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特許7127049ヘッドマウントディスプレイ用光学機器及びそれを拡張現実用に内蔵するヘッドマウント機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】ヘッドマウントディスプレイ用光学機器及びそれを拡張現実用に内蔵するヘッドマウント機器
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20220822BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20220822BHJP
   G02C 9/00 20060101ALI20220822BHJP
   G02C 7/14 20060101ALI20220822BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20220822BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02C11/00
G02C9/00
G02C7/14
G02B5/00 Z
H04N5/64 511A
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019546366
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2018055949
(87)【国際公開番号】W WO2018166921
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】17305266.3
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・メイネン
(72)【発明者】
【氏名】マリユス・プルー
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・ウバック
(72)【発明者】
【氏名】リュドヴィック・ジョワール
(72)【発明者】
【氏名】マルク・レイグノー
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-145513(JP,A)
【文献】国際公開第2016/075689(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0168260(US,A1)
【文献】特開2012-013460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00,27/01,27/02
H04N 5/64
G02C 7/14,9/00,11/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 第一の屈折率を有する光伝導素子(4)であって、光源(5)と2つの対向する第一及び第二の主要面(4及び4b)に連結された入射ゾーンを有し、前記光源から受け取った光(6)を入射させて、前記第一及び第二の主要面間の全内部反射によりこれを伝導し、前記伝導された光(7)を前記光伝導素子から部分的に射出させるように構成された光伝導素子と、
- 前記光伝導素子の前記第一の主要面に面する内面(2a、3a)を含む少なくとも1つの基板(2、3)と、
- 前記第一の主要面及び前記内面と接触し、それらの間に、ギャップ(11a、11b)を画定する介在手段(10a、10b、10b’、10b’’)であって、前記ギャップは、前記第一の屈折率より低いギャップ屈折率を有し、前記光伝導素子を光学的に絶縁する介在手段(10a、10b、10b’、10b’’)と、
を含む、特にヘッドマウントディスプレイで使用可能な光学機器(1、1’、1’’、1’’’)において、
前記介在手段は、周辺長さを有し、前記周辺長さに沿って、前記内面の周辺領域(2aa、3aa)と前記第一の主要面の、前記周辺領域に面するゾーン(4aa、4ba)との間に、それらと密着接触して延びる周辺シール機構(10a、10b、10b’、10b’’)を含み、前記周辺シール機構の、前記周辺長さに沿った少なくとも1部分(4’’)では、前記周辺長さの残りの部分(4’)と比較して局所的に前記第一の主要面との光結合の減少を示し、前記光伝導素子内部で前記少なくとも1部分(4’’)における前記内部反射を保存するように構成されることを特徴とする光学機器。
【請求項2】
前記周辺シール機構(10a、10b、10b’、10b’’)は、前記周辺長さにわたり、閉又は開ループの形態で延びる弾性又は可塑性の少なくとも1つの周辺シール(12a、12b、12b’、12b’’、12c、12d)を含み、前記少なくとも1部分(4’’)で、前記光結合の減少を示すように構成され、前記少なくとも1つの周辺シール及び前記第一の主要面(4a、4b)と接触する光絶縁手段(13a、13b、13’、13’’、13’’’、15、16)をさらに内蔵する、請求項1に記載の光学機器(1、1’、1’’、1’’’)。
【請求項3】
前記周辺シール機構(10a、10b、10b’、10b’’)は、前記少なくとも1つの基板(2、3)の前記内面(2a、3a)及び前記光伝導素子(4)の第一の面(4a、4b)と非接着接触し、前記光絶縁手段(13a、13b、13’、13’’、13’’’、15、16)は、前記少なくとも1つの周辺シール(12a、12b、12b’、12b’’、12c、12d)と接着又は非接着接触している、請求項2に記載の光学機器(1、1’、1’’、1’’’)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの周辺シール(12a、12b、12b’、12b’’、12c、12d)は、前記ギャップ(11a、11b)への水や埃の侵入を防止するように適合され、
- 多角形又は長円形の断面を有するゴム製シールと、
- 任意選択でマイクロビーズを含む多層熱可塑性接着シールと、
から選択される、請求項2又は3に記載の光学機器(1、1’、1’’、1’’’)。
【請求項5】
前記光絶縁手段(13a、13b、15、16)は、
(i)フィルムと前記第一の主要面(4a、4b)との間の界面において屈折率の急激な変化を画定することのできるナノ突起(14)を有するナノ構造フィルム(13’)、
(ii)前記第一の主要面からの前記光(7)を反射させることができ、前記第一の主要面との接触領域を示す単層又は多層ミラーフィルム(13’’、13’’’)、
(iii)前記第一の主要面(4b)と接触せず、前記光源(5)及び前記少なくとも1つの基板(3)の周辺縁(3c)と接触して取り付けられ、前記光源は前記光伝導素子(4)にその接続ゾーン(4d)上で接続されているシール部材(15、16)であって、前記周辺シール(12b’、12b’’)に局所的に置き換わり、前記開ループにより画定される開放部において前記周辺シール(12b’、12b’’)に接続される、シール部材(15、16)、及び/又は
(iv)前記第一の主要面と前記内面(2a、3a)との間で圧縮され、前記第一の主要面との接触領域を示す柔軟なガスケット
から選択され、
前記接触領域は、その周辺方向においては、前記少なくとも1部分(4’’)の長さ(L)と、前記長さに垂直な横方向においては、前記第一の主要面と接触する前記少なくとも1部分の幅(W)により画定される、請求項2~4の何れか1項に記載の光学機器(1、1’、1’’、1’’’)。
【請求項6】
前記光絶縁手段(13a、13b)は、各々がその底部(14a)から端(14b)へと先細である前記ナノ突起(14)により画定され、前記底部から前記端へと連続的に減少する、入射光により見られる実際の屈折率を示すモスアイフィルムである前記ナノ構造フィルム(13’)を含み、前記ナノ構造フィルムは、前記少なくとも1つの周辺シール(12a、12b、12c、12d)に接着剤で結合される、請求項5に記載の光学機器(1、1’)。
【請求項7】
前記光絶縁手段(13a、13b)は、前記第一の主要面(4a、4b)の上に堆積される前記単層又は多層ミラーフィルム(13’’、13’’’)を含む、請求項5に記載の光学機器(1、1’)。
【請求項8】
前記光絶縁手段(13a、13b)は、200μm未満である前記第一の主要面(4a、4b)と接触する前記幅(W)を有する前記圧縮された柔軟なガスケットを含む、請求項5に記載の光学機器(1、1’)。
【請求項9】
前記ギャップ(11a、11b)は、前記光源(5)の発光波長より大きいか、それと等しく、少なくとも700nmである厚さを有する、請求項1~8の何れか1項に記載の光学機器(1、1’、1’’、1’’’)。
【請求項10】
前記少なくとも1部分(4’’)は、前記周辺シール機構(10a、10b、10’、10b’’)の、前記光伝導素子(4)の前記光源(5)に近い前記入射ゾーンに面する近接区間を含む、請求項1~9の何れか1項に記載の光学機器(1、1’、1’’、1’’’)。
【請求項11】
前記光伝導素子(4)は、
- 前記ヘッドマウントディスプレイによる拡張現実の情報表示を提供し、前記光伝導素子は、前記少なくとも1つの基板(2、3)を通じて装用者の眼に向かって前記伝導された光を部分的に射出させ、又は
- 照明もしくは測定を提供する
ように構成される、請求項1~10の何れか1項に記載の光学機器(1、1’、1’’、1’’’)。
【請求項12】
それぞれ、前記光伝導素子(4)の前記第一及び第二の主要面(4a及び4b)に面する第一及び第二の内面(2a及び3a)を有する第一及び第二の基板(2、3)の少なくとも1つのペアを含み、
- 前記第一の内面の第一の前記周辺領域(2aa)及び前記第一の主要面の、前記第一の周辺領域に面する第一の前記ゾーン(4aa)との間の第一の前記周辺シール機構(10a)、及び/又は
- 前記第二の内面の第二の前記周辺領域(3aa)及び前記第二の主要面の、前記第二の周辺領域に面する第二の前記ゾーン(4ba)との間の第二の前記周辺シール機構(10b)
を含む、請求項1~11の何れか1項に記載の光学機器(1、1’)。
【請求項13】
前記第一及び第二の基板(2及び3)の前記少なくとも1つのペアはそれぞれ、
- 前側眼科レンズと、
- 装用者の眼に近い、後側眼科レンズ
を形成するように設計され、
前記第一及び第二の基板の前記少なくとも1つのペアは、前記前側眼科レンズ及び前記後側眼科レンズにより提供される光学的補正を介して、前記光学機器に、光学力、乱視度数、及び/又は加入度を含む所定の処方データを付与するように適合される
請求項12に記載の光学機器(1、1’)。
【請求項14】
装用者のために拡張現実の情報表示を提供するように構成されたヘッドマウント機器において、
請求項1~13の何れか1項に記載の光学機器(1、1’、1’’、1’’’)を含むことを特徴とするヘッドマウント機器。
【請求項15】
光学力、乱視度数、及び/又は加入度を含む装用者の処方データに合わせて、前記光伝導素子(4)の両側に配置され、第一の前記周辺シール機構(10a)により、及び第二の前記周辺シール機構(10b)によりそれから分離され、非接着接触する、光学的補正を行う眼科レンズを形成する2つの第一及び第二の前記基板(2及び3)の少なくとも1つのペアによって適合される、請求項14に記載のヘッドマウント機器。
【請求項16】
前記少なくとも1つの周辺シール(12a、12b、12b’、12b’’、12c、12d)は、
- 正方形又は円形の断面を有するゴム製シールと、
- 感圧層であり、トリアセチルセルロースである内層の両側に提供される2つの接着剤外層を含む多層熱可塑性接着シールと、
から選択される、請求項4に記載の光学機器(1、1’、1’’、1’’’)。
【請求項17】
前記シール部材(15、16)が、
- 前記周辺縁(3c)と接触するシール本体(15a)と、前記シール本体を延ばし、前記光源(5)と接触するシールリップ(15b)、又は
- 前記接続ゾーン(4d)の、前記光源(5)を取り囲む領域(4da)に結合され、それぞれ前記周辺縁(3c)及び前記光源と接触する2つの局所シール(16b及び16c)が設けられた2つの突出する対向面を画定する接続素子(16a)
を含む、請求項5に記載の光学機器(1、1’、1’’、1’’’)。
【請求項18】
前記ナノ突起(14)は、各々が実質的に円錐状にその底部(14a)から端(14b)へと先細であり、前記ナノ構造フィルムは、前記第一の主要面(4a、4b)と、前記先細のナノ突起の前記端により接触する、請求項6に記載の光学機器(1、1’)。
【請求項19】
前記単層又は多層ミラーフィルム(13’’、13’’’)は、前記第一の主要面(4a、4b)の上に、アルミニウム層の、又は反射インクの物理蒸着により堆積され、200μm未満の、前記第一の主要面と接触する前記幅(W)を有する、請求項7に記載の光学機器(1、1’)。
【請求項20】
前記ギャップ(11a、11b)は空気で満たされ、少なくとも1μmである、前記光源(5)の発光波長より大きいか、それと等しい、前記厚さを有する、請求項9に記載の光学機器(1、1’、1’’、1’’’)。
【請求項21】
前記光伝導素子(4)は、導光光学素子(LOE)である、請求項11に記載の光学機器(1、1’、1’’、1’’’)。
【請求項22】
前記光学機器が、
- 前記第一の内面の第一の前記周辺領域(2aa)及び前記第一の主要面の、前記第一の周辺領域に面する第一の前記ゾーン(4aa)との間の、それらと非接着接触する前記第一の前記周辺シール機構(10a)、及び/又は
- 前記第二の内面の第二の前記周辺領域(3aa)及び前記第二の主要面の、前記第二の周辺領域に面する第二の前記ゾーン(4ba)との間の、それらと非接着接触する前記第二の前記周辺シール機構(10b)
を含む、請求項12に記載の光学機器(1、1’)。
【請求項23】
前記第一及び第二の基板(2及び3)の前記少なくとも1つのペアはそれぞれ、
- 平面である第一の内面(2a)と、凸状の第一の反対の外面(2b)を有する前記前側眼科レンズと、
- 平面である第二の内面(3a)と第二の反対の外面(3b)を有する前記後側眼科レンズ
を形成するように設計される、請求項13に記載の光学機器(1、1’)。
【請求項24】
ヘッドマウント機器が、そのフレームに埋め込まれ、前記光伝導素子(4)が連結される前記光源(5)を形成するマイクロディスプレイプロジェクタ(POD)を含む、請求項14に記載のヘッドマウント機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝導素子と、光学レンズを形成するように設計されてもよい少なくとも1つの基板と、を含む、特にヘッドマウントディスプレイ内で使用可能な光学機器と、ヘッドマウント機器の装用者のために拡張現実の情報表示を提供するように構成された、かかる光学機器を含むヘッドマウント機器に関する。本発明は特に、導光光学素子を有していてもよい光伝導素子を内蔵する光学機器に関するが、光波を誘導できる何れの光伝導素子が使用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウント機器は、装用者の頭部に装着される電気光学機器である。通常、ヘッドマウント機器は、異なるステージ間での切り替えを行うか、又は装用者に対して情報を表示するように電子的に制御され、電子的に制御される光学レンズを有するフレームを含む。基本的に、ヘッドマウント機器はシーアラウンド又はシースルー機構を含んでいてもよく、没入型パターン(すなわち、外部の視野を遮断する)又は非没入型パターン(すなわち、装用者が自分の環境と相互作用できる)で使用されてもよい。特に、シースルー型のヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、情報、例えばコンピュータ生成情報(例えば、テキスト及び/又は画像)を実世界の視野の上に重ねることができる。このようなシースルーHMDは、特に拡張現実を装用者に提供するために使用される。
【0003】
HMDは通常、2つの基板を含んでいてもよい光学機器と、光源、コリメートモジュール、及び光伝導素子、例えば導光光学素子(LOE:light-guide optical element)を連続して有する表示ユニットと、を含んでいてもよい。一般に知られているように、LOEは、発せられた光波を、その外側主要面からの全内部反射により捕捉して、光を装用者の目に向かって射出させるように構成される。基板は典型的には、それを取り付けることによってLOEの内部の光波の全反射、又はLOEへの、及びそこからの光波の結合を劣化させないようにLOEの主要面に取り付けられる。
【0004】
国際公開第2016/075689 A1号パンフレットは、この取り付けのために、ナノ構造のエアギャップフィルム、例えばモスアイフィルムを使用することを教示しており、これは対応する基板に接着され、LOEの主要面に接着剤で取り付けられた先細のナノ突起を作り、それによって各基板とLOEとの間に挟まれたエアギャップフィルムはこの主要面との界面において屈折率を急激に変化させ、それがLOE内の光波の全内部反射の保存を可能にする。
【0005】
この文献で開示されている各基板とLOEとの間のこれらの介在手段の主な欠点は、各エアギャップフィルムがLOEの対応する主要面の全面積を覆わなければならないことと、このフィルムが十分な防水及び防塵性を有していないかもしれないことにある。
【0006】
変形型として、LOEを接着剤又は成型手段により取り囲むことも知られており、これは水や埃の侵入を十分に防止できないというこの欠点を修復する。しかしながら、このようにLOEを取り囲むことの主な欠点は、LOE内部の光波の全内部反射を保存するために必要な、LOE主要面の追加の絶縁処理にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2017/001402号
【文献】国際公開第2017/001403号
【文献】米国特許第9213178号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0168260号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの目的は、上記の欠点を修復する、特にヘッドマウントディスプレイで使用可能な光学機器を提供することであり、この光学機器は、
- 第一の屈折率を有する光伝導素子であって、光源と2つの第一及び第二の反対側の主要面に連結された入射ゾーンを有し、前記光源から受け取った光を入射させて、前記主要面間の全内部反射によりこれを伝導し、伝導された光を前記光伝導素子から部分的に射出させるように構成された光伝導素子と、
- 前記光伝導素子の前記第一の主要面に面する内面を含む少なくとも1つの基板と、
- 前記第一の主要面及び前記内面と接触し、それらの間に、前記第一の屈折率より低いギャップ屈折率を有し、前記光伝導素子を光学的に絶縁するギャップを画定する介在手段と、
を含む。
【0009】
この目的のために、前記介在手段は、周辺長さを有し、前記周辺長さに沿って、前記内面の周辺領域と前記第一の主要面の、前記周辺領域に面するゾーンと密着接触して延びる周辺シール機構を含み-有利な点として含み-、前記シール機構の、前記周辺長さに沿った少なくとも1部分では、前記周辺長さの残りの部分と比較して、局所的に前記第一の主要面との光結合の減少を示し、前記光伝導素子内部の前記少なくとも1部分において前記内部反射が保存されるように構成される。
【0010】
本発明のこれらの介在手段は、有利な点として周辺のみにあり、光伝導素子の対向面と基板の全面積を連続的に覆う国際公開第2016/075689 A1号パンフレットの、取り付けられたエアギャップフィルムとは異なっており、このエアギャップフィルムは各基板と光伝導素子との間の空間のほとんどを満たすことに留意されたい。
【0011】
また、前記周辺シール機構の内部の自由空間により画定される本発明の前記ギャップは、光伝導素子内の光波の全内部反射を可能にする絶縁機能を有することもわかるであろう。
【0012】
さらに、この周辺シール機構は使用中に前記少なくとも1つの基板と光伝導素子との間に水や埃が入り込むことに対する有効なシールバリアを形成し、それが機器全体の全体の透明性と組み合わされて、環境から生じるあらゆる劣化から射出光の品質を保護することができることに留意されたい。このように得られたシールは、有利な点として、その主要面の多層絶縁処理を必要とする上述のような光伝導素子を取り囲む既知の方法により得られるものとは異なっており、それは、本発明のシールはこの絶縁処理を行わなくてよいからである。
【0013】
以下に説明するように、前記介在手段のみを形成してもよいこの周辺シール機構は、その、又は各基板と光伝導素子との間にこのシールを提供するだけでなく、前記又は各基板を、処方データに基づいて視力矯正用に設計された表面を有する眼科レンズを形成するように設計することにより、光学機器のための処方も提供できることもわかるであろう。
【0014】
有利な点として、前記ギャップは好ましくは空気により満たされ、その厚さは前記光源の発光波長より大きいか、それと等しく、少なくとも700nm、好ましくは少なくとも1μmである。
【0015】
前述のように、このようなエアギャップは、光伝導素子に関して、その中の全反射を保存し、最終的に、透過によって情報光又は画像の出力を得られるようにすることにより、アイソレータとして機能する。
【0016】
このエアギャップにより、前述の既知の多層アイソレータと比較して、この透過を改善し、光学機器の視覚的な審美性も向上させながら前記処方を提供することが可能となることに留意されたい。
【0017】
本発明の他の特徴によれば、前記周辺シール機構は、閉又は開ループの形態で前記周辺長さにわたって延びてもよい少なくとも1つの弾性又は可塑性周辺シールを含んでいてもよく、また、前記少なくとも1部分で前記光結合の減少を示すように構成され、前記少なくとも1つの周辺シール及び前記第一の主要面と接触する、光絶縁手段をさらに内蔵してもよい。
【0018】
これもまた有利な点として、前記少なくとも1部分は前記周辺シール装置の近接区間を含み得、これは前記光伝導素子の、前記光源に隣接する前記入射ゾーンに面する。
【0019】
そのフレームに埋め込まれ、前記光源を形成する光源(例えば、PODとして知られるマイクロディスプレイプロジェクタ)に連結された光伝導素子の入射ゾーンは、HMDの場合に射出光の品質と、その結果として得られる画像にとって重要であることと、この入射ゾーンに直に隣接し、それに面するこの近接区間は、有利な点として、前記光絶縁手段を内蔵し、それによって、この入射ゾーンにおける前記シールの不利な影響による、結果として得られる射出光の劣化は一切観察されないことに留意されたい。
【0020】
本発明の他の特徴によれば、前記少なくとも1つの周辺シールは、水や埃が前記ギャップの中に侵入するのを防止するようになされ、
- 好ましくは正方形又は円形である多角形又は長円形断面を有するゴム製シールと、
- 任意選択によりマイクロビーズを含み、好ましくは、例えば感圧層であり、例えばトリアセチルセルロースである内層の両側に提供される2つの外層を含む多層熱可塑性接着シール
から選択されてよい。
【0021】
本発明のまた別の特徴によれば、前記光絶縁手段は、
(i)前記フィルムと前記第一の主要面との間の界面において屈折率の急激な変化を画定することのできるナノ突起を有するナノ構造フィルム、
(ii)結合された光を前記第一の主要面で反射させることができ、前記第一の主要面との接触領域を示す単層又は多層ミラーフィルム、
(iii)前記第一の主要面と接触せず、前記光源及び前記少なくとも1つの基板の周辺縁と接触して取り付けられたシール部材であって、前記光源は前記光伝導素子にその接続ゾーン上で接続されており、前記周辺シールに局所的に置き換わり、前記開ループにより画定される開口部においてそれに接続されるシール部材、及び/又は
(iv)前記第一の主要面と前記内面との間で圧縮され、前記第一の主要面との接触領域を示す柔軟なガスケット
から選択されてよく、
前記接触領域は、(ii)及び(iv)の場合において、その周辺方向においては、前記少なくとも1部分の長さと、前記長さに垂直な横方向においては、前記第一の主要面と接触する前記少なくとも1部分の幅により画定される。
【0022】
有利な点として、前記第一の周辺シール機構は、前記少なくとも1つの基板の前記内面及び前記光伝導素子の前記第一の面と非接着接触していてもよく、前記光絶縁手段は前記少なくとも1つの周辺シールと接着又は非接着接触していてもよい。
【0023】
上記(i)の場合に関する本発明の第一の実施形態によれば、前記光絶縁手段は前記ナノ構造フィルムを含み、これは、各々が例えば実質的に円錐状にその底部から端へと先細である前記ナノ突起により画定され、それが示す実際の屈折率は前記底部から前記端へと連続的に減少するようなモスアイフィルムであり、前記ナノ構造フィルムは、前記少なくとも1つの周辺シールに接着剤で結合され、好ましくは、前記第一の主要面と、前記先細のナノ突起の前記端により接触する。
【0024】
上記(ii)の場合に関する本発明の第二の実施形態によれば、前記光絶縁手段は前記単層又は多層ミラーフィルムを含み、これは、前記第一の主要面の上に、例えばアルミニウム層の、又は反射インクの物理蒸着により堆積され、好ましくは200μm未満の、前記第一の主要面と接触する前記幅を有する。
【0025】
上記(iii)の場合に関する本発明の第三の実施形態によれば、前記シール部材は例えば、
- 前記周辺縁と接触するシール本体及び、前記シール本体を延ばし、前記光源と接触するシールリップ又は、
- 前記光源を取り囲み、それぞれ前記周辺縁及び前記光源と接触する2つの局所シールが設けられた2つの突出する対向面を画定する接続ゾーンの領域に結合された接続素子
を含んでいてもよい。
【0026】
上記(iv)の場合に関する本発明の第四の実施形態によれば、前記光絶縁手段は前記圧縮された柔軟なガスケットを含み、これは、200μm未満であり、好ましくは30μm~200μmの間である、前記第一の主要面と接触する前記幅を有する。
【0027】
本発明の他の特徴によれば、光学機器は、第一及び第二の前記基板の少なくとも1つのペアを含み得、これらはそれぞれ、前記光伝導素子の前記第一及び第二の主要面に面する第一及び第二の前記内面を有し、前記光学機器は、
- 前記第一の内面の第一の前記周辺領域と前記第一の周辺領域に面する前記第一の主要面の第一の前記ゾーンとの間の、好ましくはそれらと非接着接触する第一の前記周辺シール機構、及び/又は
- 前記第二の内面の第二の前記周辺領域と前記第二の周辺領域に面する前記第二の主要面の第二の前記ゾーンとの間の、好ましくはそれらと非接着接触する第二の前記周辺シール機構
を含む。
【0028】
有利な点として、前記第一及び第二の基板の前記少なくとも1つのペアはそれぞれ、
- 好ましくは、平面である前記第一の内面と、凸状の第一の反対の外面を有する前側眼科レンズと、
- 装用者の眼に近い、好ましくは、平面である前記第二の内面と第二の反対の外面を有する後側眼科レンズ
を形成するように設計されてもよく、
前記第一及び第二の基板の前記少なくとも1つのペアは、前記レンズにより提供される光学的補正を介して、前記光学機器に、光学屈折力、乱視度数、及び/又は加入度を含む所定の処方データを付与するように適合される。
【0029】
本発明の他の態様によれば、前記光伝導素子は、好ましくは導光光学素子(LOE)であり、
- 前記ヘッドマウントディスプレイによる拡張現実の情報表示を提供し、前記光伝導素子が伝導された光を前記少なくとも1つの基板を通じて装用者の眼に向かって部分的に射出させ、
- 照明又は測定を提供する
ように構成されてもよい。
【0030】
したがって、本発明の機器において使用可能な前記光伝導素子はLOE以外、例えばMagic Leap社により設計されるシステム(これは、情報を含む画像を表示できるHMDである)で使用されるもの、又はイメージング以外の用途のために設計される導波路等であってもよい。
【0031】
本発明によるヘッドマウント機器は、装用者のために拡張現実の情報表示を提供するように構成され、このヘッドマウント機器は、それが上で定義したような光学機器を含むことを特徴とし、ヘッドマウント機器は好ましくは、そのフレームに埋め込まれ、前記光伝導素子が連結される前記光源を形成するマイクロディスプレイプロジェクタ(POD)を含む。
【0032】
有利な点として、ヘッドマウント機器は、装用者の眼科データに、及びより好ましくは、光学屈折力、乱視度数、及び/又は加入度を含む装用者の処方データに合わせて、前記光伝導素子の両側に配置され、第一の前記周辺シール機構により、及び第二の前記周辺シール機構によりそれから分離され、好ましくは非接着接触する、光学的補正を行う眼科レンズを形成する2つの第一及び第二の前記基板の少なくとも1つのペアによって適合されてもよい。
【0033】
非接着接触により、特定のLOEを内蔵する情報HMD、例えば矯正レンズの周辺において全内部反射の少なくとも1つのゾーンを有する情報シースルー型グラスに可変的な処方を提供でき、それは本発明の介在手段の周辺シール機構がこの場合、異なる処方のレンズを形成する他の基板を含む他の機器に組み込まれる光学機器から容易に取り外せるからであることに留意されたい。
【0034】
具体的には、そこに何れの接着剤も使用しないことは、HMDを装用者の、又は装用者群の視力に合わせて、その人物がそれを通じて実世界を見るように、適当な矯正用眼科レンズ(又は、光減衰、色認識等のその他の視覚的にニーズへの対応)によってカスタム化するという現在のニーズを満たす。
【0035】
すでに知られているように、装用者の処方とは、装用者の視覚的異常を矯正するために、例えばその人物の眼の前に置かれたレンズによって眼科医が特定する、光学屈折力、乱視度数、及び/又は加入度の光学特性の集合である。例えば、累進屈折力レンズのための処方は、光学屈折力の、及び遠見点における乱視度数の、及び適当である場合は加入度の値を含む。
【0036】
本発明を説明するために、以下のような定義を下に提供する。
【0037】
「ヘッドマウント表示機器」(HMD)は、既知のように、装用者の頭部に、又はその周辺に装着されることになり、ヘルメット装着ディスプレイ、光学的ヘッドマウントディスプレイ、頭部装着ディスプレイ、及びその他を含む。これらは、装用者が視覚化するための画像を表示する光学手段を含む。HMDは、コンピュータ生成画像と「現実の」視野を重ね合わせた可視化を提供してもよい。HMDは、単眼型(片方の眼)又は両眼型(両方の眼)であってもよい。本発明のHMDは、眼鏡、スキー用又は運転用マスク等のマスク、ゴーグル等を含む様々な形態を取ることができる。HMDは、1つ又は複数のレンズを含んでいてもよい。前記レンズは、処方レンズ等の眼科レンズから選択できる。好ましい実施形態において、HMDはレンズを備える眼鏡である。
【0038】
「コンピュータ生成画像」は、既知のように、2D又は3D回折像、2D又は3Dコンピュータ生成ホログラフィ像、何れかの振幅像等を含む。コンピュータ生成画像は、仮想画像として使用されてよい。幾つかの実施形態において、画像(データ)は、光学収差、例えばディスプレイの固定の収差(固有の収差又は、回折ミラーの正面でのその向き又は位置に関連する)、及びディスプレイのこの向き又は位置で使用される回折ミラーの収差を少なくとも部分的に修正するために計算できる。
【0039】
「画像源」(IS:image source)とは、既知のように、装用者が可視化するための画像を表示するのに適した(配置された、構成された)光ビームを発することのできるあらゆる光源である。可視化は、画像源から発せられた照明ビームがシースルーミラーへと反射された後に起こる。ホログラフィ像の表示に関して、光ビームはホログラムのための参照ビームを含む。画像は画像データ(例えば、コンピュータ生成画像データ)から表示できる。ISは多層構造を有していてもよく、装用者のこめかみの付近に、例えば、眼鏡のテンプル部品等、HMDのテンプル部品上に位置付けられてもよいという点で、「オフアクシス」であるかもしれない。ISは、バーチャル画像(コンピュータ生成画像)の表示のために構成されたあらゆる画像源であってよい。それは、スクリーン(例えば、OLED、LCD、LCOS等)、その光源(例えば、レーザ、ダイオードレーザ等)と組み合わせられる位相及び/又は振幅SLM(空間光変調器:Spatial Light Modulator)、ピコプロジェクタ等のプロジェクタ(LED、ダイオード、レーザ等を使用してよいMEMS又はDLP)、又は他の何れの光源であってもよい。ISはまた、他の何れの画像源(コンピュータ生成画像源)及び/又は制御電子部品及び/又は電源及び/又は任意選択による光学素子等も含んでいてよい。
【0040】
「装用者眼科データ」又は「眼科データ」(OD:ophthalmic data)とは、既知のように、装用者の処方データ(PD:prescription data)、装用者眼感度データ(SD:sensitivity data)、及び装用者眼バイオメトリデータ(BD:biometry data)、及び一般的に装用者のあらゆる視覚異常に関するデータ、例えば色収差、水晶体欠損(無水晶体)等に関するデータを含む。
【0041】
「処方データ」(PD:prescription data)とは、装用者のために取得された、各眼について、各眼の屈折異常及び/又は老眼を矯正するのに適した処方遠見平均屈折力PFV及び/又は処方乱視値CYLFV及び/又は処方乱視軸AXEFV及び/又は処方加入度Aを示す1つ又は複数のデータを指す。平均屈折力PFVは、処方された乱視値CYLFVの半値を処方された球面値SPHFVに加えることにより得られる:PFV=SPHFV+CYLFV/2。次に、近(近距離)見時の各眼についての平均屈折力は、同じ眼についての処方加入度Aを遠見平均屈折力PFVに加えることにより得られる:PNV=PFV+A。累進レンズ用の処方の場合、処方データは、各眼について、SPHFV、CYLFV、A、及び乱視軸AXEFVを示す装用者データを含む。好ましい実施形態において、装用者処方データPDは、乱視モジュール、乱視軸、屈折力、プリズム及び加入度、ならびにより一般的に、何れかの特定の視覚異常の矯正を示すあらゆるデータから選択される。このような異常は、部分的網膜剥離、網膜又は虹彩又は角膜の奇形に起因するかもしれない。
【0042】
本発明の上記の特徴は、その他のものと共に、例示を目的に与えられ、本発明を限定しようとしていない本発明の幾つかの例に関する以下の説明を読むことによって、より明確に理解され、前記説明は下記のような添付の図面に関している。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図2で見ることのできる、本発明による光学機器の底面概略平面図である。
図2図1による本発明の光学機器の、そのII-II切断線に沿って得た概略断面図である。
図3図2と同様の、本発明の他の光学機器の縁辺ゾーンの詳細を示す概略部分断面図である。
図4図2の光学機器の縁辺ゾーンの詳細を示す概略部分断面図である。
図4a】本発明の第一の実施形態による、図2の光学機器の各周辺シール機構及び光伝導素子をより拡大して示す概略部分断面図である。
図5】本発明の第二の実施形態による、図2の各周辺シール機構及び光伝導素子をより拡大して示す概略部分断面図である。
図6】本発明のこの第二の実施形態の変形型による、図2の各周辺シール機構及び光伝導素子をより拡大して示す概略部分断面図である。
図7】光源を備える光伝導素子の例示的な組み合わせを示す概略斜視図であり、前記組合せは本発明の光学機器において使用可能である。
図8図7の組合せと、本発明の第三の実施形態による周辺シール機構を備える基板を含む本発明の他の光学機器の概略断面図である。
図9図7の組合せと、本発明のこの第三の実施形態の変形型による周辺シール機構を備える基板を含む本発明の他の光学機器の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1~4で見ることのできる光学機器1、1’は各々、第一及び第二の基板2及び3を含み、これらはそれぞれ、前側眼科レンズ(装用者の眼から遠い)及び後側眼科レンズ(装用者の眼に近い)を形成するように設計され、それぞれ、光伝導素子4の第一及び第二の主要面4a及び4bに面する第一及び第二の平坦な内面2a及び3a(図2~4参照)を有する。例えばLOE型の素子4は、例えば光学機器1、1’を内蔵するヘッドマウント機器(例えば、HMD)のフレームに埋め込まれたマイクロディスプレイプロジェクタ(POD)等の光源5により発せられた光波を捕捉するように設計される。図2で見ることができるように、発せられた光ビーム6は、素子4の主要面4a及び4bの内側から全内部反射メカニズムにより連続的に反射されるが、事前に決められた幾つかの特定の位置においては、これらの反射ビームはその後、射出光7として特定の角度で第二の主要面4bから第二の基板3に向かって伝送され、最終的にこれらはヘッドマウント機器の装用者の眼に到達する。
【0045】
光学機器1、1’は、
- 第一の内面2aの第一の周辺領域2aaと第一の主要面4aの、第一の周辺領域2aaに面する第一の周辺ゾーン4aaとの間の、好ましくはそれらと非接着接触する第一の周辺シール機構10aと、
- 第二の内面3aの第一の周辺領域3aaと第二の主要面4bの、第二の周辺領域に面する第二の周辺ゾーン4baとの間の、好ましくはそれらと非接着接触する第二の周辺シール機構10bと、
を含む。
【0046】
図2で見ることができるように、第一の基板2は凸状の第一の外面2b(第一の平坦な内面2aの反対)を有し、第二の基板3は、この例示的実施形態においては凹状の第二の外面3b(第二の平坦な内面3aの反対)(しかしながら、この第二の外面3bは、凸状であっても、累進的であっても、又は例えば乱視を矯正するために設計されていてもよい)を有する。
【0047】
前述のように、図1~6の光学機器1、1’は、前記レンズにより提供される光学的矯正を通じた、ヘッドマウント機器のそれらのような情報グラスに所定の処方を提供するように構成され、これには例えば光学屈折力、乱視度数、及び/又は加入度が含まれる。
【0048】
特に図1及び2で見ることができるように、2つの第一及び第二の周辺シール機構10a及び10bはそれぞれ、第一の主要面4aと第一の内面2a、及び第二の主要面4bと第二の内面3aとの間に、それらと接触して挿入され、それらの間にエアギャップ11a、11b(又はより一般的には、光伝導素子のそれより低い屈折率を有する媒質のギャップ)を画定する。このギャップ11a、11bにより、素子4を光学的に絶縁できる。シール機構10a、10bは、その周辺長さに沿って、周辺領域2aa、3aa(基板2、3の周辺縁2c、3cに直に隣接する)及び対向する周辺ゾーン4aa、4ba(素子4の周辺縁4cに隣接する)と接触して延びる。
【0049】
本発明のこの例示的実施形態によれば、周辺シール機構10a、10bは各々、
- 閉ループの形態で(図1参照)対応する内面2a、3a及び周辺ゾーン4aa、4baの長大長さ部分4’(図1で見ることができる)と接触して連続的に延びる弾性又は可塑性周辺シール12a、12bであって、水や埃がギャップ11a、11bの中に侵入するのを防止するようになされたシール12a、12bと、
- 周辺シール12a、12bの短い区間と、周辺ゾーン4aa、4baの短小長さ部分4’’(図1参照)と接触して取り付けられ、長大長さ部分4’と比較して局所的に光結合の減少を示し、主要面4a、4bの内側に向かう全内部反射を保存し、それによって光ビームがこの区間で素子4から漏れないように構成された光絶縁手段13a、13bと、
を含む。
【0050】
図1により示されているように、シール12a、12bの、光絶縁手段13a、13bを備える区間は、シール機構10a、10bのこの短い部分を画定し、これは光源5に隣接して連結された光伝導素子4の少なくとも入射ゾーンに面する。入射ゾーンは素子4から射出される光7の品質にとって重要であるため、周辺シール12a、12bの一部と局所的に置き換わる絶縁手段13a、13bにより、この入射ゾーンにシール12a、12bを挿入することから生じ得る、HMDのための結果として得られる出力画像の劣化を回避でき、これは、絶縁手段13a、13bを持たないシール機構10a、10bの残りの部分と比較して、主要面4a、4bとの光結合がこのように局所的に減少していることによる。
【0051】
図2に示されるシール12a、12bは各々、正方形の断面を有するが、これらは多角形(例えば長方形)の断面等、閉じた折れ線により画定される他の何れの形状を有していてもよい。
【0052】
図3に示されるシール12c、12dは各々、円形の断面を有するが、これらは、長円、楕円、単円弧、又は多円弧断面等、閉じた曲線により画定される他の何れの形状を有していてもよい。この湾曲形状は、この場合、例えば実質的にドーナツ状等、シール12c、12dに凸状(例えば丸い)形状を付与してもよい。
【0053】
図1~6で見ることのできるシール12a、12b及び12c、12dは、任意選択によりマイクロビーズを含み、好ましくは例えば感圧層である2つの接着剤外層を含むゴム及び多層熱可塑性接着剤から選択される材料、例えばサンドイッチ状のPSA/TAC/PSA(PSAは感圧性接着剤であり、TACはトリアセチルセルロースである)で製作されてもよい。
【0054】
図4aで見ることのできる光絶縁手段はナノ構造フィルム13’からなり、これは例えばシール12a、12bに接着剤で結合され、フィルム13’と主要面4a、4bとの界面において屈折率の急激な変化を画定するナノ突起14を有する。フィルム13’は、好ましくはモスアイ型(例えば、三菱レーヨンのMosmite(登録商標))であり、その底部14aから、主要面4a、4bと接触するその端14bへと円錐状に先細のこれらのナノ突起14を有する。フィルム13’はそれゆえ、底部14aから端14bへと連続的に減少する実際の屈折率を示す。
【0055】
図5及び6で見ることのできる光絶縁手段は、各実施形態において、シール12a、12b及び光伝導素子4に取り付けられ、これらはどちらも、主要面4a、4bからの結合された光6を反射できるミラーフィルム13’’及び13’’’からなる。ミラーフィルム13’’、13’’’は主要面4a、4bとの接触領域を示し、これは、周辺方向にはフィルム長さL(Lは図1の短小部分4’’の長さである)と、横方向にはフィルム幅W(図5~6参照)とにより画定される。このフィルム幅Wは200μm未満、好ましくは30μm~200μmの間である。どちらの場合も、ミラーフィルム13’’、13’’’は主要面4a、4bの上に真空蒸着法(例えば、物理蒸着)により堆積されてもよい。
【0056】
具体的には、図5のミラーフィルム13’’は、例えばアルミニウム層又は反射インクからなる単層フィルムからなり、図6のミラーフィルム13’’’は、例えば真空蒸着により行われる連続的処理ステップにより得られる多層フィルムからなる。
【0057】
図8及び9は、各々、光源5(例えばPOD)を備える光伝導素子4(例えば、LOE)を示す図7に関しており、本発明の上記の第三の実施形態による、基板3に設けられる周辺シール機構10b’、10b’’を示す。具体的には、光源5は図7において、光伝導素子4の主要面4bから延びて、素子4と光源5との間に接続ゾーン4dを画定する面取り縁4dの形態の傾斜面に固定されている。
【0058】
図8~9の各例示的光学機器1’’、1’’’で見ることができるように、光絶縁手段は追加のシール部材15、16からなり、これらは主要面4bと接触せず、光源5及び基板3の周辺縁3cと接触して、取外し可能に(すなわち、切り離し可能に)取り付けられる。このシール部材15、16は、開ループの形態で延びる周辺シール12b’、12b’’と局所的に置き換えて取り付けられる(すなわち、したがってシール12b’、12b’’はこのループの開放部分に存在する)。具体的には、本発明の次の2つの実施形態は、機構10b’、10b’’に関する図8~9において想定され、シール部材(例えば15)と周辺シール(例えば12b’)は、
- 例えば、局所的に相互に異なる別の区間を有する単独ピース、又は、
- 2つ又はそれ以上の異なるピース
で構成されてよい。
【0059】
図8の代替的実施形態において、シール部材15は、周辺縁3cと接触するシール本体15aと、シール本体15aを拡張し、光源5と接触する柔軟なシールリップ15bを含む。
【0060】
図9の代替案において、シール部材16は接続素子16aを含み、これは接続ゾーン4dの、光源5を取り囲む領域4daに結合され、この接続ゾーン4dから光源5と基板3の間に、それらの正面で突出する。素子16aは、その片側に、周辺縁3cと接触する第一の局所シール16b(第一のシール16bは、通常のリップシールで作られてよい)と、その反対側に光源5と接触する第二の局所シール16c(第二のシール16cは、例えばシリコーン接着剤で作られてよい)とが設けられる。この接続素子16aは、中間挿入物を形成し、このようにして、光伝導素子4の面取り縁4dのおかげで固定されてもよく、ヘッドマウント機器のフレームそのもの、又はこのようなフレームの一部を構成してもよい。それに加えて、基板3の縁3cと接続素子16aとの間のシールは、平面に沿って実現されてもよく、これによって光学機器1’’’の取付工程におけるそのセンタリング中に、基板3の位置を制御できる。
【0061】
図8及び9のどちらの代替案も、有利な点として、光伝導素子4の繊細なゾーンを圧迫しないようにすることができ、また、素子4と取り付けられた光源5との間に大きすぎる応力を発生させないようにすることもできる。
図1
図2
図3
図4
図4a
図5
図6
図7
図8
図9