(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】化合物の自動化学合成のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20220822BHJP
C07D 413/04 20060101ALI20220822BHJP
C07D 265/30 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
B01J19/00 321
C07D413/04
C07D265/30
(21)【出願番号】P 2018536742
(86)(22)【出願日】2017-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2017050400
(87)【国際公開番号】W WO2017121724
(87)【国際公開日】2017-07-20
【審査請求日】2019-12-17
(32)【優先日】2016-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508374139
【氏名又は名称】エー・テー・ハー・チューリッヒ
【氏名又は名称原語表記】ETH ZUERICH
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ボーディ、 ジェフリー ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァナー、 ベネディクト マティアス
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 クアン イェン
(72)【発明者】
【氏名】パッタビラマン、 ヴィジャヤ
(72)【発明者】
【氏名】ニコルズ、 ポーラ ルイス
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-529603(JP,A)
【文献】特表2002-536653(JP,A)
【文献】特表2013-505294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0045265(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02、
14/00-09/32
C07D 261/00-273/08、
401/00-421/14
C07K 1/00-19/00
B01L 1/00-99/00
C12M 1/00- 3/10
G01N 27/00-27/10、
27/14-27/24
33/00-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの化学化合物の自動合成のための装置であって、
少なくとも1つの化合物の化学合成のための少なくとも1つの第1の試薬を提供するための少なくとも1つの第1のコンパートメントA、
少なくとも1つの化合物の化学合成のための少なくとも1つの第2の試薬を提供するための少なくとも1つの第2のコンパートメントB、および
少なくとも1つの合成化合物を精製するための少なくとも1つの第3のコンパートメントC、
を含む少なくとも1つのカートリッジと、
該カートリッジのコンパートメントの少なくとも1つに供給される化合物を提供するためおよび/または該カートリッジのコンパートメントの少なくとも1つから反応生成物を回収するための少なくとも1つの反応容器と、
該カートリッジのコンパートメントの少なくとも1つのために使用される溶媒系を貯蔵するための少なくとも1つの溶媒容器と、
前記装置に任意で含まれていても含まれていなくてもよい容器であって、該カートリッジのコンパートメントの少なくとも1つから廃棄物を回収するため
の少なくとも1つの廃棄物容器と、
前記反応容器または前記溶媒容器を選択する少なくとも1つの第1のバルブ、および、該カートリッジ内のコンパートメントの1つ、反応容器または任意の廃棄物容器に液体を導く少なくとも1つの第2のバルブである、少なくとも2つの流路選択バルブと、並びに、
少なくとも1つの第1のバルブの下流であって少なくとも1つの第2のバルブの上流に配置されている少なくとも1つのポンプと、
を含み、
前記少なくとも1つの第1のコンパートメントA、前記少なくとも1つの第2のコンパートメントB、及び前記少なくとも1つの第3のコンパートメントCの入り口が、前記第2のバルブに連結され、該第2のバルブでこれらのコンパートメントのいずれか一つを選択可能であり、
前記反応容器は、前記少なくとも1つの第1のコンパートメントA、前記少なくとも1つの第2のコンパートメントB、及び前記少なくとも1つの第3のコンパートメントCのために連結可能であり、前記第1のバルブで該反応容器を選択可能であり、前記第2のバルブでこれらのコンパートメントのいずれか一つを選択可能であり、
前記溶媒容器は、前記少なくとも1つの第1のコンパートメントA、前記少なくとも1つの第2のコンパートメントB、及び前記少なくとも1つの第3のコンパートメントCのために連結可能であり、前記第1のバルブで該溶媒容器を選択可能であり、前記第2のバルブでこれらのコンパートメントのいずれか一つを選択可能であり、
前記廃棄物容器は、前記少なくとも1つの第1のコンパートメントA、前記少なくとも1つの第2のコンパートメントB、及び前記少なくとも1つの第3のコンパートメントCのために連結可能であり、又は、前記廃棄物容器として、これらのコンパートメントのそれぞれのために一つの別個の廃棄物容器を連結可能であり、前記第2のバルブで前記廃棄物容器を選択可能であること、
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのカートリッジが、反応混合物から任意
の未反応
の試薬物質を除去するためのさらに少なくとも1つの第4のコンパートメントDを含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記カートリッジのコンパートメントの各々が、
カートリッジ内のコンパートメントの1つに液体を導く少なくとも1つの第2のバルブに動作可能に連結された少なくとも1つの入口、および
少なくとも1つの反応容器に動作可能に連結された少なくとも1つの出口
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのカートリッジのための少なくとも1つのカートリッジホルダーを有し、該カートリッジホルダーの少なくとも1つの部分は加熱することができ、該カートリッジホルダーの他の部分は加熱できないことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記カートリッジホルダーの加熱部分は、第1の試薬および第2の試薬を含む、少なくとも1つのカートリッジのコンパートメントのいずれかを収容するように適合され、前記カートリッジホルダーの非加熱部分は、少なくとも1つのカートリッジの精製コンパートメントを収容するように適合されていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記反応容器が、コンパートメントからの反応体、中間体または
反応生成物を含むまたは貯蔵することができ
るヴェッセルであることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記反応容器が、少なくとも1つの撹拌ユニットを
含む、請求項1~6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも2つの流路選択バルブ
及び前記少なくとも1つのポン
プを操作/制御するための少なくとも1つのマイクロコントローラを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも2つの流路選択バルブ、前記少なくとも1つのポンプ及び少なくとも1つの加熱ユニットを操作/制御するための少なくとも1つのマイクロコントローラを特徴とする、請求項4又は5に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも2つの流路選択バルブ、前記少なくとも1つのポンプ及び前記少なくとも1つの撹拌ユニットを操作/制御するための少なくとも1つのマイクロコントローラを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
プロセスを開始するためにタッチスクリーンまたはプッシュボタンを介してアクセス可能な少なくとも1つの使用容易なユーザーインターフェイスを特徴とする、請求項1~
10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つのカートリッジが、
少なくとも1つの固定化された試薬としての第1の試薬を含む少なくとも1つの第1のコンパートメントAと、
第2の試薬としての少なくとも1つの触媒を含む少なくとも1つの第2のコンパートメントBと、
反応混合物から少なくとも1つの触媒を除去するための少なくとも1つのスカベンジングマトリックスを含む少なくとも1つの第3のコンパートメントCと、および
反応生成物を精製するための少なくとも1つのイオン交換担体を含む少なくとも1つの第4のコンパートメントDと、
を含むことを特徴とする、請求項1~
11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つのカートリッジの少なくとも1つの第3のコンパートメントCが、ポリマー担持チオ尿素、ポリマー担持トリスアミンおよびシリカ担持トリスアミンからなる群より選択される少なくとも1つの触媒を除去するための少なくとも1つのスカベンジングマトリックスを含むことを特徴とする、請求項
12に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つのカートリッジの少なくとも1つの第4のコンパートメントDが、反応生成物を精製するために、イオン交換樹脂またはシリカ担持イオン交換体を含むことを特徴とする、請求項
12または
13に記載の装置。
【請求項15】
前記カートリッジのコンパートメントの少なくとも1つから廃棄物を回収するための少なくとも1つの廃棄物容器を含む、請求項1~14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれかに記載の装置を用いる化学化合物の自動合成のための方法であって、
前記少なくとも1つの反応容器内の少なくとも1つの溶媒中に少なくとも1つの基質を提供する工程と、
前記少なくとも1つの基質を少なくとも1つの第1のコンパートメントAに1回または複数回自動的に通過させ、前記少なくとも1つの反応容器内の形成された基質-試薬中間体生成物を回収してから該基質-試薬中間体生成物を後続のコンパートメントに送り込む工程と、
前記基質-試薬中間体生成物を少なくとも1つの第2のコンパートメントBに1回または複数回自動的に通過させ、少なくとも1つの反応容器内の形成された反応生成物を回収してから該反応生成物を後続のコンパートメントに送り込む工程と、
前記反応生成物を少なくとも1つの第3のコンパートメントCに該生成物を精製するために1回または複数回自動的に通過させ、少なくとも1つの反応容器内の精製生成物を回収する工程と、
を含む方法。
【請求項17】
化学化合物の自動合成のための請求項
16に記載の方法であって、
前記装置の前記カートリッジが、反応混合物から任意
の未反応
の試薬物質を除去するための少なくとも1つの第4のコンパートメントDを含み、
前記少なくとも1つの反応容器内の少なくとも1つの溶媒中に少なくとも1つの基質を提供する工程と、
前記少なくとも1つの基質を少なくとも1つの固定化された試薬としての第1の試薬を含む少なくとも1つの第1のコンパートメントAに1回または複数回自動的に通過させ、少なくとも1つの反応容器内の形成された基質-試薬中間体生成物を回収してから該基質-試薬中間体生成物を後続の第2のコンパートメントBに送り込む工程と、
前記基質-試薬中間体生成物を第2の試薬としての少なくとも1つの触媒を含む少なくとも1つの第2のコンパートメントBに1回または複数回自動的に通過させ、少なくとも1つの反応容器内の形成された反応生成物を回収してから該反応生成物を後続の第3のコンパートメントCに送り込む工程と、
前記第3のコンパートメントC内の形成された反応生成物を反応混合物から少なくとも1つの触媒を除去するための少なくとも1つのスカベンジングマトリックスを含む少なくとも1つの第3のコンパートメントCに自動的に通過させ、少なくとも1つの反応容器内の形成された反応生成物を回収してからこの反応生成物を後続の第4のコンパートメントDに送り込む工程と、および
前記第3のコンパートメントC内の得られた反応生成物をこの反応生成物を精製するための少なくとも1つのイオン交換担体を含む少なくとも1つの第4のコンパートメントDに1回または複数回自動的に通過させ、少なくとも1つの反応容器内の精製生成物を回収する工程と、
を含む方法。
【請求項18】
少なくとも1つのN-複素環式構造を含む化学化合物の自動合成のための請求項
16または
17に記載の方法であって、
一般式(IIa):R
8-CHOで示される少なくとも1つのアルデヒドまたは一般式(IIb):R
8R
9COで示される少なくとも1つのケトン
(式中、
R
8およびR
9は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、-COOR
12(R
12はアルキルであり)、アリールおよびヘテロアリール(これらは各々の場合において非置換もしくは置換であり)からなる群より選択され、またはR
8とR
9がつながってアルキル環系を形成し、
1つまたは複数の酸素原子、硫黄原子、置換および/または非置換の窒素原子、および/または、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)-、-NHC(O)O-、-OC(O)NH-および/または-OC(O)Oで示される1つまたは複数の基で中断されてもよい。)
を、少なくとも1つの反応容器内の少なくとも1つの有機溶媒中に提供する工程と、
前記アルデヒドまたはケトン溶液を、
一般式(Ia):R
1R
2R
3Sn-CH
2-X-(CR
4R
5)
n-(CR
6R
7)
m-N=Y-キャリア、または
一般式(Ib):R
1R
2R
3Sn-CHXR
10-(CR
4R
5)
n-(CR
6R
7)
m-N=Y-キャリア
(式中、
R
1、R
2、R
3およびR
10は、アルキルからなる群より選択され、ここで、R
1、R
2およびR
3は同じまたは異なってよく;
Xは、O、保護されたNおよびSからなる群より選択され;
R
4、R
5、R
6およびR
7は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニルおよびアリールからなる群より選択され、R
4、R
5、R
6およびR
7は同じまたは異なってよく、並びに/あるいは、
R
4およびR
5の少なくとも1つと、R
6およびR
7の少なくとも1つとが一緒になってアルキルまたは(ヘテロ-)アリール環系を形成するか、または
R
4およびR
5の少なくとも2つまたはR
6およびR
7の少なくとも2つが一緒になってアルキルまたはアリールスピロ環式環系を形成し、
1つまたは複数の酸素原子、硫黄原子、置換および/または非置換の窒素原子、および/または、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)-、-NHC(O)O-、-OC(O)NH-および/または-OC(O)Oで示される1つまたは複数の基で中断されてよく;
nおよびmは1~6であり;
Y=P(R
11)
2(ここで、R
11は、少なくとも1つのアルキルまたはアリールであってよい);
キャリアは、ポリマーまたはシリカ化合物である。)
で示される少なくとも1つの固定化Sn含有試薬を含む少なくとも1つの第1のコンパートメントAに通過させ、基質を第1のコンパートメントAに通過させ、少なくとも1つの反応容器に送り込むときに、形成されるイミンまたはケチミン溶液を回収する工程と、
前記イミンまたはケチミン溶液を少なくとも1つの環化触媒を含む少なくとも1つの第2のコンパートメントBに通過させ、イミンまたはケチミン溶液を第2のコンパートメントBに通過させ、少なくとも1つの反応容器に送り込むときに、形成される
一般式(IIIa):
【化1】
または一般式(IIIb):
【化2】
または一般式(IIIc):
【化3】
(式中、R
4~R
9、R
10、Xは上記の意味を有する)
で示される少なくとも1つのN-複素環式化合物を回収する工程と、
一般式(IIIa)、(IIIb)または(IIIc)で示されるN-複素環式化合物を少なくとも1つの環化触媒スカベンジングマトリックスを含む少なくとも1つの第3のコンパートメントCに通過させ、少なくとも1つの反応容器内の一般式(IIIa)、(IIIb)または(IIIc)で示される環化触媒非含有N-複素環式化合物を回収する工程と、
少なくとも1つのイオン交換担体を含む少なくとも1つの第4のコンパートメントDに一般式(IIIa)、(IIIb)または(IIIc)で示される前記環化触媒非含有N-複素環式化合物を入れ、装填イオン交換担体を適切な溶媒系で洗浄し、イオン交換担体から適切な溶媒系を用いてN-複素環式反応生成物を溶出し、少なくとも1つの反応容器内の溶出N-複素環式反応生成物を回収する工程と、
を含む方法。
【請求項19】
カートリッジがユーザーによって装置から除去された後に、反応生成物を少なくとも1つの精製コンパートメントから溶出することを特徴とする、請求項
16~
18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
請求項1~
15のいずれかに記載の装置および請求項
16~
19のいずれかに記載の方法において使用するための、少なくとも1つのN-複素環式構造を含む化合物を自動的に化学合成するためのカートリッジであって、
前記装置の前記カートリッジが、反応混合物から任意
の未反応
の試薬物質を除去するための少なくとも1つの第4のコンパートメントDを含み、
以下の少なくとも1つの第1のコンパートメントA、少なくとも1つの第2のコンパートメントB、少なくとも1つの第3のコンパートメントCおよび少なくとも1つの第4のコンパートメントDを特徴とするカートリッジ:
少なくとも1つの第1のコンパートメントAは、
一般式(Ia):R
1R
2R
3Sn-CH
2-X-(CR
4R
5)
n-(CR
6R
7)
m-N=Y-キャリア、または
一般式(Ib):R
1R
2R
3Sn-CHXR
10-(CR
4R
5)
n-(CR
6R
7)
m-N=Y-キャリア
(式中、
R
1、R
2、R
3およびR
10は、アルキルからなる群より選択され、ここで、R
1、R
2およびR
3は同じまたは異なってよく;
Xは、O、保護されたNおよびSからなる群より選択され;
R
4、R
5、R
6およびR
7は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニルおよびアリールからなる群より選択され、R
4、R
5、R
6およびR
7は同じまたは異なってよく、並びに/あるいは、
R
4およびR
5の少なくとも1つと、R
6およびR
7の少なくとも1つとが一緒になってアルキルまたは(ヘテロ-)アリール環系を形成するか、または
R
4およびR
5の少なくとも2つまたはR
6およびR
7の少なくとも2つが一緒になってアルキルまたはアリールスピロ環式環系を形成し、
1つまたは複数の酸素原子、硫黄原子、置換および/または非置換の窒素原子、および/または、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)-、-NHC(O)O-、-OC(O)NH-および/または-OC(O)Oで示される1つまたは複数の基で中断されてよく;
nおよびmは1~6であり;
Y=P(R
11)
2(ここで、R
11は、少なくとも1つのアルキルまたはアリールであってよい);
キャリアは、ポリマーまたはシリカ化合物である。)
で示される固定化Sn含有試薬(SnAP試薬)の少なくとも1つとしての第1の試薬を含み、
一般式(Ia)または(Ib)で示されるSn含有試薬の少なくとも1つは、一般式(IIa):R
8-CHOで示される少なくとも1つのアルデヒドまたは一般式(IIb):R
8R
9COで示される少なくとも1つのケトン
(式中、
R
8およびR
9は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、-COOR
12(R
12はアルキルであり)、アリールおよびヘテロアリール(これらは各々の場合において非置換もしくは置換であり)からなる群より選択され、またはR
8とR
9がつながってアルキル環系を形成し、
1つまたは複数の酸素原子、硫黄原子、置換および/または非置換の窒素原子、および/または、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)-、-NHC(O)O-、-OC(O)NH-および/または-OC(O)Oで示される1つまたは複数の基で中断されてもよい。)
と反応して少なくとも1つのイミンまたはケチミンを形成することができ、
少なくとも1つの第2のコンパートメントBは、
第1のコンパートメントAから出てくる少なくとも1つのイミンまたは少なくとも1つのケチミンを、
一般式(IIIa):
【化4】
または一般式(IIIb):
【化5】
または一般式(IIIc):
【化6】
(式中、R
4~R
9、R
10、Xは上記の意味を有する)
で示される少なくとも1つのN-複素環式化合物に環化するための少なくとも1つの触媒としての第2の試薬を含み、
少なくとも1つの環化触媒は、銅塩およびスカンジウム塩からなる群より選択され、
少なくとも1つの第3のコンパートメントCは、
少なくとも1つの第2のコンパートメントBから出てくるN-複素環式化合物を含む反応混合物から少なくとも1つの環化触媒を除去するための少なくとも1つのスカベンジングマトリックスを含み、
少なくとも1つの第4のコンパートメントDは、
N-複素環式反応生成物を精製するための少なくとも1つのイオン交換担体を含む。
【請求項21】
前記少なくとも1つの第1のコンパートメントAが、
一般式(Ia):R
1R
2R
3Sn-CH
2-X-(CR
4R
5)
n-(CR
6R
7)
m-N=Y-ポリマー、または
一般式(Ib):R
1R
2R
3Sn-CHXR
10-(CR
4R
5)
n-(CR
6R
7)
m-N=Y-ポリマー
(式中、
R
1、R
2、R
3およびR
10は、C
1~C
10アルキルからなる群より選択され、ここで、R
1、R
2およびR
3は同じまたは異なってよく;
Xは、O、保護されたNおよびSからなる群より選択され;
R
4、R
5、R
6およびR
7は、H、C
1~C
20アルキル、C
5~C
10シクロアルキル、C
2~C
20アルケニル、C
5~C
10シクロアルケニルおよびC
6~C
12アリールからなる群より選択され、ここで、R
4、R
5、R
6およびR
7は同じまたは異なってよく、並びに/あるいは
R
4およびR
5の少なくとも1つと、R
6およびR
7の少なくとも1つとが一緒になって5~12員アルキルまたはアリール環系または(ヘテロ-)アリール環系を形成するか、または
R
4およびR
5の少なくとも2つまたはR
6およびR
7の少なくとも2つが一緒になって4~7員アルキルまたはアリールスピロ環式環系を形成し、
1つまたは複数の酸素原子、硫黄原子、置換および/または非置換の窒素原子、および/または、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)-、-NHC(O)O-、-OC(O)NH-および/または-OC(O)Oで示される1つまたは複数の基で中断されてもよく;
nおよびmは1、2、3、4または5であり;
Y=P(R
11)
2(ここで、R
11は、アリールであり);
キャリアはポリマーである。)
で示されるポリマー固定化Sn含有試薬の少なくとも1つを含み、
一般式(Ia)または(Ib)で示されるSn含有試薬の少なくとも1つは、一般式(IIa):R
8-CHOで示される少なくとも1つのアルデヒドまたは一般式(IIb):R
8R
9COで示される少なくとも1つのケトン
(式中、
R
8およびR
9は、C
1~C
20アルキル、C
2~C
20アルケニル、C
5~C
10シクロアルキル、C
5~C
10シクロアルケニル、-COOR
12(R
12はC
1~C
10アルキルである)およびC
6~C
12アリールからなる群より選択され、またはR
8とR
9がつながってC
5~C
12アルキルまたはC
6~C
12アリール環系を形成し、
1つまたは複数の酸素原子、硫黄原子、置換および/または非置換の窒素原子、および/または、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)-、-NHC(O)O-、-OC(O)NH-および/または-OC(O)Oで示される1つまたは複数の基で中断されてもよい。)
と反応して少なくとも1つのイミンまたはケチミンを形成することができる
ことを特徴とする、請求項
20に記載のカートリッジ。
【請求項22】
前記少なくとも1つの第2のコンパートメントBが、Cu(Z)
2またはSc(Z)
3(Zは、OTf、Cl、BrおよびSO
4
2-からなる群より選択される)からなる群より選択される少なくとも1つの触媒を含むことを特徴とする、請求項
20または
21に記載のカートリッジ。
【請求項23】
前記少なくとも1つの第3のコンパートメントCが、ポリマー担持チオ尿素、ポリマー担持トリスアミンおよびシリカ担持トリスアミンからなる群より選択される少なくとも1つの環化触媒を除去するための少なくとも1つのスカベンジングマトリックスを含むことを特徴とする、請求項
20~
22のいずれかに記載のカートリッジ。
【請求項24】
前記少なくとも1つの第4のコンパートメントDが、N-複素環式反応生成物を精製するために、イオン交換樹脂またはシリカ担持イオン交換体を含むことを特徴とする請求項
20~
23のいずれかに記載のカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の少なくとも1つの化合物の自動化学合成のための装置、請求項13に記載の少なくとも1つの化合物の自動化学合成のための方法および請求項17に記載のカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年にわたり化学が大きく進歩し、新しい技術や反応がこれまでになく速く発見されている。しかし、有機化学における重要なプロセスは何十年も変わっていない。今日でさえ、基礎研究のための多くの化学化合物は、依然として、手間と資源のかかる非効率的なプロセスを使用して合成されており、実際には、合成化学は依然として高度に訓練された化学者を要する。このプロセスは、化学物質の慎重な計量および溶媒の添加に続いて新たな反応が設定され、反応の完了後に冗長なワークアップおよび精製を行わなければならないので、時間がかかるものである。
【0003】
反応が遅い化合物は、有機合成においてさらなる問題を引き起こし、妥当な時間内に反応の転化率をより高くするために過剰な試薬や過酷な条件がしばしば求められ、精製工程で問題を引き起こす可能性がある。その結果、そのような化学プロセスの自動化および簡易化が大いに求められている。
【0004】
従って、本発明の1つの目的は、1つを除いてすべての反応成分を計量し測定する必要性をなくし、過剰な試薬の使用を回避し、冗長な反応のワークアップを排除すると共に最終的にはより速い反応時間を可能とするような完全自動化方式で、未熟なユーザーが有機化合物を迅速に合成できるようにすることによって、有機合成のこれらの制限に対処することである。
【0005】
もう1つの目的は、研究のために重要な骨格が作られる方法を大幅に簡単にすることができるので、主に、化学研究開発機関を支援することである。
【0006】
さらに別の目的は、多くの製薬および農業生産物における重要な構成要素である、飽和N-複素環のような重要な骨格の製造のための、使い捨てポリマー担持試薬カートリッジを利用する完全自動化フロー化学系合成装置を提供することである。しかしながら、収束性の予測可能な方法による置換飽和N-複素環の容易な構築のための戦略は、それらの芳香族対応物とは異なり、限られている。
【0007】
最近広く採用されているSnAP選択法(Voら著、Nature Chemistry、2014年版、310~314頁)でさえ限界がある。これは、ユーザーが毒性の高い試薬を取り扱うと共に冗長なワークアップ手順を実行することを要する。さらに、飽和N-複素環の合成のための初期の溶液相アプローチでは、イミン形成、Cu(OTf)2の添加、ワークアップおよび精製を含む、ユーザー介入を必要とする複数の工程を要する。各工程は、待機時間で区切られ、合計で12~24時間となる。いくつかの化合物を製造する必要がある場合、この多段階法は時間がかかりすぎる。従って、これらの化合物および他の多くの化合物を簡単に、迅速にかつ高効率で合成することを可能にする新規な自動化方法に対する需要が大きい。
【0008】
これらおよび他の目的は、請求項1に記載の装置および請求項13に記載の方法を提供することによって解決された。
【0009】
従って、少なくとも1つの化学化合物、特に少なくとも1つのN-複素環式構造を含む化合物の自動合成のための装置が提供され、その装置は、
少なくとも1つの化合物の化学合成のための少なくとも1つの第1の試薬を提供するための少なくとも1つの第1のコンパートメント、
少なくとも1つの化合物の化学合成のための少なくとも1つの第2の試薬を提供するための少なくとも1つの第2のコンパートメント、および
少なくとも1つの合成化合物を精製するための少なくとも1つの第3のコンパートメント、
を含む少なくとも1つのカートリッジと、
該カートリッジのコンパートメントの少なくとも1つに供給される化合物を提供するためおよび/または該カートリッジのコンパートメントの少なくとも1つから反応生成物を回収するための少なくとも1つの反応容器と、
該カートリッジのコンパートメントの少なくとも1つのために使用される溶媒系を貯蔵するための少なくとも1つの溶媒容器と、
該カートリッジのコンパートメントの少なくとも1つから廃棄物を回収するための任意の少なくとも1つの廃棄物容器、特に少なくとも3つのコンパートメントの全てのための1つの廃棄物容器と、
液体源、特に反応容器または溶媒リザーバを選択する少なくとも1つの第1のバルブ、および、カートリッジ内のコンパートメントの1つ、反応容器または任意の廃棄物容器に液体を導く少なくとも1つの第2のバルブである、少なくとも2つの流路選択バルブと、並びに、
少なくとも1つの第1のバルブの下流であって少なくとも1つの第2のバルブの上流に配置されている、すなわち、少なくとも1つの第1のバルブから少なくとも1つの第2のバルブに選択された液体を移動させるまたはポンプ輸送する(pump)、少なくとも1つのポンプと、
を含む。
【0010】
従って、溶媒および任意の廃棄物を貯蔵するための別個のヴェッセルと、基質の送達、中間体生成物の貯蔵または最終生成物のための少なくとも1つの別個の容器とを含む装置が提供される。本装置は、そのヴェッセルまたは容器からの基質、中間体生成物および/または反応生成物がカートリッジの異なるコンパートメントを通過することを可能にする。溶液相を、物理的に分離された試薬を含むコンパートメントのそれぞれを通して複数回再循環させて、改善された反応収率をもたらすことができる。さらに、カートリッジのコンパートメントの各々を通る流れを独立して制御することができる。これにより、カートリッジの特定のコンパートメントを通って再循環させることができ、従って、必要なだけ長く各試薬と接触させることができる。これは、各コンパートメントを通る流量およびサイクル回数を制御して収率を最適化することができ、単一パス法を用いては不可能な化学反応を可能にするので、各コンパートメントを1回通過することよりも顕著な利点を提供する。
【0011】
本装置に備えつけられたカートリッジは、いくつかのコンパートメントに分かれており、そのカートリッジは、3つのステップのそれぞれのための少なくとも1つのコンパートメント、すなわち、第1の試薬コンパートメント、第2の試薬コンパートメントおよび精製コンパートメントを含む。本カートリッジでは、化学合成に必要な全ての必須成分がカートリッジのコンパートメントに含まれており、完全自動合成が可能になっている。
【0012】
基質をそのままの状態で(neat)または異なる濃度(例えば、0.1~1.0mmol)で提供することができ、その基質は試薬コンパートメント内の試薬と反応して基質-試薬中間体生成物を形成し、少なくとも1つの第1の試薬コンパートメントの固体担体(support)から放出される。さらに、ある範囲の別の固定化試薬を用いることができ、広い範囲の異なる化合物の合成が可能となる。さらに、第1の反応生成物を、第2の試薬コンパートメント(例えば、非固定化反応体を触媒量または化学量論量で含む)を通過させて変換を引き起こすことができる。
【0013】
一実施形態では、カートリッジは、任意の触媒材料のような任意の(未反応の)試薬材料を反応混合物から除去するためのさらに少なくとも1つの第4のコンパートメントを含む。
【0014】
コンパートメントの特定の配列順序はないことが通常理解されている。その順序はむしろ特定の化学反応要求に依存する。従って、一実施形態では、第1の試薬コンパートメント、第2の試薬コンパートメントおよび精製コンパートメントの順序であってよい。別の実施形態では、第1の試薬コンパートメント、精製コンパートメントおよび第2の試薬コンパートメントの順序であってよい。2つ以上の精製コンパートメントが存在してもよい。この場合、第1の試薬コンパートメント、第1の精製コンパートメント、第2の試薬コンパートメントおよび第2の精製コンパートメントの順序であってよい。コンパートメントの任意の組み合わせが可能である。
【0015】
カートリッジのコンパートメントは、好ましくは、長さが異なる、例えば長さが50~150mm、好ましくは70~100mm、直径が5~15mm、好ましくは8~10mmの円筒形状を有することができる。カートリッジおよびコンパートメントは、それぞれプラスチック材料で作られてもよい。さらに、カートリッジとコンパートメントが一体に(in one piece)作製されてもよい。
【0016】
コンパートメントは、互いに空間的に離れていてもよく、および/または、互いに隣り合って、例えば、平行または一列に、配置されていてもよい。
【0017】
また、コンパートメントの各々が、少なくとも1つの入口と1つの出口とを含むことが好ましい。従って、各コンパートメントは、入口および出口を介して、反応容器および/または溶媒リザーバに接続される。
【0018】
従って、3つまたは4つのコンパートメントを有するカートリッジは、各コンパートメントの出発物質および/または反応生成物を保管する少なくとも1つの反応容器に、カートリッジのコンパートメント内の異なる反応シーケンスに求められる溶媒を貯蔵するための少なくとも1つの溶媒リザーバに、並びに、任意に、少なくとも1つの廃棄物容器に連結される。
【0019】
しかしながら、少なくとも1つの反応容器および/または少なくとも1つの溶媒リザーバが各コンパートメントの単一の1つに割り当てられることも考えられる。従って、反応容器および/または溶媒リザーバの数は、変更することができ、特定のプロセス要件によって決めることができる。
【0020】
本装置の好ましい実施形態では、カートリッジのコンパートメントの各々は、
カートリッジ内のコンパートメントの1つに液体を導く少なくとも1つの第2のバルブに動作可能に連結された少なくとも1つの入口と、並びに
少なくとも1つの反応容器および任意に少なくとも1つの廃棄物容器に動作可能に連結された少なくとも1つの出口と、
を含む。
【0021】
本装置の一実施形態では、少なくとも1つのカートリッジが、
少なくとも1つの固定化された試薬としての第1の試薬を含む少なくとも1つの第1のコンパートメントAと、
第2の試薬としての少なくとも1つの触媒を含む少なくとも1つの第2のコンパートメントBと、
反応混合物から少なくとも1つの触媒を除去するための少なくとも1つのスカベンジングマトリックスを含む少なくとも1つの第3のコンパートメントCと、および
反応生成物を精製するための少なくとも1つのイオン交換担体を含む少なくとも1つの第4のコンパートメントDと、
を含む。
【0022】
前記少なくとも1つのカートリッジの少なくとも1つの第3のコンパートメントCが、ポリマー担持チオ尿素、ポリマー担持トリスアミンおよびシリカ担持トリスアミンからなる群より選択される少なくとも1つの触媒を除去するための少なくとも1つのスカベンジングマトリックスを含むことが、さらに好ましい。
【0023】
また、少なくとも1つのカートリッジの少なくとも1つの第4のコンパートメントDが、反応生成物を精製するために、イオン交換樹脂または固体担持スルホン酸のようなシリカ担持イオン交換体を含むことが好ましい。
【0024】
好ましい実施形態は、少なくとも1つのN-複素環式構造を含む少なくとも1つの化合物の化学合成のための本装置に使用されるカートリッジであって、前記カートリッジは以下のコンパートメントの少なくとも1つを含む:
少なくとも1つの第1のコンパートメントA:
一般式(Ia):R
1R
2R
3Sn-CH
2-X-(CR
4R
5)
n-(CR
6R
7)
m-N=Y-キャリア、
または
一般式(Ib):R
1R
2R
3Sn-CHXR
10-(CR
4R
5)
n-(CR
6R
7)
m-N=Y-キャリア
(式中、
R
1、R
2、R
3およびR
10は、アルキルを含む基(a group comprising alkyl)から選択され、ここで、R
1、R
2およびR
3は同じまたは異なってよく;
Xは、O、保護されたNおよびSからなる群(a group comprising)より選択され;
R
4、R
5、R
6およびR
7は、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニルおよびアリールからなる群より選択され、ここで、R
4、R
5、R
6およびR
7は同じまたは異なってよく、並びに/あるいは
R
4およびR
5の少なくとも1つと、R
6およびR
7の少なくとも1つが一緒になってアルキルまたはアリール環系を形成するか、または
R
4およびR
5の少なくとも2つまたはR
6およびR
7の少なくとも2つが一緒になってアルキルまたはアリールスピロ環式環系を形成し、
1つまたは複数の酸素原子、硫黄原子、置換および/または非置換の窒素原子、および/または、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)-、-NHC(O)O-、-OC(O)NH-および/または-OC(O)Oで示される1つまたは複数の基で中断されてもよく;
nおよびmは1~6、好ましくは1~5、1、2、3、4または5であり;
Y=P(R
11)
2(ここで、R
11は、少なくとも1つのアルキルまたはアリールであってよく);
キャリアは、ポリマーまたはシリカ化合物、例えばシリカゲルである。)
で示される固定化Sn含有試薬(SnAP試薬)の少なくとも1つとしての第1の試薬を含み、
一般式(Ia)または(Ib)で示されるSn含有試薬の少なくとも1つは、一般式(IIa):R
8-CHOで示される少なくとも1つのアルデヒド
または一般式(IIb):R
8R
9COで示される少なくとも1つのケトン
(式中、
R
8およびR
9は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、-COOR
12(R
12はアルキルであり)、アリールおよびヘテロアリール(これらは各々の場合において非置換もしくは置換であり)からなる群より選択され、または、R
8とR
9がつながってアルキルまたはアリール環系、特にC
4~C
8アルキル環を形成し、
1つまたは複数の酸素原子、硫黄原子、置換および/または非置換の窒素原子、および/または、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)-、-NHC(O)O-、-OC(O)NH-および/または-OC(O)Oで示される1つまたは複数の基で中断されてもよい。)
と反応して少なくとも1つのイミンまたはケチミンを形成することができる、
少なくとも1つの第2のコンパートメントB:
第1のコンパートメントAを離れる(leave)少なくとも1つのイミンまたは少なくとも1つのケチミンを、
一般構造(IIIa):
【化1】
または一般構造(IIIb):
【化2】
または一般構造(IIIc):
【化3】
(式中、R
4~R
9は上記の意味を有する)
で示される少なくとも1つのN-複素環式化合物に環化するための少なくとも1つの触媒としての第2の試薬を含み、
ここで、少なくとも1つの環化触媒は、銅塩またはスカンジウム塩のような遷移金属塩からなる群より選択される、
少なくとも1つの第3のコンパートメントC:
少なくとも1つの第2のコンパートメントBを離れるN-複素環式化合物を含む反応混合物から少なくとも1つの環化触媒を除去するための少なくとも1つのスカベンジングマトリックスを含む、
少なくとも1つの第4のコンパートメントD:
N-複素環式反応生成物を精製するための少なくとも1つのイオン交換担体を含む。
【0025】
従って、カートリッジは、N-複素環の合成に求められるすべての必須成分を提供する。カセットまたはカートリッジのコンパートメント内の固定化された試薬は、完全自動合成を可能にする。さらに、ある範囲の別の固定化試薬を使用することができる。特に、多くの異なる固定化されたSnAP試薬が、好ましくは使い捨てカセットまたはカートリッジを充填するために使用され、広範囲の異なる飽和N-複素環の生成を可能にする。
【0026】
本カートリッジの一実施形態では、前記少なくとも1つの第1のコンパートメントAが、
一般式(Ia):R1R2R3Sn-CH2-X-(CR4R5)n-(CR6R7)m-N=Y-ポリマー、
または
一般式(Ib):R1R2R3Sn-CHXR10-(CR4R5)n-(CR6R7)m-N=Y-ポリマー
(式中、
R1、R2、R3およびR10は、C1~C10アルキル、好ましくはC1~C6アルキル、特に好ましくはC4アルキル、例えば、ブチル、tert-ブチル、イソブチルからなる群より選択され、ここで、R1、R2およびR3は同じまたは異なってよく;
Xは、O、保護されたNおよびSからなる群より選択され;
R4、R5、R6およびR7は、H、C1~C20アルキル、C5~C10シクロアルキル、C2~C20アルケニル、C5~C10シクロアルケニルおよびC6~C12アリールからなる群より選択され、ここで、R4、R5、R6およびR7は同じまたは異なってよく、並びに/あるいは
R4およびR5の少なくとも1つと、R6およびR7の少なくとも1つが一緒になって5~12員アルキルまたはアリール環系、特に6員アルキルまたはアリール環系、例えばC6アリール環を形成するか、または
R4およびR5の少なくとも2つまたはR6およびR7の少なくとも2つが一緒になって4~7員アルキルまたは(ヘテロ-)アリールスピロ環式環系を形成し、
1つまたは複数の酸素原子、硫黄原子、置換および/または非置換の窒素原子、および/または、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)-、-NHC(O)O-、-OC(O)NH-および/または-OC(O)Oで示される1つまたは複数の基で中断されてもよく;
nおよびmは1、2、3、4または5であり;
Y=P(R11)2(ここで、R11は、アリール、特にフェニルであり);
キャリアはポリスチレンである。)
で示されるポリマー固定化Sn含有試薬の少なくとも1つを含み、
一般式(Ia)または(Ib)で示されるSn含有試薬の少なくとも1つは、一般式(IIa):R8-CHOで示される少なくとも1つのアルデヒドまたは一般式(IIb):R8R9COで示される少なくとも1つのケトン
(式中、
R8およびR9は、C1~C20アルキル、C2~C20アルケニル、C5~C10シクロアルキル、C5~C10シクロアルケニル、-COOR12(R12はC1~C10アルキルである)およびC6~C12アリールからなる群より選択され、または、R8とR9がつながってC5~C12アルキルまたはC6~C12アリール環系、特にC6アリール環を形成し、
1つまたは複数の酸素原子、硫黄原子、置換および/または非置換の窒素原子、および/または、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)-、-NHC(O)O-、-OC(O)NH-および/または-OC(O)Oで示される1つまたは複数の基で中断されてもよい。)
と反応して少なくとも1つのイミンまたはケチミンを形成することができる。
【0027】
基(moieties)R4、R5、R6およびR7は、H、C1~C12アルキル、C5~C7シクロアルキル、C2~C12アルケニル、C6~C12アリールまたはヘテロアリール、特に、メチル、エチル、プロピル、フェニル(非置換またはF、ClもしくはCF3で置換されている)およびピリジンからなる群より選択される。
【0028】
一般式(Ia)または(Ib)で示されるSn含有試薬の好ましい例は、以下の試薬である。
【0029】
【0030】
より特定の実施形態では、以下のSn含有試薬が提供される:
【0031】
【0032】
本カートリッジの別の変形(variant)では、少なくとも1つの第2のコンパートメントBは、CuおよびSc塩(例えばScCl3)からなる群より選択される少なくとも1つの触媒、特にCu(Z)2(Zは、OTf、Cl、BrおよびSO4
2-からなる群より選択される)、特にCu(OTf)2を含む。
【0033】
本カートリッジのさらに別の変形では、少なくとも1つの第3のコンパートメントCは、ポリマー担持チオ尿素、ポリマー担持トリスアミンおよびシリカ担持トリスアミンからなる群より選択される少なくとも1つの環化触媒を除去するための少なくとも1つのスカベンジングマトリックスを含む。
【0034】
本カートリッジのさらに別の変形では、少なくとも1つの第4のコンパートメントDは、N-複素環式反応生成物を精製するために、イオン交換樹脂またはシリカ担持イオン交換体、例えば、固体担持スルホン酸を含む。
【0035】
本装置のカートリッジは、好ましくは、合成装置に連結され得るカートリッジホルダー内に配置される。
【0036】
カートリッジホルダーは、カートリッジホルダーの少なくとも一部が加熱され、カートリッジホルダーの他の部分が加熱されない2つの部分を含むことができる。カートリッジホルダーの加熱された部分は、少なくとも1つの加熱ユニットも含み、アルミニウムのような適切な金属で作られる。カートリッジホルダーの非加熱部分は室温に保たれ、好ましくはポリプロピレン/ポリカーボネートのようなプラスチックで作られる。加熱された部分と加熱されていない部分(色分けされていてもよい)とのこのような非対称の配置はまた、カートリッジホルダーへのカートリッジの誤った挿入を防止し得る。これは、一実施形態では3つのコンパートメントA~Cのみを加熱すべきであるが、第4のコンパートメントDは室温に保たなければならないから、重要なことである。
【0037】
従って、一実施形態では、カートリッジホルダーの加熱部分は、触媒のような第1の試薬および第2の試薬を含むコンパートメントのいずれかを収容するように適合され、カートリッジホルダーの非加熱部分は、精製コンパートメントを収容するように適合される。特定の実施形態では、カートリッジホルダーはコンパートメントA、BおよびCを収容するように適合され、カートリッジホルダーの非加熱部分はコンパートメントDを収容するように適合される。
【0038】
上述したように、本装置は、カートリッジのコンパートメントの少なくとも1つ、特にカートリッジのコンパートメントA~Dの少なくとも1つに供給される化合物を提供するための、および/または、コンパートメントの、特にカートリッジのコンパートメントA~Dの少なくとも1つからの反応生成物を回収するための少なくとも1つの反応容器に、特に、少なくとも4つのコンパートメントの全てのための1つの反応容器に連結される。従って、本装置および以下に記載される方法で使用される反応容器は、同じでも異なってもよい。例えば、すべての抽出物および生成物に対して1つの反応容器が繰り返し使用される。1つの反応容器が、各コンパートメントからの抽出物/生成物のために使用されることも可能である。
【0039】
反応容器は、アルデヒド/ケトンなどの出発物質を提供し、生成物を受け取ることができる。また、反応液が含まれる反応容器としても機能する。流路の容積は反応に使用される溶媒の容積よりも小さいので、容器は緩衝液または一時的貯蔵所のように働く。
【0040】
反応容器は、例えばバイアル、チュービングループまたはチップベースの反応器のような、コンパートメントからの反応体、中間体または生成物を含むまたは貯蔵することができる任意のヴェッセルとして定義することができる。また、反応容器は、加熱または光照射が可能である。
【0041】
上記のように、本装置はまた、カートリッジのコンパートメントの少なくとも1つに使用される溶媒系を貯蔵するための少なくとも1つの溶媒リザーバ、特に、少なくとも4つのコンパートメントA~Dの全てのための溶媒リザーバに連結されている。1つの特定のコンパートメントには指定されていないが、装置のすべてのコンパートメントに使用される装置全体には、いくつかの溶媒リザーバを使用することができる。
【0042】
本装置はさらに、カートリッジのコンパートメントの少なくとも1つから廃棄物を回収するための少なくとも1つの廃棄物容器、特に少なくとも3つまたは4つのコンパートメントのすべてのための1つの廃棄物容器に連結されてもよい。しかし、少なくとも3つまたは4つのコンパートメントのそれぞれに1つの別個の廃棄物容器を備えることも考えられる。
【0043】
また上述したように、本装置は、少なくとも2つの流路選択バルブを含み、ここで、少なくとも1つの第1のバルブが、液体源、特に反応容器または溶媒リザーバを選択し、もう一方の第2のバルブが、コンパートメントの1つ、反応容器または廃棄物容器に液体を導く。バルブは、例えばステッピンクモーターが取り付けられた流路選択テフロン(登録商標)バルブからなる市販の部品である。
【0044】
本装置は、合成プロセスで使用される全ての液体用の少なくとも1つのポンプも含み、ここで、少なくとも1つのポンプは、少なくとも1つの第1のバルブの下流で、かつ、もう一方の第2のバルブの上流に配置される。従って、少なくとも1つのポンプは、少なくとも2つの流路選択バルブを接続する。市販のソレノイドポンプをポンプとして使用することができる。
【0045】
本装置はまた、少なくとも1つの撹拌ユニットを含むことができる。具体的には、各反応容器は、少なくとも1つの攪拌手段を含むことができる。攪拌手段は、例えば、4つの小型誘導コイルからなることができる。これらは円形に磁化されて、反応容器内の小さな磁気攪拌棒を推進する。
【0046】
さらに別の変形では、本装置は、少なくとも2つの流路選択バルブ、少なくとも1つのポンプ、少なくとも1つの加熱ユニットおよび少なくとも1つの攪拌ユニットを操作/制御するための少なくとも1つのマイクロコントローラを含む。
【0047】
1つのさらなる実施形態では、装置は、少なくとも1つのタッチスクリーンを含む。タッチスクリーンはシンプルで直感的なユーザーインターフェイスを提供し、すべてのコマンドをマイクロコントローラに送信して処理する。この装置は、RS-232、RS-485またはUSBを介して外部インターフェイスによって制御することもできる。
【0048】
装置はまた、挿入されたカートリッジ/カートリッジおよび接続されたコンパートメントの自動認識のためのRFIDリーダーのようなさらなる電気的構成要素を含むことも可能である。
【0049】
本発明の装置は、以下の工程を含む化学化合物の自動合成のための方法に使用される:
前記少なくとも1つの反応容器内の少なくとも1つの溶媒中に少なくとも1つの基質を提供する工程、
前記少なくとも1つの基質を少なくとも1つの第1の試薬コンパートメントに1回または複数回自動的に通過させ、少なくとも1つの反応容器内の形成された基質-試薬中間体生成物(すなわち、少なくとも1つの第1の試薬コンパートメントを通過するときに形成される)を回収してから該基質-試薬中間体生成物を後続のコンパートメントに送り込む(pass)工程、
前記基質-試薬中間体生成物を少なくとも1つの第2の試薬コンパートメントに1回または複数回自動的に通過させ、少なくとも1つの反応容器内の形成された反応生成物(すなわち、少なくとも1つの第2の試薬コンパートメントを通過するときに形成される)を回収してから該反応生成物を後続のコンパートメントに送り込む工程、および
前記反応生成物を少なくとも1つの第3のコンパートメントに生成物を精製するために1回または複数回自動的に通過させ、少なくとも1つの反応容器内の精製生成物を回収する工程。
【0050】
処理ステップの順序は変更してもよいことは理解されるべきである。例えば、第1の試薬を含む第1のコンパートメントを出る基質-試薬中間体を精製コンパートメントに通し、続いて第2の試薬を含むコンパートメントを通過させた後に別の精製工程を行うことが可能である。任意の組み合わせが可能であり、具体的な反応条件に従って選択される。
【0051】
化学化合物の自動合成のための本発明の方法の実施形態では、この方法は以下の工程を含む:
前記少なくとも1つの反応容器内の少なくとも1つの溶媒中に少なくとも1つの基質を提供する工程、
前記少なくとも1つの基質を少なくとも1つの固定化された試薬としての第1の試薬を含む少なくとも1つの第1のコンパートメントAに1回または複数回自動的に通過させ、少なくとも1つの反応容器内の形成された基質-試薬中間体生成物を回収してから該基質-試薬中間体生成物を後続のコンパートメントBに送り込む工程、
前記基質-試薬中間体生成物を第2の試薬としての少なくとも1つの触媒を含む少なくとも1つの第2のコンパートメントBに1回または複数回自動的に通過させ、少なくとも1つの反応容器内の形成された反応生成物を回収してから該反応生成物を後続のコンパートメントCに送り込む工程、
前記コンパートメントC内の形成された反応生成物を反応混合物から少なくとも1つの触媒を除去するための少なくとも1つのスカベンジングマトリックスを含む少なくとも1つの第3のコンパートメントCに自動的に通過させ、少なくとも1つの反応容器内の形成された反応生成物を回収してから該反応生成物を後続のコンパートメントDに送り込む工程、および
前記コンパートメントC内の得られた反応生成物を該反応生成物を精製するための少なくとも1つのイオン交換担体を含む少なくとも1つの第4のコンパートメントDに1回または複数回自動的に通過させ、少なくとも1つの反応容器内の精製生成物を回収する工程。
【0052】
一実施形態では、少なくとも1つのN-複素環式構造を含む化合物の自動合成方法は、以下の工程を含む:
一般式(IIa):R8-CHOで示される少なくとも1つのアルデヒドまたは一般式(IIb):R8R9COで示される少なくとも1つのケトン(R8およびR9は上記の意味を有する)を、少なくとも1つの反応容器内の少なくとも1つの有機溶媒中に提供する工程、
前記アルデヒドまたはケトン溶液を、一般式(Ia)または一般式(Ib)で示される少なくとも1つの固定化Sn含有試薬を含む少なくとも1つのコンパートメントAに通過させ、少なくとも1つの反応容器内のコンパートメントAを通過するときに形成されるイミンまたはケチミン溶液を回収する工程、
前記イミンまたはケチミン溶液を少なくとも1つの環化触媒を含む少なくとも1つの第2のコンパートメントBに通過させ、少なくとも1つの反応容器内のコンパートメントBを通過するときに形成される一般式(IIIa)、(IIIb)または(IIIc)で示される少なくとも1つのN-複素環式化合物を回収する工程、
一般式(IIIa)、(IIIb)または(IIIc)で示される前記N-複素環式化合物を少なくとも1つの環化触媒スカベンジングマトリックスを含む少なくとも1つの第3のコンパートメントCに通過させ、少なくとも1つの反応容器内の一般式(IIIa)、(IIIb)または(IIIc)で示される環化触媒非含有N-複素環式化合物を回収する工程、並びに
少なくとも1つのイオン交換担体を含む少なくとも1つの第4のコンパートメントDに一般式(IIIa)、(IIIb)または(IIIc)で示される環化触媒非含有N-複素環式化合物を装填し(load)、装填イオン交換担体を適切な溶媒系で洗浄し、イオン交換担体から適切な溶媒系を用いてN-複素環式反応生成物を溶出し、少なくとも1つの反応容器内の溶出N-複素環式反応生成物を回収する工程。
【0053】
溶液は、40~100℃、好ましくは50~80℃、最も好ましくは60~70℃の温度で5~120分間、好ましくは10~45分間、最も好ましくは20~30分間、循環流(circular flow)でポンプ輸送することによってコンパートメントA~Cに通される。通常、加熱ユニットの適用温度は、反応に使用される溶媒の沸点より20℃以上(more than 20℃)高くしてはならない。
【0054】
コンパートメントDの場合、溶液は、室温で、5~60分間、好ましくは10~45分間、最も好ましくは20~30分間、循環流でポンプ輸送することによって通過する。
【0055】
本発明の意味において、循環流とは、液体が、反応容器から流路選択バルブAへとポンプ輸送され、流路選択バルブBにポンプ輸送されてカートリッジのコンパートメントの1つを通って反応容器に戻ることを意味する。
【0056】
使用されるポンプの最大流量は、製造業者から、水に対して24ml/分とされている。使用された溶媒の場合、最大流量は10ml/分とすることができる。背圧が発生しないように流量を調節する。
【0057】
コンパートメントA~Dにおける異なる反応ステップは、特定の溶媒を要することがある。例えば、コンパートメントAにおけるイミン/ケチミン形成は、CH2Cl2中で行われる。コンパートメントBにおける環化は、特に、有機溶媒としてアセトニトリル、2,6-ルチジン、CH2Cl2またはHFIPを使用する。コンパートメントCにおけるスカベンジング工程は、好ましくはCH2Cl2、C2H4Cl2またはMeOHを使用する。
【0058】
コンパートメントDでは、装填された担体は、好ましくは、CH2Cl2およびMeOHなどの有機溶媒で洗浄され、好ましくは、MeOH中0.1M NH3またはMeOH中にアミンを含む混合物を使用して、N-複素環式反応生成物を樹脂から溶出する。
【0059】
通常、溶媒または溶媒混合物のタイプは、抽出物および生成物によって決定され、それにより変わり得る。
【0060】
本方法の変形において、反応生成物は、カートリッジがユーザーによって装置から除去された後に少なくとも1つの精製コンパートメントから溶出される。特に、装填されたN-複素環式反応生成物を有する少なくとも1つの第4のコンパートメントDは、ユーザーによって装置から取り除かれ、N-複素環式生成物は、適切な溶媒系を用いていつでも別個に溶出される。
【0061】
本発明を、図を参照して以下の実施例によってより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1は、本発明の一実施形態による装置の一実施形態を示す図である。
図2Aは、本発明の一実施形態による自動合成装置の電気構成要素の概略図である。
図2Bは、本発明の一実施形態による装置における液体の通常の流れ図である。
図3は、本発明によるカートリッジの一実施形態を示す図である。
図4は、本発明の別の実施形態による、装置およびカートリッジ内の液体のさらなる流れ図である。
図5は、カートリッジホルダーの一実施形態を示す。
【0063】
図1には、自動合成装置または装置の実施形態が示されている。この装置は、タッチスクリーン1、オン/オフボタン2、2つの流路選択バルブ3a、3b、ポンプ4、好ましくはアルミニウム製の加熱ユニット5、カートリッジホルダーの加熱部分7aに挿入された単一のカートリッジ6、カートリッジホルダーの非加熱部分7bを含む。
【0064】
図2Aは、N-複素環式構造の自動合成のために本装置に求められる異なる電気部品の一般的なスキームを示す。
【0065】
通常の12V電源は中央のマイクロコントローラボードに電力を供給する。これはプログラム全体を処理し、個々のコンポーネントに必要な電力を導く。タッチスクリーンはシンプルで直感的なユーザーインターフェイスを提供し、すべてのコマンドをマイクロコントローラに送信して処理する。この装置は、RS-232、RS-485またはUSBを介して外部インターフェイスによって制御することもできる。得られたユーザコマンドから、マイクロコントローラは、2つの流路選択バルブ、ポンプ、加熱ユニットおよび撹拌ユニットを操作する。バルブは、ステッピングモーターが取り付けられた流路選択テフロンバルブからなる市販の部品である。ここでは市販のポンプ、例えばソレノイドポンプが使用されている。加熱ユニットは、内部に4つの加熱カプセルを有するアルミニウムから構成されている。温度プローブは現在の温度を測定し、マイクロコントローラはユーザーにより設定された温度に発熱量を調整する。攪拌ユニットは、4つの小型誘導コイルからなる。これらは円形に磁化されて、反応容器内の小さな磁気攪拌棒を推進する。機械はまた、挿入されたカートリッジの自動認識のためのRFIDリーダーのようなさらなる電気的構成要素を含むことができる。
【0066】
図2Bに示すスキームは、自動合成装置における液体の一般的な流れ図の概要を提供する。自動合成装置は、プロセス中のすべての液体を取り扱うための、2つの8ポート流路選択バルブとポンプを使用する。1つのバルブは、ポンプ用の液体源(溶媒リザーバ/反応容器)を選択する役割を担う。他のバルブは、液体または試薬の宛先(廃棄物容器/試薬コンパートメント/反応容器)を選択する。
【0067】
本発明の基本的な概念は、
図3に示すカートリッジの実施形態によって説明される。基本的な概念には、いくつか、少なくとも3つのコンパートメントに分割された1つのカートリッジがある。カートリッジには、3つのステップごとに少なくとも1つのコンパートメントが含まれている(試薬コンパートメント、第2の試薬コンパートメント、精製コンパートメント)。
【0068】
基質はそのままの状態で送達することができる、または0.1~1.0mmolの基質濃度範囲を用いることができる。機械は、必要な濃度に調節するために与えられた基質を溶解することができる。基質は試薬コンパートメント内の試薬と反応し、結果として生じる試薬は固体担体から放出される。従って、過剰量の試薬による汚染を避けるために、所望の量の試薬のみが放出される。
図3の例によれば、0.2mmolの基質が、ポリマー担体上の1.0mmolの試薬を含む試薬コンパートメント内で反応する。次いで、[基質-試薬]中間体生成物としてわずか0.2mmolが放出される。0.8mmolの試薬が試薬コンパートメント内のポリマー担体上に残る。
【0069】
次いで、基質-試薬中間体生成物を第2の試薬(触媒または化学量論試薬)コンパートメントに供給し、所望の生成物を形成し、反応容器に回収する。次いで不純物を含む生成物を市販の精製樹脂/マトリックスを含む精製コンパートメントに供給し、精製した生成物を回収する。
【0070】
図4の流れ図は、本発明の一実施形態を示す。ここで、カートリッジは、4つのコンパートメントA~Dを含む。各コンパートメントの入口は、1つの流路(flow patch)選択バルブ(左側バルブ)に連結されている。前記左側バルブは、4つのコンパートメントのうちの1つへの液体または基質の流れを選択する。左側のバルブの出口1はコンパートメントAに連結され、出口2はコンパートメントBの入口に連結され、出口3はコンパートメントCの入口に連結され、出口4はコンパートメントDの入口に連結される。コンパートメントA~Dの各々の出口は攪拌要素を含む反応容器に接続されている。他のバルブ(右側バルブ)は、ポンプ用の液体源(溶媒リザーバ/反応容器)を選択する。
【0071】
図5に示すカートリッジホルダーは、ポリプロピレン製の非加熱部分7bと加熱された金属部分7aとの2つの部分を含む。4つのコンパートメントA~Dを含むカートリッジ6は、コンパートメントA~Cが加熱部分7aに配置され、コンパートメントDが非加熱部分7bに配置されるように、ホルダーに挿入される。
【0072】
(実施例手順)
a)工程A:イミン/ケチミン形成
このプロセスを開始するために、ユーザーは、カートリッジホルダーに新しいカートリッジを挿入し、機械内のホルダーに小さなマグネチックスターラーバーが入っている所定の反応容器にアルデヒドまたはケトン(0.1~0.5mmol)を入れなければならない。合成装置は、1.5mmolの固定化されたSnAP試薬を含むカートリッジのコンパートメントAに流通させることにより、溶媒リザーバから出発物質に溶媒(4mLのDCMまたはDCE)を加える。
【0073】
【0074】
その後、溶液を、60℃で15分間、循環流によってコンパートメントAを通してポンプ輸送することにより、イミンを形成する。次いで、コンパートメントAの残留試薬を、溶媒リザーバから反応容器に、4mLのDCMまたはDCEを用いて洗い流す。
【0075】
b)工程B:環化
この溶液に、2mLのHFIPおよび2,6-ルチジン(0.5mmol)を、200mgのCu(OTf)2を含む、カートリッジのコンパートメントBを通して溶媒リザーバから反応容器に加える。次いで、混合物を、反応容器を撹拌しながら、60℃で30分間、循環流によってコンパートメントBを通してポンプ輸送する。次いで、コンパートメントBの残留試薬を、溶媒リザーバから反応容器に、4mLのDCMまたはDCEを用いて洗い流す。
【0076】
【0077】
環化生成物としては、以下の化合物があげられる。
【0078】
【0079】
c)工程C:スカベンジング
次いで、反応容器中の溶液を含有する生成物を、500mgの銅スカベンジング樹脂を含有するコンパートメントCを通して60℃で10分間循環流によってポンプ輸送し、混合物中の銅化合物を除去する。次いで、コンパートメントC内の残留試薬を、溶媒リザーバから反応容器に、4mLのDCMまたはDCEを用いて洗い流す。
【0080】
【0081】
d)工程D:生成物の精製
生成物の精製のために、混合物を1gのイオン交換樹脂を含む製品キャッチコンパートメントDにポンプ輸送し、室温で10分間、樹脂上のすべての生成物を捕まえる。次いで、固体担体を10mLのMeOHで溶媒リザーバから洗浄して、全ての不純物を洗い流す。
次いで、反応容器内の廃液を廃棄物にポンプで送り込み、容器自体を溶媒リザーバからDCMおよびMeOHで洗浄し、次いでそれも廃棄物にポンプで送る。
最後の工程において、溶媒リザーバからのMeOH中のNH3の溶液(5mL、0.1M)を用いて樹脂上の生成物をコンパートメントDから反応容器内に溶出する。
あるいは、生成物を含むカートリッジ(product containing cartridge)をユーザーが取り外すことができ、コンパートメントDをMeOH中NH3でパージして手動で生成物を放出させることができる。
【0082】
【0083】
次の表は、プロセスを段階的にまとめたものである。SnAPプロセスは、基質として0.5mmolのアルデヒドを使用する単一のフラスコ系で行われる。バルブAとバルブBの番号は、ロータリバルブが設定されているポート番号を示す。ポンプ速度値は、最大速度の0%~100%の速度値を反映する任意の設定値(1~20)を参照する。
濃度は、アルデヒドまたはその変換生成物の濃度を指す。少量の溶媒がいくつかの工程で添加されてコンパートメントを洗浄するので、濃度は経時的に低下する。
【0084】