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特許7126970ガスバリア性膜状体形成用水性分散液、ガスバリア性膜状体、ガスバリア性積層体及びガスバリア性膜状体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】ガスバリア性膜状体形成用水性分散液、ガスバリア性膜状体、ガスバリア性積層体及びガスバリア性膜状体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/00 20060101AFI20220822BHJP
   C08L 101/14 20060101ALI20220822BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20220822BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220822BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220822BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220822BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220822BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220822BHJP
   C08J 7/048 20200101ALI20220822BHJP
   B32B 23/02 20060101ALI20220822BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20220822BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
C08L1/00
C08L101/14
C08K7/00
C09D5/02
C09D7/61
C09D7/65
C09D201/00
C08J5/18 CEP
C08J5/18 CER
C08J7/048 CEZ
B32B23/02
B32B27/26
B32B27/18 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019042537
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020143247
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】荒井 真
(72)【発明者】
【氏名】福永 正明
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-011392(JP,A)
【文献】特開2013-202909(JP,A)
【文献】国際公開第2014/181560(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/118360(WO,A1)
【文献】特開2017-137497(JP,A)
【文献】特開2018-108852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B32B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースナノファイバー、無機層状化合物、水溶性高分子、架橋剤及び助剤を含み、下記要件(a)~(d)を満たす、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液。
要件(a):顔料体積濃度PVCと、臨界顔料体積濃度CPVCとの比である還元顔料体積濃度(Reduced Pigment Volume Content)Λが、以下の式(1)を満たす。
0<Λ≦1.1 ・・・(1)
(ただし、Λ=PVC/CPVC)
要件(b):セルロースナノファイバー、水溶性高分子、架橋剤及び助剤の体積の和に対する、セルロースナノファイバーの体積比率が50%以上である。
要件(c):セルロースナノファイバー、水溶性高分子、架橋剤及び助剤の体積の和に対する、助剤の体積比率が5%以下である。
要件(d):ガスバリア性膜状体形成用水性分散液中の全顔料の体積に対する、無機層状化合物の体積比率が85%以上である。
【請求項2】
前記セルロースナノファイバーが、未変性セルロースナノファイバー、化学変性セルロースナノファイバー、酵素変性セルロースナノファイバーの少なくとも1種から選択され、繊維径の長径が短径の3倍以下、繊維径の長径が1nmから100nm、繊維長が長径の10倍以上2000倍以下である、請求項1に記載のガスバリア性膜状体形成用水性分散液。
【請求項3】
前記ガスバリア性膜状体形成用水性分散液に分散された無機層状化合物の分散度が40μm以下である、請求項1又は2に記載のガスバリア性膜状体形成用水性分散液。
【請求項4】
前記助剤が、分散剤、シランカップリング剤、サイズ剤、撥水剤、レベリング剤、消泡剤、合成高分子、潤滑剤、紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤及び安定剤から選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれかに記載のガスバリア性膜状体形成用水性分散液。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のガスバリア性膜状体形成用水性分散液を基材上に塗工した後に、加熱乾燥する、ガスバリア性膜状体の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載のガスバリア性膜状体形成用水性分散液から得られる、ガスバリア性膜状体。
【請求項7】
前記ガスバリア性膜状体の厚みが0.1μm以上5μm以下である、請求項6に記載のガスバリア性膜状体。
【請求項8】
基材の少なくとも一方の面上に、請求項1~4のいずれかに記載のガスバリア性膜状体形成用水性分散液から得られるガスバリア性膜状体を有する、ガスバリア性積層体。
【請求項9】
積層体の少なくとも一方の面上にシーラント層を有する、請求項8に記載のガスバリア性積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液、ガスバリア性膜状体、ガスバリア性積層体及びガスバリア性膜状体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品をはじめとする包装材料分野では、内容物を保護するために、包装材料を透過する酸素や水蒸気などの気体を遮断するガスバリア性が求められる。
従来、ガスバリア性材料としては、温度や湿度の影響が少ないアルミニウムやポリ塩化ビニリデンが用いられてきた。しかしながら、これらを焼却処分する際、アルミニウムにおいては焼却残渣が排気口や炉内部で詰まり焼却効率を下げてしまう等の問題、ポリ塩化ビニリデンにおいてはダイオキシンが発生してしまう等の問題が生じてしまうため、環境負荷の少ない材料への代替が求められている。例えば、同じ化石資源からつくられる材料であっても、アルミニウムや塩素を含まないポリビニルアルコールやエチレン-ビニルアルコール共重合体への代替が進められているが、将来的には、石油由来材料からバイオマス材料への代替が期待されている。
【0003】
そこで、新たなガスバリア性材料として、セルロース系材料が注目されている。地球上で生産されるバイオマス材料の約半分を占めるセルロースは、生分解性を有することに加え、強度、弾性率、寸法安定性、耐熱性、結晶性などの物理特性にも優れているため、機能性材料への応用が期待されている。特にセルロースナノファイバー(以下、「CNF」ともいう)を用いた、ガスバリア性材料に関して、種々の改良技術が提案されている。
【0004】
特許文献1には、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子とセルロース繊維とを含むガスバリア層により、ガスバリア性を高湿度下でも維持し、劣化因子となる水蒸気や汚れなどの膜内への浸入・浸透を抑制することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、水蒸気や酸素に対するバリア性の高い膜状体として、ナノサイズの繊維径をもった微細セルロース繊維と、モンモリロナイト等の無機層状化合物とを含み、該微細セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシ基含有量が0.1~3mmol/gであり、該無機層状化合物と該微細セルロース繊維との質量比(無機層状化合物/セルロース繊維)が0.01~100である膜状体が記載されている。
【0006】
特許文献3には、リサイクル性に優れ、低コストで生産が可能な紙製ガスバリア材料として、紙基材の少なくとも一方の面に、紫外線照射処理を施したセルロースナノファイバーを含有するガスバリア層を設けたものが記載されている。そして、ガスバリア層には、例えばポリアクリルアミド等の水溶性のガスバリア性樹脂を含有させることが記載されている。
【0007】
特許文献4には、セルロースナノファイバー分散液に、水溶性高分子と、無機層状化合物と、サイズ剤とを加えることにより、セルロースナノファイバーから成る膜を耐湿化することにより、セルロース膜の優れたガスバリア性を高湿度下でも維持し、劣化因子となる水蒸気などの膜内へ浸入・浸透を抑制し、膜強度の湿度劣化が小さく密着性の高いガスバリア性フィルムを製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2011/118520号
【文献】特開2011-132501号公報
【文献】特開2012-076231号公報
【文献】特開2017-071783号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
セルロースナノファイバーから成る膜は、高湿度条件下ではセルロースの吸湿・膨潤により、膜強度などの性能が低下してしまう問題がある。特許文献1に記載されている水溶性高分子とセルロース繊維とを含むガスバリア層は、吸湿・膨潤の影響はある程度抑えられるものの、十分な効果が得られていない。したがって、上記問題を解決するためには、セルロースナノファイバー膜自体をさらに耐湿化する方法が求められる。
【0010】
また、特許文献2に記載されている、微細セルロース繊維と無機層状化合物とを含む膜状体、特許文献4に記載されているセルロースナノファイバー、水溶性高分子、無機層状化合物とサイズ剤を含む膜状体は、高湿度雰囲気中でのガスバリア性に優れているものの、高湿度雰囲気中でのガスバリア性の耐久性が不十分であり、また、機械強度の点で改良の余地がある。膜状体の機械強度が弱いと、例えば、基材フィルムの一面上に膜状体を設けてなる積層体の使用時において、膜状体の内部破壊(凝集破壊)が生じ、基材フィルムから膜状体が剥離するおそれがある。
【0011】
本発明の課題は、耐湿性に優れ、優れたガスバリア性を高湿度下でも維持し、劣化因子となる水蒸気などの膜内へ浸入・浸透を抑制し、膜強度の湿度劣化が小さく、密着性が高く、かつ機械強度に優れる、セルロースナノファイバーを含むガスバリア性膜状体を製造可能なガスバリア性膜状体形成用水性分散液を提供することを目的とする。
さらに、前記ガスバリア性膜状体形成用水性分散液を用いるガスバリア性膜状体の製造方法、前記ガスバリア性膜状体形成用水性分散液から得られるガスバリア性膜状体、及び、基材上に前記ガスバリア性膜状体を有するガスバリア性積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
[1] セルロースナノファイバー、無機層状化合物、水溶性高分子、架橋剤及び助剤を含み、下記要件(a)~(d)を満たす、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液。
要件(a):顔料体積濃度PVCと、臨界顔料体積濃度CPVCとの比である還元顔料体積濃度(Reduced Pigment Volume Content)Λが、以下の式(1)を満たす。
0<Λ≦1.1 ・・・(1)
(ただし、Λ=PVC/CPVC)
要件(b):セルロースナノファイバー、水溶性高分子、架橋剤及び助剤の体積の和に対する、セルロースナノファイバーの体積比率が50%以上である。
要件(c):セルロースナノファイバー、水溶性高分子、架橋剤及び助剤の体積の和に対する、助剤の体積比率が5%以下である。
要件(d):ガスバリア性膜状体形成用水性分散液中の全顔料の体積に対する、無機層状化合物の体積比率が85%以上である。
[2] 前記セルロースナノファイバーが、未変性セルロースナノファイバー、化学変性セルロースナノファイバー、酵素変性セルロースナノファイバーの少なくとも1種から選択され、繊維径の長径が短径の3倍以下、繊維径の長径が1nmから100nm、繊維長が長径の10倍以上2000倍以下である、[1]のガスバリア性膜状体形成用水性分散液。
[3] 前記ガスバリア性膜状体形成用水性分散液に分散された無機層状化合物の分散度が40μm以下である、[1]又は[2]のガスバリア性膜状体形成用水性分散液。
[4] 前記助剤が、分散剤、シランカップリング剤、サイズ剤、撥水剤、レベリング剤、消泡剤、合成高分子、潤滑剤、紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤及び安定剤から選択される少なくとも1種である、[1]~[3]いずれかのガスバリア性膜状体形成用水性分散液。
[5] [1]~[4]いずれかのガスバリア性膜状体形成用水性分散液を基材上に塗工した後に、加熱乾燥する、ガスバリア性膜状体の製造方法。
[6] [1]~[4]いずれかのガスバリア性膜状体形成用水性分散液から得られる、ガスバリア性膜状体。
[7] 前記ガスバリア性膜状体の厚みが0.1μm以上5μm以下である、[6]のガスバリア性膜状体。
[8] 基材の少なくとも一方の面上に、[1]~[4]いずれかのガスバリア性膜状体形成用水性分散液から得られるガスバリア性膜状体を有する、ガスバリア性積層体。
[9] 積層体の少なくとも一方の面上にシーラント層を有する、[8]のガスバリア性積層体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐湿性に優れ、優れたガスバリア性を高湿度下でも維持し、劣化因子となる水蒸気などの膜内へ浸入・浸透を抑制し、膜強度の湿度劣化が小さく、密着性が高く、かつ機械強度に優れる、セルロースナノファイバーを含むガスバリア性膜状体を製造可能なガスバリア性膜状体形成用水性分散液が提供される。
さらに、本発明によれば、前記ガスバリア性膜状体形成用水性分散液を用いるガスバリア性膜状体の製造方法、前記ガスバリア性膜状体形成用水性分散液から得られるガスバリア性膜状体、及び、基材上に前記ガスバリア性膜状体を有するガスバリア性積層体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ガスバリア性膜状体形成用水性分散液>
本発明のガスバリア性膜状体形成用水性分散液は、セルロースナノファイバー、無機層状化合物、水溶性高分子、架橋剤及び助剤を含有する。以下、これらの成分について説明する。
【0015】
(セルロースナノファイバー)
セルロースナノファイバーは、未変性セルロースナノファイバー、化学変性セルロースナノファイバー、酵素変性セルロースナノファイバーの少なくとも1種から選択される。その繊維径の長径は、短径の3倍以下であり、繊維径の長径は、1~100nm、好ましくは1~50nmであり、繊維長は繊維径の長径の10倍以上2000倍以下である。
【0016】
未変性セルロースナノファイバーとしては、高圧ホモジナイザー法(ゴーリン式)、マイクロフリュイダイザー法(対抗噴流衝突法)、砥石によるグラインダー法、ボールミル粉砕法、水中カウンターコリジョン法(ACC法)により機械的に解繊されたセルロースナノファイバー等があげられる。
【0017】
化学変性セルロースナノファイバーとしては、セルロースの水酸基をカルボキシメチル化したもの、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル(TEMPO)に代表されるN-オキシラジカルを触媒として酸化してカルボキシ基を導入したもの、リン酸基又はリン酸基由来の置換基を有するもの、セルロース繊維のヒドロキシ基の一部に亜リン酸のエステル基が導入されているもの、ザンテート化セルロースから得られたもの等があげられる。また、カルボキシ基、リン酸エステル基、亜リン酸エステル基が導入されたセルロースナノファイバーは、金属塩型、酸型のいずれの形態でもよい。
【0018】
酵素変性セルロースナノファイバーとしては、セルラーゼ系酵素を用いて、機械的に解繊されたセルロースナノファイバー等があげられる。酵素処理は、解繊前、解繊と同時、解繊後のいずれの段階において行われてもよい。
【0019】
セルロースナノファイバーは、2種以上を混合して用いてもよい。セルロースナノファイバーの製造方法は、特に限定されず、任意の方法を用いればよい。また、セルロースナノファイバーは、複数種の製造方法で作製されたものを混合して用いてもよい。
【0020】
(無機層状化合物)
本発明において、無機層状化合物は、主として、セルロースナノファイバーを含む膜状体のガスバリア性をより一層高める目的で使用される。本発明で用いる無機層状化合物としては、層状の構造を有する結晶性の無機化合物を用いることができる。無機化合物の例としては、タルク、カオリナイト族、スメクタイト族、マイカ族等に代表される粘土鉱物をあげることができる。カオリナイト族の粘土鉱物としては、例えばカオリナイトがあげられる。スメクタイト族の粘土鉱物としては、例えばモンモリロナイト、ベントナイト、サポナイト、ヘクトライト、パイデライト、スティブンサイト、ノントロナイトがあげられる。マイカ族の粘土鉱物としては、例えばバーミキュライト、ハロイサイト、テトラシリシックマイカがあげられる。また、層状複水酸化物であるハイドロタルサイト等を用いることもできる。
無機層状化合物として粘土鉱物以外のものを用いることも可能である。そのような化合物としては、例えば層状の構造を有する、チタン酸塩、ニオブ酸塩、マンガン酸塩、リン酸塩、酸化スズ、酸化コバルト、酸化銅、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化白金、酸化ルテニウム、酸化ロジウム等の金属酸化物、あるいはこれらの成分元素の複合酸化物等があげられる。またグラファイトを用いることもできる。
無機層状化合物は、天然のものでもよく、あるいは合成されたものでもよい。無機層状化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
無機層状化合物の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、好ましくは60μm以下、より好ましくは40μm以下である。
この範囲の平均粒径を有する無機層状化合物を用いることで、膜状体における無機層状化合物の分散性を良好にすることができ、膜状体のガスバリア性を一層高めることができる。
無機層状化合物の平均粒径は、次の方法で測定される。
無機層状化合物とイオン交換水を混合し0.05質量%の分散液を作成する。レーザー回折式粒度分布計(SALD-300V、解析ソフトWingSALD-300V、島津製作所製)を用いて粒度分布を測定し、粒度分布の平均値を算出して、これを平均粒径として定義する。なお、屈折率は、モンモリロナイト、マイカ、テトラシリシックマイカ、タルク、サポナイト、酸化マグネシウムを1.6とし、チタン酸塩を2.6とする。
【0022】
高湿度下におけるガスバリア性と強度を上げるため、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液に分散された無機層状化合物の分散度は、40μm以下とすることが好ましい。
分散度は、ISO1524準拠のJIS K 5600-2-5:1999 塗料一般試験方法-第2部:塗料の性状・安定性-第5節:分散度に準拠して測定されたものである。
【0023】
(水溶性高分子)
水溶性高分子は、25℃の水に対する溶解度が0.1g/Lを超える高分子であれば特に限定されない。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリル酸、デンプン、およびこれらの塩からなる群より選択される1種以上があげられる。
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液における水溶性高分子の含有量は、要件(a)~(c)を満たすのであれば特に限定されない。
【0024】
(架橋剤)
架橋剤は、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液から得られるガスバリア性膜状体をより緻密なものとすることができ、基材への密着性、ガスバリア性をさらに向上し得る。架橋剤としては、前記水溶性高分子中のカルボキシ基、水酸基等と架橋反応し得る官能基を分子中に2つ以上有する化合物であればよく、使用目的に応じて適宜選択される。
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液における架橋剤の含有量は、要件(a)~(c)を満たすのであれば特に限定されない。
【0025】
架橋剤が有する官能基としては、例えば、エポキシ基、アルデヒド基、アミノ基、カルボキシ基およびそれらの金属塩、イソシアネート基、ビニルスルホニル基、ヒドラジド基、オキサゾリン基、メチロール基、アルコキシ基、カルボジイミド基、水酸基等があげられる。架橋剤は、1分子中にこれらの官能基の2種以上を含んでいてもよい。架橋剤は、前記水溶性高分子に適したものが使用される。
エポキシ基を有する架橋剤としては、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等があげられる。
アルデヒド基を有する架橋剤としては、グリオキサール、グルタルアルデヒド等があげられる。
アミノ基を有する架橋剤としては、1,6-ジアミノヘキサン、1,8-ジアミノオクタン、トリエチレングリコールビス(2-アミノエチル)エーテル、トリス(3-アミノプロピル)アミン等があげられる。
カルボキシ基を有する架橋剤としては、クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、乳酸、グリセリン酸、ブタンテトラカルボン酸等があげられる。また、カルボキシ基の金属塩としては、ナトリウム塩、ジルコニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩等があげられる。
イソシアネート基を有する架橋剤としては、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、それらのアダクト、多量体、変性物等があげられる。
ビニルスルホニル基を有する架橋剤としては、N,N’-エチレンビス[2-(ビニルスルホニル)アセトアミド]や、N,N’-トリメチレンビス[2-(ビニルスルホニル)アセトアミド]等があげられる。
ヒドラジド基を有する架橋剤としては、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド等があげられる。
オキサゾリン基を有する架橋剤としては、ビスオキサゾリン化合物、オキソザリン基含有ポリマー等があげられる。
メチロール基を有する架橋剤としては、テトラメトキシ尿素等の尿素系化合物、ヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物等があげられる。
アルコキシ基を含有する架橋剤としては、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン等があげられる。
カルボジイミド基を有する架橋剤としては、ビスカルボジイミド化合物、ポリカルボジイミド樹脂等があげられる。
水酸基を有する架橋剤としては、エチレングリコール等のポリオール、ビスフェノールA等の多価フェノール等があげられる。
【0026】
(助剤)
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液には、各種の機能性を付与するために、助剤を含んでいてもよい。例えば、分散剤、シランカップリング剤、サイズ剤、撥水剤、レベリング剤、消泡剤、合成高分子、潤滑剤、紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤及び安定剤等から選択される少なくとも1種を用いることができ、用途に応じてフィルム特性を改良することができる。なお、本発明において、水溶性高分子、架橋剤及び顔料は、助剤に含まれない。
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液における助剤の含有量は、要件(a)~(c)を満たし、ガスバリア性を損なわない範囲内であれば特に限定されない。本発明においては、助剤を使用しなくてもよい。
【0027】
(要件(a))
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液は、下記要件(a)を満たす。これにより、ガスバリア性膜状体の高湿度下におけるガスバリア性と強度を上げることができる。
要件(a):顔料体積濃度PVCと、臨界顔料体積濃度CPVCとの比である還元顔料体積濃度(Reduced Pigment Volume Content)Λが、以下の式(1)を満たす。
0<Λ≦1.1 ・・・(1)
(式中、Λ=PVC/CPVC)
本発明において好ましいΛの範囲は、0<Λ≦0.95の範囲である。
【0028】
顔料体積濃度PVCは、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液中の全固形分の体積に対する、全顔料成分の体積の割合である。顔料成分には、無機層状化合物に加え、その他の顔料・填料が含まれる。顔料体積濃度PVCは、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液から形成されたガスバリア性膜状体塗膜の実測密度及び実測重量と、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液の組成から、下記の式(i)より求められる。
【数1】
(式中、wpiはn種類の顔料を使用する場合のi番目の顔料成分の使用量、dpiは、i番目の顔料の密度)
本発明において、顔料体積濃度PVCの範囲は、特に限定されない。例えば5~40体積%、好ましくは9~35体積%とすることができる。
【0029】
臨界顔料体積濃度CPVCは、顔料間の空隙がゼロ(顔料間がバインダー成分で完全に充填された状態)と考えられる最大の顔料体積濃度である。顔料成分には、無機層状化合物に加え、その他の顔料・填料が含まれる。CPVCは、顔料の密度と、アマニ油吸油量を用い、下記の式(ii)又は(iii)から求められる。
CPVC=1/(1+O1・d/100) ・・・(ii)
(式中、O1は顔料のアマニ油吸油量(ml/100g)、dは顔料の密度(g/cm))
CPVC=1/(1+O2・d/93.5) ・・・(iii)
(式中、O2は顔料のアマニ油吸油量(g/100g)、dは顔料の密度(g/cm))
また、n種類の顔料が用いられる場合の臨界顔料体積濃度CPVCは、下記の式(iv)又は(v)から求められる。
【数2】
(式中、O1iは使用するi番目の顔料のアマニ油吸油量(ml/100g)、diは使用するi番目の顔料の密度(g/cm))
【数3】
(式中、O2iは使用するi番目の顔料のアマニ油吸油量(g/100g)、diは使用するi番目の顔料の密度(g/cm))
なお、アマニ油吸油量O1及びO2は、ISO 787-5:1980準拠のJIS K 5101-13-1:2004 第13部:吸油量-第1節:精製あまに油法に準拠して求められたものである。
【0030】
(要件(b))
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液は、下記要件(b)を満たす。
要件(b):セルロースナノファイバー、水溶性高分子、架橋剤及び助剤の体積の和に対する、セルロースナノファイバーの体積比率が50%以上である。
要件(b)は、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液における顔料以外の固形分の体積に対する、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液におけるセルロースナノファイバーの体積が、50%以上であることを示す。好ましくは50~99%とすることができる。
本発明において、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液の全固形分体積におけるセルロースナノファイバーの体積比率の範囲は、特に限定されない。例えば20体積%以上、好ましくは30~50体積%とすることができる。
本発明において、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液の全固形分体積における水溶性高分子の体積比率の範囲は、特に限定されない。例えば15~45体積%、好ましくは30~45体積%とすることができる。
本発明において、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液の全固形分体積における架橋剤の体積比率の範囲は、特に限定されない。例えば1~10体積%、好ましくは2~5体積%とすることができる。
【0031】
(要件(c))
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液は、下記要件(c)を満たす。
要件(c):セルロースナノファイバー、水溶性高分子、架橋剤及び助剤の体積の和に対する、助剤の体積比率が5%以下である。
要件(c)は、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液における顔料以外の固形分の体積に対する、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液における助剤の体積が、5%以下であることを示す。
【0032】
(要件(d))
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液は、下記要件(d)を満たす。
要件(d):ガスバリア性膜状体形成用水性分散液中の全顔料の体積に対する、無機層状化合物の体積比率が85%以上である。
要件(d)は、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液における全顔料の体積に対する、無機層状化合物の体積が、85%以上であることを示す。
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液には、必要に応じて、無機層状化合物以外の顔料成分(着色顔料、充填剤、填料等)が含まれていてもよい。しかしながら、無機層状化合物以外の顔料成分の含有量は、要件(d)を満たす範囲内とされる。
【0033】
(ガスバリア性膜状体形成用水性分散液の調製方法)
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液を調製する工程としては、水性分散液の調製方法として公知の手段を制限なく用いることができる。
例えば、セルロースナノファイバー、無機層状化合物、水溶性高分子、架橋剤、助剤及び液媒体を、混合容器内に投入し、撹拌して混合する。各成分の投入量は、要件(a)~(d)を満たす範囲において、ガスバリア性膜状体における各成分の含有質量比に応じて設定される。各成分の投入順序は、特に制限されず、各成分を同時に投入してもよく、段階的に投入してもよい。また、少なくとも一部の成分を、あらかじめ液媒体に分散又は溶解させた後に投入してもよく、各成分のうちの2種以上を混合した後に残りの成分を投入してもよい。液媒体としては、水が好ましく用いられるが、水に可溶な有機溶媒(アルコール類、エーテル類、ケトン類等)と水との混合溶媒を用いることができる。
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液の調製に際して、その固形分濃度は、特に制限されないが、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下となるように調製される。
【0034】
(ガスバリア性膜状体及びその調製方法)
ガスバリア性膜状体は、前記ガスバリア性膜状体形成用水性分散液を、基材の少なくとも一方の面に塗工し、乾燥することで調製できる。本発明においては、必要に応じて、ガスバリア性膜状体を基材から剥離して用いることができる。
基材としては、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液の塗膜を形成することが可能なものであればよく、例えば、紙、フィルム、シート、織布、不織布等の薄状物を用いることができる。
好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックフィルムがあげられる。
基材の厚みは、特に制限されないが、5~150μmの範囲から適宜選択される。
基材としては、基材の塗工面をコロナ放電処理等で表面処理して濡れ性(親水性)を改善したものや、基材の塗工面に離性を付与したものを用いることもできる。
【0035】
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液の塗工方法は、特に制限されず、公知の塗工方式を利用することができる。例えば、バーコート方式、ロールコート方式、ダイコート方式、スライドコート方式、スプレーコート方式等を用いることができる。塗膜を形成する際、その塗工回数は、通常1回であるが、必要に応じ、複数回に分けて塗工してもよい。複数回に分けて塗工する場合には、前の塗工によって形成された塗膜が湿潤状態のうちに次の塗膜を形成する、いわゆるウェット・オン・ウェット方式の塗工方法を用いることが好ましい。乾燥前の塗膜の厚み(湿潤状態の塗膜の厚み)は、特に制限されず、膜状体の用途等に応じて適宜設定することができる。好ましくは1~500μmである。
【0036】
形成された塗膜を乾燥させることで、ガスバリア性膜状体を得ることができる。塗膜の乾燥手段としては、公知の塗膜乾燥手段を制限なく用いることができ、例えば、電気乾燥炉(自然対流式又は強制対流式)、熱風循環式の乾燥炉、遠赤外線による加熱と熱風循環を併用した乾燥炉、加熱しながら減圧できる減圧乾燥炉を用いた方法等を採用することができる。
ガスバリア性膜状体の乾燥後の膜厚(乾燥膜厚)は特に制限されず、膜状体の用途等に応じて適宜設定することができる。好ましくは0.1~5μmである。
【0037】
ガスバリア性膜状体は、各種のガス、例えば大気中に含まれる酸素、水蒸気、窒素、二酸化炭素等に対するバリア性が高いものである。特に、高湿度雰囲気(湿度70%RH以上)中でのガスバリア性、とりわけ高湿度雰囲気中での酸素バリア性が高い。具体的には、23℃、85%RHにおける酸素透過度が、0.01~20ml/(m・day)であり、好ましくは0.01~5ml/(m・day)という低レベルのものである。
【0038】
(積層体)
積層体は、ガスバリア性膜状体が、基材の少なくとも一方の面上に積層されたものである。
積層体は、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液を基材の少なくとも一方の面上に塗工し乾燥して調製することができる。また、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液を基材の少なくとも一方の面上に塗工し乾燥してガスバリア性膜状体を得た後、基材から剥離し別の基材に積層して調製することもできる。
積層体には、少なくとも一方の面上にシーラント層を設けることができる。シーラント層としては、ヒートシール層などの公知の層を用いることができる。シーラント層を構成する成分としては特に制限されず、ポリオレフィン等の材料を用いることができる。これにより、積層体にヒートシール性等を付与することができ、包装材料とした際の利便性が向上することとなる。
【0039】
本発明の製造方法の実施によって得られる膜状体は、高湿度雰囲気中でのガスバリア性及び機械強度に優れている。したがって、例えば、食品、化粧品、医薬、医療器材、機械部品、電子機器及び衣料等の包装材料等の用途に好適に用いられる。
【実施例
【0040】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0041】
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液の構成成分は、以下のとおりである。
<セルロースナノファイバー>
(CNF1)
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)1.95g(絶乾1gのセルロースに対し0.025mmol)と臭化ナトリウム51.4g(絶乾1gのセルロースに対し1mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物に塩酸を添加し、pHを2.4にした後、ガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、イオン交換水を用いて酸化パルプを十分に洗浄し、次いで脱水処理を行った。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシ基量は1.6mmol/gであった。
上記の工程で得られた変性パルプを、2-プロパノール/水=30/70の混合液を用いて1.0%(w/v)分散液とし、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、セルロースナノファイバー1(CNF1;密度1.4g/cm)の2-イソプロパノール/水分散液を得た。
(CNF2)
パルプを混ぜることができる撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙製)を乾燥質量で253g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で56.3g(パルプのグルコース残基当たり0.9倍モル)加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分間撹拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを127g(パルプのグルコース残基当たり0.7倍モル)添加した。30分間撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシメチル化したパルプを得た。
上記の工程で得られた変性パルプを、2-イソプロパノール/水=30/70の混合液を用いて1.0%(w/v)分散液とし、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、セルロースナノファイバー2(CNF2;密度1.4g/cm)の2-イソプロパノール/水分散液を得た。
【0042】
<無機層状化合物>
(マイカ)
マイカ(密度2.8g/cm、吸油量70ml/100g)を用い、固形分40%となるように水媒体中でホモディスパーにより分散し、その後、2-プロパノール/水=29.7/65.3の混合液を用いて1%に希釈分散した。
(ベントナイト)
ベントナイト(密度2.6g/cm、吸油量80ml/100g)を用い、固形分40%となるように水媒体中でホモディスパーにより分散し、その後、2-プロパノール/水=29.7/65.3の混合液を用いて1%に希釈分散した。
【0043】
<水溶性高分子>
(PVA)
ポリビニルアルコール(PVA;密度1.22g/cm)を用い、水で10%に希釈し、その後2-プロパノール/水=29.7/60.3で1%に希釈した。
(EVOH)
エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH;密度1.21g/cm)を用い、水で10%に希釈し、その後2-プロパノール/水=29.7/60.3で1%に希釈した。
【0044】
<架橋剤>
(架橋剤1)
ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(DEGDGE;密度1.12g/cm)を架橋剤1として用いた。
(架橋剤2)
N,N-トリメチレンビス[2-(ビニルスルホニル)アセトアミド](密度1.12g/cm)を架橋剤2として用いた。
【0045】
[実施例1~8、比較例1~5]
前記のセルロースナノファイバー、無機層状化合物、水溶性高分子及び架橋剤を、それぞれ表1に示す組成となるように混合し、全体の固形分を100質量部とした。次に、ホモミキサーを用いて、12,000rpmで15分間混合して、実施例1~8及び比較例1~5に係るガスバリア性膜状体形成用水性分散液を得た。なお、実施例1~8及び比較例1~5に係るガスバリア性膜状体形成用水性分散液において、要件(b)のセルロースナノファイバー、水溶性高分子、架橋剤及び助剤の体積の和に対する、セルロースナノファイバーの体積比率は50%である。
得られた各ガスバリア性膜状体形成用水性分散液を、表面にコロナ放電処理が施された厚み25μmのPETフィルム基材の一面上に、バーコート方式の塗工装置を用いて乾燥膜厚1.0μmになるように塗工後、乾燥させガスバリア性膜状体を製造した。
【0046】
【表1】
【0047】
得られたガスバリア性膜状体それぞれについて、PVC、CPVC、Λ、分散度、高湿度雰囲気化の水蒸気透過度(40℃、90%RH)、屈曲前の高湿度雰囲気下での酸素透過度(23℃、85%RH)及び屈曲後の高湿度雰囲気下の酸素透過度(23℃、85%RH)をそれぞれ測定して、表2に示した。
【0048】
【表2】
【0049】
評価方法は以下のとおりである。
(PVC)
内径寸法10cm×10cmのテフロン(登録商標)製の容器に、各ガスバリア性膜状体形成用水性分散液を25ml注入後に乾燥し、厚み及び重量を測定して塗膜の密度を得た。
得られた塗膜の密度を用い、上記式(i)に基づき顔料体積濃度PVCを得た。なお、Λが1.0を超える場合、塗膜内部に空隙が生じるため、見かけ密度から計算するPVCは実際のPVCよりも小さい値となる場合がある。
(CPVC)
上記式(ii)~(v)のいずれかを用いて、臨界顔料体積濃度CPVCを得た。
(分散度)
JIS K 5600-2-5:1999 塗料一般試験方法-第2部:塗料の性状・安定性-第5節:分散度に準拠し、100μmグラインドゲージを用いて、各ガスバリア性膜状体形成用水性分散液の分散度を得た。
(水蒸気透過度)
得られたガスバリア性膜状体を基材から剥離した後に、JIS K 7129:2008に準拠し、温度40±0.5℃、相対湿度差90±2%の条件下で、試験片を透過した水蒸気による低湿度チャンバ内の相対湿度変化を感湿センサ法により、透湿度測定器(Dr.Lyssy社製、L80-4000)を用いて測定した。
(屈曲前の酸素透過度)
得られたガスバリア性膜状体を基材から剥離した後に、ISO 15105-2:2003準拠するJIS K 7126-2 プラスチック-フィルム及びシート- ガス透過度試験方法-第2部:等圧法 付属書A(規定)電解センサ法による酸素ガス透過度の試験方法に準拠し、酸素透過率測定装置(MOCON社製OX-TRAN2/21)用い、23℃-85%RH条件にて測定した。ここで、23℃-85%RH条件は、23℃及び湿度85%RHの酸素ガス(試験ガス)、23℃及び湿度85%の窒素ガス(キャリアガス)の環境下での酸素透過度である。
(屈曲後の酸素透過度)
得られたガスバリア性膜状体を基材から剥離した後に、JIS K 5600 5-1:円筒形マンドレル法に準拠して耐屈曲性試験を行った。その後、屈曲前の酸素透過度と同様にして酸素透過度を測定した。
【0050】
表1及び表2より、セルロースナノファイバー、無機層状化合物、水溶性高分子、架橋剤及び助剤を含み、所定の要件(a)~(d)を満たす、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液から得られたガスバリア性膜状体は、高湿度での水蒸気バリア性、酸素バリア性に優れ、さらに屈曲試験後の酸素バリア性も劣化しないものである。