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特許7126954防汚性物品の製造方法、粉体コーティングを備えた物品、及び粉体コーティング組成物
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  • 特許-防汚性物品の製造方法、粉体コーティングを備えた物品、及び粉体コーティング組成物 図1
  • 特許-防汚性物品の製造方法、粉体コーティングを備えた物品、及び粉体コーティング組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】防汚性物品の製造方法、粉体コーティングを備えた物品、及び粉体コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20220822BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20220822BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20220822BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220822BHJP
   E04B 1/62 20060101ALI20220822BHJP
   E04C 2/00 20060101ALI20220822BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/03
C09D5/16
C09D7/63
E04B1/62 Z
E04C2/00
E04F13/08 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018567825
(86)(22)【出願日】2017-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 US2017040051
(87)【国際公開番号】W WO2018005827
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-29
(31)【優先権主張番号】62/356,154
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/468,707
(32)【優先日】2017-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】300045352
【氏名又は名称】アームストロング ワールド インダストリーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】マシア、スティーブン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ミシェル エックス.
(72)【発明者】
【氏名】コールドウェル、ケネス ジー.
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-126735(JP,A)
【文献】特表2004-535485(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104119776(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0092862(US,A1)
【文献】特開昭56-024467(JP,A)
【文献】特開2013-159791(JP,A)
【文献】特開2013-159621(JP,A)
【文献】米国特許第06398862(US,B1)
【文献】特開昭60-210676(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101143993(CN,A)
【文献】特表2018-524443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C09D 5/03
C09D 5/16
C09D 7/63
E04B 1/62
E04C 2/00
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防汚性物品の製造方法において、
a)液体担体、アニオン性フッ素系界面活性剤、及びポリマーバインダを含有する混合物を混合する工程と、b)前記混合物を乾燥させて、液体担体を実質的に含有しない粉体コーティング前駆体混合物を形成する工程と、c)前記粉体コーティング前駆体混合物を基材に塗布する工程と、d)前記粉体コーティング前駆体混合物を硬化して、前記防汚性物品を形成する工程とを備え、工程a)の混合が、前記アニオン性界面活性剤及び前記ポリマーバインダの溶融温度未満の温度で行われ、
前記アニオン性界面活性剤は13~15%の固形含量を有する液体系アニオン性フッ素系界面活性剤である、防汚性物品の製造方法。
【請求項2】
前記温度が、48.9℃(120°F)未満である、請求項1に記載の防汚性物品の製造方法。
【請求項3】
工程b)中、前記ポリマーバインダ及びアニオン性界面活性剤が、90℃~110℃の範囲の温度で、押出機中で混合される、請求項1又は2に記載の防汚性物品の製造方法。
【請求項4】
工程b)の後かつ工程c)の前に、前記粉体コーティング混合物がペレット化される、請求項3に記載の防汚性物品の製造方法。
【請求項5】
前記アニオン性フッ素系界面活性剤が、前記粉体コーティング前駆体混合物の総重量を基準にして、約0.05重量%~約4重量%の範囲の量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の防汚性物品の製造方法。
【請求項6】
前記ポリマーバインダが、45℃~80℃の範囲のガラス転移温度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の防汚性物品の製造方法。
【請求項7】
前記アニオン性界面活性剤及び前記液体担体が、前記ポリマーバインダと組み合わされる前に一緒に予め混合される、請求項1~6のいずれか一項に記載の防汚性物品の製造方法。
【請求項8】
前記液体担体が水である、請求項1~7のいずれか一項に記載の防汚性物品の製造方法。
【請求項9】
前記粉体コーティング前駆体混合物が、約160℃~約210℃の範囲の温度で硬化される、請求項1~8のいずれか一項に記載の防汚性物品の製造方法。
【請求項10】
基材に塗布された粉体コーティングを備えた物品において、前記粉体コーティングが、ポリマー樹脂と、架橋剤と、液体担体及びフッ素系界面活性剤のブレンドとを含有する前駆体から形成され、前記フッ素系界面活性剤は13~15%の固形含量を有する液体系アニオン性フッ素系界面活性剤であり、
前記フッ素系界面活性剤が少なくとも1つのリン酸基を有し、1~5のpH値、及び50℃~70℃の溶融温度を有する、物品。
【請求項11】
前記液体担体が水である、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
ポリマー樹脂と、
架橋剤と、
液体担体と、
イオン性のフッ素系界面活性剤とのブレンドを含有し、
前記イオン性のフッ素系界面活性剤は13~15%の固形含量を有する液体系アニオン性フッ素系界面活性剤であり、
前記ブレンドはPVDFポリマーを実質的に含まない、粉体コーティング組成物。
【請求項13】
前記液体担体は水である、請求項12に記載の粉体コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築用パネル用高性能コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
ある種のフッ化炭素含有ポリマー及びシロキサン含有ポリマーが、塗料及び他の溶剤型コーティングに撥汚性を加えることが可能であり得ることは公知である。以前は、得られるコーティングの所望の防汚性を得るために、大量のこのようなフッ化炭素及びシロキサン含有ポリマーが、全配合物によって必要とされた。しかしながら、このような配合物中のフッ化炭素及び/又はシロキサン含有ポリマーの量を増加させることは、下層の基材又は表面に対するコーティングの結合強度を抑制する。したがって、コーティングの露出面の撥汚性と、下層の基材に付着するコーティングの能力との間の得られるバランスが損なわれた。したがって、下層の基材に対する結合強度を損なわないまま、所望の露出面の撥性(repellency)を達成する撥汚性コーティング(具体的には、土や汚れを弾くコーティング)を提供することが必要とされている。粉体コーティング系は、このような防汚性から利益を得ることができるが、典型的な塗料及びコーティングと異なり、それは、無溶媒系であることが望ましいというさらなる制限を有する。
【0003】
さらに、屋内及び屋外の表面における微生物増殖(真菌及び細菌の両方を含む)は、現在、家庭、仕事及び娯楽環境に影響を与える大きな環境問題である。このような微生物増殖は、露出面において見苦しいだけでなく、処理せずに放置すると、下層の基材を破壊し、建築物及び他の構造物及び設備に深刻な被害を与え得る。ここ数年間、ある種の細菌及び真菌(又はそれらの胞子)への曝露が、人、ペット及び他の動物の健康に深刻な影響を与え得ることがますます明らかになっている。建築用パネルに抗菌性を与える以前の試みは、建築材料の表面に抗菌性コーティングを塗布することを含んでいた。しかしながら、このような以前の抗菌性コーティングは、コーティングに十分な抗菌活性を与えるために比較的大量の抗菌性添加剤を必要としたため、このようなコーティングは、高価になるだけでなく、コーティングの審美的特性を損なう可能性があった。さらに、このようなコーティングは、あるタイプの溶媒を用いて湿潤状態で塗布される必要があるため、限られた数の基材への塗布の可能性をなくす。したがって、減少した量の抗菌性添加剤で十分な抗菌性能を示すことができるコーティングが必要とされている。溶媒を必要とせずに塗布され得るこのような抗菌性コーティングも必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、基材と;基材に塗布されたポリマー粉体コーティングであって、下面と反対側の上面を有する粉体コーティングと;ポリマー粉体コーティングの上面に塗布された上塗りであって、約0.01g/m~約4g/mの範囲の量でポリマー粉体コーティングの上面上に存在するフルオロ含有撥性成分を含む上塗りとを含む物品に関する。
【0005】
本発明の他の実施形態は、撥汚性物品を形成するための方法であって、a)粉体コーティングが塗布された基材を提供する工程と、b)フッ素系界面活性剤及び液体担体を含む液体系コーティング組成物を、粉体コーティングに塗布する工程と;c)液体系コーティング組成物を乾燥させ、それによって、液体担体を蒸発させて、防汚性物品を形成する工程とを含む方法を含む。
【0006】
本発明の他の実施形態は、基材と;基材に塗布された粉体コーティングであって、下面と反対側の上面を有し、かつ第1のフッ素系界面活性剤を含む粉体コーティングと;粉体コーティングの上面に塗布された第1のフッ素系界面活性剤と異なる第2のフッ素系界面活性剤とを含む物品を含む。
【0007】
本発明の他の実施形態は、防汚性物品を形成する方法であって、a)液体担体、アニオン性フッ素系界面活性剤、及びポリマーバインダを含む混合物を混合する工程と;b)その後、混合物を乾燥させて、液体担体を実質的に含まない粉体コーティング前駆体混合物を形成する工程と、c)続いて、粉体コーティング前駆体混合物を、基材に塗布する工程と;d)その後、粉体コーティング前駆体混合物を硬化して、防汚性物品を形成する工程とを含み、ここで、工程a)の混合が、アニオン性界面活性剤及びポリマーバインダの溶融温度未満の温度で行われる方法を含む。
【0008】
本発明の他の実施形態は、防汚性物品を形成する方法であって、a)第1の期間にわたって、液体担体、アニオン性フッ素系界面活性剤、及びポリマーバインダを含む混合物を混合した後、第2の期間にわたって、混合物の混合を停止して、混合サイクルを完了させる工程と、b)混合サイクルを繰り返す工程と、c)混合物を乾燥させて、液体担体を実質的に含まない粉体コーティング前駆体混合物を形成する工程とを含み、ここで、第1の期間対第2の期間の比率が、約1:1~約1:20の範囲である方法を含む。
【0009】
他の実施形態において、本発明は、基材と、基材に塗布された粉体コーティングとを含む抗菌性建築用パネルであって、粉体コーティングが、架橋ポリマーバインダ及び金属ホウ酸塩と硫黄含有ベンズイミダゾール化合物とのブレンドを含み、ここで、金属ホウ酸塩及び硫黄含有ベンズイミダゾール化合物が、約75:1~約10:1の範囲の重量比で存在する抗菌性建築用パネルを含む。
【0010】
本発明の他の実施形態は、基材と、基材に塗布された粉体コーティングとを含む抗菌性建築用パネルであって、粉体コーティングが、架橋ポリマーバインダ、金属ホウ酸塩と硫黄含有ベンズイミダゾール化合物とのブレンドを含み、ここで、ブレンドが、粉体コーティングの100重量部を基準として、約5重量部~約15重量部の範囲の総量で存在する抗菌性建築用パネルを含む。
【0011】
本発明の他の実施形態は、抗菌性建築用パネルを形成する方法であって、a)粉体コーティング前駆体を、基材に塗布する工程と;b)粉体コーティング前駆体を硬化して、基材上に架橋された粉体コーティングを形成する工程とを含み、ここで、粉体コーティング前駆体が、ポリマー樹脂、架橋剤、金属ホウ酸塩、及び硫黄含有ベンズイミダゾール化合物を含み、粉体組成物が、約100%の固形分を有する方法を含む。
【0012】
本発明の他の実施形態は、ポリマー樹脂、架橋剤;及び金属ホウ酸塩と硫黄含有ベンズイミダゾール化合物とのブレンドを含む抗菌性コーティング組成物であって、金属ホウ酸塩及び硫黄含有ベンズイミダゾール化合物が、約75:1~約10:1の範囲の重量比で存在する抗菌性コーティング組成物を含む。
【0013】
本発明の他の実施形態は、ポリマー樹脂、架橋剤;及び金属ホウ酸塩と硫黄含有ベンズイミダゾール化合物とのブレンドを含む抗菌性コーティング組成物であって、ブレンドが、抗菌性コーティング組成物の100重量部を基準にして、約5重量部~約15重量部の範囲の総量で存在する抗菌性コーティング組成物を含む。
【0014】
他の実施形態において、本発明は、基材と;下面と反対側の上面を有する粉体コーティングであって、下面が基材に面する粉体コーティングと;粉体コーティングの上面に塗布されたカチオン性フッ素系界面活性剤とを含む物品であって;粉体コーティングが、ポリマーバインダ、架橋剤、アニオン性フッ素系界面活性剤、及び液体担体を含む前駆体から形成される物品を含む。
【0015】
本発明の他の実施形態は、粉体コーティング及びフルオロ含有撥性成分を含む組成物を含む防汚性物品であって、粉体コーティングが、ポリマー樹脂、架橋剤及びフルオロ含有撥性成分と異なるアニオン性フッ素系界面活性剤から形成される防汚性物品を含む。
【0016】
基材に塗布された粉体コーティングを含む物品であって、粉体コーティングが、ポリマー樹脂、架橋剤、及び液体担体とフッ素系界面活性剤とのブレンドを含む前駆体から形成される物品。
【0017】
本発明の塗布可能性のさらなる分野は、以下に示される詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明及び具体例は、本発明の好適な実施形態を示すが、例示のためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定することは意図されていないことが理解されるべきである。
【0018】
本発明は、詳細な説明及び添付の図面からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る物品の斜視図である。
図2】本発明に係る物品の断面図であり、図1に記載される線IIに沿った断面図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る物品の断面図であり、図1に記載される線IIに沿った断面図である。
図4】本発明の物品パネルを含む建築システムである。
図5】本発明の代替的な実施形態に係る建築システムの斜視図である。
図6】本発明に係る天井システム1の一部の側面輪郭図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
好適な実施形態の以下の説明は、例示的な性質のものに過ぎず、本発明、その用途、又は使用を限定することは決して意図されていない。
全体を通して使用される際、範囲は、この範囲内のあらゆる値を表すために簡略化した表現として使用される。この範囲内の任意の値は、この範囲の終点として選択され得る。さらに、本明細書に引用される全ての参考文献は、全体が参照により本明細書に援用される。本開示における定義と、引用される参考文献における定義との間に矛盾がある場合、本開示が優先される。
【0021】
特に規定されない限り、ここ及び本明細書中の他の箇所において表される全てのパーセンテージ及び量は、重量パーセンテージを指すことが理解されるべきである。示される量は、材料の有効重量(active weight)に基づいている。
【0022】
本発明の原理にしたがう例示的な実施形態の説明は、本明細書全体の一部であると見なされるべきである添付の図面に関連して読まれることが意図される。本明細書に開示される本発明の実施形態の説明において、方向又は向きへのいずれの言及も、説明の利便性のためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定することは決して意図されていない。「下側の(lower)」、「上側の(upper)」、「水平な」、「垂直な」、「上(above)」、「下(below)」、「上へ(up)」、「下へ(down)」、「上部(top)」、及び「下部(bottom)」などの相対的な用語ならびにそれらの派生語(例えば、「水平に」、「下方に」、「上方に」など)は、そのときに記載される又は説明されている図面に示される向きを指すものと解釈されるべきである。これらの相対的な用語は、説明の利便性のためのものに過ぎず、それ自体明確に示されない限り、装置が、特定の向きで構成又は操作されることを必要としない。
【0023】
「結合された(attached)」、「取り付けられた(affixed)」、「接続された(connected)」、「連結された(coupled)」、「相互に接続された(interconnected)」などの用語、及び類似の用語は、特に明記されない限り、構造が、直接か、又は介在する構造、ならびに可動式又は固定式の両方の結合又は関係を介して間接的に互いに対して固定又は結合された関係を指す。さらに、本発明の特徴及び利益が、例示される実施形態の参照によって示される。したがって、本発明は、明白に、単独で又は特徴の他の組合せで存在し得る特徴のいくつかの可能な非限定的な組合せを示すこのような例示的実施形態に限定されるべきではなく;本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【0024】
特に規定されない限り、ここ及び本明細書中の他の箇所において表される全てのパーセンテージ及び量は、重量パーセンテージを指すことが理解されるべきである。示される量は、材料の有効重量に基づいている。本出願によれば、「約」という用語は、参照値の+/-5%を意味する。本出願によれば、「を実質的に含まない」という用語は、参照値の合計を基準にして約0.1重量%未満を意味する。
【0025】
本発明は、1つ又は複数のコーティングを、3次元基材の表面に塗布することによって形成される、3次元物体に存在する1つ又は複数の防汚性及び/又は抗菌性表面を有する物品に関する。本発明の物品を形成する基材は、少なくとも5分間の期間にわたって約210℃までの温度でその形状を保持し得る3次元物体であること以外は決して限定されない。物品の非限定的な例としては、建築用パネル、換気口、ドア、窓のカバー(例えば、ブラインド)、ならびに車、列車、又は家の他の表面などが挙げられる。限定はされないが、本出願は、建築用パネルとしての物品を指す。当然ながら、本出願の物品は、3次元物体としての建築用パネルに限定されない。
【0026】
図1を参照すると、本発明の建築用パネル100は、第2の主面112の反対側の第1の主面111を含み得る。建築用パネル100は、第1の主面111と第2の主面112との間に延在し、それによって、建築用パネル100の周囲を画定する側面113をさらに含み得る。
【0027】
図4を参照すると、本発明は、内部空間に取り付けられる建築用パネル100の1つ又は複数を含む天井システム1をさらに含んでいてもよく、それによって、内部空間は、天井懐空間3及び有効な部屋環境2を含む。天井懐空間3は、建築物内の機械的な管路(mechanical line)(例えば、HVAC、配管など)のための空間を提供する。有効な空間2は、建築物の通常の目的の使用の際、建築物入居者のための空間を提供する(例えば、オフィスビルでは、有効な空間は、コンピュータ、照明器具などを含むオフィスによって占められるであろう)。取り付けられた状態で、建築用パネル100の第1の主面111は、有効な部屋環境2に面し、建築用パネル100の第2の主面112は、天井懐空間3に面する。
【0028】
ここで、図1~3を参照すると、本発明の建築用パネル100は、第1の主面111から第2の主面112まで測定した際のパネル厚さtを有し得る。パネル厚さtは、約5mm~約50mmの範囲であり得る(その間の全ての値及び部分範囲を含む)。建築用パネル100は、約30cm~約190cmの範囲の長さ(その間の全ての値及び部分範囲を含む)を有し得る。建築用パネル100は、約1cm~約121cmの範囲の幅(その間の全ての値及び部分範囲を含む)を有し得る。
【0029】
図2及び3を参照すると、建築用パネル100は、下面122の反対側の上面121、及び上面121と下面122との間に延在し、それによって、基材120の周囲を画定する基材側面123を有する基材120を含み得る。基材120は、基材120の上面121から下面122まで延在する基材厚さtを有し得る。基材厚さtは、約5mm~約50mmの範囲であり得る(その間の全ての値及び部分範囲を含む)。
【0030】
基材120は、金属、プラスチック、セラミック、複合材料、又はそれらの組合せであり得る。ある実施形態において、金属基材は、アルミニウムパネル又は鋼パネル(亜鉛めっき鋼を含む)であり得る。ある実施形態によれば、金属基材は、鉄、鋼、アルミニウム、スズ、及びそれらの合金などの材料から選択され得る。基材120は、建築用パネル用途に好適な任意の好適な寸法を含み得る。基材は、建築用パネル用途に好適な任意の好適な寸法を含み得る。
【0031】
建築用パネル100は、下面132の反対側の上面131、及び上面131と下面132との間に延在し、それによって、第1のコーティング130の周囲を画定する第1のコーティング側面133を有する第1のコーティング130を含み得る。第1のコーティング130は、第1のコーティング130の上面131から下面132まで延在する第1のコーティング厚さtを有し得る。第1のコーティング厚さtは、約50μm~約120μmの範囲であり得る(その間の全ての値及び部分範囲を含む)。
【0032】
第1のコーティング130は、基材120の上面121に直接塗布され得る。具体的には、第1のコーティングの下面132は、基材120の上面121に接触し、それに結合され得る。他の実施形態において、基材120と第1のコーティング130(図示せず)との間に1つ又は複数の介在するコーティング又は層があってもよい。
【0033】
第1のコーティング130は、少なくとも1つのポリマーバインダ及び任意選択的に1つ又は複数の添加剤を含む粉体コーティング(本明細書において「ポリマー粉体コーティング」としてさらに説明される)であり得る。第1のコーティング130は、本明細書において中間コーティングとも呼ばれ得る。第1のコーティング130は、第1のコーティング130の上面131から下面132に向かって延在し、それによって、第1のコーティング130上に間隙を生じる表面欠陥135(窪み、溝、細孔、亀裂、ピンホールなど)を含み得る。具体的には、表面欠陥135は、第1のコーティング130の上面131から下面132に向かって測定した際の第1のコーティング厚さtの約1%~約99%の範囲の深さ(その間の全てのパーセンテージ及び部分範囲を含む)まで延在し得る。
【0034】
建築用パネル100は、下面142の反対側の上面141、及び上面141と下面142との間に延在し、それによって、第2のコーティング140の周囲を画定する第2のコーティング側面143を有する第2のコーティング140を含み得る。第2のコーティング140は、本明細書にさらに説明されるように、少なくとも1つのフッ素系界面活性剤及び/又はフルオロポリマー及び液体担体を含む液体系コーティングとして塗布され得る。第2のコーティング140は、本明細書において「上塗り」とも呼ばれ得る。
【0035】
ここで、図2を参照すると、第2のコーティング140は、第1のコーティング130の上面131に直接塗布されて、連続した第2のコーティング140を形成し得る。具体的には、第2のコーティングの下面142は、第1のコーティング130の上面131に接触し、それに結合され得る。第1のコーティング130は、第2のコーティング140と基材120との間に中間コーティングを形成し得る。
【0036】
第2のコーティング140は、本明細書にさらに説明されるように、第2のコーティング140の下面142の下方に、下面142を越えて延在し、それによって、第1のコーティング130の表面欠陥135によって生じる間隙を充填する充填部分145を含み得る。第2のコーティング140は、実質的に連続しており、それによって、建築用パネル100上に実質的に連続した上塗りを形成し得る。第1のコーティング130の上の第2のコーティング140は、第1のコーティング130上に存在する表面欠陥135を少なくとも部分的に封止して、第1のコーティング130の上面131より比較的平滑な第1の主面111を提供し得る。この実施形態によれば、建築用パネル100の第1の主面111は、第2のコーティング140の上面141を含む(そして、建築用パネル100の第2の主面112は、基材120の下面122を含み得る)。
【0037】
ここで、図3を参照すると、代替的な実施形態において、第2のコーティング140は、第1のコーティング130の上面131に直接塗布されて、不連続の第2のコーティング140を形成し得る。具体的には、第2のコーティングの下面142は、第1のコーティング130の上面131に接触し、それに結合され得、第1のコーティング130は、第2のコーティング140と基材120との間に部分的中間コーティングを形成し得る。「部分的中間コーティング」という用語は、不連続の第2のコーティング140の上面141ならびに第2のコーティング140の不連続性によって露出される第1のコーティング130の上面131の部分の両方を含む、建築用パネルの第1の主面111を指す。建築用パネル100の第2の主面112は、基材120の下面122を含み得る。
【0038】
第1のコーティング130の組成物に関して、第1のコーティング130は、バインダー組成物と架橋剤との高固形分混合物を含む粉体コーティング前駆体(本明細書において「前駆体」又は「前駆体混合物」と呼ばれる)から形成され得る。前駆体混合物は、高温で硬化されて、本明細書に説明される完全に硬化された粉体コーティングを形成し得る。本発明によれば、「硬化する」及び「架橋する」という用語は、同義的に使用され得る。ある実施形態において、前駆体混合物は、100%の固形分を有し、溶媒を実質的に含まない。
【0039】
バインダー組成物は、硬化中に架橋剤と反応して、完全に硬化されたポリマーマトリクス組成物を形成することが可能なポリマー樹脂であるポリマーバインダを含み得る。ある実施形態によれば、本発明のポリマー樹脂は、ガラス転移温度、分子量、官能性、溶融粘度、ならびに膜形成及び平滑化(leveling)特性を含む特定の材料特性を有する。上述された材料特性を適切に考慮せずに、望ましくないポリマー樹脂を選択することは、得られる前駆体混合物が、不十分な貯蔵寿命及び処理中の不十分な流動特性を示すことがあり、得られる粉体コーティングが、不十分な膜形成特性を示して、コーティングを使用不可能にし得るため、粉体コーティングに適していない組成物をもたらし得る。
【0040】
ポリマー樹脂は、室温を超える、好適には、少なくとも約20℃のガラス転移温度(Tg)を有する少なくとも1つのポリマー組成物を含み得るべきである。ポリマー樹脂は、約45℃~約80℃の範囲のTgを有し得る。ポリマー樹脂は、室温を超える、好適には、少なくとも約50℃のガラス転移温度(Tg)を有する少なくとも1つのポリマー組成物を含み得るべきである。ポリマー樹脂は、約50℃のTgを有し得る。ポリマー樹脂は、約60℃のTgを有し得る。ポリマー樹脂は、約70℃のTgを有し得る。ポリマー樹脂は、約90℃~約150℃の範囲の処理温度を有し得る。「処理温度」という用語は、ポリマー樹脂と架橋剤との間の架橋を開始させずに加熱され得る、ポリマー樹脂の温度を指す。
【0041】
バインダー組成物は、本明細書に説明される硬化中に架橋剤と反応し、それによって、完全に硬化されたマトリクス組成物を形成し得るポリマー樹脂を含み得る。本発明のポリマー樹脂は、ガラス転移温度、分子量、官能性、溶融粘度、ならびに膜形成及び平滑化特性を含む特定の材料特性を有し得る。上述された材料特性を適切に考慮せずに、望ましくないポリマー樹脂を選択することは、得られる前駆体混合物が、不十分な貯蔵寿命及び処理中の不十分な流動特性を示すことがあり、得られる粉体コーティングが、不十分な膜形成特性を示して、コーティングを使用不可能にし得るため、粉体コーティングに適していない組成物をもたらし得る。
【0042】
低過ぎるTgを有するポリマー樹脂を選択することは、混合物の貯蔵及び/又は輸送中の焼結及び凝集に抵抗することができず、それによって、前駆体混合物の貯蔵寿命を損なう前駆体混合物をもたらし得る。逆に、粉体コーティングは、高固形分を有するため、高過ぎるTgを有するポリマー樹脂を選択することは、処理中の十分な流動又は塗布後の平滑化特性を示さない前駆体混合物をもたらし、それによって、不均一に塗布された粉体コーティング組成物をもたらし得る。ポリマー樹脂のTgは、限定はされないが、本明細書に説明される、分子量、ポリマー骨格のタイプ、及び結晶化度を含むいくつかのパラメータの選択によって制御され得る。
【0043】
ポリマー樹脂の流動特性は、溶融粘度によって測定される。高固形分(好適には、100%の固形分、溶媒を含まない)で、低い溶融粘度を得ることは、処理中にポリマー樹脂の最大流れを確保するための考慮事項である。ポリマー樹脂が、混合及び硬化(本明細書に説明される)中に処理される際、ポリマー樹脂は、前駆体混合物中に存在する、架橋剤とも呼ばれる硬化剤と反応し始め、それによって、前駆体混合物が完全に硬化された粉体コーティングになる際、前駆体混合物の粘度の著しい増加を生じる。したがって、低い溶融粘度を示すポリマー樹脂を用いることは、前駆体混合物が、完全に硬化された粉体コーティングに達する架橋度に達する前に、前駆体混合物が、混合され、処理ユニット(本明細書に説明される)を通って流れるのに十分な時間があることを確実にするのに役立ち得る。ポリマー樹脂の溶融粘度は、本明細書に説明される、分子量、官能性、及びポリマー骨格のタイプを含むいくつかの要因の結果である。ポリマー樹脂及び全前駆体混合物の具体的な溶融粘度は、本明細書に説明される。
【0044】
ポリマー樹脂は、約1,500~15,000の範囲の重量平均(Mw)分子量(その間の全ての部分範囲及び分子量を含む)を有する少なくとも1つのポリマー組成物を含み得る。ポリマー樹脂は、約15,000~30,000の範囲の重量平均(Mw)(その間の全ての部分範囲及び分子量を含む)を有し得る。ポリマー樹脂の分子量は、粉体コーティングの柔軟性(flexibility)、衝撃強度、及び加工性(すなわち、溶融粘度)に影響を与え得る。より高い分子量(Mw)を有するポリマー樹脂は、より低い分子量(Mw)のポリマー樹脂と比較して、より高い溶融粘度を示し得る。
【0045】
ポリマー樹脂は、約1,500~約15,000の範囲の分子量(Mw)を有し得、約1の多分散性を有する(その間の全ての部分範囲及び分子量を含む)。多分散性は、ポリマー組成物の数平均(Mn)分子量に対する重量平均(Mw)分子量の比率である。約1の多分散性を有することは、得られる粉体コーティングの物理的特性(すなわち、柔軟性、衝撃強度)が、処理中に前駆体混合物の所望の低い溶融粘度を犠牲にせずに最大化されることを確実にし得る。低い溶融粘度は、本発明のある実施形態に係る粉体コーティングに必要とされ得るように、高固形分(好適には無溶媒)で前駆体混合物を処理する場合に好適である。
【0046】
本発明の粉体コーティングを形成する3次元の架橋ポリマー網目構造の形成は、ポリマー樹脂が、架橋剤上に存在する官能基と反応するために利用可能な平均して少なくとも2つの官能基を有するポリマーを含むことを必要とし得る。ある実施形態において、ポリマー樹脂は、2~10個の官能基の範囲の、官能基の平均数を有し得る。ある実施形態において、ポリマー樹脂は、直鎖状又は分枝鎖状の骨格を有し得、官能基の配置は、ポリマー樹脂の骨格のタイプに応じて決まる。ある実施形態において、ポリマー樹脂は、ポリマーの末端に位置する2~4つの官能基を有する直鎖状ポリマーである。ポリマー樹脂の官能基は、ヒドロキシル基、カルボン酸基、イソシアネート基、エポキシ基、アクリル基及びそれらの組合せから選択され得る。ある実施形態において、ポリマーバインダの官能基は、本明細書に説明されるように、一時的にブロックされ得る。
【0047】
本発明のある実施形態によれば、ポリマー樹脂は、エステル基、ウレタン基、炭酸基、エポキシ基及びそれらの組合せから選択される部分を有する骨格を有するポリマーを含み得る。
【0048】
ポリマー樹脂及び架橋剤は、ある架橋密度を有するポリマーマトリクスを形成するように、硬化中に反応する。架橋ポリマーマトリクスの架橋密度は、架橋ポリマーマトリクスのガラス転移温度(約150℃~約300℃の範囲であり得る)(その間の全ての温度及び部分範囲を含む)によって反映され得る。
【0049】
バインダー組成物は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びポリエステル-ウレタンアクリレート樹脂から選択されるポリマー樹脂を含み得る。好適なポリエステル樹脂は、ヒドロキシル官能性(OH)又はカルボキシル官能性(COOH)であり得る。ポリエステル樹脂は、ポリカルボン酸及びポリオールの反応生成物であり得る。本発明の趣旨では、ポリカルボン酸という用語は、少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物を含む。本発明の趣旨では、ポリオールという用語は、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物を含む。ヒドロキシル官能性ポリエステルの場合、ポリオールは、ポリカルボン酸に対して、2:1~6:1の範囲のOH:COOHの化学量論的過剰量で存在する。過剰なポリオールは、過剰なヒドロキシル基を、エステル化反応中に消費されないままにしながら、全ての遊離カルボン酸基が消費されることを確実にする。ヒドロキシル基は、ポリエステルの末端に存在し得る。カルボキシル官能性ポリエステルの場合、ポリカルボン酸は、ポリオールに対して、2:1~6:1の範囲のCOOH:OHの化学量論的過剰量で存在する。過剰なポリカルボン酸は、過剰なカルボン酸基を、エステル化反応中に消費されないままにしながら、全ての遊離ヒドロキシル基が消費されることを確実にする。カルボン酸基は、ポリエステルの末端に存在し得る。
【0050】
ポリエステル樹脂を形成するためのヒドロキシル官能性及びカルボキシル官能性化合物の縮合反応は、触媒によって補助され得る。ある非限定的な実施形態において、触媒は、N-メチルイミダゾール、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン及びペンタメチルジエチレントリアミン及びそれらの混合物から選択され得る。好適なエステル化触媒の他の例としては、o-チタン酸テトラブチル、オクタン酸第一スズ(stannous octoate)、p-トルエンスルホン酸、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0051】
非限定的な実施形態において、ポリオールは、ジオール、トリオール、又は4~8つのヒドロキシル基を有するより高い官能性のポリオール(例えばテトロール)であり得る。ある実施形態において、ポリオールは、芳香族、脂環式、脂肪族、又はそれらの組合せであり得る。ある実施形態において、カルボキシル官能性化合物は、ジカルボン酸、トリカルボン酸、4~8つのカルボン酸基を有するより高い官能性のポリカルボン酸、又はそれらの組合せである。ある実施形態において、ポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、又はそれらの組合せであり得る。
【0052】
ポリオールの非限定的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール;水素化ビスフェノールA;シクロヘキサンジオール;1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、及び2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオールを含むプロパンジオール;1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、及び2-エチル-1,4-ブタンジオールを含むブタンジオール;トリメチルペンタンジオール及び2-メチルペンタンジオールを含むペンタンジオール;シクロヘキサンジメタノール;1,6-ヘキサンジオールを含むヘキサンジオール;ヒドロキシ-アルキル化ビスフェノール;ポリエーテルグリコール、例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールから選択されるジオールが挙げられる。ある実施形態において、ポリオールは、トリオール、又はトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジ-ペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールブタン、ジメチロールシクロヘキサン、グリセロールなどから選択されるより高級のポリオールであり得る。
【0053】
ポリカルボン酸の非限定的な例としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、デカン酸、ドデカン酸、フタル酸、イソフタル酸、5-tert-ブチルイソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、ジメチルテレフタレート、2,5-フランジカルボン酸、2,3-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、2,3,5-フラントリカルボン酸、2,3,4,5-フランテトラカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及びそれらの無水物、ならびにそれらの混合物から選択されるジカルボン酸が挙げられる。ある実施形態において、ポリカルボン酸は、トリメリット酸などのトリカルボン酸及びそれらの無水物から選択され得る。
【0054】
粉体コーティング組成物用のポリウレタン樹脂の非限定的な例は、例えば、米国特許第4,404,320号明細書、及び米国特許第4,246,380号明細書に開示されている。好適なポリエステル-ウレタンアクリレートは、例えば、米国特許第6,284,321号明細書に開示されている。粉体コーティング組成物に好適なエポキシ化合物は、例えば、米国特許第5,732,052号明細書に開示されている。
【0055】
ポリエステル樹脂を作製するのに使用される反応剤の具体的なタイプ及び量は、ポリマー樹脂の溶融粘度、結晶化度、及びTgに影響を与え得る。具体的には、芳香族及び/又は脂環式モノマーは、高Tgポリマーをもたらし、長鎖脂肪族モノマーは、より低いTgのポリマーをもたらす。例えば、テレフタル酸/イソフタル酸に由来する骨格中にかなりのレベルのエステル基を有するポリエステル樹脂が、ある量のテレフタル酸/イソフタル酸を、アジピン酸で置き換え、それによって、ポリエステル樹脂をより柔軟にし、より低い温度でより流動しやすくすることによって低下されるそのTgを有し得る。しかしながら、過剰な量のアジピン酸で置き換えると、粉体コーティング配合物に使用するには低過ぎるTgを有するポリエステルをもたらすことになる。
【0056】
非限定的な実施形態において、ポリマー樹脂は、100%の固形分を有し得(すなわち、溶媒を含まない)、200℃で2,000mPa/秒~5,000mPa/秒の範囲の溶融粘度(その間の全ての部分範囲及び整数を含む)を有する。非限定的な実施形態において、ポリマー樹脂は、約50℃~約70℃の範囲のTgを有し得る。ある実施形態において、ポリマー樹脂は、ヒドロキシル官能性であり得、約40~約300の範囲のヒドロキシル価を有し得る。好適なヒドロキシル官能性ポリマー樹脂の非限定的な例としては、市販のポリマック(Polymac)3110及び/又はルコート(Rucote)102などのヒドロキシル官能性ポリエステル樹脂が挙げられる。ある実施形態において、ポリマー樹脂は、カルボキシル官能性であり得、30~50の範囲の酸価を有し得る。
【0057】
本発明のある実施形態によれば、架橋剤は、少なくとも2つの官能基を有する少なくとも1つの低分子量化合物を含む。架橋剤は、2~6つの官能基を含み得る。代替的な実施形態において、架橋剤は、2~4つの官能基を含み得る。架橋剤の官能基は、ヒドロキシル基、カルボン酸基、イソシアネート基、エポキシ基、及びそれらの組合せから選択され得る。
【0058】
ある非限定的な実施形態において、好適な架橋剤は、上記のポリオール化合物、ポリカルボン酸化合物、ならびにポリイソシアネート化合物及びエポキシ官能性化合物、例えば、グリシジル官能性アクリルコポリマーを含み得る。ある実施形態において、架橋剤の官能基は、本明細書に説明されるように、一時的にブロックされ、それによって、貯蔵及び輸送中の前駆体混合物の貯蔵寿命を増加させ得る。具体的な官能基は、得られる粉体コーティングの所望の組成に応じて決まる。
【0059】
架橋剤の具体的な選択は、ポリマー樹脂のタイプ及び所望の最終的なマトリクス組成物に応じて決まる。例えば、ヒドロキシル官能性ポリエステルは、ポリカルボン酸架橋剤を用いて硬化され、それによって、ポリマー樹脂及び架橋剤の両方における全ての官能基がエステル化架橋反応中に確実に消費されるように、架橋剤に対するポリエステル樹脂のOH:COOH化学量論比が約1:1である3次元ポリエステルマトリクスをもたらし得る。
【0060】
あるいは、ヒドロキシル官能性ポリエステルは、ポリイソシアネート架橋剤を用いて硬化され、それによって、ポリエステル-ポリウレタンマトリクスをもたらし得る。ポリマー樹脂及び架橋剤の両方における全ての官能基がウレタン形成架橋反応中に確実に消費されるように、ポリイソシアネート架橋剤に対するポリエステル樹脂のOH:NCO比は、本質的に1:1である。本発明の趣旨では、ポリイソシアネートという用語は、ジイソシアネート、イソシアヌレート、ビウレット、イソシアヌレートアロファネートなどの、少なくとも2つのイソシアネート官能基を有するイソシアネート官能性化合物を指す。好適な実施形態において、ポリマー樹脂は、ポリエステル-ポリウレタン樹脂である。
【0061】
本発明のポリイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(IPDI:isophorone diisocyanate)、4,4’-ジシクロヘキシルメタン-ジイソシアネート、及びトリメチル-ヘキサメチレン-ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、オクタデシレンジイソシアネート及び1,4シクロへキシレンジイソシアネート.トルエンジイソシアネート;メチレンジフェニルイソシアネート;テトラメチルキシレンジイソシアネート、及びそれらのイソシアヌレート、ビウレット、アロファネート、ならびにそれらの混合物、ならびにそれらの付加物、イソシアヌレート、ビウレット、及びアロファネートなどの化合物から選択され得る。一実施形態において、ポリイソシアネートは、IPDIを含む。
【0062】
本発明のある実施形態によれば、架橋剤上に存在する遊離イソシアネート基のそれぞれは、ヒドロキシル基及びイソシアネート基の早過ぎる反応が、最終的な硬化の前に確実に起こらないようにするために、ブロッキング剤で一時的にブロックされ、それによって、貯蔵及び輸送中の前駆体混合物の貯蔵寿命を延長し得る。好適なブロッキング剤としては、例えば、イソプロパノール又はtert-ブタノールなどの第二級又は第三級アルコール;マロン酸ジアルキルエステル、アセチルアセトン、及びアセト酢酸アルキルエステルなどのC-H酸性化合物、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム又はジエチルグリオキシムなどのオキシム、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタムなどのラクタム、フェノール、o-メチルフェノールなどのフェノール;N-メチルアセトアミドなどのN-アルキルアミド、フタルイミドなどのイミド、ジイソプロピルアミンなどの第二級アミン、イミダゾール、ピラゾール、及び1,2,4-トリアゾールが挙げられる。好適な実施形態において、架橋剤は、ε-カプロラクタムブロックIPDIである。
【0063】
ブロッキング剤は、架橋剤上に存在する全ての遊離イソシアネート基が一時的に確実にブロックされるように、遊離イソシアネート基に対して、約1:1の化学量論比で用いられ得る。ブロッキング剤は、イソシアネート基が、室温で水分又は架橋剤と早期に反応するのを防ぐが、170℃以下の高温でイソシアネート基からデブロックし(deblock)、それによって、遊離イソシアネート基を、架橋剤と反応させ、完全に硬化されたマトリクスを形成させる。
【0064】
他の実施形態において、ブロックポリイソシアネートは、ウレトジオン(uretdione)修飾ポリイソシアネートの形態であり得る。ウレトジオン修飾ポリイソシアネートは、2つの遊離イソシアネート基ならびに2つの内部でブロックされたイソシアネート基を含有する。イソシアネート基の内部のブロックは、ε-カプロラクタムなどの外部のブロッキング剤を必要とせずに行われる。高温で、ウレトジオン環は、破壊され、2つの内部でブロックされたイソシアネート基が、ウレタン形成反応において、ヒドロキシル基などのイソシアネート反応性基と反応するのに利用可能になる。本発明によれば、ウレトジオンブロックポリイソシアネートは、IPDIなどの上記のポリイソシアネート化合物から形成され得る。デブロッキングの後、ジイソシアネートをベースとするウレトジオンは、4つのイソシアネート基の同等物を含有することになる。
【0065】
ある実施形態において、ヒドロキシル基とイソシアネート基との間のウレタン形成反応を補助するために、触媒が加えられ得る。触媒は、ジブチルスズジラウレートもしくはオクタン酸スズ(tin octoate)などの有機金属触媒、又はトリエチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアミノシクロヘキサン、もしくは1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどの第三級アミンから選択され得る。他の触媒が、金属イオンジアクリルヨウ素塩から選択され得る。触媒は、前駆体混合物の総重量を基準にして、約0.001重量%~約1重量%の範囲の量で存在し得る。この範囲は、前駆体混合物の総重量を基準にして、0.002、0.005、0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.5、及び0.8重量%などの、その間の全ての特定の値及び部分範囲を含む。
【0066】
ポリマー樹脂は、イソシアネート末端ウレタン-ポリエステルプレポリマーであり得る。プレポリマーは、ヒドロキシル末端ポリエステル樹脂に対する化学量論的過剰量のポリイソシアネートの反応生成物であり得、NCO:OH比は、2:1~6:1の範囲である。過剰なイソシアネートは、遊離イソシアネート基をプレポリマー上に確実に残しながら、全ての遊離ヒドロキシル基が、ポリウレタンプレポリマーの形成中に消費されるのを確実にする。プレポリマーの形成後に残っているいかなる過剰なポリイソシアネートも、低圧減圧によって取り除かれ得る。プレポリマー上に存在する全ての遊離イソシアネート基が一時的に確実にブロックされるように、約1:1の、遊離イソシアネートに対するブロッキング剤の化学量論比で、プレポリマー上に存在する遊離イソシアネート基は、上述されたイソシアネートブロッキング剤でブロックされ得る。次に、ブロックイソシアネート末端ポリエステルプレポリマーは、ポリオール架橋剤と混合されて、貯蔵安定性の前駆体混合物を形成し得る。ポリオール架橋剤は、ポリエステル樹脂の形成に関して列挙される同じ低分子量ポリオール化合物を含む。
【0067】
ある実施形態において、カルボキシル官能性ポリエステル樹脂は、ポリオール架橋剤を用いて硬化され、それによって、ポリエステルマトリクスをもたらし得る。カルボキシル官能性ポリエステル樹脂上に存在する遊離カルボキシル基は、約1:1のCOOH:OHの化学量論比で、架橋剤上に存在するヒドロキシル基に対して存在し、それによって、ポリエステル樹脂及び架橋剤の両方に存在する全ての官能基が、エステル化架橋反応中に消費されるのを確実にし得る。ポリオール架橋剤は、ポリエステル樹脂の形成に関して列挙される同じ低分子量ポリオール化合物を含む。
【0068】
カルボキシル官能性ポリエステル樹脂はまた、エポキシ官能性化合物を用いて硬化され得る。ある非限定的な実施形態において、エポキシ官能性化合物は、飽和又は不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式であり得るエポキシ樹脂を含み得る。
【0069】
本発明に使用するのに好適なエポキシ樹脂の例としては、多価化合物のポリグリシジルエーテル、臭素化エポキシ、エポキシノボラック又は同様のポリヒドロキシフェノール樹脂、グリコール又はポリグリコールのポリグリシジルエーテル、及びポリカルボン酸のポリグリシジルエステルが挙げられる。好適には、エポキシ樹脂は、多価フェノールのポリグリシジルエーテルである。多価フェノールのポリグリシジルエーテルは、例えば、アルカリの存在下で、エピハロヒドリンを、多価フェノールと反応させることによって生成され得る。好適な多価フェノールの例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール-A;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-tert-ブチルフェニル)プロパン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ第三級ブチルフェニル)プロパン;ビス(2-ヒドロキシナフチル)メタン;1,5-ジヒドロキシナフタレン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-アルキルフェニル)エタンなどが挙げられる。
【0070】
バインダー組成物は、水分含量を除いて、揮発性溶媒を実質的に含まなくてもよい。本発明の趣旨では、「を実質的に含まない」という用語は、参照される要素の総重量を基準にして、0.1重量%未満を意味する。非限定的な例において、溶媒を実質的に含まない、バインダーと、架橋剤と、充填剤との混合物は、混合物の総重量を基準にして、0.05重量%未満、好適には、0.01重量%未満の量の溶媒を含む。好適な実施形態によれば、本発明のバインダー組成物は、100%の固形分を有し、溶媒(揮発性有機溶媒を含む)を含まない。さらに、本発明のさらなる実施形態によれば、バインダー組成物は、フルオロ修飾ポリウレタン及びフルオロポリマー、例えば、PVDF、又はPTFEなどの、フッ化炭素基を含むポリマー樹脂を実質的に含まない。言い換えると、本発明のバインダー組成物を構成するポリマー樹脂は、フッ化炭素基を実質的に含まない。
【0071】
粉体コーティングは、添加剤、充填剤、コーティング性能向上剤(coating performance enhancer)をさらに含み得る。このような充填剤及び添加剤は、限定はされないが、不活性充填剤、酸化防止剤、安定剤、顔料、強化剤、強化ポリマー、潤滑剤、抗菌性添加剤(例えば、殺真菌剤)、脱気剤、界面活性剤、流動添加剤(flow additive)、分散剤、チキソトロープ剤、接着促進剤、光安定剤、難燃剤、腐蝕防止剤、阻害剤、レベリング剤、へこみ防止剤、及びそれらの混合物を含み得る。ある実施形態において、殺真菌剤は、粉体コーティング組成物の総重量を基準にして、約6重量%~約10重量%の範囲の量で存在し得る。非限定的な例において、殺真菌剤は、ホウ酸亜鉛、2-(-4-チアゾリル)ベンズイミダゾールを含み得る。
【0072】
本発明によれば、抗菌性添加剤を含む粉体コーティングは、抗菌性コーティング又は抗菌性粉体コーティングと呼ばれ得る。「抗菌性」という用語は、真菌(例えば、白カビ、カビ)及び/又は細菌増殖に対する抵抗性を示すコーティングを指す。本発明の抗菌性コーティングは、防汚性界面活性剤を含むか又は、任意選択的に、防汚性界面活性剤を含まない粉体コーティングであり得る。
【0073】
抗菌性コーティングは、基材の表面に1つに直接塗布され得る。具体的には、抗菌性コーティングは、基材の露出面に接触し、それに結合され得る。他の実施形態において、基材表面と抗菌性コーティングとの間に1つ又は複数の介在するコーティング又は層があってもよい。
【0074】
抗菌性コーティングは、約40μm~約120μmの範囲のコーティング厚さ(その間の全ての厚さ及び部分範囲を含む)で、基材の1つ又は複数の表面上に存在し得る。抗菌性コーティングは、約130g/m~約340g/mの範囲のコーティング厚さ(その間の全ての量及び部分範囲を含む)で、基材の1つ又は複数の表面上に存在し得る。
【0075】
抗菌性コーティングは、架橋ポリマー全体に分散された抗菌性添加剤を含み得る。抗菌性コーティングは、1つ又は複数の顔料をさらに含み得る。抗菌性コーティングは、1つ又は複数の他の添加剤及び/又は充填剤をさらに含み得る。架橋ポリマーは、粉体コーティング前駆体(「前駆体」とも呼ばれる)から形成され得る。前駆体は、本明細書にさらに説明されるように、ポリマー樹脂及び架橋剤の高固形分混合物を含み得る。架橋ポリマーは、本明細書にさらに説明されるように、抗菌性添加剤、顔料、充填剤、及び/又は他の添加剤が、全体に分散された3次元ポリマーマトリクスを形成する。
【0076】
本発明の抗菌性添加剤は、第1の成分と第2の成分とのブレンドを含む。第1の成分は、一般に、金属ホウ酸塩を含み、第2の成分は、ベンズイミダゾール化合物を含む。
本発明によれば、第1の成分の金属ホウ酸塩は、塩基性、二塩基性、三塩基性及び多塩基性金属ホウ酸塩に対応する化合物、及びそれらの混合物を指す。例えば、「ホウ酸亜鉛」は、ホウ酸亜鉛(ZnB)、対応する塩基性ホウ酸亜鉛のいずれか(構造Zn(OH).Bの一塩基性ホウ酸亜鉛、構造2Zn(OH).Bの二塩基性ホウ酸亜鉛、構造3Zn(OH).Bの三塩基性ホウ酸亜鉛など)、及びそれらの混合物からなる一連の化合物を指す。別の例として、「ホウ酸銅」は、ホウ酸銅(CuB)、その対応する塩基性ホウ酸銅のいずれか(構造Cu(OH).Bの一塩基性ホウ酸銅、構造2Cu(OH).Bの二塩基性ホウ酸銅、構造3Cu(OH).Bの三塩基性ホウ酸銅など)、及びそれらの混合物からなる群から選択される一連の化合物を指す。金属ホウ酸塩は、2種以上の金属を含み得る。好適な実施形態において、金属ホウ酸塩は、ホウ酸亜鉛である。
【0077】
第2の成分のベンズイミダゾール化合物は、式I:
【0078】
【化1】
【0079】
の構造で表される化合物を指す。
式中、R、R、R、R、及びRが、H、ハロゲン原子(例えば、Br、I、Cl)、及びC1~C6鎖から選択され得る。R2が、チアゾリル基などの硫黄含有複素環化合物から選択され得る。ベンズイミダゾール化合物は、4-チアゾリル基であるR基を有し得る。ベンズイミダゾール化合物は、水素原子である、R、R、R、R、及びR基を有し得る。好適な実施形態において、ベンズイミダゾール化合物は、式II:
【0080】
【化2】
【0081】
の構造を有する2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾールである。
ある実施形態において、本発明のベンズイミダゾール化合物は、カルボニル基を実質的に含まなくてもよい。
【0082】
第1の成分及び第2の成分は、約75:1~約10:1の範囲(その間の全ての比率及び部分範囲を含む)の第1の成分(金属ホウ酸塩)と第2の成分(ベンズイミダゾール化合物)との間の重量比をもたらし、抗菌性添加剤中で存在し得る。ある実施形態において、第1の成分及び第2の成分は、約70:1~約30:1の範囲の重量比(その間の全ての比率及び部分範囲を含む)で存在し得る。好適な実施形態において、第1の成分及び第2の成分は、約70:1~約40:1の範囲の重量比(その間の全ての比率及び部分範囲を含む)で存在し得る。第1の成分及び第2の成分は、約70:1の重量比で存在し得る。
【0083】
本発明の抗菌性添加剤は、カルバメート基を含む化合物を実質的に含まなくてもよい。ある実施形態において、本発明の抗菌性添加剤は、ハロゲン原子を含む化合物を実質的に含まなくてもよい。
【0084】
金属ホウ酸塩(具体的にはホウ酸亜鉛)と硫黄含有ベンズイミダゾール化合物との組合せが、得られるコーティングに対する抗菌活性の相乗効果の改善を提供することが意外にも発見された。具体的には、金属ホウ酸塩と硫黄含有ベンズイミダゾールとの組合せは、全コーティングにおける減少した量の抗菌性添加剤で、得られるコーティングに対する十分過ぎる程の抗菌性を提供する。具体的には、抗菌性添加剤は、抗菌性コーティングの総重量を基準にして、約10重量%以下の範囲の量で、全抗菌性コーティング中に存在し得る。好適な実施形態において、抗菌性添加剤は、抗菌性コーティングの総重量を基準にして、約6重量%~約10重量%の範囲の量(その間の全ての量及び部分範囲を含む)で、全抗菌性コーティング中に存在し得る。より少ない抗菌性添加剤が、全コーティング中で必要とされるため、得られる抗菌性コーティングは、より低いコストで製造することができる。
【0085】
抗菌性添加剤はまた、重量部で表される量で存在してもよく、それによって、抗菌性添加剤は、全抗菌性コーティング組成物の100重量部を基準にして、約6~約10重量部の範囲の量(その間の全ての重量部及び部分範囲を含む)で存在する。
【0086】
前駆体組成物は、バインダー中に存在する官能基と反応することが可能な官能基をさらに含むアクリルコポリマーなどの強化ポリマーをさらに含み得る。非限定的な例において、強化ポリマーは、グリシジル官能性アクリルポリマーを含み得る。上述されるように、グリシジル基は、カルボン酸基と反応することが可能である。
【0087】
さらに他の添加剤としては、例えば、酸化クロム、クロム、酸化亜鉛、酸化銅、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、二酸化チタン、酸化スズ、鉄、酸化鉄などの、金属及び金属酸化物が挙げられる。このような金属は、例えば、耐摩耗性充填剤、相溶化剤として、又は顔料として機能し得る。顔料は、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、又はそれらの組合せなどの化合物をさらに含み得る。本発明のある実施形態において、顔料は、180nm~220nmの範囲の平均粒径を有してもよく;好適な実施形態において、顔料は、約200nmの平均粒径を有する。ある実施形態において、本発明に係る粉体コーティングは、約15重量%~約30重量%の顔料を含み得る。ある実施形態によれば、本発明に係る粉体コーティングは、約20重量%の二酸化チタンを含み得る。
【0088】
本発明のある実施形態において、顔料は、約0.2ミクロン(μm)~約5μmの範囲の平均粒径(その間の全てのサイズ及び部分範囲を含む)を有し得る。抗菌性コーティングは、抗菌性コーティングの総重量を基準にして、約20重量%~約50重量%の範囲の量(その間の全ての量及び部分範囲を含む)で、顔料を含み得る。ある実施形態において、顔料は、前駆体及び/又は他の添加剤及び充填剤と混合される前に、抗菌性添加剤で前処理され得る。
【0089】
金属ホウ酸塩と硫黄含有ベンズイミダゾール化合物との間の予想外の相乗効果の別の利益は、抗菌性組成物及び前駆体(ならびに他の添加剤及び充填剤)が、約100%の固形分で、すなわち、溶媒を実質的に含まずに、基材に塗布され得ることである。抗菌性コーティングを塗布するための溶媒を必要とせずに、抗菌性コーティングは、粉体コーティングとして好適であり得る。
【0090】
本発明の粉体コーティングは、界面活性剤を含み得る。本発明に係る界面活性剤は、本明細書に説明される最終的な処理及び硬化の前に、界面活性剤組成物中で前駆体混合物に加えられ得る。フッ素系界面活性剤は、非イオン性又はイオン性であり得る。イオン性フッ素系界面活性剤の非限定的な例としては、カチオン性フッ素系界面活性剤及びアニオン性フッ素系界面活性剤が挙げられる。好適な実施形態において、粉体コーティングのフッ素系界面活性剤は、アニオン性であり得る。
【0091】
本発明に係る界面活性剤組成物は、溶媒又は液体担体を実質的に含まない-好適には、100%の固形分を有し、溶媒又は液体担体(揮発性有機溶媒及び/又は水を含む)を実質的に含まない。界面活性剤組成物は、室温で粉体形状である。界面活性剤組成物は、少なくとも1つのフッ素系界面活性剤を含む。他の実施形態において、本発明に係る界面活性剤組成物は、本明細書においてより詳細に説明されるように、液体担体と混合されたアニオン性フッ素系界面活性剤を含む液体系界面活性剤であり得る。
【0092】
アニオン性フッ素系界面活性剤は、約50℃~約70℃の範囲の溶融温度を有し得る。本発明のアニオン性フッ素系界面活性剤は、約1~約6の範囲(その間の全ての値及び部分範囲を含む)の低いpH値を有する。アニオン性フッ素系界面活性剤のアニオン性部分は、サルフェート、スルホネート、ホスフェート、又はカルボキシレート部分から選択され得、ここで、好適なのはホスフェート部分である。アニオン性フッ素系界面活性剤の非限定的な例としては、下式:
式I:(R AO)P(O)(O
式II:(R AO)P(O)(O
の少なくとも1つが挙げられ、式中、R が、1、2又は3個のエーテル酸素原子で任意選択的に介在され得る、C~C16直鎖状又は分枝鎖状パーフルオロアルキルである。
【0093】
Aが、(CHCF(CH;(CHSON(CH)(CH;O(CF(CH;又はOCHFCFOEから選択され;
mが、0~4であり;
n、o、p、及びrがそれぞれ、独立して、2~20であり;
qが2であり;
Eが、酸素、硫黄、又は窒素原子で任意選択的に介在されるC~C20直鎖状又は分枝鎖状アルキル基;環状アルキル基、又はC~C10アリール基であり;
Mが、第I族金属又はアンモニウムカチオン(NH(Rであり、ここで、R2がC~Cアルキルであり;xが1~4であり;yが0~3であり;x+yが4である。
【0094】
好適な実施形態において、フッ素系界面活性剤は、式III:
式III:(R CHCHO)P(O)(ONH
のアニオン性フッ素系界面活性剤からなり得、式中、R が、式:F[CF-CF3~8で表されるC~Cパーフルオロアルキル基である。好適な実施形態において、フッ素系界面活性剤は、無溶媒アニオン性フッ素系界面活性剤である。好適なアニオン性フッ素系界面活性剤は、市販されている。
【0095】
ある実施形態によれば、フッ素系界面活性剤は、粉体コーティングの総重量を基準にして、約0.05重量%~約4重量%の範囲の量で存在し得る。好適な実施形態において、フッ素系界面活性剤は、粉体コーティングの総重量を基準にして、約0.7重量%~3重量%の範囲の量で存在し得る。ある実施形態において、フッ素系界面活性剤は、粉体コーティングの総重量を基準にして、約1.5重量%~3重量%、あるいは約0.1重量%~0.3重量%の範囲の量で存在し得る。ある実施形態によれば、フッ素系界面活性剤は、顔料の総重量を基準にして、10重量%~25重量%の範囲の量(その間の全ての部分範囲及び整数を含む)で存在し得る。
【0096】
顔料、例えば、二酸化チタンは、前駆体混合物に加えられる前に、界面活性剤組成物で前処理され得る。好適な実施形態において、顔料は、以下の工程にしたがって、アニオン性フッ素系界面活性剤で前処理される:本発明のアニオン性フッ素系界面活性剤組成物を、50℃~70℃の範囲(その間の全ての整数及び部分範囲を含む)であり得る高温に加熱して、アニオン性フッ素系界面活性剤を溶融させた後、酸化チタンを加える。次に、アニオン性フッ素系界面活性剤及び顔料を混合し、それによって、前処理された二酸化チタン顔料を生成する。ある実施形態において、高温は、55℃であり得る。前処理された顔料は、室温に冷まし、その後、バインダー及び架橋剤と混合して、本明細書に説明される前駆体混合物を形成することができる。好適な実施形態において、顔料は、式IIIのアニオン性フッ素系界面活性剤で前処理される二酸化チタンである。コーティング組成物の他の成分が加えられて、コーティング組成物混合物を生成する前に、顔料をフッ素系界面活性剤で前処理することは、コーティング組成物におけるフッ素系界面活性剤の均一な分散を確実にすることが分かった。
【0097】
第1のコーティング130は、まず、バインダー、架橋剤、及び添加剤(抗菌性コーティングの場合、抗菌性添加剤を含む)、及び充填剤を一緒に混合して、前駆体混合物を形成することによって形成され得る。前駆体混合物は、所定の期間にわたって乾式ブレンダーによって室温で軽く混合され、それによって、前駆体混合物におけるバインダー、架橋剤、及び添加剤/充填剤の均一な分配を生じ得る。乾式混合の後、前駆体混合物は、本明細書の説明にしたがって、溶融混合され、ペレット化され得る。
【0098】
次に、前駆体混合物は、溶融押出機において処理され得る。溶融押出機は、一軸又は二軸押出機であり得る。溶融押出機は、3つの領域:(1)供給領域;(2)溶融領域;及び(3)分散領域を含み得る。供給領域は、前駆体混合物の閉塞を防ぐために、室温以下の温度で保持され得る。溶融領域は、一般に、前駆体混合物の最大Tg超であるが、前駆体混合物のデブロッキング及び反応温度未満に加熱される。Tg超とデブロッキング/反応温度未満との間での操作により、前駆体混合物が押出機の内部で早期にデブロッキング及び反応することなく、前駆体混合物を、溶融状態にし、流動させる。分散領域において、温度は、Tg超及びデブロッキング温度未満に維持され、それによって、前駆体混合物を均一にさせる。ある実施形態において、溶融領域及び分散領域は、約90℃~150℃の範囲の温度(その間の全ての部分範囲及び整数を含む)で操作される。ある実施形態において、溶融領域及び分散領域は、約90℃~約130℃の範囲の温度(その間の全ての部分範囲及び整数を含む)で操作される。ある実施形態において、溶融領域及び分散領域は、100℃~110℃の範囲の温度で操作される。押出機は、様々な領域が適切な温度範囲内に確実に留まるように、加熱手段及び冷却手段を含む。
【0099】
分散領域を通過した後、溶融混合された前駆体混合物は、押出機出口ダイを通過した。出口ダイは、多くの異なる形態の複数の開口部を備え得る。ある実施形態において、出口ダイは、それらにわたる圧力低下を可能にする他のデバイスに置き換えられてもよく;例えば、このような圧力低下は、特定の軸形態を用いて達成され得る。いずれにしても、溶融押出機における前駆体混合物の平均滞留時間は、一般に、5分未満であり、より典型的に、30~120秒の範囲である。溶融された前駆体混合物が、ダイを通過するにつれて、それは冷却され、ペレット化される。ペレットは、粉砕され、次に、得られた前駆体粉末が収集される。ある非限定的な実施形態において、前駆体混合物は、粉砕機、低温粉砕機などの機械によって粉砕され得る。得られた前駆体粉末は、100μm未満、典型的に、30~50μmの範囲の平均粒径を有し得る。
【0100】
本発明の代替的な実施形態によれば、第1のコーティング130は、代替的なプロセスにしたがって生成され得る。代替的なプロセスは、液体系界面活性剤を含む。以前は、液体系界面活性剤は、粉体コーティングの作製に使用されていなかった。液体系界面活性剤は、上述されたフッ素系界面活性剤の少なくとも1つと予め混合された液体担体を含み得る。好適な実施形態において、液体系界面活性剤は、上述されたアニオン性フッ素系界面活性剤の少なくとも1つと予め混合された液体担体を含む。液体担体の非限定的な例としては、水ならびに120℃未満で可燃性でなく、及び/又は120℃未満で有毒蒸気を放出しない他の液体が挙げられる。
【0101】
液体系界面活性剤は、乾燥状態の液体担体及び界面活性剤の総重量を基準にして、約10重量%~約75重量%の範囲の量(その間の全ての量及び部分範囲を含む)で液体担体を含み得る。好適な実施形態において、液体系界面活性剤は、乾燥状態の液体担体及び界面活性剤の総重量を基準にして、約30重量%~約75重量%の範囲の量(その間の全ての量及び部分範囲を含む)で液体担体を含み得る。
【0102】
液体系界面活性剤は、バインダー、架橋剤、及び添加剤及び/又は充填剤と一緒に混合されて、水-前駆体混合物を形成し得る。液体系界面活性剤は、湿潤前駆体混合物の総重量を基準にして、約0.05重量%~約4重量%の範囲の量(その間の全ての量及び部分範囲を含む)で、湿潤前駆体混合物中に存在し得る。
【0103】
あるいは、湿潤前駆体混合物内の各成分の適切な分配を確実にするために、液体系界面活性剤のブレンドは、バインダー、架橋剤、及び添加剤と一緒に混合されてもよく、及び/又は充填剤が、混合期間及び冷却期間を含むいくつかの混合サイクルにわたって一緒に混合され得る。
【0104】
非限定的な実施形態において、混合サイクルの各混合期間は、約5秒~約30秒の範囲の第1の期間(その間の全ての時間及び部分範囲を含む)にわたり得る。非限定的な実施形態において、混合サイクルの各冷却期間は、約5秒~約120秒の範囲の第2の期間(その間の全ての時間及び部分範囲を含む)にわたり得る。単一の混合サイクルについての第1の期間と第2の期間との間の比率は、約1:1~約1:20の範囲であり得る(その間の全ての比率及び部分範囲を含む)。
【0105】
好適な実施形態において、各混合サイクルについて、第2の期間は、第1の期間より長い。好適な実施形態において、混合サイクルは、過剰な発熱を避けるために、約10秒未満であり得る。混合サイクルの総数は、約1~約20の範囲であり得る(その間の任意の数の混合サイクル及び部分範囲を含む)。
【0106】
各混合サイクルの長さ及び混合サイクルの総数は、湿潤前駆体混合物が、発熱による凝集又は湿潤前駆体混合物溶融の部分なしで十分に混合されるように選択される。好適なブレンダーの非限定的な例としては、高い熱伝導を有するサイドスクレイパーを備えたブレンドを含む。ある実施形態において、ブレンダーは、混合中の湿潤前駆体混合物の温度を調節するのを助ける冷却されたブレンダーであり得る。混合サイクル及び/又は混合装置は、湿潤前駆体が、混合中に48.9℃(120°F)の温度を決して超えないように操作され得る。他の実施形態において、混合サイクル及び/又は混合装置は、湿潤前駆体が、混合中に26.7℃(80°F)の温度を決して超えないように操作され得る。混合中、液体担体は、前駆体混合物の1つ又は複数の成分(例えば、顔料)によって吸収され得、したがって、湿潤前駆体混合物は、液体担体が混合中に蒸発し得ない際、液体担体を依然として含む。
【0107】
湿潤状態で及び前駆体混合物内の任意の成分の溶融温度未満で、前駆体混合物を混合することによって、ろう状のアニオン性界面活性剤が、前駆体混合物全体を通してより良好に分配され、それによって、比較的少ない量のアニオン性界面活性剤でも、最終的なコーティングにおける防汚性能のより高い均一性を提供する。混合された後、湿潤前駆体は、上述された方法にしたがって、乾燥され、ペレット化され得る。押出中、液体担体は、蒸発されて、実質的に100%の固形分を有する前駆体をもたらし得る。非限定的な例において、液体担体が湿潤前駆体混合物から確実に蒸発されるように、湿潤前駆体は、100℃超の温度(好適には、105℃~110℃)で押し出され得る。
【0108】
次に、所定の量の前駆体粉末が、容器に入れられてもよく、これは、本明細書に説明されるように、貯蔵され、最終的な処理のために別の場所に輸送される。他の実施形態において、前駆体粉末は、最終的に、溶融混合と同じ部位で処理され得る。最終的な処理は、前駆体粉末を基材120上にスプレーコーティング又は静電コーティングすることを含む。スプレーコーティングは、静電場においてスプレーガンによって、又は粉末が摩擦によって荷電される摩擦電気ガンを用いて塗布され得る。
【0109】
前駆体粉末が、基材120上にスプレーコーティングされた後、得られたスプレーコーティングは、前駆体混合物のデブロッキング及び反応温度を超える硬化温度で、オーブン中で加熱することによって硬化される。硬化温度は、約160℃~210℃の範囲であり得る。硬化は、バインダー及び架橋剤が完全に反応するのに十分な期間にわたって行われ、それによって、第1のコーティング130である完全に硬化された粉体コーティングを形成し得る。硬化は、約160℃~190℃の範囲の温度のために、15~30分の範囲の期間にわたって行われ得る。他の実施形態において、硬化は、約190℃~210℃の範囲の温度のために、約6~15分の範囲の期間にわたって行われ得る。得られた粉体コーティングは、40μm~120μmの範囲の厚さ(その間の全ての部分範囲及び厚さを含む)を有する。
【0110】
抗菌性コーティングで被覆された得られた基材は、室内環境で取り付けるための建築用パネルなどの抗菌性物品として好適であり、それによって、建築用パネルは、細菌、カビ、及び真菌増殖に対する優れた抵抗性を示すだけではなく、既存の生存微生物の量を減少させるのに優れている。
【0111】
基材に塗布された第1のコーティング130で被覆された基材120を提供した後、第1のコーティング130の上面は、第2のコーティング140で被覆され得る。第2のコーティング140は、液体系コーティング組成物を、第1のコーティング130の上面131に塗布し、次に、液体系コーティング組成物を乾燥させて、第1のコーティング130の上に第2のコーティング140を形成することによって形成され得る。液体系コーティング組成物は、液体担体を撥性成分と一緒に混合することによって調製され得る。撥性成分は、フルオロ含有撥性成分であり得る。フルオロ含有撥性成分は、フルオロポリマー、上記のフッ素系界面活性剤、又はそれらの組合せから選択され得る。好適な実施形態において、フルオロ含有撥性成分は、イオン性フッ素系界面活性剤である。
【0112】
液体担体は、水、VOC溶媒、及びそれらの組合せから選択され得る。好適な実施形態において、液体担体は水である。フルオロポリマーは、フッ素化アクリルコポリマー、フッ素化アクリルアルキルアミノコポリマー、及びそれらの組合せから選択され得る。フルオロポリマーの分子量は、約1,000Mn~約10,000,000Mnの範囲であり得る(その間の全ての重量及び部分範囲を含む)。
【0113】
フッ素化アクリルポリマーの非限定的な例としては、フッ化物原子を含有するアクリレート官能性モノマー及び、任意選択的に、フッ化物原子を含まない少なくとも1つの他のアクリレート官能性モノマーを重合することによって生成されるポリマーを含む。フッ化物原子を含有するアクリレート官能性モノマー(「フルオロ-アクリレート」とも呼ばれる)の非限定的な例としては、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロメチルビニルエーテル、トリフルオロエチレン及びそれらの混合物が挙げられる。フッ化物原子を含まないアクリレート官能性モノマーの非限定的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ならびにアクリレート及び/又はメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0114】
本発明のフルオロポリマーは、イオン性であり得る。本発明のフルオロポリマーは、約3~約6の範囲の酸性pH(その間の全てのpH及び部分範囲を含む)を有し得る。本発明のフルオロポリマーは、約9~約11の範囲の塩基性pH(その間の全てのpH及び部分範囲を含む)を有し得る。ある実施形態において、フルオロポリマーは、アニオン性であってもよく、約9~約11の範囲のpH(その間の全てのpH及び部分範囲を含む)を有し得る。ある実施形態において、フルオロポリマーは、カチオン性であってもよく、約3~約6の範囲のpH(その間の全てのpH及び部分範囲を含む)を有し得る。本明細書にさらに説明されるように、非イオン性フルオロポリマーが、本明細書において提供される防汚性及び撥油性ならびにイオン性フルオロポリマーを提供しないことが意外にも発見された。
【0115】
非限定的な例において、カチオン性フルオロポリマーは、フルオロ-アクリレートを、塩を形成することが可能なモノマーと共重合することによって生成され得、それによって、そのモノマーから形成された共有結合基は、正電荷を有し(例えば、N-ジメチルアミノエチルメタクリレート酸など)、それによって、アミノ基は、硫酸ジエチルと反応されて、フルオロポリマーから懸垂しているカチオン性基を形成する。
【0116】
非限定的な例において、カチオン性フルオロポリマーは、フルオロ-アクリレートを、塩を形成することが可能なモノマーと共重合することによって生成され得、それによって、そのモノマーから形成された共有結合基は、負電荷を有し(例えば、メタクリル酸など)、それによって、カルボン酸基は、アンモニアと反応されて、フルオロポリマーから懸垂しているアニオン性基を形成する。
【0117】
液体担体は、液体系コーティング組成物の総重量を基準にして、約80重量%~約99.98重量%の範囲の量(その間の全てのパーセンテージ及び部分範囲を含む)で存在し得る。フルオロポリマーは、液体系コーティング組成物の総重量を基準にして、約0.02重量%~約20重量%の範囲の量(その間の全てのパーセンテージ及び部分範囲を含む)で存在し得る。
【0118】
液体系コーティング組成物は、スプレーコーティング、ロールコーティング、浸漬コーティング、又は擦り込み(wiping)によって、第1のコーティング130の上面131に塗布され得る。液体系コーティング組成物は、約80g/m~約200g/mの範囲の量(その間の全ての部分範囲及び量を含む)で、第1のコーティング130の上面131に塗布され得る。好適な実施形態において、液体系コーティング組成物は、約105g/m~約122g/mの範囲の量(その間の全ての部分範囲及び量を含む)で、第1のコーティング130の上面131に塗布され得る。塗布後、液体系コーティング組成物は、第1のコーティング130の上面131を覆うだけでなく、浸透し、第1のコーティング130上の表面欠陥135によって生じる間隙を少なくとも部分的に充填する。
【0119】
塗布後、液体系コーティング組成物は、約5分~約60分の範囲の所定の期間にわたって、及び約15℃~約40℃の範囲の温度で乾燥され、それによって、液体担体を蒸発させ、液体系コーティング組成物を、第2のコーティング140へと変換する。本発明によれば、「乾燥させる」又は「乾燥された」という用語は、言及された組成物から液体担体を蒸発させることを指す。「乾燥させる」又は「乾燥された」という用語は、ある組成物を、第2の組成物と化学的に反応させること、例えば、ポリマーバインダ樹脂を、架橋剤で化学的に硬化することを指していない。したがって、フルオロポリマーを含む第2のコーティング140は、さらなる高温硬化(第1のコーティング130の硬化段階において使用されるものなど)を必要とせずに、第1のコーティング130に塗布され得る。
【0120】
乾燥させた後、得られた第2のコーティング140は、全ての液体担体を実質的に含まなくてもよい。得られた建築用パネル100は、約0.02g/m~約2g/mの範囲の量(その間の全ての部分範囲及び量を含む)で、乾燥状態で第1のコーティング130の上面131に塗布されたフルオロポリマーを含み、ここで、フルオロポリマーは、建築用パネル100用の上塗りを形成する。
【0121】
建築用パネル100を乾燥させた後、フルオロポリマーは、第1のコーティング130の上面131だけでなく、第1のコーティング130の表面欠陥135内にも塗布されたままである。具体的には、第2のコーティング140は、第2のコーティング140のフルオロポリマーの少なくとも一部が、第1のコーティング130の上面131と下面132との間に位置するように、第2のコーティング140のフルオロポリマーの少なくとも一部を、第1のコーティング130の表面欠陥135内に存在させる充填部分145を含む。
【0122】
第1のコーティング130への、フルオロポリマーを含む第2のコーティング140の塗布は、追加の汚れ付着抵抗性(resistance to dirt pick-up)を与え(例えば、指紋油及び汗)、これにより、本来、取り付け中に典型的に発生し得る審美的な損傷に耐えることができる建築用パネル100が得られる。追加の汚れ付着抵抗性は、明度の変化-すなわち「デルタE」(ΔE)の関数として測定され得る。
【0123】
デルタE値は、以下の計算によって測定される:
ΔE=[(L-L+(a-a+(b-b1/2
式中、L、a、及びbがそれぞれ、ミノルタコーポレーション(Minolta Corporation)製のミノルタクロマメータ(Minolta Chroma Meter)CR 410を用いて測定される、建築用パネル100の汚れていない第1の主面111の初期明度である。L、a、及びb値が、建築用パネル100の各第1の主面111が、汚れ組成物(すなわち、指の油、汗など)によって汚された後、ミノルタクロマメータ(Minolta Chroma Meter)CR 410によって測定される明度である。より小さいΔE値は、向上した汚れ付着抵抗性を示す。本発明によれば、第1のコーティング130と第2のコーティング140との組合せは、2未満のΔE値を有する建築用パネルを提供することができる。
【0124】
さらに、第1のコーティング130と第2のコーティング140との組合せは、向上した疎水性を有する建築用パネルの第1の主面111をもたらし得る。本発明によれば、「疎水性(hydrophobicity)」又は「疎水性(hydrophobic)」という用語は、非常に湿潤しにくく、大気条件下で液体水を弾くことが可能な組成物を意味する。したがって、本明細書において使用される際、「疎水性」という用語は、基準液体(すなわち、水)との90°超の接触角を生じる表面を指す。
【0125】
特定の固形分の湿潤能力の定量的尺度として、固体基材の表面における液滴によって作成される接触角を用いるという考え方はまた、長い間、十分に理解されてきた。湿潤は、液体と固体表面が一緒になったときの分子間相互作用から得られる、固体表面との接触を維持する液体の能力である。湿潤度(湿潤性)は、接着力と凝集力との間の力平衡によって決定される。接触角が、基材表面への水滴について90°超である場合、それは、通常、疎水性であると見なされる。
【0126】
本発明に係る建築用パネル100の第1の主面111は、少なくとも約115°の水接触角を示す。好適な実施形態において、建築用パネル100の第1の主面111は、約125°~約135°の範囲の水接触角(その間の全ての部分範囲及び角度を含む)を示す。この接触角で、最も一般的な水及び油(例えば、指紋油)は、建築用パネル100の第1の主面111を湿潤せず、それによって、建築用パネル100が、取り付け中の汚れに対して抵抗性になる。
【0127】
ここで、図5及び6を参照すると、本発明の代替的な実施形態は、内部空間における天井システム10を含み、それによって、内部空間は、天井懐空間3及び有効な部屋環境2を含む。天井システム10は、支持格子30を含んでいてもよく、それによって、天井懐空間3は、支持格子30の上、及び天井又は建築物における上の隣接するフロアの床下4の下に位置する。天井懐空間3は、建築物内の機械的な管路(例えば、HVAC、配管など)のための空間を提供する。有効な空間2は、建築物の通常の目的の使用の際、建築物入居者のための空間を提供する(例えば、オフィスビルでは、有効な空間は、コンピュータ、照明器具などを含むオフィスによって占められるであろう)。
【0128】
支持格子30は、複数の第1の支柱32及び複数の第2の支柱33を含み得る。第1の支柱32のそれぞれは、互いに平行であり得る。第2の支柱33のそれぞれは、互いに平行であり得る。複数の第1の支柱32は、複数の第2の支柱33に直交しているか又は垂直であってもよく、それによって、支持格子30を形成する支柱の交差パターンを形成する。支持格子30は、建築用パネル20を受け入れ得る第1及び第2の支柱32、33を交差させることによって形成される開口部31を含み、それによって、天井システム10を形成し得る。
【0129】
第1の支柱32及び第2の支柱33の少なくとも1つは、水平フランジ41及び垂直ウェブ42を有する逆T字型の棒を含み得る。水平フランジ41は、下面41a及び上面41bを含んでいてもよく、ここで、取り付けられた状態で、下面41aは、有効な部屋環境2に面し、上面41bは、天井懐空間3に面する。下面41aは、垂直ウェブ42が水平フランジ41から延在する方向と反対側に面する。
【0130】
この実施形態によれば、本発明の第1のコーティング130は、上述される第1及び/又は第2の支柱33の少なくとも1つの水平フランジ41の下面41aに直接塗布され得る。次に、第2のコーティング140は、上述される第1のコーティング130に塗布され得る。本発明は、支持格子30、第1のコーティング130、及び第2のコーティング140を含む被覆された支持格子60を含む天井システム10をさらに提供することができ、それによって、第1のコーティング130は、支持格子30の水平フランジ41の上面41aの少なくとも一部に塗布され、第2のコーティング140は、第1のコーティング130に塗布され、それによって、第2のコーティング140の上面141は、有効な部屋環境2に面する。
【0131】
本発明によれば、本発明の防汚性物品は、多くの形態の1つの結果であり得る。ある実施形態によれば、物品は、第1のコーティング130で被覆された基材120を含んでいてもよく、それによって、第1のコーティング130は、液体系アニオン性フッ素系界面活性剤を含む。このような実施形態において、第2のコーティング140は、任意選択的に存在し得る。このような実施形態において、第1のコーティング130の上面は、物品の主面を形成し得る。このような実施形態において、第2のコーティング140は、任意選択的に存在してもよく、それによって、第2のコーティング140は、フルオロポリマー、フッ素系界面活性剤、又はそれらの組合せを含むフルオロ含有撥性成分を含む。
【0132】
他の実施形態によれば、防汚性物品は、第1のコーティング130で被覆された基材120を含んでいてもよく、それによって、第1のコーティング130は、ろう状(すなわち、固体)のアニオン性フッ素系界面活性剤を含む。このような実施形態において、第2のコーティング140は、任意選択的に存在し得る。このような実施形態において、第1のコーティング130の上面は、物品の主面を形成し得る。このような実施形態において、第2のコーティング140は、任意選択的に存在してもよく、それによって、第2のコーティング140は、フルオロポリマー、フッ素系界面活性剤、又はそれらの組合せを含むフルオロ含有撥性成分を含む。
【0133】
他の実施形態によれば、防汚性物品は、第1のコーティング130で被覆された基材120を含んでいてもよく、それによって、第1のコーティング130は、フルオロ含有撥性成分を含まない。このような実施形態において、物品は、第2のコーティング140をさらに含み、それによって、第2のコーティングは、フルオロポリマー、フッ素系界面活性剤、又はそれらの組合せを含むフルオロ含有撥性成分を含む。このような実施形態において、第2のコーティング140は、物品の主面を形成する。このような実施形態において、第2のコーティング140
以下の実施例は、本発明にしたがって調製される。本発明は、本明細書に記載される実施例に限定されない。
【0134】
(実施例)
上塗りの防汚試験プロトコル
以下の実験は、本発明に係る建築用パネルの主面における撥油性及び防汚性を測定する。前駆体成分(すなわち、ポリマーバインダ、架橋剤、及びフッ素系界面活性剤)を一緒に混合することによって調製される粉体コーティング前駆体から形成されるポリマー粉体コーティングを有する建築用パネルを作製した。フッ素系界面活性剤は、100%の固形分を有し、少なくとも1つのリン酸基を有するアニオン性フッ素系界面活性剤を含む。アニオン性フッ素系界面活性剤は、50℃~70℃の溶融温度及び1~5のpH値を有する。例示的な好適なアニオン性フッ素系界面活性剤は、キャプストン(Capstone)(登録商標)FS-66の商標で、デュポン(Du Pont)から市販されている。
【0135】
次に、粉体コーティング前駆体は、約90℃~約110℃の範囲の温度で押出機によって溶融混合し、続いて、得られた押出物は、粉末へとペレット化する。それぞれの得られた粉末は、アルミニウム基材の第1の主面上にスプレーコーティングする。次に、コーティングされた基材は、195℃の温度で熱硬化して、粉体コーティングされた基材を形成する。
実施例1
次に、液体系コーティングは、粉体コーティングの上面に塗布し、ここで、液体系コーティングは、80重量%の水及び20重量%の第1の撥性成分を含む。第1の撥性成分は、約4~約6の範囲のpH及び1.06g/cmの密度を有するカチオン性フッ素系界面活性剤である。液体系コーティングは、10g/m2の量で粉体コーティング上に塗布する。次に、得られた液体系コーティングは、15℃~40℃の温度で乾燥させて、実施例1の建築用パネルを形成した。実施例1の得られた建築用パネルは、約2g/mの量で、粉体コーティング上に塗布されたフッ素系界面活性剤を有する。
実施例2
0.2重量%の第2の撥性成分の濃度に液体系コーティング組成物を希釈したことを除いて、実施例1の同じ方法にしたがって、第2の建築用パネル(実施例2)を作製した。第2の撥性成分は、約9~約11の範囲のpH及び約1.1g/cmの密度を有するアニオン性フッ素系界面活性剤である。次に、液体系コーティング組成物は、10g/m2の率で粉体コーティングを含有するフッ素系界面活性剤に塗布し、液体系コーティング組成物を乾燥させた。実施例2の得られた建築用パネルは、約0.02g/mの量で、粉体コーティング上に塗布されたフッ素系界面活性剤を有する。
比較例1
第2の撥性成分の代わりに第1の非イオン性フッ素系界面活性剤を使用することを除いて、実施例2の同じ方法にしたがって、第3の建築用パネル(比較例1)を作製した。非イオン性フッ素系界面活性剤は、約7~約8.5の範囲のpH及び約1.4g/cmの密度を有し、デュポン(DuPont)からFS-3100として市販されている。比較例1の得られた建築用パネルは、粉体コーティング上に塗布された0.02g/mのフッ素系界面活性剤を有する。
比較例2
粉体コーティングに第2の非イオン性フッ素系界面活性剤を塗布することを除いて、実施例2の同じ方法にしたがって、第4の建築用パネル(比較例2)を作製した。第2のフッ素系界面活性剤は、約7~約9の範囲のpH及び約1.1g/cmの密度を有し、デュポン(DuPont)からFS-65として市販されている。比較例1の得られた建築用パネルは、粉体コーティング上に塗布された0.02g/mのフッ素系界面活性剤を有する。
【0136】
次に、実施例1及び2ならびに比較例1及び2の建築用パネルは、以下の方法にしたがって、撥油性及び防汚性について比較した。ピートモス、ポルトランドセメント、焼成カオリナイト、及びスノブライトクレー(Sno-Brite Clay)を含む汚れ組成物を調製する。スノブライトクレー(Sno-Brite Clay)は、95重量%超のカオリンならびに少量のシリカ(石英、クリストバライト)、雲母、及び二酸化チタンを含む。
【0137】
実施例1及び比較例1の建築用パネルのそれぞれは、粉体コーティングされた表面が上向きになるように位置決めする。次に、ある量(0.2グラム)の、表1の汚れ組成物は、プラスチックカップに入れ、粉体コーティングされた表面上に保持し、ここで、プラスチックカップを軽くたたいて、汚れ組成物を、防汚性パネルの上向きの粉体コーティングされた表面に自然に落とす。粉体コーティングされた表面に塗布された汚れ組成物を除いて、防汚性パネルは、触れないままである。次に、汚れた建築用パネルは、24時間の期間にわたって放置する。
【0138】
24時間の期間の後、建築用パネルは、上下ひっくり返して(180°)、粉体コーティングされた表面を下向きにして、緩い汚れ組成物を、防汚性パネルの粉体コーティングされた表面から落とす。次に、建築用パネルにおける、粉体コーティングされた表面と反対側の表面は、20回軽くたたいて、さらなる汚れ組成物を、建築用パネルから落とす。次に、建築用パネルの粉体コーティングされた表面が横向きになるように、建築用パネルを半回転戻し(90°)、続いて、建築用パネルの側部を10回軽くたたく。次に、粉体コーティングされた表面が上向きになるように、建築用パネルを回転させて元の位置に戻し、次に、該当する表面は、上述されるように、明度の変化-すなわち「デルタE」(ΔE)について測定する。
【0139】
具体的には、L、a、及びb値は、上述されるように、各サンプルが、汚れ組成物によって汚された後、ミノルタクロマメータ(Minolta Chroma Meter)CR 410によって測定した際の明度である。各色試験の対照値は、汚れ組成物の塗布なしの同じ色及び構造である。様々な色の読み取り値は、サンプルにおける3つの異なる領域で取り、平均デルタEは、表1に示されるように記録する。
【0140】
【表1】
【0141】
表1によって実証されるように、アニオン性フッ素系界面活性剤を含む粉体コーティングに塗布された上塗り中のカチオン性フッ素系界面活性剤の組合せは、0.02g/m程度の量で、より小さいデルタE値から明らかなように、非イオン性フッ素系界面活性剤を含む粉体コーティングに塗布された他の上塗りと比較して、建築用パネルの防汚性及び撥油性の予想外の改善を提供する。
粉体コーティング中の液体フッ素系界面活性剤の防汚試験プロトコル
以下の実験は、粉体コーティング中の液体系フッ素系界面活性剤を用いた本発明に係る建築用パネルの主面における撥油性及び防汚性を測定する。この実験を行う際、一連の建築用パネルは、それに塗布された粉体コーティングを用いて作製した。フッ素系界面活性剤を含まない粉体コーティングを有する第1の建築用パネル(対照1)を作製した。対照1の建築用パネルは、上塗りを含まない。
【0142】
第2の建築用パネル(実施例3)は、ろう状(すなわち、100%の固形分)のアニオン性フッ素系界面活性剤を含む前駆体から形成された粉体コーティングを用いて作製した。実施例3の粉体コーティングは、同じアニオン性フッ素系界面活性剤を含む実施例1及び2の粉体コーティングと同じ方法にしたがって作製した。実施例3の建築用パネルは、上塗りを含まない。
【0143】
3つのさらなる建築用パネル(実施例4~6)は、液体系アニオン性フッ素系界面活性剤を含む前駆体から形成された粉体コーティングを用いて作製した。実施例4~6の粉体コーティングは、48.9℃(120°F)未満の温度で、ブレンダー中で、前駆体成分(すなわち、ポリマーバインダ、架橋剤、及び液体系アニオン性フッ素系界面活性剤)を一緒に混合することによって調製した。混合した後、混合された前駆体混合物は、約90℃~約110℃の範囲の温度で押出機を通過し、それによって、液体系アニオン性フッ素系界面活性剤上に存在する液体担体は、前駆体から蒸発された。その後、得られた押出物は、粉末へとペレット化した。それぞれの得られた粉末を、アルミニウム基材の第1の主面上にスプレーコーティングする。次に、コーティングされた基材は、架橋剤及びポリマーバインダを共有結合させる温度に加熱し、それによって、基材上に架橋された粉体コーティングを提供する。
【0144】
2つのさらなる建築用パネル(比較例3及び4)は、液体系非イオン性フッ素系界面活性剤を含む前駆体から形成された粉体コーティングを用いて作製した。比較例3及び4の粉体コーティングは、液体系フッ素系界面活性剤がアニオン性の代わりに非イオン性であることを除いて、実施例4~6と同じ方法にしたがって調製した。
【0145】
実施例3~6ならびに比較例3及び4の建築用パネルに関して、各前駆体混合物中の液体系フッ素系界面活性剤の具体的な量は、得られる粉体コーティングが、最終的な粉体コーティング中に同じ相対量の固体フッ素系界面活性剤を含有するように選択した。したがって、実施例3~6ならびに比較例3及び4の各液体系フッ素系界面活性剤の固形分は、前駆体が異なり得るが、最終的な建築用パネルは、パネル間の乾燥(すなわち、固体)量のフッ素系界面活性剤が同じである際、正確な対照比較を提供する。
【0146】
次に、対照1、実施例3~6、ならびに比較例3及び4の得られた建築用パネルは、実施例1及び2に関して記載される防汚性及び撥油性試験にかけた。各建築用パネルについての防汚性及び撥油性試験の結果が、以下の表2に示される。
【0147】
【表2】
【0148】
表2によって実証されるように、本発明の粉体コーティングにおける液体系アニオン性フッ素系界面活性剤の使用は、他のタイプの非イオン性フッ素系界面活性剤と比較して、防汚性及び撥油性の予想外の改善を提供し、これは、比較例3及び4のものと比較した実施例4~6の建築用パネルの低いΔEによって反映される。さらに、本発明の方法にしたがう液体系アニオン性フッ素系界面活性剤の組み込みは、固体フッ素系界面活性剤から形成された実施例3の建築用パネルのΔEより低くないとしても同じである、実施例4~6の建築用パネルのΔEによって実証されるように、前駆体全体にわたるフッ素系界面活性剤の凝集及び不適切な分配の問題を回避する。粉体コーティング組成物中への液体系フッ素系界面活性剤の成功した組み込みは、基材に塗布されるときに固体である必要がある粉体コーティング組成物を形成する場合、液体含有成分の使用を回避するべきであるという、当該技術分野において以前から認められている見解に反するものである。
抗菌試験プロトコル
抗菌試験プロトコルを用いて、実施例7~13、比較例5~11、及び対照2~8の建築用パネルサンプルを作製し、試験した。各建築用パネルサンプルは、粉体コーティング組成物を、50mm×50mmの金属基材上に塗布することによって作製した。粉体コーティング組成物のそれぞれは、ポリマー樹脂前駆体と、架橋剤と、顔料とのブレンドを含み、少なくとも99%の固形分を有する。
【0149】
本発明の粉体コーティング組成物(すなわち、実施例7~13)は、全粉体コーティング組成物の100部を基準にして、7pbwのホウ酸亜鉛及び0.1pbwの2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾールの抗菌性組成物を含む。比較例5~11の粉体コーティング組成物は、本発明の抗菌性組成物を含まず、硝酸銀の抗菌性組成物を含む。対照2~8の粉体コーティング組成物は、抗菌性組成物を含まなかった。
【0150】
金属基材に塗布された後、各粉体コーティング組成物は、硬化温度を超える温度に加熱して、ポリマー樹脂前駆体を架橋剤と反応させ、架橋された粉体コーティングを形成した。
【0151】
架橋された粉体コーティングの抗菌有効性を測定するために、いくつかの試験を行った。各試験は、合計で3つのペトリ皿を含み、それによって、第1のペトリ皿は、本発明の建築用パネルサンプルのうちの1つ(すなわち、実施例7~13のうちの1つ)を含み、第2のペトリ皿は、比較例の建築用サンプルのうちの1つ(すなわち、比較例5~11のうちの1つ)を含み、第3のペトリ皿は、対照建築用パネルサンプルのうちの1つ(すなわち、対照2~8のうちの1つ)を含んでいた。各ペトリ皿に、特定の濃度で細菌を接種し、次に、各サンプル表面上に均一に接種材料を広げるように、滅菌したプラスチックで覆った。サンプルは、35℃及び90%の相対湿度でインキュベートした。細菌濃度は、初期時間(t=0)に、及び再度、24時間の所定の期間後(t=24)に、各ペトリ皿中で測定した。
【0152】
24時間の期間の後、各試験サンプルにおける細菌コロニーを計数し、記録した。各サンプルの抗菌活性の値は、以下に列挙される式にしたがって計算し、log減少として以下のように記録した:
90%の減少=1log減少(すなわち、100,000に減少される1,000,000は、1log減少である)
99%の減少=2log減少(すなわち、10,000に減少される1,000,000は、2log減少である)
99.9%の減少=3log減少(すなわち、1,000に減少される1,000,000は、3log減少である)
99.99%の減少=4log減少(すなわち、100に減少される1,000,000は、4log減少である)
99.999%の減少=5log減少(すなわち、10に減少される1,000,000は、5log減少である)
抗菌性コーティングの性能は、下式にしたがって計算される抗菌活性(「R」)に対して正規化した:
R=(U-U)-(A-U)=U-A
式中、
R:抗菌活性
:t=0における対照からの生菌の対数の平均
Ut:t=24における対照からの生菌の対数の平均
:t=24における試験サンプルからの生菌の対数の平均
本発明によれば、抗菌性コーティングは、抗菌活性が2.0以上である場合、抗菌有効性を有するものと見なされる。各細菌試験の結果が、本明細書に示される。
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する抗菌有効性
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)細菌に対する有効性を測定する試験は、9.7×10CFU/mLの開始細菌濃度で行った。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を用いた第1の試験の結果が、以下の表3に示される。
【0153】
【表3】
【0154】
本発明に係る抗菌性コーティング(実施例7)は、細菌コロニーの99.99%の減少を示し、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)細菌に対する抗菌有効性の2.0の閾値をはるかに上回る、4.77のR値を得た。比較例の抗菌性コーティング(比較例5)は、わずか85%の減少を示し、2.0のR値の閾値をはるかに下回る、0.83のR値を得た。
【0155】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)細菌に対する有効性についての試験は、7.5×10CFU/mLのより低い開始細菌濃度で繰り返した。結果が表4に示される。
【0156】
【表4】
【0157】
本発明の抗菌性コーティング(実施例8)は、やはり、細菌活性の最大で99.99%の減少を示し、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)細菌に対する5.26のR値を得た。比較例の抗菌性コーティング(比較例6)は、わずか97%の減少を示し、2.0の閾値を下回る、1.49のR値を得た。
大腸菌(Escherichia coli)に対する抗菌有効性
大腸菌(Escherichia coli)細菌に対する有効性を測定する試験は、7.2×10CFU/mLの開始細菌濃度で行った。結果が表5に示される。
【0158】
【表5】
【0159】
この濃度で、本発明の抗菌性コーティング(実施例9)ならびに比較例のコーティング(比較例7)は両方とも、細菌コロニーの最大で99.8%の減少を示し、大腸菌(Escherichia coli)細菌に対する抗菌有効性についての2.0の閾値を上回る、2.87のR値を得た。
【0160】
大腸菌(Escherichia coli)細菌に対する有効性についての試験は、7.6×10CFU/mLのより高い開始細菌濃度で繰り返した。結果が表6に示される。
【0161】
【表6】
【0162】
本発明の抗菌性コーティング(実施例10)は、細菌活性の最大で99.99%の減少を示し、大腸菌(Escherichia coli)細菌に対する6.26のR値を得た。しかしながら、比較例の抗菌性コーティング(比較例8)は、わずか58%の減少を示し、2.0のR値の閾値をはるかに下回る、0.39のR値を得た。
セレウス菌(Bacillus cereus)に対する抗菌有効性
セレウス菌(Bacillus cereus)細菌に対する有効性を測定する試験は、4.1×10CFU/mLの開始細菌濃度で行った。結果が表7に示される。
【0163】
【表7】
【0164】
実施例11の抗菌性コーティングは、細菌コロニーの最大で99.5%の減少を示し、セレウス菌(Bacillus cereus)細菌に対する抗菌有効性についての2.0の閾値を上回る、2.31のR値を得た。比較例の抗菌性コーティング(比較例9)は、わずか75%の減少を示し、2.0のR値の閾値をはるかに下回る、0.6のR値を得た。
アシネトバクター・バウマニ(Acinetobachter baumannii)に対する抗菌有効性
アシネトバクター・バウマニ(Acinetobachter baumannii)細菌に対する有効性を測定する試験は、9.2×10CFU/mLの開始細菌濃度で行った。結果が表8に示される。
【0165】
【表8】
【0166】
本発明の抗菌性コーティング(実施例12)及び比較例のコーティング(比較例10)は両方とも、細菌コロニーの最大で99.99%の減少を示した。しかしながら、6.02のR値で、本発明の抗菌性コーティングは、やはり、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobachter baumannii)細菌に対する4.2のR値を示した比較例の抗菌性コーティングより性能が優れていた。
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)に対する抗菌有効性
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)細菌に対する有効性を測定する試験は、6.4×10CFU/mLの開始細菌濃度で行った。結果が表9に示される。
【0167】
【表9】
【0168】
本発明の抗菌性コーティング(実施例13)及び比較例のコーティング(比較例11)は両方とも、細菌コロニーの最大で99.99%の減少を示した。しかしながら、4.44のR値で、本発明の抗菌性コーティングは、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)細菌に対する4.05のR値を示した比較例の抗菌性コーティングより性能が優れていた。
抗菌有効性の概要
各建築用パネルの抗菌有効性が、表10に要約されている。
【0169】
【表10】
【0170】
表10によって実証されるように、本発明の抗菌性添加剤は、様々な細菌濃度の範囲で、非常に有効な広範囲の細菌抵抗性を粉体コーティングに与える一方、比較例の抗菌性添加剤は、限られた数の細菌に対して機能するに過ぎず、比較例の抗菌性添加剤は、限られた濃度で限られた細菌に対して有効である。
防カビ試験プロトコル
防カビプロトコルを用いて、実施例14、15、比較例12、及び対照例9のサンプル建築用パネルを作製し、試験した。各建築用パネルサンプルは、粉体コーティング組成物を、76.2mm(3インチ)×101.6mm(4インチ)の金属基材上に塗布することによって作製した。粉体コーティング組成物のそれぞれは、少なくとも99%の固形分を有し、ポリマー樹脂前駆体と、架橋剤と、顔料とのブレンドを含んでいた。
【0171】
本発明の粉体コーティング組成物(すなわち、実施例14及び15)は、全粉体コーティング組成物の100部を基準にして、7pbwのホウ酸亜鉛及び0.1pbwの2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾールの抗菌性組成物を含む。比較例12の粉体コーティング組成物は、本発明の抗菌性組成物を含まず、硝酸銀の抗菌性組成物を含む。対照例9の粉体コーティング組成物は、抗菌性組成物を含まなかった。
【0172】
各サンプルは、増殖させた真菌胞子を播種した土を含む試験チャンバに入れた。具体的には、土には、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(ATCC# 6275);ペニシリウム・シトリヌム(Penicillium citrinum)(ATCC# 9849);及びアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)(ATCC# 9348)を播種した。チャンバは、1週間の期間にわたって、室温(32.5±1℃)及び95±3%の相対湿度に保持した。この期間の後、各サンプルは、試験チャンバから取り出し、観察した。前主面及び後主面の両方におけるカビ形成によって引き起こされる汚損の量を観察し、測定した。汚損の程度は、表11に記載される評価尺度に割り当てた。
【0173】
【表11】
【0174】
各サンプル、ならびに粉体コーティングが抗菌性組成物を含まなかったことを除いて、基材に塗布された粉体コーティングを含有する対照サンプルの汚損は、各週の後に観察した。実験の結果が、以下の表12に示される。
【0175】
【表12】
【0176】
表12によって実証されるように、抗菌性コーティング組成物は、他の粉体コーティングと対照的に、4週間の期間にわたって、カビ増殖に対して十分に役割を果たす。
図1
図2
図3
図4
図5
図6