IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新潟原動機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エンジン 図1
  • 特許-エンジン 図2
  • 特許-エンジン 図3
  • 特許-エンジン 図4
  • 特許-エンジン 図5
  • 特許-エンジン 図6
  • 特許-エンジン 図7
  • 特許-エンジン 図8
  • 特許-エンジン 図9
  • 特許-エンジン 図10
  • 特許-エンジン 図11
  • 特許-エンジン 図12
  • 特許-エンジン 図13
  • 特許-エンジン 図14
  • 特許-エンジン 図15
  • 特許-エンジン 図16
  • 特許-エンジン 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 25/20 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
F02B25/20 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019197422
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021071077
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】503116899
【氏名又は名称】株式会社IHI原動機
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅本 義幸
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】寺本 潤
(72)【発明者】
【氏名】四井 和樹
(72)【発明者】
【氏名】井口 敬徳
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-243918(JP,A)
【文献】特開平04-303121(JP,A)
【文献】特開2004-340120(JP,A)
【文献】特開2018-059453(JP,A)
【文献】特開2019-157843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 25/00
F02B 75/04
F02D 13/02
F02F 1/22
F01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンと、
前記ピストンが収容されるシリンダと、
前記シリンダに設けられ、前記シリンダの内周面から外周面まで貫通する掃気ポートと、
前記シリンダの内周面よりも径方向外側に設けられ、下死点側に設けられる下端部が、前記掃気ポートの上死点側の端部よりも下死点側に突出する閉位置、および、前記下端部が前記閉位置よりも上死点側に位置する開位置に変位可能な可動体と、
を備え
前記掃気ポートおよび前記可動体は、前記シリンダの周方向に離隔して複数設けられ、
複数の前記可動体を連結する連結部材をさらに備え、
前記連結部材は、前記可動体の前記下端部に接続される連結部を備え、
前記連結部は、前記可動体よりも前記シリンダの内周面側に突出する、
エンジン。
【請求項2】
前記シリンダに設けられ、前記掃気ポートの上死点側に連続し、前記可動体が移動可能に収容される収容室をさらに備える請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記可動体に接続され、前記可動体に対して前記ピストンのストローク方向に力を作用させる駆動装置をさらに備える請求項1または2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記駆動装置は油圧シリンダを含む請求項に記載のエンジン。
【請求項5】
前記ピストンの上死点位置を切り替える圧縮比可変機構をさらに備える請求項1からのいずれか1項に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に示されるように、ピストンのストローク方向に移動可能な可動体が掃気ポートに設けられたエンジンが提案されている。特許文献1に示されるエンジンでは、シリンダの内周面に可動体が設けられ、ピストンとの間に生じる摩擦により、可動体がストローク方向に移動する。
【0003】
この構成によれば、膨張行程において、可動体が下死点側に移動するため、掃気ポートが開くタイミングを遅くすることができる。一方で、給気(掃気)工程においては、可動体が上死点側に移動しているため、掃気ポートが開口している期間が確保され、シリンダ内に掃気ガスを十分に供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-59453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の構成によれば、ピストンとの間に生じる摩擦により可動体を作動させる。そのため、ピストンが可動体を通過する際に、例えばピストンリングが拡径することで衝撃が生じるおそれがある。
【0006】
本開示は、衝撃を抑制することができるエンジンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るエンジンは、ピストンと、ピストンが収容されるシリンダと、シリンダに設けられ、シリンダの内周面から外周面まで貫通する掃気ポートと、シリンダの内周面よりも径方向外側に設けられ、下死点側に設けられる下端部が、掃気ポートの上死点側の端部よりも下死点側に突出する閉位置、および、下端部が閉位置よりも上死点側に位置する開位置に変位可能な可動体と、を備え、掃気ポートおよび可動体は、シリンダの周方向に離隔して複数設けられ、複数の可動体を連結する連結部材をさらに備え、連結部材は、可動体の下端部に接続される連結部を備え、連結部は、可動体よりもシリンダの内周面側に突出する
【0008】
また、シリンダに設けられ、掃気ポートの上死点側に連続し、可動体が移動可能に収容される収容室をさらに備えてもよい。
【0010】
また、可動体に接続され、可動体に対してピストンのストローク方向に力を作用させる駆動装置をさらに備えてもよい。
【0011】
また、駆動装置は油圧シリンダを含んでもよい。
【0012】
また、ピストンの上死点位置を切り替える圧縮比可変機構をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示のエンジンによれば、衝撃を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】エンジンの全体構成を示す説明図である。
図2】ピストンロッドとクロスヘッドピンとの連結部分を抽出した抽出図である。
図3】第1の実施形態の開閉機構を説明する図である。
図4図3のIV矢視展開図である。
図5図3のV-V断面図である。
図6】掃気ポートの開閉タイミングの第1の例を説明する図である。
図7】第1の例における掃気量を説明する図である。
図8】掃気ポートの開閉タイミングの第2の例を説明する図である。
図9】第2の例における掃気量を説明する図である。
図10】掃気ポートの開閉タイミングの第3の例を説明する図である。
図11】第3の例における掃気量を説明する図である。
図12】第2の実施形態の開閉機構を説明する図である。
図13図12のXIII矢視展開図である。
図14図12のXIV-XIV断面図である。
図15】第3の実施形態の開閉機構を説明する図である。
図16】第3の実施形態における開閉機構の動作を説明する図である。
図17】第4の実施形態の開閉機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
図1は、エンジン1の全体構成を示す説明図である。図1に示すように、エンジン1は、シリンダ10を備える。シリンダ10内には、ピストン12が設けられる。ピストン12は、上端に設けられる冠面12aと、外周に設けられるピストンリング12bとを含む。ピストン12は、シリンダ10内を往復移動する。ピストン12には、ピストンロッド14の一端が取り付けられている。ピストンロッド14の他端には、クロスヘッド16のクロスヘッドピン18が連結される。クロスヘッド16は、ピストン12とともに往復移動する。ガイドシュー16aによって、クロスヘッド16の図1中、左右方向(ピストン12のストローク方向に垂直な方向)の移動が規制される。
【0017】
クロスヘッドピン18は、連接棒20の一端に設けられたクロスヘッド軸受20aに軸支される。クロスヘッドピン18は、連接棒20の一端を支持している。ピストンロッド14の他端と連接棒20の一端は、クロスヘッド16を介して接続される。
【0018】
連接棒20の他端は、クランクシャフト22に連結される。連接棒20に対してクランクシャフト22が回転可能である。ピストン12の往復移動に伴いクロスヘッド16が往復移動すると、クランクシャフト22が回転する。
【0019】
クランクシャフト22には、フライホイール24が取り付けられる。フライホイール24の慣性によってクランクシャフト22などの回転が安定化する。シリンダカバー26は、シリンダ10の上端に設けられる。シリンダカバー26には、排気弁箱28が挿通される。
【0020】
排気弁箱28の一端は、ピストン12に臨んでいる。排気弁箱28の一端には、排気ポート26aが開口する。排気ポート26aは、燃焼室30に開口する。燃焼室30は、ピストン12の冠面12aに面する。燃焼室30は、シリンダカバー26とシリンダ10とピストン12に囲繞されてシリンダ10の内部に形成される。
【0021】
燃焼室30には、排気弁32の弁体が位置する。排気弁32のロッド部には、排気弁駆動装置34が取り付けられる。排気弁駆動装置34は、排気弁箱28に配される。排気弁駆動装置34は、排気弁32をピストン12のストローク方向(以下、単にストローク方向と呼ぶ)に移動させる。
【0022】
排気弁32がピストン12側に移動して開弁すると、シリンダ10内で生じた燃焼後の排気ガスが、排気ポート26aから排気される。排気後、排気弁32が排気弁箱28側に移動して、排気ポート26aが閉弁される。
【0023】
排気管36は、排気弁箱28および過給機Cに取り付けられる。排気管36の内部は、排気ポート26aおよび過給機Cのタービンに連通する。排気ポート26aから排気された排気ガスは、排気管36を通って過給機Cのタービン(不図示)に供給された後、外部に排気される。
【0024】
また、過給機Cのコンプレッサ(不図示)によって、活性ガスが加圧される。ここで、活性ガスは、例えば、空気である。加圧された活性ガスは、掃気溜38において、冷却器40によって冷却される。シリンダ10の下端は、シリンダジャケット42で囲繞される。シリンダジャケット42の内部には、掃気室42aが形成される。冷却後の活性ガスは、掃気室42aに圧入される。
【0025】
シリンダ10の下端側には、掃気ポート10aが設けられる。掃気ポート10aは、シリンダ10の内周面から外周面まで貫通する孔である。掃気ポート10aは、シリンダ10の周方向に離隔して複数設けられている。ピストン12が掃気ポート10aより下死点側に移動すると、掃気室42aとシリンダ10内の差圧によって、掃気ポート10aからシリンダ10内に活性ガスが吸気される。
【0026】
また、シリンダカバー26には、燃料噴射弁44が設けられる。燃料噴射弁44の先端は燃焼室30側に向けられる。燃料噴射弁44は、燃焼室30に液体燃料(燃料油)を噴出する。液体燃料が燃焼し、その膨張圧によってピストン12が往復移動する。
【0027】
図2は、ピストンロッド14とクロスヘッドピン18との連結部分を抽出した抽出図である。図2に示すように、クロスヘッドピン18のうち、ピストン12側の外周面には、平面部18aが形成される。平面部18aは、ストローク方向に対して、大凡垂直な方向に延在する。
【0028】
クロスヘッドピン18には、ピン穴18bが形成される。ピン穴18bは、平面部18aに開口する。ピン穴18bは、平面部18aからストローク方向に沿ってクランクシャフト22側(図2中、下側)に延在する。
【0029】
クロスヘッドピン18の平面部18aには、カバー部材50が設けられる。カバー部材50は、締結部材52によってクロスヘッドピン18の平面部18aに取り付けられる。カバー部材50は、ピン穴18bを覆う。カバー部材50には、ストローク方向に貫通するカバー孔50aが設けられる。
【0030】
ピストンロッド14は、大径部14aおよび小径部14bを有する。大径部14aの外径は、小径部14bの外径よりも大きい。大径部14aは、ピストンロッド14の他端に形成される。大径部14aは、クロスヘッドピン18のピン穴18bに挿通される。小径部14bは、大径部14aよりピストンロッド14の一端側に形成される。小径部14bは、カバー部材50のカバー孔50aに挿通される。
【0031】
油圧室54は、ピン穴18bの内部に形成される。ピン穴18bは、大径部14aによってストローク方向に仕切られる。大径部14aは、油圧室54のうち、ピストン12の上死点側に位置する。油圧室54は、大径部14aで仕切られたピン穴18bの底面側の空間である。大径部14aのうち、燃焼室30と反対側に臨む(図2中、下側の)油圧面14aは、油圧室54およびピン穴18bの底面に面する。
【0032】
油圧室54の側壁は、ストローク方向に延在する。ピン穴18bの底面には、油路56の一端が開口する。油路56の他端は、クロスヘッドピン18の外部に開口する。油路56の他端には、油圧配管58が接続される。
【0033】
油圧配管58には、油圧ポンプ60が連通する。すなわち、油圧ポンプ60は、油圧室54に接続される。油圧ポンプ60と油路56との間に逆止弁62が設けられる。逆止弁62によって油路56側から油圧ポンプ60側への作動油の流れが抑制される。油圧ポンプ60から油路56を介して油圧室54に作動油が圧入(送出)される。
【0034】
また、油圧配管58のうち、油路56と逆止弁62の間には分岐配管64が接続される。分岐配管64には、切換弁66が設けられる。切換弁66は、例えば、電磁弁である。油圧ポンプ60の作動中、切換弁66は閉弁される。油圧ポンプ60の停止中、切換弁66が開弁すると、油圧室54から分岐配管64側に作動油が排出される。切換弁66のうち、油路56と反対側は、不図示のオイルタンクに連通する。排出された作動油は、オイルタンクに貯留される。オイルタンクは、油圧ポンプ60に作動油を供給する。
【0035】
油圧室54の作動油の油量に応じて、大径部14aがストローク方向にピン穴18bの内周面を摺動する。その結果、ピストンロッド14がストローク方向に移動する。ピストン12は、ピストンロッド14と一体に移動する。油圧室54の内部の作動油が増量されるとピストン12の上死点位置が燃焼室30側に移動する。油圧室54の内部の作動油が減量されるとピストン12の上死点位置が下死点位置側に移動する。こうして、ピストン12の上死点位置が可変となる。
【0036】
すなわち、エンジン1は、圧縮比可変機構Vを備える。圧縮比可変機構Vは、上記の油圧室54、および、ピストンロッド14の大径部14aを含んで構成される。圧縮比可変機構Vは、ピストン12の上死点位置を移動させることで、圧縮比を可変とする。エンジン1は、運転モードを、高圧縮比モードと低圧縮比モードとに切り替え可能である。高圧縮比モードでは、低圧縮比モードに比べて、ピストン12の冠面が相対的に上方まで移動する。つまり、高圧縮比モードは、低圧縮比モードに比べて、上死点位置が上方に移動する。
【0037】
また、ピストン12のストローク量は、高圧縮比モードと低圧縮比モードとで等しい。ただし、高圧縮比モードにおけるピストン12のストローク範囲は、低圧縮比モードにおけるピストン12のストローク範囲よりも上方にずれる。そのため、高圧縮比モードでは、低圧縮比モードに比べて、膨張行程においてピストン12が掃気ポート10aに到達するタイミングが遅くなる。また、高圧縮比モードでは、低圧縮比モードに比べて、圧縮行程においてピストン12が掃気ポート10aよりも上死点側に移動するタイミングが早くなる。その結果、例えば、低圧縮比モードを基準にして掃気ポート10aの位置を決めた場合、高圧縮比モードでは、シリンダ10内に供給される活性ガスの量(以下、掃気量と呼ぶ)が減少し、掃気効率が低下するおそれがある。
【0038】
以下に説明する各実施形態では、エンジン1が、掃気ポート10aを開閉する開閉機構を備える。開閉機構により、運転モードごとに、掃気ポート10aの最適なタイミングでの開閉を実現する。
【0039】
図3は、第1の実施形態の開閉機構100を説明する図である。図3には、掃気ポート10aを通るシリンダ10のストローク方向の断面を示す。図3において、シリンダ10を境にして図中左側がシリンダ10の内側であり、図中右側がシリンダ10の外側である。また、図3中上側が上死点側であり、図3中下側が下死点側である。
【0040】
図3に示すように、シリンダ10は、内周面10bから外周面10cまで径方向に厚みを有する。掃気ポート10aは、シリンダ10を径方向に貫通し、内周面10bから外周面10cまで延在する。シリンダ10には、全ての掃気ポート10aの上方に切り欠き部10dが形成されている。切り欠き部10dは、シリンダ10の外周面に形成された溝で構成される。
【0041】
切り欠き部10dは、掃気ポート10aごとに設けられる。したがって、シリンダ10の外周面10cには、切り欠き部10dが周方向に互いに離隔して複数設けられている。切り欠き部10dは、ストローク方向に延在する。切り欠き部10dのストローク方向の下死点側は、掃気ポート10aに連続する。換言すれば、切り欠き部10dは、掃気ポート10aの上死点側から、ストローク方向に延在する。
【0042】
ここで、掃気ポート10aの深さ、より詳細には、掃気ポート10aにおけるシリンダ10の外周面10cから内周面10bまでの距離をD1とする。また、シリンダ10の外周面10cから切り欠き部10dの底面10dまでの距離、すなわち、切り欠き部10dの深さをD2とする。切り欠き部10dの深さD2は、掃気ポート10aの深さD1よりも小さい。したがって、切り欠き部10dと、シリンダ10の内周面10bとは、シリンダ10を構成する壁部によって径方向に仕切られている。
【0043】
また、シリンダ10の外周面10cには、固定溝10eが形成される。固定溝10eは、切り欠き部10dの上端からストローク方向に延在する。つまり、固定溝10eは、切り欠き部10dと連続する。固定溝10eの深さD3は、切り欠き部10dの深さD2よりも小さい。したがって、固定溝10eの底面である固定面10eは、切り欠き部10dの底面10dよりもシリンダ10の径方向外側に位置する。また、固定溝10eのストローク方向の長さは、切り欠き部10dのストローク方向の長さよりも小さい。
【0044】
切り欠き部10dには、蓋部材102が取り付けられる。蓋部材102により、切り欠き部10dが閉塞され、蓋部材102と底面10dとの間に収容室104が形成される。収容室104には、可動体110がストローク方向に移動可能に収容される。
【0045】
図4は、図3のIV矢視展開図である。なお、図4では、図3のIV矢視における3つの掃気ポート10aのみを示している。また、図4において、(a)は、蓋部材102および可動体110を取り外した状態を示しており、(b)および(c)は、シリンダ10の外観を模式的に示している。なお、図4では、可動体110をクロスハッチングで示している。また、図5は、図3のV-V断面図である。
【0046】
図4および図5に示すように、切り欠き部10dは、周方向に離隔して対向する一対の奥側面10dを備える。一対の奥側面10dの離隔距離W2は、掃気ポート10aの周方向の幅W1と等しい。また、切り欠き部10dは、奥側面10dよりも径方向外側に位置し、周方向に離隔して対向する一対の前側面10dを備える。一対の前側面10dの離隔距離W3は、一対の奥側面10dの離隔距離W2、および、掃気ポート10aの周方向の幅W1よりも大きい。一対の前側面10dの離隔距離W3と、一対の奥側面10dの離隔距離W2との寸法差により、切り欠き部10dに段差面10dが形成される。
【0047】
なお、一対の奥側面10dおよび一対の前側面10dは、それぞれ大凡平行に対向している。また、奥側面10dおよび前側面10dの延在方向は、シリンダ10の径方向に対して僅かな傾きを有している。同様に、掃気ポート10aの貫通方向も、シリンダ10の径方向に対して僅かな傾きを有している。なお、掃気ポート10aの上死点側は、円弧状に湾曲している。ただし、掃気ポート10aの上死点側は、ストローク方向に直交する方向に延在する平面形状でもよい。
【0048】
図3から図5に示すように、蓋部材102は、嵌合部102aを備える。嵌合部102aは、離隔距離W3よりも僅かに小さい幅を有しており、段差面10dに突き当てられた状態で、切り欠き部10dに嵌合する。また、蓋部材102は、嵌合部102aから上方に連続する取付部102bを備える。取付部102bは、図3に示すように、嵌合部102aよりも厚みが小さく、固定溝10eの固定面10eに面接触する。
【0049】
取付部102bには、厚み方向に貫通する貫通孔102bが形成されている。貫通孔102bを挿通するボルトにより、蓋部材102がシリンダ10に取り付けられる。なお、図示は省略するが、嵌合部102aには、シリンダ10の周方向に突出するフランジが複数設けられている。各フランジを挿通するボルトにより、嵌合部102aもシリンダ10に固定されている。
【0050】
収容室104は、蓋部材102の嵌合部102a、切り欠き部10dの底面10d、および、一対の奥側面10dに囲繞された空間である。収容室104は、掃気ポート10aの上死点側の内周面に開口する。換言すれば、収容室104は、掃気ポート10aの上死点側に連続する。また、蓋部材102の嵌合部102aには、空気孔102aが形成されている。空気孔102aにより、収容室104は、シリンダ10の外部と連通する。収容室104には、ストローク方向に直交する方向の断面形状が矩形の可動体110が収容される。
【0051】
図4に示すように、可動体110の幅(周方向の幅)は、収容室104の周方向の幅、すなわち、離隔距離W2よりも僅かに小さい。したがって、可動体110の幅(周方向の幅)は、掃気ポート10aの周方向の幅W1よりも僅かに小さい。また、可動体110の厚み(径方向の長さ)は、収容室104の径方向の距離よりも僅かに小さい。これにより、可動体110は、収容室104内をストローク方向に摺動可能である。ただし、可動体110と掃気ポート10aとの間に形成される周方向の隙間は極めて小さい。
【0052】
図3に示すように、可動体110は、下死点側に設けられる下端部110aを有する。そして、可動体110は、下端部110aが、掃気ポート10aの上死点側の端部10aよりも下死点側に突出する閉位置、および、下端部110aが閉位置よりも上死点側に位置する開位置に変位可能である。可動体110が閉位置にあるとき、掃気ポート10aの上死点側が、可動体110により閉塞される。
【0053】
上記したように、掃気ポート10aおよび可動体110は、シリンダ10の周方向に離隔して複数設けられる。複数の可動体110は、連結部材112により連結される。図5に示すように、連結部材112は、シリンダ10の外周面10cよりも径が大きい環状のリング部112aと、リング部112aから掃気ポート10a内に突出する連結部112bとを備える。連結部112bは、可動体110の下端部110aに接続される。このようにして、複数の可動体110が連結部材112によって連結されることとなる。
【0054】
なお、連結部112bの突出方向の先端は、シリンダ10の内周面10bよりも僅かに径方向外側に位置している。これにより、ピストン12と連結部112bとの接触が回避される。また、連結部112bの突出方向の先端は、可動体110よりもシリンダ10の内周面10b側に突出する。これにより、可動体110が閉位置にあるときに、可動体110よりもシリンダ10の内周面10b側であって、掃気ポート10aの端部10aと、可動体110の下端部110aとの間の空間が、連結部112bによってストローク方向に仕切られる。
【0055】
また、図3に示すように、開閉機構100は、駆動装置120を備える。駆動装置120は、連結部材112を介して可動体110に接続される。駆動装置120は、可動体110に対してストローク方向に力を作用させる。つまり、可動体110は、駆動装置120が作用させる駆動力によってストローク方向に移動する。
【0056】
駆動装置120は、複数の油圧シリンダ122を備える。複数(例えば2から6個)の油圧シリンダ122は、シリンダ10の周方向に離隔して配される。ここでは、油圧シリンダ122が、蓋部材102に取り付けられる。ただし、油圧シリンダ122の数は、掃気ポート10a(蓋部材102)の数よりも少ない。したがって、図4に示すように、油圧シリンダ122が設けられる蓋部材102と、油圧シリンダ122が設けられない蓋部材102とが存在する。なお、ここでは油圧シリンダ122が蓋部材102に設けられるが、油圧シリンダ122は、シリンダ10の外周面10cに取り付けられてもよい。
【0057】
図3に示すように、油圧シリンダ122は、中空のシリンダ本体124と、作動部材126とを含む。作動部材126は、シリンダ本体124内に位置するピストン部126aと、ピストン部126aから延在し、シリンダ本体124の外部に突出するロッド部126bとを備える。作動部材126すなわちロッド部126bは、シリンダ本体124の外側において連結部材112に接続される。
【0058】
シリンダ本体124の内部には、ピストン部126aによって区画される2つの空間が形成される。ここでは、シリンダ本体124の内部において、ピストン部126aよりもロッド部126b側にロッド側室124aが設けられ、ピストン部126aを境にしてロッド部126bとは反対側にピストン側室124bが設けられる。
【0059】
ロッド側室124aには第1油路128aが接続され、ピストン側室124bには第2油路128bが接続されている。また、駆動装置120は、作動油をポンプ通路130aに吐出する油圧ポンプ130と、タンク通路132aから作動油が還流するタンク132とを含む。第1油路128a、第2油路128b、ポンプ通路130aおよびタンク通路132aは、切替弁134に接続される。
【0060】
切替弁134は、4つのポートを含み、3位置に切り替え可能な電磁弁で構成される。切替弁134が図3に示す中立位置にあるとき、ロッド側室124aおよびピストン側室124bは、油圧ポンプ130およびタンク132から遮断される。その結果、作動部材126が静止し、可動体110の位置が保持される。
【0061】
切替弁134が図3中左側の下降位置に切り替えられると、ピストン側室124bが油圧ポンプ130と連通し、ロッド側室124aがタンク132と連通する。その結果、作動部材126が伸長し、可動体110が掃気ポート10a内に突出する。また、切替弁134が図3中右側の上昇位置に切り替えられると、ロッド側室124aが油圧ポンプ130と連通し、ピストン側室124bがタンク132と連通する。その結果、作動部材126が収縮し、可動体110が収容室104内に収容される。
【0062】
制御部136は、油圧ポンプ130および切替弁134を制御する。例えば、制御部136は、運転モードを低圧縮比モードから高圧縮比モードに切り替える信号が入力されると、切替弁134を上昇位置に切り替え、油圧ポンプ130を駆動する。したがって、可動体110が上死点側に移動して収容室104内に収容される。制御部136は、可動体110が収容室104内に収容されると、切替弁134を中立位置に切り替え、油圧ポンプ130の駆動を停止する。これにより、高圧縮比モードでは、可動体110が開位置に保持される。
【0063】
一方、制御部136は、運転モードを高圧縮比モードから低圧縮比モードに切り替える信号が入力されると、切替弁134を下降位置に切り替え、油圧ポンプ130を駆動する。したがって、可動体110が下死点側に移動して掃気ポート10a内に突出する。制御部136は、可動体110が掃気ポート10a内に突出すると、切替弁134を中立位置に切り替え、油圧ポンプ130の駆動を停止する。これにより、低圧縮比モードでは、可動体110が閉位置に保持される。
【0064】
図6は、掃気ポート10aの開閉タイミングの第1の例を説明する図である。可動体110のストローク方向の移動量は、可動体110および作動部材126のストローク方向の長さ等により、適宜設計可能である。例えば、高圧縮比モードにおけるピストン12の上死点位置と、低圧縮比モードにおけるピストン12の上死点位置とのストローク方向のずれ量(以下、ピストン変位量と呼ぶ)に対して、可動体110のストローク方向の移動量を等しく設計したとする。この場合、運転モードごとに可動体110の位置を上記のように変位させることで、掃気ポート10aの開閉タイミングは、図6に示すとおりとなる。
【0065】
すなわち、図6において、TDCはピストン12の上死点位置を示し、BDCはピストン12の下死点位置を示す。また、図6に示す破線の円は、クランク角を示しており、ここでは、上死点位置を基準の0度とし、図中時計回り方向にクランク角が変移していくものとする。なお、図6において、排気弁32は、t7で開弁(EVO)し、t8で閉弁(EVC)するものとする。
【0066】
上記したように、低圧縮比モードでは、可動体110が掃気ポート10a内に突出し、掃気ポート10aの上死点側の一部が閉塞されている。つまり、低圧縮比モードでは、掃気ポート10aのうち最も上死点側の開口部位は、可動体110の下端部110aの位置と等しくなる。低圧縮比モードにおける掃気ポート10aの開口タイミング、すなわち、ピストン12の下降時に、ピストン12の冠面12aが可動体110の下端部110aを通過するタイミングをt1とする。この場合、低圧縮比モードにおける掃気ポート10aの閉鎖タイミング、すなわち、ピストン12の上昇時に、ピストン12の冠面12aが可動体110の下端部110aを通過するタイミングはt2となる。t1からt2の間、掃気ポート10aからシリンダ10内に活性ガスが吸気される。
【0067】
ここで、例えば、開閉機構100を備えていない比較例のエンジンにおいて、低圧縮比モードにおける掃気ポート10aの開口タイミングがt1となるように、掃気ポート10aのストローク方向の位置を決めたとする。この場合、低圧縮比モードにおける掃気ポート10aの開閉タイミングは、第1の実施形態と比較例とで同じとなる。
【0068】
一方で、高圧縮比モードでは、ピストン12の上死点位置が上方にずれる。そのため、開閉機構100を備えていない比較例のエンジンでは、高圧縮比モードにおいて、低圧縮比モードよりも、ピストン12の下降時に冠面12aが掃気ポート10aの上死点側の端部10aを通過するタイミングが遅くなる。したがって、比較例のエンジンでは、掃気ポート10aの開口タイミングが、図中t1よりも遅いt3となる。また、掃気ポート10aの閉鎖タイミングは、図中t2よりも早いt4となる。つまり、比較例のエンジンでは、高圧縮比モードにおける掃気ポート10aの開口時間が短くなる。
【0069】
図7は、第1の例における掃気量を説明する図である。図7では、横軸にクランク角を示し、縦軸に掃気ポート10aの開口面積を示す。第1の実施形態のエンジン1および比較例のエンジンでは、低圧縮比モードにおいて、ピストン12の下降に伴い、t1から下死点(BDC)に向けて徐々に掃気ポート10aの開口面積が大きくなる。そして、ピストン12の上昇に伴い、下死点(BDC)からt2に向けて徐々に掃気ポート10aの開口面積が小さくなる。したがって、低圧縮比モードにおける掃気ポート10aの単位時間当たりの開口面積の合計(以下、合計開口面積と呼ぶ)は、図中ハッチングで示す部分とクロスハッチングで示す部分との合計となる。
【0070】
これに対して、比較例のエンジンでは、高圧縮比モードにおいて、ピストン12の下降に伴い、t3で掃気ポート10aが開口し、以後、下死点(BDC)に向けて徐々に掃気ポート10aの開口面積が大きくなる。そして、ピストン12の上昇に伴い、下死点(BDC)からt4に向けて徐々に掃気ポート10aの開口面積が小さくなり、t4で掃気ポート10aが閉じられる。したがって、比較例のエンジンでは、高圧縮比モードにおける掃気ポート10aの合計開口面積は、図中クロスハッチングで示す部分のみとなる。
【0071】
このように、比較例のエンジンでは、高圧縮比モードにおける掃気量、すなわち、活性ガスの吸気量が、低圧縮比モードに比べて減少する。その結果、掃気効率が低下する。これに対して、第1の実施形態のエンジン1によれば、開閉機構100により、高圧縮比モードにおいて、可動体110が上死点側に移動している。このとき、可動体110の移動量は、ピストン変位量と等しい。したがって、高圧縮比モードにおける掃気ポート10aの開口タイミングはt1となり、掃気ポート10aの閉鎖タイミングはt2となる。つまり、高圧縮比モードと低圧縮比モードとで、掃気ポート10aの開閉タイミング、開口時間が等しい。これにより、高圧縮比モードにおいても、活性ガスが十分に吸気され、掃気効率の低下を抑制することができる。
【0072】
第1の例では、可動体110の移動量が、ピストン変位量と等しい場合について説明した。以下では、第1の実施形態において、可動体110の移動量が、ピストン変位量よりも大きい場合について説明する。
【0073】
図8は、掃気ポート10aの開閉タイミングの第2の例を説明する図である。図8に示すt1、t2、t3、t4、t7、t8は、図6と同じである。この第2の例では、可動体110の移動量が、ピストン変位量よりも大きい。その結果、高圧縮比モードにおける掃気ポート10aの開口タイミングはt1よりも早いt5となり、掃気ポート10aの閉鎖タイミングはt2よりも遅いt6となる。
【0074】
図9は、第2の例における掃気量を説明する図である。図9では、低圧縮比モードにおける掃気ポート10aの合計開口面積をハッチングで示す。第2の例では、低圧縮比モードにおける掃気ポート10aの合計開口面積は、第1の例と同じである。一方、第2の例では、高圧縮比モードにおいて、ピストン12の下降に伴い、t5から下死点(BDC)に向けて徐々に掃気ポート10aの開口面積が大きくなる。そして、ピストン12の上昇に伴い、下死点(BDC)からt6に向けて徐々に掃気ポート10aの開口面積が小さくなる。したがって、高圧縮比モードにおける掃気ポート10aの合計開口面積は、図中ハッチングで示す部分とクロスハッチングで示す部分との合計となる。
【0075】
このように、第2の例では、高圧縮比モードの方が、低圧縮比モードに比べて、掃気ポート10aの開口時間が長く、開口面積の合計が大きくなる。これにより、高圧縮比モードにおいては、低圧縮比モードよりも多くの活性ガスが吸気されることとなる。
【0076】
以上のように、掃気ポート10aに開閉機構100が設けられることで、高圧縮比モードおよび低圧縮比モードのいずれにおいても、適切な掃気量を確保することができる。なお、上記した第1の例および第2の例では、可動体110の移動量が、ピストン変位量以上である場合について説明した。ただし、可動体110の移動量は、ピストン変位量よりも小さくても構わない。この場合であっても、比較例のエンジンよりも、高圧縮比モードにおける掃気量が大きくなり、掃気効率を改善することができる。
【0077】
なお、第1の例および第2の例では、開閉機構100の使用例として、主に高圧縮比モードにおける掃気効率を向上させる場合について説明した。つまり、第1の例および第2の例は、圧縮比可変機構Vを備えることが前提となる。ただし、開閉機構100は、圧縮比可変機構Vが設けられないエンジン、つまり、圧縮比が変更されずに一定であるエンジンにおいても、掃気効率を向上させることができる。
【0078】
図10は、掃気ポート10aの開閉タイミングの第3の例を説明する図である。図10に示すt1、t2、t7、t8は、図6と同じである。この第3の例では、制御部136による開閉機構100の制御方法が上記と異なる。第3の例では、ミラーサイクルに開閉機構100を適用した場合の制御方法の一例について説明する。ミラーサイクルでは、膨張行程において排気弁32の開弁タイミングを遅らせることで、圧縮行程よりも膨張行程を長くとり、熱効率を向上させる。
【0079】
そのため、第3の例では、図10に示すように、排気弁32の開弁タイミング(EVO)を、t7よりも遅いt9に変更する。このように、排気弁32の開弁タイミングをt9とすることで、第3の例では、第1の例よりも膨張行程が長くなる。ただし、排気弁32の開弁タイミングを遅らせると、シリンダ10内における圧力降下のタイミングも遅くなる。そのため、第1の例における掃気ポート10aの開口タイミングであるt1では、シリンダ10内の圧力が高い。その結果、t1で掃気ポート10aが開口すると、掃気ポート10aから掃気室42aに向けて燃焼ガスが流出する(ブローバック)おそれがある。
【0080】
そこで、第3の例では、ピストン12の下降時において、可動体110を下死点側に所定量移動させ、掃気ポート10aの開口タイミングをt10とする。これにより、掃気ポート10aからのブローバックを抑制することができる。しかしながら、掃気ポート10aの開口タイミングを遅らせると、ピストン12の上昇時における掃気ポート10aの閉鎖タイミングが早くなる。したがって、t10で掃気ポート10aが開口すると、図10に示す比較例のように、掃気ポート10aの閉鎖タイミングはt11となる。この場合、掃気ポート10aの開口時間が短く、掃気量が低下し、掃気効率が低下する。
【0081】
第3の例では、ピストン12の下降時において、掃気ポート10aが開口するのと同時に、制御部136が可動体110を上死点側に移動させる。例えば、クランク角を検出するクランク角センサ138を設ける(図3参照)。制御部136は、クランク角センサ138から入力される信号により、クランク角がt10になったところで、可動体110を上死点側に移動させる。すなわち、ピストン12の下降時に、ピストン12の冠面12aが可動体110の下端部110aを通過するのと同時、あるいは、その前後のタイミングで、可動体110が上死点側に移動する。その結果、第3の例における掃気ポート10aの閉鎖タイミングはt2となる。
【0082】
図11は、第3の例における掃気量を説明する図である。上記したように、図10に示す比較例では、t10において掃気ポート10aが開口し、t11において掃気ポート10aが閉鎖される。したがって、比較例における掃気ポート10aの合計開口面積は、図11の上段にクロスハッチングで示すとおりとなる。
【0083】
これに対して、第3の例では、t10において掃気ポート10aが開口すると、可動体110が上死点側に移動する。そのため、掃気ポート10aの面積がストローク方向に拡大し、第3の例における掃気ポート10aの合計開口面積は、図11の下段にハッチングで示すとおりとなる。これにより、第3の例では、ブローバックを抑制しながらも、十分な掃気量を確保することができる。
【0084】
以上のように、掃気ポート10aを開閉する開閉機構100の利用方法はさまざまであり、上記以外の方法で開閉機構100が制御されてもよい。つまり、開閉機構100の適用範囲や制御方法は限定されない。
【0085】
開閉機構100では、可動体110が、シリンダ10の内周面10bよりも径方向外側に設けられる。そのため、ピストン12やピストンリング12bと可動体110との接触による衝撃が生じることがない。また、可動体110とピストン12との間で摩擦や抵抗が生じることがなく、耐久性を向上させることができる。
【0086】
また、複数の可動体110が連結部材112により連結される。そのため、曲げモーメントによる可動体110の変形や傾きが抑制され、可動体110がスムーズに移動することができる。
【0087】
さらには、図3に示すように、連結部材112の連結部112bは、可動体110よりもシリンダ10の内周面10b側まで突出する。これにより、可動体110が閉位置にあるとき、ピストン12の下降時において、可動体110よりも内周面10b側であって、下端部110aと掃気ポート10aの端部10aとの間の空間が閉塞される。したがって、低圧縮比モードにおいて、ピストン12の冠面12aが連結部112bを通過するまで、活性ガスがシリンダ10内に吸気されることがなく、適切なタイミングで活性ガスの吸気を開始することができる。
【0088】
図12は、第2の実施形態の開閉機構200を説明する図である。なお、第2の実施形態の説明にあたり、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。図12には、掃気ポート10aを通るシリンダ10のストローク方向の断面を示す。図12において、シリンダ10を境にして図中左側がシリンダ10の内側であり、図中右側がシリンダ10の外側である。また、図12中上側が上死点側であり、図12中下側が下死点側である。
【0089】
また、図13は、図12のXIII矢視展開図であり、図14は、図12のXIV-XIV断面図である。図13では、図12のXIII矢視における3つの掃気ポート10aのみを示している。また、図13において、(a)および(b)は、シリンダ10の外観を模式的に示し、可動体210をクロスハッチングで示している。また、図13において、(c)は、可動体210および連結部材112の断面を示している。
【0090】
図12に示すように、シリンダ10は、内周面10bから外周面10cまで径方向に厚みを有する。掃気ポート10aは、シリンダ10を径方向に貫通し、内周面10bから外周面10cまで延在する。シリンダ10には、全ての掃気ポート10aの上方に収容穴10gが形成されている。収容穴10gは、ストローク方向に直交する方向の断面形状が円形の穴で構成される。収容穴10gは、ストローク方向に延在する。収容穴10gのストローク方向の下死点側は、掃気ポート10aに連続する。換言すれば、収容穴10gは、掃気ポート10aの上死点側から、ストローク方向に延在する。また、シリンダ10には、収容穴10gの上部から外周面10cまで貫通する空気孔202aが形成されている。
【0091】
収容穴10gにより収容室204が形成される。収容室204には、可動体210がストローク方向に移動可能に収容される。可動体210は、ストローク方向に直交する方向の断面形状が円形の中空部材で構成される。可動体210の内部には、下死点側の下端部210aに開口する内部穴210bが形成されている。可動体210の下端部210aには、連結部材112の連結部112bが取り付けられている。連結部112bにより、内部穴210bが閉塞されている。なお、ここでは、可動体210が中空部材で構成されているが、これは軽量化を目的とするものである。したがって、可動体210は、中空ではなく中実であってもよい。
【0092】
可動体210は、シリンダ10の内周面10bよりも径方向外側に設けられる。可動体210の外径は、掃気ポート10aの周方向の幅W1よりも僅かに小さい。可動体210が掃気ポート10a内に突出した状態では、掃気ポート10aの上部が閉塞される。
【0093】
図12に示すように、第2の実施形態の開閉機構200は、第1の実施形態の開閉機構100と同様に、駆動装置120を備える。駆動装置120により、可動体210がストローク方向に移動する。したがって、第2の実施形態によっても、上記の第1の例、第2の例および第3の例と同様の作用、効果が実現可能となる。
【0094】
図15は、第3の実施形態の開閉機構300を説明する図である。なお、第3の実施形態の説明にあたり、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。なお、第3の実施形態では、圧縮比可変機構Vを備えていない点で、上記第1の実施形態および第2の実施形態と異なる。図15には、掃気ポート10aを通るシリンダ10のストローク方向の断面を示す。図15において、シリンダ10を境にして図中左側がシリンダ10の内側であり、図中右側がシリンダ10の外側である。また、図15中上側が上死点側であり、図15中下側が下死点側である。
【0095】
図15に示すように、シリンダ10は、内周面10bから外周面10cまで径方向に厚みを有する。掃気ポート10aは、シリンダ10を径方向に貫通し、内周面10bから外周面10cまで延在する。シリンダ10には、全ての掃気ポート10aの上方に収容穴10iが形成されている。収容穴10iは、ストローク方向に直交する方向の断面形状が円形の穴で構成される。収容穴10iは、ストローク方向に延在する。収容穴10iのストローク方向の下死点側は、掃気ポート10aに連続する。換言すれば、収容穴10iは、掃気ポート10aの上死点側から、ストローク方向に延在する。また、シリンダ10には、収容穴10iの上部から内周面10bまで貫通する連通孔302が形成されている。
【0096】
収容穴10iにより収容室304が形成される。収容室304には、可動体310がストローク方向に移動可能に収容される。可動体310は、ストローク方向に直交する方向の断面形状が円形の中空部材で構成される。可動体310の内部には、下死点側の下端部310aに開口する内部穴310bが形成されている。可動体310の下端部310aには、連結部材112の連結部112bが取り付けられている。連結部112bにより、内部穴310bが閉塞されている。可動体310は、下端部310aが、掃気ポート10aの上死点側の端部10aよりも下死点側に突出する閉位置、および、下端部310aが閉位置よりも上死点側に位置する開位置に変位可能である。
【0097】
可動体310は、シリンダ10の内周面10bよりも径方向外側に設けられる。可動体310の外径は、掃気ポート10aの周方向の幅よりも僅かに小さい。可動体310が掃気ポート10a内に突出した状態では、掃気ポート10aの上部が閉塞される。また、可動体310の上死点側には受圧面310cが設けられている。受圧面310cにより、内部穴310bの上死点側が閉塞されている。収容室304の上部には、受圧面310cと、収容穴10iの内壁面とに囲繞された圧力室306が形成される。したがって、受圧面310cは、圧力室306に対して下死点側から臨んでいる(面している)。このように、収容室304は、掃気ポート10aよりも上死点側のシリンダ10の内部と連通し、圧力室306として機能する。
【0098】
圧力室306は、連通孔302を介してシリンダ10の内部に連通する。より詳細には、圧力室306は、連通孔302を介して、掃気ポート10aよりも上死点側のシリンダ10の内部と連通する。
【0099】
受圧面310cには、挿通孔310cが形成されている。挿通孔310cは、受圧面310cをストローク方向に貫通する。挿通孔310cには、固定部材312が挿通される。固定部材312は、ストローク方向に延在するガイド部312aと、ガイド部312aよりも径が大きいフランジ部312bとを備える。フランジ部312bは、ガイド部312aの基端に設けられ、可動体310の内部穴310b内に位置している。ガイド部312aの先端は、収容穴10iの上死点側の面に形成されたネジ溝に螺合され、収容室304内に固定されている。つまり、固定部材312のガイド部312aは、内部穴310b、挿通孔310cおよび圧力室306に亘って、ストローク方向に延在している。
【0100】
内部穴310b内には、付勢部材314が設けられる。付勢部材314は、例えば圧縮ばねで構成され、内部穴310bの上死点側の底面(受圧面310c)と、フランジ部312bとの間に配される。付勢部材314は、可動体310に対して下死点側から上死点側に付勢力を作用させる。なお、ここでは、内部穴310b内に、圧縮ばねからなる付勢部材314が設けられるが、付勢部材314の構成は特に限定されない。例えば、圧力室306に引張ばねからなる付勢部材314が設けられてもよい。この場合、可動体310は、中空ではなく中実であってもよい。いずれにしても、付勢部材314は、可動体310に対して下死点側から上死点側に付勢力を作用させれば、その配置、形状、構造は適宜設計変更可能である。
【0101】
ここで、第1の実施形態の開閉機構100、および、第2の実施形態の開閉機構200は、駆動装置120を備える。駆動装置120により、可動体110、210がストローク方向に移動する。これに対して、第3の実施形態の開閉機構300は、駆動装置120を備えておらず、圧力室306内の圧力と、付勢部材314の付勢力とのバランスによってストローク方向に移動する。以下に、開閉機構300の動作について説明する。
【0102】
図16は、第3の実施形態における開閉機構300の動作を説明する図である。ピストン12は、膨張行程において上死点側から下死点側に移動する。図16(a)に示すように、ピストン12の冠面12aが連通孔302よりも上死点側に位置するとき、ピストン12により連通孔302が閉じられ、圧力室306は、シリンダ10の内部との連通が遮断される。このとき、付勢部材314の付勢力により、可動体310が上死点側に押し上げられている。
【0103】
ここで、第3の実施形態においては、掃気ポート10aの上死点側が、ストローク方向に直交する方向に延在する平面形状であるものとする。したがって、可動体310が上死点側に押し上げられた状態では、連結部112bが掃気ポート10aの上死点側の面に面接触する。このとき、可動体310は、最も上死点側に移動した開位置となり、可動体310の全体が収容室304内に収容され、掃気ポート10aの開口面積が最大となる。
【0104】
なお、可動体310が最も上死点側に位置した状態でも、受圧面310cが連通孔302よりも下死点側に位置するように、可動体310のストローク方向の長さが設計されている。つまり、連通孔302は、可動体310の位置に拘わらず、常に圧力室306と連通している。
【0105】
そして、膨張行程において、ピストン12の冠面12aが連通孔302よりも下死点側に移動すると、図16(b)に示すように、圧力室306が連通孔302を介してシリンダ10の内部(燃焼室30)と連通する。その結果、圧力室306の内部の圧力は、シリンダ10の内圧まで上昇する。このとき、排気弁32が開弁しているが、付勢部材314の弾性力は、受圧面310cに作用するシリンダ10の内圧よりも小さく設定されている。したがって、可動体310は、下死点側に押し下げられ、掃気ポート10a内に突出する閉位置となる。この可動体310の閉位置では、掃気ポート10aの上部側が閉塞され、掃気ポート10aの開口面積が最小となる。
【0106】
その後、ピストン12がさらに下死点側に移動すると、シリンダ10の内圧、すなわち、圧力室306内の圧力は徐々に低下する。ただし、付勢部材314の弾性力は、図16(c)に示すように、冠面12aが可動体310の下端部310a(連結部112b)に到達したときの圧力室306内の圧力よりも小さく設定されている。したがって、膨張行程において、冠面12aが可動体310の下端部310a(連結部112b)に到達しても、可動体310は閉位置に保持されている。
【0107】
そして、ピストン12がさらに下死点側に移動すると、図16(d)に示すように、掃気ポート10aが開口し、シリンダ10の内部が掃気室42aと連通する。したがって、掃気室42aからシリンダ10内に活性ガスが吸気される。そして、シリンダ10の内圧が下がると、圧力室306内の圧力も低下する。その結果、図16(d)、(e)に示すように、付勢部材314の付勢力により、可動体310は、上死点側に移動して再び開位置となる。
【0108】
以上説明したように、第3の実施形態の開閉機構300によれば、膨張行程では、可動体310が閉位置に保持される。その結果、掃気ポート10aの開口タイミングが遅くなる。一方で、冠面12aが可動体310の下端部310aを通過すると、掃気ポート10aが開口する。このとき、可動体310が開位置に移動するため、掃気ポート10aの開口面積が大きくなる。これにより、図11に示す第3の例と同様に、ミラーサイクルにおける掃気効率を向上させることができる。
【0109】
また、第3の実施形態では、シリンダ10の内圧を用いて掃気ポート10aが開閉される。そのため、付勢部材314の弾性力と、受圧面310cの面積とを考慮すれば、適切に可動体310を移動させることができる。したがって、設計作業を簡素化しながらも、掃気ポート10aを適切に開閉することができる。
【0110】
また、第3の実施形態によれば、駆動装置120を設ける必要がない。つまり、可動体310は、閉位置と開位置との間を自動的に、かつ、最適なタイミングで移動する。したがって、駆動装置120が不要となる分だけ、部品点数を削減し、製造コストを抑制することができる。
【0111】
なお、ここでは、掃気ポート10aの上死点側が平面状であるとしたが、掃気ポート10aの上死点側は円弧状であってもよい。この場合、連結部112bを、掃気ポート10aの上死点側の面に沿って湾曲させ、連結部112bと掃気ポート10aの上死点側の面とが面接触可能に構成されてもよい。
【0112】
図17は、第4の実施形態の開閉機構400を説明する図である。なお、第4の実施形態の説明にあたり、第1の実施形態および第3の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。また、第4の実施形態では、上記第3の実施形態と同様、圧縮比可変機構Vを備えていない。図17には、掃気ポート10aを通るシリンダ10のストローク方向の断面を示す。図17において、シリンダ10を境にして図中左側がシリンダ10の内側であり、図中右側がシリンダ10の外側である。また、図17中上側が上死点側であり、図17中下側が下死点側である。
【0113】
図17に示すように、シリンダ10は、内周面10bから外周面10cまで径方向に厚みを有する。掃気ポート10aは、シリンダ10を径方向に貫通し、内周面10bから外周面10cまで延在する。シリンダ10には、全ての掃気ポート10aの上方に収容穴10iが形成されている。収容穴10iは、ストローク方向に直交する方向の断面形状が円形の穴で構成される。収容穴10iは、ストローク方向に延在する。収容穴10iのストローク方向の下死点側は、掃気ポート10aに連続する。換言すれば、収容穴10iは、掃気ポート10aの上死点側から、ストローク方向に延在する。また、シリンダ10には、収容穴10iの上部から内周面10bまで貫通する連通孔302が形成されている。
【0114】
収容穴10iにより収容室304が形成される。収容室304には、可動体410がストローク方向に移動可能に収容される。可動体410は、円柱形状の部材で構成される。ただし、可動体410は、中空形状で構成されてもよい。可動体410の下端部410aには、連結部材112の連結部112bが取り付けられている。可動体410は、下死点側に設けられる下端部410aが、掃気ポート10aの上死点側の端部10aよりも下死点側に突出する閉位置、および、下端部410aが閉位置よりも上死点側に位置する開位置に変位可能である。
【0115】
可動体410は、シリンダ10の内周面10bよりも径方向外側に設けられる。可動体410の外径は、掃気ポート10aの周方向の幅よりも僅かに小さい。可動体410が掃気ポート10a内に突出した状態では、掃気ポート10aの上部が閉塞される。また、可動体410の上死点側には受圧面410cが設けられている。収容室304の上部には、受圧面410cと、収容穴10iの内壁面とに囲繞された圧力室306が形成される。したがって、受圧面410cは、圧力室306に対して下死点側から臨んでいる(面している)。また、収容室304は、掃気ポート10aよりも上死点側のシリンダ10の内部と連通し、圧力室306として機能する。
【0116】
圧力室306は、連通孔302を介してシリンダ10の内部に連通する。より詳細には、圧力室306は、連通孔302を介して、掃気ポート10aよりも上死点側のシリンダ10の内部と連通する。
【0117】
また、シリンダ10の外周面10cには、駆動装置420が設けられる。ここでは、駆動装置420が可動体410と同数設けられることとする。ただし、駆動装置420は、可動体410よりも多く設けられてもよいし少なく設けられてもよい。駆動装置420は、エアシリンダ422を備える。エアシリンダ422は、シリンダ10の外周面10cに取り付けられる。
【0118】
エアシリンダ422は、中空のシリンダ本体424と、作動部材426とを含む。作動部材426は、シリンダ本体424内に位置するピストン部426aと、ピストン部426aから延在し、シリンダ本体424の外部に突出するロッド部426bとを備える。作動部材426すなわちロッド部426bは、シリンダ本体424の外側において連結部材112に接続される。つまり、作動部材426は、連結部材112を介して可動体410に接続される。
【0119】
シリンダ本体424の内部には、ピストン部426aによって区画される2つの空間が形成される。ここでは、シリンダ本体424の内部において、ピストン部426aよりもロッド部426b側にロッド側室424aが設けられ、ピストン部426aを境にしてロッド部426bとは反対側にピストン側室424bが設けられる。
【0120】
ロッド側室424aには弾性部材428が設けられている。弾性部材428は、例えば圧縮ばねで構成され、作動部材426に対して下死点側から上死点側に付勢力を作用させる。なお、ここでは、ロッド側室424a内に、圧縮ばねからなる弾性部材428が設けられるが、弾性部材428の構成は特に限定されない。例えば、ピストン側室424bに引張ばねからなる弾性部材428が設けられてもよい。いずれにしても、弾性部材428は、作動部材426に対して下死点側から上死点側に付勢力を作用させれば、その配置、形状、構造は適宜設計変更可能である。
【0121】
また、シリンダ10およびシリンダ本体424には、収容穴10iの上部からピストン側室424bまで貫通する第2連通孔430が形成されている。第2連通孔430により、ピストン側室424bと圧力室306とが連通する。圧力室306は、連通孔302を介してシリンダ10の内部と連通するため、ピストン側室424bは、シリンダ10の内部と連通することとなる。つまり、ピストン側室424bは、掃気ポート10aよりも上死点側のシリンダ10の内部と連通し、シリンダ10の内圧が導かれる圧力室432として機能する。また、ピストン部426aのうち、圧力室432に対して下死点側から臨む面は、受圧面426aとして機能する。
【0122】
ここで、圧力室432は、収容室304(圧力室306)よりもストローク方向に直交する断面の面積が大きい。また、作動部材426の受圧面426aは、可動体410の受圧面410cよりも面積が大きい。したがって、シリンダ10の内圧により下死点側に作用する力は、作動部材426の方が、可動体410よりも大きくなる。
【0123】
上記の第4の実施形態によれば、第3の実施形態と同様に、ピストン12の移動に伴って、可動体410が閉位置と開位置との間を自動的に移動する。したがって、第3の実施形態と同様の作用効果が実現される。しかも、可動体410に接続される作動部材426には、可動体410よりも大きな力が下死点側に向けて作用する。したがって、収容室304内を可動体410がストローク方向に摺動する際に生じる摩擦抵抗が大きくなったとしても、確実に可動体410を移動させることができる。
【0124】
なお、ここでは、圧力室432の方が、収容室304に比べて、ストローク方向に直交する断面の面積が大きい場合について説明した。つまり、第4の実施形態では、受圧面426aの面積が、受圧面410cの面積よりも大きい。ただし、圧力室432の方が、収容室304に比べて、ストローク方向に直交する断面の面積が小さくてもよい。同様に、受圧面426aの面積が、受圧面410cの面積よりも小さくてもよい。この場合であっても、作動部材426により、可動体410のストローク方向の移動が補助される。
【0125】
また、ここでは、圧力室306がシリンダ10の内部に連通することとした。ただし、圧力室306は、シリンダ10の内部と非連通であってもよい。つまり、圧力室432が、圧力室306を介さずに、シリンダ10の内部と連通してもよい。この場合、可動体410は、作動部材426に作用する付勢力によってのみストローク方向に移動することとなる。
【0126】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0127】
上記第1の実施形態および第2の実施形態では、駆動装置120が油圧シリンダ122を備える場合について説明した。ただし、駆動装置120は、油圧シリンダ122に代えて電動シリンダを備えてもよい。
【0128】
また、上記第1の実施形態および第2の実施形態における圧縮比可変機構Vの構成は一例に過ぎない。例えば、圧縮比可変機構Vは、ピストン12に設けられてもよい。いずれにしても、圧縮比可変機構Vは、ピストン12のストローク方向の位置を変更させることができれば、その具体的な構成は特に限定されない。
【0129】
また、上記第1の実施形態および第2の実施形態では、圧縮比可変機構Vが設けられることとした。ただし、圧縮比可変機構Vは必須の構成ではない。また、上記第3の実施形態および第4の実施形態では、圧縮比可変機構Vが設けられないこととした。ただし、第3の実施形態および第4の実施形態において、圧縮比可変機構Vが設けられてもよい。
【0130】
また、上記第1の実施形態および第2の実施形態では、掃気ポート10aの上死点側が円弧状であるとしたが、掃気ポート10aの上死点側は平面形状でもよい。また、上記第1の実施形態および第2の実施形態において、連結部112bが、掃気ポート10aの上死点側の面に沿って湾曲した形状であってもよい。
【0131】
また、上記第1の実施形態および第2の実施形態において、高圧縮比モードと低圧縮比モードとで、それぞれ制御部136が可動体110、210の移動範囲を制御することで、高圧縮比モードおよび低圧縮比モードのいずれか一方または双方においてミラーサイクルを適用することもできる。
【0132】
また、上記第3の実施形態および第4の実施形態において、上記第1の実施形態のように、収容室304が蓋部材102によって区画形成されてもよい。
【0133】
また、上記各実施形態では、可動体110、210、310、410が連結部材112によって連結されることとした。ただし、連結部材112は必須ではなく、可動体110、210、310、410がそれぞれ個別に移動してもよい。
【0134】
また、上記各実施形態では、可動体110、210、310、410が、シリンダ10の径方向の厚みの範囲内に設けられている。ただし、可動体110、210、310、410の一部または全部が、シリンダ10の外周面10cよりも外側に位置してもよい。いずれにしても、可動体110、210、310、410は、シリンダ10の内周面10bよりも径方向外側に設けられればよく、その位置や形状は特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本開示は、エンジンに利用することができる。
【符号の説明】
【0136】
1 エンジン
10 シリンダ
10a 掃気ポート
10b 内周面
10c 外周面
12 ピストン
104、204、304 収容室
110、210、310、410 可動体
110a、210a、310a、410a 下端部
112 連結部材
120、420 駆動装置
122 油圧シリンダ
V 圧縮比可変機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17