(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】口腔ケア器具用の毛束、口腔ケア器具用のヘッド及び口腔ケア器具
(51)【国際特許分類】
A46B 9/04 20060101AFI20220822BHJP
A46D 1/00 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
A46B9/04
A46D1/00 101
(21)【出願番号】P 2018563179
(86)(22)【出願日】2017-06-01
(86)【国際出願番号】 US2017035384
(87)【国際公開番号】W WO2017210389
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2019-01-25
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-02
(32)【優先日】2016-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】エルビン、パウル、マルク
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン、エーリヒ、カベラウ
(72)【発明者】
【氏名】イェンス、アリンスキー
(72)【発明者】
【氏名】スベン、アレクサンダー、フランケ
(72)【発明者】
【氏名】カレン、リン、クレア-ジメット
(72)【発明者】
【氏名】ウベ、ユングニッケル
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】田合 弘幸
【審判官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-219520(JP,A)
【文献】特表平11-513269(JP,A)
【文献】特表2000-516822(JP,A)
【文献】特開2004-202021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46D 1/00-1/05
A46B 9/04
A61C 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔ケア器具(10)用の毛束(16、66)であって、前記毛束(16、66)が、複数のフィラメント(20)を備え、前記フィラメント(20)が、長手方向軸線と、前記長手方向軸線に対して実質的に垂直な平面にて延在する、実質的に十字形状の断面領域(22)と、を有し、前記十字形状の断面領域(22)が、4つの突起部(24)及び4つのチャネル(26)を有し、前記突起部(24)及びチャネル(26)が、交互に配置されており、前記断面領域(22)が、外径(28)を有し、各チャネル(26)が、隣接する突起部(24)の側部側方縁
(44)の間に位置する凹状の湾曲部(34)を有し、前記凹状の湾曲部(34)が、
前記凹状の湾曲部(34)の曲率半径である半径(30)を有し、
前記半径(30)が、0.015mm~0.12mmの範囲内であり、前記半径(30)に対する前記外径(28)の比率が、2.5~12の範囲内であり、
前記毛束(16、66)が、40%~60%の範囲内の詰込み率を有し、
前記外径(28)が、0.15mm~0.40mmの範囲内であ
り、
各突起部(24)が、外向き方向に先細になっており、
各突起部(24)は、直線状に延びる2つの対向する前記側部側方縁(44)を含み、
各突起部(24)が、前記外向き方向にて先細になるように、各突起部(24)の2つの前記側部側方縁(44)の間の角度が、6°~25°の範囲で画定されている、毛束(16、66)。
【請求項2】
前記半径(30)が、0.03mm~0.10mmの範囲内であり、前記半径(30)に対する前記外径(28)の比率が、2.7~9の範囲内である、請求項1に記載の毛束(16、66)。
【請求項3】
前記外径(28)が、0.22mm~0.35mmの範囲内である、請求項1又は2に記載の毛束(16、66)。
【請求項4】
各突起部(24)が
前記外向き方向にて先細になるように、各突起部(24)の2つの前記側部側方縁(44)の間の角度が、8°~20°の範囲で画定さ
れている、請求項
1~3のいずれか一項に記載の毛束(16、66)。
【請求項5】
前記突起部(24)は、2つの前記側部側方縁(44)の先端に形成された、丸みを帯びた凸状の湾曲部を含み、
各突起部(24)が、2つの
前記側部側方縁(44)
の先端の間に延在する幅延在部分(42)を有し、
前記幅延在部分(42)が、前記フィラメント(20)の前記外径(28)の6%~15%の範囲で画定されている、請求項
1~4のいずれか一項に記載の毛束(16、66)。
【請求項6】
前記幅延在部分(42)が、前記フィラメント(20)の前記外径(28)の8%~12%の範囲内である、請求項
5に記載の毛束(16、66)。
【請求項7】
前記幅延在部分(42)が、0.016mm~0.041mmの範囲内である、請求項
5又は
6に記載の毛束(16、66)。
【請求項8】
前記フィラメント(20)が、その長手方向軸線に沿って延びる本体部分及び先細部分を備え、前記先細部分が、前記本体部分に対して前記フィラメントの自由端の側に位置し、前記自由端に向かって先細になり、前記本体部分が、前記断面領域(22)を有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の毛束(16、66)。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の毛束(16、66)を備える口腔ケア器具(10)用の、ヘッド(14)。
【請求項10】
請求項
9に記載のヘッド(14)を備える口腔ケア器具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、口腔ケア器具用のフィラメントに関するものであり、このフィラメントは、長手方向軸線と、長手方向軸線に対して実質的に垂直な平面にて延在する、実質的に十字形状の断面領域と、を有する。本開示は更に、口腔ケア器具用の毛束及びヘッドに関するものであり、この口腔ケア器具はそのようなヘッドを備える。
【背景技術】
【0002】
手動式又は電動式歯ブラシのような口腔ケア器具用の、複数の繊維で構成される毛束は、当該技術分野において周知のものである。一般的に、こうした毛束は、使用者の口腔内に挿入されることを意図したヘッドの剛毛支持部に取り付けられている。通常は、ヘッドに把持部ハンドルが取り付けられ、歯磨きの際にはこのハンドルが使用者により握られる。ヘッドはハンドルに永久的に連結されている、又はハンドルに繰り返し着脱可能となっている。
【0003】
歯を効果的に清掃するために、フィラメントの自由端と歯との間に適切な接触圧力が与えられなければならない。一般的に、単一のフィラメントの曲げ剛性がその長さ及び断面積に依存する一方で、接触圧力はフィラメントの曲げ剛性及び変位に依存する。通常、より長いフィラメントは、より短いフィラメントと比較して、より低い曲げ剛性を示す。しかし、比較的薄いフィラメントは、容易に屈曲して離れてしまう傾向にあり、また比較的低い曲げ剛性は、歯の表面における歯垢除去の効率性を減少させ、加えて、歯間貫入特性及び洗浄性能を低下させる。より長いフィラメントの曲げ剛性の低下を補償するために、フィラメントの断面積の寸法を増大させることができる。しかし、比較的太いフィラメントは、不快な歯磨き感覚を生じさせる場合があり、また口腔内の歯茎を傷つけやすい。なお、より太いフィラメントは低い曲げ回復性を示す場合があり、比較的短期間の使用後に、当該フィラメントの使用による毛束パターンの使い古した印象が生じる場合がある。
【0004】
更に、非円形断面領域、例えば多角形の、又は十字形状の断面領域をもたらす、それらの長さ延在部分に沿った輪郭を有するフィラメントが、当該技術分野において周知である。このようなフィラメントは、通常の使用中、口腔ケア器具の洗浄特性を向上させ得る。特に、輪郭づけられた端部は、歯磨きプロセス中により頑丈な摩擦作用を提供して、歯垢及び歯の表面上の残留物の除去を向上させるべきである。
【0005】
これらのタイプのフィラメントを備える歯ブラシは、歯の外側頬面を適切に洗浄する一方で、これらは、一般的に、歯間空隙内への貫入が依然として比較的困難な故に、隣接歯間領域並びに口腔の他の到達しづらい口腔領域からの歯垢並びに細片の適切な除去には適していない。更に、製造プロセス中及び歯磨き中に、十字形状のフィラメント/剛毛は、それら同士で容易に絡まり得、この絡まりによって歯ブラシの摩滅した外観がもたらされる。加えて、これらのフィラメントは、歯磨き中に、歯及び歯茎の表面から歯垢及び細片を除去するのに十分な毛管効果を提供しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、前述の欠点のうち少なくとも1つを克服する、口腔ケア器具ためのフィラメント、毛束、及びヘッドを提供することである。このようなヘッドを備える口腔ケア器具を提供することもまた、本開示の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によれば、口腔ケア器具用のフィラメントが提供され、このフィラメントは、長手方向軸線と、長手方向軸線に対して実質的に垂直な平面にて延在する、実質的に十字形状の断面領域と、を有し、十字形状の断面領域は、4つの突起部及び4つのチャネルを有し、突起部及びチャネルは、交互に配置されており、断面領域は外径を有し、各チャネルは、隣接しかつ合流する突起部によって形成された凹状の湾曲部を有し、凹状の湾曲部は半径を有し、この半径は、約0.015mm~約0.12mmの範囲内であり、半径に対する外径の比率は、約2.5~約12の範囲内である。
【0008】
一態様によれば、このようなフィラメントを備えた口腔ケア器具用の毛束及びヘッドが提供される。
【0009】
一態様によれば、このようなヘッドを備えた口腔ケア器具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明を、種々の実施形態及び図面に関して、以下により詳細に記載する。
【
図1】本開示による複数のフィラメントを備える口腔ケア器具の概略斜視図を示す。
【
図3】現況技術によるフィラメントの概略断面図を示す。
【
図5】第1の比較例示的実施形態による毛束の概略断面図を示す。
【
図6】第2の比較例示的実施形態による毛束の概略断面図を示す。
【
図7】
図2によるフィラメントの歯磨きの結果を、2つの比較例示的実施形態によるフィラメントの歯磨きの結果と比較した図を示す。
【
図8】
図2によるフィラメントの「スラリー取り込み質量」を、2つの比較例示的実施形態によるフィラメントの「スラリー取り込み質量」と比較した図を示す。
【
図9】
図2によるフィラメントの「スラリー取り込み速度」を、2つの比較例示的実施形態によるフィラメントの「スラリー取り込み速度」と比較した図を示す。
【
図10】現況技術によるダイヤモンド形状のフィラメントの概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示によるフィラメントは、フィラメントの主延在部分によって画定される長手方向軸線を有する。以下、その長手方向軸線に沿ったフィラメントの延在はまた、「フィラメントの長手方向の延在」と称される場合がある。フィラメントは、長手方向軸線に実質的に垂直な平面にて延在する断面領域を有する。この断面領域の形状は十字形状である。十字形状の断面領域は、4つの突起部及び4つのチャネルを含み、突起部及びチャネルは交互に配置される。2つの隣接する突起部、即ち、これらの突起部の2つの隣接する側部側方縁は、チャネルの底部で合流し、「合流領域」を画定する。隣接する突起部は、凹状の湾曲部(即ち、内側に向かって湾曲した半径を有する)がチャネルの底部において形成される様式で、合流領域で合流する。
【0012】
十字形状の断面領域は外径を有する。本開示との関係では、外径は、フィラメントの断面領域の中心を通過する直線の長さにより画定され、またその終点は、断面領域の最も外側の円周上に位置する。換言すれば、十字形状の断面領域は、円の形状にて仮想の外側円周(即ち、外側外囲円)を有し、かつ外径は、円の中心を通過する、円の最も長い直線区分として画定される。
【0013】
本開示によれば、チャネルの底部における凹状の湾曲部の半径は、約0.015mm~約0.12mmの範囲内であり、半径に対する外径の比率は、約2.5~約12の範囲内である。あるいは、半径は、約0.03mm~約0.10mmの範囲内であってもよく、半径に対する外径の比率は、約2.7~約9の範囲内であってもよい。
【0014】
外径は、約0.15mm~約0.40mm、若しくは約0.19mm~約0.38mmの範囲内であってよい、又は外径は、約0.22mm~約0.35mm、若しくは約0.24mm~約0.31mmの範囲内であってよい。
【0015】
驚くべきことに、このようなフィラメントの形態は、口腔内におけるブラシの快適性を維持しつつ、向上した洗浄性能を提供する、ということが見出された。加えて、このような形態は、歯磨き中に、フィラメントが絡まってしまう可能性が減少する故に、フィラメント/毛束の外観の摩耗が減少することを手助けする、ということが見出された。更に、歯ブラシの製造プロセス中の、このようなフィラメントの製造性が、向上する。
【0016】
約0.015mm~約0.12mm、又は約0.03mm~0.10mmの範囲内のチャネルの底部における湾曲部の半径は、標準的な十字形状のフィラメントと比較すると相対的に大きい。
【0017】
十字形状の断面領域の各突起部は、フィラメントの長手方向の延在に沿った2つの外側側方縁を備える。これらの外側縁は、歯の表面上に比較的高い集中応力を発生させて、歯垢を破壊し、かつ除去し得る。外側縁は、歯垢及び残骸がより効果的に緩むように、摩擦効果を提供することができる。チャネルの底部における半径が比較的大きい故に、突起部には、歯の表面から歯垢をより容易に/効果的に緩める/除去する向上した剛性/安定性がもたらされる。チャネルは、次に、破壊された歯垢を捕獲し、かつ歯から取り除き得る。
【0018】
更に、半径の特定の形態に起因して、チャネルは、フィラメントがより小さい密度で毛束内に詰め込まれ得ることを容易にし、より長い時間の間、フィラメントにおいて/フィラメントに付着して更により多くの歯磨き剤/練り歯磨きの保持をもたらし、且つ歯磨き剤が広がることを回避することができ、これにより、向上した全体的な歯磨きプロセスがもたらされ得る。換言すれば、チャネルにおいて練り歯磨きがより良好に受容され得て、歯に接触して洗浄する際に、直接送達され、これにより、特に、歯の変色の除去に関して望ましい、より高い研磨効果が達成される。
【0019】
更に、毛束内のフィラメント密度の減少は、向上した毛管作用を提供し得、この毛管作用によって歯磨き剤がフィラメントの先端/自由端へと流れることが可能になり得るため、歯磨きの間により多くの歯磨き剤が歯及び歯茎に利用できるようになり得る。加えて、毛管効果は、歯垢の取り込みを更に促進し、歯磨き中の全体的な洗浄性能/効率性を改善し得る。
【0020】
図7にて示されるように、また以下で更に説明するように、本開示による複数のフィラメントを備える毛束は、円形のフィラメント、又は従来の十字形状のフィラメントの毛束と比較して、頬面の表面、舌側の表面、咬合面の表面、及び歯間の表面から、並びに歯肉線に沿った向上した歯垢除去を提供する。
【0021】
更に、過去に、従来の十字形状のフィラメント(例えば、
図3に示し、また更に後述するフィラメント)は、これらのタイプのフィラメントが製造中及び歯磨き中の両方で、互いに絡まり易いという欠点を有することが認められた。しかし、驚くべきことに、所謂「ピッキングプロセス」中に、複数のフィラメントが撚り合って1つの毛束を形成する場合に、フィラメントが絡まってしまうという可能性が著しく減少する故に、本開示によるフィラメントの外側表面の特定の形状/輪郭が、向上した製造可能性を可能にする、ということが見出された。
【0022】
更に、約0.015mm~約0.12mm、又は約0.03mm~約0.10mmの範囲内の半径が比較的大きい故に、ブラシの製造プロセス中、例えば、ステープリング留め又は高温の毛束付けプロセス中に、フィラメントが突かれ、ブラシヘッドの取り付け表面上に固定されるときに発生するフィラメントの損傷が減少する。過去に、ピッキングプロセス中に、比較的多数の従来の十字形状のフィラメントが損傷を受けることが認められた。特に、突起部がフィラメントから切断されて離れてしまう、又はチャネルの底部における合流領域においてフィラメントが撚り継いでしまう場合がある。撚り継いだフィラメントは、比較的鋭い端部を提供し得るが、これは、歯磨き中に口腔組織を傷つけてしまう/痛めてしまう場合がある。
【0023】
十字形状のフィラメントの突起部は、外向き方向にて、即ち、断面領域の中心から離れ、かつ外側円周に向かった方向にて、放射状に先細になってよい。このような先細の突起は、狭い空隙及び到達しづらい領域への接近を確実にし得、また、なおより深いかつ効果的な歯間領域への貫入/進入を可能にし得る。同一量の材料から製造された円形形状のフィラメントと比較して、十字形状のフィラメントの曲げ剛性が高い故に、より高い曲げ剛性はフィラメントの突起部を強めて、歯間領域内へとより容易に滑り込ませ得る。
【0024】
突起部は、約6°~約25°の範囲内の角度により、又は約8°~約20°の範囲内の角度により、外向きに放射状に先細になっていてもよい。驚くべきことに、このような先細になることは、最適な歯間貫入特性を可能にする、ということが見出された。更に、このようなフィラメントは、隣接するフィラメントの輪郭上で絡まってしまうことなく、より容易に毛束に束ねることができる。
【0025】
各突起部は、2つの対向する側方縁の間に延在する幅延在部分を有する。幅延在部分は、フィラメントの外径の約6%~約15%、又は約8%~約12%の範囲内であってよい。幅延在部分は、約0.016mm~約0.041mm、又は約0.021mm~約0.033mmの範囲内であってもよい。このようなフィラメントは、より良好な様式で歯の輪郭に適合し、より容易に歯間空隙内へ貫入し、より完全に歯垢及び細片を除去し得る。
【0026】
フィラメントは、実質的に円筒状のフィラメントであってよく、即ち、フィラメントは、実質的に円筒状の、外側の側方表面を有してよい。換言すれば、その長手方向軸線に沿ったフィラメントの断面領域の形状及び寸法は、実質的に変化しなくてよい、即ち、断面領域の形状及び寸法は、フィラメントの長手方向の延在にわたって実質的に一定であってよい。本開示との関連において、用語「フィラメントの外側の横方向表面」とは、その側面における、フィラメントの外側面又は外側表面を意味する。このタイプのフィラメントは、先細フィラメントと比較して、向上した曲げ剛性を提供し得る。より高い曲げ剛性は、フィラメントの歯間間隙/空隙内への貫入を促進し得る。なお、円筒状のフィラメントは、一般にゆっくりと使い古され、フィラメントのより長い耐用期間を提供し得る。
【0027】
円筒状のフィラメントは、実質的に端が丸められた先端/自由端を有して、穏やかな洗浄特性を提供し得る。端が丸められた先端は、歯磨き中に、歯茎が傷つけられるのを防ぎ得る。本開示との関係内で、端が丸められたフィラメントは、依然として、実質的に円筒状のフィラメントの定義の分類に入り得る。
【0028】
あるいは、フィラメントは、その長手方向軸線に沿った、実質的に円筒状の部分及び先細部分を備えてよく、先細部分は、フィラメントの自由端に向かって、長手方向に先細になり、また円筒状の部分は、本開示による断面領域を有する。換言すれば、フィラメントは、先が尖った先端を有する先細フィラメントであり得る。先細フィラメントは、2本の歯の間の部分ばかりでなく、ブラッシングの際に歯肉ポケットに最適に入り込むことができ、高い磨き特性を与えることができる。先細フィラメントは、約8mm~約16mm、任意に約12.5mmの範囲内で、取り付け表面上に延在した全体の長さを有してよく、また先細部分は、フィラメントの先端から測定して約5mm~約10mmの範囲内で、長さを有してもよい。先が尖った先端は、針形状であってよく、枝分かれ状又は羽根状の端部を有してもよい。先細部分は、化学的及び/又は機械的な先細形成プロセスにより製造することができる。
【0029】
フィラメントは、外側表面において着色された、カオリン粘土などの研摩材を伴う、又は伴わないポリアミド、例えば、ナイロン、カオリン粘土などの研摩材及び/又はポリアミド指示薬材料、例えばナイロン指示薬材料を伴う、又は伴わないポリブチレンテレフタレート(PBT)から製造されてよい。ポリアミド指示薬材料の着色は、フィラメントが徐々に使用されると緩やかに摩耗し得て、フィラメントが摩耗した程度を示す。
【0030】
フィラメントは、異なる材料の少なくとも2つの区分を含み得る。少なくとも1つの区分は、熱可塑性エラストマー材料(TPE)を含み得、また少なくとも1つの区分は、外側表面において着色された、カオリン粘土などの研摩材を伴う、又は伴わないポリアミド、例えば、ナイロン、カオリン粘土などの研摩材又はポリアミド指示薬材料、例えばナイロン指示薬材料を伴う、又は伴わないポリブチレンテレフタレート(PBT)を含み得る。これらの少なくとも2つの区分は、平行した構造にて、又はコア-外装構造にて配置されてよく、これはフィラメント全体の剛性の減少をもたらし得る。より硬い材料、例えば、ポリアミド又はPBTを含む内側/コア区分、及びコア区分を取り囲み、より柔らかい材料、例えばTPEを含む外側/外装区分を伴うコア-外装構造は、穏やかな洗浄特性をもたらす比較的柔らかい外側横方向表面を伴う、フィラメントを提供し得る。
【0031】
フィラメントは、フッ化物、亜鉛、ストロンチウム塩、香料、シリカ、ピロリン酸塩、過酸化水素、硝酸カリウム、又はこれらの組み合わせから選択される構成要素を含み得る。例えば、フッ化物は、鉱化効果を提供し得、従って、虫歯を防止し得る。亜鉛は、使用者の免疫系を強化し得る。過酸化水素は、歯を漂白/白くし得る。シリカは、より効果的に歯の歯垢及び残骸を除去する研磨効果を有し得る。ピロリン酸塩は、歯肉線に沿った新しい歯垢、歯石及び歯の結石の形成を阻害し得る。ピロリン酸塩を含むフィラメントは、歯茎及び口腔粘膜の炎症に対する持続的な保護を提供し得る。
【0032】
複数のこのようなフィラメントは共に束ねられて毛束を形成し、毛束の中心に配置されたフィラメントがフッ化物を含んで、歯磨きプロセス中に歯を鉱化するのに対して、それらは、毛束の外側の側方表面におけるフィラメントがピロリン酸塩を含んで、歯肉線に沿った歯垢、歯石及び歯の結石の形成を阻害し得る様式にて配置されてよい。
【0033】
少なくとも1つの上記に掲載された構成要素を、外装上で、即ち、フィラメントの外側区分上で、コーティングしてよい。換言すれば、少なくともいくつかの毛束のフィラメントは、内側/コア区分がTPE、ポリアミド、又はPBTを含んでよく、また外側/外装区分が少なくとも1つの上記に掲載された構成要素を含んでよい、コア-外装構造を備えてよい。このようなコア-外装構造は、比較的高濃度にて、構成要素(複数可)が直接歯に有効となるようにし得る、即ち、歯磨き中に、構成要素(複数可)が歯に直接接触し得る。
【0034】
あるいは、少なくとも1つの上記に掲載された構成要素は、TPE、ポリアミド、例えばナイロン、及び/又はPBTと共に共押し出しされ得る。このような実施形態は、使用中にフィラメント材料がゆっくりと摩耗して離れる場合に、構成要素(複数可)が徐々に歯に有効となるようにし得る。
【0035】
上記に説明される実施形態のうちのいずれかによる複数のフィラメントは、共に束ねられて、口腔ケア器具に取り付けられた毛束を形成し得る。口腔ケア器具は、ハンドル及びヘッドを備える歯ブラシであってよい。ヘッドはハンドルから延び、ハンドルに繰り返し着脱することが可能であるか、又はヘッドは取り外しできないようにハンドルに連結されているかのいずれかであってもよい。歯ブラシは、電動式歯ブラシ又は手動式歯ブラシであってよい。
【0036】
ヘッドは、実質的に円形又は楕円形の形状を有する剛毛支持部を備えてよい。このような刷毛支持部は、回転振動運動を行うことができる電動式歯ブラシ用に提供することができる。電動式歯ブラシの剛毛支持部は、運動軸の周囲を回転し、かつ運動軸に沿って振動する様式で軸方向に運動するように駆動することができ、そのような運動軸は、剛毛支持部の上側の上面により画定される平面に対して、実質的に垂直に延在してよい。本開示に基づく複数の繊維からなる1つ以上の毛束(複数可)を刷毛支持部に取り付けることができる。毛束(複数可)は、フィラメントの突起部が、ヘッドの更なる向上した洗浄特性を提供するヘッドの回転振動運動中に、歯間領域及び到達しづらい領域内へとより容易に貫入することを可能にし得る。歯の表面に対して実質的に垂直なフィラメントの振動動作により、歯垢及びその他の残留物を緩めつつ、回転運動により歯垢及び更なる残留物を押し流すことができる。
【0037】
本開示による毛束は、約40%~約60%、若しくは約45%~約55%、又は約45%の範囲内の詰込み率を有し得る。驚くべきことに、本開示によるフィラメントは、2つの隣接するフィラメントの間の間隙が最大化され得るように、毛束内でフィラメントの相対的に低い詰込み率を可能にし得ることが見出された。本開示との関連において、用語「詰込み率」とは、毛束孔の横断断面領域により割った、毛束孔におけるフィラメントの横断断面領域の合計と定義される。毛束を毛束孔内に取り付けるために、ステープルなどの固定具が使用される実施形態では、固定手段領域は、毛束孔の横断断面領域から除外される。フィラメントが依然として、外側の側方表面の一部に沿って互いに接触を有する一方で、約45%の詰込み率は、毛束内で特定の間隙容積を保つ。間隙容積は、より多くの練り歯磨きを歯磨きプロセスへと送達し得て、かつ練り歯磨きがより長い時間歯と相互作用することができ、向上した歯磨き効果に寄与する。加えて、間隙容積、即ち、フィラメント間の空隙は、向上した毛管作用故に、緩んだ歯垢の向上した取り込みを可能にする。
【0038】
驚くべきことに、この間隙容積は、本開示によるフィラメントを使用することによって達成され得ることが見出された。依然として互いに接触を有する一方で、フィラメントが空隙領域にて隙間を保つことが重要であることが見出された。規定要件に従い、かつ外観全体に関して消費者により評価される歯ブラシを製造するために、典型的には、高詰込み率(円形のフィラメントに関しては約70%~約80%、ダイヤモンド形状のフィラメントに関しては、約80%、三葉型のフィラメントに関しては、約89%)が必要とされる。ステープリング留めプロセスにより製造された歯ブラシに関しては、約70%よりも低い率では、毛束孔内に不十分に圧縮されたフィラメントをもたらすこととなり、また従って、毛束の保持が不十分となる。従って、円形のフィラメントが約70%よりも低い詰込み率を伴う場合には、規定要件が満たされない。高温で毛束づけられた歯ブラシに関しては、約70%よりも低い詰込み率により、溶融液の圧力が、フィラメントが互いに接触するまでもう一方へと毛束のフィラメントを押す際に、成形プロセスにわたって、プラスチック溶融液が毛束内へと進入することを可能にし得る。所謂、多棘はそれにより形成され、歯茎を痛めてしまう/傷つけてしまう場合があり、従って、製品が不安全となってしまう。規定及び安全性の見解の他に、円形のフィラメントの低詰込み毛束は、「粗野」かつ破壊された外観を有し得、また消費者により許容され得ない。しかしながら、本開示のフィラメントを使用することにより、低い詰込み率は、容認され得る全体的な外観を有する準拠し安全な製品を達成し得る。
【0039】
約40%~約60%、若しくは約45%~約55%、又は45%の範囲内の比較的低い詰込み率は、向上した毛管効果故に、向上した歯磨き効果、即ち、歯の表面からのより良好な歯垢及び細片の除去を提供し得る。これらの毛管効果は、歯磨き剤がフィラメントの先端/自由端に向かって流れることを可能にし、従って、歯磨き中に、歯磨き剤をより有効に歯及び歯茎に与えることができる。同時に、歯及び歯茎の表面からの歯垢及び残骸の取り込みが向上する。
【0040】
更に、フィラメントの十字形状の形態故に、同一量の材料から製造された場合に、各単一のフィラメントは、円形形状のフィラメントよりも硬い。しかしながら、約40%~約60%、若しくは約45%~約55%、又は45%の範囲内の低い詰込み率故に、本開示によるフィラメントから製造された毛束全体の剛性は、円形形状のフィラメントの毛束と比較して低下する。これは、向上された洗浄効率性を提供しつつ、歯磨き中の体感体験の向上をもたらす。
【0041】
口腔ケア器具用のヘッドに取り付けられた、少なくとも1つの毛束は、長手方向軸線と、長手方向軸線に垂直な平面において延在する断面領域と、を有してよい。複数のフィラメントは、毛束の断面領域が、毛束を作り上げる、各個々のフィラメントのそれぞれの形状の拡大した形状を有する様式にて、配置されてよい。換言すれば、毛束は、そのフィラメントの拡大した変形型である、即ち、毛束の断面領域の形状は、各個々のフィラメントではあるがより大きな寸法のフィラメントとして、実質的に同一の十字形状の断面領域を有してよい。毛束の断面領域の形状は、そのフィラメントの断面領域の形状に対応してよい。本開示との関連において、用語「拡大した形状を有する断面領域」とは、同一の形状だが増大した寸法を備える断面領域を意味する。換言すれば、形状のタイプは同一であってよいが、断面領域の寸法は異なる、即ち増大する。毛束の断面領域の外側円周にて、2つの隣接する個々のフィラメントの間に存在し得るいずれかの間隙、ばらつき、起伏、又は溝穴は、上記断面領域の実質的な形状に寄与せず、また従って、注意しなくてよい。
【0042】
このような毛束は、向上した洗浄特性を提供し得る。個々のフィラメントの特定の形状/形態は、円形の断面領域を伴う正規のフィラメントの特性とは異なる、特定の洗浄特性を有する。これらの特定の洗浄特性は、各個々のフィラメントの断面形状の拡大された変形型である毛束全体の断面形状をフィラメントが形成するような様式にて、当該フィラメントを配置させることにより、強化されてよい。なお、各単一のフィラメントの特定の形態は一般には使用者に目視され得ず、本開示による毛束はそれぞれの形態を使用者に伝え、また従って、上記毛束を作り上げるフィラメントの対応する洗浄特性を伝え得る。
【0043】
フィラメント及び毛束が、それぞれ、非円形形状を伴う各断面領域を有する故に、フィラメント並びに毛束全体は、歯磨きプロセス中に、異方性の曲げ剛性特性を提供し得る。所与された接触圧力がフィラメント/毛束の自由端へと加えられた場合、フィラメント/毛束の偏向/変位の量は、フィラメント/毛束の直径/半径に依存する。直径/半径がより小さいと、フィラメント/毛束の自由端の偏向/変位が大きくなり、また逆に、直径/半径がより大きいと、フィラメント/毛束の自由端の偏向/変位が小さくなる。毛束は、より大きい洗浄力が必要であり得る方向にて、より大きい曲げ剛性が提供されるような様式にて、ヘッドの取り付け表面上に配置されてよい。穏やかな洗浄力又はマッサージ効果が必要とされ得る方向にて、より小さい曲げ剛性が提供され得る。
【0044】
本開示に基づく口腔ケア器具用のヘッドは、少なくとも1個の毛束穴、例えば盲端ボアが設けられた剛毛支持部を有し得る。本開示による複数のフィラメントを含む毛束は、ステープル留めプロセス/定着毛束付け法により、毛束孔に固定/定着させてよい。これは、毛束の繊維が、例えば金属で形成された、例えばアンカーワイヤ又はアンカープレートのようなアンカーの周囲にほぼU字状の態様で折り曲げられる/折り畳まれることを意味する。固定具と共にフィラメントを毛束孔内へと押し込み、これにより、固定具が毛束孔の反対側の壁内へと貫入し、それにより、フィラメントを剛毛支持部へと定着/固定/締結する。正係合及び摩擦係合により、固定具を反対側の壁に固定してよい。毛束穴が盲端穴である場合、固定具は、フィラメントを穴の底部に対して保持する。換言すれば、実質的に垂直の様式にて、U形状の湾曲にわたって固定具を位置させてよい。毛束のフィラメントが、実質的にU形状の構成にて固定具の周囲で湾曲する故に、各フィラメントの第1リム及び第2リムは、フィラメントの方向にて剛毛支持部から延在する。ステープル留めプロセスに使用してよい/ステープル留めプロセスおける使用に好適なフィラメントのタイプはまた、「両端フィラメント」とも称される。ステープル留めプロセスにより製造される口腔ケア器具用のヘッドは、比較的低コストかつ時間的に効率のよい様式にて提供することができる。本開示によるフィラメントの向上した形態故に、ステープル留めプロセス中に、フィラメントがブラシヘッドの取り付け表面上に突いて固定される場合に、例えば切断など、少数のフィラメントが損傷するにとどまる。更に、複数のフィラメントが突かれて1つの毛束を形成する場合に、隣接するフィラメントの外側表面上で、少数のフィラメントが絡まるにとどまる。
【0045】
あるいは、少なくとも1つの毛束は、高温の毛束付けプロセスの手段により、ヘッドに取り付け/固定されてよい。口腔ケア器具のヘッドを製造する1つの方法は、次の工程を含んでよい。第1に、本開示による所望の量のフィラメントを提供することにより、少なくとも1つの毛束を形成してよい。第2に、毛束を型穴内に定置させて、それにより、ヘッドに取り付けられると推定されるフィラメントの端部が穴内へと延在するようにしてよい。第3に、射出成形プロセスにより、ヘッド又はヘッド及びハンドルを備える口腔ケア器具の本体を、型穴内へと延在するフィラメントの端部の周囲に形成して、それにより、少なくとも1つの毛束をヘッドに定着させてよい。あるいは、射出成形プロセスにより、口腔ケア器具の残りの部分が形成される前に、型穴内へと延在するフィラメントの端部の周囲にヘッドの第1の部分-所謂「シールプレート」-を形成することにより、毛束を定着させてよい。射出成形プロセスを開始する前に、型穴内へと延在する少なくとも1つの毛束の端部を任意に溶融/融着させて、溶融密集体又は溶融球にしてフィラメントと一緒に連結させ、これにより、溶融密集体又は溶融球が穴内に配置されてよい。少なくとも1つの毛束は、口腔ケア器具の仕上げヘッド上の毛束の所望の位置に対応する盲穴を有する型支柱により、型穴内に保持されてよい。換言すれば、高温の毛束付けプロセスの手段によりヘッドに取り付けられた少なくとも1つの毛束のフィラメントは、それらの長さに沿った中間部分に折り重ならなくてよく、また固定具/ステープルを使用することによりヘッドに取り付けられなくてよい。少なくとも1つの毛束は、固定具無しの毛束付けプロセスの手段により、ヘッド上に取り付けられてよい。高温の毛束付け製造プロセスは、複雑な毛束形態を可能にする。例えば、毛束は、その自由端、即ち、その上部表面にて特定のトポグラフィー/形態を有してよく、歯の輪郭に最適に適合するように形状づけられてよく、また歯間の貫入を更に強化するように形状づけられてよい。例えば、トポグラフィーは、1つ又は2つの方向にて角がとられる若しくは丸みをつけられてよい、先が尖ってよい、又は線状、凹状若しくは凸状に形成されてよい。本開示によるフィラメントの向上した形態故に、高温の毛束付けプロセス中に、フィラメントがブラシヘッドの取り付け表面上に突いて固定される場合に、例えば切断など、少数のフィラメントが損傷するにとどまる。更に、複数のフィラメントが突かれて1つの毛束を形成する場合に、隣接するフィラメントの外側表面上で、少数のフィラメントが絡まるにとどまる。
【0046】
以下は、図面を参照した、本開示による口腔ケア器具及びその部品の代表的実施形態の非限定的な考察である。
【0047】
図1は、ハンドル12及びハンドル12から長手方向に延在するヘッド14を備える、手動式又は電動式歯ブラシ10であり得る口腔ケア器具10の、下向き斜視図を示す。ヘッド14は、ハンドル12に近い近位端部41、及びハンドル12から最も遠い、即ち、近位端部41の反対側の遠位端部40を有する。ヘッド14は、長さ延在部分52、及び長さ延在部分52に対して実質的に垂直な幅延在部分51を伴う、実質的に楕円の形状を有してよい。本開示に従った複数のフィラメント20を有する複数の毛束16は、高温の毛束付け又はステープル留めプロセスの手段によってヘッド14に固定されてもよい。毛束16は、実質的に直交する様式にて、ヘッド14の取り付け表面18から延在してよい。
【0048】
図1に示すような毛束16は、複数の端が丸められたフィラメント20を備え、それらのうち1つを
図2に示す。あるいは、フィラメント20は、長手方向軸線に沿った、実質的に円筒状の部分及び先細部分を備える、先細フィラメントであってよい。先細部分は、フィラメント20の自由端向かって先細になり、また円筒状の部分は、本開示による断面領域22を有する。複数のフィラメント20は、毛束16が、各個々のフィラメント20の形状の拡大された形状と共に断面領域32を有するような様式で配置される。換言すれば、毛束16の断面領域32の形状は、各個々のフィラメント20の断面領域22の形状に対応する。毛束16は、約40%~約60%、又は約45%~約55%の範囲内の詰込み率を有し得る。「詰込み率」は、毛束孔の断面領域により割った、フィラメント20の断面領域22の合計として定義される。
【0049】
図2は、本開示によるフィラメント20の概略断面図を示す。フィラメント20は、長手方向軸線と、長手方向軸線に対して実質的に垂直な平面にて延在する、実質的に十字形状の断面領域22と、を有する。十字形状の断面領域22は、4つの突起部24及び4つのチャネル26を有する。突起部24及びチャネル26は、交互に配置されている。各突起部24は、約6°~約25°又は約8°~約20°の範囲内の角度αにより、外向きの方向に先細になっていてもよい。
【0050】
断面領域22は、フィラメントの断面領域22の中心36を通る外径28を有する。外径28の終点は、断面領域22の最も外側の円周38上に位置する。外径28は、約0.15mm~約0.40mm、約0.19mm~約0.38mm、約0.22mm~約0.35mm、又は約0.24mm~約0.31mmの範囲内の、長さ延在部分を有する。
【0051】
更に、各チャネル26は、凹状の湾曲部34、即ち、断面領域22の中心36に向かって内側に湾曲した湾曲部を有する。凹状の湾曲部34は、2つの隣接しかつ合流する突起部24により、各チャネル26の底部において形成される。凹状の湾曲部34は、約0.015mm~約0.12mmの範囲内である半径30を有し、半径30に対する外径28の比率は、約2.5~約12の範囲内である。あるいは、半径30は、約0.03mm~約0.10mmの範囲内であり、半径30に対する外径28の比率は、約2.7~約9の範囲内である。
【0052】
各突起部は、2つの対抗する側方縁44の間に延在する延在部分42を有し、延在部分42は、フィラメント20の外径28の約6%~約15%、又は約8%~約12%の範囲で画定される。例えば、延在部分42は、約0.016mm~約0.041mm、又は約0.021mm~約0.033mmの範囲内であってもよい。各突起部24は、約0.02mmの半径46を有する湾曲部を有し、端が丸められていてもよい。
【0053】
図3は、現況技術による十字形状のフィラメント54の、概略断面図を示す。フィラメント54は、次の寸法を備える。
外径56:0.295mm
凹状の湾曲部の半径58:0.01mm
凹状の湾曲部の半径58に対する外径56の比率:29.5
突起部の先細りα:15°
端が丸められた突起部の湾曲部の半径60:0.02mm
突起部の端の丸めを開始する前の各突起部の最外側部分での幅延在部分62:0.04mm
内径64:0.1mm。
【0054】
図4は、本開示による毛束66の例示的実施形態1の概略断面図を示す。毛束66は、約49%の詰込み率を有する。毛束66のフィラメント68は、次の寸法を有する。
外径28:0.309mm
凹状の湾曲部の半径30:0.06mm
凹状の湾曲部の半径30に対する外径28の比率:5.15
突起部の先細りα:10°
端が丸められた突起部の湾曲部の半径46:0.02mm
突起部の端の丸めを開始する前の各突起部の最外側部分での幅延在部分42:0.04mm
内径70:0.12mm。
【0055】
図5は、現況技術による複数の円形形状のフィラメント74を備える毛束72の、概略断面図を示す。フィラメント74の直径は、約0.178mm(7mil)である。このような毛束72は、約77%の詰込み率を有する(比較実施例2)。
【0056】
図6は、
図3による、複数のフィラメント54を備える毛束76の、概略断面図を示す。このような毛束76は、約58%の詰込み率を有する(比較実施例3)。
【0057】
比較実験
ロボット試験:
複数のフィラメント68を備える
図4に従った毛束66(毛束の直径:1.7mm)(例示的実施形態1)、複数のフィラメント74を備える
図5に従った毛束72(毛束の直径:1.7mm)(比較実施例2)、複数のフィラメント54を備える
図6に従った毛束76(毛束の直径:1.7mm)(比較実施例3)を、人工歯(タイポドント)上での歯垢の代替除去におけるそれらの有効性に関して、比較した。
【0058】
以下の条件下でロボットシステムKUKA 3を用いて、歯磨き試験を行った(表1を参照)。
【0059】
【0060】
図7は、例示的実施形態1、比較実施例2、及び比較実施例3の歯垢の代替除去の量を、それぞれ歯の表面全体78、頬側表面80、舌側表面82、舌側及び頬側表面84、咬合表面86、歯肉線88、及び歯間表面90に関して、%にて示したものである。
【0061】
図7は、例示的実施形態1が、歯の表面全体78、頬側表面80、舌側表面82、舌側及び頬側表面84、咬合表面86、歯肉線88、及び歯間表面90に関して、比較実施例2及び3と比較して著しく向上した歯垢除去特性を提供することを、明らかに示すものである。洗浄性能の最も著しい向上は、それぞれ、22%及び9%の向上を伴って、咬合表面86上で生じた。
【0062】
スラリー取り込み試験:
図8は、本開示に従い、かつ約46%の詰込み率を有するフィラメントを含む毛束(毛束の直径:1.7mm)(例示的実施形態4)の「スラリー取り込み質量」を、ダイヤモンド形状のフィラメント(
図10を参照)を備え、かつ約80%の詰込み率を有する毛束(毛束の直径:1.7mm)(比較実施例5)の「スラリー取り込み質量」、及び比較実施例2による毛束72の「スラリー取り込み質量」と比較した図を示す。
【0063】
代表的実施例4のフィラメントは、次の寸法を有する。
外径:0.269mm
凹状の湾曲部の半径:0.05mm
凹状の湾曲部の半径に対する外径の比率:5.38
突起部の先細りα:14°
端が丸められた突起部の湾曲部の半径:0.0145mm
突起部の端の丸めを開始する前の各突起部の最外側部分での幅延在部分:0.029mm
内径:0.102mm
【0064】
比較実施例5のフィラメントは、次の寸法を有する(
図10)。
長い方の対角線長さ92:0.29mm
短い方の対角線長さ94:0.214mm
【0065】
図9は、例示的実施形態4の「スラリー取り込み速度」を、比較実施例2及び5の「スラリー取り込み速度」と比較した図を示す。
【0066】
試験の説明
代表的実施形態4並びに比較実施例2及び5による毛束を備えるブラシヘッドを、フィラメントが下向きに尖った水平位置にて固定した。練り歯磨きスラリーの皿(練り歯磨き:水=1:3)を、はかりと共に、ブラシヘッド直下に定置させた。このスケールを用いて、皿内のスラリー量を測定した。試験が開始されると、ブラシは100mm/sで下方に移動し、かつスラリー中に2mmの深さで浸液した。次に、ブラシを練り歯磨きスラリー中で5秒間保持して、再び100mm/分で引き上げた。この垂直方向の力を、時間の経過に伴って測定した。
【0067】
図8及び9は、比較実施例2及び5と比較して、質量及び速度の観点から、例示的実施形態4が著しく向上した「スラリー取り込み」を提供することを明らかに示している。代表的実施形態4の毛束内の増大した空隙容量は、向上した毛管作用を可能にする。これは練り歯磨き(スラリー)の取り込み量の増大をもたらし、これにより、練り歯磨きが、歯磨きプロセスにより長く相互作用を与える/寄与することになる。代表的実施形態4の毛束は、約50%速い取り込み速度にて、約50%多い練り歯磨きスラリーを吸収することが可能であり、これは向上した歯の洗浄効果をもたらす。換言すれば、より多くの練り歯磨きを歯磨きプロセスへと送達するのみならず、代表的実施形態4の毛束内の特定の空隙容量はまた、緩んだ歯垢の向上した取り込みをも可能にする。これは、より低い詰込み率を可能にする本開示による十字形状のフィラメントを備える歯ブラシの全体的な向上した臨床性能をもたらす。
【0068】
本開示との関連では、用語「実質的に」とは、理論上は正確な一致又は挙動を示すことが期待されるが、実際にはわずかに正確ではないものとして具体化され得る要素又は機構の構成を意味する。そのようなものであるから、本用語は、定量的な値、測定値、又はその他の関連する表現が、問題とされる対象物の基本的機能に変化をもたらすことなく、記載される基準から変動し得る程度を示すものである。
【0069】
本明細書にて開示した寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に指示がない限り、このような各寸法は、記載された値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することが意図される。例えば「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。