(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】マットレスおよびベッド装置
(51)【国際特許分類】
A47C 27/00 20060101AFI20220822BHJP
A47C 27/15 20060101ALI20220822BHJP
A47C 31/10 20060101ALI20220822BHJP
A47C 21/02 20060101ALI20220822BHJP
A47C 20/08 20060101ALI20220822BHJP
A61G 7/015 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
A47C27/00 Z
A47C27/15 Z
A47C31/10
A47C21/02 Z
A47C20/08 Z
A61G7/015
(21)【出願番号】P 2019229143
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000010032
【氏名又は名称】フランスベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮人
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-000655(JP,A)
【文献】特開平11-089672(JP,A)
【文献】実開平07-007568(JP,U)
【文献】特開2006-061644(JP,A)
【文献】実開平07-039620(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00
A47C 27/15
A47C 31/10
A47C 21/02
A47C 20/08
A61G 7/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床板面の形状が変化する可動式のベッド装置の前記床板面に置かれるマットレスであって、
長手方向に長尺なクッション体と、
前記クッション体を覆うカバーと、
前記カバーを前記床板面に取り付けるための
、前記カバーの裏面に設けられた取付具と、を備え、
前記クッション体は、
第1層と、
前記第1層と前記裏面の間に位置し、前記第1層よりも高い硬度を有する第2層と、
前記第1層および前記第2層を含み、前記長手方向における
前記クッション体の一方の端部に向けて厚さが
漸次減少する減厚部分
と、
を備え、
前記減厚部分における前記第1層の厚さは、前記端部に向けて漸次減少する、マットレス。
【請求項2】
床板面の形状が変化する可動式のベッド装置の前記床板面に置かれるマットレスであって、
長手方向に長尺なクッション体と、
前記クッション体を覆うカバーと、
前記カバーを前記床板面に取り付けるための、前記カバーの裏面に設けられた取付具と、を備え、
前記クッション体は、
第1層と、
前記第1層と前記裏面の間に位置し、前記第1層よりも高い硬度を有する第2層と、
前記第1層と前記第2層の間に位置し、前記第1層よりも低く前記第2層よりも高い硬度を有する第3層と、
前記第1層、前記第2層および前記第3層を含み、前記長手方向における前記クッション体の一方の端部に向けて厚さが漸次減少する減厚部分と、
を備え、
前記減厚部分における前記第3層の厚さは、前記端部に向けて漸次減少する、マットレス。
【請求項3】
床板面の形状が変化する可動式のベッド装置の前記床板面に置かれるマットレスであって、
長手方向に長尺なクッション体と、
前記クッション体を覆うカバーと、
前記カバーを前記床板面に取り付けるための、前記カバーの裏面に設けられた取付具と、を備え、
前記クッション体は、前記長手方向における前記クッション体の一方の端部に向けて厚さが漸次減少する減厚部分を含み、
前記クッション体は、
前記減厚部分の下面において前記長手方向と交差する幅方向に延びるとともに前記長手方向に並ぶ複数の溝と、
前記複数の溝と重畳し、前記長手方向および前記幅方向に間隔を空けて配列された複数の孔と、
を有する、マットレス。
【請求項4】
前記減厚部分の下面において前記取付具と重なる位置に設けられた第1係合要素と、
前記カバーの内面において前記第1係合要素と対向する位置に設けられ、前記第1係合要素と係合可能な第2係合要素と、をさらに備える、
請求項1
乃至3のうちいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項5】
長手方向に長尺であり前記長手方向における一方の端部に向けて厚さが減少する減厚部分を含むクッション体と、前記クッション体を覆うカバーと、前記カバーに設けられた取付具とを備えるマットレスが置かれる床板面を形成するボトムユニットを備え、
前記ボトムユニットは、
前記床板面とその反対側の裏面の間を貫通する開口と、
前記開口内に設けられるとともに前記裏面側に向けて突出する爪部を先端に有し、前記取付具を引っ掛けることが可能なフックと、
を備えるベッド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッド装置の床板面に置かれるマットレスおよびベッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高齢者や身体の不自由な者などの利用者がベッド装置上で容易に姿勢を変更できるように、背上げ機能や膝上げ機能のような補助機能を備えた可動式のベッド装置が知られている。この種のベッド装置は、背ボトム、腰ボトムおよび脚ボトムを含む複数のボトムを有しており、リモートコントローラのような入力装置の操作に応じて駆動機構が各ボトムを互いに回動させる。
【0003】
また、各ボトムにより構成される床板面が平坦な形状を成す臥位状態から座位状態に変形可能なベッド装置も提案されている(例えば特許文献1を参照)。座位状態においては、各ボトムがベッド装置の足側に移動するとともに、背ボトムが立ち上がる。これにより、利用者はベッド装置が置かれた床に足を付けて各ボトム上に座ることが可能である。
【0004】
一般的なベッド装置と同様に、可動式のベッド装置においても床板面にマットレスが置かれる(例えば特許文献2を参照)。床板面の動きに応じてマットレスと床板面にずれが生じ得るため、マットレスと床板面とを固定するための工夫が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-15269号公報
【文献】特許第6013371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、上記特許文献1に記載のベッド装置のように座位状態において脚ボトムが腰ボトムの下に収容される構造では、マットレスが厚いと座位状態への変形に際して床面とマットレスが干渉し得る。さらには、座位状態への変形を厚いマットレスが阻害する可能性もある。一方で、マットレスを薄くすると快適なクッション性が得られない。
【0007】
また、脚ボトムが腰ボトムの下に収容された際には、脚ボトム上のマットレスが吊り下げられた状態となる。このとき、マットレスのカバーとその内部のクッション体の間に隙間が生じ、マットレスの表面が床面等に接触し得る。
【0008】
これらの他にも、可動式のベッド装置に用いられるマットレスや当該マットレスとベッド装置の床板面との固定構造には、種々の改善の余地がある。
【0009】
そこで、本発明は、可動式のベッド装置への利用に適したマットレスを提供すること、さらには当該マットレスと床板面とを良好に固定することが可能なベッド装置を提供することを主要な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態に係るマットレスは、床板面の形状が変化する可動式のベッド装置の前記床板面に置かれるものであって、長手方向に長尺なクッション体と、前記クッション体を覆うカバーと、前記カバーを前記床板面に取り付けるための取付具と、を備えている。前記クッション体は、前記長手方向における一方の端部に向けて厚さが減少する減厚部分を含む。
【0011】
前記マットレスは、前記減厚部分の下面において前記取付具と重なる位置に設けられた第1係合要素と、前記カバーの内面において前記第1係合要素と対向する位置に設けられ、前記第1係合要素と係合可能な第2係合要素と、をさらに備えてもよい。
【0012】
前記クッション体は、前記減厚部分の下面において前記長手方向と交差する幅方向に延びるとともに前記長手方向に並ぶ複数の溝を有してもよい。
【0013】
一実施形態に係るベッド装置は、前記マットレスが置かれる床板面を形成するボトムユニットを備え、前記ボトムユニットは、前記床板面とその反対側の裏面の間を貫通する開口と、前記開口内に設けられるとともに前記裏面側に向けて突出する爪部を先端に有し、前記取付具を引っ掛けることが可能なフックと、を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、可動式のベッド装置への利用に適したマットレスを提供することができる。また、マットレスと床板面とを良好に固定することが可能なベッド装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るベッド装置の概略的な斜視図である。
【
図2】
図2は、上記ベッド装置の他の概略的な斜視図である。
【
図3】
図3は、上記ベッド装置の概略的な側面図である。
【
図4】
図4は、上記ベッド装置が備えるボトムユニットの形状のいくつかの例を概略的に示す側面図である。
【
図5】
図5は、上記ボトムユニットを取り外した状態における上記ベッド装置の概略的な平面図である。
【
図6】
図6は、上記ボトムユニットが備える中腹固定構造の概略的な平面図である。
【
図7】
図7は、
図6におけるIIV-IIV線に沿う中腹固定構造の概略的な断面図である。
【
図8】
図8は、上記ボトムユニットが備える足側固定構造の概略的な斜視図である。
【
図9】
図9は、一実施形態に係るマットレスの概略的な斜視図である。
【
図10】
図10は、上記マットレスの長手方向に沿う概略的な断面図である。
【
図11】
図11は、他の例に係るマットレスの長手方向に沿う概略的な断面図である。
【
図12】
図12は、上記マットレスが備えるクッション体の概略的な下面図である。
【
図13】
図13は、上記マットレスが備えるカバーの概略的な下面図である。
【
図14】
図14は、座位状態における上記ボトムユニットおよび上記マットレスの概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係るマットレスおよび可動式のベッド装置につき、図面を参照しながら説明する。
図1および
図2は、本実施形態に係るベッド装置Bの概略的な斜視図である。以下の説明においては、図示したようにX方向、Y方向およびZ方向を定義する。X方向は、ベッド装置Bの頭側から足側に向かう方向である。Y方向は、ベッド装置Bの幅方向である。Z方向は、ベッド装置Bの高さ方向である。Y方向の矢印が示す側(仰臥位の利用者から見た左)を「左」と言い、その反対側(仰臥位の利用者から見た右)を「右」と言うことがある。また、Z方向の矢印が示す側を「上」と言い、その反対側を「下」と言うことがある。
【0017】
ベッド装置Bは、ボトムユニット1と、駆動機構2と、ベッドフレーム3と、ベースフレーム4と、入力装置5と、制御装置6(
図2参照)とを備えている。ボトムユニット1の上面は、後に詳述するマットレスMが置かれる床板面を構成する。
【0018】
本実施形態において、ボトムユニット1は、利用者の背部を支持する背ボトム10と、利用者の腰部を支持する腰ボトム11と、利用者の脚部を支持する脚ボトム12とを備えている。
【0019】
背ボトム10は、中央ボトム10Cと、一対のサイドボトム10L,10Rとを含む。サイドボトム10L,10Rは、中央ボトム10Cの幅方向(Y方向)における左右両側に対し、それぞれ中央ボトム10Cの長手方向(Y方向と直交する方向)と平行な軸周りに回動可能に連結されている。
【0020】
腰ボトム11は、第1腰ボトム13と、第2腰ボトム14とを含む。また、脚ボトム12は、利用者の大腿部を支持する大腿部ボトム15と、利用者の膝部または腓腹部を支持する膝ボトム16と、利用者の足部を支持する第1プレート17および第2プレート18とを含む。
【0021】
中央ボトム10Cと第1腰ボトム13、第1腰ボトム13と第2腰ボトム14、第2腰ボトム14と大腿部ボトム15、大腿部ボトム15と膝ボトム16、膝ボトム16と第1プレート17は、Y方向と平行な軸周りに回動可能に連結されている。第2プレート18は、第1プレート17に対してスライド可能である。第1プレート17と第2プレート18は、少なくとも一部が重なっている。
【0022】
図1においては、背ボトム10、腰ボトム11および脚ボトム12が水平(X-Y平面と平行)である。一方、
図2においては、背ボトム10および第1腰ボトム13がZ方向に立ち上がるとともに、膝ボトム16が頂点となるように脚ボトム12が屈曲している。
【0023】
駆動機構2は、ボトムユニット1を支持するとともに、ボトムユニット1を後述する各種の形状に変形させる。ベッドフレーム3は、ボトムユニット1の下方に配置されている。ベースフレーム4は、ベッドフレーム3を支持している。ベースフレーム4は、ベッド装置Bの4隅において床面に接する脚部4aを有している。ベースフレーム4は、脚部4aに代えてキャスターを有してもよい。
【0024】
入力装置5は、例えばリモートコントローラであり、ボトムユニット1の変形やベースフレーム4に対するベッドフレーム3の昇降のコマンドを入力するための複数のボタンを有している。
【0025】
制御装置6は、例えばベッドフレーム3に取り付けられている。制御装置6は、入力装置5から入力されるコマンドに応じて駆動機構2を制御する。入力装置5と制御装置6は、例えばコード5bを介して通信接続されている。ただし、入力装置5と制御装置6は、無線にて通信接続されていてもよい。
【0026】
図3は、ベッド装置Bの概略的な側面図である。駆動機構2は、ベッドフレーム3とベースフレーム4のY方向における一方の側部を連結する第1昇降リンク21Rおよび第2昇降リンク22Rと、ベッドフレーム3とベースフレーム4のY方向における他方の側部を連結する第1昇降リンク21Lおよび第2昇降リンク22Lとを備えている(
図5も参照)。
【0027】
さらに、駆動機構2は、ボトムユニット1を支持するための要素として、一対の固定ピン35と、背上げフレーム41と、Y方向に並ぶ一対の膝上げアーム51R,51Lと、Y方向に並ぶ一対の第1リンク36R,36Lと、Y方向に並ぶ一対の第2リンク37R,37Lとを備えている(
図5も参照)。
【0028】
一対の固定ピン35は、第2腰ボトム14に設けられた一対の孔14a(
図1および
図2参照)にそれぞれ通されている。背上げフレーム41は、背ボトム10(中央ボトム10C)の裏面を支持している。膝上げアーム51R,51Lは、大腿部ボトム15の裏面を支持している。第1リンク36L,36Rは、第1プレート17を回動可能に支持している。第2リンク37L,37Rは、第2プレート18を回動可能に支持している。
【0029】
駆動機構2は、背上げフレーム41、膝上げアーム51L,51R、第1リンク36L,36Rおよび第2リンク37L,37Rの位置関係や傾斜角度を調整することにより、ボトムユニット1を種々の形状に変形させることが可能である。
【0030】
図4は、ボトムユニット1の形状の一例を概略的に示す側面図である。
図4(a)に示すボトムユニット1においては、
図1の例と同じく、背ボトム10、腰ボトム11および脚ボトム12がいずれも水平に並んでいる。以下、少なくとも背ボトム10が水平(X-Y平面と平行)なボトムユニット1の形状を臥位状態と呼ぶ。
【0031】
図4(b)に示すボトムユニット1においては、
図2の例と同じく、背ボトム10がZ方向に立ち上がるとともに、腰ボトム11および脚ボトム12が曲がっている。具体的には、第1腰ボトム13がZ方向に立ち上がるとともに、膝ボトム16が大腿部ボトム15および各プレート17,18よりも上方に位置するように脚ボトム12が上方に凸の形状を成している。
【0032】
図4(c)に示すボトムユニット1においては、各プレート17,18が腰ボトム11および大腿部ボトム15の下方に位置している。大腿部ボトム15は、例えば上述のベッドフレーム3の足側の端部3a近傍に位置しており、腰ボトム11とともに座面を形成する。膝ボトム16は、大腿部ボトム15と第1プレート17の間でZ方向に延びている。以下、このようなボトムユニット1の形状を座位状態と呼ぶ。
【0033】
図4(d)に示すボトムユニット1も座位状態にあり、
図4(c)の例よりもボトムユニット1全体が前傾している。本実施形態における「前傾」は、少なくとも背ボトム10の上端が足側に向かい、かつ背ボトム10の下端が頭側に向かうようにボトムユニット1が回動することを意味する。このようなボトムユニット1の形状への変形は、利用者が座位から立ち上がる動作の補助に役立つ。
【0034】
このように、ボトムユニット1は、
図4(a)に示す臥位状態から
図4(b)に示す形状を経て
図4(c)(d)に示す座位状態に変形可能である。
【0035】
以下の説明においては、背ボトム10を
図4(b)(c)のように立ち上げる動作を背上げと呼ぶ。また、大腿部ボトム15を
図4(b)のようにZ方向に立ち上げる動作を膝上げと呼ぶ。また、
図4(d)に示すように座位状態のボトムユニット1を前傾させる動作を腰上げと呼ぶ。
【0036】
図4(a)~(c)には、第1プレート17と第2プレート18が重なる距離Dを示している。距離Dや各プレート17,18が重なる面積Sは、
図4(a)に示す臥位状態から
図4(c)に示す座位状態に向けて増加する。すなわち、臥位状態から座位状態への変形に際して、第1プレート17および第2プレート18は、互いに重なる面積が増す方向にスライドする。
【0037】
図5は、ボトムユニット1を取り外した状態におけるベッド装置Bの概略的な平面図である。上述の駆動機構2は、昇降モータM1を含む昇降機構20と、第1スライドモータM2および第2スライドモータM3を含むスライド機構30と、背上げモータM4を含む背上げ機構40と、膝上げモータM5を含む膝上げ機構50と、腰上げモータM6を含む腰上げ機構60とを備えている。各モータM1~M6は、駆動源の一例である。
【0038】
昇降機構20においては、昇降モータM1の駆動に伴い第1昇降リンク21L,21Rおよび第2昇降リンク22L,22Rが動作し、ベッドフレーム3がベースフレーム4に対して上昇または下降する。
【0039】
スライド機構30は、第1スライドフレーム31と、第2スライドフレーム32とを備えている。第1スライドフレーム31は、ベッドフレーム3に対してスライド可能に取り付けられている。第2スライドフレーム32は、第1スライドフレーム31に対してスライド可能に取り付けられている。
【0040】
第1スライドフレーム31は、水平フレーム33と、チルトフレーム34とを含む。水平フレーム33は、X-Y平面と平行である。チルトフレーム34は、水平フレーム33に対して傾けることが可能である。チルトフレーム34には、上述の背上げフレーム41、一対の固定ピン35および一対の膝上げアーム51L,51R等が設けられている。
【0041】
スライド機構30においては、第1スライドモータM2の駆動に伴い各スライドフレーム31,32および第2スライドモータM3等がベッドフレーム3に対してX方向と平行に移動する。また、第2スライドモータM3の駆動に伴い第2スライドフレーム32が第1スライドフレーム31に対してX方向と平行に移動する。このような2通りのスライド動作の組み合わせにより、上述の第1プレート17および第2プレート18がそれぞれ第1リンク36R,36Lおよび第2リンク37R,37Lを介して
図4に示したように回動する。
【0042】
背上げ機構40においては、背上げモータM4の駆動に伴い背上げフレーム41が回動する。これにより、背ボトム10を
図1のように水平な状態や
図2のように起き上がった状態の間で変形させることができる。
【0043】
膝上げ機構50においては、膝上げモータM5の駆動に伴い膝上げアーム51L,51Rが回動する。これにより、大腿部ボトム15を
図1のように水平な状態や
図2のように起き上がった状態の間で変形させることができる。
【0044】
腰上げ機構60においては、腰上げモータM6の駆動に伴いチルトフレーム34が回動し、チルトフレーム34の水平フレーム33に対する傾斜角度が変化する。これにより、ボトムユニット1の姿勢を
図4(c)のような状態と
図4(d)のような前傾した状態との間で変化させることができる。
【0045】
ここで、マットレスMをボトムユニット1に固定するための構造について説明する。
図1および
図2に示すように、背ボトム10は、マットレスMの頭側部分を固定するための頭側固定構造70を有している。本実施形態において、頭側固定構造70は、中央ボトム10Cに設けられた複数の貫通孔71によって構成されている。
【0046】
大腿部ボトム15は、マットレスMの中腹部分を固定するための一対の中腹固定構造80R,80Lを有している。中腹固定構造80Rは、Y方向における大腿部ボトム15の中央よりも右側に位置している。中腹固定構造80Lは、Y方向における大腿部ボトム15の中央よりも左側に位置している。
【0047】
第2プレート18は、マットレスMの足側部分を固定するための3つの足側固定構造90R,90L,90Cを有している。足側固定構造90Rは、Y方向における第2プレート18の中央よりも右側に位置している。足側固定構造90Lは、Y方向における第2プレート18の中央よりも左側に位置している。足側固定構造90Cは、Y方向における第2プレート18の中央に位置している。
【0048】
図6は、中腹固定構造80Rの概略的な平面図である。
図7は、
図6におけるIIV-IIV線に沿う中腹固定構造80Rの概略的な断面図である。
図6および
図7に示すように、中腹固定構造80Rは、開口81と、開口81内に設けられたフック82とを有している。
【0049】
図7に示すよう、開口81は、大腿部ボトム15の上面15u(床板面)とその反対側の裏面15rとの間を貫通している。
図6に示すように、フック82は、開口81の内壁から大腿部ボトム15のY方向における端部15aに向かう方向(Y方向の反対方向)に突出している。
図7に示すように、フック82の先端には裏面15r側に向けて突出する爪部83が設けられている。フック82は、上面15uより上方に突出していない。また、フック82は、裏面15rよりも下方に突出していない。
【0050】
なお、
図7の例においては大腿部ボトム15が中空構造を有しているが、この例に限られない。また、開口81は、大腿部ボトム15の端部15aと繋がった切り欠きであってもよい。
【0051】
中腹固定構造80Lは、中腹固定構造80Rと同様である。一例として、中腹固定構造80Lは、X方向と平行な軸に関して中腹固定構造80Rと線対称な形状を有している。
【0052】
図8は、足側固定構造90R,90L,90Cの概略的な斜視図である。足側固定構造90Lは、ベース91と、板材92とを有している。ベース91は、第2プレート18の上面に取り付けられている。板材92は、第1部分93と、第2部分94と、第3部分95とを有している。
【0053】
第1部分93は、ベース91に接続されている。第2部分94は、ベース91と隙間を空けて対向している。第3部分95は、第1部分93および第2部分94に対して傾斜しており、これらの部分93,94を接続している。各部分93~95は、例えば平板を折り曲げることで形成することができる。
【0054】
足側固定構造90R,90Cは、足側固定構造90Lと同様である。ただし、足側固定構造90Rにおいてはベース91と第2部分94の隙間が第2プレート18のY方向における一方の端部18a(右側端部)側を向いており、足側固定構造90Lにおいては当該隙間が第2プレート18のY方向における他方の端部18b(左側端部)側を向いている。また、足側固定構造90Cにおいては当該隙間が第1プレート17側(頭側)を向いている。
【0055】
続いて、マットレスMの構造について説明する。
図9は、本実施形態に係るマットレスMの概略的な斜視図である。
図9においては、マットレスMが
図1に示したように平坦なボトムユニット1の床板面に置かれている場合を想定して、
図1と同様にX方向、Y方向およびZ方向を示している。
図9に示すマットレスMは、床板面に対向する裏面が見えるように裏返した状態である。
【0056】
マットレスMは、X方向に長尺な形状を有している。すなわち、
図9の例においてはX方向がマットレスMの長手方向に相当し、Y方向がマットレスMの幅方向に相当し、Z方向がマットレスMの厚さ方向に相当する。本実施形態において、マットレスMの平面視における形状は長方形状である。以下の説明においては、マットレスMの頭側の端部を第1端部E1、足側の端部を第2端部E2と呼ぶ。
【0057】
マットレスMは、カバー100を備えている。カバー100は、後述するクッション体200を覆っている。カバー100は、周縁部に沿って設けられたファスナ101を有している。このファスナ101を開けることにより、内部のクッション体200を取り出すことができる。
図9の例においては、カバー100にY方向と平行な複数のキルティングライン102が設けられている。ただし、カバー100は、キルティングライン102を有さなくてもよい。
【0058】
図9に示すカバー100の裏面103には、マットレスMをボトムユニット1に固定するための頭側取付具110、中腹取付具120および足側取付具130が設けられている。
【0059】
図9の例において、頭側取付具110は、一対のベルト111,112によって構成されている。ベルト111,112は、マットレスMがボトムユニット1に置かれた際に頭側固定構造70の複数の貫通孔71のいずれかと重なる位置に設けられている。ベルト111,112は、例えば長い帯状の部材の中央部をカバー100に縫い付けることで形成できる。
【0060】
ベルト111,112は、頭側固定構造70の貫通孔71に通され、中央ボトム10Cの裏面側で互いに接続される。ベルト111,112は種々の方法で接続し得るが、一例ではベルト111,112にそれぞれ面ファスナを設け、これらを係合させることで接続される。
【0061】
図9の例において、中腹取付具120は、X方向に延びる一対のベルト121R,121Lによって構成されている。ベルト121R,121Lは、マットレスMがボトムユニット1に置かれた際にそれぞれ中腹固定構造80R,80Lと重なる位置に設けられている。ベルト121R,121Lの両端部は、カバー100に縫い付けられている。
【0062】
マットレスMの固定に際しては、中腹固定構造80Rにおける開口81の内壁とフック82の間を通じて、ベルト121Rがフック82の下方に位置付けられる。これにより、ベルト121Rがフック82に引っ掛かる。同様に、ベルト121Lも中腹固定構造80Lのフック82に引っ掛けられる。
【0063】
図9の例において、足側取付具130は、X方向に延びるベルト131R,131Lと、Y方向に延びるベルト131Cとで構成されている。ベルト131R,131L,131Cは、マットレスMがボトムユニット1に置かれた際にそれぞれ足側固定構造90R,90L,90Cと重なる位置に設けられている。ベルト131R,131L,131Cの両端部は、カバー100に縫い付けられている。
【0064】
マットレスMの固定に際しては、足側固定構造90Rにおけるベース91と第2部分94の隙間にベルト131Rが通され、足側固定構造90Lにおける当該隙間にベルト131Lが通され、足側固定構造90Cにおける当該隙間にベルト131Cが通される。
【0065】
図10は、マットレスMの長手方向(X方向)に沿う概略的な断面図である。マットレスMは、カバー100で覆われたクッション体200を備えている。
図10の例において、クッション体200は、上方の第1層210と、下方の第2層220とを含む。第1層210と第2層220は、互いに接着されている。
【0066】
第1層210および第2層220は、例えばポリウレタンフォームにより形成することができる。第1層210は、マットレスMの良好なクッション性を実現すべく、第2層220よりも低い硬度と高い弾性を有していることが好ましい。第2層220は、ボトムユニット1とともにマットレスMが変形した際に弛みにくいように、第1層210よりも高い硬度を有していることが好ましい。一例として、第1層210の硬さは70Nであり、第2層220の硬さは第1層210の硬さの2倍以上の200Nである。また、第1層210の密度は30kg/m3であり、第2層220の密度は27kg/m3である。
【0067】
クッション体200は、第2端部E2に向けて厚さが漸次減少する減厚部分DPを有している。
図10の例においては、減厚部分DPがX方向におけるクッション体200の中心Cよりも第2端部E2側に位置している。ただし、減厚部分DPが中心Cと重なってもよい。
【0068】
減厚部分DPは、主に第1層210の厚さを変化させることで実現されている。
図10の例においては、第1層210の下面211が全体的に平坦である。一方で、第1層210の上面212が減厚部分DPにおいて下面211に対し傾斜している。第1層210の第1端部E1における厚さはWa1であり、第1層210の第2端部E2における厚さはWa1よりも小さいWa2である(Wa1>Wa2)。減厚部分DPを除く領域においては、第1層210の厚さがWa1で一定である。減厚部分DPにおいては、第1層210の厚さがWa1からWa2に漸次減少する。
【0069】
第2層220の厚さは、全体的に一定である。一例として、第2層220の厚さはWa1より小さく、かつWa2よりも大きい。第2層220の厚さは、第1層210と同じく減厚部分DPにおいて漸次減少してもよい。
【0070】
カバー100においても、減厚部分DPに対応する部分の厚さ(内部空間の高さ)が第2端部E2に向けて漸次減少している。すなわち、カバー100の第1端部E1における厚さはWb1であり、第2端部E2における厚さはWb1よりも小さいWb2である(Wb1>Wb2)。このようにカバー100の形状を定めることで、減厚部分DPにおけるカバー100の弛みを抑制できる。
【0071】
カバー100は、
図9にも示した裏面103の反対側の内面104を有している。第2層220は、内面104と対向する下面221を有している。下面221は、減厚部分DPにおいて複数の溝222を有している。
【0072】
図11は、他の例に係るマットレスMの長手方向に沿う概略的な断面図である。この図の例においては、クッション体200が第1層210および第2層220に加えて第3層230を備えている。第3層230は、第1層210および第2層220の間に配置されている。
【0073】
第1層210、第2層220および第3層230は、例えばポリウレタンフォームにより形成することができる。第1層210は、マットレスMの良好な体圧分散性を実現すべく、第2層220および第3層230よりも反発性が低いことが好ましい。第2層220は、ボトムユニット1とともにマットレスMが変形した際に弛みにくいように、第1層210および第3層230よりも高い硬度を有していることが好ましい。第3層230は、マットレスMの良好なクッション性を実現すべく、第2層220よりも低く第1層210よりも大きい硬度と高い弾性を有していることが好ましい。一例として、第1層210の硬さは30Nであり、第2層220の硬さは200Nであり、第3層230の硬さは120Nである。また、第1層210の密度は60kg/m3であり、第2層220の密度は27kg/m3であり、第3層230の密度は40kg/m3である。
【0074】
減厚部分DPは、主に第3層230の厚さを変化させることで実現されている。
図11の例においては、第3層230の下面231が全体的に平坦である。一方で、第3層230の上面232が減厚部分DPにおいて下面231に対し傾斜している。第3層230の第1端部E1における厚さはWc1であり、第3層230の第2端部E2における厚さはWc1よりも小さいWc2である(Wc1>Wc2)。減厚部分DPを除く領域においては、第3層230の厚さがWc1で一定である。減厚部分DPにおいては、第3層230の厚さがWc1からWc2に漸次減少する。
【0075】
図11の例において、第1層210および第2層220の厚さは、全体的に一定である。一例として、第1層210および第2層220の厚さはWc1より小さく、かつWc2よりも大きい。さらに、第1層210の厚さは、第2層220の厚さよりも小さい。第1層210および第2層220の厚さは、第3層230と同じく減厚部分DPにおいて漸次減少してもよい。
【0076】
図12は、クッション体200の概略的な下面図である。
図13は、カバー100の概略的な下面図である。
図12に示すように、上述の溝222は、減厚部分DPの下面(第2層220の下面221)においてY方向に延びるとともにX方向に並んでいる。
【0077】
図12の例においては、各溝222と重畳する複数の孔223が設けられている。孔223は、例えばV字型であり、少なくとも第2層220を貫通している。複数の孔223は、X方向およびY方向において一定の間隔を空けて配列されている。
【0078】
図12に示すように、クッション体200の下面(第2層220の下面221)には、第1係合要素310,320,330が設けられている。また、
図13において鎖線で示すように、カバー100の内面104には、第1係合要素310,320,330とそれぞれ係合可能な第2係合要素410,420,430が設けられている。
【0079】
第1係合要素310,320,330は、例えばフック状の起毛を有した雄側の面ファスナである。また、第2係合要素410,420,430は、例えばループ状の起毛を有した雌側の面ファスナである。第2係合要素410,420,430は、雄側の面ファスナと係合可能なフレンチパイルなどの生地であってもよい。この場合において、第2係合要素410,420,430は、カバー100の内面104の一部であってもよい。
【0080】
図13に示すように、第2係合要素410は、頭側取付具110(ベルト111,112)と重なる位置に設けられている。また、第2係合要素420は、中腹取付具120(ベルト121R,121L)と重なる位置に設けられている。また、第2係合要素430は、足側取付具130(ベルト131R,131L,131C)と重なる位置に設けられている。
【0081】
図12に示す第1係合要素310は、第2係合要素410と対向する位置に設けられている。第1係合要素320は、第2係合要素420と対向する位置に設けられている。第1係合要素330は、第2係合要素430と対向する位置に設けられている。第2係合要素410,420,430と同じく、第1係合要素310,320,330もそれぞれ頭側取付具110、中腹取付具120および足側取付具130と重なる。
【0082】
頭側取付具110、第1係合要素310および第2係合要素410は、中心Cと第1端部E1の間に位置している。中腹取付具120、第1係合要素320および第2係合要素420は、減厚部分DPにおいて中心Cの近傍に位置している。足側取付具130、第1係合要素330および第2係合要素430は、減厚部分DPにおいて第2端部E2の近傍に位置している。複数の溝222および複数の孔223は、第1係合要素320,330の間に位置している。
【0083】
図14は、座位状態のボトムユニット1およびマットレスMの概略的な側面図である。ここではマットレスMを構成する要素として
図10に示した2層構造のクッション体200を示し、カバー100の図示を省略している。なお、
図11に示した3層構造のクッション体200をマットレスMが備える場合であっても、以下に説明する効果と同様の効果を得ることができる。
【0084】
マットレスMとボトムユニット1は、第1位置P1、第2位置P2および第3位置P3で固定されている。第1位置P1は、頭側固定構造70に頭側取付具110(ベルト111,112)が取り付けられる位置である。第2位置P2は、中腹固定構造80R,80Lに中腹取付具120(ベルト121R,121L)が取り付けられる位置である。第3位置P3は、足側固定構造90R,90L,90Cに足側取付具130(ベルト131R,131L,131C)が取り付けられる位置である。
【0085】
座位状態においては、大腿部ボトム15、膝ボトム16、第1プレート17および第2プレート18にわたってボトムユニット1が大きく屈曲する。減厚部分DPは、このように大きく屈曲する領域と重なる。減厚部分DPにおいてはクッション体200が薄いため、ボトムユニット1の形状の変化に応じてクッション体200が曲がりやすい。
【0086】
クッション体200の溝222は、例えば図示したように膝ボトム16と重なる。座位状態では、膝ボトム16と重なる位置において第2層220が圧縮される。このとき、溝222が潰れることにより、クッション体200の変形が円滑化される。上述の孔223を設ける場合には、クッション体200の変形のさらなる円滑化が期待される。
【0087】
座位状態への変形に際しては、第1プレート17および第2プレート18が大腿部ボトム15の下方に回動する。このとき、仮にマットレスMが厚いとマットレスMが床面に接触し得る。一方、本実施形態においては第1プレート17および第2プレート18近傍のマットレスMが薄いので、回動時にマットレスMが床面と干渉しにくい。
【0088】
なお、マットレスMに対して利用者の体重が加わりやすい背ボトム10、第1腰ボトム13および第2腰ボトム14に対応する領域においては、クッション体200が減厚部分DPよりも厚い。したがって、利用者に対して快適なクッション性を与えることができる。
【0089】
本実施形態においては、頭側取付具110、中腹取付具120および足側取付具130のそれぞれと重なる位置で、カバー100とクッション体200が第1係合要素310,320,330および第2係合要素410,420,430によって連結されている。そのため、マットレスMの全体にわたってカバー100とクッション体200が乖離しにくい。
【0090】
特に、各プレート17,18の近傍では座位状態においてマットレスMがボトムユニット1から吊り下げられた状態となるため、カバー100とクッション体200が乖離してマットレスMが弛みやすい。しかしながら、
図14に示す第3位置P3において第1係合要素330および第2係合要素430が係合していれば、マットレスMの弛みを良好に抑制できる。
【0091】
図6および
図7に示したように、中腹固定構造80R,80Lが開口81とその内部に設けられたフック82とを有する構造である場合、このフック82にベルト121R,121Lを引っ掛けることでマットレスMを固定できるため、マットレスMを配置する作業が容易である。また、フック82が開口81内にあればボトムユニット1の床板面に大きな凹凸が発生しないので、ベッド装置Bの快適な使用感も害されない。
【0092】
図8に示した足側固定構造90R,90L,90Cにおいても、板材92にベルト131R,131L,131Cを引っ掛けることでマットレスMを固定できるため、マットレスMを配置する作業が容易である。さらに、ベース91と板材92の隙間が足側固定構造90R,90L,90Cのそれぞれにおいて異なる方向を向いているので、マットレスMとボトムユニット1をずらす様々な方向への力に対して良好な抗力を発揮する。
以上の他にも、本実施形態からは種々の好適な効果を得ることができる。
【0093】
なお、本実施形態は、本発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。本発明は、本実施形態にて開示した構成を種々の態様に変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0094】
B…ベッド装置、M…マットレス、DP…減厚部分、1…ボトムユニット、70…頭側固定構造、80R,80L…中腹固定構造、90R,90L,90C…足側固定構造、100…カバー、200…クッション体、310,320,330…第1係合要素、410,420,430…第2係合要素。