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特許7127014癌のイメージングおよび治療のための放射性リン脂質金属キレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】癌のイメージングおよび治療のための放射性リン脂質金属キレート
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/10 20060101AFI20220822BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20220822BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20220822BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220822BHJP
   C07F 9/6524 20060101ALI20220822BHJP
   C07F 9/6515 20060101ALI20220822BHJP
   C07F 5/00 20060101ALN20220822BHJP
   A61B 5/055 20060101ALN20220822BHJP
【FI】
C07F9/10 B CSP
G01T1/161 D
A61K51/04 100
A61K51/04 200
A61P35/00
C07F9/6524
C07F9/6515
C07F5/00 D
A61B5/055 383
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019504112
(86)(22)【出願日】2016-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 US2016060495
(87)【国際公開番号】W WO2018022125
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2019-08-08
(31)【優先権主張番号】62/366,344
(32)【優先日】2016-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023641
【氏名又は名称】ウイスコンシン アラムナイ リサーチ ファウンデーシヨン
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ウェイチャート ジェイミー
(72)【発明者】
【氏名】ピンチューク アナトリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス レイニア
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/081203(WO,A2)
【文献】特表2007-528374(JP,A)
【文献】特表2012-530063(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0200178(US,A1)
【文献】特表2019-501213(JP,A)
【文献】国際公開第2005/084716(WO,A2)
【文献】Science Translational Medicine,2014年,6(240),240ra75(page1-24)
【文献】薬学雑誌,2008年,128(3),p.323-332
【文献】Nuclear Medicine and Biology,2013年,40(1),3-14(page1-27)
【文献】Journal of Labelled Compound and Radiopharmaceuticals,2014年,57(4),224-230(page1-17)
【文献】Targeted Drug Strategies for Cancer and Infammation,2011年,p.65-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/00
G01T 1/00
A61K 51/00
A61P 35/00
C07F 5/00
A61B 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式を有する化合物:
【化1】
またはその塩であって、上式で:
は、金属原子にキレートした、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸(DO3A);1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-二酢酸(NODA);1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA);1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA);1,4,7-トリアザシクロノナン,1-グルタル酸-4,7-二酢酸(NODAGA);1,4,7,10-テトラアザシクロデカン,1-グルタル酸-4,7,10-三酢酸(DOTAGA);1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA);1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン-4,11-二酢酸(CB-TE2A);ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、およびそのジエステル、;2-シクロヘキシルジエチレントリアミン五酢酸(CHX-A”-DTPA);デフェロキサミン(deforoxamine)(DFO);1,2-[[6-カルボキシピリジン-2-イル]メチルアミノ]エタン(Hdedpa);ならびにDADAからなる群から選択される化合物を含み、前記金属原子が、Cu-64、Y-86、Co-55、Zr-89、Sr-83、Mn-52、As-72、Sc-44、In-111、およびTc-99mからなる群、またはLu-177、Y-90、Ho-166、Re-186、Re-188、Cu-67、Au-199、Rh-105、Ra-223、Ac-225、As-211、Pb-212、およびTh-227からなる群から選択される、金属同位体であり;
aは、0または1であり;
nは、12~30の整数であり;
mは、0または1であり;
Yは、-H、-OH、-COOH、-COOX、-OCOX、および-OXからなる群から選択され、Xは、アルキルまたはアリールアルキルであり;
は、-N、-NZ、-NHZ、および-Nからなる群から選択され、各Zは、独立にアルキルまたはアラルキルであり;かつ
bは1または2である、化合物。
【請求項2】
aが1である(脂肪族アリール-アルキル鎖)、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
aが0である(脂肪族アルキル鎖)、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
mが1であり(アシルリン脂質シリーズ)、nが12~20の間の整数であり、Yが-OCOX、-COOXまたは-OXである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
mが1であり(アシルリン脂質シリーズ)、nが12~20の間の整数であり、Yが-OCOX、-COOXまたは-OXであり、かつXが-CHCHまたは-CHである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
mが0である(アルキルリン脂質シリーズ)、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
(i)bが1であり;
(ii)nが18であり;
(iii)Rが-Nであり、各Zが、独立に-CHCHまたは-CHである、
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
(i)bが1であり;
(ii)nが18であり;
(iii)Rが-Nであり、各Zが-CHである、
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
は、金属原子にキレートした、
【化2】
からなる群から選択される、
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物が、
【化3】
からなる群から選択され;
上式で、前記選択された化合物が、前記金属原子にキレートしている、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物および製薬上許容される担体を含む組成物。
【請求項12】
癌または癌性細胞のイメージングを含む診断方法における、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物の使用
【請求項13】
癌の治療のための医薬の製造における、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物の使用
【請求項14】
対象より採取した生体試料において1以上の癌細胞を検出またはイメージングするための方法であって、
(a)前記生体試料を請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物と接触させるステップであって、前記金属原子がCu-64、Y-86、Co-55、Zr-89、Sr-83、Mn-52、As-72、Sc-44、In-111、およびTc-99mからなる群から選ばれる金属同位体であり、それによって前記化合物が前記生体試料内の悪性固形腫瘍細胞によって選択的に(differentially)取り込まれるステップ;および
(b)前記金属同位体に特徴的な信号を発している前記生体試料内の個々の細胞または領域を識別し、それによって1以上の癌細胞を検出またはイメージングするステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる、2016年7月25日出願の米国特許仮出願第62/366344号の利益を主張する。
【0002】
連邦政府資金提供を受けた研究開発の記載
該当しない。
【0003】
本開示は、通常、疾患の治療および医学的診断/イメージングに関する。特に、本開示は、広範囲の小児および成人悪性固形腫瘍を標的化して治療するため、かつ悪性固形腫瘍細胞を検出/イメージングするためのキレート化された放射性金属同位体を含むアルキルホスホコリン類似体に向けられる。
【背景技術】
【0004】
現在、腫瘍イメージングに利用可能なさまざまな放射性医薬品があるが、これらは悪性腫瘍に対する非特異性、癌を炎症と区別できないこと、生物学的半減期が短いこと、そして一般にPETおよびSPECTスキャニングモダリティに関連する空間分解能が不十分であることによって制限される。
【0005】
本発明者らは、特定のアルキルホスホコリン類似体が悪性固形腫瘍(すなわち固形腫瘍癌)細胞によって優先的に取り込まれ保持されることを以前に示した。参照によりその全文が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0030187号において、Weichertらは、多様な固形腫瘍癌の検出および位置特定ならびに治療のための主剤18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン(NM404;図1参照)の類似体の使用を開示している。例えば、ヨード部分がイメージングに最適化された放射性核種、例えばヨウ素-124([124I]-NM404)である場合、この類似体を、成人固形腫瘍のポジトロン放出断層撮影-コンピュータ断層撮影(PET/CT)または単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)画像法で使用することができる。あるいは、ヨード部分が、ヨウ素-125またはヨウ素-131([125I]-NM404または[131I]-NM404)などの、類似体が取り込まれる固形腫瘍細胞に治療用量の放射線を送達するために最適化された放射性核種である場合、この類似体を用いて固形腫瘍を治療することができる。
【0006】
標的化放射線癌治療および/またはイメージング用の放射性ヨウ素同位体を含む化合物を使用することに関して、認識されている問題が少しある。例えば、I-124はポジトロン放出が不十分であり(放射の約24%しかポジトロンでない)、さらにガンマ放射(600KeV)と混同される。これは実際に通常の511keVのPET検出を妨害する。ヨウ素-131は、放射線治療同位体として、他のエネルギーで他の非治療的放出も含み、それは骨髄をはじめとする隣接する正常組織に、望まない放射線線量測定を追加する。I-131のベータ粒子範囲も非常に長く、標的外の毒性に寄与する。
【0007】
したがって、標的化された癌放射線治療および/またはイメージング用途に使用するための改善された癌標的化剤が当分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、改善された癌のイメージングおよび/または放射線治療剤として使用することのできる、新しい放射性リン脂質金属キレートを提供する。PETまたはSPECTイメージングに適したさまざまなポジトロンおよびガンマ線放出金属がキレート化のために、ならびにさまざまなα、βおよびオージェ放出金属核種が標的化された放射線治療のために、利用可能である。イメージングまたは放射線治療のいずれの場合も、分子担体の薬物動態プロファイルのために、6時間の最小物理崩壊半減期を有する放射性金属同位体が必要である。
【0009】
本明細書に開示される放射性リン脂質金属キレート化合物は、放射性金属同位体にキレート化された多様な金属キレート剤の1つと組み合わせたアルキル-リン脂質担体を利用する。放射性ヨウ素化バージョンはインビボで癌細胞を標的化することが示されているが、開示される金属キレートは、構造的に全く異なる。具体的には、それらは異なる電荷、はるかに大きいサイズ、およびより親油性の化学的性質を有する。これらの違いにもかかわらず、開示されるキレートは、腫瘍選択性を保持すると同時に、キレートを注射に適したものにし、適したインビボ安定性を有する製剤特性を示す。
【0010】
開示される金属キレートは、非腫瘍細胞と比較して、悪性固形腫瘍細胞によって優先的に取り込まれる。そのような化合物の優先的な取り込みは、悪性固形腫瘍の治療的処置において、ならびに悪性固形腫瘍の検出/イメージング用途において使用されることができる。治療的処置では、アルキルホスホコリン標的化骨格には、金属キレートを優先的に取り込む悪性固形腫瘍細胞に治療線量の放射線を局所的に送達するキレート化された放射性金属同位体が含まれる。検出/イメージング用途では、アルキルホスホコリン標的化骨格には、検出/イメージングで使用され得るシグナルを放出するのに適したキレート化された放射性金属同位体が含まれる。
【0011】
したがって、本開示は、放射性リン脂質金属キレート化合物、つまり標的化された癌放射線治療のための癌イメージング剤および/または治療剤として使用され得る化合物のファミリーを包含する。
【0012】
第1の態様では、本開示は、式:
【化1】
を有する化合物またはその塩を包含する。Rは、金属原子にキレート化されたキレート剤であるかまたはそれを含み、前記金属原子は、4時間以上の半減期をもつポジトロンまたは単一光子放出金属同位体であるか、あるいは6時間よりも長く30日未満の半減期をもつアルファ、ベータまたはオージェ放出金属同位体であり;aは、0または1であり;nは、12~30の整数であり;mは、0または1であり;Yは、-H、-OH、-COOH、-COOX、-OCOX、または-OXであり、Xは、アルキルまたはアリールアルキルであり;Rは、-N、-NZ、-NHZ、または-Nであり、各Zは、独立にアルキルまたはアロアルキルであり;かつ、bは、1または2である。
【0013】
いくつかの実施形態では、金属原子は、4時間以上の半減期をもつポジトロンまたは単一光子放出金属同位体である。そのような同位体は、イメージング用途での使用に特に適している。そのような同位体の限定されない例としては、Ga-66、Cu-64、Y-86、Co-55、Zr-89、Sr-83、Mn-52、As-72、Sc-44、Ga-67、In-111、およびTc-99mが挙げられる。
【0014】
いくつかの実施形態では、金属原子は、6時間よりも長く30日未満の半減期をもつアルファ、ベータまたはオージェ放出金属同位体である。そのような同位体は、標的化された放射線治療用途での使用に特に適している。そのような同位体の限定されない例としては、Lu-177、Y-90、Ho-166、Re-186、Re-188、Cu-67、Au-199、Rh-105、Ra-223、Ac-225、As-211、Pb-212、およびTh-227が挙げられる。
【0015】
いくつかの実施形態では、キレート剤は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸(DO3A)またはその誘導体の1つ;1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-二酢酸(NODA)またはその誘導体の1つ;1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)またはその誘導体の1つ;1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)またはその誘導体の1つ;1,4,7-トリアザシクロノナン,1-グルタル酸-4,7-二酢酸(NODAGA)またはその誘導体の1つ;1,4,7,10-テトラアザシクロデカン,1-グルタル酸-4,7,10-三酢酸(DOTAGA)またはその誘導体の1つ;1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)またはその誘導体の1つ;1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン-4,11-二酢酸(CB-TE2A)またはその誘導体の1つ;ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、そのジエステル、またはその誘導体の1つ;2-シクロヘキシルジエチレントリアミン五酢酸(CHX-A”-DTPA)またはその誘導体の1つ;デフェロキサミン(deforoxamine)(DFO)またはその誘導体の1つ;1,2-[[6-カルボキシピリジン-2-イル]メチルアミノ]エタン(Hdedpa)またはその誘導体の1つ;あるいはDADAまたはその誘導体の1つからなる群から選択され、DADAは次の構造:
【化2】
を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、aは1である(脂肪族アリール-アルキル鎖)。他の実施形態では、aは0である(脂肪族アルキル鎖)。
【0017】
いくつかの実施形態では、mは1である(アシルリン脂質シリーズ)。
【0018】
いくつかの実施形態では、nは12~20の間の整数である。
【0019】
いくつかの実施形態では、Yは-OCOX、-COOXまたは-OXである。いくつかのそのような実施形態では、Xは-CHCHまたは-CHである。
【0020】
いくつかの実施形態では、mは0である(アルキルリン脂質シリーズ)。
【0021】
いくつかの実施形態では、bは1である。
【0022】
いくつかの実施形態では、nは18である。
【0023】
いくつかの実施形態では、Rは-Nである。いくつかのそのような実施形態では、各Zは、独立に-CHCHまたは-CHである。いくつかのそのような実施形態では、各Zは、-CHである。
【0024】
金属原子にキレート化され得るキレート剤の限定されない例としては:
【化3】
が挙げられる。
【0025】
開示される癌イメージング剤および/または治療剤の限定されない例としては:
【化4】
が挙げられる。
いずれの場合も、例となる化合物は金属原子にキレート化されている。
【0026】
第2の態様では、本開示は、上記の化合物の1つと、製薬上許容される担体を含む組成物を包含する。
【0027】
第3の態様では、本開示は、癌または癌性細胞をイメージングする際に使用するための上記化合物の1以上を包含する。
【0028】
第4の態様では、本開示は、癌を治療する際に使用するための上記化合物の1以上を包含する。
【0029】
第5の態様では、本開示は、癌を治療またはイメージングするための薬物を製造する際に使用するための、癌を治療する際に使用するための上記化合物の1以上を包含する。
【0030】
第6の態様では、本開示は、対象において癌を治療するための方法を包含する。この方法は、癌を有する対象に有効量の1以上の上記化合物を投与するステップを含み、ここで、金属原子は、6時間よりも長く30日未満の半減期をもつアルファ、ベータまたはオージェ放出金属同位体である。
【0031】
本方法のいくつかの実施形態では、キレート化された金属同位体は、Lu-177、Y-90、Ho-166、Re-186、Re-188、Cu-67、Au-199、Rh-105、Ra-223、Ac-225、As-211、Pb-212、またはTh-227である。
【0032】
いくつかの実施形態では、化合物は、非経口投与、鼻腔内投与、舌下投与、直腸内投与、または経皮送達によって投与される。いくつかのそのような実施形態では、化合物は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、化合物は腫瘍内に投与される。
【0033】
いくつかの実施形態(emdodiments)では、対象はヒトである。
【0034】
いくつかの実施形態では、治療される癌は、成人固形腫瘍または小児固形腫瘍である。治療され得る癌の限定されない例は、黒色腫、神経芽腫、肺癌、副腎癌、結腸癌、結腸直腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肝癌、皮下癌、扁平上皮癌、腸癌、網膜芽細胞腫、子宮頸癌、神経膠腫、乳癌、膵臓癌、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、および小児脳腫瘍である。
【0035】
第7の態様では、本開示は、悪性細胞の増殖または成長を抑制するための方法を包含する。この方法は、1以上の悪性細胞を有効量の1以上の上記化合物と接触させるステップを含み、ここで、金属原子は、6時間よりも長く30日未満の半減期をもつアルファ、ベータまたはオージェ放出金属同位体である。
【0036】
使用され得る金属同位体の限定されない例としては、Lu-177、Y-90、Ho-166、Re-186、Re-188、Cu-67、Au-199、Rh-105、Ra-223、Ac-225、As-211、Pb-212、およびTh-227が挙げられる。
【0037】
いくつかの実施形態では、本方法は、インビボ、エクスビボまたはインビトロで実施される。
【0038】
いくつかの実施形態では、悪性細胞は、成人固形腫瘍細胞または小児固形腫瘍細胞である。そのような細胞の限定されない例としては、黒色腫細胞、神経芽腫細胞、肺癌細胞、副腎癌細胞、結腸癌細胞、結腸直腸癌細胞、卵巣癌細胞、前立腺癌細胞、肝癌細胞、皮下癌細胞、扁平上皮癌細胞、腸癌細胞、網膜芽細胞腫細胞、子宮頸癌細胞、神経膠腫細胞、乳癌細胞、膵臓癌細胞、ユーイング肉腫細胞、横紋筋肉腫細胞、骨肉腫細胞、網膜芽細胞腫細胞、ウィルムス腫瘍細胞、および小児脳腫瘍細胞が挙げられる。
【0039】
第8の態様では、本開示は、生体試料中の1以上の癌細胞を検出またはイメージングするための方法を包含する。この方法には、(a)生体試料を1以上の上記化合物と接触させるステップであって、金属原子が4時間以上の半減期をもつポジトロンまたは単一光子放出金属同位体であり、それによって化合物が生体試料内の悪性固形腫瘍細胞によって差次的に(differentially)取り込まれるステップ;および(b)金属同位体に特徴的な信号を発している生体試料内の個々の細胞または領域を識別するステップが含まれる。
【0040】
使用され得る金属同位体の限定されない例としては、Ga-66、Cu-64、Y-86、Co-55、Zr-89、Sr-83、Mn-52、As-72、Sc-44、Ga-67、In-111、およびTc-99mが挙げられる。
【0041】
いくつかの実施形態では、金属同位体に特徴的な信号を発している生体試料内の個々の細胞または領域を識別するステップは、ポジトロン放出断層撮影(PET)画像法、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)画像法、またはガンマカメラ平面撮像法によって実施される。
【0042】
いくつかの実施形態では、生体試料は、対象の一部または全部である。
【0043】
いくつかの実施形態では、生体試料は、対象から得られる。
【0044】
いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0045】
いくつかの実施形態では、癌細胞は、成人固形腫瘍細胞または小児固形腫瘍細胞である。そのような細胞の限定されない例としては、黒色腫細胞、神経芽腫細胞、肺癌細胞、副腎癌細胞、結腸癌細胞、結腸直腸癌細胞、卵巣癌細胞、前立腺癌細胞、肝癌細胞、皮下癌細胞、扁平上皮癌細胞、腸癌細胞、網膜芽細胞腫細胞、子宮頸癌細胞、神経膠腫細胞、乳癌細胞、膵臓癌細胞、ユーイング肉腫細胞、横紋筋肉腫細胞、骨肉腫細胞、網膜芽細胞腫細胞、ウィルムス腫瘍細胞、および小児脳腫瘍細胞が挙げられる。
【0046】
第9の態様では、本開示は、対象において癌を診断する方法を包含する。この方法には、上に概説した1以上のイメージング/検出ステップが含まれる。この方法では、生体(biogical)試料は、対象から得られるか、対象の一部であるか、または対象の全部である。癌細胞がこの方法ステップで検出またはイメージングされた場合、対象は癌と診断される。
【0047】
いくつかの実施形態では、診断される癌は、成人固形腫瘍または小児固形腫瘍である。そのような癌の限定されない例としては、黒色腫、神経芽腫、肺癌、副腎癌、結腸癌、結腸直腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肝癌、皮下癌、扁平上皮癌、腸癌、網膜芽細胞腫、子宮頸癌、神経膠腫、乳癌、膵臓癌、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、および小児脳腫瘍が挙げられる。
【0048】
第10の態様では、本開示は、ヒト対象において癌治療の有効性をモニターする方法を包含する。この方法には、上に概説した1以上のイメージング/検出ステップを2以上の異なる時間に生体試料で実施することが含まれ、ここで生体(biogical)試料は、対象から得られるか、対象の一部であるか、または対象の全部である。2以上の異なる時間の間の金属同位体に特徴的なシグナルの強度の変化は、癌治療の有効性と相関している。
【0049】
いくつかの実施形態では、モニターされる癌治療は、化学療法または放射線治療である。
【0050】
第11の態様では、本開示は、対象において癌を治療する方法を包含する。この方法には、上に概説した1以上のイメージング/検出ステップを実施することが含まれ、ここで、生体(biogical)試料は、対象の一部または全部である。この方法には、対象内の特定された個々の細胞または領域に外部放射線治療照射を向けるステップも含まれる。
【0051】
本発明のその他の目的、特徴および利点は、明細書、特許請求の範囲および図面を検討した後に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】主剤18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン(octadecyl phosphcholine)(NM404)の化学構造を示す図である。
図2】腫瘍を有するマウスのGd-DO3A-404の注射後24時間までの腫瘍(T)の増強を示すMRI画像の経時的推移を示す図である。
図3】腫瘍を有するマウスのMRI画像の経時的推移を示す図である。上のパネルには、側腹部A549(ヒトNSCLC)腫瘍を有するマウスの、造影剤注入前(左、矢印は腫瘍位置を示す)、Gd-DO3A-404注射の1時間後(左から2番目)、Gd-DO3A-404注射の24時間後(左から3番目)、およびGd-DO3A-404注射の48時間後(右端の画像)の画像が含まれる。下のパネルには、側腹部U87(ヒト神経膠腫)腫瘍を有するマウスの、造影剤注入前(左端の画像、矢印は腫瘍位置を示す)、Gd-DO3A-404注射の1時間後(左から2番目)、Gd-DO3A-404注射の24時間後(左から3番目)、およびGd-DO3A-404注射の48時間後(右端の画像)の画像が含まれる。
図4】腫瘍を有するマウスのMRI画像の経時的推移をさらに示す、図3の続きの図である。上のパネルには、側腹部A549(ヒトNSCLC)腫瘍を有するマウスの、Gd-DO3A-404注射の3日後(左端の画像)、Gd-DO3A-404注射の4日後(左から2番目)、およびGd-DO3A-404注射の7日後(右端の画像)の画像が含まれる。下のパネルには、側腹部U87(ヒト神経膠腫)を有するマウスの、Gd-DO3A-404注射の3日後(左端の画像)、Gd-DO3A-404注射の4日後(左から2番目)、およびGd-DO3A-404注射の7日後(右端の画像)の画像が含まれる。
図5図3および4に示される画像からの定量結果の棒グラフを示す図である。具体的には、側腹部A549(ヒトNSCLC)腫瘍を有するマウス(影付きのバー)および側腹部U87(ヒト神経膠腫)腫瘍を有するマウス(影の付いていないバー)の両方について、造影剤注射前(前)、Gd-DO3A-404注射の1時間後、Gd-DO3A-404注射の24時間後、Gd-DO3A-404注射の48時間後、Gd-DO3A-404注射の3日後、Gd-DO3A-404注射の4日後、およびGd-DO3A-404注射の7日後の腫瘍対筋肉T1強調シグナル比が示される。造影前と比較して、A549について、p<0.05。造影前と比較してU87について、p<0.05。
図6図3および4に示される画像からの定量結果の棒グラフを示す図である。具体的には、側腹部A549(ヒトNSCLC)腫瘍を有するマウス(影付きのバー)および側腹部U87(ヒト神経膠腫)腫瘍を有するマウス(影の付いていないバー)の両方について、造影剤注入前(造影前)、およびGd-DO3A-404注射の48時間後の腫瘍対筋肉R比が示される。造影前と比較して、A549について、p<0.05。造影前と比較してU87について、p<0.05。
図7図7~11は、Gd-DO3A-404造影剤のインビボ体内分布を示す、3つの異なるマウス腹部断面のT1強調スポイル勾配(SPGR)磁気共鳴(MR)画像を示す図である。図7は、造影剤が注射される前に得られたT1強調SPGR MR画像を含む。心筋(M、上の画像)、肝臓(L、中央の画像)、および腎臓(K、下の画像)の位置は矢印で示され、図9~12に示す対応する画像と一致している。
図8図8は、Gd-DO3A-404造影剤が注射された1時間後に得られたT1強調SPGR MR画像を含む。画像は、心筋(上の画像)、肝臓(中央の画像)、および腎臓(下の画像)を含む。
図9図9は、Gd-DO3A-404造影剤が注射された24時間後に得られたT1強調SPGR MR画像を含む。画像は、心筋(上の画像)、肝臓(中央の画像)、および腎臓(下の画像)を含む。
図10図10は、Gd-DO3A-404造影剤が注射された4日後に得られたT1強調SPGR MR画像を含む。画像は、心筋(上の画像)、肝臓(中央の画像)、および腎臓(下の画像)を含む。
図11図11は、Gd-DO3A-404造影剤が注射された7日後に得られたT1強調SPGR MR画像を含む。画像は、心筋(上の画像)、肝臓(中央の画像)、および腎臓(下の画像)を含む。
図12】腫瘍を有する(U87)マウスの、注射前(前)およびDOTAキレート化Gd3+(DOTAREM(登録商標)、一番上のパネル)およびGd-DO3A-404(下のパネル)の注射後のさまざまな時間のMRI画像の経時的推移を示す図である。マウス側腹部の腫瘍の位置は、2つの「前」画像の矢印で示されている。
図13図13に示される画像からの定量結果の棒グラフを示す図である。具体的には、注射前(前)と、DOTAREM(登録商標)(陰影の付いたバー)またはGd-DO3A-404(陰影の付いていないバー)を注射した後のさまざまな時点のU87マウスの両方についての腫瘍対筋肉シグナル比が示される。造影前と比較して、DOTAREM(登録商標)について、p<0.05。造影前と比較してGd-DO3A-404について、p<0.05。
図14】同所性神経膠芽腫モデルマウスのMRI脳画像を示す図である。2.5mg(上のパネル)または3.7mg(下のパネル)のGd-DOA3A-404を、静脈内注射によってマウスに投与し、造影剤注射の48時間後にこれらの画像を得た。
図15】異種移植片A549を側腹部に有するマウスにおける投与後72時間のGd-DO3A-404の組織体内分布を示す棒グラフを示す図である。n=3マウス。
図16】トランスジェニックマウストリプルネガティブ乳癌モデルから得たMRI画像の経時的推移を示す図である(n=4;動物/列1~4)。α-β結晶過剰発現マウスを、投与前(左端の列)および投与後24時間(中央の列)および48時間(右端の列)にイメージングした。
図17】同所性異種移植マウスモデルから得たT1強調画像を示す図である。同所性U87異種移植を有するNOD-SCIDマウスを、Gd-DO3A-404の投与前、Gd-DO3A-404の投与後24時間、および48時間にイメージングした(左パネル)。同所性GSC115を投与後24時間にイメージングした(右パネル)。GSCは、ヒト神経膠腫患者から単離したヒト神経膠腫幹細胞モデルである。
図18】臨床3.0T PET/MRを使用する、U87側腹部異種移植を有するラットのT1強調スキャンを示す図である。ラットを、Gd-DO3A-404の投与前および投与後24時間にイメージングした。
図19】U87を側腹部に有するラットの、Gd-DO3A-404およびCu-DO3A-404の投与後24時間の同時PET/MR画像を示す図である。Gd-DO3A-404および64Cu-DO3A-404を、U87を側腹部に有するラットに同時に投与した。ラットを、同時PET/MRを用いてイメージングした。矢印は腫瘍を指し示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
I.概要
本開示が記載されている特定の方法論、プロトコール、材料、および試薬に限定されず、これらが変わる可能性があることは理解される。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、後に出願された非仮出願によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0054】
本明細書および添付される特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、および「the」には、文脈上明らかに指示されている場合を除いて複数形への言及が含まれる。同様に、用語「a」(または「an」)、「1以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書において同義的に使用され得る。用語「含む(comprising)」およびその変化形は、これらの用語が本明細書および特許請求の範囲に現れる場合には限定的な意味を有さない。したがって、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する」は、同義的に使用され得る。
【0055】
別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同等のどんな方法および材料も本発明の実践または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料をここに記載する。本明細書に具体的に言及されたすべての刊行物および特許は、本発明に関連して使用され得る刊行物に報告されている化学物質、機器、統計解析および方法論を記載および開示することを含むあらゆる目的のために参照により組み込まれる。本明細書中で引用されたすべての参考文献は、当業者の技術水準を示すものとして解釈される。
【0056】
本明細書に記載の専門用語は、実施形態の説明のためのだけのものであり、全体として本発明を限定するものと解釈されるべきではない。特に断りのない限り、「a」、「an」、「the」、および「少なくとも1つ」は同義的に使用され、1つまたは複数を意味する。
【0057】
本開示は、本明細書に記載される化合物(中間体を含む)をその薬剤的に許容される形態のいずれかで含み、その形態には異性体(例えば、ジアステレオマーおよびエナンチオマー)、互変異性体、塩、溶媒和物、多形体、プロドラッグなどが含まれる。特に、化合物が光学活性である場合、本発明は、化合物のエナンチオマーの各々、ならびにエナンチオマーのラセミ混合物を具体的に含む。用語「化合物」は、(時折、「塩」が明示的に述べられているが)明示的に述べられているかいないかにかかわらず、そのような形態のいずれかまたはすべてを含むことを理解されたい。
【0058】
本明細書において使用される「薬剤的に許容される」とは、その化合物または組成物または担体が、治療の必要性を考慮して過度に有害な副作用なく本明細書に記載の治療を達成するための対象への投与に適していることを意味する。
【0059】
用語「有効量」とは、本明細書において、研究者、獣医師、医師またはその他の臨床医が求める対象、組織または細胞の生物学的または医学的応答を引き出す化合物の量または投与量をさす。
【0060】
本明細書において、「薬剤的に許容される担体」には、ありとあらゆる乾燥粉末、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などが含まれる。薬剤的に許容される担体は、本発明の方法において化合物を投与するために有用な物質である。この物質は好ましくは無毒であり、固体、液体または気体の物質であってよく、その他の点では不活性であって薬剤的に許容され、本発明の化合物と相溶性である。そのような担体の例としては、限定されるものではないが、さまざまなラクトース、マンニトール、トウモロコシ油などの油、PBSなどの緩衝液、生理食塩水、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリプロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどのアミド、アルブミンなどのタンパク質、およびTween80などの界面活性剤、グルコース、ラクトース、シクロデキストリンおよびデンプンなどの単糖類およびオリゴ多糖類が挙げられる。
【0061】
用語「投与すること」または「投与」とは、本明細書において、治療または予防されるべき疾患または状態に罹患しているかまたはその危険性がある対象に本発明の化合物または医薬組成物を提供することをさす。
【0062】
薬理学において投与経路は薬物が体内に取り込まれる経路である。投与経路は、通常、物質が適用される部位によって分類される。一般的な例としては、経口および静脈内投与が含まれる。また、経路は作用標的がどこにあるかに基づいて分類されることもできる。作用は、局所的、経腸的(全身に及ぶ作用、但し消化管を通じて送達される)、または吸入によって肺を経由する非経口的(全身作用、但し消化管以外の経路によって送達される)であってよい。
【0063】
局所投与は局所的な作用を強調し、物質はその作用が望まれる場所に直接適用される。しかし、時には、局所という用語は、物質の標的効果を伴わなくても、身体の局所領域に、または身体部分の表面に適用されるものとして定義されることがあり、この分類をどちらかといえば適用部位に基づく分類の変形とする。経腸投与では、望ましい作用は全身的(非局所的)であり、物質は消化管を介して投与される。非経口投与では、望ましい作用は全身的であり、物質は消化管以外の経路によって投与される。
【0064】
局所投与の限定されない例としては、経皮投与(皮膚に適用)、例えばアレルギー試験または典型的な局所麻酔、吸入、例えば喘息薬、浣腸、例えば腸のイメージング用の造影剤、点眼薬(結膜に適用)、例えば結膜炎用の抗生物質、点耳薬、例えば外耳炎用の抗生物質および副腎皮質ステロイド、ならびに身体内の粘膜を介する投与を挙げることができる。
【0065】
経腸投与は、消化管のいずれかの部分を伴い、全身性の作用を有する投与であってよい。例としては、経口(経口)による、錠剤、カプセル剤、または滴剤としての多くの薬物の投与、胃栄養チューブ、十二指腸栄養チューブ、または胃瘻造設による、多くの薬物および経腸栄養の投与、ならびに直腸内への坐剤中のさまざまな薬物の投与を挙げることができる。
【0066】
非経口投与の例としては、静脈内(静脈内への)投与、例えば多くの薬物、中心動脈栄養法の動脈内(動脈の中への)投与、例えば、血管攣縮の治療における血管拡張薬および塞栓症の治療のための血栓溶解薬、骨内注入(骨髄内への)投与、筋肉内投与、大脳内(脳実質内への)投与、脳室内(脳室系内への)投与、髄腔内投与(脊柱管への注射)、ならびに皮下(皮膚の下への)投与を挙げることができる。これらの中で、骨内注入は、骨髄が静脈系に直接排出されるので、実質的に、間接的静脈内アクセスである。骨内注入は、静脈内へのアクセスが困難な場合に、救急医療や小児科において薬物や輸液に時折使用されることがある。
【0067】
本明細書において、用語「腹腔内注射」または「IP注射」とは、物質の腹膜(体腔)への注射をさす。IP注射は、ヒトよりも動物により多く適用される。一般に、大量の血液補充液が必要な場合、または低血圧またはその他の問題が静脈内注射に適した血管の使用を妨げる場合、IP注射が好ましいことがある。
【0068】
II.本発明
特定の態様では、本開示は、対象または生体試料内の悪性腫瘍細胞の検出/イメージングのための放射性金属同位体で標識されたアルキルホスホコリン類似体に向けられる。アルキルホスホコリン類似体には、放射性金属同位体をキレート化するキレート部分が含まれる。
【0069】
A.悪性固形腫瘍の治療のための放射性金属同位体
悪性固形腫瘍を治療的に処置する開示される方法に関して、放射性金属同位体で標識された類似体を取り込む細胞の死をもたらす形で電離放射線を放出することが公知であるどんな放射性金属同位体も、キレート化によってアルキルホスホコリン標的化骨格に組み込まれることができる。いくつかの実施形態では、放射性金属同位体は、標識された類似体を取り込む細胞の外部の組織への損傷を最小限に抑える形でその電離放射線を放出する。
【0070】
使用され得る放射性金属同位体の限定されない例としては、Lu-177、Y-90、Ho-166、Re-186、Re-188、Cu-67、Au-199、Rh-105、Ra-223、Ac-225、As-211、Pb-212、またはTh-227が挙げられる。
【0071】
B.悪性固形腫瘍の検出/イメージングのための放射性金属同位体
悪性固形腫瘍を検出/イメージングする開示される方法に関して、従来のイメージング手段によって容易に検出可能な形で放射線を放出することが公知であるどんな放射性金属同位体も、標的化骨格に組み込まれることができる。「従来のイメージング手段」の限定されない例としては、ガンマ線検出、PET走査、およびSPECT走査が挙げられる。使用され得る放射性金属同位体の限定されない例としては、Ga-66、Cu-64、Y-86、Co-55、Zr-89、Sr-83、Mn-52、As-72、Sc-44、Ga-67、In-111、またはTc-99mが挙げられる。
【0072】
C.PLE類似体の金属キレート
開示される構造は、アルキルホスホコリン担体骨格を利用する。合成されれば、薬剤は、腫瘍選択性を保持すると同時にそれらを注射に適したものにする製剤特性を有していなければならない。限定されない例となる一連の金属キレート-PLE類似体が後に続く(さらなる限定されない例は以前に記載した)。示される構造には、放射性金属同位体がそれとキレート化して最終的なイメージングまたは治療薬を生成する、キレート部分が含まれる。
【化5】
【0073】
D.例となるM-PLE類似体を合成する方法
化合物1の提案される合成を以下に示す。合成の最初のステップは、Org Synth,2008,85,10-14に記載されるものに類似している。合成はサイクレンから出発し、これをDO3Aトリス-Bnエステルに変換する。次に、この中間体を塩基およびPd触媒の存在下でNM404とコンジュゲートさせる。最後に、ベンジル保護基を接触水素化によって除去する。
【化6】
【0074】
化合物2の合成を以下に示す。合成はDO3Aトリス-Bnエステルから開始し、これを3-(ブロモ-プロパ-1-イニル)-トリメチルシランでアルキル化する。アルキル化後、トリメチルシリル(trimethjylsilyl)基を除去し、中間体アセチレンを薗頭反応によってNM404とカップリングさせる。ベンジル基を除去し、合成の最後のステップで三重結合を同時に水素化する。
【化7】
【0075】
化合物5および6は、以下のスキームに示すように、同じ前駆体、DTPA二無水物および18-p-(3-ヒドロキシエチル-フェニル)-オクタデシルホスホコリンから合成することができる。
【化8】
【0076】
NOTA-NM404コンジュゲートは類似の方法で合成することができる。一例は、以下のNOTA-NM404コンジュゲート7である。
【化9】
【0077】
E.剤形および投与方法
どんな投与経路も、開示されるアルキルホスホコリン類似体を対象に投与するのに適し得る。一実施形態では、開示されるアルキルホスホコリン類似体は、静脈内注射を介して対象に投与されてよい。もう一つの実施形態では、開示されるアルキルホスホコリン類似体は、任意のその他の適した全身送達、例えば非経口投与、鼻腔内投与、舌下投与、直腸投与、または経皮投与を介して対象に投与されてよい。
【0078】
もう一つの実施形態では、開示されるアルキルホスホコリン類似体は、鼻腔系または口を介して、例えば、吸入によって対象に投与されてよい。
【0079】
もう一つの実施形態では、開示されるアルキルホスホコリン類似体は、腹腔内注射またはIP注射を介して対象に投与されてよい。
【0080】
ある種の実施形態では、開示されるアルキルホスホコリン類似体は、薬剤的に許容される塩として提供されてよい。しかし、その他の塩は、アルキルホスホコリン類似体またはその薬剤的に許容される塩の調製に有用であることがある。適した薬剤的に許容される塩としては、限定されるものではないが、例えば、アルキルホスホコリン類似体の溶液を、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸またはリン酸などの薬剤的に許容される酸の溶液と混合することによって形成され得る酸付加塩が挙げられる。
【0081】
開示されるアルキルホスホコリン類似体が少なくとも1つの不斉中心を有する場合、それらはそれに応じてエナンチオマーとして存在してよい。開示されるアルキルホスホコリン類似体が2以上の不斉中心を有する場合、それらはそれに応じてジアステレオ異性体として存在してよい。そのような異性体およびその任意の割合の混合物がすべて本開示の範囲内に包含されることは理解される。
【0082】
本開示は、1以上の開示されるアルキルホスホコリン類似体を薬剤的に許容される担体とともに含む医薬組成物を使用する方法も含む。好ましくは、これらの組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、滅菌非経口液剤または懸濁剤、定量エアゾール剤または液体スプレー剤、滴剤、アンプル剤、自動注射装置または坐剤などの、非経口投与、鼻腔内投与、舌下投与もしくは直腸投与、または吸入もしくは吹送による投与用の、単位剤形の形である。
【0083】
錠剤などの固体組成物を調製するには、主要な有効成分を、薬学的に許容される担体、例えば従来の錠剤化成分、例えばトウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはゴム、およびその他の薬学的希釈剤、例えば水などと混合して、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩のための均質な混合物を含有する、固体の予備製剤組成物を形成する。これらの予備製剤組成物を均質と呼ぶ場合、それは、有効成分が組成物全体にわたって均一に分散されているので、組成物が錠剤、丸剤およびカプセル剤などの等しく有効な単位剤形に容易に細分され得ることを意味する。この固体の予備製剤組成物は、次に、0.1~約500mgの本発明の有効成分を含有する上記の種類の単位剤形に細分される。典型的な単位剤形は、1~100mg、例えば、1、2、5、10、25、50または100mgの有効成分を含有する。新規組成物の錠剤または丸剤は、長期作用の利点を与える投与量を提供するためにコーティングされるか、または別の方法で配合され得る。例えば、錠剤または丸薬は、内側投薬成分および外側投薬成分を含むことができ、後者は、前者の上の外被の形態である。2つの成分は、胃での分解に抵抗するのに役立ち、内側の成分が損傷を受けずに十二指腸に入るかまたは放出が遅延されるのに役立つ、腸溶層によって隔てられ得る。多様な材料がそのような腸溶層または腸溶コーティングに使用され得、そのような材料には、多数のポリマー酸、ならびにポリマー酸と、セラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースとしてのそのような材料との混合物が含まれる。
【0084】
アルキルホスホコリン類似体を経口または注射による投与のために組み込んでよい液体形態としては、水溶液、適切に風味付けされたシロップ、水性または油性懸濁液、および、綿実油、ゴマ油、ココナッツ油またはピーナッツ油などの食用油を含む風味付き乳濁液、ならびにエリキシル剤および同様の薬学的賦形剤が挙げられる。水性懸濁液に適した分散剤または沈殿防止剤としては、トラガカントゴム、アラビアゴム、アルギン酸塩、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンなどの合成および天然ゴムが挙げられる。
【0085】
開示されるアルキルホスホコリン類似体は、注射可能な担体系との組合せを含む、薬学的に注射可能な投薬形態に処方される場合に特に有用である。本明細書において、注射可能な剤形および注入剤形(すなわち非経口剤形)としては、限定されるものではないが、リポソーム注射剤または活性のある原薬を封入するリン脂質を有する脂質二重層小胞が挙げられる。注射剤には、非経口使用を意図した無菌調製物が含まれる。
【0086】
USPによって定義されるように5つの異なるクラスの注射剤:乳濁液、脂質、粉末、溶液および懸濁液が存在する。乳濁液注射には、非経口投与が意図される無菌の発熱物質を含まない調製物を含む乳濁液が含まれる。溶液注射用の脂質複合体および粉末は、非経口使用のための溶液を形成するための再構成を意図した無菌調製物である。懸濁液注射用粉末は、非経口使用のための懸濁液を形成するための再構成を意図した無菌調製物である。リポソーム懸濁液注射用の凍結乾燥粉末は、再構成時に製剤が形成される、非経口使用のための再構成を目的とする無菌のフリーズドライ調製物であり、これは、脂質二重層内または水性空間に活性のある原薬を封入するために使用されるリン脂質を有する、脂質二重層小胞などのリポソームの組み込みを可能にする形で処方される。溶液注射用の凍結乾燥粉末は、その製法が極低圧で凍結状態の生成物から水分を除去することを含み、その後の液体の添加により注射の必要条件にあらゆる点で適合する溶液を生成する、凍結乾燥(「フリーズドライ」)によって調製される溶液用の剤形である。懸濁液注射用の凍結乾燥粉末は、適した液状媒体中に懸濁された固体を含む、非経口使用を目的とする液体調製物であり、そしてそれは、懸濁液を意図する薬剤が凍結乾燥によって調製される、滅菌懸濁液の必要条件にあらゆる点で適合する。溶液注射は、注射に適している、適した溶媒または相互に混和性の溶媒の混合物に溶解した1以上の原薬を含有する液体調製物を含む。
【0087】
溶液濃縮物注射は、適した溶媒を添加すると、注射の必要条件にあらゆる点で適合する溶液を生じる非経口使用用の無菌調製物を含む。懸濁液注射は、粒子が不溶性であり、油相が水相全体に分散しているかまたは逆も同じである、液相全体にわたって分散した固体粒子を含有する液体調製物(注射に適している)を含む。懸濁リポソーム注射剤は、リポソーム(脂質二重層内かまたは水性空間のいずれかに活性のある原薬を封入するために使用されるリン脂質を通常含有する脂質二重層小胞)が形成されるように、油相が水相全体に分散した液体調製物(注射に適している)である。懸濁液超音波処理注射液は、粒子が不溶性である、液相全体に分散した固体粒子を含有する液体調製物(注射に適している)である。その上、生成物は、ガスを懸濁液に吹き込む際に超音波処理されてもよく、その結果、固体粒子によるミクロスフェアが形成される。
【0088】
非経口担体系には、1以上の薬学的に適した賦形剤、例えば溶媒および共溶媒、可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤、増粘剤、乳化剤、キレート剤、緩衝剤、pH調整剤、酸化防止剤、還元剤、抗菌性保存剤、充填剤、保護剤、等張化剤、および特殊添加剤などが含まれる。
【0089】
以下の実施例は説明目的のためだけに提供され、本発明の範囲を限定することを決して意図するものではない。実際に、本明細書中に示され記載されたものに加えて、本発明のさまざまな変更は、前述の説明および以下の実施例から当業者に明らかとなり、添付される特許請求の範囲に入る。
【0090】
III.実施例
概要:
実施例1では、本発明者らは、放射性金属同位体をキレート化している類似化合物の合成にも用途を見出す、例となる合成を提供する。
【0091】
実施例2では、本発明者らは、NM404(Gd-DO3A-404)のヨウ素部分の代わりに用いられるキレート剤およびキレート化された金属を有する類似体が、固形腫瘍組織に取り込まれ(そして固形腫瘍内でイメージングされ得)、したがって開示される金属キレートをTRT剤および/またはイメージング剤として使用する概念の証明を提供することを示す。
【0092】
実施例3では、本発明者らは実施例2の結果を拡張して、2つの異なる腫瘍モデルにおけるGd-DO3A-404の腫瘍標的化能力および取り込み動態を実証した。
【0093】
実施例4では、本発明者らは、Gd-DO3A-404についてのインビボ体内分布データを報告する。
【0094】
実施例5では、本発明者らは、Gd-DO3A-404の腫瘍標的化特性がNM404標的化部分に存在することを実証する。具体的には、本発明者らは、Gd-DO3A-404の腫瘍取り込みおよび保持データを、DOTAキレート化Gd3+(DOTAREM(登録商標))を使用して得た同じデータと比較する。
【0095】
実施例6では、本発明者らは、同所性神経膠芽腫モデルにおけるGd-DO3A-404取り込みを実証する。
【0096】
実施例7では、本発明者らは、側腹部A549異種移植マウスに投与した後のGd-DOA-404の体内分布データを開示する。
【0097】
実施例8では、本発明者らは、トリプルネガティブ乳癌モデルにおけるGd-DO3A-404取り込みを実証する。
【0098】
実施例9では、本発明者らは、2つの同所性異種移植モデルにおけるGd-DO3A-404取り込みを実証する。
【0099】
実施例10では、本発明者らは、MRI造影剤として作用するガドリニウムキレートGd-DO3A-404、およびPET造影剤として作用する銅放射性核種Cu-64キレート64Cu-DO3A-404の同時取り込みおよびイメージング(PETおよびMRI)を実証する。
【0100】
実施例1:金属キレート化DO3A-404の合成
この実施例では、本発明者らは、1つの例となるリン脂質キレート、Gd-DO3A-404を合成するために使用される合成スキームを示す。さまざまな放射性同位元素を組み込んでいる類似体を同様の方法で合成することもでき、ここで問題の放射性同位体は、Gdの代わりに用いられる。
【0101】
Gd-DO3A-404を合成するためのスキーム(開示される放射性金属同位体はGdの代わりに容易に使用できる):
【化10】
【0102】
実施例2:インビボイメージングによる概念実証
この実施例では、本発明者らは、Gd-DO3A-404をMRI造影剤として使用し、腫瘍のインビボMRIイメージングの成功を実証する。データは、骨格リン脂質およびキレート剤が固形腫瘍によって取り込まれ保持されることを実証し、本明細書に開示される、さまざまな放射性金属を組み込んでいるそのようなキレートが同様の特性を示すことを実証する。
【0103】
Gd-DO3A-404剤の腫瘍取り込みの概念実証インビボイメージングのために、側腹部A549腫瘍(非小細胞肺癌)異種移植を有する胸腺欠損ヌードマウスをスキャンした。Gd-DO3A-404剤(2.7mg)は尾静脈注射によって送達された。マウスを麻酔し、造影剤投与の前と、造影剤送達後1、4、24、48、および72時間に走査を実施した。イメージングは、体積直角位相コイルを備えた4.7T Varian前臨床MRIスキャナで行った。以下のパルスシーケンスパラメータ:反復時間(TR)=206ミリ秒、エコー間隔=9ミリ秒、エコートレイン長=2、実効エコー時間(TE)=9ミリ秒、平均数10で、視野40×40mm、192×192マトリックス、厚さ各1mmの10切片を用いる高速スピンエコースキャンを使用して、すべての撮像時点でT1強調画像を取得した。
【0104】
図2に見られるように、腫瘍のMRIイメージングは、注射後24時間までに大幅に増強された。
【0105】
これらの結果は、アルキルホスホコリン類似体の示差的な取り込みおよび保持が、本明細書に開示される金属キレート化された類似体に関して維持されることを実証する。したがって、開示される金属キレートは、臨床治療およびイメージング用途に容易に適用されることができる。
【0106】
実施例3:複数腫瘍モデルにおけるインビボ癌イメージング
実施例2のこの拡張では、本発明者らは、Gd-DO3A-404をMRI造影剤として使用して、2つの別個の側腹部腫瘍型における選択的取り込みおよびインビボMRIイメージングを実証する。
【0107】
ヒト癌のげっ歯類モデルにおける取り込みおよび保持を試験するために、側腹部異種移植をマウスにおいて2つの別個の腫瘍型、A549(ヒト非小細胞肺癌、NSCLC)およびU87(ヒト神経膠腫)について確立した。各モデルについてN=3。造影前のイメージングのために、腫瘍および腹部のT強調画像(図4;2枚の左端の画像)および腫瘍のTマップを得た。
【0108】
ゼロ(「造影」)時に、2.5mgのGd-DO3A-404(約12mmol/kg体重)を静脈内注射によってマウスに送達した。動物を造影前および造影後1時間から7日の間(1時間、24時間、48時間、3日、4日および7日後)のさまざまな時点でスキャンした。腫瘍のTマップを、各時点で、腫瘍および腹部のT強調画像とともに取得した(図3および4参照)。
【0109】
NSCLCモデルでは、Gd-DO3A-404取り込みは即時的ではなく、造影後24~48時間で最大に達した(図3)。取り込みは数日にわたり維持された(図4)。U87モデルでは、取り込みはより急速であり(送達後1時間ですでに観察可能であった;図3参照)、より高いレベルに達しているように見え、より長期間維持された(図4参照)。
【0110】
これらの観察結果は、定量化されたデータによって確認され、データでは腫瘍対筋肉のT強調シグナル比はGd-DO3A-404送達後に約2倍になった(図5)。腫瘍シグナルの増加は、A549腫瘍と比較して、U87腫瘍においてより急速であり、より長くなった。図6に見られるように、両方の腫瘍型についてのR弛緩速度は、造影後48時間で有意に増加した。
【0111】
開示される金属キレートでは、放射性金属同位体がガドリニウムの代わりに使用される。しかし、腫瘍標的化リン脂質部分とキレート剤の両方を含む構造の残りの部分は、開示される金属キレートに読み取れる。したがって、これらの結果は、複数の腫瘍型におけるアルキルホスホコリン類似体の示差的な取り込みおよび保持が、本明細書に開示される金属キレート化された類似体に関して維持されることを実証する。したがって、開示される金属キレートは、臨床癌治療およびイメージング用途に有用であることになる。
【0112】
実施例4:Gd-DO3A-404のインビボ体内分布を決定するためのMRIの使用
この実施例において、本発明者らは造影剤を投与した後のGd-DO3A-404のインビボ体内分布を決定した(実施例3参照)。実施例4に記載される実験を実施する過程で、本発明者らは、マウスの腹部のT強調スポイル勾配(SPGR)画像も取得して体内分布を観察した。撮像された腹部断面には、心筋(図7~11、上の画像)、肝臓(図7~11、中央の画像)、および腎臓(図7~11、下の画像)が含まれた。造影前(図7)、および造影後1時間(図8)、24時間(図9)、4日(図10)および7日(図11)の画像が示される。
【0113】
心筋および血液プールでは、Gd-DO3A-404造影剤はほぼ1日まで循環し、その後に観察されるシグナルはいずれもさらなる取り込みからではなく保持によるものである。肝臓および腎臓では、Gd-DO3A-404造影剤は時間とともにかなり除去され、肝臓を通してより迅速なクリアランスが行われ、そして腎臓を通してより長期間のクリアランスが行われる。特に、Gd-DO3A-404造影剤は、関連するアルキルホスホコリン類似体のものと同様の肝胆汁排泄を含むP動態プロファイルを示す。
【0114】
実施例5:
Gd-DO3A-404標的化部分による腫瘍選択的および持続的取り込みの促進
この実施例では、本発明者らは、腫瘍組織におけるGd-DO3A-404の選択的取り込みおよび保持が、実際にガドリニウム金属またはそのキレート剤によるよりも腫瘍標的化リン脂質部分(「404」部分;図1参照)によって促進されることを実証する。したがって、この実施例は、効果的な腫瘍標的化剤が、開示される腫瘍標的化リン脂質部分をそれらが含む限り、特定のキレート剤または金属イオンを有する腫瘍標的化剤に限定されないことを実証する。
【0115】
取り込みおよび保持が「404」部分の標的化によるものであることを検証するために、各々の同じモル数を使用して、同一の腫瘍モデル(側腹部U87腫瘍を有するマウス)およびイメージングシナリオで、Gd-DO3A-404の取り込みをDOTAキレートGd3+(DOTAREM(登録商標))の取り込みと直接比較した。図12に見られるように、DOTAREM(登録商標)の取り込みおよびクリアランスは、Gd-DO3A-404の取り込みおよびクリアランスよりもはるかに急速である。
【0116】
本発明者らは、腫瘍対筋肉比を定量化し、それをベースラインスキャンと比較する。図13に見られるように、DOTAREM(登録商標)の取り込みは、Gd-DO3A-404と比較して、それほど顕著ではなく、2、3の初期の時点でのみ有意であった。
【0117】
これらの結果は、キレート剤およびキレート化金属(Gd-DO3A部分)ではなく、Gd-DO3A-404のリン脂質標的化部分(404部分)が、観察された選択的腫瘍取り込みおよび保持に関与することを示す。したがって、開示されるキレートの選択的腫瘍取り込みおよび保持特性に影響を及ぼすことなく、多様な異なるキレート部分およびキレート化された金属を使用することができる。
【0118】
実施例6:同所性神経膠腫モデルにおけるGd-DO3A-404の脳腫瘍取り込み
この実施例では、本発明者らは、より高い投与量で、Gd-DO3A-404が血液脳関門を通過して脳腫瘍組織をうまく標的化することができることを実証する。
【0119】
腫瘍および転移(metasteses)をin situ、特に、脳内で検出するためのGd-DO3A-404の使用を調べるために、本発明者らは脳に注入された癌幹細胞を使用して同所性神経膠芽腫モデルを作製した。モデルを作製するために、マウスの脳に同所性神経膠芽腫幹細胞株12.6由来の細胞を注入した。十分な腫瘍増殖後、T強調MRIでモニターして、本発明者らは2つの異なる用量のGd-DO3A-404(2.5または3.7mg;約0.12~0.18ミリモル/kg)の造影前および送達後(24~72時間)の対象をイメージングした。
【0120】
側腹部異種移植に使用された低いほうの用量では、脳の取り込みは観察されなかった(図14、上のパネル参照)。低いほうの送達用量は(臨床状況で体重1kg当たりの送達用量と同程度で)比較的低かったので、本発明者らは別の群の動物について用量を増やした。この群では、本発明者らは1つの対象において取り込みを観察した(図14、下のパネル)。この結果は、血液脳関門(BBB)が脳腫瘍の取り込みに役割を果たしている可能性があり、投薬量は、造影剤のBBBの通過を促進するように「調整する」ことができることを示す。
【0121】
実施例7:側腹部A549異種移植マウスにおけるGd-DO3A-404のインビボ体内分布データ
実施例4のこの拡張では、本発明者らは、Gd-DO3A-404が投与された後のそのインビボ体内分布をさらに調べた。具体的には、A549を側腹部に有するマウスにおいてGd-DO3A-404の投与後72時間の組織体内分布を測定した。ヌード胸腺欠損マウスを犠牲にし、灌流し、組織を収集し、高分解能(磁場セクター)誘導結合プラズマ質量分析(SF-ICPMS)によってGdについて定量した。n=3マウス。
【0122】
図15に見られるように、Gd-DO3A-404は腫瘍組織によって選択的に取り込まれ、この場合もやはり開示されるアルキルホスホコリン類似体の腫瘍組織への標的化送達の適合性が実証された。
【0123】
実施例8:トリプルネガティブ乳癌モデルにおけるGd-DO3A-404の取り込み
この実施例では、本発明者らは、乳癌組織へのGd-DO3A-404の標的化が成功することを実証する。
【0124】
α-β結晶過剰発現マウス(トリプルネガティブ乳癌モデル)に、投与前ならびにGd-DO3A-400の投与後24時間および48時間にMRイメージングを行った(n=4)。図16に見られるように、48時間にわたって、造影剤が乳癌組織に取り込まれて局在した。
【0125】
この実施例は、開示されるアルキルホスホコリン金属キレートが広範囲の固形腫瘍組織を標的化するために使用され得ることを説明する。
【0126】
実施例9:同所性モデルにおけるGd-DO3A-404の取り込み
この実施例では、本発明者らは、2つの異なる同所性異種移植モデルにおいてGd-DO3A-404の標的化が成功することを実証する。
【0127】
同所性U87異種移植を有するNOD-SCIDマウスを、Gd-DO3A-404の投与前、Gd-DO3A-404の投与後24時間、および48時間にイメージングした。図17(左パネル)に見られるように、造影剤は腫瘍組織によって差次的に取り込まれた(矢印参照)。
【0128】
同所性GSC115をGd-DO3A-404の投与後24時間にイメージングした。GSCは、ヒト神経膠腫患者から単離したヒト神経膠腫幹細胞モデルである。図17(右パネル)に見られるように、造影剤は腫瘍組織によって差次的に取り込まれた(矢印参照)。
【0129】
この実施例は、開示されるアルキルホスホコリン金属キレートが広範囲の固形腫瘍組織を標的化するために使用され得ることを説明する。
【0130】
実施例10:Gd-DO3A-404および64Cu-DO3A-404の両方による腫瘍標的化を実証する同時PET/MRイメージング
この実施例では、本発明者らは、Gd-DO3A-404および64Cu-DO3A-404の両方の腫瘍標的化造影剤(MRI用のGd-DO3A-404および同時PETイメージング用の64Cu-DO3A-404)としての使用の成功を実証する。
【0131】
同時イメージングは、臨床Pet/MRIスキャナを使用して実施した。64Cu-DO3A-404は、ポジトロンを放出する放射性核種である64CuがGdの代わりにキレート部分にキレート化されていることを除いて、Gd-DO3A-404と同じ構造を有する。64Cu-DO3A-404を合成した(本明細書に開示される方法を用いて合成することができる;例えば、実施例1参照)。64Cu-DO3A-404とGd-DO3A-404の両方のキレートを側腹部U87(ヒト神経膠腫)異種移植を有するラットに同時に注射した。
【0132】
U87側腹部異種移植片のT1強調スキャンを臨床3.0T PET/MRを使用して得た。ラットを、Gd-DO3A-404の投与前および投与後24時間にイメージングした。得られるMR画像は、Gd-DO3A-404造影剤の選択的腫瘍取り込みを実証する(図18;矢印は腫瘍部位を示す)。
【0133】
Gd-DO3A-404(MRI造影剤)および64Cu-DO3A-404(PET造影剤)の同時投与後24時間の、U87を側腹部に有するラットの同時PET/MRスキャンを得た。図19に見られるように、融合T1強調MRおよびPET画像は、側腹部および腹部において造影剤と活性の優れた共局在化を示した(矢印は腫瘍をさす)。腫瘍は、T1およびT2 MRI画像の両方において強調されている(図19)。さらに、同時PETスキャンは64Cu-DO3A-404PET造影剤(図19)の腫瘍取り込みを実証し、腫瘍イメージング(例えばPETイメージングなど)および放射線治療用途においてGdの代わりに放射性金属を有する開示されたキレートを使用するための概念実証を提供する。
【0134】
まとめると、これらの実施例は、本明細書に開示されるように、適切な腫瘍標的化リン脂質部分を含む放射性金属キレートが、複数の癌型において選択的取り込みおよび保持を示すことを実証する。そのようなキレートは、癌および転移の検出、特徴付け、および病期分類の改善を容易にするであろう。その上、そのような薬剤は、それらが選択的に取り込まれ保持される固形腫瘍を標的とする放射線治療に使用することができる。
【0135】
本発明のその他の実施形態および使用は、本明細書に開示される本発明の明細書および実践を考慮すれば当業者に明白である。すべての学術誌の引用および米国/海外の特許および特許出願を含む、何らかの事情により本明細書に引用されるすべての参考文献は、参照により具体的にかつ完全に本明細書に組み込まれる。本発明は、本明細書に例示され説明される特定の試薬、製剤、反応条件等に限定されないが、そのようなそれらの変更形態を以下の特許請求の範囲内に入るとして包含することは理解される。
図1
図2
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