーム要素が、上記第1の表面を通して上記誘導光の位一部分を外部結合するように構成される、上記[2]に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
[7]上記マルチビームバックライトの入力に光学的に結合される光源をさらに含み、上記光源が、非ゼロ伝搬角を有し、かつ/または所定のコリメーション因子に従ってコリメートされた誘導光として上記マルチビームバックライト内を誘導される光を提供するように構成される、上記[2]に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
[8]上記非ゼロ伝搬角が、上記複数の光線の発出パターンを上記ユーザに向かって傾斜させるように設定される、上記[7]に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
[9]上記[1]に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイを含むヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステムであって、上記マルチビューディスプレイに対する上記ユーザの場所を決定するように構成されたヘッドトラッカをさらに含み、決定された第1の場所にいるときには、上記ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイが、上記1次ビューセットを選択的に提供するように構成され、決定された第2の場所にいるときには、上記ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイが、上記拡張ビューセットを提供するように構成される、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
[10]上記ヘッドトラッカが、
上記ユーザの画像を取り込むように構成されたカメラと、
上記取り込まれた画像内の上記ユーザの場所を決定するように構成された画像プロセッサとを含む、上記[9]に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
[11]ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステムであって、
シーンの複数のビューをマルチビュー画像として提供するように構成されたマルチビューディスプレイであり、上記複数のビューが、上記シーンの1次ビューのセット、および上記1次ビューセットに角度的に隣接するシーン視点を表す2次ビューを含む、マルチビューディスプレイと、
上記マルチビューディスプレイに対するユーザの場所を決定するように構成されたヘッドトラッカとを含み、決定された第1の場所にいるときには、上記マルチビューディスプレイが、上記1次ビューセットを提供するように構成され、決定された第2の場所にいるときには、上記マルチビューディスプレイが、上記2次ビューおよび上記1次ビューセットのビューのサブセットを含む拡張ビューセットを提供するように構成される、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
[12]上記マルチビューディスプレイが、
上記複数のビューの異なるビュー方向に対応する異なる主要角度方向を有する複数の光線を提供するように構成されたマルチビームバックライトと、
上記複数の光線を変調して、上記複数のビューを提供するように構成された光弁アレイとを含む、上記[11]に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
[13]上記マルチビームバックライトが、
その長さに沿った伝搬方向に光を誘導するように構成された光導波路と、
上記光導波路の長さに沿って互いに離間したマルチビーム要素のアレイであり、上記マルチビーム要素アレイのマルチビーム要素が、上記異なる主要角度方向を有する上記複数の光線として上記誘導光の一部分を上記光導波路から外部結合するように構成される、マルチビーム要素のアレイとを含み、
上記マルチビーム要素のサイズが、上記光弁アレイの光弁のサイズと同等である、上記[12]に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
[14]上記マルチビーム要素が、上記光導波路に光学的に接続されて上記誘導光の上記一部分を外部結合する回折格子、マイクロ反射要素、およびマイクロ屈折要素のうちの1つまたは複数を含む、上記[13]に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
[15]上記マルチビーム要素アレイの隣接するマルチビーム要素間の要素間距離が、隣接するマルチビューピクセル間のピクセル間距離に対応し、マルチビューピクセルが、個々のマルチビーム要素に対応する上記光弁アレイ内の光弁のセットを表す、上記[13]に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
[16]上記ヘッドトラッカが、
上記ユーザの画像を取り込むように構成されたカメラと、
上記取り込まれた画像内の上記ユーザの場所を決定するように構成された画像プロセッサとを含み、
上記決定された場所が、上記第1の場所および上記第2の場所のうちの一方に対応する、上記[11]に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
[17]上記マルチビューディスプレイから発出される光の発出パターンを、上記ヘッドトラッカから提供される上記ユーザの決定された場所に向かって選択的に傾斜させるように構成された光源をさらに含む、上記[11]に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
[18]ヘッドトラッキングを利用したマルチビュー表示動作の方法であって、
マルチビューディスプレイを用いてシーンの複数のビューを提供するステップであり、上記複数のビューが、1次ビューのセット、および上記1次ビューセットに角度的に隣接するシーン視点を表す2次ビューを含む、ステップと、
上記マルチビューディスプレイに対するユーザの場所を決定するステップであり、上記マルチビューディスプレイが、上記ユーザが第1の場所にいると決定されたときには上記1次ビューセットを選択的に提供し、上記ユーザが第2の場所にいると決定されたときには拡張ビューセットを選択的に提供する、ステップとを含み、
上記拡張ビューセットが、上記2次ビュー、および上記1次ビューセットのビューのサブセットを含む、方法。
[19]複数のビューを提供するステップが、
光導波路の長さに沿った伝搬方向に光を誘導するステップと、
マルチビーム要素を用いて上記誘導光の一部分を上記光導波路から外部結合して、上記マルチビューディスプレイのそれぞれ異なるビュー方向に対応する異なる主要角度方向を有する複数の外部結合光線を提供するステップと、
複数の光弁を用いて上記複数の外部結合光線を変調して、上記シーンの上記複数のビューをマルチビュー画像として提供するステップとを含み、
上記マルチビーム要素のサイズが、上記複数の光弁の光弁のサイズと同等である、上記[18]に記載のマルチビュー表示動作の方法。
[20]上記マルチビーム要素が、上記誘導光の上記一部分を外部結合するように上記光導波路に光学的に接続された回折格子、マイクロ反射要素、およびマイクロ屈折要素のうちの1つまたは複数を含む、上記[19]に記載のマルチビュー表示動作の方法。
[21]上記ユーザの場所を決定するステップが、
カメラを用いて上記ユーザの画像を取り込むステップと、
画像プロセッサを用いて上記取り込まれた画像内の上記ユーザの位置を確立するステップであり、上記確立される位置が、上記決定された第1の場所および上記決定された第2の場所のうちの一方に対応する、ステップとを含む、上記[18]に記載のマルチビュー表示動作の方法。
[22]上記マルチビューディスプレイから発出される光の発出パターンを、上記ユーザの上記決定された場所に対応するように傾斜させるステップをさらに含む、上記[18]に記載のマルチビュー表示動作の方法。
本明細書に記載する原理による実施例および実施形態の様々な特徴は、以下の詳細な説明を添付の図面と関連付けて参照すれば、より容易に理解することができる。これらの図面では、同じ参照番号は同じ構造要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】[
図1A]本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるマルチビューディスプレイを示す斜視図である。[
図1B]本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるマルチビューディスプレイの
ビュー方向に対応する特定の主要角度方向を有する光線の角度成分を表す図である。
【
図2】本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例における回折格子を示す断面図である。
【
図3】本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるヘッドトラッキングマルチビューディスプレイを示す断面図である。
【
図4】[
図4A]本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるヘッドトラッキングマルチビューディスプレイを示す断面図である。[
図4B]本明細書に記載する原理による実施形態による、別の実施例における
図4Aのヘッドトラッキングマルチビューディスプレイを示す断面図である。
【
図5A-B】[
図5A]本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるマルチビームバックライトを含むヘッドトラッキングマルチビューディスプレイを示す断面図である。[
図5B]本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるマルチビームバックライトを含むヘッドトラッキングマルチビューディスプレイを示す平面図である。
【
図5C】本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるマルチビームバックライトを含むヘッドトラッキングマルチビューディスプレイを示す斜視図である。
【
図6A】本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるマルチビーム要素を含むマルチビームバックライトの一部分を示す断面図である。
【
図6B】本明細書に記載する原理による別の実施形態による、実施例におけるマルチビーム要素を含むマルチビームバックライトの一部分を示す断面図である。
【
図7A】本明細書に記載する原理による別の実施形態による、実施例におけるマルチビーム要素を含むマルチビームバックライトの一部分を示す断面図である。
【
図7B】本明細書に記載する原理による別の実施形態による、実施例におけるマルチビーム要素を含むマルチビームバックライトの一部分を示す断面図である。
【
図8】本明細書に記載する原理による別の実施形態による、実施例におけるマルチビーム要素を含むマルチビームバックライトの一部分を示す断面図である。
【
図9】[
図9A]本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるヘッドトラッキングマルチビューディスプレイを示す断面図である。[
図9B]本明細書に記載する原理による実施形態による、別の実施例における
図9Aのヘッドトラッキングマルチビューディスプレイを示す断面図である。
【
図10】本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステムを示すブロック図である。
【
図11】本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるヘッドトラッキングを利用するマルチビュー表示動作の方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
特定の実施例および実施形態は、上述の図面に示す特徴に加えて、またはそれらの代わりに、他の特徴を有する。以下、それらの特徴およびその他の特徴について、上記の図面を参照して説明する。
【0008】
本明細書に記載する原理による実施例および実施形態は、ユーザ位置または「ヘッドトラッキング」を利用するマルチビューまたは3次元(3D)画像ディスプレイを提供する。本明細書に記載する原理による実施形態は、マルチビューディスプレイを利用して、ユーザの位置に応じてマルチビュー画像によって表現されるシーンの様々なビューの様々なセットを提供することができる。特に、ユーザが第1の場所に位置しているときに、1次ビューのセットを提供することができる。このビューの1次セットは、ある視野角内でユーザにマルチビュー画像を提供するように構成される。さらに、ユーザが第2の場所に移動するとき、または第2の場所に位置しているときに、ビューの拡張セットを提供することができる。拡張ビューセットは、1次ビューおよび2次ビューのサブセットを含む。2次ビューは、ビューの1次セットの角度範囲に角度的に隣接するが実質的にその角度範囲の外にあるシーンの視方向またはビュー方向を表す。ユーザの異なる位置に対応する異なるビューセットを提供することにより、表示されているマルチビュー画像の有効視野(FOV)角を増大させることができる。FOV角を増大させることにより、例えば斜めの角度でマルチビュー画像を見るときに起こる可能性があるマルチビューまたは3次元(3D)画像の知覚のいわゆる「ジャンプ」または「反転視」を低減または緩和することができる。
【0009】
様々な実施形態では、ヘッドトラッキングによって、ユーザの場所または位置をマルチビューディスプレイに提供することができる。すなわち、ユーザの位置は、ユーザの頭部の位置をトラッキングすることによって決定または推測することができる。したがって、限定を目的とするわけではないが、説明を容易にするために、本明細書に記載する実施形態を、例えばヘッドトラッキングを利用する「ヘッドトラッキング」マルチビューディスプレイ、システム、および方法と呼ぶこともある。
【0010】
本明細書では、「マルチビューディスプレイ」は、マルチビュー画像の様々なビューを様々な
ビュー方向で提供するように構成された電子ディスプレイまたはディスプレイシステムとして定義される。
図1Aは、本明細書に記載する原理による実施形態による、1実施例のマルチビューディスプレイ10を示す斜視図である。
図1Aに示すように、マルチビューディスプレイ10は、見る対象のマルチビュー画像を表示するスクリーン12を含む。マルチビューディスプレイ10は、このマルチビュー画像の様々なビュー14を、スクリーン12に対する様々な
ビュー方向16に提供する。
ビュー方向16は、スクリーン12から様々な異なる主要角度方向に延びる矢印として示してあり、様々なビュー14は、それらの矢印(すなわち
ビュー方向16を示す矢印)の終端に網掛けした多角形として示してあり、また、4つのビュー14と4つの
ビュー方向16しか示していないが、全て例示を目的としてものであり、限定を目的としたものではない。なお、
図1Aでは様々なビュー14がスクリーンの上方にあるものとして示してあるが、マルチビュー画像がマルチビューディスプレイ10に表示されたとき、これらのビュー14は、実際にはスクリーン12上、またはスクリーン12の近傍に見えることに留意されたい。ビュー14をスクリーン12の上方に示しているのは、単に説明を簡略にするためであり、これらの
ビュー方向16のうち特定のビュー14に対応する各
ビュー方向からマルチビューディスプレイ10を見ていることを表すためのものである。
図1Aは、また、「2次ビュー14’」も示している。図示の2次ビュー14’は、ビュー14(すなわちビュー14の1次セット)の角度範囲に角度的に隣接するが実質的にその角度範囲の外にある、このシーンの視点
(a perspective of the scene)を表す、すなわち2次
ビュー方向16’を有する。
【0011】
マルチビューディスプレイの
ビュー方向、すなわち
ビュー方向に対応する方向を有する光線は、一般に、本明細書の定義では角度成分{θ、φ}で与えられる主要角度方向を有する。角度成分θは、本明細書では、光線の「高度成分」または「仰角」と呼ぶ。角度成分φは、光線の「方位成分」または「方位角」と呼ぶ。定義では、仰角θは、垂直平面(例えばマルチビューディスプレイスクリーンの平面に対して直交する面)内の角度であり、方位角φは、水平面(例えばマルチビューディスプレイスクリーン平面に対して平行な面)内の角度である。
図1Bは、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるマルチビューディスプレイの
ビュー方向(例えば
図1Aの
ビュー方向16)に対応する特定の主要角度方向を有する光線20の角度成分{θ、φ}の図示である。さらに、光線20は、本明細書の定義では、特定の点から発出される、または放射する。すなわち、定義では、光線20は、マルチビューディスプレイ内の特定の原点に関連付けられた中心放射線を有する。
図1Bは、光線(または
ビュー方向)の原点Oも示している。
【0012】
さらに、本明細書では、「マルチビュー画像」および「マルチビューディスプレイ」という用語で使用する「マルチビュー」という用語は、様々な視点を表す、またはその複数のビューのうちのビュー間で角度のばらつきを含む複数のビューとして定義される。さらに、本明細書では、「マルチビュー」という用語は、本明細書の定義では、2つを超える異なるビュー(すなわち最低で3つのビューであり、一般的には3つを超えるビュー)を明示的に含む。したがって、本明細書で利用する「マルチビューディスプレイ」は、シーンまたは画像を表すために異なるビューを2つしか含まない立体視ディスプレイとは明示的に区別される。ただし、マルチビュー画像およびマルチビューディスプレイは本明細書の定義では2つを超えるビューを含むが、マルチビュー画像は、それらのマルチビュービューのうちの2つのみ(すなわち各眼あたり1つのビュー)を一度に見るように選択することにより、画像の立体視対として見る(すなわちマルチビューディスプレイ上で)ことができる。
【0013】
「マルチビューピクセル」は、本明細書では、マルチビューディスプレイの同様の複数の異なるビューのそれぞれの「ビュー」ピクセルを表すサブピクセルのセットとして定義される。特に、マルチビューピクセルは、マルチビュー画像の様々なビューのそれぞれのビューピクセルに対応する、またはマルチビュー画像の様々なビューのそれぞれのビューピクセルを表す、個々のサブピクセルを有することができる。さらに、マルチビューピクセルのサブピクセルは、本明細書の定義では、各サブピクセルが様々なビューのうちの対応するビューの所定のビュー方向と関連付けられるので、いわゆる「方向ピクセル」である。さらに、様々な実施例および実施形態によれば、マルチビューピクセルのサブピクセルによって表される様々なビューピクセルは、様々なビューのそれぞれにおいて、等価な、または少なくとも実質的には同様の位置または座標を有することができる。例えば、第1のマルチビューピクセルは、マルチビュー画像の様々なビューのそれぞれにおいて{x1、y1}に位置するビューピクセルに対応する個々のサブピクセルを有することがあり、第2のマルチビューピクセルは、様々なビューのそれぞれにおいて{x2、y2}に位置するビューピクセルに対応する個々のサブピクセルを有することがある、などである。
【0014】
いくつかの実施形態では、マルチビューピクセル中のサブピクセルの数が、マルチビューディスプレイのビューの数と等しいことがある。例えば、マルチビューピクセルは、64個の異なるビューを有するマルチビューディスプレイと関連付けられた64個のサブピクセルを提供することがある。別の例では、マルチビューディスプレイがビューの8×4アレイ(すなわち32個のビュー)を提供し、マルチビューピクセルが、32個のサブピクセル(すなわち各ビュー当たり1つ)を含むこともある。さらに、それぞれの異なるサブピクセルは、例えば上記の例では64個の異なるビューに対応する、または32個の異なるビューに対応するビュー方向のうちの異なる1つに対応する関連する方向(すなわち光線の主要角度方向)を有することができる。さらに、いくつかの実施形態によれば、マルチビューディスプレイのマルチビューピクセルの数は、マルチビューディスプレイのビュー中の「ビュー」ピクセル(すなわち選択されたビューを構成するピクセル)の数と実質的に等しいことがある。例えば、ビューが640×480個のビューピクセル(すなわち640×480ビュー解像度)を含む場合には、マルチビューディスプレイは、307200個のマルチビューピクセルを有することができる。別の例では、ビューが100×100個のビューピクセルを含む場合には、マルチビューディスプレイは、総数で10000(すなわち100×100=10000)個のマルチビューピクセルを含むことができる。
【0015】
本明細書では、「光導波路」は、全反射を用いてその内部で光を誘導する構造として定義される。特に、光導波路は、光導波路の動作波長で実質的に透明なコアを含むことができる。「光導波路」という用語は、一般に、全反射を利用して光導波路の誘電体材料とその光導波路を取り囲む材料または媒質との間の界面で光を誘導する、誘電体光学導波路を指す。定義では、全反射のための条件は、光導波路の屈折率が光導波路材料の表面に隣接する周囲の媒質の屈折率より大きいことである。いくつかの実施形態では、全反射をさらに促進するために、光導波路は、上述の屈折率の差に加えて、またはその代わりに、コーティングを含むこともできる。このコーティングは、例えば反射性コーティングとすることができる。光導波路は、これらに限定されるわけではないが、平板導波路またはスラブ導波路、およびストリップ導波路のうちの一方または両方を含むいくつかの光導波路のうちの任意のものにすることができる。
【0016】
さらに、本明細書では、「平板光導波路」など光導波路に用いられるときの「平板」という用語は、「スラブ」導波路と呼ばれることもある、区分的または微分的に平面状の層またはシートとして定義される。特に、平板光導波路は、その光導波路の頂面および底面(すなわち対向する表面)によって画定される2つの実質的に直交する方向に光を誘導するように構成された光導波路として定義される。さらに、本明細書の定義では、頂面および底面は互いに分離されており、少なくとも微分的な意味では実質的に互いに平行であることがある。すなわち、光導波路の任意の微分小区画内では、頂面と底面は実質的に平行である、または同一平面状にある。
【0017】
いくつかの実施形態では、平板光導波路は、実質的に平坦であり(すなわち平面に制限され)、したがって、平板光導波路は、平面光導波路である。他の実施形態では、平板光導波路は、1つの次元、または2つの直交する次元に湾曲していてもよい。例えば、平板光導波路を1つの次元に湾曲させて、円筒形の平板光導波路を形成することもできる。ただし、いかなる湾曲も、光導波路内で全反射が維持されて光を誘導することを保証するのに十分に大きな曲率半径を有する。
【0018】
本明細書では、「回折格子」は、一般に、その回折格子に入射する光の回折をもたらすように配置された複数のフィーチャ(すなわち回折フィーチャ)として定義される。いくつかの実施例では、複数のフィーチャは、周期的または準周期的に配置されることがある。例えば、回折格子は、1次元(1D)アレイに配置された複数のフィーチャ(例えば材料表面の複数の溝またはリッジ)を含むことがある。他の例では、回折格子は、フィーチャの2次元(2D)アレイとすることもできる。回折格子は、例えば材料表面のバンプまたは穴の2Dアレイとすることもできる。
【0019】
したがって、本明細書の定義では、「回折格子」は、その回折格子に入射する光の回折をもたらす構造である。光が光導波路から回折格子に入射すると、それによりもたらされる回折または回折的散乱は、回折格子が光導波路から出る光を回折によって結合することができる(the diffraction grating may couple light out of the light guide by diffraction)という「回折結合(diffractive coupling)」を生じることがあるので、この回折または回折的散乱は、「回折結合」と呼ばれることもある。回折格子は、また、回折によって(すなわち回折角で)、光を方向変更する、または光の角度を変化させる。特に、回折の結果として、回折格子を出る光は、一般に、回折格子に入射した光(すなわち入射光)の伝搬方向とは異なる伝搬方向を有する。回折による光の伝搬方向の変化を、本明細書では、「回折的方向変更」と呼ぶ。したがって、回折格子は、回折格子に入射した光を回折的に方向変更する回折フィーチャを含む構造であると理解することができ、光が光導波路から入射した場合に、回折格子は、光導波路からの光を回折的に外部結合する(diffractively couple out)こともできる。
【0020】
さらに、本明細書の定義では、回折格子のフィーチャは、「回折フィーチャ」と呼ばれ、材料表面(すなわち2つの材料の間の境界)にある、材料表面内にある、材料表面上にある、のうちの1つまたは複数である可能性がある。この表面は、例えば光導波路の表面であることもある。回折フィーチャは、これらに限定されるわけではないが、表面の、表面中の、または表面上の、溝、リッジ、穴、およびバンプのうちの1つまたは複数など、光を回折させる様々な構造のうちのいずれを含むこともできる。例えば、回折格子は、材料表面中の複数の実質的に平行な溝を含むこともある。別の例では、回折格子は、材料表面から隆起する複数の平行なリッジを含むこともある。回折フィーチャ(例えば溝、リッジ、穴、バンプなど)は、これらに限定されるわけではないが、正弦波形プロフィル、方形プロフィル(例えばバイナリ型回折格子)、3角形プロフィル、および鋸歯形プロフィル(例えばブレーズド回折格子)のうちの1つまたは複数を含む、回折をもたらす様々な断面形状またはプロフィルのうちのいずれを有することもできる。
【0021】
本明細書に記載する様々な実施例によれば、回折格子(例えば、以下で述べるようにマルチビーム要素の回折格子)を利用して、光を光線として光導波路(例えば平板光導波路)から回折的に散乱させる、または外部結合することができる。特に、局所的に周期的な回折格子の、または局所的に周期的な回折格子によって提供される、回折角θmは、数式(1)で与えることができる。
【0022】
【数1】
ここで、λは、光の波長であり、mは、回折次数であり、nは、光導波路の屈折率であり、dは、回折格子のフィーチャ間の距離または間隔であり、θ
1は、回折格子への光の入射角である。簡潔にするために、数式(1)は、回折格子が光導波路の表面に隣接しており、光導波路の外部の材料の屈折率が1に等しい(すなわちn
out=1である)ものと仮定している。一般に、回折次数mは、整数で与えられる。回折格子によって生成される光線の回折角θ
mは、回折次数が正である(例えばm>0である)場合には、数式(1)で与えることができる。例えば、回折次数mが1に等しい(すなわちm=1である)ときには、1次の回折がもたらされる。
【0023】
図2は、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例における回折格子30を示す断面図である。例えば、回折格子30は、光導波路40の表面上に位置することがある。さらに、
図2は、入射角θ
1で回折格子30に入射する光線20を示している。光線20は、光導波路40内の誘導光線である。また、
図2には、入射光線20の回折の結果として回折格子30によって回折的に生成されて外部に結合される外部結合光線50も示されている。外部結合光線50は、数式(1)で与えられる回折角θm(または本明細書では「主要角度方向」)を有する。回折角θmは、例えば回折格子30の回折次数「m」に対応することがある。
【0024】
本明細書の定義では、「マルチビーム要素」は、複数の光線を含む光を生成するバックライトまたはディスプレイの構造または要素である。いくつかの実施形態では、マルチビーム要素は、バックライトの光導波路に光学的に結合されて(optically coupled to a light guide)、光導波路内を誘導される光の一部分を外部結合することによって複数の光線を提供することができる。他の実施形態では、マルチビーム要素は、これらの光線として発出される光を生成することができる(例えば光源を含むことがある)。さらに、マルチビーム要素によって生成される複数の光線の光線は、本明細書の定義では、互いに異なる主要角度方向を有する。特に、定義では、複数の光線のうちの1つは、その複数の光線のうちの別の光線とは異なる所定の主要角度方向を有する。さらに、この複数の光線は、ライトフィールドを表すことができる。例えば、複数の光線は、実質的に円錐形の空間領域に制限されることがある、またはその複数の光線の様々な主要角度方向を含む所定の角度幅を有することがある。したがって、これらの光線の合計の所定の角度幅(すなわち複数の光線)が、ライトフィールドを表すことができる。
【0025】
様々な実施形態によれば、この複数の光線の様々な光線の様々な主要角度方向は、これに限定されるわけではないが、マルチビーム要素のサイズ(例えば長さ、幅、面積など)などの特徴によって決定される。いくつかの実施形態では、マルチビーム要素は、本明細書の定義では、「拡張された点光源」、すなわちマルチビーム要素の範囲にわたって分布した複数の点光源と考えることができる。さらに、マルチビーム要素によって生成される光線は、本明細書の定義では、
図1Bを参照して上述したように、角度成分{θ、φ}で与えられる主要角度方向を有する。
【0026】
本明細書では、「コリメータ」は、光をコリメートするように構成された実質的に任意の光学デバイスまたは装置として定義される。例えば、コリメータは、これらに限定されるわけではないが、コリメートミラーまたは反射器、コリメートレンズ、あるいはそれらの様々な組合せを含む可能性がある。いくつかの実施形態では、コリメート反射器を含むコリメータは、放物曲線または放物形を特徴とする反射表面を有することがある。別の例では、コリメート反射器は、成形放物線状反射器を含むことがある。「成形放物線状」とは、その成形放物線状反射器の湾曲した反射表面が、所定の反射特性(例えばコリメーション度)を実現するように決定されるように「真の」放物曲線から逸脱していることを意味する。コリメートレンズは、球形表面(例えば両凸球面レンズ)を含むことがある。
【0027】
様々な実施形態によれば、コリメータによって提供されるコリメーション量は、実施形態によって所定の程度または量において変化することがある。さらに、コリメータは、2つの直交する方向(例えば垂直方向および水平方向)の一方または両方にコリメーションを提供するように構成することができる。すなわち、コリメータは、いくつかの実施形態によれば、光のコリメーションを提供する2つの直交する方向のうちの一方または両方の形状を含むことがある。
【0028】
本明細書では、「コリメーション因子」は、光がコリメートされる程度として定義される。特に、コリメーション因子は、本明細書の定義では、コリメートされた光線内の光放射線の角度幅を定義する。例えば、コリメーション因子σは、コリメートされた光線内の光放射線の大部分が特定の角度幅(例えばコリメート光線の中心または主要角度方向の周りの±σ度)内にあるように指定することができる。コリメートされた光線の光放射線は、角度についてガウス分布を有することがあり、角度幅は、いくつかの実施例によれば、コリメートされた光線のピーク強度の2分の1によって決まる角度であることがある。
【0029】
本明細書では、「光源」は、光の源(例えば光を生成して発出するように構成された発光体)として定義される。例えば、光源は、起動時またはオン時に光を発出する発光ダイオード(LED)などの発光体を含むことがある。特に、本明細書では、光源は、これらに限定されるわけではないが、発光ダイオード(LED)、レーザ、有機発光ダイオード(OLED)、ポリマー発光ダイオード、プラズマ型発光体、蛍光灯、白熱灯、および実質的に任意のその他の光源などのうちの1つまたは複数を含む、実質的に任意の発光体である、またはそうした実質的に任意の発光体を含むことができる。光源によって生成される光は、色を有することもある(すなわち特定の波長の光を含むこともある)し、あるいはある範囲の波長(例えば白色光)を含むこともある。いくつかの実施形態では、光源は、複数の発光体を含むことがある。例えば、光源は、そのうちの少なくとも1つの発光体が、そのうちの少なくとも1つの他の発光体が生成する光の色または波長とは異なる色すなわち波長を有する光を生成する、複数の発光体のセットまたはグループを含むことがある。これらの異なる色は、例えば原色(例えば赤、緑、青)を含むことがある。
【0030】
さらに、本明細書で使用する冠詞「a」は、特許技術におけるその通常の意味、すなわち「1つまたは複数」の意味を有するものと意図されている。例えば、「マルチビーム要素」は、1つまたは複数のマルチビーム要素を意味し、したがって「このマルチビーム要素」も、本明細書では「この(1つまたは複数の)マルチビーム要素」を意味している。また、本明細書で「頂」、「底」、「上側」、「下側」、「上」、「下」、「前」、「後」、「第1」、「第2」、「左」、または「右」について言及している場合、それらはいずれも、本明細書では限定を意図しているわけではない。本明細書では、値に対して用いられるときの「約」という用語は、一般に、その値を生じるために使用される機器の許容範囲内を意味するか、あるいは、特に明示的に指定がない限り、プラスマイナス10%、プラスマイナス5%、またはプラスマイナス1%を意味する可能性がある。さらに、本明細書で使用される「実質的に」という用語は、大部分、ほぼ全て、全て、または約51%から約100%の範囲内の量を意味する。さらに、本明細書における実施例は、例示のみを目的としたものであり、限定のためではなく、説明のために示したものである。
【0031】
本明細書に記載する原理のいくつかの実施形態によれば、ヘッドトラッキングマルチビームディスプレイが提供される。
図3は、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示す断面図である。ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、シーンの複数のビューをマルチビュー画像すなわち表示マルチビュー画像として提供するように構成される。特に、この複数のビューは、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100によって、対応する複数の
ビュー方向に提供される。
図3では、
ビュー方向、すなわち複数のビューは、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100から延びる様々な角度方向を指す矢印102で示されている。
【0032】
様々な実施形態によれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100によって提供される複数のビューは、1次ビューのセットを含む。例えば、
図3の実線矢印102’は、1次ビューのセット、すなわち1次ビューの方向のセットを表すことができる。ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100によって提供される複数のビューは、さらに、2次
ビュー方向に2次ビューを含む。例えば、
図3の破線矢印102’’は、2次ビューまたは2次
ビュー方向を表すことができる。様々な実施形態によれば、本明細書の定義では、2次ビューは、1次ビューのセットの角度範囲に角度的に隣接するがその角度範囲の実質的に外にある、シーンの視点または
ビュー方向を表す。特に、2次ビューは、本明細書の定義では、1次ビューセットによって画定される角度範囲、例えば
図3の実線矢印102’によって画定される角度範囲の外部にある視野角を有する
ビュー方向に対応する。いくつかの実施形態では、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、複数の2次ビューを提供することができる。様々な実施形態によれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、1次ビューセットまたはビューの拡張セットのいずれかを選択的に提供するように構成される。ビューの拡張セットは、2次ビューと、1次ビューセットのビューのサブセットとを含む。
【0033】
図3を参照すると、図示のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、マルチビームバックライト110を含む。マルチビームバックライト110は、様々な主要角度方向を有する複数の光線112を提供するように構成される。特に、光線112は、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100の、すなわちヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100によって表示されるマルチビュー画像の、様々な
ビュー方向に対応する、様々な主要角度方向を有することができる。例えば、
図3の矢印102は、マルチビームバックライト110によって提供される光線112、すなわち様々な
ビュー方向に対応する光線112の様々な主要角度方向を表すこともできる。
【0034】
さらに、
図3に示すように、複数の光線112は、第1のセットの光線112’と、第2のセットの光線112’’とを含む。
図3では、第1のセットの光線112’は、実線矢印(すなわち実線矢印102)を用いて示され、第2のセットの光線112’’は、破線矢印(すなわち破線矢印102’’)を用いて示されている。第1のセットの光線112’は、1次ビューのセットの
ビュー方向に対応する主要角度方向を有する複数の光線の光線112を表す。第2のセットの光線112’’は、例えば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100の様々な2次
ビュー方向に対応する主要角度方向を有する複数の光線の光線112を表す。
【0035】
図3に示すヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、光弁アレイ120をさらに含む。様々な実施形態では、これらに限定されるわけではないが、液晶光弁、電気泳動光弁、およびエレクトロウェッティングに基づく光弁のうち1つまたは複数を含む、様々な異なるタイプの光弁のいずれでも、光弁アレイ120の光弁として利用することができる。
【0036】
光弁アレイ120は、複数の光線112を変調して、シーンのビューをマルチビュー画像として提供するように構成される。特に、光弁アレイ120は、光線112を変調し、1次ビューセットと2次ビューを含む拡張ビューセットとを選択的に提供するように構成される。様々な実施形態によれば、1次ビューセットを提供するか、拡張ビューセットを提供するかの選択は、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100のユーザまたは見ている人の位置に基づく。例えば、ビューセットの選択は、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100に対するユーザの頭部の位置に基づくことがある。ビューセットの選択は、例えばプロセッサ(例えばグラフィックプロセッサユニット)またはそれに類する回路の指示下で、光弁アレイ120のドライバ(例えばドライバ回路)によって制御することができる。
【0037】
図4Aは、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示す断面図である。
図4Bは、本明細書に記載する原理による実施形態による、別の実施例における
図4Aのヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示す断面図である。
図4Aおよび
図4Bに示すヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、例えば
図3について上述したように、マルチビームバックライト110と、光弁アレイ120とを含む。特に、
図4Aは、ビュー102aの1次セットを選択的に提供するように構成されたヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示している。さらに、
図4Bは、ビュー102bの拡張セットを選択的に提供するように構成されたヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示している。
図4Aは、第1の位置Aにいるユーザ(またはユーザの頭部)も示し、
図4Bは、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100に対して第2の位置Bにいるユーザまたはユーザの頭部も示している。ユーザ(またはユーザの頭部)の位置または場所は、例えば本明細書でさらに説明するように、トラッキング可能である、またはトラッキングされている。
【0038】
図3を参照して上述したように、様々なビュー、すなわち1次ビューセット102aおよび拡張ビューセット102bの両方の
ビュー方向は、矢印102で表してある。具体的には、
図4Aおよび
図4Bでは、実線矢印102’は、1次ビューセット102aのビューすなわち
ビュー方向を表し、破線矢印102’’は、例えば拡張ビューセット102b内の2次ビューすなわち2次
ビュー方向を表している。さらに、
図4A~
図4Bでは、様々なビューまたは
ビュー方向は、左から右に向かって順番に大きくなる文字で特定され、文字「a」は第1のビューを表し、文字「b」は第2のビューを表す、というようになっている。図示のように、
図4Aでは、1次ビューセット102aは、「a」から「h」で標識された8個のビューを含む。2次ビューは、
図4Bでは、このシーンの9番目のビューを表し、「i」で標識されている。
【0039】
図4Aに示すように、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、ユーザが第1の場所Aに位置しているときには、1次ビューセット102a(すなわち「a」から「h」で標識された実線矢印102’)を選択的に表示することができる。第1の場所Aは、例えば実質的にヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100の前方の領域とすることができる。ユーザが第1の場所Aにいるときには、ユーザは、例えばヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100によって表示されるシーンの「通常」マルチビュー画像(例えば「3D画像」)を見ることができる。特に、「通常」または前向きマルチビュー画像は、
図4Aに示すように「a」から「h」で標識されたビューを含む1次ビューセット102aを含むように定義される。
【0040】
図4Bに示すように、ユーザが第2の場所Bに位置しているときには、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、拡張ビューセット102bを選択的に表示することができる。特に、
図4Bは、第2の場所Bに移動した、または位置しているユーザを示している。第2の場所「B」は、
図4Bに示すように、例えば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100の片側に実質的にずれている(すなわち「オフサイド」である)ことがある。拡張ビューセット102bは、図示のように、1次ビューセット102aのビューのうちの7つ(すなわち実線矢印102’「b」~「h」)のサブセットと、ユーザのオフサイド位置の方向の2次ビュー「i」(すなわち「i」で標識された破線矢印102’’)とを含む。拡張ビューセット102bは、オフサイドユーザ位置からマルチビュー画像のビューが見えやすくなるように、1次ビューのサブセット(すなわち「a」以外のサブセット)および2次ビューiの両方を含む。
【0041】
特に、本明細書に記載する原理によれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、2次ビュー(すなわち「b」から場所Bの方向の「i」)を拡張ビューセット102bに含めた結果として、ユーザが第2の場所Bにいるときに、1次ビューセット102aに存在する視点(場所A)以外の視点(すなわち2次ビューで表される視点)からマルチビュー画像内のシーンの一部分を見ることができるようにする。さらに、本明細書に記載する原理によれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100によって提供される2次ビューを含めることにより、ユーザが例えばヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100の「通常」視野角または前向き視野角の実質的に外部の角度からマルチビュー画像を見るときに発生する可能性があるいわゆる「ジャンプ」を低減する、または実質的に解消することもできる。なお、本明細書では、ユーザの位置を第1の場所および第2の場所に関連して説明しているが、本明細書に記載する原理の範囲は、ユーザ(すなわちユーザの頭部)の2つの場所のみに限定されるわけではないことに留意されたい。本明細書の原理の範囲は、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100のユーザの任意数の異なる場所を含むものとして意図されている。
【0042】
本明細書に記載する原理の様々な実施形態によれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、実質的にいかなるマルチビームバックライトでも含むことができる。特に、様々な実施形態によれば、マルチビュー画像の様々なビュー方向に対応する様々な主要角度方向を有する複数の光線112を提供するように構成された任意のバックライトを使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、マルチビームバックライト110は、マルチビーム回折格子に基づくことがある。他の実施形態では、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100のマルチビームバックライト110は、マルチビーム要素を含む。マルチビームバックライト110は、以下で述べるように、光導波路と、複数のマルチビーム要素とを含むことがある。
【0043】
図5Aは、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるマルチビームバックライト110を含むヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示す断面図である。
図5Bは、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるマルチビームバックライト110を含むヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示す平面図である。
図5Cは、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるマルチビームバックライト110を含むヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示す斜視図である。
図5cの斜視図は、本明細書における説明を容易にするために、部分的に切り欠いて示してある。
図5Aから
図5Cは、以下でさらに述べるように、マルチビームバックライト110の上方に位置決めされた光弁アレイ120も示している。
【0044】
図5Aから
図5Cに示すマルチビームバックライト110は、互いに異なる主要角度方向を有する複数の外部結合光線112を(例えばライトフィールドとして)提供するように構成される。特に、
図5Aおよび
図5Cに示すように、提供される複数の外部結合光線112は、様々な実施形態によれば、マルチビームバックライト110から離れるように、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100のそれぞれの
ビュー方向に対応する様々な主要角度方向に向けられる。さらに、外部結合光線112を(例えば本明細書で述べるように光弁アレイ120の光弁を使用して)変調して、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100による3Dコンテンツを有する情報のマルチビュー画像としての表示を容易にすることができる。
【0045】
図5Aから
図5Cに示すように、マルチビームバックライト110は、光導波路114を含む。光導波路114は、いくつかの実施形態によれば、平板光導波路とすることができる。光導波路114は、光を、その光導波路114の長さに沿って、例えば太字矢印103で示す方向を有する誘導光104として誘導するように構成される。光導波路114は、例えば光学導波路として構成される誘電体材料を含むことができる。誘電体材料は、誘電体光学導波路を取り囲む媒質の第2の屈折率より大きい第1の屈折率を有することができる。この屈折率の差は、光導波路114の1つまたは複数の導波モードに応じて誘導光104の全反射を促進するように設定される。
【0046】
いくつかの実施形態では、光導波路114は、光学的に透明な誘電体材料の延展された実質的に平面状のシートを含むスラブまたは平板光学導波路とすることができる。様々な実施例によれば、光導波路114の光学的に透明な材料は、これらに限定されるわけではないが、様々な種類のガラス(例えばシリカガラス、アルミノケイ酸アルカリガラス、ホウケイ酸ガラスなど)のうちの1つまたは複数、1つまたは複数の実質的に光学的に透明なプラスチックまたはポリマー(例えばポリメタクリル酸メチルまたは「アクリルガラス」、ポリカーボネートなど)、あるいはそれらの組合せなど、様々な誘電体材料のうちのいずれかを含む、またはいずれかで構成することができる。いくつかの実施例では、光導波路114は、光導波路114の表面(例えば頂面および底面の一方または両方)の少なくとも一部分の上にクラッディング層(図示せず)をさらに含むことがある。クラッディング層を使用して、全反射をさらに促進することができる。
【0047】
さらに、いくつかの実施形態によれば、光導波路114は、光導波路114の第1の表面114’(例えば「前」面または側)と第2の表面114’’(例えば「後」面または側)の間で非ゼロ伝搬角で誘導光104を誘導するように構成される。誘導光104は、光導波路114の第1の表面114’と第2の表面114’’の間で非ゼロ伝搬角で反射または「バウンド」することによって伝搬することができる(ただし伝搬方向は太字矢印103が示す伝搬方向である)。いくつかの実施形態では、様々な色の光を含む誘導光104の複数の光線を、様々な色に固有の非ゼロ伝搬角のそれぞれ対応する角度で、光導波路114によって誘導することができる。なお、図示を簡潔にするために、非ゼロ伝搬角は、
図5Aから
図5Cには示していないことに留意されたい。
【0048】
本明細書で定義する「非ゼロ伝搬角」は、光導波路114の表面(例えば第1の表面114’または第2の表面114’’)に対する相対的な角度である。さらに、非ゼロ伝搬角は、本明細書に記載する原理によれば、ゼロより大きく、かつ光導波路114内の全反射の臨界角未満である。例えば、誘導光104の非ゼロ伝搬角は、約10度から約50度の間とすることができ、いくつかの例では約20度から約40度の間とすることができ、あるいは約25度から約35度の間とすることができる。例えば、非ゼロ伝搬角は、約30度とすることができる。他の例では、非ゼロ伝搬角は、約20度、または約25度、または約35度とすることができる。さらに、特定の実施態様では、その非ゼロ伝搬角が光導波路114内の全反射の臨界角未満になるように選択されている限り、特定の非ゼロ伝搬角を(例えば任意に)選択することができる。
【0049】
光導波路114内の誘導光104は、非ゼロ伝搬角(例えば約30~35度)で光導波路114に導入または結合する(coupled into)ことができる。レンズ、ミラーまたはそれに類する反射器(例えば傾斜コリメート反射器)、およびプリズム(図示せず)のうちの1つまたは複数によって、例えば非ゼロ伝搬角で光を誘導光104として光導波路114の入力端部に結合する(coupling … into)のを容易にすることができる。誘導光104は、光導波路114に結合される(coupled into)と、一般に入力端部から離れることができる方向(例えば
図5Aのx軸に沿った向きの太字矢印103で示す方向)に光導波路114に沿って伝搬する。
【0050】
さらに、光を光導波路114に結合することによって生成される誘導光104すなわち誘導光線は、本明細書に記載する原理によれば、コリメート光線である。本明細書では、「コリメート光」または「コリメート光線」は、一般に、その放射線がその光線(例えば誘導光104)内で互いに実質的に平行である光線として定義される。さらに、コリメート光線から発散または散乱する光放射線は、本明細書の定義では、コリメート光線の一部とはみなされない。いくつかの実施形態では、マルチビームバックライト110は、上述のようにレンズ、反射器またはミラーなどのコリメータ(例えば傾斜コリメート反射器)を含んで、例えば光源からの光をコリメートすることができる。いくつかの実施形態では、光源がコリメータを含む。光導波路114に供給されるコリメート光は、誘導されるコリメート光線である。誘導光104は、様々な実施形態では、コリメーション因子σに従って、またはコリメーション因子σを有するようにコリメートすることができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、光導波路114は、誘導光104を「リサイクル」するように構成されることがある。特に、光導波路の全長に沿って誘導された誘導光104は、その長さに沿って太字矢印103’で示す別の異なる伝搬方向に方向変更されることがある。例えば、光導波路114は、光源に隣接する入力端部の反対側の光導波路114の端部に反射器(図示せず)を含むことがある。反射器は、誘導光104をリサイクル誘導光として入力端部に向かって反射して戻すように構成することができる。このように誘導光をリサイクルすることによって、誘導光104を以下で述べるようにマルチビーム要素が複数回利用できるようにすることにより、マルチビームバックライト110の輝度(例えば外部結合光線112の強度)を高めることができる。
【0052】
図5Aでは、リサイクル誘導光の別の伝搬方向を示す太字矢印103’(例えば負のx方向に向く)は、前述の入力端部から光導波路114に導入された光導波路114内のリサイクル誘導光の全体としての伝搬方向を示している。あるいは(例えばリサイクル誘導光に対して)、またはリサイクル誘導光に加えて、いくつかの実施形態では、例えば太字矢印103が示す伝搬方向を有する前述の入力端部からの誘導光104に加えて、他の伝搬方向(すなわち負のx方向に向いた太字矢印103’)を有する前述の入力端部に対向する端部で光を光導波路114に導入することもできる。
【0053】
図5Aから
図5Cに示すように、マルチビームバックライト110は、光導波路の全長(x方向)に沿って互いに離間した複数のマルチビーム要素116をさらに含む。特に、この複数の要素のマルチビーム要素116は、有限の間隔で互いに分離されており、光導波路の全長に沿って個々の別個の要素を表している。すなわち、本明細書の定義では、この複数のマルチビーム要素116は、有限(すなわち非ゼロ)の要素間距離(例えば有限の中心間距離)に従って互いに離間している。さらに、この複数の要素のマルチビーム要素116は、いくつかの実施形態によれば、一般に交差したり重なり合ったりするなどして互いに接触しない。すなわち、この複数の要素の各マルチビーム要素116は、一般に、別個のものであり、他のマルチビーム要素116から分離している。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、この複数の要素のマルチビーム要素116は、1次元(1D)アレイまたは2次元(2D)アレイのいずれかで配置されることがある。例えば、この複数のマルチビーム要素116は、線形の1Dアレイとして配置することができる。別の例では、この複数のマルチビーム要素116は、長方形の2Dアレイまたは円形の2Dアレイとして配置することができる。さらに、このアレイ(すなわち1Dまたは2Dアレイ)は、いくつかの例では、一定または一様なアレイとすることができる。特に、マルチビーム要素116間の要素間距離(例えば中心間距離または間隔)は、アレイ全体にわたって実質的に一様または一定にすることができる。他の例では、マルチビーム要素116間の要素間距離は、アレイを横切る方向(y方向)および光導波路114の全長に沿った方向(x方向)の一方または両方で変化することもある。
【0055】
様々な実施形態によれば、複数の要素のマルチビーム要素116は、誘導光104の一部分を複数の外部結合光線112として外部結合するように構成される。特に、
図5Aおよび
図5Cは、外部結合光線112を、光導波路114の第1の表面(または前面)114’から離れる向きに示す複数の発散する矢印として示している。さらに、様々な実施形態によれば、マルチビーム要素116のサイズは、マルチビューピクセル中の「サブピクセル」のサイズと同等である、すなわち光弁アレイ120中の光弁のサイズと同等である。本明細書では、「サイズ」は、これらに限定されるわけではないが、長さ、幅、または面積などを含む様々なかたちのいずれかで定義することができる。例えば、光弁(または「サブピクセル」)のサイズは、その長さであることがあり、マルチビーム要素116のそれと同等であるサイズも、マルチビーム要素116の長さであることがある。別の例では、マルチビーム要素116の面積が光弁(または「サブピクセル」)の面積と同等であることができるように、「サイズ」が面積を指すこともある。
【0056】
いくつかの実施形態では、マルチビーム要素のサイズがサブピクセルのサイズの約50%と約200%の間になるように、マルチビーム要素116のサイズが光弁のサイズと同等である。いくつかの実施形態では、マルチビーム要素のサイズを「s」で表し、サブピクセルのサイズを「S」で表した場合(例えば
図5Aに示す)に、マルチビーム要素のサイズsは、数式(2)で与えることができる。
【0057】
【数2】
いくつかの例では、マルチビーム要素のサイズは、サブピクセルのサイズの約60%以上、サブピクセルのサイズの約70%以上、サブピクセルのサイズの約80%以上、またはサブピクセルのサイズの約90%以上である。いくつかの例では、マルチビーム要素は、サブピクセルのサイズの約180%以下、サブピクセルのサイズの約160%以下、サブピクセルのサイズの約140%以下、またはサブピクセルのサイズの約120%以下である。いくつかの実施形態では、「同等であるサイズ」により、マルチビーム要素のサイズは、サブピクセルのサイズの約75%以上、約150%以下とすることができる。別の実施形態では、マルチビーム要素のサイズがサブピクセルのサイズの約125%以下、約85%以上である場合に、マルチビーム要素116のサイズがサブピクセルと同等であるとすることができる。いくつかの実施形態によれば、マルチビーム要素116および光弁の同等であるサイズは、マルチビューディスプレイのビュー間の重複を低減する、またはいくつかの実施形態では最小限に抑えながら、それと同時にマルチビューディスプレイのビュー間の暗領域を低減する、またはいくつかの実施形態では最小限に抑えるように選択されることがある。
【0058】
上述のように、
図5Aから
図5Cは、マルチビームバックライト110の上方に位置決めされた光弁アレイ120をさらに示している。このように位置決めされた光弁アレイ120は、複数の外部結合光線112を変調するように構成されている。
図5Cでは、光弁アレイ120を部分的に切り欠いて、光弁アレイ120の下にある光導波路114およびマルチビーム要素116が見えるようにしてある。
【0059】
図5Aから
図5Cに示すように、様々な主要角度方向を有する外部結合光線112の異なるそれぞれは、光弁アレイ120中のそれぞれ異なる光弁を通過し、それによって変調することができる。さらに、光弁アレイ120の光弁は、サブピクセルに対応し、これらの光弁のセットが、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100のマルチビューピクセルに対応する。特に、光弁アレイ120の光弁の異なるセットは、マルチビーム要素116の異なるそれぞれから外部結合光線112を受光してそれを変調する、すなわち、
図5Aから
図5Cに示すように、各マルチビーム要素116ごとに、1つの一意的な光弁のセットがある。
【0060】
図5Aに示すように、第1の光弁セット120aは、第1のマルチビーム要素116aから外部結合光線112を受光して変調するように構成され、第2の光弁セット120bは、第2のマルチビーム要素116bから外部結合光線112を受光して変調するように構成される。さらに、光弁アレイ120中の各光弁セット(例えば第1の光弁セット120aおよび第2の光弁セット120b)は、それぞれことなるマルチビューピクセル108(
図5B参照)に対応し、光弁セット120a、120bの個々の光弁は、
図5Aから
図5Cに示すようにそれぞれことなるマルチビューピクセル108のサブピクセルに対応している。
【0061】
いくつかの実施形態では、マルチビーム要素116と対応するマルチビューピクセル108(例えば光弁のセット120a、120b)の間の関係は、1対1の関係であることがある。すなわち、マルチビューピクセル108とマルチビーム要素116とが同数ずつ存在することがある。
図5Bに、例示を目的として1対1の関係を示すが、ここでは、各マルチビューピクセル108(異なる光弁またはサブピクセルのセットを含む)が破線で囲まれるものとして示してある。他の実施形態(図示せず)では、マルチビューピクセルの数とマルチビーム要素の数が互いに異なることもある。
【0062】
いくつかの実施形態では、一対の隣接するマルチビーム要素116間の要素間距離(例えば中心間距離)は、例えば光弁セットで表される、対応する隣接する一対のマルチビューピクセル108間のピクセル間距離(例えば中心間距離)に等しいことがある。例えば、
図5Aに示すように、第1のマルチビーム要素116aと第2のマルチビーム要素116bの間の中心間距離dは、第1の光弁セット120aと第2の光弁セット120bの間の中心間距離Dと実質的に等しい。他の実施形態(図示せず)では、マルチビーム要素116と対応する光弁セットの複数の対の相対中心間距離が異なることがあり、例えば、マルチビーム要素116が、マルチビューピクセルを表す光弁セット間の間隔(すなわち中心間距離D)より大きい、または小さい要素間間隔(すなわち中心間距離d)を有することがある。
【0063】
いくつかの実施形態では、マルチビーム要素116の形状は、マルチビューピクセル108の形状に類似している、すなわちマルチビューピクセル108に対応する光弁アレイ120中の光弁のセット(または「サブアレイ」)の形状に類似している。例えば、マルチビーム要素116は、実質的に正方形の形状を有することがあり、マルチビューピクセル108(または対応する光弁のセットの配列)は、実質的に正方形であることがある。別の例では、マルチビーム要素116は、実質的に長方形の形状を有することがある、すなわち、幅または横方向寸法より大きな長さまたは長手方向寸法を有することがある。この例では、このマルチビーム要素116に対応するマルチビューピクセル108は、実質的に類似した長方形の形状を有することがある。
図5Bは、正方形のマルチビーム要素116と、例えば破線で輪郭を示す光弁の正方形のセットを含むそれに対応する正方形のマルチビューピクセルとを示す上面図または平面図である。さらに他の例(図示せず)では、マルチビーム要素116および対応するマルチビューピクセルは、これらに限定されるわけではないが、三角形、六角形、および円形を含む、または少なくともこれらによって近似される、様々な形状を有する。
【0064】
様々な実施形態によれば、マルチビーム要素116は、誘導光104の一部分を外部結合するように構成されたいくつかの異なる構造のうちのいずれかを含むことができる。例えば、これらの異なる構造は、これらに限定されるわけではないが、回折格子、マイクロ反射要素、マイクロ屈折要素、またはそれらの様々な組合せを含み得る。いくつかの実施形態では、回折格子を含むマルチビーム要素116は、誘導光104の一部分を、様々な主要角度方向を有する複数の外部結合光線112として回折的に光導波路114から外部結合するように構成される。別の実施形態では、マイクロ反射要素を含むマルチビーム要素116は、誘導光の一部分を、複数の外部結合光線112として光導波路114から反射的に外部結合するように構成される。他の実施形態では、マイクロ屈折要素を含むマルチビーム要素116は、誘導光の一部分を、複数の外部結合光線112として光導波路114から、屈折によって、または屈折を用いて外部結合する(すなわち誘導光の一部分を屈折的に外部結合する)ように構成される。
【0065】
図6Aは、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるマルチビーム要素116を含むマルチビームバックライト110の一部分を示す断面図である。
図6Bは、本明細書に記載する原理による別の実施形態による、実施例におけるマルチビーム要素116を含むマルチビームバックライト110の一部分を示す断面図である。特に、
図6Aから
図6Bは、光導波路114内に回折格子を含むマルチビームバックライト110のマルチビーム要素116を示している。回折格子は、誘導光104の一部分を、複数の外部結合光線112として光導波路114から回折的に外部結合するように構成される。回折格子は、回折フィーチャ間隔あるいは回折フィーチャまたは格子ピッチ(すなわち回折格子の回折フィーチャのピッチまたは間隔)だけ互いに離間した複数の回折フィーチャを含む。この間隔またはピッチは、誘導光の一部分の回折的な外部結合を提供するように構成される。様々な実施形態によれば、回折格子の回折フィーチャの間隔または格子ピッチは、波長未満である(すなわち誘導光104の波長未満である)ことがある。
【0066】
いくつかの実施形態では、マルチビーム要素116の回折格子は、光導波路114の表面に位置する、またはその表面に隣接して位置することがある。例えば、回折格子は、
図6Aに示すように、光導波路114の第1の表面114’にある、または第1の表面114’に隣接していることがある。光導波路の第1の表面114’に位置する回折格子は、誘導光の一部分を第1の表面114’を通して外部結合光線112として回折的に外部結合するように構成された伝送モード回折格子とすることができる。別の例では、
図6Bに示すように、回折格子は、光導波路114の第2の表面114’’に位置する、または第2の表面114’’に隣接して位置することがある。第2の表面114’’に位置するときには、回折格子は、反射モード回折格子とすることができる。反射モード回折格子として、回折格子は、誘導光の一部分を回折し、かつ回折した誘導光の一部分を第1の表面114’に向かって反射して、回折的に外部結合された光線112として第1の表面114’を通して発出するように構成される。他の実施形態(図示せず)では、回折格子は、例えば伝送モード回折格子および反射モード回折格子の一方または両方として、光導波路114の表面の間に位置することがある。なお、本明細書に記載するいくつかの実施形態では、外部結合光線112の主要角度方向は、光導波路の表面で光導波路114から出る外部結合光線112による屈折の影響を含むことがあることに留意されたい。例えば、
図6Bは、限定ではなく例示を目的として、外部結合光線112が第1の表面114’を通って出るときの屈折率の変化による外部結合光線112の屈折(すなわち屈曲)を示している。また、以下で述べる
図7Aおよび
図7Bも参照されたい。
【0067】
いくつかの実施形態によれば、回折格子の回折フィーチャは、互いに離間した溝およびリッジの一方または両方を含むことがある。溝またはリッジは、光導波路114の材料を含み、例えば、光導波路114の表面に形成されることがある。別の例では、溝またはリッジは、例えば光導波路114の表面上の別の材料の膜または層など、光導波路の材料以外の材料で構成されることもある。
【0068】
いくつかの実施形態では、マルチビーム要素116の回折格子は、回折フィーチャの間隔が回折格子全体にわたって実質的に一定または不変である、一様な回折格子である。他の実施形態では、回折格子は、チャープ回折格子である。定義では、「チャープ」回折格子は、チャープ回折格子の幅または長さにわたって変化する回折フィーチャの回折間隔(すなわち格子ピッチ)を示す、または有する、回折格子である。いくつかの実施形態では、チャープ回折格子は、距離と共に線形に変化する回折フィーチャの間隔のチャープを有する、または示すことがある。したがって、チャープ回折格子は、定義では、「線形チャープ」回折格子である。他の実施形態では、マルチビーム要素116のチャープ回折格子は、回折フィーチャ間隔の非線形チャープを示すことがある。これらに限定されるわけではないが、指数チャープ、対数チャープ、または別の実質的に不均一または無作為ではあるが単調に変化するチャープなど、様々な非線形チャープを使用することができる。これらに限定されるわけではないが、正弦波形チャープあるいは三角形または鋸歯形チャープなどの非単調チャープを利用することもできる。これらのタイプのチャープのいずれかの組合せを利用することもできる。
【0069】
図7Aは、本明細書に記載する原理による別の実施形態による、実施例におけるマルチビーム要素116を含むマルチビームバックライト110の一部分を示す断面図である。
図7Bは、本明細書に記載する原理による別の実施形態による、実施例におけるマルチビーム要素116を含むマルチビームバックライト110の一部分を示す断面図である。特に、
図7Aおよび
図7Bは、マイクロ反射要素を含むマルチビーム要素116の様々な実施形態を示す図である。マルチビーム要素116として使用される、またはマルチビーム要素116内で使用されるマイクロ反射要素は、これらに限定されるわけではないが、反射材料または反射材料層(例えば反射性金属)を利用する反射器、あるいは全反射(TIR)に基づく反射器を含み得る。いくつかの実施形態(例えば例示を目的として
図7Aから
図7Bに示す)によれば、マイクロ反射要素を含むマルチビーム要素116は、光導波路114の表面(例えば第2の表面114’’)に位置する、またはその表面に隣接して位置することがある。他の実施形態(図示せず)では、マイクロ反射要素は、光導波路114内で第1の表面114’と第2の表面114’’の間に位置することがある。
【0070】
例えば、
図7Aは、光導波路114の第2の表面114’’に隣接して位置する、例えばプリズムのファセットと同様であることもある反射ファセットを有するマイクロ反射要素(例えば「プリズム状」マイクロ反射要素)を含むマルチビーム要素116を示している。図示のプリズム状マイクロ反射要素のファセットは、誘導光104の一部分を光導波路114から出るように反射する(すなわち反射的に結合する(reflectively couple))ように構成される。ファセットは、誘導光104の伝搬方向に対して斜めである、または傾斜していて(すなわち傾斜角を有する)、例えば誘導光の一部分を光導波路114から出るように反射することができる。ファセットは、様々な実施形態によれば、(例えば
図7Aに示すように)光導波路114内に反射性材料を使用して形成されることもあるし、あるいは第2の表面114’’のプリズム状空洞の表面であることもある。プリズム状空洞を利用するときには、いくつかの実施形態では、空洞の表面における屈折率の変化が反射(例えばTIR反射)をもたらすこともあるし、あるいはファセットを形成する空洞表面を反射性材料でコーティングして反射をもたらすこともある。
【0071】
別の例では、
図7Bは、これに限定されるわけではないが、半球状マイクロ反射要素など、湾曲表面を有するマイクロ反射要素を含むマルチビーム要素116を示している。いくつかの例では、マイクロ反射要素の湾曲表面は、実質的に平滑であることがある。マイクロ反射要素の特定の表面湾曲は、例えば誘導光104が接触する湾曲表面上の入射点に応じて様々な方向に誘導光の一部分を反射するように構成することができる。
図7Aおよび
図7Bに示すように、光導波路114から反射的に外部結合される誘導光の一部分は、第1の表面114’から出る、または発出される。
図7Aのプリズム状マイクロ反射要素と同様に、
図7Bのマイクロ反射要素は、限定ではなく例示を目的として
図7Bに示すように、光導波路114内の反射性材料、または第2の表面114’’に形成された空洞(例えば半球状空洞)とすることができる。
図7Aおよび
図7Bは、限定ではなく例示を目的として、矢印103、103’で示す2つの伝搬方向を有する誘導光104も示している。誘導光104の2つの伝搬方向を使用することにより、例えば、複数の外部結合光線112に実質的に対称な主要角度方向の分布を与えることを容易にすることができる。
【0072】
図8は、本明細書に記載する原理による別の実施形態による、実施例におけるマルチビーム要素116を含むマルチビームバックライト110の一部分を示す断面図である。特に、
図8は、マイクロ屈折要素を含むマルチビーム要素116を示している。様々な実施形態によれば、マイクロ屈折要素は、光導波路114から誘導光104の一部分を屈折的に外部結合するように構成される。すなわち、マイクロ屈折要素は、
図8に示すように、(例えば回折または反射に対して)屈折を利用して、誘導光の一部分を外部結合光線112として光導波路114から外部結合するように構成される。マイクロ屈折要素は、これらに限定されるわけではないが、半球形、長方形、プリズム形(すなわち傾斜したファセットを有する形状)など、様々な形状を有することができる。様々な実施形態によれば、マイクロ屈折要素は、例えば図示のように光導波路114の表面(例えば第1の表面114’)から延びる、または突出することもあるし、あるいは表面の空洞(図示せず)であることもある。さらに、マイクロ屈折要素は、いくつかの実施形態では、光導波路114の材料を含むこともある。他の実施形態では、マイクロ屈折要素は、光導波路の表面に隣接する、またはいくつかの例では光導波路の表面と接触する、別の材料を含むこともある。
【0073】
図5Aおよび
図5Cを再度参照すると、マルチビームバックライト110は、いくつかの実施形態では、光源118をさらに含むことがある。光源118は、非ゼロ伝搬角で光導波路114内を誘導される光を提供するように構成される。特に、光源118は、光導波路114の入口表面または端部(入力端部)に隣接して位置することがある。様々な実施形態では、光源118は、例えば上述したように、これらに限定されるわけではないが、1つまたは複数の発光ダイオード(LED)またはレーザ(例えばレーザダイオード)など、実質的に任意の光の源を含むことができる。いくつかの実施形態では、光源118は、特定の色で表される狭帯域スペクトルを有する実質的に単色の光を生成するように構成された発光体を含むことができる。特に、単色光の色は、特定の色空間または色モデル(例えば赤/緑/青(RGB)色モデル)の原色とすることができる。他の例では、光源118は、実質的に広帯域または多色の光を提供するように構成された実質的に広帯域の光源であることもある。例えば、光源118は、白色光を提供することができる。いくつかの実施形態では、光源118は、異なる色の光を提供するように構成された複数の異なる発光体を含むことがある。これらの異なる発光体は、その異なる色の光のそれぞれに対応する、誘導光104の異なる色固有の非ゼロ伝搬角を有する光を提供するように構成することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、光源118は、コリメータをさらに含むことがある。コリメータは、光源118の発光体のうちの1つまたは複数から実質的にコリメートされていない光を受光するように構成されることがある。コリメータは、この実質的にコリメートされていない光をコリメート光に変換するようにさらに構成される。特に、いくつかの実施形態では、コリメータは、非ゼロ伝搬角を有し、所定のコリメーション因子σに従ってコリメートされたコリメート光を提供することができる。さらに、様々な色の発光体を利用するときには、コリメータは、様々な色固有の非ゼロ伝搬角のうちの1つまたは両方を有し、かつ様々な色固有のコリメーション因子を有するコリメート光を提供するように構成することができる。コリメータは、上述のように、コリメート光線を光導波路114に伝達して誘導光104として伝搬するようにさらに構成される。
【0075】
いくつかの実施形態では、誘導光の非ゼロ伝搬角および
コリメーション因子のうちの一方または両方が、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100の複数の光線112の発出パターンを調節するように設定することができる。特に、非ゼロ伝搬角は、発出パターンをユーザに向かって傾斜させる(または選択的に向ける)ように設定することができる。例えば、第1の非ゼロ伝搬角は、第1の場所Aのユーザに向かって実質的に向けられた光線112の発出パターンを提供するように構成することができ、第2の非ゼロ伝搬角は、例えば
図4Aから
図4Bを参照して上述したように、第2の場所Bのユーザに向かって発出パターンを向けるように構成することができる。
図9Aから
図9Bは、ヘッドトラッキング発出パターンの別の例を与える図である。
【0076】
特に、
図9Aは、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示す断面図である。
図9Bは、本明細書に記載する原理による実施形態による、別の実施例における
図9Aのヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示す断面図である。
図9Aおよび
図9Bは、マルチビームバックライトの光導波路内の誘導光の異なる非ゼロ伝搬角に基づく外部結合光線112の異なる発出パターンの例を示している。
図9Aから
図9Bでは、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、マルチビームバックライト110、および光弁アレイ120を含む。いくつかの実施形態では、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、
図5Aから
図5Cを参照して上述したヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100と実質的に同様である。例えば、マルチビームバックライト110は、
図9Aから
図9Bに示すように、破線で描写する発出パターンを有する複数の光線112を光弁アレイ120に提供するように構成される。
【0077】
図9Aでは、ユーザは、光弁アレイ120またはヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100の中心の実質的に前方にある(すなわちその中心に対して中心に位置する)第1の場所Aに位置している。ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100からの発出パターンは、第1の場所Aのユーザを実質的に(例えば傾斜なしで)指すように構成される。例えば、マルチビームバックライト110の光導波路114内の誘導光104は、第1の非ゼロ伝搬角γ
1で伝搬して、
図9Aに示すように、発出パターンを第1の場所Aに向ける、または方向付けることができる。
【0078】
図9Bでは、ユーザは、場所Aと比較して光弁アレイ120またはヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100の中心の片側に(例えば傾斜角で)実質的にずれている(すなわちその中心に対して中心に位置していない)第2の場所に移動している、または位置している。
図9Bに示す複数の光線112の発出パターンは、第1の場所Aに関する発出パターンと比較して傾斜しているので、第2の場所Bのユーザを実質的に指すように構成される。この例では、光導波路114内の誘導光104は、第2の非ゼロ伝搬角γ
2で伝搬して、
図9Bに示すように、第2の場所Bに向かって発出パターンに傾斜を与えることができる。
【0079】
様々な実施形態では、第1の場所Aに向けられた発出パターンは、1次ビューセット(すなわち誘導光の第1の非ゼロ伝搬角γ1によって提供される1次ビューセット)に対応する光線112’の第1のセットを含む。さらに、第2の場所Bに向かって傾斜した傾斜発出パターンは、1次ビューセットに対応する光線112’の第1のセットのサブセットと、2次ビュー(すなわち誘導光の第2の非ゼロ伝搬角γ2によって提供される2次ビュー)に対応する第2の光線112’’とを含むことができる。この傾斜発出パターンは、上述のように、拡張ビューセットを表すことができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、マルチビームバックライト110は、誘導光104の伝搬方向(すなわち太字矢印103、103’)に対して直交する光導波路114を通る方向の光に対して実質的に透明になるように構成される。特に、いくつかの実施形態では、光導波路114および離間した複数のマルチビーム要素116が、光が光導波路114、具合的には第1の表面114’および第2の表面114’’の両方を通過することを可能にする。透明度は、少なくとも部分的には、マルチビーム要素116の比較的小さなサイズ、およびマルチビーム要素116の比較的大きな要素間間隔(例えばマルチビューピクセルと1対1の対応)の両方によって高めることができる。
【0081】
本明細書に記載する原理のいくつかの実施形態によれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステムが提供される。このヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステムは、シーンを表す3D画像またはマルチビュー画像を提供する、または「表示する」ように構成される。特に、マルチビュー画像は、そのマルチビュー画像に関連付けられた複数の異なる「ビュー」として提供される。この異なるビューが、例えば、表示されているマルチビュー画像中に情報の「裸眼」(例えば自動立体視)表現を提供することができる。さらに、様々な実施形態によれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステムのユーザの異なる位置または場所(例えば頭部の位置)に対して異なるビューのセットを提供することができる。
【0082】
図10は、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200を示すブロック図である。ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200は、異なる
ビュー方向の異なるビューに従ってマルチビュー画像を表示するように構成される。特に、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200から発出される光線を使用して、マルチビュー画像を表示し、この光線は、異なるビューのピクセル(すなわち異なるビューピクセル)に対応することができる。異なるビュー、すなわち異なる
ビュー方向は、
図10では、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200から出る矢印202として示してある。以下で述べるように、矢印202は、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200から発出される光線も表している。
【0083】
図10に示すヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200は、マルチビューディスプレイ210を含む。マルチビューディスプレイ210は、シーンの複数のビュー(例えば矢印202)をマルチビュー画像として提供するように構成される。様々な実施形態によれば、この複数のビューは、シーンの1次ビューのセットと、この1次ビューセットに角度的に隣接するシーン視点を表す2次ビューとを含む。本明細書で述べているように、2次ビュー(またはいくつかの実施形態では複数の2次ビュー)を1次ビューセットのビューのサブセットと組み合わせて、拡張ビューセットを提供することができる。さらに、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200の1次ビューセット、2次ビューセット、および拡張ビューセットは、いくつかの実施形態によれば、上述したヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100に関連して上述した対応するビューセットおよびビューと実質的に同様であることがある。
図10では、1次ビューは、実線矢印202’で示してあり、2次ビューは、破線矢印202’’で示してある。
【0084】
ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200のマルチビューディスプレイ210は、1次ビューセット、および2次ビューのうちの1つまたは複数の両方を提供するように構成することができる様々な異なるマルチビューディスプレイのうちのいずれを実質的に含むこともできる。例えば、マルチビューディスプレイ210は、これらに限定されるわけではないが、マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ、またはレンズ状またはレンズアレイ型マルチビューディスプレイなどのマルチビューディスプレイとすることができる。本明細書では、定義では、「マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ」は、マルチビーム回折格子のアレイを利用するマルチビーム回折格子型のバックライトを含むマルチビューディスプレイである。また、本明細書の定義では、レンズ状またはレンズアレイ型マルチビューディスプレイは、異なるビュー方向のビューを提供するレンズアレイを含むマルチビューディスプレイである。
【0085】
他の実施形態では、マルチビューディスプレイ210は、マルチビーム要素形マルチビューディスプレイであることもある。特に、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200のマルチビューディスプレイ210は、いくつかの実施形態によれば、上述のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100と実質的に同様であってよい。例えば、マルチビューディスプレイ210は、複数のビューの異なるビュー方向に対応する異なる主要角度方向を有する複数の発出または外部結合された光線を提供するように構成されたマルチビームバックライトを含むことができる。マルチビューディスプレイ210は、例えば複数の外部結合光線を変調して複数のビューを提供するように構成された光弁アレイをさらに含むこともある。さらに、マルチビューディスプレイ210は、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100に関連して上述した光源118などの光源をさらに含むこともある。
【0086】
これらの実施形態のいくつかによれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200のマルチビームバックライトは、上述のマルチビームバックライト110と実質的に同様であってよい。例えば、マルチビームバックライトは、光導波路の長さに沿った伝搬方向に光を誘導するように構成された光導波路を含むことがあり、光導波路の長さに沿って互いに離間したマルチビーム要素のアレイをさらに含むこともある。マルチビーム要素アレイのマルチビーム要素は、誘導光の一部分を、異なる主要角度方向を有する複数の外部結合光線として光導波路から外部結合するように構成することができる。マルチビーム要素アレイのマルチビーム要素は、マルチビーム要素116と実質的に同様であってよく、光導波路は、例えば光導波路114と実質的に同様であってよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、マルチビーム要素のサイズは、光弁アレイの光弁のサイズと同等であることがある。さらに、光弁は、ディスプレイのマルチビューピクセルのサブピクセルのサイズと実質的に同等であることがある。さらに、マルチビーム要素は、光導波路に光学的に接続されて誘導光の一部分を外部結合する回折格子、マイクロ反射要素、およびマイクロ屈折要素のうちの1つまたは複数を含むことがある。いくつかの実施形態では、マルチビーム要素アレイの隣接するマルチビーム要素間の要素間距離は、隣接するマルチビューピクセル間のピクセル間距離に対応する。さらに、マルチビューピクセルは、個々のマルチビーム要素に対応する光弁アレイ内の光弁のセットを表す。
【0088】
再度
図10を参照すると、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200は、ヘッドトラッカ220をさらに含む。ヘッドトラッカ220は、マルチビューディスプレイ210に対するユーザの場所を決定するように構成される。第1の決定された場所では、マルチビューディスプレイ210は、1次ビューのセットを提供するように構成される。さらに、第2の決定された場所では、マルチビューディスプレイ210は、2次ビューと、1次ビューセットのビューのサブセットとを含む拡張ビューセットを提供するように構成される。
図10に示すように、ヘッドトラッカ220は、一点鎖線で示すマルチビューディスプレイ210の前方の領域222のユーザ(例えばユーザの頭部)の位置をトラッキングするように構成することができる。「の前方」は、マルチビューディスプレイ210の発光表面または画像ビュースクリーンに隣接していることを意味する。
【0089】
様々な実施形態によれば、ヘッドトラッキング(すなわちユーザの場所のトラッキング)を提供する様々なデバイス、システム、および回路のうちのいずれでも、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200のヘッドトラッカ220として利用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ヘッドトラッカ220は、マルチビューディスプレイ210のビュースクリーンに対してユーザの画像を取り込むように構成されたカメラを含むことがある。さらに、ヘッドトラッカ220は、マルチビューディスプレイ210のビュースクリーンに対して取り込まれた画像内のユーザの場所を決定するように構成された画像プロセッサ(または画像プロセッサとしてプログラムされた汎用コンピュータ)を含むこともある。決定された場所は、例えば、上述した第1の決定された場所Aおよび第2の決定された場所Bのうちの一方に対応することもある。マルチビューディスプレイ210のビュースクリーンに対するユーザの場所は、これらに限定されるわけではないが、例えば画像認識またはパターンマッチングなどの様々な技術を使用して、取り込まれた画像から画像プロセッサが決定することができる。ヘッドトラッカ220の出力を使用して、マルチビューディスプレイ210の動作(例えば光弁アレイによる光線の変調)を修正することができる。例えば、決定されたユーザの場所を、マルチビューディスプレイ210のプロセッサおよび光弁ドライバ(例えばドライバ回路)のうちの一方または両方に提供して、マルチビューディスプレイ210からの発出パターンをユーザの場所に対応するように調整することもできる。ヘッドトラッカ220の実施態様のその他の例は、これらに限定されるわけではないが、Kinect(登録商標)オブジェクトトラッキングシステムなど、様々な2次元(2D)および3次元(3D)オブジェクトトラッキングシステムのうちの任意のものを含み得る。Kinect(登録商標)は、米国ワシントン州RedmondのMicrosoft社の登録商標である。
【0090】
上述のように、いくつかの実施形態では、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200のマルチビューディスプレイ210は、光源をさらに含むこともある。光源は、マルチビューディスプレイ210のための光の源として作用するように構成される。特に、これらの実施形態のいくつか(
図10には図示せず)では、光源は、非ゼロ伝搬角で光導波路に光を提供するように構成されることがあり、いくつかの実施形態では、例えば、
コリメーション因子に従って
コリメートされて、光導波路内の誘導光の所定の角度幅を提供する。いくつかの実施形態では、光源は、ヘッドトラッカ220からの入力に応答して、マルチビューディスプレイ210から発出される光の発出パターンをユーザに向かって傾斜させるようにさらに構成されることもある。発出パターンの傾斜、すなわち発光の「傾斜角」は、これらの実施形態では、ヘッドトラッカ220によって決定されたユーザの場所に対応する。例えば、光源は、マルチビームバックライトの光導波路を照明するために使用される光源であることもある。光源から提供される光導波路内を伝搬する光の角度が、マルチビームバックライトから発出される光線の傾斜角を決定することもある。この発出角の傾斜により、いくつかの実施形態によれば、2次ビューの生成を容易にする、または強化することもできる。
【0091】
本明細書に記載する原理の他の実施形態によれば、ヘッドトラッキングを利用したマルチビュー表示動作の方法が提供される。
図11は、本明細書に記載する原理による実施形態による実施例におけるヘッドトラッキングを利用したマルチビュー表示動作の方法300を示す流れ図である。
図11に示すように、ヘッドトラッキングを利用したマルチビュー表示動作の方法300は、マルチビューディスプレイを使用してシーンの複数のビューを提供するステップを含む。様々な実施形態によれば、この複数のビューは、シーンの1次ビューのセットと、その1次ビューセットに角度的に隣接するシーン視点を表す2次ビューとを含む。
【0092】
様々な実施形態によれば、複数のビューを提供する(310)マルチビューディスプレイは、1次ビューのセットおよび2次ビューの両方を提供することができる実質的に任意のマルチビューディスプレイまたはマルチビューディスプレイシステムとすることができる。例えば、このマルチビューディスプレイは、これらに限定されるわけではないが、マルチビーム要素型マルチビューディスプレイ、マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ、あるいはレンズ上またはレンズアレイ型マルチビューディスプレイなどのマルチビューディスプレイとすることができる。いくつかの実施形態では、マルチビューディスプレイは、上述したヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100と実質的に同様であってもよい。
【0093】
特に、いくつかの実施形態では、マルチビューディスプレイは、光導波路と、マルチビーム要素と、複数の光弁とを含むことがある。これらの実施形態では、複数のビューを提供するステップ(310)は、光導波路の長さに沿った伝搬方向に光を誘導するステップを含むことがある。光導波路は、例えば平板光導波路とすることができる。複数のビューを提供するステップ(310)はマルチビーム要素を用いて誘導光の一部分を光導波路から外部結合して、マルチビューディスプレイのそれぞれの異なるビュー方向に対応する異なる主要角度方向を有する複数の外部結合光線を提供するステップをさらに含むこともある。いくつかの実施形態では、マルチビーム要素は、光導波路に光学的に接続されて誘導光の一部分を外部結合する回折格子、マイクロ反射要素、およびマイクロ屈折要素のうちの1つまたは複数を含むことがある。マルチビーム要素は、例えばマルチビーム要素のアレイの一部であってもよい。これらの実施形態では、複数のビューを提供するステップ(310)は、複数の光弁を使用して外部結合光線を変調して、シーンの複数のビューをマルチビュー画像として提供するステップをさらに含む。光弁は、例えば、マルチビーム要素のアレイを備える光導波路の表面に隣接してアレイ状に配列することができる。いくつかの実施形態では、マルチビーム要素のサイズは、光弁アレイの光弁のサイズと同等である。
【0094】
図11に示すように、ヘッドトラッキングを利用したマルチビュー表示動作の方法300は、マルチビューディスプレイに対するユーザの場所を決定するステップ(320)と、決定したユーザの場所に応じてユーザに対して表示または提供するビューセットを選択するステップとをさらに含む。様々な実施形態によれば、1次ビューセットは、決定されたユーザの第1の場所に対して選択され、拡張ビューセットは、決定されたユーザの第2の場所に対して選択される。定義では、拡張ビューセットは、2次ビューと、1次ビューセットのビューのサブセットとを含む。マルチビューディスプレイは、ヘッドトラッキングを利用したマルチビュー表示動作の方法300による決定した場所およびビュー選択に従って、1次ビューセットおよび拡張ビューセットを提供する。
【0095】
換言すれば、マルチビュー表示動作の方法300は、マルチビューディスプレイに対する(あるいはマルチビューディスプレイのスクリーン、またはマルチビューディスプレイによって提供されるビューに対する)ユーザの場所を決定する(320)。マルチビュー表示動作の方法300は、ユーザが第1の場所にいると決定されるか第2の場所にいると決定されるか(320)に応じて、1次ビューセットまたは拡張ビューセットを選択的に提供する。特に、ユーザが第1の場所(例えばマルチビューディスプレイの前方)にいると決定されたときには、マルチビューディスプレイは、1次ビューのセットを提供する。さらに、ユーザが第2の場所にいる(例えばマルチビューディスプレイの片側に実質的にずれている)と決定された(320)ときには、マルチビューディスプレイは、2次ビューを含む拡張ビューセットを提供する。したがって、マルチビューディスプレイは、決定(320)したユーザの場所に応じて1次ビューセットまたは拡張ビューセットを含むように提供(310)した複数のビューを適合または調整する。
【0096】
いくつかの実施形態では、ユーザの場所を決定するステップ(320)は、ヘッドトラッカを使用することを含む。これらの実施形態のいくつかでは、ヘッドトラッカは、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200のヘッドトラッカ220と実質的に同様であってよい。例えば、ヘッドトラッカは、カメラおよび画像プロセッサを含むことがある。この例では、ユーザの場所を決定するステップ(320)は、カメラを用いてユーザの画像を取り込むステップと、画像プロセッサを用いて取り込んだ画像内のユーザの位置を確立するステップとを含むことがある。様々な実施形態によれば、この確立される位置が、決定(320)される場所である。例えば、確立される位置は、決定された第1の場所および決定された第2の場所のうちの一方に対応することがある。
【0097】
いくつかの実施形態(図示せず)では、マルチビュー表示動作の方法300は、マルチビューディスプレイから発出される光の発出パターンを、ユーザの決定された場所に対応するように傾斜させる(または選択的に向ける)ステップをさらに含む。発出パターンは、例えば1次ビューセットまたは拡張ビューセットなど、特定のビューのセットに対応する光線を含むことがある。発出パターンは、決定された第1の場所のユーザに実質的に向くように、または決定された第2の場所のユーザに実質的に向くように傾斜させることができる。いくつかの実施形態では、発出パターンの傾斜は、マルチビューディスプレイの光導波路内の光の非ゼロ伝搬角を選択的に制御することによって行うことができる。例えば、第1の非ゼロ伝搬角は、第1の場所のユーザに実質的に向けられた光線の発出パターンを提供することがあり、第2の非ゼロ伝搬角は、第2の場所のユーザに実質的に向蹴られた発出パターンを提供することがある。上述のように、ユーザの場所を決定する(320)ことができ、したがって、非ゼロ伝搬角の制御または選択は、例えばヘッドトラッカの出力を用いて行うことができる。さらに、いくつかの実施形態では、マルチビューディスプレイから発出される光の発出パターンを傾斜させるステップは、光源およびコリメータの一方または両方を使用して、光をそれぞれの非ゼロ伝搬角で光導波路に誘導光として提供することを含む。いくつかの例では、光源は、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100に関連して上述した光源118と実質的に同様である。
【0098】
以上、1次ビューのセット、ならびに2次ビューと1次ビューセットのビューのサブセットとを含む拡張ビューセットの両方を利用する、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム、およびヘッドトラッキングを利用したマルチビュー表示動作の方法の実施例および実施形態について説明した。上述の実施例は、単に本明細書に記載する原理を表現する多数の具体的な実施例のうちの一部の例示に過ぎないことを理解されたい。当業者なら、以下の特許請求の範囲によって定義される範囲を逸脱することなく、多数のその他の構成を容易に考案することができることは明らかである。
【符号の説明】
【0099】
10 マルチビューディスプレイ
12 スクリーン
14 ビュー
16 ビュー方向
20 光線
30 回折格子
40 光導波路
50 外部結合光線
100 ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ
102’ 1次ビューセット
102’’ 2次ビュー
108 マルチビューピクセル
110 マルチビームバックライト
112 光線
114 光導波路
116 マルチビーム要素
120 光弁アレイ