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特許7126950化学的に誘導体化されたナノセルロースの製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】化学的に誘導体化されたナノセルロースの製造
(51)【国際特許分類】
   C08B 3/00 20060101AFI20220822BHJP
   C08B 3/04 20060101ALI20220822BHJP
   C08B 3/06 20060101ALI20220822BHJP
   C08B 3/08 20060101ALI20220822BHJP
   C08B 3/10 20060101ALI20220822BHJP
   C08B 3/12 20060101ALI20220822BHJP
   C08B 3/14 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
C08B3/00
C08B3/04
C08B3/06
C08B3/08
C08B3/10
C08B3/12
C08B3/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018559987
(86)(22)【出願日】2017-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2017062478
(87)【国際公開番号】W WO2017202878
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-03-18
(31)【優先権主張番号】16171449.8
(32)【優先日】2016-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505115005
【氏名又は名称】エスエーピーピーアイ ネザーランズ サーヴィシーズ ビー.ヴイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロバート イングリッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ロードリ ウイリアムス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ハートン
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-261993(JP,A)
【文献】特表2015-500354(JP,A)
【文献】国際公開第2008/053820(WO,A1)
【文献】特開2010-007005(JP,A)
【文献】セルロース学会,セルロースの辞典,株式会社朝倉書店,2000年11月10日,p.131-139
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシル化されたナノセルロースの製造方法であって、
a.前駆体であるセルロース材料(precursor cellulosic material)を液状の化学的誘導体化組成物に接触させて液状反応混合物(liquid reaction mixture)を生成する工程、及び
b.該生成された液状反応混合物に化学反応を起こさせる工程、及び
c.該生成された液状反応混合物をマイクロフルイダイゼーション(microfluidisation)に付する工程
を含み、ここで、工程bと工程cが同時に行われ、該液状の化学的誘導体化組成物は、アシル化剤と触媒としての酸又は塩基のみから成ることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記液状の化学的誘導体化組成物は、前記液状反応混合物に含まれる液体の全てを供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アシル化剤が、C1-C4アシル部分を供給するアシル化剤である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アシル化剤が、カルボン酸の無水物である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記液状の化学的誘導体化組成物が、カルボン酸アルケニルエステル及び塩基から成り、前記前駆体であるセルロース材料がアセトン中の前駆体であるセルロース材料の懸濁液であり、工程bの前に該アセトンが前記液状反応混合物から除去される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記カルボン酸アルケニルエステルが、カルボン酸ビニルエステルであり、前記塩基が、非求核塩基である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記前駆体であるセルロース材料が、化学的に未変性のナノセルロースである、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記前駆体であるセルロース材料が、乾燥した形態の化学的に未変性のナノセルロースである、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的に誘導体化されたナノセルロースの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルロース、特にナノセルロース(CNC又はCNF)の化学変性は、セルロース製品産業においてますます重要になっているトピックである。
【0003】
これまで、多くのタイプのセルロースナノクリスタル又はナノフィブリル変性反応物が文献に発表されてきたが、実験室規模であり、これまで大部分の科学的な努力はセルロースナノクリスタル又はナノフィブリル変性生成物の分析、例えば置換度等に関する分析に傾けられてきた。ナノセルロースについて行われる反応の主なカテゴリーは酸化、エステル化、アミド化、カルバメート化及びエーテル化であり、より最近になってナノセルロースに特定の表面機能性を導入するために求核置換が使われてきた。変性反応に一般的に用いられる機序は、例えば非特許文献1に示されている。実験室規模では、ナノセルロースの化学変性は、別のプロセスで予め単離された市販のナノセルロースを使って行われる。
【0004】
市販のナノセルロースは任意のセルロース原材料から製造でき、一般に木材パルプが使われる。ナノセルロースになるまでに、木材パルプのセルロース繊維は、より大きなセルロース繊維をばらばらに「裂いて」(剥離して)ナノセルロースにする高せん断力にさらされる。このために、木材パルプは通常、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、グラインダー又はマイクロフルイダイザー等の適した装置で機械的に粉砕される。ホモジナイザーを使って木質繊維の細胞壁を薄い層に裂いて剥離し、ナノセルロースを開放する。あるいは、硫酸又は塩酸を用いて、天然のセルロース繊維の非晶質領域を加水分解し、木材パルプのセルロース繊維から実質的により結晶状態のナノセルロースを単離し、高結晶質のセルロースナノクリスタル(CNC)を得ることができる。
【0005】
しかしながら、化学変性ナノセルロースを経済的に許容される条件で大量に製造する場合には、少量の化学変性ナノセルロースしか製造できない上記の実験室規模の方法よりも、複雑でない方法を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Eyley及びThielemansによる総説(Nanoscale、2014、6、7764-7779)
【発明の概要】
【0007】
本発明は、化学的に誘導体化されたナノセルロース(以下、「化学的誘導体化ナノセルロース」という)の製造方法として、従来のセルロース材料の製造プロセスであるインライン(即ち連続方式)で化学的誘導体化ナノセルロースが製造できる方法を提供し、上述の問題を解決する。
【0008】
本発明の目的は、以下の工程を含む、化学的誘導体化ナノセルロースの製造方法を提供することである。該方法は、
工程a:前駆体であるセルロース材料(以下、「セルロース前駆体材料」という)を化学的に誘導体化させる組成物(以下、「化学的誘導体化組成物」という)に接触させ液状反応混合物を生成する工程、及び
工程b:生成された液状反応混合物を化学的に反応させる工程、及び
工程c:生成された液状反応混合物を高せん断状態(high shear conditions)に付し、もっとも好ましくはマイクロフルイダイゼーション(microfluidisation)に付する工程を含み、ここで工程b.と工程c.を同時に行う。
【0009】
本発明の方法においては、例えば木材パルプ等のセルロース前駆体材料をセルロースの表面を化学的に変性させることができる所定の試薬と接触させ、同時に、セルロース前駆体材料に高せん断力をかけ、この力により前駆体材料を破壊し、又は剥離させ、所定の細かさのセルロース材料、特にナノセルロースにすることができる。
【0010】
機械的剥離プロセスと化学的誘導体化を組み合わせることの利点は、化学的誘導体化ナノセルロースの製造、特に化学的誘導体化ナノセルロースの製造が非常に簡素化されるということである。このように、化学的誘導体化ナノセルロースを得るために、機械的剥離と化学的誘導体化を同時に行う。
【0011】
本発明の別の目的は、上記方法により得られる化学的誘導体化ナノセルロースを提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、上記方法により得られる化学的誘導体化ナノセルロースを含むポリマー組成物を提供することである。
【0013】
本発明の更なる実施態様は、従属請求項に記載される。
【好ましい実施態様の説明】
【0014】
本発明の目的は、以下の工程を含む、化学的誘導体化ナノセルロースの製造方法を提供することである。該方法は、
工程a:セルロース前駆体材料を化学的誘導体化組成物に接触させ液状反応混合物を生成する工程、及び
工程b:生成された液状反応混合物を化学的に反応させる工程、及び
工程c:生成された液状反応混合物を高せん断状態に付する工程とを含み、ここで工程bと工程cを同時に行う。
【0015】
当業者であれば、例えば、生成された液状反応混合物が高せん断状態に付されるときに生成された液状反応混合物中で、セルロース前駆体材料と化学的誘導体化組成物の化学反応が生じるように、化学反応の種類に応じて、生成された反応混合物をどう操作すればよいかを知っている。液状反応混合物液状反応混合物ある反応においては、化学的に誘導体化させる試薬(以下、「化学的誘導化試薬」という)が完全に消費される前に、所定の時間の範囲内で生成された液体反応物を高せん断状態に付することは有益であるが、他の反応においては、高せん断状態に付する前に熱的又は化学的に反応を開始させることが追加的に必要である。
【0016】
本発明の1つの実施態様において、生成された液状反応混合物は、マイクロフルイダイゼーションに、即ちマイクロ流体デバイス(microfluidic device)中で高せん断状態に付される。
【0017】
本発明では、「化学的誘導体化ナノセルロース」という用語は、少なくとも1つの天然の無水グルコース単位がその化学組成を変えられたナノセルロースを指す。
【0018】
例として、本発明の化学的誘導体化ナノセルロースは、無水グルコース単位のヒドロキシ基部分が酸化されてアルデヒド又はカルボキシル部分になるか、エステル化、アミド化、カルバメート化、エーテル化、又は求核置換されたナノセルロースである。また、無水グルコース単位のC2-C3結合が酸化還元反応により切断されたナノセルロースも化学的誘導体化ナノセルロースを構成すると理解される。
【0019】
本発明の1つの実施態様において、セルロース前駆体材料が液相のセルロース前駆体材料の懸濁液であり、この液相は好ましくは水相又は非水相であり、アセトン又はトルエン等の有機溶媒、又は例えばトルエン及びピリジンの混合物等のそれらの混合物を含む、又は、アセトン又はトルエン等の有機溶媒、又は例えばトルエン及びピリジンの混合物等のそれらの混合物のみから成る。液状のセルロース前駆体材料が、化学的誘導体化組成物に接触させられ、マイクロ流体デバイスに、高せん断状態に付される液状セルロース前駆体材料をより容易に汲み出し、供給できるので、この態様はセルロース前駆体材料の処理をより容易にする。好ましい実施態様において、セルロース前駆体材料は、化学的に未変性のパルプ、好ましくは水性スラリー状の化学的に未変性のパルプであり、このパルプは少なくとも80°SR又は80°SR~100°SR、そしてより好ましくは、少なくとも90°SR又は90°SR~100°SRまで微細化されている。パルプは様々な植物材料から採ることができ、特に針葉樹(softwood)又は広葉樹(hardwood)の材料から採ることができる。あるいは、パルプは再生紙又はダンボール製品からも採ることができる。
【0020】
化学的誘導体化組成物は、少なくとも1つの化学的誘導体化剤を含む組成物か、又は化学的誘導体化剤組成物の混合物である。それはさらに、化学的誘導体化剤によるセルロース材料の化学的誘導体化をより効率的にする触媒を含んでもよい。例えば、化学的誘導体化剤は、酢酸等のアセチル化剤、カルボン酸アルケニルエステル又はカルボン酸ビニルエステル等のエステル交換試薬、ビニルスルホン等のスルホン化剤、又は(メタ)アクリル酸等の重合鎖の、同時に又は後で行われるグラフト化を可能にするための単量体試薬であってもよい。
【0021】
本発明の方法の好ましい実施態様において、化学的誘導体化組成物は、液状の化学的誘導体化組成物である。この場合、ここに含まれる化学的誘導体化剤は、例えば非水性液体等の液体中に分散又は可溶化される。より好ましい実施態様において、化学的誘導体化剤はこの液体に溶解され、化学的誘導体化剤の溶液となる。この液体は、化学的誘導体化組成物を可溶化できる液体から選択することができ、最も好ましくは水性液体、特に水から選択されるか、又は非水性液体、特にアセトン、トルエン又はこれらの混合物等の有機溶媒から選択される。従って、液状の化学的誘導体化組成物の好ましい形態は、化学的誘導体化剤の水溶液、又は例えばアシル化剤の非水性溶液等の化学的誘導体化剤の非水性溶液である。触媒が化学的誘導体化組成物に含まれる場合には、水溶液又は非水溶液に可溶化されていてもされていなくてもよい。
【0022】
もう一つの好ましい実施態様において、液状の化学的誘導体化組成物は、セルロース前駆体材料と化学的誘導体化組成物の組合せから生成される液状反応混合物に含まれる液体の実質的に全てを供給する。これは、セルロース前駆体材料が、例えば粉末等の乾燥した形で、又はほとんど液体を含まない、好ましくは水を全く含まない(化学結合した水を除く)スラリーの形態で添加される化学的誘導体化組成物と組み合わされる場合に有利である。このようにして、液状の化学的誘導体化組成物により供給される液体によって、例えば液状反応混合物がマイクロフルイダイゼーションに付されるときのように、高せん断状態での処理に最適な程度に反応液状反応混合物の粘稠度を調節することができる。このようにして、反応液状反応混合物の粘稠度は、化学的誘導体化剤及び触媒(存在する場合)を希釈しないで、独立に調節することができ、最適粘稠度だけでなく、最適反応物濃度も保つことができる。
【0023】
非常に好ましい実施態様において、化学的誘導体化ナノセルロース製造のための方法は、以下の工程を含む。
a.セルロース前駆体材料を化学的誘導体化組成物に接触させ液状反応混合物を生成する工程、及び
b.生成された液状反応混合物に化学反応を起こさせる工程、及び
c.生成された液状反応混合物をマイクロフルイダイゼーションに付する工程、
ここで、工程bと工程cが同時に行われ、化学的誘導体化組成物はアシル化剤を含み、セルロース前駆体材料は好ましくは化学的未変性ナノセルロースの液相における懸濁液であり、この液相は、例えばアセトン又はトルエン又はそれらの混合物等の有機溶媒を含む、又は、アセトン又はトルエン又はそれらの混合物等の有機溶媒のみから成る非水相であり、そして、好ましくはアシル化剤がカルボン酸又はその無水物から選択される。
【0024】
もう一つの非常に好ましい実施態様において、化学的誘導体化ナノセルロース製造のための方法は、以下の工程を含む。
a.好ましくは、化学的未変性ナノセルロースであるセルロース前駆体材料を化学的誘導体化組成物に接触させ、液状反応混合物を生成する工程、及び
b.生成された液状反応混合物に化学反応を起こさせる工程、及び
c.生成された液状反応混合物をマイクロフルイダイゼーションに付する工程。
ここで、工程bと工程cが同時に行われ、化学的誘導体化組成物がトルエン、アセトン又はそれらの混合物等の有機溶媒の非水性溶液相に懸濁又は溶解されているアシル化剤を含み、この液相が好ましくは95wt%より多く、又は実質的に液状反応混合物に含まれる全ての液体(100wt%)を供給する。
【0025】
マイクロ流体デバイスは1つ以上のマイクロ流体チャネルを通して反応混合物を搬送するための1つ以上の油圧増幅ポンプを使用し、チャンネルは金属、セラミック又はダイヤモンド等の抵抗材料中に機械加工される。また、これはマイクロ流体相互作用チャンバー(IXC)として知られている。マイクロ流体相互作用チャンバー(IXC)において、液状反応混合物は、剥離を促すために、高せん断力又は引張応力下に置かれる。後者の構造は、一般にマイクロ流体相互作用チャンバー(IXC)と呼ばれる。こ等のマイクロフルイダイザーの例として、Microfluidics社(米国マサチューセッツ州ウェストウッド)によって製造されるM110-EHマイクロフルイダイザープロセッサが挙げられる。
【0026】
マイクロ流体デバイスは、液体中の高い機械的応力の生成により、セルロースフィードストックを破壊し、又は剥離し、所望のセルロースナノフィブリル又はナノセルロースを作成する。これは、明確に定義されたマイクロ流体相互作用チャンバー、つまり流体力学の分野で定義される制限流に事実上対応している状況、を通して流体製剤(fluid formulation)をポンピングすることによって達成される。マイクロ流体という用語は、本発明において、制限流ジオメトリー、マイクロ流体チャネル又は相互作用チャンバー(本発明においてこれらの用語は同義である)を指し、ここで流れの方向に対して直角の幅が500μm未満、好ましくは400と50μmの間である。一般に見られる相互作用チャンバーのデザインは、急縮(軸対称又は長方形のスリット)、Z-ジオメトリー(急縮と組み合わされた流路の急な屈曲)及びY-ジオメトリー(流れが分断され衝突噴流/対向噴流として合流する)を含む。上記の相互作用チャンバーの設計はそれぞれ複雑な流れを起こすと考えられ、ここで、運動学はせん断の効果及び張力の効果が共存するものである。従って、このタイプの複雑な流れでせん断速度の単一値を定義することは、不可能である。この状況はいわゆるレオメトリ流、つまりせん断速度、せん断応力及び連続境界は明確に定義され、粘度及び第一法線応力差等の物質特性に流体に特有の値を割り当てることができる状況とは明らかに異なる。さらに、流線の収束/流体(収縮、Z-ジオメトリー)の加速又はよどみ点(Y-ジオメトリー/対向噴流)の生成を含んでいるジオメトリーは流れの場の中の高張力又は拡張要素で特徴づけられ、これは機械的剥離の効率化に対し大きく貢献する。しかしながら、これはプロセスの特徴的せん断速度の定義をさらに複雑にする。
【0027】
「高いせん断力」という用語は、本発明の範囲において、50μm半径(R)軸対称毛管(これは、例えばM110-EHマイクロフルイダイザーに使用されるZ-ジオメトリーの相互作用チャンバーの一部とみなされる)における、せん断速度を示す例によって最も明確になる。1バッチ500mLの所定の組成物(セルロース前駆体材料及び化学的誘導体化組成物を含む)は、25000psi(172MPa)の動作圧(P)で、2分間でそ等の相互作用を通過するのが観察された。これは、4.16mLmin-1の体積流量(Q)に対応し、従って42.4×10-1のせん断速度(定常流と仮定し、流体のせん断流動化(shear thinning)を許さない)に対応する。
【0028】
毛管(ポアズイユ)流のせん断速度(γの微分)は、以下の式で便利に推定できる:
【0029】
【数1】
【0030】
例えばM110-EHマイクロフルイダイザーにおける流れが特性として拍動性であると想定すれば、相互作用ジオメトリーのこの部分におけるせん断速度の正しいピーク値はもっと高い可能性がある。本発明に対応するマイクロフルイダイザーの処理装置の動作範囲は8.5×10-1と102×10-1(上記定義による)の間にあり、5000psi~60000psi(34.5MPa~414MPa)であり、最も好ましくはこの範囲において34×10-1より大きく、好ましくはこの範囲において20000psi(138MPa)より大きい。
【0031】
従って、本発明の意味の範囲内において、高せん断状態という用語は、8.5×10-1より上、好ましくは8.5×10-1~102×10-1、より好ましくは34×10-1~102×10-1を指す。
【0032】
本発明の好ましい実施態様において、マイクロ流体デバイスのマイクロ流体チャネルの最小寸法は有利には400μmと50μmの間、より好ましくは150μm未満又は50μm~150μmである。
【0033】
本発明の好ましい実施態様において、マイクロ流体デバイスの相互作用チャンバーはZジオメトリーを有する。
【0034】
本発明の方法においては、生成された液状反応混合物は、このようにして高せん断状態に付され、最も好ましくはマイクロフルイダイゼーションに付される。
【0035】
生成された液状反応混合物が高せん断状態に付されるとき、含有されるセルロース前駆体材料は、より小さな直径及びより大きな表面積を有するナノフィブリルの形成を可能にする方法で粉砕され、剥離される。
【0036】
マイクロフルイダイゼーションは、ホモジナイゼーション等の他のタイプの処理と比較して、優れた置換度(DS)をもたらし、さらに製造された化学的誘導体化ナノセルロースの均一なナノフィブリル幅の分布を保持することを可能にすることが分かっている。
【0037】
液状反応混合物が高せん断力下での処理に付されると、液状反応混合物は入口リザーバーを通ってマイクロフルイダイザーに入り、高水圧増幅ポンプで駆動され、400ms-1までの速度で固定されたジオメトリー相互作用チャンバーに入ってゆく。それから、得られたマイクロフルイダイゼーションされた液状反応混合物は必要であれば効果的に冷却され、出口リザーバーに集められる。マイクロフルイダイザーで達成され得る高せん断力は10-1を超える。
【0038】
本発明の方法の好ましい実施態様において、化学的誘導体化組成物はアシル化剤を含むか、又は、アシル化剤のみから成っており、任意に触媒として酸又は塩基をさらに含むか、又は、アシル化剤と触媒としての酸又は塩基のみから成っている。本質的に、アシル化剤は無水グルコース単位のヒドロキシ基部分にエステル部分を形成し、通常これによりナノセルロースフィブリルの表面に疎水性を付与し、これはアシル化剤の選択により、特にその部分の炭化水素基の長さを選択することによって調整される。例えば、アシル化剤は、カルボン酸又はその無水物、例えば酢酸等のアセチル化剤、又はプロピオン酸等のプロピオン酸エステル化剤(propionating agent)、カルボン酸アルケニルエステル、カルボン酸アルキルエステル、又はコハク酸無水物等のコハク酸エステル化剤であり得る。アシル化剤がコハク酸無水物等のカルボン酸無水物である場合には、液相は非水性相であり、アセトン又はトルエン等の有機溶媒を含む、又は、アセトン又はトルエン等の有機溶媒のみから成る。触媒が存在する場合は、例えばピリジン等の求核性触媒である。
アシル化剤が、例えば酢酸又はプロピオン酸等のカルボン酸である場合には、触媒が存在する場合は最も好ましくは、セルロース材料の表面を化学的に誘導体化できない酸である。こ等の酸の例として、塩化水素又は臭化水素等のハロゲン化水素が挙げられる。
【0039】
アシル化剤が、例えばカルボン酸ビニルエステル等のカルボン酸アルケニルエステル又はカルボン酸アルキルエステルである場合には、触媒が存在する場合、最も好ましくは、セルロース材料の表面を化学的に誘導体化できない塩基である。こ等の塩基の例として、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)等の非求核塩基が挙げられる。非常に好ましい実施態様において、化学的誘導体化組成物は基本的に、カルボン酸ビニルエステル等のカルボン酸アルケニルエステル又はカルボン酸アルキルエステル及びDBU等の非求核塩基触媒のみから成る。この場合、セルロース前駆体材料は、アセトン等の、セルロースを膨潤させることができない有機溶媒中のセルロース前駆体材料の懸濁液のみから成る。例えば、セルロース前駆体材料は、アセトン中に分散されたナノセルロースである。例えば、本発明の方法で使用するのに適しているカルボン酸ビニルエステルは、ラウリン酸ビニルである。
【0040】
本発明の方法の好ましい実施態様において、化学的誘導体化組成物はハロゲン化トリアジン、好ましくは式(I)のハロゲン化1,3,5-トリアジンを含み、ここで、Xは独立してN-モルホリニル、ハロゲン、好ましくは塩素又は臭素であり、Yは独立してN-モルホリニル、ハロゲン、好ましくは塩素又は臭素であり、そしてRは独立してアルキル鎖又は発色団である。本発明の方法の非常に好ましい実施態様において、誘導体化組成物は式(I)のハロゲン化1,3,5-トリアジンを含み、ここで、XはN-モルホリニル、Yはハロゲン、そしてRはアルキル鎖又は発色団である。
【0041】
【化1】
【0042】
本発明の方法の好ましい実施態様において、化学的誘導体化組成物はTEMPOの水溶液を含み、任意に例えば臭化ナトリウム等の臭化物塩を、TEMPOのモル量に対して過剰なモル量でさらに含む。
【0043】
本発明の方法の好ましい実施態様において、化学的誘導体化組成物はメタ過ヨウ素酸ナトリウム等のメタ過ヨウ素酸塩の水溶液を含み、ここでメタ過ヨウ素酸塩の量は、セルロース前駆体材料又はナノセルロースの無水グルコース単位に対して少なくとも4倍又は5倍の過剰モル量に対応する。非常に好ましい実施態様において、メタ過ヨウ素酸塩水溶液は、酸性pHに緩衝化される。例えば適切な緩衝液は、酢酸塩緩衝液である。
【0044】
本発明の方法の好ましい実施態様において、化学的誘導体化組成物は硝酸アンモニウムセリウム(CAN)を含み、そして、好ましくは硝酸アンモニウムセリウム水溶液である。硝酸アンモニウムセリウム(CAN)はセルロースの無水グルコース単位成分と酸化還元反応し、C2-C3結合を切断すると同時に活性なフリーラジカル中心を生成して、これによりこの後のセルロースのグラフト化剤によるグラフト化(付加重合のプロセスによる)が促進される。こ等のグラフト化剤は化学的誘導体化組成物に含まれるか、又は硝酸アンモニウムセリウムが反応してセルロース鎖の無水グルコース単位を酸化した後に、液状反応混合物に添加することができる。適切なグラフト化剤は、例えばメタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エチル及びアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸又はそのエステルである。
【0045】
本発明の方法の好ましい実施態様において、化学的誘導体化組成物はビニルスルホン、好ましくは式(II)の置換されたビニルスルホンを含み、ここでRは独立に発色団又は疎水性部分である。
【0046】
【化2】
【0047】
化学的誘導体化ナノセルロースは、例えばポリマー組成物中の補強剤等の多くの用途で使用できる。化学的誘導体化ナノセルロースを得るためには、例えばセルロース前駆体材料を充分に剥離して確実にナノセルロースにするために、セルロース前駆体材料を10-1より大きいせん断力下に置くことが重要である。本発明において、ナノセルロースは、平均フィブリル幅が好ましくは30nmより小さい繊維状セルロース材料と定義される。
【0048】
本発明の別の目的は、上記本発明の方法のいずれかにより得られる化学的誘導体化ナノセルロースを提供することである。
【0049】
本発明のさらに別の目的は、上記本発明の方法のいずれかにより得られる化学的誘導体化ナノセルロースを含むポリマー組成物を提供することであり、このポリマーは通常、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル又はポリウレタン等のポリオレフィン又は重縮合物から選択される。
【0050】
機械的剥離とセルロースフィブリルの表面の化学変性が同時に行われる間において、アクセス可能な表面の水酸基が求核試薬として働く反応において、化学的誘導体化の程度は、平均置換度(DS、無水グルコース残基当たりの置換された水酸基の平均個数であり、値は0から最大3まで変化する)によって正式に定量化される。本発明の場合は、化学的誘導体化はセルロースフィブリルの表面に制限されるので、その分平均DSは低く、即ち1より大幅に低い。本発明の方法によって得られる化学的誘導体化ナノセルロースにおいて、平均DSの範囲は、0.05~0.30の間、好ましくは0.15~0.30の間である。
【0051】
(例えば硝酸アンモニウムセシウム(IV)の存在下での)C2-C3結合の酸化還元切断によるセルロース鎖上のフリーラジカル中心の生成、及びそれに続く、グラフトされたポリマー鎖でセルロースフィブリル又はナノフィブリルを形成するアクリルモノマーのグラフト化を含む反応において、表面化学変性の程度はグラフトされた鎖を含む最終生成物の重量パーセントよって表される、つまりこのグラフト反応によってもたらされた質量の増加によって算出される。本発明の方法によって得られる化学的誘導体化ナノセルロースにおいて、グラフト化の程度は5%~500%の間、最も好ましくは20%~100%の間で変化する。
【0052】
セルロース前駆体材料の機械的剥離及び表面化学変性が同時に行われた後に、得られた所望の生成物である繊維の形態(morphology)は、このように製造されたナノセルロースフィブリル幅の統計的分布によって特徴づけられる。このようにして、化学的誘導体化セルロースフィブリルの得られた品質は電界放出走査型電子顕微鏡法(FE-SEM)の技術によって測定することができ、ここで測定対象の材料の希釈した水性懸濁液をマイカ基板の上で乾燥させ、導電材料でスパッタ被覆し、顕微鏡にかける。次に、得られた画像を、適切なデジタル画像解析ソフトウェアパッケージ(例えばImage J、フリーウェア)及び測定されたフィブリル幅測定値の統計的に有意な個数(>500)の算術平均を使用して分析する。フィブリル幅の分布は、対応する標準偏差、より好ましくは多分散指数(重量平均フィブリル幅に対する数平均フィブリル幅の比)によってさらに定義される。本発明の方法によって得られる化学的誘導体化ナノセルロースにおいて、製造された平均ナノセルロースフィブリル幅は、3~1000nm、好ましくは8~30nmの範囲にある。フィブリルの対応する多分散は、好ましくは1.03~5.00の範囲、最も好ましくは1.05~1.3の範囲にある。
【実施例
【0053】
実施例1A
バッチ処理での酢酸水溶液を用いた固体セルロースナノファイバー(CNF)の表面アセチル化
ナノセルロース基質を、漂白されたユーカリの亜硫酸塩溶解パルプ(DP約800)に由来し、シート形状に受け、このシートを最初に細断し、78w/w%の水溶液からなる膨潤化媒体に浸漬した。次に、膨潤したパルプの懸濁液を、200μmセラミック補助処理ユニット及び100μmダイヤモンド相互作用チャンバー(H-10Z)を備えたM-110-EHマイクロフルイダイザープロセッサ(Idex Corp社)を(5回)通して処理した。ナノセルロースを、複数回の遠心分離/デカンテーション工程を経て水中で洗浄したのち、凍結乾燥し、乾燥粉末として単離した。
【0054】
乾燥ナノセルロース(4.0g)を秤量し、800gの氷酢酸と共に1リットルの反応フラスコに入れ、混合物をUltraturraxミキサーを使用し10,000rpmで10分間分散させた。フラスコに凝縮器、温度計の付いた蓋を装着し、磁気撹拌しながらホットプレート上で加熱した。温度が80℃に達したときに、濃塩酸(1.8mL)を添加し、撹拌を80~85℃で2時間継続し、その後撹拌しながら放冷した。
【0055】
分散液を、遠心分離して酸性の液相を除去し、新鮮な水に再分散させ、その後2回目の遠心分離を行って、酸のほとんどを除去した。固体を約1%で新鮮な水に再度分散させ、1Mの炭酸ナトリウム溶液でpHが>6に調整されるまで強く撹拌した。次に、この分散液を、導電率が<5μScm-1に下がるまで、繰返し遠心分離/洗浄サイクルに付した。次に固体を、新鮮な水に最後の再分散を行い、その後凍結乾燥(VirTis SP Scientific Sentry2.0)した。
【0056】
ナノセルロース表面のアシル化の程度は、KRS-5結晶を装着したPerkin Elmer FTIR Frontier分光光度計を使用し、ATR-FTIR分光法によって測定した。スペクトルは、4cm-1の分解能で4000~450cm-1にわたって、16スキャンで記録した。データをPerkin Elmer スペクトルソフトウェアを使用して処理し、吸光度を縦軸としてプロットした。見かけの置換度(DS)は、1738cm-1のエステルカルボニルの伸縮ピークと1160cm-1の糖質単位の-C-O-C-変形に対応するピークの高さの比から推定した。測定したピークの比率は、市販の三酢酸セルロース(報告されているDS=2.48)の既知の較正基準を参照して、見かけのDS値に換算した。較正基準におけるピーク比A1738/A1160は8.75であった。従って、見かけのDSは、所定のサンプルのピークの比率から以下のように推定できる:
DS=(A1738/A1160)×(2.45/8.75)
この生成物の見かけのDSは、0.4であった。
【0057】
【化3】
【0058】
実施例1B
酢酸水溶液を用いたセルロースの同時表面アセチル化及びナノフィブリル化
予め精製機で調製したセルロースの水(200g)懸濁液(乾燥固体含有率約3.1%)を遠心分離し、水を段階的に氷酢酸に置換し、酢酸90%及び水10%の溶媒組成物中の0.5%分散液を得た。分散液を、手作業で撹拌した後、マイクロフルイダイザー(モデルM110-P、Idex Corp社)に導入し、処理圧25,000psiで、400μmと200μmのチャネルが直列に接続された2つの相互作用チャンバーを3回通して処理した。次に、濃塩酸(36%、2g)を混合物に添加し、直列に接続された200μmの補助及び100μmの相互作用チャンバーから成る第2のジオメトリーをさらに7回通して処理した。見かけのD.S.は実施例1Aと同様に測定し、0.5であった。
【0059】
実施例2A
水中での精製により調製されたナノセルロースのラウリン酸ビニルへの連続相交換による不均一エステル交換反応
予め精製機で調製したナノセルロースの水(350g)懸濁液(乾燥固体含有率約3.1%)を、元の水性の連続相を相当体積のアセトンに置換する、50nmの細孔径のPTFE膜を使用したダイアフィルトレーションによる連続相交換処理を行った。更なるアセトンを、必要に応じて粘度を下げるために添加した。このナノセルロースのアセトン懸濁液に、ラウリン酸ビニル(1070g)を添加し、減圧下でアセトンを除去した。オーバーヘッド撹拌機及び凝縮器を備えた2リットルの5首の反応器中の、この得られたナノセルロースのカルボン酸アルケニルエステルの懸濁液に、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(10.20g、67.0mmol)を添加し、この系を連続撹拌しながら70℃に3時間維持した。この間、反応媒体の色は、淡黄色から暗褐色に徐々に変化した。周囲温度に冷却し、生成物をポンプでシンター(sinter)上に収集し、余分なラウリン酸ビニルを除去した後に、数回分に分けてヘキサン(合計800g)で洗浄した。真空オーブン(20℃、100mbar)で乾燥し、生成物(ラウリン酸表面変性ナノセルロース)を0.23の見かけの置換度(ATR FTIR、実施例1Aの方法)を有する、微細に分かれた白色固体として得た。
【0060】
実施例2B
水中の精製により調製されたナノセルロースのラウリン酸ビニルを用いた高せん断マイクロフルイダイザープロセスによる不均一エステル交換反応
予め精製機で調製したナノセルロースの水懸濁液(100g)(乾燥固体含有率約3.1%)を、元の水性の連続相を相当体積のアセトンに置換する、50nmの細孔径PTFE膜を使用したダイアフィルトレーションによる連続相交換処理を行った。更なるアセトンを、必要に応じて粘度を下げるために添加した。このナノセルロースのアセトン懸濁液に、ラウリン酸ビニル(600g)を添加し、減圧下でアセトンを除去した。得られた分散液(固体約0.5%)を、直列に接続された400μmと200μmのダイアモンド相互作用チャンバーを備えたM-110-Pマイクロフルイダイザープロセッサー(Idex Corp社)を(3回)通して処理した。
【0061】
部分的に処理した懸濁液に、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(5.64g、37.0mmol、AGU当たりの2当量)を添加し、得られた混合物を、直列に接続された200μmセラミック補助処理ユニット及び100μmダイヤモンド相互作用チャンバー(H-10Z)を使用したマイクロフルイダイザーを(7回)通して処理した。生成物は、実施例2Aに記載の方法を用いて単離し、0.27(ATR FTIR、実施例1Aの方法)のD.S.を有していた。
【0062】
【化4】
【0063】
実施例3A
ビニルスルホンを用いた、水中での精製により調製されたナノセルロースの表面変性
予め精製機で調製したナノセルロースの水懸濁液(200g)(乾燥固体含有率約3.1%)を、約1%の固体含有率まで水で希釈した。化合物I(6.0g、12.3mmol、無水グルコース単位1モル当たり2モルに相当)を、炭酸ナトリウム水溶液(1M)でpH5に調整することによって、水に溶解した。この溶液を、Ultraturraxミキサーを10,000rpmで10分間使用して、ナノセルロース懸濁液と混合し、コンデンサ及び温度計を備え、磁気ホットプレートに取り付けられた反応フラスコに移送した。反応混合物を、60℃に加熱し、これに水酸化ナトリウム溶液(12g、1M、12mmol)を添加した。この系を60℃に90分間維持した後、周囲温度まで放冷した。変性したセルロースを、蒸留水で洗浄と遠心分離を繰返すことにより単離した後、凍結乾燥した。D.S.は、元素分析で測定した窒素及び硫黄の含有パーセンテージから算出され、0.2であった。
【0064】
【化5】
【0065】
実施例3B
水中の精製により調製されたナノセルロースの、高せん断マイクロフルイダイザー処理により調製されたビニルスルホンを用いた表面変性
予め精製機で調製したナノセルロースの水懸濁液(300g)(乾燥固体含有率約3.1%)を、水で(固体含有率約0.5%まで)希釈した。化合物I(9.0g、18.5mmol)の水溶液(120g)をナノセルロース懸濁液と混合し、この混合物を、直列に接続された400μmと200μmのダイアモンド相互作用チャンバーを備えたM-110-Pマイクロフルイダイザープロセッサー(Idex Corp社)を(3回)通して処理した。
【0066】
部分的に処理した懸濁液に、水酸化ナトリウム溶液(18.5g 1M、18.5mmol)を添加し、得られた混合物を、直列に接続された200μmセラミック補助処理ユニット及び100μmダイヤモンド相互作用チャンバー(H-10Z)を使用したマイクロフルイダイザーを(7回)通して処理した。生成物を実施例3Aと同様に単離した。D.S.を元素分析により求めたところ、0.25であった。
【0067】
実施例4A
硝酸アンモニウムセリウム(IV)触媒を用いたアクリル酸による、水中で精製されたナノセルロースの表面グラフト化
予め精製機で調製したナノセルロースの水懸濁液(1000g)(乾燥固体含有率約3.1%)を、マイクロフルイダイザー(Microfluidics M110-EH30)を使用して処理し、最初の2回は2つのセラミック200μm補助処理モジュール(APM)(H302APM)を直列に使用し、最後の3回はAPMの1つを100μmダイヤモンド相互作用チャンバーと交換した後に処理を行った。分散液を、遠心分離と上澄のデカンテーションを2回行い、殺生物剤無しで洗浄し、新鮮な水と置換した。回収したペーストは、3.4%の固体含有率であった。これの一部(259.3g、約9gのセルロースに相当)を、HNO(800mL、0.1M)に再分散させ、Ultra Turraxを13000rpmで20分間使用して均質化した。硝酸アンモニウムセリウム(IV)(2.1918g、4.0mmol)を、HNO(200mL、0.1M)に溶解した。アクリル酸(50mL)を活性化されたアルミナのカラムに通して阻害剤を除去し、43.9mLの精製された酸を得て、これを滴下漏斗に入れた。セルロース分散液を15分間窒素でパージした後、硝酸アンモニウムセリウム(IV)溶液を添加し、反応混合物を持続的に窒素雰囲気下に保持した。アクリル酸を、滴下漏斗を介して混合物にゆっくり添加した。3時間後に遠心分離(10000rpmで10分間、さらに2回の洗浄を10000rpmで30分間)により分散液をHOで洗浄することにより、反応を停止した。
【0068】
グラフト効率
グラフト効率を、以下の通りに算出した:
%GE=100×(w1-w2)/w2=100×(w3/w2)
式中、w1はグラフト化したコポリマーの重量、w2はセルロースの重量、そしてw3はグラフト化したポリマー、即ちポリ(アクリル酸)の重量である。
【0069】
セルロース主鎖にグラフトされるAAの量は生成物の透析された部分の酸塩基滴定によって求めた。PAA上のカルボキシル酸基(carboxyl acid groups)は過剰なNaOH(0.12M)によって消費され、残留するNaOHはフェノールフタレイン(PhP)を指示薬として用いHCl(0.12M)によって滴定した。GEは、15%であった。
【0070】
【化6】
【0071】
実施例4B
硝酸アンモニウムセリウム(IV)触媒を用いたアクリル酸によるナノセルロースの同時ナノフィブリル
化及び表面グラフト化
予め精製機で調製したナノセルロースの水懸濁液(212.8g)(乾燥固体含有率約3.1%)を、HNO(720mL、0.1M)で希釈し、次に直列に接続された400μmと200μmのダイアモンド相互作用チャンバーを備えたM-110-Pマイクロフルイダイザープロセッサ(Idex Corp社)を(3回)通して処理した。
【0072】
硝酸アンモニウムセリウム(IV)(1.97g、3.6mmol)を、HNO(200mL、0.1M)に溶解した。アクリル酸(45mL)を活性化されたアルミナのカラムに通して阻害剤を除去し、39.8mLの精製された酸を得た。セルロース分散液を15分間窒素でパージした後、硝酸アンモニウムセリウム(IV)溶液を添加し、直列に接続された200μmセラミック補助処理ユニット及び100μmダイヤモンド相互作用チャンバー(H-10Z)を備えたマイクロフルイダイザーを1回通した。この混合物に精製されたアクリル酸の一部(5mL)を添加し、窒素で短時間パージした後、マイクロフルイダイザーに通した。この手順を、アクリル酸がすべて添加されるまでさらに7回繰り返し、その後さらに2回行った後、遠心分離(10000rpmで10分間、さらに2回の洗浄を10000rpmで30分間)により分散液をHOで洗浄することによって反応を停止した。グラフト効率は、22%(実施例4Aの滴定法で求めた)であった。
【0073】
実施例5A
次亜塩素酸ナトリウムを用いた固体ナノセルロースのTEMPO媒介酸化処理
乾燥パルプシート形状のセルロース(ユーカリ属、Saiccor、南アフリカ)を、78%の水性モルホリンに1w/w%で浸漬し、混合物を、膨潤及び加工性を良くするためにローターステーターミキサー(IKA UltraTurrax T25)で毎日(daily)撹拌した。7日間経過後に、混合物をマイクロフルイダイザー(Idex Corp社、5回)で高せん断及び高圧処理した。処理されたサンプルのモルホリン含有量を、遠心分離/洗浄工程を繰り返して<0.5%まで削減した後、凍結乾燥により乾燥固体状のCNFを得た。
【0074】
TEMPO媒介酸化処理
CNFファイバー(1g)を、TEMPO(0.016g、0.1mmol)及び臭化ナトリウム(0.1g、1mmol)を含む水(100mL)に懸濁した。NaClO溶液(3.10g、12%、5mmol)を、0.1MのHClを添加してpH10に調整した。NaClO溶液をセルロース分散液に添加し、混合物を室温でUltra Turraxを使用して500rpmで撹拌した。pHが安定するまで0.5MのNaOH溶液を添加して、pHを10に維持した。TEMPO-酸化セルロースを濾過し水で完全に洗浄し、更なる処理又は分析まで4℃で貯蔵した。TEMPO-酸化セルロースのカルボン酸塩含有量は電気伝導度滴定で測定したところ、0.69mmolg-1であった。
【0075】
【化7】
【0076】
実施例5B
次亜塩素酸ナトリウムを用いた固体ナノセルロースの同時ナノフィブリル化及びTEMPO媒介酸化処理
予め精製機で調製したナノセルロースの水(200g)懸濁液(乾燥固体含有率約3.1%)を、蒸留水で1%(615mL)の固体含有率まで希釈した後、TEMPO(0.096g、0.6mmoL)及び臭化ナトリウム(0.6g、6mmol)を添加した。NaClO溶液(18.6g、12%、30mmol)を、0.1MのHClを添加してpH10に調整した後、セルロース分散液に添加した。分散液を、直列に接続された200μm補助チャンバー及び100μmダイヤモンド相互作用チャンバーを備えたM-110-Pマイクロフルイダイザープロセッサ(Idex Corp社)を(7回)通して処理した。通過させる毎に、pHを測定し、0.5MのNaOHでpH10に調整し直した。TEMPO-酸化セルロースを濾過し、水で完全に洗浄し、4℃で貯蔵した。カルボン酸塩含有量は電気伝導度滴定で測定したところ、1.15mmolg-1であった。
【0077】
実施例6A
固体ナノセルロースの過ヨウ素酸酸化及びその後の1-ブチルアミンによる還元アミノ化
2,3-ジアルデヒドセルロース(DAC)の調製
実施例5A記載のように、乾燥CNFをパルプから調製した。900mLの酢酸塩緩衝液(pH5.5)中の12gの乾燥CNFを、pH5.5の緩衝液900mLに溶解させた79gのメタ過ヨウ素酸ナトリウム(無水グルコース単位1モル当たり約5モル)と混合し、混合物をUltra-Turraxミキサーを用いて12000rpmで分散させた。過ヨウ素酸塩含有反応混合物を露光しないようアルミ箔で慎重に包み、180mLの1-プロパノールを反応混合物に添加し、ラジカルスカベンジャーとして使用した。反応混合物を、暗室中、室温で50時間激しく撹拌した後、エチレングリコールを添加して反応を停止させた。セルロースを水で繰り返し洗浄し、純粋なDACを得た。
【0078】
酸化度(D.O.)は、対応するジアルデヒドに変換された無水グルコース単位におけるC2、C3-アルコールのモル分率と定義される。D.O.の測定は、以下の通りに行なった:撹拌された100mLの丸底フラスコに、乾燥されたことがないDAC(100mgの乾燥重量に相当)、40mLの酢酸塩緩衝液(pH4.5)及び1.65mLのヒドロキシルアミン溶液(水溶液、50wt%)を添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌した。生成物を、水で十分に洗浄し、減圧下で乾燥し、元素分析を行った。D.O.は、61%と計算され、これはセルロース1グラムにつき約7.6mmolのアルデヒド基に相当する。
【0079】
DAC(2.0g)を酢酸塩緩衝液(200mL、pH4.5、酢酸/酢酸ナトリウム)に再分散させ、15分間撹拌した。分散液にブチルアミン(4.51、61.7mmol、グルコース単位当たり5当量)をゆっくり添加し、混合物を45℃で連続して6時間撹拌した。水素化ホウ素ナトリウム(1.20g、30.8mmol、グルコース単位当たり2.5当量)の水溶液(10mL)を添加し、分散液をさらに3時間撹拌した。生成物を繰り返し蒸留水で洗浄し、pHが中性になるまで水に対して透析(MWCO:12-14,000)し、続いて凍結乾燥させ、80~90%の収率で乾燥生成物を得た。アミンのD.S.(無水グルコース単位当たりの理論最大値=2)は元素分析で測定された窒素含有量から算出した。窒素含有量は、2.0%で、これは0.38のD.S.に相当する。
【0080】
【化8】
【0081】
実施例6B
水中で精製されたセルロースの同時高せん断処理及び過ヨウ素酸酸化、ならびにその後の1-ブチルアミンによる還元アミノ化
予め精製機で調製したセルロースの水懸濁液(390g)(乾燥固体含有率約3.1%)を繰り返し遠心分離/洗浄し、水を段階的に酢酸塩緩衝液(pH4.5)によって置換し、900mLの体積まで希釈した。分散液を、pH4.5の緩衝液200mL中に溶解した、79gのメタ過ヨウ素酸ナトリウム(無水グルコース単位1モル当たり約5モル)と混合し、混合物をUltra-Turraxミキサーを用いて12000rpmで分散させた。分散液を、直列に接続された200μm補助チャンバー及び100μmダイヤモンド相互作用チャンバーを備えたM-110-Pマイクロフルイダイザープロセッサ(Idex Corp社)を(15回)通して処理した。ラジカルスカベンジャー(1-プロパノール、180mL)を、最初の2回の処理後に添加した。マイクロフルイダイザーの入口タンク及び出口コンテナは、分散液の露光を防ぐために、可能な限り覆った。処理終了後、DACを濾過し、水で十分に洗浄し、暗室で4℃で保管した。D.O.は、75%と算出され、これはセルロース1グラム当たり約9mmolのアルデヒド基に相当する。
【0082】
DAC(6.0g)を酢酸塩緩衝液(600mL、pH4.5、酢酸/酢酸ナトリウム)に再分散させ、15分間撹拌した。ブチルアミン(13.53、185mmol、グルコース単位当たり5当量)を分散液にゆっくり添加し、混合物をマイクロフルイダイザー(200/100のチャンバー順に10回)を通して再び処理した。6回の処理後、水素化ホウ素ナトリウム(3.60g、92.4mmol、グルコース単位当たり2.5当量)の水溶液(30mL)を添加した。生成物を繰り返し蒸留水で洗浄し、pHが中性になるまで水に対して透析(MWCO:12-14,000)し、続いて凍結乾燥させ、D.S.が0.7の乾燥生成物を得た。
【0083】
実施例7A
ナノセルロースの過ヨウ素酸酸化及びその後の亜硫酸水素ナトリウムによる酸化及びスルホン化
乾燥CNFを、実施例5記載のように、ユーカリパルプから調製した。乾燥CNF(3.00g)を、Ultra-Turraxミキサーを用いて蒸留水(600mL)に分散させた。過ヨウ素酸ナトリウム(4.04g、18.9mmol、AGU当たり5当量)を添加して、分散液を無光下において室温で3日間撹拌した。生成物を、濾過し、DI水で繰り返し洗浄した後、凍結乾燥した。
【0084】
2,3-ジアルデヒドセルロースのスルホン化
2,3-ジアルデヒドセルロース(3.00g)を、脱イオン水(300mL)及び亜硫酸水素ナトリウム(4.75g、43.24mmol)中に分散させた。室温で72時間撹拌後、生成物を蒸留水で繰り返し洗浄した後、酢酸セルロース膜(MWCO5000)を用いて透析し、続いて凍結乾燥を行った。乾燥セルロースのスルホン酸含有量を、0.05N水酸化ナトリウム溶液で電気伝導度滴定により測定したところ、1.4mmolg-1であった。
【0085】
【化9】
【0086】
実施例7B
水中で精製されたセルロースの同時ナノフィブリル化及び過ヨウ素酸酸化、ならびにその後の亜硫酸水素ナトリウムによるスルホン化
過ヨウ素酸酸化及び機械的処理を、実施例6B記載のように行なった。
【0087】
2,3-ジアルデヒドセルロースのスルホン化
乾燥2,3-ジアルデヒドセルロース(3.00g)を脱イオン水(300mL)の中に分散させ、亜硫酸水素ナトリウム(4.75g、43.24mmol)を添加した。分散液を、直列に接続された200μm補助チャンバー及び100μmダイヤモンド相互作用チャンバーを備えたM-110-Pマイクロフルイダイザープロセッサ(Idex Corp社)を(15回)通して処理した。生成物を蒸留水で繰り返し洗浄し、酢酸セルロース膜(MWCO5000)を用いて透析し、凍結乾燥した。乾燥セルロースのスルホン酸基含有量は、0.05N水酸化ナトリウム溶液を用いた電気伝導度滴定で測定したところ、1.4mmolg-1であった。
【0088】
実施例8A
乾燥ナノセルロースのモノクロロトリアジンとの反応
【0089】
【化10】
【0090】
乾燥CNFを、実施例1A記載のようにして得た。CNF(2.0g)及び化合物II(2.65g、8mmol、無水グルコース残基当たり2当量)を、蒸留水(200g)に添加し、Ultra-turraxミキサーを使用し10000rpmで10分間分散させた。混合物を磁気撹拌器ホットプレートに取り付けた反応フラスコに移し、80℃に加熱した。水酸化ナトリウム溶液(8g、1M、8mmol)を添加し、2時間加熱を続けた。混合物を冷却し、生成物を蒸留水で繰り返し洗浄して単離し、続いて凍結乾燥した。D.S.(理論最大値=3)は、元素分析からの窒素及び硫黄含有量を用いて算出したところ、0.2であった。
【0091】
実施例8B
セルロースの同時機械的処理及びモノクロロトリアジンとの反応
乾燥CNFを、実施例1A記載のようにして得た。CNF(6.0g)及び化合物II(7.95g、24mmol、無水グルコース残基当たり2当量)を蒸留水(600g)に添加し、直列に接続された400及び200μmダイヤモンド相互作用チャンバーを備えたM-110-Pマイクロフルイダイザープロセッサ(Idex Corp社)を(3回)通して処理した。
【0092】
混合物を、直列に接続された200μm補助チャンバー及び100μmダイヤモンド相互作用チャンバーを備えたM-110-Pマイクロフルイダイザープロセッサ(Idex Corp社)を(6回)通して再び処理した。水酸化ナトリウム溶液(24g、1M、24mmol)を、毎回処理終了後に6等分した量を添加し、添加が終了した後にさらに2回処理した。生成物を、蒸留水で繰り返し洗浄し単離し、続いて凍結乾燥した。D.S.が、0.24であることが分かった。
【0093】
実施例9A
バッチ処理での無水コハク酸を用いたナノセルロースの不均一エステル化
ナノセルロースを、実施例1Aのように乾燥粉末として単離した。乾燥ナノセルロース(16.2g)を秤量し、ピリジン(50mL)、60gの無水コハク酸及び350mLのトルエンと共に1リットルの反応フラスコに入れ、混合物をUltraturraxミキサーを用いて10,000rpmで10分間分散させた。フラスコに凝縮器、温度計の付いた蓋を装着し、磁気撹拌しながらホットプレート上で加熱した。混合物を、90℃で終夜撹拌した。60℃まで冷却後、固体を濾過し、アセトンで洗浄し、未反応の無水コハク酸を除去した。固体を、乾燥し26.9gの白色粉末を得た。
【0094】
ナトリウム塩を、飽和重炭酸ナトリウム溶液を用いて、サクシニル化されたセルロースでのアルカリ処理によって調製した。懸濁液を室温で2時間撹拌し、濾過した。固体を、pHが中性になるまで、蒸留水で繰り返し洗浄した後、アセトンで2回洗浄し乾燥した。
【0095】
生成物の置換度は、中性化されていない生成物に過剰量の0.02MのNaHCO水溶液を添加し、メチルオレンジを指示薬として使用し、0.02MのHClで逆滴定することによって求めた。滴定を3回繰り返し、HCl体積の平均値を算出に使用した。
【0096】
DSは、以下の式を用いて算出された:
DS=(162×nCOOH)/(m-100×nCOOH)
式中、162gmol-1はAGUのモル質量であり、100gmol-1は置換された各スクシニル基に対するAGUの質量の正味の増加であり、mは分析されるサンプルの重量であり、nCOOHは、以下の式によって、既知のHClモル濃度に相当する得られた体積値から算出されるCOOHの量である:
nCOOH=VNaHCO×CNaHCO-VHCl×CHCl
この方法を使用して得られたD.S.から、カルボン酸官能基の濃度C(COOH)0.81meq.g-1が得られ、これはスクシニル化度(DS)0.3に相当する。
【0097】
実施例9B
無水コハク酸を用いた高せん断マイクロフルイダイザープロセスによる、トルエン中で精製したセルロースの同時表面スクシニル化及びナノフィブリル化
予め精製機で調製したセルロースの水懸濁液(200g)(乾燥固体含有率約3.1%)を遠心分離し、アセトンを中間溶媒として用い、水を段階的にトルエンに置換した。分散液をさらにトルエンで希釈し、0.5%の固体濃度を得た。分散液を、手作業で撹拌した後、マイクロフルイダイザー(モデルM110-P、Idex Corp社)に導入し、25,000psiの処理圧で、400μmと200μmのチャネルが直列に接続された2つの相互作用チャンバーを3回通して処理した。次に、無水コハク酸(23g)及びピリジン(19g)を混合物に添加し、直列に接続された200μmの補助チャンバー及び100μmの相互作用チャンバーから成る第2のジオメトリーをさらに5回通して処理した。次に、生成物を一連の遠心分離/洗浄工程を経て溶媒をアセトンに置換した後、乾燥した。
【0098】
滴定法(実施例3Aの通り)により、D.S.は0.6であった。
【0099】
【化11】
【0100】
実施例10A
バッチ処理での1,4-フェニレンジイソシアネートを用いたナノセルロースの表面変性
ナノセルロースフィブリルを、実施例1Aのように乾燥粉末として単離した。無水トルエン(250g)をジラウリン酸ジブチルすず(50mg)と共に500mLのフラスコに添加した。混合物を撹拌し70℃に加熱した後、1,4-フェニレンジイソシアネート(16g)の無水ジクロロメタン溶液(50g)を添加した。混合物が均一になった時点で、乾燥CNF(10g)を添加し、反応混合物を70℃で24時間撹拌した。室温に冷却した後、固体を濾取し、円筒濾過紙へ移した後、水分を除去したジクロロメタンとトルエンの1:1混合物で6時間抽出した。変性したCNFを、真空オーブン中50℃で乾燥した。元素分析による窒素含有量から求めたD.S.は、0.3であった。
【0101】
実施例10B
高せん断マイクロフルイダイザープロセスによる1,4-フェニレンジイソシアネートを用いたナノセルロースの同時表面変性
予め精製機(実施例1Bの通り)で調製したセルロースの水性懸濁液(400g、3.1%の固体)を、中間溶媒として2-プロパノールを用いて、一連の遠心分離/洗浄工程によって溶媒を無水トルエンに置換した。分散液をさらにトルエンで0.8%の固体濃度まで希釈し、マイクロフルイダイザーに導入し、直列に接続された400μmと200μmのチャネルを有する2つの相互作用チャンバーを、25,000psiの処理圧で2回通して処理した。1,4-フェニレンジイソシアネート(25g)及びジラウリン酸ジブチルすず(100mg)を撹拌して、混合物とし、これを直列に接続された200μmの補助チャンバー及び100μmの相互作用チャンバーからなる第2のジオメトリーをさらに7回通して処理した。次いで、生成物を、一連の遠心分離/洗浄工程によってジクロロメタン次にアセトンに溶媒置換した後、乾燥した。元素分析の窒素含有量から求めたD.S.は0.3であった。
【0102】
【化12】
【0103】
実施例11A
ε-カプロラクトンの表面開始開環重合(SI-ROP)によるセルロースナノフィブリルの変性
CNFを、実施例1Aの通りにして得た。磁石の付いた丸底フラスコに、乾燥CNF(5.0g)及びε-カプロラクトン(100g)を無水トルエン(100g)と共に添加し、混合物を、グラフト反応を始める前に、窒素下にて終夜磁気撹拌した。犠牲的開始剤のベンジルアルコール(150μL)を添加し、続いて触媒Sn(Oct)(4mL)を添加した。その後、反応フラスコを、90℃に予熱した油浴に浸漬した。重合を10時間継続させた。濾過後、固形生成物をTHF中80℃で終夜ソックスレー抽出し、未グラフト化ポリマーを回収した後、冷メタノールに注ぎ込み沈殿させた。これを、表面グラフトポリマーの質量を推定するために使用し、この場合46%であった。DSを、定量的交差分極マジック角回転(CP-MAS)13CN.M.R.によって測定したところ、0.07であった。
【0104】
実施例11B
マイクロフルイダイザーと組み合わされたバッチ反応器を用いた、ε-カプロラクトンの表面開始開環重合によるセルロースの同時表面変性及びナノフィブリル化
予め精製機で調製したセルロースの水性懸濁液(100g、3.1%固体)を、遠心分離し、2-プロパノールを中間溶媒として用い、水を段階的に無水トルエンに置換した。ε-カプロラクトン(120g)を機械的撹拌しながら添加し、得られた分散液をさらにトルエンで約1%に希釈した。次いで、分散液をマイクロフルイダイザーに導入し、25,000psiの処理圧で直列に接続された400μm及び200μmのチャネルを備えた2つの相互作用チャンバーを2回通して処理した。ベンジルアルコール(200μL)及び触媒Sn(Oct)(5mL)を撹拌しつつ混合物に入れ、直列に接続された200μmの補助チャンバー及び100μmの相互作用チャンバーからなる第2のジオメトリーをさらに7回通して処理した。生成物を精製し、転換率及びD.S.を実施例5Aの通りに確定した。転換率は57%、D.S.は0.08であった。
【0105】
【化13】
【0106】
実施例12A
バッチ処理による、氷酢酸を用いた固体セルロースナノファイバー(CNF)の表面アセチル化
ナノセルロース基質を、漂白されたユーカリの亜硫酸塩溶解パルプ(DP約800)から誘導し、シート形状に受け、このシートを最初に細断し、水性モルホリン78w/w%の膨潤媒体に浸漬した。次に、膨潤したパルプの懸濁液を、200μmのセラミック補助処理ユニット及び100μmダイヤモンド相互作用チャンバー(H-10Z)を備えたM-110-EHマイクロフルイダイザープロセッサ(Idex Corp社)に(5回)通して処理した。ナノセルロースを、複数回の遠心分離/デカンテーション工程により水中で洗浄した後、凍結乾燥し、乾燥粉末として単離した。
【0107】
乾燥ナノセルロース(4.0g)を秤量し、800gの氷酢酸と共に1リットルの反応フラスコに入れ、混合物をUltraturraxミキサーを使用し10,000rpmで10分間分散させた。フラスコに凝縮器、温度計の付いた蓋を装着し、磁気撹拌しながらホットプレート上で加熱した。温度が80℃に達した後、濃塩酸(1.8mL)を添加し、撹拌を80~85℃で2時間継続させ、その後撹拌しながら放冷した。
【0108】
分散液を、遠心分離して酸性の液相を除去し、新鮮な水に再分散させ、その後2回目の遠心分離を行って、酸をほとんど除去した。固体を約1%で新鮮な水にもう一回再分散させ、1Mの炭酸ナトリウム溶液でpHが>6に調整されるまで強く撹拌した。次に、分散液を、導電率(conductivity)が<5μScm-1に下がるまで、繰返し遠心分離/洗浄サイクルにかけた。次に固体を、新鮮な水に最後の再分散させ、その後凍結乾燥した(VirTis SP Scientific Sentry2.0)。
【0109】
ナノセルロース表面のアシル化の程度は、KRS-5結晶を装着したPerkin Elmer FTIR Frontier分光光度計を使用し、ATR-FTIR分光法によって測定した。スペクトルは、4cm-1の分解能で4000~450cm-1の範囲にわたって、16回のスキャンで記録した。データをPerkin Elmer スペクトルソフトウェアを使用して処理し、吸光度を縦軸としてプロットした。見かけの置換度(DS)は、1738cm-1のエステルカルボニルの伸縮ピークと1160cm-1の糖単位の-C-O-C-変形に対応するピークの高さの比から推定した。測定したピーク比は、市販の三酢酸セルロース(報告されたDS=2.48)の既知の較正基準を参照して、見かけのDS値に換算した。較正基準におけるピーク比率A1738/A1160は8.75であった。従って、見かけのDSは、所定のサンプルのピーク比から以下のように推定される:
DS=(A1738/A1160)×(2.45/8.75)
この生成物の見かけのDSは、0.4であった。
【0110】
【化14】
【0111】
実施例12B
氷酢酸を用いたセルロースの同時表面アセチル化及びナノフィブリル化
予め精製機で調製したセルロースの水懸濁液(200g)(乾燥固体含有率約3.1%)を遠心分離し、水を段階的に氷酢酸に置換し、酢酸のみから成る溶媒中の0.5%分散液を得た。分散液を、手作業で撹拌した後、マイクロフルイダイザー(モデルM110-P、Idex Corp社)に導入し、25,000psiの処理圧で、400μmと200μmのチャネルが直列に接続された2つの相互作用チャンバーを3回通して処理した。次に、濃塩酸(36%、2g)を混合物に添加し、直列に接続された200μmの補助チャンバー及び100μmの相互作用チャンバーから成る第2のジオメトリーをさらに7回通して処理した。見かけのD.S.は実施例1Aのように測定したところ、0.4であった。