(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】制御された反復可能な衝撃を送達する整形外科用装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/92 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
A61B17/92
(21)【出願番号】P 2019565282
(86)(22)【出願日】2018-02-12
(86)【国際出願番号】 US2018017763
(87)【国際公開番号】W WO2018217250
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-12-15
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham MA 02767-0350 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ペディシニ・クリストファー
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/112397(WO,A1)
【文献】米国特許第05352230(US,A)
【文献】特開2016-202560(JP,A)
【文献】米国特許第01798082(US,A)
【文献】特開平04-002477(JP,A)
【文献】特表2018-502689(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0282286(US,A1)
【文献】特開2006-159400(JP,A)
【文献】特表2005-506211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0026097(US,A1)
【文献】米国特許第05152352(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/92
A61B 17/56
A61B 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用衝撃印加ツールであって、
動作可能に連結された外科用用具を駆動するために、1秒当たり1~10回の速度で、自らの中に貯蔵されたエネルギーを放出するエネルギー貯蔵及び放出機構と、
前記エネルギー貯蔵及び放出機構の貯蔵及び放出を監視及び管理するように構成されたコントローラと、
前記外科用用具を固定するためのアダプタと、
前記放出されたエネルギーに応じた衝撃力を、前記外科用用具に送達するための手段と、を備え
ており、
前記エネルギー貯蔵及び放出機構が、前記衝撃力を発生させるためにばね要素を圧縮及び解放するように回転するカムを含み、
前記カムが、前記カムの円筒形部分から突出するウォームと、前記ウォームと前記ばね要素とを接続するカム従動子とを含み、
前記カムの前記回転が前記カム従動子を前記ばね要素に対して押し当てて、前記カム従動子を前記ばね要素から解放し、
前記ウォームが、第1のウォーム端と第2のウォーム端との間に延在する螺旋面を含み、
前記カム従動子は、前記カムが回転するにつれて、前記第1のウォーム端から前記第2のウォーム端まで前記螺旋面上を摺動し、
前記ばね要素は、第1のばねと、前記第1のばねと軸方向に整列している第2のばねと、を含み、前記カム従動子は前記第1のばねと前記第2のばねの間に配置されており、前記第1のばねと前記第2のばねのそれぞれは前記カム従動子によって反対方向に押圧されるように構成されている、外科用衝撃印加ツール。
【請求項2】
前記ばね要素が、自らの自由長の50%未満の圧縮比を有する機械的ばねを備える、請求項
1に記載の外科用衝撃印加ツール。
【請求項3】
前記コントローラは、前記衝撃力の前記送達後に、前記エネルギー貯蔵及び放出機構によっ
て位置エネルギーの少なくとも一部が貯蔵された位置で前記カムを停止させ、それによって、前記外科用衝撃印加ツールの起動時に最大で約100ミリ秒の待ち時間を提供するように適合されている、請求項
1に記載の外科用衝撃印加ツール。
【請求項4】
前記衝撃力を送達するための前記手段が、前方向の衝撃力及び逆方向の衝撃力の両方を送達するための手段を備え、
前記逆方向の衝撃力が、前記前方向の衝撃力に等しいか又はそれよりも大きい、請求項1に記載の外科用衝撃印加ツール。
【請求項5】
前記衝撃力を送達するための前記手段が、ピストンによって起動されるストライカを備え、
前記ピストンが、前記エネルギー貯蔵及び放出機構によって作動される、請求項1に記載の外科用衝撃印加ツール。
【請求項6】
前記ピストンが、作動されると、バンパ要素上に載るようになる、請求項
5に記載の外科用衝撃印加ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年5月26日に出願された、「Orthopedic Impacting Device」と題する米国仮特許出願第62/511,811号に対する優先権を主張する。本出願は、Orthopedic Impacting Devicesを対象とする、本出願に先行する特許出願である、2017年10月20日に出願された、「Orthopedic Device Delivering a Controlled,Repeatable Impact」と題する米国特許出願第15/789,493号、2013年3月8日に出願された、「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」と題する、現在は米国特許第8,602,124号である、米国特許出願第13/790,870号、2010年12月29日に出願された、「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」と題する、現在は米国特許第8,695,726号である、米国特許出願第12/980,329号、2014年7月16日に出願された、「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」と題する、現在は米国特許第8,936,106号である、米国特許出願第14/332,790号、2012年5月8日に出願された、「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」と題する、現在は米国特許第8,393,409号である、米国特許出願第13/466,870号、2014年7月16日に出願された、「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」と題する、現在は米国特許第8,936,105号である、米国特許出願第14/332,767号、2014年4月10日に出願された、「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」と題する、米国特許出願第14/250,102号、及び2016年1月11日に出願された、「Electric Motor Driven Tool for Orthopedic Impacting」と題する、米国特許出願第14/992,781号に関連するものである。上記で特定した全ての出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、整形外科的処置などの外科用途において、衝撃を与えるためのローカル動力付きツールに関し、より具体的には、制御され繰り返し可能な衝撃をブローチ又は他のエンドエフェクタに提供するために、発射される質量体によって駆動される双方向性の外科用衝撃を加える、手持ち式モータ駆動ツールに関する。
【0003】
整形外科の分野では、人工関節などのプロテーゼは、患者の骨の中の空洞内に埋め込まれるか、又は据え付けられることが多い。上記の空洞は、典型的には、手術中、プロテーゼが据え付け又は埋め込まれる前に形成されるが、例えば、医師が、既存の骨を除去したり、あるいは圧縮したりして空洞を形成することができる。プロテーゼは、通常、空洞の中に挿入されているステム、又は他の突出部を含む。
【0004】
空洞を作成するために、医師は、プロテーゼのステムの形状に適合するブローチを使用してもよい。当該技術分野において既知の解決策は、ブローチを移植片領域内に押し込むために、外科手術中に、医師が手動で打撃するためのブローチを備えたハンドルを提供することを含む。残念ながら、この手法は、粗雑であり、しかも悪名高いほどに不正確であり、骨に不要な機械的応力を生じさせることになる。結果は、予測不可能であり得る上に、個々の医師の技能に依存する。歴史的に、この手法は、多くの場合、空洞の場所及び形状を不正確なものとする。加えて、外科医は、ブローチを打撃し、骨及びプロテーゼを操作するために、異常な量の物理的力及びエネルギーを費やすことを要求される。最も重要なことに、この手法は、医師が外科領域への不必要な更なる外傷を引き起こし、この手法を用いなければ健康であったであろう組織、骨構造などを損傷するという危険性を伴う。
【0005】
プロテーゼ用空洞を作成するための別の技法は、ブローチを空気圧で、即ち圧縮空気によって駆動することである。この手法は、例えば、牽引空気線が存在すること、空気が用具から無菌手術部位に排出されること、及び用具を操作する医師が疲労することのために、衝撃用具の可搬性を妨げるという点で不利益がある。この手法は、米国特許第5,057,112号に例示されているように、衝撃力又は頻度の正確な制御を可能にせず、代わりに作動時の削岩機に非常によく似たように機能する。やはりここでも、正確な制御の手段が欠如していることにより、空洞の正確なブローチングがより困難になり、かつ患者に、不必要な合併症及び外傷がもたらされ得る。
【0006】
第3の技法は、空洞を作成するのに、コンピュータ制御のロボットアームに依拠するものである。この手法は、疲労の問題及び正確性の問題を克服するものの、非常に高い資本コストを有することに悩まされ、また更に、外科医が手動の手法では得ることができた触覚的なフィードバックが排除されてしまうものである。
【0007】
第4の技法は、本発明者自身による以前の仕事に依拠し、リニアー圧縮機を使用して空気を単一ストローク基準で圧縮し、その後、十分な圧力が生成された後に、弁を通してストライカ上に空気を放出するものである。引き続き、上記により、ストライカがガイドチューブ内を下方に移動し、ブローチ又は他の外科用ツールを保持するアンビルに衝撃を与える。しかしながら、この構成は、空気の圧力に起因して、歯車列及び直線運動変換器の構成要素にかかる大きな力が発生し、その大きな力が構成要素の早期摩耗につながる。
【0008】
第5の技法もまた、本発明者自身による以前の仕事に依拠し、リニアーアクチュエーターを使用して、戻り止めに対して真空を生成するものである。十分な真空容積が生成された後、戻り止めがストライカを解放し、ストライカがガイドチューブ内を下方に移動し、ブローチ又は他の外科用ツールを保持するアンビルに衝撃を与える。しかしながら、この構成は、駆動部品に過度の応力を加え、しかも大気圧などの環境条件にさらされてしまう。更に、この技法は、逆衝撃又は後方衝撃を発生させるその能力に、その限界があるものである。
[先行文献]
[特許文献1]国際公開第2016/112397号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、既存のシステム及び本発明者の以前の解決策にある様々な欠点を克服する、改良された駆動アセンブリを有する衝撃印加ツールが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の欠点を鑑みて、電動モータ駆動式の整形外科用衝撃印加ツールが、股関節、膝、肩などに整形外科的に衝撃を加えるために提供される。そのツールは、ブローチ、たがね、又は他のエンドエフェクタを保持し、ブローチ、たがね、又は他のエンドエフェクタを、制御された振動衝撃で、空洞の中に穏やかに叩き込むことが可能であり、その結果、プロテーゼ又は移植片により良好な適合を提供可能である。更に、このような電気的に操作されたブローチ、たがね、又は他のエンドエフェクタによって与えられる制御は、患者の個々の骨タイプ又は他のプロファイルに従って、衝撃設定を調節することを可能にする。上記のツールはまた、適切な据え付けを可能にし、双方向の動きの場合には、プロテーゼ又は移植片を、移植片空洞の中への移動すること又は移植片空洞からの除去することを可能にし、既存の外科医が器具を案内する技術を高めるという利点をもたらす。
【0011】
ある実施形態では、電気モータで駆動される整形外科用衝撃印加ツールは、ローカル電源(例えば電池又は燃料電池)と、モータアセンブリと、コントローラと、ハウジングと、位置エネルギーを貯蔵及び放出することができるガスばね又は機械ばねなどの貯蔵エネルギー駆動システム又は機構と、貯蔵エネルギー駆動システムによって前方向及び/又は後方向に動作するように付勢されたストライカとを含み、このストライカは、外科用用具に加えられる衝撃力を発生させることができる。モータアセンブリは、リニアー駆動部を含んでもよい。別の例では、モータアセンブリは、回転駆動部と、回転運動を直線運動に変換する方法(以下、直線運動コンバータと称する)を含んでもよい。上記のツールは、例えばLEDなどの半導体光源、又は従来の白熱光源によって、手術領域に集光照射を更に送達することができる。医師がツールを取り扱うためにハンドルが提供されてもよく、又はツールをロボット組立体に組み込むために、好適な取り付けインターフェースが提供されてもよい。電池などのローカル電源も含まれる。典型的には、様々な構成要素のうちの少なくともいくつかは、ハウジング内に収容されることが好ましい。ツールは、ブローチ、たがね、又は他のエンドエフェクタ、又はインプラントに周期的で、反復可能な衝撃力を加えることができる。衝撃力の再現性を考慮すると、衝撃力を多数のレベルに微調整することも想到される。この目的のために、多くのばねがキット形式で装置と共に提供されてもよく、それによって、様々な視覚的にコード化されたばねが、様々なレンジの駆動力を提供するために外科的処置中に必要に応じてツールに取り外し可能に導入され得る。
【0012】
貯蔵エネルギー駆動システムに関して、いくつかの実施形態では、そのシステムは、カム及びカムから半径方向に突出するウォームと組み合わせたモータによって作動させることが可能であり、そのカムは、ばねを圧縮させる第1の方向に回転し、それにより、貯蔵エネルギー駆動システム内に位置エネルギーを貯蔵する。カムは、例えば、バレル状カム又は円筒形カムであってもよい。カムは、更に回転し続け、貯蔵されたエネルギーを放出し、その放出されたエネルギーが次に質量体を加速させて、前方への衝撃を発生させることができる。一例として、保存された位置エネルギーが増加するように機械的ばね又はガスばねが十分に変位された後、カム及びウォームは、そのウォームが質量体に作用しなくなる第2のウォーム端を越えて移動するまで、そのウォームは回転し続ける。上記の貯蔵された位置エネルギーが放出されると、そのエネルギーは、例えばアンビル又は別の衝撃面などの衝撃点と動作可能に接触するまで、前方向に質量体を加速させる。逆に、双方向型衝撃システムを含む実施形態では、カムは、代替的に、反対方向の第2の方向に回転し、ばねを圧縮し、再びばね貯蔵システム内に位置エネルギーを貯蔵することができる。この例のカム及びウォームは、ばね貯蔵システムに作用することを停止することができる第1のウォーム端へと更に回転し続け、ばね貯蔵システムが貯蔵されたエネルギーを放出し、それにより、後方衝撃を発生させる質量体を加速させることができる。一例として、バネの貯蔵された位置エネルギーが増加するのに十分なくらいにばねが変位した後で、カム及びウォームは、ウォームが質量体に作用することを停止する第1のウォーム端を越えて移動するまで回転し続け、第1のウォーム端でウォームは質量体に作用しなくなり、貯蔵エネルギー駆動システム(又は機構)を解放する。放出時に、貯蔵エネルギー駆動システム内の位置エネルギーは、例えばアンビル又は別の衝撃面などの衝撃点と動作可能に質量体が接触するまで、反対方向、すなわち後方向に質量体を加速させる。
【0013】
例示的な実施形態では、発射される質量体(貯蔵エネルギー駆動システムの一部又は全部を組み込むことができる)は、その衝撃点に到達する前にプッシャープレート又は押し表面から分離する。したがって、この実施形態では、貯蔵エネルギー駆動システム全体が発射される質量体であるため、非常に高い効率が予想外に達成された。機械的ばねを使用する更なる実施形態では、バネの圧縮比は、その自由長の約50%未満であり、より好ましくは、その自由長の40%未満である。本発明者は、そのような圧縮比が、送達される衝撃エネルギーの一貫性を増加させ、ばねが恒久的に変形してしまう可能性を低減することを見出した。
【0014】
更なる例示的な実施形態では、ハンドルは、ツールに密着させるように再配置可能又は折り畳み可能であり、外科医がブローチの方向と同一直線上にツールを押し引きする直列式ツールを提示することができる。これは、外科医が操作中にツール上にかけ得るトルクの量を制限するという利点を有する。ハンドグリップの更なる改良では、外科用器具をガイドし、衝撃を加える操作中の安定性を増加させるため、追加的なハンドグリップが存在し得る。なお更なる実施形態では、ツールはロボットに取り付けられてもよく、したがって、ハンドルを不要とすることができ、ツールは係留された又は遠隔の電源を使用してもよい。
【0015】
更なる例示的な実施形態では、外科用用具(例えば、アダプタ、ブローチ、たがね、又は他のエンドエフェクタ)は、例えば、
図9に示すように、軸方向の位置合わせを依然として維持しながら、いくつかの位置に回転させることができ、アダプタは、各位置がそれぞれ90°回転されている、4つの異なる位置に回転可能である。これは、例えば、外科手術中の様々な解剖学的位置におけるアダプタ又はブローチの使用を容易にする。
【0016】
例示的な実施形態では、ツールのアンビルは、2つの衝撃点のうちの少なくとも一方と、前方打撃表面又は第1表面と、後方打撃表面又は第2表面と、ガイドアセンブリとを含み、そのガイドアセンブリとしては、ストライカを実質的に軸方向に移動させるようにストライカを拘束するための、ガイドローラ、ベアリング、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)トラック若しくはテフロントラックなどが挙げられる。ストライカの衝撃点及び外科用ツールに結果としてかかる力は、前方及び逆方向であり得る。双方向型衝撃動作では、外科用ツールにかかる前方向の力が発生すると、ストライカがガイドアセンブリに沿って移動し、そのまま前方向に引き続いて動く。逆動機構を使用して、ストライカの衝撃点及び結果として生じる外科用ツールにかかる力を変化させることができる。そのような逆動機構の使用により、アンビル及び/若しくはブローチ又は他の外科用アタッチメントに後方向の力がかかることになる。この文脈で使用するとき、「前方向」とは、外科用用具又は患者に向かうストライカの動きを伴う方向であり、「後方向」は、外科用用具又は患者から離れるストライカの動きを伴う方向である。双方向性又は一方向性の衝撃印加のいずれかを選択できることにより、例えば、米国特許第8,602,124号に論じられているように、材料を除去したり、あるいは材料を圧縮したりという選択が、外科手術において重要な決定であることが多いという点で、外科医は、移植用空洞内の材料を切断したりあるいは圧縮したりするということのいずれかを柔軟に行うことができるようになる。更に、逆衝撃力が前方衝撃力とほぼ等しくなり得る場合、ツールをより広範な外科的処置に使用することができるということが、本発明者自身の以前の仕事を使用している際に見出された。一実施形態では、前方向の力及び後方向の力は、少なくとも2つの別個でかつ異なる点で衝撃を加える。
【0017】
例示的な実施形態では、アンビル及びアダプタは、単一の要素を含むか、又は一方が、他方と統合されていてもよい。
【0018】
米国特許第6,938,705号に示されるような、破壊作業で使用されるような典型的なインパクターでは、可変速度動作において、速度を変化させることによって衝撃力が変化して、±20%として定義される一定の衝撃エネルギーを維持することが不可能になる。したがって、例示的な実施形態では、ツールは、エネルギー調節要素又は機構を含む、制御要素又はコントローラを含み、そのエネルギー調節要素は、貯蔵エネルギー駆動機構へのエネルギーの貯蔵とそこからのエネルギー出力の放出を制御することによって、ツールの衝撃力を制御することができる。エネルギーは、電子的又は機械的に調節されてもよい(例えば、
図9のスイッチ34を参照)。更に、エネルギー調節要素は、アナログであっても、固定設定を有してもよい。この制御要素は、衝撃動作の正確な制御を可能にする。エネルギー調節要素は、外科医が患者のプロファイルに従ってツールの衝撃エネルギーを増加又は減少させることを可能にする。
【0019】
更なる例示的な実施形態では、ツールはまた、例えば、
図9に示す機械的スイッチ36を使用して、ストライカの衝撃運動の頻度を制御することも可能である。ストライカの頻度を調整することによって、ツールは、例えば同じ衝撃の大きさを維持しながら、指定の時間内で、より大きな総打撃衝撃を加えることができる。これにより、外科医は、外科用用具の切削速度をより良好に制御することができる。例えば、外科医は、外科用用具が動いている大半の時間では、より速い速度(より高い頻度の衝撃)での切削を選択し、次いで、外科用用具が所望の深さに近づくにつれて、切削速度を遅くすることができる。実際、用具の試験中に、毎秒3衝撃、好ましくは毎秒最大10衝撃のより高い頻度の衝撃印加速度が、1衝撃当たり一定のエネルギーと相まって、例えば毎秒2~6ジュール、好ましくは毎秒最大40ジュールのエネルギーを加え、外科医が、特定の外科用用具をより良好に位置決めすることを可能にするということが判明した。これは、例えば、寛骨臼カップの据え付け時に見られ、毎秒少なくとも3回の衝撃の衝撃頻度で、毎秒2~6ジュールのエネルギーでの場合に、従来技術の手動打撃技法よりもはるかに優れた寛骨臼カップの位置制御をもたらした。
【0020】
例示的な実施形態では、貯蔵エネルギー駆動機構、又はエネルギー貯蔵及び放出機構は、機械的又は電気的に、動作点を画定する。結果として、1回の衝撃当たりのエネルギーは、選択された動作点に従って送達される。実際に、衝撃当たりのエネルギーは、20%よりも良好に制御され得る。更なる実施形態では、タイミング要素がシステムに組み込まれてもよく、それにより、ユーザによって選択可能な所定の頻度で衝撃が送達されるようになる。電子制御要素又はコントローラを使用して、衝撃速度を正確に制御することにより、外科医は、ツールによって送達される総エネルギーを制御することができる。
【0021】
特定の実施形態では、衝撃の方向は、ユーザによってツールに加えられる付勢力によって制御され、アンビル上の、例えばポジショナーセンサなどのセンサによって検出される。例えば、ツールを前方向に付勢することにより、発射される質量体が前方向に発射され、前方衝撃を加える一方で、ツールを後方向に付勢することにより、発射される質量体が後方に発射され、後方向の衝撃を加えるようになっている。
【0022】
いくつかの実施形態において、ツールは、作業領域を照明し、外科用用具をプロテーゼ又は移植片上の所望の位置に正確に位置付けるための照明要素を有してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、バンパは、ピストンのヘッドとストライカの端部との間に予め配置され、衝撃応力を低減し、アセンブリ全体の寿命を延ばす。
【0024】
いくつかの実施形態では、ツールはまた、特定の大きさを超える曲げ又は配向のずれが、ブローチ、たがね、又は他のエンドエフェクタ若しくは移植片の界面で検出されるとき、又は整形外科用用具が前進していないときにユーザに警告するフィードバックシステムも含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、ツールは、交換可能なカートリッジが衝撃力を変化させることを更に可能にする。これらのカートリッジは、モータアセンブリ又は直線運動コンバータによって作動されるときに、貯蔵エネルギーシステムによって送達される総エネルギーによって定格化され得る。一例として、2~3ジュール以下の範囲内の限界を有する低パワーカートリッジを、軟らかい骨又は骨粗しょう性の骨に使用することができる。若く硬い骨の場合には、4ジュール以上の衝撃エネルギーを有するパワーカートリッジを選択することができる。一実施形態ではカートリッジがパワーに従って視覚的に符号化され得るが、様々なカートリッジを使用可能にすることによって、外科医は、キット内にツールと共に提供されている適切なパワーカートリッジを単に選択することによって、1サイクル当たりの衝撃エネルギーを柔軟に決定することができるであろう。
【0026】
いくつかの実施形態では、ツールは、動作可能に連結された外科用用具を駆動するために、1秒当たり1~10回の速度で、自らの中に貯蔵されたエネルギーを放出するエネルギー貯蔵及び放出機構と、エネルギー貯蔵及び放出機構の貯蔵及び放出を監視及び管理するように構成されたコントローラと、外科用用具を固定するアダプタと、放出されたエネルギーに応じた衝撃力を、外科用用具に送達するために投射される質量体と、を備える。
【0027】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵及び放出機構は、回転することによりばねを圧縮及び解放して衝撃力を発生させる、バレル状又は円筒形カムを含む。バレル状又は円筒形カムは、バレル状又は円筒形カムから突出するウォームと、ウォームとばねとを接続するカム従動子とを含んでもよく、バレル状又は円筒形カムの回転により、カム従動子がばねに対して押し付けられたり、カム従動子がばねから解放されたりする。ウォームは、第1のウォーム端と第2のウォーム端との間に延在する螺旋面を含んでもよい。カム従動子は、バレル状又は円筒形カムが回転する際に、係合点から第1のウォーム端まで螺旋面上を摺動してもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、ツールは、動作可能に連結された外科用用具を駆動するために、1秒当たり1~10回の速度で、自らの中に貯蔵されたエネルギーを放出するエネルギー貯蔵及び放出機構と、エネルギー貯蔵及び放出機構の貯蔵及び放出を監視及び管理するように構成されたコントローラと、外科用用具を固定するアダプタと、放出されたエネルギーに応じた衝撃力を、外科用用具に送達するために投射される質量体と、を備える。
【0029】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵及び放出機構は、回転することによりばねを圧縮及び解放して、投射される質量体を変位させ、衝撃力を発生させる、バレル状又は円筒形カムを含む。バレル状又は円筒形カムは、バレル状又は円筒形カムから突出するウォームと、ウォームとばねとを接続するカム従動子とを含んでもよく、バレル状又は円筒形カムの回転により、カム従動子がばねに対して押し付けられたり、カム従動子がばねから解放されたりする。ウォームは、第1のウォーム端と第2のウォーム端との間に延在する螺旋面を含んでもよい。カム従動子は、バレル状又は円筒形カムが回転する際に、第1のウォーム端から第2のウォーム端まで螺旋面上を摺動してもよい。
【0030】
これらは、本開示を特徴付ける新規の様々な特徴と共に本開示の他の態様と共に、本明細書に付属する特許請求の範囲に具体的に指摘され、本開示の一部を形成する。本開示、その動作上の有益性、及びその使用によって達成される特定の非限定的な目的をよりよく理解するために、本開示の例示的な実施形態が示され、かつ説明されている添付の図面及び詳細な説明を参照されたい。
【0031】
例示的な実装形態の上記の一般的な説明及び以下のその詳細な説明は、本開示の教示の例示的な態様に過ぎず、限定的ではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本明細書に組み込まれ、かつその一部を構成する添付の図面は、1つ以上の実施形態を示し、記述とあわせてこれらの実施形態を説明する。添付の図面は、必ずしも縮尺どおりに描かれていない。添付のグラフ及び図に示されている任意の値寸法は、例示のみを目的としており、実際の又は好ましい値若しくは寸法を表しても表さなくてもよい。適用可能な場合には、基礎となる特徴の説明を補助するためにいくつかの又は全ての特徴が示されていないことがある。図面は、以下のとおりである。
【
図1】機械的ばねアセンブリシステムが前方向衝撃力を生成するために使用される、本開示の例示的な実施形態による整形外科用衝撃印加ツールの斜視図を示す。
【
図2】バレル状又は円筒形カムが、ピストンを、前方向衝撃を放出するための動作位置に位置付けている、
図1のツールの例示的な実施形態を示す。
【
図3】貯蔵エネルギーが放出された後、発射される質量体が、前方向に、衝撃点に向かって加速される、
図1のツールの例示的な実施形態を示す。
【
図4】後方向衝撃力を生成するために機械的ばねが使用される、本開示の例示的な実施形態による整形外科用衝撃印加ツールの斜視図を示す。
【
図5】別の角度から見た、
図4の衝撃印加ツールの別の斜視図を示す。
【
図6】機械的ばねのバレル状又は円筒形カムが、ピストンを後方向の衝撃を放出するための動作位置に位置付けている、
図4のツールの例示的な実施形態を示す。
【
図7】ばねが解放された後、発射される質量体が、後方向に、衝撃点に向かって加速される、
図4のツールの例示的な実施形態を示す。
【
図8】本開示の例示的な実施形態による整形外科用衝撃印加ツールの周期的動作を示す例示的なフローチャートである。
【
図9】エネルギー及び頻度に関するパラメータを制御するために使用される機械的スイッチを有するツールの例示的な実施形態を示す。
【
図10】衝撃の方向を判定する際に使用される位置センサを有するツールの例示的な実施形態を示す。
【
図11】前方向衝撃力及び後方向衝撃力を発生させるために単一のバネが使用される、本開示の例示的な実施形態による整形外科用衝撃印加ツールの斜視図を示す。
【
図12】別の角度から見た、
図11の衝撃印加ツールの別の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
添付の図面に関連して以下に記載される説明は、開示された主題の様々な例示的な実施形態の説明であることを意図している。特定の特徴及び機能は、各々の例示的な実施形態に関連して説明される。しかしながら、開示される実施形態は、それらの特定の特徴及び機能性のうちの各々を用いずに実施され得ることが、当業者には明らかであろう。
【0034】
本明細書全体を通して「一実施形態」又は「ある実施形態」と言及した場合、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、又は特性が、開示された主題の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所での「一実施形態では」又は「ある実施形態では」という句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、又は特性を、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせることもできる。更に、開示された主題の実施形態は、それらを修正及び変形したものを網羅することが意図されている。
【0035】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、文脈上、そうでないとする明確な指示がない限り、複数の指示対象をも含むことに、留意しなければならない。即ち、特に明記しない限り、本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」などという語は、「1つ以上」の意味を有している。加えて、本明細書で使用され得る「左」、「右」、「頂部」、「底部」、「前部」、「後部」、「側部」、「高さ」、「長さ」、「幅」、「上部」、「下部」、「内部」、「外部」、「内側」、「外側」などの用語は、単に参照点を説明するだけであり、本開示の実施形態を任意の特定の配向又は構成に必ずしも限定するものではないことを理解されたい。更に、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、単に、本明細書に開示されるような多くの部分、構成要素、ステップ、動作、機能、及び/又は点のうちの1つを特定するだけであり、同様に、本開示の実施形態を任意の特定の構成又は配向に必ずしも限定するものではない。
【0036】
更に、「およそ」、「約」、「近位」、「わずかな変動」という用語、及び同様の用語は、一般に、特定の実施形態において、20%、10%、又は好ましくは5%の限度内の識別された値、及びそれらの間の任意の値を含む範囲を指す。
【0037】
一実施形態に関連して説明された機能性の全ては、明示的に述べられた場合、又は特徴若しくは機能が、追加の実施形態と両立しない場合を除いて、以下に記載された追加の実施形態に適用可能であるように意図されている。例えば、所与の特徴又は機能が、一実施形態に関連して明示的に説明されているが、代替の実施形態に関連して明示的に言及されていない場合、本発明者は、その特徴又は機能が代替の実施形態と両立しない場合を除き、その特徴又は機能が、代替の実施形態に関連して展開、利用、又は実装され得ることを意図していることを理解されたい。
【0038】
モータ駆動の整形外科的衝撃印加ツールには、制御された打撃による衝撃が提供される。モータは、Maxon Motor(登録商標)及び/又はPortescap(登録商標)から一般に入手可能なものなどの、ブラシレス、オートクレーブモータなどの電気式モータであってよい。モータは、電池式であってもよい。整形外科用衝撃用具へのエネルギー供給は、整形外科用衝撃用具に対して、何らの線でも繋がれていない可搬容易性を提供することができる。ツールは、単一及び複数回の衝撃を印加する、並びに可変的でありかつ方向、力、及び頻度が様々に変化する衝撃を印加する能力を含んでもよい。いくつかの実施形態では、衝撃エネルギーは調節可能である。特定の実施形態では、衝撃は、ツールに接続された、ブローチ、たがね、又は他のエンドエフェクタなどの外科用用具に伝達される。
【0039】
いくつかの実施形態では、ツールは、ハウジングを含む。ハウジングは、用具の少なくとも1つの構成要素を確実に被覆及び保持することができ、例えば、アルミニウム、又はRadel(登録商標)としても既知である、ポリフェニルスルホン(PPSF又はPPSU)などの、外科用途に好適な材料で形成されてもよい。いくつかの実施形態では、ハウジングは、モータアセンブリと、少なくとも1つの減速ギアと、ばね要素と、ストライカ又は発射される質量体と、制御回路又はモジュールと、アンビルと、前方向衝撃のための第1の又は前方向打撃表面と、後方向衝撃のための異なる第2の又は後方向打撃表面と、を含む。モータアセンブリは、回転モータ駆動部を変換するための線運動変換器を含んでもよい。ばね要素は、機械的ばね、又はガスばねであり得る。
【0040】
ツールは、ツールを快適かつ確実に保持するためのオプションのハンドグリップを備えたハンドル部分、又は使用中に、ツールをロボットアセンブリに一体化するための好適な取り付けインターフェースを更に含み得るが、それに加えて、アダプタ、電池、位置センサ、方向センサ、及びねじれセンサを更に含むことができる。ツールは、外科医がツールを用いる外科的作業領域に光を提供するために、LEDなどの半導体光源又は従来の白熱光源によって、集光照明を更に送達し得る。アンビルは、インターフェース接続するアダプタの使用を通じて、外科用用具ブローチ、たがね、又は当該技術分野で既知の他のエンドエフェクタに連結されてもよく、そのアダプタは、異なるブローチングサイズどうしの間の迅速な変更を容易にするための、クイック接続機構を有してもよい。アンビルは、例えばハンドルなどの、ツールの機能部に対する組織のクリアランスを得るために、異なるあり方でツールが位置決めされるのを可能にする、回転可能なロック機構を更に含み得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、発射又は投射される質量体の軸線は、動きの方向に沿って、アダプタの軸の20度以内、より好ましくは、アダプタの軸の10度以内に、軸方向に位置合わせされている。そのような軸方向の位置合わせは、外科用用具に伝達されるエネルギーを最大化すること、かつ、骨折などの有害な外科手術結果をもたらす一因となり得る、軸線からずれた力の生成を最小化することという観点から重要である。
【0042】
ここで、概して
図1~
図7を参照するが、いくつかの実施形態では、例えば
図1に示されるように、機械的ばねアセンブリシステムを使用して双方向の衝撃力を生成することができる。他の実施形態では、単一の機械的ばねアセンブリが使用されてもよい。
図1は、本開示の実施形態による整形外科型衝撃印加ツールの斜視図を示し、同図中では、機械的ばねアセンブリシステムのモータ8が、直線運動変換器(バレル状又は円筒形カム12とカム従動子13とを含む)と組み合わされて、第1のばねピストン19a(以下、「第1のピストン19a」と称する)及び/又は発射される質量体若しくはストライカ15を作動させ、最終的に前方向衝撃力を生成している。ピストンは、一般に、強く押し付ける要素又は押し出すための要素を指し、多くの形状のうちの任意のものを有することができるということに留意されたい。
【0043】
バレル状カム12は、円筒形部分120とウォーム126を含むことができる。円筒形部分120は、モータ8と軸受支持体124との間に延在しているシャフト122上に長手方向に取り付けられる。ウォーム126は、円筒形部分120から径方向に、第1のウォーム端部126aから第2のウォーム端部126bまで円筒形部分120の長さに沿って螺旋状に突出している。
【0044】
軸受支持体124は、第2のプッシャープレート26bによって支持されているハウジング125と、シャフト122を支持するためにハウジング125内に入れ子にされた軸受とを含むことができる。
【0045】
ウォーム126は、後方向表面126bsと前方向表面126fsとを含むことができる。後方向表面126bsは、例えば、第1のプッシャープレート26aに面する表面である。ウォーム126の前方向表面126fsは、例えば、第2のプッシャープレート26bに面する表面であり、カム従動子13と接触し、ウォーム126が回転するときに、カム従動子13を、第1のウォーム端部126aと第2のウォーム端部126bとの間の直線移動に追従させる表面である。
【0046】
カム従動子13を、ウォーム126の後方向表面126bs(例えば、プッシャープレート26aに面する表面)に接触させ、かつウォーム126を、
図1~
図3に示すように、第1の方向42aに回転させることによって、カム従動子13を、ウォーム126に沿って後方向に、例えば第1のプッシャープレート26aに向かって、変位させることができる。同様に、カム従動子13を、ウォーム126の後方向表面126fsに接触させ、かつウォーム126を、
図4~
図7に示すように、第2の方向42bに回転させることによって、カム従動子13を、ウォーム126に沿って前方向に、例えば第2のプッシャープレート26bに向かって、変位させることができる。
【0047】
小さい反復ストロークを通して、カム従動子13に当接する従来の垂直カムに依拠し得る従来の直線運動変換器と比較して、モータ8がより大きい角度で回転することを、バレル状カム12が可能にすることによって、バレル状カム12は、整形外科用衝撃印加ツールの効率を向上させることができる。即ち、バレル状カム12は、モータがエネルギーを得るためにより大きなラジアン分の回転の利用を可能にするため、電池の電流流出を著しく減少させる。したがって、特定の実施形態では、バレル状カム12によって提供される有益性を電流流出の減少に利用することによって、単一の一次電池を使用することができる。
【0048】
加えて、バレル状カム12が、シャフト122の上に直接取り付けることができ、それによって整形外科用ツールの効率性を高めることができるので、バレル状カム12は、ギアアセンブリ(例えば、直歯傘歯車アセンブリ)の使用を不要にすることを可能にする。
【0049】
いくつかの実施形態では、ばねアセンブリシステムは、アンビル5を更に含む。第1のピストン19aは、第1のバネ2aと係合し、この第1のバネ2aは、例えば機械的ばね又はガスばねのいずれかであり得る。機械的ばねアセンブリシステムでは、バネの自由長に対する偏向は、好ましくは50%未満である。ピアノ線、又はより好ましくはステンレス鋼又はチタンは、上記のバネに好適な材料である。好ましくは、バネは圧縮ばねであるが、他の種類のバネも考えられる。ガスばねアセンブリシステムでは、ガスばねは、例えば、約100~3000psiの範囲の圧力下で動作する。ガスばねは、好ましくは、窒素などの非酸化性ガス、又はアルゴンなどの不活性ガスを最初に充填されているものである。窒素は、ガスばねの封止部を通る透過率が低く、結果として、封止部及びバネ自体の貯蔵寿命を潜在的に長くするという利点をもたらす。
【0050】
図2は、
図1の例示的ツールを更に図示しており、
図2においては、第1ピストン19aを作動させるために使用されるバレル状カム12が、第1ピストン19aを、解放の準備が整った動作位置で「立たせ」ている。換言すれば、モータ8が、バレル状カム12を回転させるシャフト122を回転させ、ウォーム126の第1のウォーム端126aは、カム従動子13に接触し、カム従動子13は、後方向表面126bsに沿って直線的に摺動し、第1のピストン19aを第1のプッシャープレート26aに押し付けて圧縮し、それによって、第1のばね2a内に位置エネルギーを貯蔵させている。「立ちフェーズ」では、第1ピストン19aは、発射される質量体又はストライカ15と組み合わされて、カム従動子13に接触し、カム従動子13によって押されるが、そのカム従動子13は、モータ8の動作下で回転するバレル状カム12のウォーム126によって駆動されている。バレル状カム12及びウォーム126が回転し続けると、第1のウォーム端126aがカム従動子13を越えて移動してカム従動子13が第1のウォーム端126aから第2のウォーム端126bまでジャンプするまで、第1のばね2a内に貯蔵されるエネルギーが増加する。ストライカ(又は発射される質量体)15は、この時点では、第1のバネ2aの貯蔵された位置エネルギーの下で自由に移動する。具体的には、第1ピストン19aが十分に変位した後、かつバレル状カム12が第1ピストン19a及び/又は発射される質量体15を放出した後で、第1のピストン19aは、前方向に移動し、同時に、質量体又はストライカ15を加速させ、第1ピストン19aの面と接触する、発射される質量体又はストライカ15を加速させる。例えば、
図3に示されるように、第1のピストン19aは、ストライカ15から切り離され、アンビル5に向かってストライカ15を発射する。本発明者は、プッシャープレート26aからのストライカ15が放出されることにより、プッシャープレート26aの移動中に自由なフライトの部分が本質的に生成されるが、その放出が、外科医の手によって生成され、体験される反動を劇的に低減し、その結果、より制御可能なツールを実現することを、予想外にも発見した。外科用エンド用具又は患者に近い側のツールの端部に向かってストライカ15が発射されると、アンビル5の第1表面又は前方向打撃表面に打撃による衝撃を加えることになる。ストライカと接触したときのアンビルの最大変位は、15mm未満であってもよい。ツールの試験中には、アンビルの最大前方向変位が15mm未満、より好ましくは10mm未満である場合に、より精密かつ正確な動きという点で、より良好な結果を外科医が実現するということが、予想外にも見出された。大きいストロークの場合と比較して、ストロークを制限することによって実行される外科的処置は、より正確に実行され、手術の標的とより良好に位置合わせされる結果となった。著しく対照的なことに、手術中のマレットの使用は、多くの場合、20mm以上の変位をもたらし、処置中の精度が低下する。
【0051】
ストライカ15の衝撃がアンビル5に加えられると、前方向への衝撃力が、アダプタ(図示せず)に、更にブローチ、たがね、又は他の整形外科用用具に伝達される。発射される質量体又はストライカ15は、例えば鋼又は同様の特性を有し、繰り返される衝撃の印加に適した任意の他の材料などの好適な材料から構築されてよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、発射される質量体又はストライカ15の重量又は質量の、ツールの重量又は質量に対する割合は、好ましくは25%未満であり、発射される質量体15は、接触前にある量の自由フライトを行う。これらの両方の要因は、生成される反動を更に低減するのに寄与する。アンビルの重量又は質量に対して、発射される質量体の重量又は質量を増加させることによって、衝撃エネルギーが外科用用具により効果的に伝達されるということが、予想外なことに見出された。例えば、アンビルの質量に対して発射される質量体の質量の割合が25%未満である場合、得られる伝達効率は極めて低いものであり、典型的な0.8という反発係数に対して、50%未満である。このように、50%未満の質量割合は、衝撃の伝達効率を最も低いものとすることが判明した。
【0053】
特定の実施形態では、例えば、
図2に示すように、ストライカ15が後方向に、プッシャープレート26aに向かって移動する場合、バンパ14aは、ピストン19aの端面がストライカ15に衝撃を加えるのを防ぐストッパとして機能する。バンパ14aは、発射される質量体又はストライカ15が前方向に発射される直前に、ピストン19aの衝撃を吸収する。本発明者は、その開発の途上で、ピストン19aがバンパ14a上に置かれることがなければ、過剰な摩耗が生じ、その結果ピストン19aの破損が生じるということを発見した。したがって、このようなバンパ14aは、繰り返し動作中に、ばねアセンブリシステム、特にピストン19aに損傷が加わるのを防止する。バンパ14aは、プラスチック、又はより好ましくは、ゴム若しくはウレタン材料からなるものであってよい。
【0054】
上述のように、本発明者の以前の設計では、時に、外科用用具が生体内の空洞内で動かなくなり、ストライカ15の後方向への衝撃が、ツールを取り外すには不十分であり得ると、本発明者によって判定されている。更に、外科用用具を取り外すためには、後方向への力は、鋭い後退衝撃として伝達される必要があることが判明した。したがって、双方向型衝撃システムを有する特定の実施形態では、少なくとも2つの異なる衝撃面が存在し、ツールが空洞から引き抜かれているときには、ストライカ15は、アンビル5上の代替表面に衝撃を加え、それによってアンビル5に後方向への力を伝達する。
【0055】
図4~
図7は、例示的な整形外科型衝撃印加ツールの斜視図を示し、カム従動子13が前方向表面126fsと接触し、機械的ばねアセンブリシステムのモータ8がバレル状カム12を回転させて、質量体又はストライカ15を発射し、後方向への衝撃力を生成しているのが図示されている。
図4及び同様に
図5(
図4に図示されている衝撃印加ツールを代替的な角度から見た、別の斜視図である)は、中間点、例えば、カム従動子13が第2のウォーム端126bと第1のウォーム端126aとの間、にあるときの、バレル状カム12を例示する。モータ8がバレル状カム12及びウォーム126を引き続き回転させるにつれて、カム従動子13は、第2のウォーム端126bに向かって移動し続け、第2のばねピストン19b(以下、「第2のピストン19b」と称する)は、第2のばね2bと係合し、第2のプッシャープレート26bに対して押し付けられて圧縮され、したがって、第2のばね2b内に位置エネルギーが貯蔵される。次に、第2ピストン19bは、解放の準備が整った動作位置で「立たせ」られる(
図6を参照)。「立ちフェーズ」では、第2ピストン19bは、発射される質量体又はストライカ15と組み合わされて、カム従動子13に接触し、カム従動子13に押されることになる。
図6及び
図7に示されるように、例えば、ストライカ又は発射される質量体15の端面は、一対の延長部又は突出部32を含むが、この一対の延長部又は突出部32は、発射される質量体15と一体となっているか、又は発射される質量体15に接続される(例えば、ボルト止めされる)別個の要素として提供されるものである。バレル状カム12及びウォーム126が回転し続けるにつれて、ウォーム126の第2のウォーム端126bがカム従動子13を越えて移動して、カム従動子13を第2のウォーム端126bから第1のウォーム端126aへとジャンプさせるまで(例えば、
図7を参照)、第2のばね2b内に蓄えられるエネルギーが増加する。ストライカ又は発射される質量体15は、この時点で、第2のバネ2bの貯蔵された位置エネルギーの下で自由に移動する。具体的には、第2ピストン19bが十分に変位した後、かつバレル状カム12が第2ピストン19b及び/又は発射される質量体15の組み合わせを放出した後で、第2ピストン19bは、後方向、すなわち、衝撃点に向かう方向に移動し、同時に、第2ピストン19bの面と接触する、発射される質量体又はストライカ15を加速させる。例えば、
図7に示されるように、第2バネ2bは、ストライカ15から解放され、外科用用具又は患者に近い側のツールの端部からストライカ15を遠ざけるように発射し、発射される質量体15の延長部又は突出部32は、アンビル5の代替的な、第2の、又は後方向打撃表面に衝撃を加え、それによって、アンビル5に、後方向への衝撃力を打撃により付与する。
【0056】
図2に図示され、既に説明したばねバンパ14aと同様に、
図4に示されるばねバンパ14bはまた、ピストン19bが前方向に移動するにつれて、ピストン19bの端面がストライカ15に衝突するのを防ぐストッパとして機能する。バンパ14bは、発射される質量体又はストライカ15が後方向に発射される直前に、ピストン19bの衝撃を吸収する。上述したように、本発明者は、その開発の途上で、ピストン19bがバンパ14b上に置かれることがなければ、過剰な摩耗が生じ、その結果ピストン19bの破損が生じるということを発見した。したがって、このようなバンパ14bは、繰り返し動作中に、ばねアセンブリシステム、特にピストン19bに損傷が加わるのを防止する。バンパ14aと同様に、バンパ14bは、プラスチック、又はより好ましくは、ゴム若しくはウレタン材料からなるものであってよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、アンビル5にかかる力の方向は、センサ28によって検出される、ユーザの(外科医のような)手の力によってツールにかかる力によって制御される。センサは、例えば、
図10に示すように、アンビル5上に設けた位置センサ38とすることができる。例えば、ツールを前方向に付勢することにより、発射される質量体又はストライカ15が前方向に発射され、前方衝撃を加える一方で、ツールを後方向に付勢することにより、ストライカ15が後方に発射され、後方向の衝撃を加えるようになっている。
【0058】
いくつかの実施形態では、バレル状カム12アセンブリがその過程を完了する、例えば、カム従動子13が、第1のウォーム端126aから第2のウォーム端126bまで後方向表面126fsに沿って変位されるか、又は第2のウォーム端126bから第1のウォーム端126aまで前方向表面126bsに沿って変位されるにつれて、好ましくは、例えば、
図5に示されるように、コントローラ21に動作可能に連結されたセンサ28が起動されるようになっている。センサ28は、バレル状カム12の、好ましい周期的動作の調節を補助するものである。例えば、センサ28は、バレル状カム12が、最小位置エネルギー貯蔵点又はその付近にあるように停止するよう、モータ8に信号を送ってもよい。したがって、1つの完全な周期では、前方向又は後方向への衝撃力が、ブローチ、たがね、若しくは他のエンドエフェクタ、又は移植片若しくはプロテーゼ上に加えられ得る。更なる実施形態では、次の周期を開始する前に、任意の所与の処置に対して、遅延を挿入するか、又は衝撃の数を数え、衝撃を加える速度を正確に制御することを可能にし、ひいては、外科医が、任意の所与の動作でのエネルギー送達の速度を正確に制御することを可能にするということが有益であり得る。なお更なる実施形態では、外科医の手の中での待ち時間を低減するために、最大位置エネルギー貯蔵点の付近で、バレル状カム12を停止させることが有益であり得る。待ち時間とは、外科医(又はユーザ)が、整形外科用衝撃印加ツールを起動させた時点と、用具が実際に衝撃を送達した時点との間の時間として定義される。本発明者は、約100ミリ秒以下の待ち時間であれば、本質的に瞬間的な応答として感じられると判断した。位置エネルギーの少なくとも一部が貯蔵された点でバレル状カム12を停止させることによって、ツールは、ツールトリガ30の作動時に位置エネルギーをほぼ瞬間的に放出するという効果を発揮する。
【0059】
更なる実施形態では、外科用用具が打撃による衝撃印加中に前進しないことを検出するための追加のセンサ(図示せず)を使用することができる。外科用用具が10秒未満又はより好ましくは3秒未満の時間前進を停止させた場合に、ツールは外科医にフィードバックを提供することができる。このようなフィードバックは、光、印加される衝撃の低減若しくは衝撃印加の停止、又は他の手段の形態で提供され得る。外科医は次いで、処置を評価し、衝撃印加の動作を再開するかどうかを判断する機会を持つことになる。
【0060】
図8は、整形外科用衝撃印加ツールの例示的な周期的動作を示すフローチャートである。いくつかの実施形態では、コントローラ21は、
図8に記載される周期的動作を実行するファームウェアで動作し、その結果、整形外科用衝撃印加ツールは、反復可能で制御可能な衝撃力を生成することができる。コントローラ21は、例えば、インテリジェントハードウェアデバイスを含むことができ、例としては、例えばデータプロセッサ、マイクロコントローラ、又はFPGA装置をはじめとする処理回路であって、例えばIntel(登録商標)Corporation(カリフォルニア州、Santa Clara)又はAMD(登録商標)(カリフォルニア州、Sunnyvale)製の処理回路が挙げられる。当業者に認識されるように、他のタイプのコントローラを利用することもできる。
【0061】
いくつかの実施形態では、1つの周期が開始されるときに、トリガがステップ800で押されて、動作を開始する。例えば、外科医又はロボットコントローラが、トリガを作動させることができる。いくつかの実施形態では、トリガは、圧縮可能なボタン又はレバーなどの手動トリガである。他の実施形態では、トリガは、動作を開始するためにロボットコントローラによって発行された信号などの電気トリガである。トリガは、例えば、整形外科用ツールのハンドル又はグリップ上に、外科医の手が置かれて準備が整ったことを、センサが検出することで起動され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、整形外科用衝撃印加ツールが充電され、使用準備が整っているかどうかがステップ802で決定される。電池などのローカル電源の電圧が、例えば最小閾値未満しか充電されていないと判定される場合、ローカル電源は、ステップ804で、充電するように設定され得る。いくつかの実施例では、整形外科ツールが充電を必要とすることを示すために、充電インジケータランプが、点灯又は点滅されてよく、かつ/又は、音が聞こえるように生成されてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、ローカル電源の電圧が最小閾値よりも大きい場合には、次にステップ806において、アンビル及び/若しくはブローチ又は他の外科用アタッチメントが、患者の骨の空洞に対して正しく位置決めされているかどうかが判定される。例えば、センサは、アンビル及び/又は外科用アタッチメントが空洞の近くに位置しているかどうかを判定することができる。別の例では、患者プロファイルは、患者の骨の空洞に対してアンビル及び/又は他の外科用アタッチメントを位置決めするための、例えばロボットコントローラの向きを決定することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、アンビル及び/又は外科用アタッチメントが正しく位置決めされている場合には、処理はステップ810に進むが、そうでない場合には、システムは、位置がステップ808で補正されるまで待機する。
【0065】
いくつかの実施形態では、次にステップ810で、前方向への衝撃力又は後方向への衝撃力のいずれを生成するためにツールが使用されているかに基づいて、カム従動子を変位させる方向が既に決定されたかどうかが判定される。一実施例では、この判定は、少なくとも部分的に、ユーザがツールにかけた付勢力に基づいてもよい。付勢力は、例えば、外科用用具のアンビル及び/又はコネクタ上に設けた位置センサなどのセンサによって検出され得る。別の実施例では、信号が、初期方向を選択する自動化システムによって発行されてもよい。更に、いくつかの実施態様では、方向を判定するのではなく、方向は、最後の衝撃印加方向に基づいて自動的に決定され、開始され得る。(例えば、貯蔵された力が存在するという状況において、直近の力が印加されたのと反対方向に決定され得る)。
【0066】
カム従動子を変位させる方向が既に決定されていた場合には、いくつかの実施形態では、衝撃印加の一周期を完了するために、モータアセンブリがステップ814で起動するが、そうでない場合には、システムは、ステップ812において変位が判定されるまで待機する。
【0067】
ひとたびモータアセンブリが衝撃印加の一周期を完了すると、いくつかの実施形態では、ステップ816で、カムセンサが既に起動されたかどうかを判定する。センサが既に起動されていた場合には、処理はステップ818に進み、トリガが依然として維持されているかどうかを判定し、そうでない場合には、処理はステップ814に戻り、カムセンサが起動されるまでモータが回転し続けることを可能にする。ステップ818でトリガが維持されていた場合、動作周期はステップ814に戻って、モータが駆動を継続し、ツールに衝撃を発生させ続けるが、そうでない場合には、整形外科用衝撃印加ツールの動作を、ステップ820で停止する。
【0068】
有利なことには、ピストン及びばねアセンブリシステムは、より高いエネルギー衝撃を発生させるための戻り止め又は磁石を必要としないか、又は使用しない。システムからのエネルギー出力の大きさは、ばね定数、ばねにかかる予荷重力、及び/又は動作周期中のバネの総圧縮量などの要因を考慮して、任意の所与の動作条件セットに対しても一貫している。いくつかの実施態様では、貯蔵エネルギー駆動システムから出力される衝撃エネルギーは、1~10ジュールであり、これは、所与の一動作周期の間は、20%以下、好ましくは10%以下しか変動させない。例えば、衝撃印加ツールは、100ポンド/インチのばね定数を有し、100ポンドの予荷重力で動作し、0.5インチのカムストロークで動作するばねを含んでもよく、その結果として、貯蔵エネルギー駆動システムは、約7.1ジュールの総衝撃エネルギーから摩擦及び他の損失引いたエネルギーを出力する。
【0069】
双方向型衝撃印加システムを有する実施形態では、ピストン及びばねアセンブリ機構は、後方向において約20%の効率性であった従来の設計と比較して、約80%の効率性を発揮し得る。例えば、発明者の以前の設計では、約3.5ジュールのエネルギーの前方向衝撃は、わずか0.4ジュールのエネルギーの後方向衝撃しかもたらさず、エネルギーのほぼ80%が失われ、理想的ではなかった。
【0070】
発射又は投射される質量体、アンビル、及びアダプタの質量比とそれらに使用されている材料は、投射される質量体の運動エネルギーが、外科用用具にいかに効果的に伝達されるかという観点から重要であるということが、発明者によって判断された。特定の実施形態の目的のため、投射される質量体又はストライカ内の運動エネルギーの関数としての、外科用用具へ送達されたエネルギーの比率は、伝達関数と称される。伝達関数は、ツールがブローチング、衝撃印加、又は外科的摘出処置をいかに効率的に実行しているかという観点において、性能の尺度として使用される。例えば、投射される質量体、アンビル、及びアダプタが、全て硬化ステンレス鋼でできているというある設計では、投射される質量体の運動エネルギーに対する外科用用具に伝達されるエネルギーの比率、すなわち伝達関数が、50%を下回ることが判明した。衝撃を印加される質量(アンビル、アダプタ、及び外科用用具の質量の合計)に対する、投射される質量体の質量比を増加させることによって、システムの効率性、具体的には、システムの伝達関数は、60%以上に、多くの場合では、75%近くにまで増加した。
【0071】
更に、ばねの圧縮比をその自由長の50%未満、より好ましくは30%未満に維持することによって、バネ寿命及び衝撃一貫性が最大化されるということが、予想外なことに判明した。1つの予期せぬ効果として、恒久的に変形するということがないばねによって、ストライカ15とアンビル5との間に、はるかにより一貫した衝撃を生じさせるという結果がもたらされた。実際に、ガスばね又は機械的ばねによって生成される衝撃が一貫しているということは、衝撃のエネルギーが環境条件によってほんのわずかに影響されたに過ぎなかったため、公称設計値の±10%以内に収まっているということが判明した。
【0072】
ツールは、いくつかの実施形態では、制御された連続的衝撃印加を容易にし、その衝撃印加は、例えば、電源又はモータに動作可能に結合されたトリガスイッチ30の位置に依拠している。このような連続的な衝撃印加のために、トリガスイッチが起動された後に、かつトリガスイッチ30の位置に応じて、ツールは、例えば、トリガスイッチの位置に比例する速度で、完全な周期を遂行することができる。したがって、単一の衝撃印加又は連続的な衝撃印加の動作モードのいずれかで、外科処置領域を作成又は整形することは、外科医によって容易に制御され得る。
【0073】
前述したように、特定の実施形態では、ツールは、例えば、貯蔵エネルギー駆動システムのために、交換可能なガスばねカートリッジ(図示せず)の適切な内部圧力又は異なる機械的ばねを選択することによって、一周期当たりの衝撃エネルギーの量を変化させることができるようになっている。ばねに位置エネルギーを付与するための駆動機構は固定ストロークであるため、異なる予荷重又はばね定数を有するばねカートリッジを単に使用することによって、任意の所与の手術において異なる衝撃エネルギーを得ることができるということが理解されるであろう。更なる実施形態では、例えば、リニアカムなどの要素を使用して、例えばプッシャープレートの位置を変更することによって、貯蔵エネルギー駆動システム内の圧縮量を変化させることができるようになっている。衝撃エネルギーを制御することによって、外科医は、処置中により高いフレキシビリティを有することになる。
【0074】
いくつかの実施形態では、ツールは、十分に固定された移植片又は「嵌った」ブローチを抽出するのを容易にするように設計される。このような実施形態では、バレル状カム12は、第2の、時計回り方向42bに回転され、ストライカ15が患者から離れるように動くよう、質量体又はストライカ15を発射して、アンビル5に後退力又は後方向の力がかかるようにする。
【0075】
更なる実施形態では、ツールは、ストライカ15とアンビル5との間に挿入された伸展性要素(図示せず)を含む。好ましくは、伸展性要素は、十分に衝撃から回復し、総エネルギーに最小限の緩衝を付与する弾性材料である。一例として、ストライカ15がアンビル5に衝突する界面にウレタン部品を挿入することができる。別の例では、伸展性要素は、前方向の衝撃力を低減するだけであり、後方向の急激な衝撃力に対する要望には影響を与えないようなあり方で挿入されてもよい。この種類の伸展性要素は、衝撃の間のピーク力を制限して、そのようなピークが患者の骨に骨折を引き起こすのを防ぐことができる一方で、なおも詰まったブローチ又は他の外科用用具を後退させることができるようにするために必要な高いピーク力を維持することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、例えば、衝撃子は、ロボットに連結されているので、携帯型電源(電池)及び/又はツールのハンドグリップが不要とすることができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、アダプタ(図示せず)をツールに連結することは、外科医がツールを回転させることを必要とせずに、外科用用具(ブローチ、たがね、又は他のエンドエフェクタ)の位置を変更することができるような、当該技術分野で既知の連結機構又は他の調整機構を含む。
【0078】
本明細書に開示される整形外科用ツールは、従来技術に勝る様々な利点を提供する。それは、手術部位での制御された衝撃印加を容易にし、患者の身体への不必要な損傷を最小限に抑え、移植片又はプロテーゼが据え付けられる座面を精確に成形するのを可能にする。ツールはまた、外科医が衝撃の方向、力、及び頻度を調節することを可能にし、これにより、外科医がツールを操作及び制御する能力を改善する。例えば、整形外科用ツールは、実行されている外科手術によっては、後退目的のためにのみ使用され得る。同様に、ツールは、異なる前方向及び逆方向の衝撃力を有するようにカスタマイズすることができる。機械的ばねアセンブリシステムでは、例えば、異なるゲージのばねを前方向及び逆方向の衝撃用にそれぞれ使用することができる。衝撃設定の、力及び伸展性制御調整により、外科医は、患者の特定の骨タイプ又は他のプロファイルパラメータに従って、衝撃力を設定することが可能になる。更に、効率性が改善され、かつ直線運動変換器への負荷が低減されたことにより、より小さい電池及び低コストの構成要素の使用が可能になる。それにより、ツールは、プロテーゼ又は移植片を移植用空洞内に適切に据え付けたり、あるいはそこから適切に取り除くことを可能にする。更に、ピストン及びばねアセンブリは、特定の手術のために衝撃エネルギーを調節するためのシンプルな手段を提供する。加えて、ばねアセンブリは、例えば、たわみ、予荷重、及びばね定数などのばねの機械的特性によって本質的に規制されるため、その結果得られるツールは、動作速度とは無関係に、予測可能な衝撃エネルギーを付与するようになっている。更に、ガスばねカートリッジが交換可能である実施形態では、例えばシール及びピストンといった高い摩耗を受ける要素を各手術毎に交換することができ、より頑丈な、長寿命のツールをもたらし、破損点を低減することができる。
【0079】
図11~
図13は、単一のばねが前方向の衝撃力及び後方向の衝撃力を生成するために使用される、別の例示的な整形外科用衝撃印加ツールの斜視図を示す。いくつかの実施形態では、カム従動子13がばね2aに固定されて、ばね2aを後方向に圧縮して前方向衝撃力を発生させ、かつ、ばね19aを前方向に引っ張って後方向衝撃力を発生させるようになっている。ウォーム126は、円筒状部分120の表面の周りに360度未満、例えば、270度に近い量で巻き付けられ得る。円筒状部分120の、ウォーム126で覆われていない部分、例えば円筒部120の90度の部分は、前方向及び後方向へのストライカ又は発射される質量体15の移動を容易にし得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、カム従動子13がウォーム126の後方向表面126bと接触している場合に、カム従動子13が、第1のウォーム端126aから第2のウォーム端126bへと後方向表面126bsに沿って摺動し、ばね2aを圧縮するようになっている。バレル状カム12及びウォーム126が回転し続けるにつれて、ウォーム126の第2のウォーム端126bがカム従動子13を越えて移動して、カム従動子13を第2のウォーム端126bから第1のウォーム端126aへとジャンプさせるまで、ばね2aの内部に貯蔵されたエネルギーが増加する。ストライカ又は発射される質量体15は、この時点で、ばね2aの貯蔵された位置エネルギー下で前方向に自由に移動して、前方向への衝撃力を発生させる。
【0081】
いくつかの実施形態では、カム従動子13がウォーム126の前方向表面126fsと接触している場合に、カム従動子13は、第2のウォーム端126bから第1のウォーム端126aへと前方向表面126fsに沿って摺動し、ばね2aを引き伸ばすようになっている。バレル状カム12及びウォーム126が回転し続けるにつれて、ウォーム126の第1のウォーム端126aがカム従動子13を越えて移動して、カム従動子13を第1のウォーム端126aから第2のウォーム端126bへとジャンプさせるまで、ばね2aの内側に貯蔵されたエネルギーが増加する。ストライカ又は発射される質量体15は、この時点で、ばね2aの貯蔵された位置エネルギーの下で、後方向に自由に移動して、後方向への衝撃力を発生させる。
【0082】
特定の実施形態が記載されてきたが、これらの実施形態は、例示のためのみに提示され、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。実際に、本明細書に記載される新規の方法、装置、及びシステムは、多様な他の形態で具現化され得る。更に、本開示の趣旨から逸脱することなく、本明細書に記載される方法、装置、及びシステムの形態における様々な省略、置換、及び変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物は、本開示の範囲及び趣旨の範囲内にあるものとして、そのような形態又は変形を網羅することを意図する。
【0083】
〔実施の態様〕
(1) 外科用衝撃印加ツールであって、
動作可能に連結された外科用用具を駆動するために、1秒当たり1~10回の速度で、自らの中に貯蔵されたエネルギーを放出するエネルギー貯蔵及び放出機構と、
前記エネルギー貯蔵及び放出機構の貯蔵及び放出を監視及び管理するように構成されたコントローラと、
前記外科用用具を固定するためのアダプタと、
前記放出されたエネルギーに応じた衝撃力を、前記外科用用具に送達するための手段と、を備える、外科用衝撃印加ツール。
(2) 前記エネルギー貯蔵及び放出機構が、前記衝撃力を発生させるためにばね要素を圧縮及び解放するように回転するカムを含む、実施態様1に記載の外科用衝撃印加ツール。
(3) 前記カムが、前記カムの円筒形部分から突出するウォームと、前記ウォームと前記ばね要素とを接続するカム従動子とを含み、
前記カムの前記回転が前記カム従動子を前記ばね要素に対して押し当てて、前記カム従動子を前記ばね要素から解放する、実施態様2に記載の外科用衝撃印加ツール。
(4) 前記ウォームが、第1のウォーム端と第2のウォーム端との間に延在する螺旋面を含み、
前記カム従動子は、前記カムが回転するにつれて、前記第1のウォーム端から前記第2のウォーム端まで前記螺旋面上を摺動する、実施態様3に記載の外科用衝撃印加ツール。
(5) 前記ばね要素が、自らの自由長の50%未満の圧縮比を有する機械的ばねを備える、実施態様2に記載の外科用衝撃印加ツール。
【0084】
(6) 前記コントローラは、前記衝撃力の前記送達後に、前記エネルギー貯蔵及び放出機構によって前記位置エネルギーの少なくとも一部が貯蔵された位置で前記カムを停止させ、それによって、前記外科用衝撃印加ツールの起動時に最大で約100ミリ秒の待ち時間を提供するように適合されている、実施態様2に記載の外科用衝撃印加ツール。
(7) 前記衝撃力を送達するための前記手段が、前方向の衝撃力及び逆方向の衝撃力の両方を送達するための手段を備え、
前記逆方向の衝撃力が、前記前方向の衝撃力に等しいか又はそれよりも大きい、実施態様1に記載の外科用衝撃印加ツール。
(8) 前記衝撃力を送達するための前記手段が、ピストンによって起動されるストライカを備え、
前記ピストンが、前記エネルギー貯蔵及び放出機構によって作動される、実施態様1に記載の外科用衝撃印加ツール。
(9) 前記ピストンが、作動されると、バンパ要素上に載るようになる、実施態様8に記載の外科用衝撃印加ツール。
(10) 外科用衝撃印加ツールであって、
動作可能に連結された外科用用具を駆動するために、1秒当たり1~10回の速度で、自らの中に貯蔵されたエネルギーを放出するエネルギー貯蔵及び放出機構と、
前記エネルギー貯蔵及び放出機構の貯蔵及び放出を監視及び管理するように構成されたコントローラと、
前記外科用用具を固定するためのアダプタと、
前記放出されたエネルギーに応じた衝撃力を、前記外科用用具に送達するための投射される質量体(thrown mass)と、を備える、外科用衝撃印加ツール。
【0085】
(11) 前記エネルギー貯蔵及び放出機構が、前記投射される質量体を変位させて前記衝撃力を生成するためにばね要素を圧縮及び解放するように回転するカムを含む、実施態様10に記載の外科用衝撃印加ツール。
(12) 前記カムが、前記カムの円筒形部分から突出するウォームと、前記ウォームと前記ばね要素とを接続するカム従動子とを含み、
前記カムの前記回転が前記カム従動子を前記ばね要素に対して押し当てて、前記カム従動子を前記ばね要素から解放する、実施態様11に記載の外科用衝撃印加ツール。
(13) 前記ウォームが、第1のウォーム端と第2のウォーム端との間に延在する螺旋面を含み、
前記カム従動子は、前記カムが回転するにつれて、前記第1のウォーム端から前記第2のウォーム端まで前記螺旋面上を摺動する、実施態様12に記載の外科用衝撃印加ツール。
(14) 前記アダプタとその中に固定された前記外科用用具との合計重量に対する、前記投射される質量体の重量の割合が25%未満である、実施態様10に記載の外科用衝撃印加ツール。
(15) 外科用衝撃印加ツールであって、
エネルギー貯蔵及び放出機構であって、
ばね要素を備えるばねアセンブリと、
前記ばね要素を圧縮及び解放して衝撃力を発生させるように回転する回転カム機構及び螺旋状駆動機構を備えるカムアセンブリと、を備え、
動作可能に連結された外科用用具を駆動するために、自らの内部に貯蔵されたエネルギーを放出するように構成された、エネルギー貯蔵及び放出機構、
前記エネルギー貯蔵及び放出機構の貯蔵及び放出を監視及び管理するように構成されたコントローラ、
前記外科用用具を固定するためのアダプタ、及び
前記放出されたエネルギーに応じた前記衝撃力を、前記外科用用具に送達するための手段を備える、外科用衝撃印加ツール。
【0086】
(16) 前記エネルギー貯蔵及び放出機構が、1秒当たり1~10回の速度で、自らの中に貯蔵されたエネルギーを放出するように構成されている、実施態様15に記載の外科用衝撃印加ツール。
(17) 前記ばねアセンブリが交換可能なばねカートリッジを備える、実施態様15に記載の外科用衝撃印加ツール。
(18) 前記螺旋状駆動機構がウォームギアを含む、実施態様15に記載の外科用衝撃印加ツール。
(19) 前記回転カム機構が、バレル状カムを含む、実施態様15に記載の外科用衝撃印加ツール。
(20) 前記コントローラを起動させるための機械的トリガ機構を更に備える、実施態様15に記載の外科用衝撃印加ツール。