(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】クイックレーシングシステム及びこれを装備された靴
(51)【国際特許分類】
A43C 7/04 20060101AFI20220822BHJP
A43C 7/08 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
A43C7/04
A43C7/08
(21)【出願番号】P 2019570436
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2018066172
(87)【国際公開番号】W WO2018234264
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】102017113778.5
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516362964
【氏名又は名称】デー リュクス シュポルタルティケル ハンデルス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン マインハルト
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06729000(US,B1)
【文献】英国特許出願公告第00004857(GB,A)
【文献】米国特許第04355441(US,A)
【文献】登録実用新案第3106517(JP,U)
【文献】特表2013-529994(JP,A)
【文献】実開平03-127503(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43C 7/04
A43C 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の靴紐(20)を通すための通路(40)を備えたハウジング(30)を有する、少なくとも1本の靴紐(20)を取り外し可能に固定するためのクイックレーシングシステム(10)であって、
通路(40)は、
第1の側では、通路(40)の方向に向けられ
て凹状内側(60)を持つ可動に支持されたロッカー(50)によっ
て、少なくとも一部の区域で形成され、
第2
の前記ロッカーと向き合う側では、クイックレーシングシステム(10)
の閉位置でロッカー(50)と協働
して靴紐を締め付ける偏心ジョー(70)によっ
て、少なくとも一部の区域で形成されており、
ロッカー(50)は閉止部(80)と開放部(90)を有し、
閉止部(80)は閉動作中に使用者によって加えられる張力の方向に配置され、
開放部(90)は
、少なくとも1本の靴紐が通路及びロッカーの凹状内側と偏心ジョーの間を通って延びているクイックレーシングシステム(10)の使用
状態で
、前記閉止部(80)と反対方向に配置されており、
ロッカー(50)は、少なくとも保持位置でロック解除キー(100a)又はロック解除レバー(100b)と当接及び/又は係合し、
閉止部(80)は閉動作の過程でぴんと張った靴紐(20)によってジョー(70)から離れて保持位置に押し入れられて、
開放部(90)はジョー(70)に接近し、ロッカー(50)は
前記保持位置で
、拘束可能である
、
ことを特徴とする、クイックレーシングシステム。
【請求項2】
ロック解除キー(100a)若しくはロック解除レバー(100b)の操作部(110)は、少なくとも保持位置でロッカー(50)によって
、ハウジング(30)から押し出され、ロック解除キー(100a)若しくはロック解除レバー(100b)の操作部(110)は靴紐を緩める動作のために使用者にとって到達可能となることを特徴とする、
請求項1に記載のクイックレーシングシステム。
【請求項3】
ロッカー(50)の閉止部(80)が閉動作中にジョー(70)から離れ、若しくは開放部(90)が閉動作中にジョー(70)に押し付けられると、ロック解除キー(100a)若しくは操作部(110)は解放されてばね力によってハウジング(30)から押し出されて、ロック解除キー(100a)若しくは操作部(110)は靴紐を緩める動作のために使用者にとって到達可能となることを特徴とする、
請求項1に記載のクイックレーシングシステム。
【請求項4】
ロッカー(50)の開放部(90)は、閉動作中にぴんと張った靴紐(20)によってジョー(70)から離れる方向に押されることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載のクイックレーシングシステム。
【請求項5】
ジョー(70)は、2つ
の可動シングルジョーからなるダブルジョーとして構成されていることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載のクイックレーシングシステム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのクイックレーシングシステム(10)を装備された靴(120)
。
【請求項7】
クイックレーシングシステム(10)は、シャフト部(130)の上端
部に配置されていることを特徴とする、
請求項6に記載の靴。
【請求項8】
靴は、シャフト部(130)の両側にクイックレーシングシステム(10)を有することを特徴とする、
請求項7に記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部によるクイックレーシングシステム、及び請求項6の前提部によるそのようなクイックレーシングシステムを装備された靴に関する。
【背景技術】
【0002】
靴紐がある靴は、いわゆるスリッパなどの靴紐のない靴と比較して、又は面ファスナー付きの靴と比較しても依然として広く普及している。通常、靴紐は靴を履いた後に自動的に緩むのを防ぐためにループを結んで固定される。これは面倒な活動であり、最初に習得されなければならず、自明ではない。
【0003】
ループを結ぶ必要性を回避するために、例えば独国特許出願DE891065号に靴紐用の締め具が記載されており、それを用いて靴紐を任意の強さで引っ張って締め付けることができる。不適切なループ開口、及びそれに伴い靴を脱ぐ際に靴紐に結び目ができることは、上記の締め具によって防がれる。独国特許出願DE891065号に示されている締め具は、本質的に楔形に先が細くなっているハウジングと、これに対応する楔からなり、楔は締め具の閉位置でそれぞれの靴紐の端をハウジング壁に押し付け、それにより締め付けて拘束する。
【0004】
締め具の開位置、即ち締め具内で靴紐が動ける位置に達するには、楔を手で開位置に入れる必要がある。靴紐が閉位置で再び締め付けられるのを避けるために、楔は引き続き手で開位置に保たなければならず、その結果として靴紐を動かそうとする限り、靴紐を開位置に保つために使用者の手が必要とされる。これは、使用者が靴紐を締めるなど、他のタスクのために片方の手しか使えないために非実用的である。
【0005】
これに関する改善は、米国特許出願US6339867Bl号に記載されている。したがってこの文書から靴紐を開位置で拘束できる靴紐用の締め具が知られている。しかしながらこの締め具は構造が複雑であり、締め具をその開位置からその閉位置にもたらすには相当な力が必要である。
【0006】
従来知られているこれらすべての靴紐用の締め具に共通しているのは、高価な構造を必要とし、また複雑で扱いにくいことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上述した難点を解決し、単純で直感的に操作可能なレーシングシステム、特にクイックレーシングシステム、及びこれを装備された靴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、請求項1に記載のクイックレーシングシステム、及び請求項6に記載の靴によって解決される。
【0009】
特に、この課題は、少なくとも1本の靴紐を通すための通路を備えたハウジングを有する、少なくとも1本の靴紐を取り外し可能に固定するためのクイックレーシングシステムによって解決され、この通路は、第1の側では、通路の方向に向けられて実質的に凹状内側を持つ可動に支持されたロッカーによって少なくとも一部の区域で形成され、第2の実質的にロッカーと向き合う側では、少なくともクイックレーシングシステムの閉位置でロッカーと協働する偏心ジョーによって少なくとも一部の区域で形成されており、ロッカーは閉止部と開放部を有し、閉止部は閉動作中に使用者によって加えられる張力の方向に配置され、開放部はクイックレーシングシステムの使用位置でロッカーの実質的に反対方向に配置されており、閉止部は閉動作の過程でぴんと張った靴紐によってジョーから離れて保持位置に押し入れられて、開放部はジョーに接近し、ロッカーは保持位置で、特にラッチ及び/又はスナップにより拘束可能である。
【0010】
本発明はさらに、少なくとも1本の靴紐を通すための通路を備えたハウジングを有する、少なくとも1本の靴紐を取り外し可能に固定するためのクイックレーシングシステムによって解決され、この通路は、第1の側では、通路の方向に向けられて実質的に凹状内側を持つ可動に支持されたロッカーによって少なくとも一部の区域で形成され、第2の実質的にロッカーと向き合う側では、少なくともクイックレーシングシステムの閉位置でロッカーと協働する偏心ジョーによって少なくとも一部の区域で形成されており、ロッカーは閉止部と開放部を有し、閉止部は閉動作中に使用者によって加えられる張力の方向に配置され、開放部はクイックレーシングシステムの使用位置でロッカーの実質的に反対方向に配置されており、閉止部は閉動作の過程でぴんと張った靴紐によってジョーから離れて保持位置に押し入れられて、開放部はジョーに接近し、ロッカーは保持位置で、特にラッチ及び/又はスナップ及び/又はブロックにより拘束可能及び/又は阻止可能である。
【0011】
本発明の本質的な点は、本発明によるクイックレーシングシステムはロッカーを可動に支持するハウジングを有しており、ロッカーは湾曲していて、ロッカーの凹状内側がハウジング内に形成された通路の方向に向けられていることにある。さらに、ロッカーと向かい合わせに偏心ジョーが配置されており、偏心ジョー自体も少なくとも一部の区域で通路の一部を形成する。本発明によるクイックレーシングシステムの使用状態では、少なくとも1本の靴紐が通路、及びロッカーの凹状内側と偏心ジョーの間を通って延びている。
【0012】
ロッカーは、通路の一部を限定し、支点を中心にシーソーのように支持されている。ロッカーは、閉止部と開放部を有する。この場合、閉止部と開放部はロッカーの互いに反対の端部に配置されており、閉止部はクイックレーシングシステムを操作する使用者の手の方向に延びるロッカーの端部にあり、使用者は張力によって閉動作を引き起こす。これと反対側にロッカーの開放部が、靴から来る靴紐の方向に延びている。
【0013】
本発明の本質的な点は、ロッカーがシーソーのように設計されていて、凹状内側を有する点であり、閉止部はクイックレーシングシステムの開放状態で、通路のロッカーと向き合う側の方向に延びている。この開放状態では、ロッカーの開放部は通路のジョーと向き合う側でジョーから離間している。
【0014】
使用者が閉動作若しくは固定動作を引き起こす場合、使用者が靴紐の自由端を引っ張ると靴紐はぴんと張る。なぜなら靴紐は一方では靴若しくは靴のループを通されてそれによって保持され、他方では使用者によって力が加えられるからである。靴紐をぴんと張ることにより靴紐は緊張し、それによりロッカーの通路を狭くしているロッカーの閉止部に押し当てられ、閉止部を自動的にジョーから離れて保持位置に押し入れ、そこでロッカーは特にラッチ及び/又はスナップによって拘束される。ロッカーの閉止部が保持位置に向かって動くのと同時に、ロッカーの開放部がジョーに向かって動き、その際にロッカーの開放部が靴紐を移動させて、好ましくは歯の付いた表面を有するジョーが少なくとも一部の区域で靴紐と当接し、靴紐をロッカーの開放部の凹状内側に押し付けるようにし、それによって使用者が靴を閉じる若しくは締めるために靴紐に加える力を弛めるとすぐに靴紐がさらに滑って戻ることが防がれる。閉動作の過程で靴紐の張力を弛めることにより、靴紐は通路内で少し滑って戻り、その際に回転可能に支持された偏心ジョーの好ましくは歯付き表面で阻止されて、ジョーをロッカーの開放部に向かって動かすので、靴紐は偏心ジョー部とロッカーの開放部の凹状内側との間で締め付けられる。
【0015】
上述のように、ロッカーはクイックレーシングシステムの閉位置で保持位置に拘束されている。これはラッチ機構又はスナップ機構によって実現されてよく、例えばロッカーに形成された凹部又はフックが、ロック解除キー若しくはロック解除レバーと当接又は係合する。
【0016】
このロック解除キー又はこのロック解除レバーは、ロッカー若しくはロッカーに取り付けたフック、ピン又はその他の作用点により少なくとも保持位置で、ロック解除キー若しくはロック解除レバーの操作部がハウジングから突出する位置に押し出されて、使用者はロック解除キー若しくはロック解除レバーの操作部を押し、そうすることでロッカーの拘束を解除できる。
【0017】
この場合、本発明により、ロッカーは靴紐によって保持位置に押し入れられると自動的に拘束され、その際にロック解除キー若しくはロック解除レバーの操作部はやはり自動的に、場合によりばね作用に抗して、ハウジングから押し出されて、ロック解除キー若しくはロック解除レバーの操作部の操作を可能にする。
【0018】
本発明の代替実施形態によれば、ロッカーの閉止部が閉動作中にジョーから離れ、若しくは開放部が閉動作中にジョーに押し付けられると、ロック解除キー若しくは操作部は解放されてばね力によってハウジングから押し出されて、ロック解除キー若しくは操作部は靴紐を緩める動作のために使用者にとって到達可能となる。この実施形態によれば、ロック解除キー若しくは操作部はクイックレーシングシステムの開位置で、特にばね力に抗してハウジング内に保持される。次に閉動作の過程で靴紐が緊張してロッカーの閉止部を押し付け、それによってロッカーをジョーから離れる方向に押すと、同様にロッカーの開放部がジョーに向かって動き、その際にロック解除キー若しくは操作部を解放するので、ロック解除キー若しくは操作部は、特にばねに支援されて、即ちばね力によってハウジングから押し出され、そうすることによって靴紐を緩める動作のために使用者にとって到達可能となる。
【0019】
この場合、閉動作の過程でロッカーの開放部はロック解除キーの下部との係合から外れ、これはロック解除キーの下部にも相互に該当し、続いて靴紐を緊張することによってロッカーの開放部はジョーに向かって押し付けられ、ロック解除キーの下部は開放部と横方向に当接して、この開放部が後ろに滑るのを防ぐ。靴紐を再び開くには、ロック解除キーを上方向に付勢しているばね力に抗してロック解除キーを再び下方に押す。その際に靴紐が弛緩した状態で開放部がロック解除キーの下部と再び係合し、そうしてロック解除キーが拘束されるまで押し下げると、クイックレーシングシステムが締められていない状態でロック解除キーはハウジングから外方に動くことができない。
【0020】
靴紐を緩めることは本発明によれば、ロッカーが保持位置での拘束から解除されて、ロック解除後にロッカーが自由に動けることによって極めて有利に行われる。このロッカーが自由に動けることによって、ロッカーは、開放部の凹状内側とジョーの間での靴紐の拘束と、靴若しくは靴の鳩目との間で延びてぴんと張られた靴紐によってジョーから離れてクイックレーシングシステムの開位置に押され、その結果ジョーが開放部の凹状内側に対して及ぼした締付け作用はなくなる。この状態で靴紐は通路内を自由に動くことができて靴を開くことができる。
【0021】
さらに本発明の本質的な点は、靴紐が両側に、即ち靴の方向に向かっても、頭部側、即ち使用者の手の方向に向かっても、クイックレーシングシステムのハウジングから自由に延びることができ、ハウジングによって妨げられない。このようにしてロッカーは靴紐の緊張のみによって保持位置に入れることも、保持位置から出して動かすこともできる。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、ジョーはダブルジョーとして設計され、特に好適な実施形態によればダブルジョーは互いに独立に動かすことができる2つの可動シングルジョーからなる。この実施形態は、1本又は2本の靴紐がジョーによってロッカーの開放部の凹状内側に対して拘束されるのではなく、それぞれの靴紐が別々に拘束されるという決定的な利点を包含している。さらにまた、本発明はジョーを互いに独立に可動な2つ以上のシングルジョーに分割する可能性を含む。後者の実施形態は、3本以上の靴紐を固定する場合に有用であり得る。それ以外にもジョーをダブルジョーとして形成すると、ダブルジョーのシングルジョー隔壁によって互いに分離されている場合に靴紐がねじれることが不可能であるという決定的な利点がある。
【0023】
さらに、本発明の課題は、上述した実施形態による少なくとも1つのクイックレーシングシステムを装備された請求項6に記載の靴によっても解決される。
【0024】
特に好適な実施形態によれば、クイックレーシングシステムは、シャフト部の上端部、特にインナーシューズ若しくはインナーシェルとアウターシューズ若しくはアウターシェルの間で、好ましくはクイックレーシングシステム用に設けられた凹部に配置されている。
【0025】
さらに、本発明による靴は、有利にはシャフト部の両側にクイックレーシングシステムを有する。
【0026】
したがって要約すると、本発明の本質的な点は次のように記述することができる。
【0027】
本発明の好適な実施形態によれば、スノーボード靴のクイックレーシングシステム用の締め具は5つの部分からなる。本発明によるクイックレーシングシステム用の保持具は、本発明によればシャフト部の上端部と同一平面で、従来のFLDから既知の位置にあるが、甲革材料と裏革材料との間に縫い付けられている。したがってクイックレーシングシステムはシャフト部に組み込まれた状態では、平面図でしか見ることができない。
【0028】
靴の製造において、ハウジングは、他の部材、即ちロッカー、ジョー、ロック解除キー又はロック解除レバーを挿入して靴紐を通した後、上から保持具に押し入れられ、正しい位置に固定される。この目的のために保持具には位置グリッドが設けられている。次に上端部と同一平面で閉じる。クイックレーシングシステムの交換が所望される場合、クイックレーシングシステムは有利には保持具から取り出して交換することができる。
【0029】
ハウジングの内部には、ロックされた状態でのみ外からよく見えて到達可能なプッシュボタン、ロッカー、及び靴紐をより良好に把持するために歯を付けた偏心ジョーがある。
【0030】
靴紐はジョーとロッカーの間を通る。靴を閉じるために靴紐を引っ張ると、それによってロッカーの上部が押しボタンに向かって押され、そこでロッカーが機械的にロックされる。それによりロッカーの下部はジョーに接近して、両部材が靴紐に圧力を加えるようになる。ジョーの偏心形状により靴紐をさらに引っ張ることが可能であり、靴紐を放すとジョーは自動的に挟まれて動かなくなる。
【0031】
締め具のロックを解除するには、プッシュボタンを押してハウジング内に戻し、ロッカーを解除する。靴紐は高い緊張下でロッカーの前にあるので、靴紐はロッカーの下部を横方向に押し、その結果靴紐は再び締め具の間を自由に通れるようになる。
【0032】
この構造により、クイックレーシングシステムに標準的な1本又は2本の靴紐も、代替的に古典的な1本の靴紐も使用できる。
【0033】
シングルジョーの代わりに、2本の靴紐を互いに独立に締め付けるダブルジョーも可能である。ダブルジョーは2つの個々の狭いジョーからなり、これらは統合された軸を介して結合されている。2つの狭いジョーの一方にのみ必要な隔壁は、靴紐が交差するのを防ぐ。ただし、この可能性はクイックレーシングシステムに標準的な2本の靴紐を使用する場合のみ提供される。
【0034】
本発明の利点は、次のように要約することができる。
【0035】
締め具との相互作用が最小限に抑えられている。靴紐を結ぶ際は、靴紐を引っ張るだけで自動的にロックが機能する。靴を開くにはボタンを押すだけで、靴紐が緩む。この原理により締め具はより単純で直感的に理解しやすくなり、非常に速く靴の紐を結ぶことができる。
【0036】
偏心ジョーは、ジョーとロッカーの間に隙間がなくなるまで大きく回動できるが、これは極めて強い締付けを保証するのみではない。例えば摩耗して既に細くなった靴紐でも、新品と同様にしっかりと保持される。とりわけ異なる太さの靴紐を使用することが可能であり、それにより新種のレーシングが実現可能になる。例えば他の締め具を必要とすることなく古典的な靴紐を用いるクイックレーシングシステムが考えられよう。1本又は2本の細い靴紐を使用することも、あまり調整することなく可能である。これによりスノーボード靴の全コレクションに関して金型コストを削減できる一方、より多くの異なる靴のデザインが可能である。
【0037】
本発明のその他の実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0038】
以下に本発明を実施形態に基づいて記述し、図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】クイックレーシングシステムが開位置にある本発明による第1の実施形態の概略図である。
【
図2】
図1に示された本発明の実施形態の半閉位置における概略図である。
【
図3】
図1に示された本発明の実施形態の閉位置における概略図である。
【
図4】
図4は、クイックレーシングシステムが開位置にある、本発明による別の実施形態の概略図である。
【
図5】
図4に示された本発明の実施形態の半閉位置における概略図である。
【
図6】
図4に示された本発明の実施形態の閉位置における概略図である。
【
図7】クイックレーシングシステムが開位置にある本発明による別の実施形態の概略図である。
【
図8】
図7に示された本発明の実施形態の半閉位置における概略図である。
【
図9】
図7に示された本発明の実施形態の閉位置における概略図である。
【
図10】同期的に動かされるジョーを有する本発明によるダブルジョーの概略図である。
【
図11】非同期的に動かされるジョーを有する本発明によるダブルジョーの概略図である。
【
図12】2つの本発明によるクイックレーシングシステムを装備された本発明による靴の概略図である。
【
図13】クイックレーシングシステムが開位置にある本発明による第2の実施形態の概略図である。
【
図14】
図13に示された本発明の実施形態の半閉位置における概略図である。
【
図15】
図13に示された本発明の実施形態の閉位置における概略図である。
【
図16】
図13に示された本発明の実施形態の開いた位置における概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、本発明によるクイックレーシングシステム10の概略図を示す。クイックレーシングシステム10は、ハウジング30を通って延びる通路40を有する。
図1では通路40は、左側は部分的にロッカー50によって限定され、右側は部分的にジョー70により限定されている。ロッカー50は、
図1でクイックレーシングシステム10の上端部の方向に延びる閉止部80を有しており、使用者が閉動作を行うと、この方向からクイックレーシングシステム10を閉じる若しくは締めるための引張りが行われる。ロッカー50の反対側の端部には開放部90があり、その凹状内側60はジョー70と協働して靴紐20を閉位置で締め付ける。
【0041】
図1から分かるように、ロッカー50の閉止部80は、通路40のロッカー側とは反対側の方向に延びている。靴紐を固定する動作を引き起こすために靴紐20を上方に引っ張ると、靴紐20がぴんと張ってロッカー50の閉止部80を押し、これを保持位置の方向に動かし、そこでロッカー50はロック解除レバー100bと係合する。閉止部80が保持位置に向かって動くのと同時に、開放部90はその凹状内側60と共に歯付きジョー70に向かって動いて、靴紐20がジョー70の歯と接触するようになる。ロッカー50は保持位置に拘束されているので、ロッカー50の開放部90は靴紐20及びジョー70による逆圧が発生しても逃げることができない。靴紐20が引張りから解放されて、偏心ジョー70と一緒にロッカー50の開放部90の凹状内側60に押されると、靴紐はジョー70とロッカー50の開放部90の凹状内側60との間で締め付けられる。
【0042】
クイックレーシングシステム10を開くために、ロック解除レバー100bの操作部110若しくはロック解除キー100aを押して操作すると、ロッカー50をその保持位置からその開位置に動かすことができる。この動きは靴紐20の緊張により自動的に機能し、その際に開放部90は靴紐20により若しくは靴紐20の緊張によりジョー70から離れる左方向に押される。
【0043】
図4~
図9に本発明の別の実施形態が概略図に示されているが、それらの締付け機構及び開放機構は
図1~
図3に示すものと同一である。
【0044】
ただし、
図1~
図3に示された実施形態と異なり、
図4~
図9に示す実施形態では操作部110若しくは解除ボタン100aは、本発明によるクイックレーシングシステム10が閉位置にある場合にのみ見える。この状態では、
図4~
図6に示すようにロック解除キー100aは、ロッカー50に形成されたフックによって押し上げられて、クイックレーシングシステム10のハウジング30から突出し、使用者がクイックレーシングシステム10を開くために押すことができる。
図7~
図8によれば、これはロック解除キーではなくロック解除レバー100bであり、その操作部110はクイックレーシングシステム10の閉位置でクイックレーシングシステム10のハウジング30から上方に突出して、同様にクイックレーシングシステム10を開くために操作できる。
【0045】
図10及び
図11には、本発明によるクイックレーシングシステム10に2つのシングルジョー70の代替として使用できる、互いに対して可動な2つのシングルジョー70を有するダブルジョーシステムが示されている。
【0046】
図12には、本発明による靴120が示されており、そのシャフト部130の両側にそれぞれ1つの本発明によるクイックレーシングシステム10が凹部140に配置されている。
【0047】
図13は、クイックレーシングシステム10が開位置にある本発明による第2の実施形態の概略図を示しており、ここでは靴紐20が通路40を通って案内されており、通路40はハウジング30内に配置されて、
図13によれば左側が閉止部80と開放部90を有するロッカー50によって限定され、右側がジョー70によって限定されている。
図13によれば開放部90は係合部160と係合し、それによりロック解除キー100aをばね150の圧力に抗して、ロック解除キー100aが実質的にクイックレーシングシステム10のハウジング3内に引き戻された位置に拘束されている。
【0048】
本発明によるクイックレーシングシステム10を閉じるために、
図14に概略的に示されているように、靴紐20に上方への張力を加えると、靴紐20はロッカー50の閉止部80と当接して、閉止部80をジョー70から離れる方向に押し若しくはこの閉止部80をロック解除キー100aに向かって動かす。ここで開放部90は係合部160との係合から出てジョー70に向かって移動し、ロック解除キー100aはばね150のばね力によりハウジング30から上方に押し出される。この上方への直線運動によりロック解除キー100aの阻止部170は開放部90の内側60とは反対側の外側に沿って滑動し、このようにして靴紐20がロッカー50の内側60とジョーの間で締め付けられる間、ロッカー50の開放部90が逸れるのを防ぐ。この状態では、クイックレーシングシステム10を靴紐20で閉じる過程でジョーはまだロッカーの内側60と圧縮当接していないので、本発明によるクイックレーシングシステム10は半閉位置にある。
【0049】
図15は、
図13に示された本発明の実施形態の閉位置における概略図を示しており、このときにはジョー20は靴紐20の上部の弛緩、及び靴紐20の下部に形成された張力により、ロッカー50の開放部90の内側60との圧縮当接に滑り込み、靴紐を確実に締付け、誤って開くことがないようにする一方、阻止部170はロッカー50の開放部90をその閉じた位置に確保する。この閉じた位置ではロック解除キー100aはハウジング30から押し出された状態にある。
【0050】
図16は、
図13に示された本発明の実施形態の開いた位置における概略図を示しており、本発明によるクイックレーシングシステム10を開くためにロック解除キー100aに圧力が加えられると、阻止部170はロッカー50の開放部90の下に滑り込み、その際に開放部90を解放し、それによりクイックレーシングシステム10も同様に内側60とジョー部70との間の締付けから解放されて、通路40を通ってハウジング30から下方へ滑り出ることができる。次に本発明によるクイックレーシングシステムを再び閉じる過程で靴紐20は歯付きジョー70に当接していて、回転軸で支持されたジョー70をロッカー50の
閉止部に向かって連行し、使用者がさらに張力を加えると靴紐は再び閉止部80と当接して、これを上述したように横方向に押しやり、その結果としてロッカー50の内側60が靴紐20と当接して、これを再びジョー70の歯の付いた表面に押し付ける。
【0051】
この箇所で指摘しておくと、上記のすべての部分はそれ自体で見ても、あらゆる組み合わせにおいても、特に図面に示されている詳細も、本発明に不可欠であると要求される。これらの変更は当業者によく知られている。
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む。
〔態様1〕
少なくとも1本の靴紐(20)を通すための通路(40)を備えたハウジング(30)を有する、少なくとも1本の靴紐(20)を取り外し可能に固定するためのクイックレーシングシステム(10)であって、
通路(40)は、第1の側では、通路(40)の方向に向けられて実質的に凹状内側(60)を持つ可動に支持されたロッカー(50)によって少なくとも一部の区域で形成され、第2の実質的に前記ロッカーと向き合う側では、クイックレーシングシステム(10)の少なくとも閉位置でロッカー(50)と協働する偏心ジョー(70)によって少なくとも一部の区域で形成されており、ロッカー(50)は閉止部(80)と開放部(90)を有し、閉止部(80)は閉動作中に使用者によって加えられる張力の方向に配置され、開放部(90)はクイックレーシングシステム(10)の使用位置でロッカー(50)の実質的に反対方向に配置されており、閉止部(80)は閉動作の過程でぴんと張った靴紐(20)によってジョー(70)から離れて保持位置に押し入れられて、開放部(90)はジョー(70)に接近し、ロッカー(50)は保持位置で、特にラッチ及び/又はスナップにより拘束可能であることを特徴とする、クイックレーシングシステム。
〔態様2〕
ロッカー(50)は、少なくとも保持位置でロック解除キー(100a)又はロック解除レバー(100b)と当接及び/又は係合していることを特徴とする、態様1に記載のクイックレーシングシステム。
〔態様3〕
ロック解除キー(100a)若しくはロック解除レバー(100b)の操作部(110)は、少なくとも保持位置でロッカー(50)によって、場合によりばね作用に抗してハウジング(30)から押し出され、ロック解除キー(100a)若しくはロック解除レバー(100b)の操作部(110)は靴紐を緩める動作のために使用者にとって到達可能となることを特徴とする、態様2に記載のクイックレーシングシステム。
〔態様4〕
ロッカー(50)の閉止部(80)が閉動作中にジョー(70)から離れ、若しくは開放部(90)が閉動作中にジョー(70)に押し付けられると、ロック解除キー(100a)若しくは操作部(110)は解放されてばね力によってハウジング(30)から押し出されて、ロック解除キー(100a)若しくは操作部(110)は靴紐を緩める動作のために使用者にとって到達可能となることを特徴とする、態様2に記載のクイックレーシングシステム。
〔態様5〕
ロッカー(50)の開放部(90)は、閉動作中にぴんと張った靴紐(20)によってジョー(70)から離れる方向に押されることを特徴とする、態様1から4のいずれか一態様に記載のクイックレーシングシステム。
〔態様6〕
ジョー(70)は、2つの、特に互いに独立した可動シングルジョーからなるダブルジョーとして構成されていることを特徴とする、態様1から5のいずれか一態様に記載のクイックレーシングシステム。
〔態様7〕
態様1から6のいずれか一態様に記載の少なくとも1つのクイックレーシングシステム(10)を装備された靴(120)、特にスノーボード靴。
〔態様8〕
クイックレーシングシステム(10)は、シャフト部(130)の上端部、特にインナーシューズ若しくはインナーシェルとアウターシューズ若しくはアウターシェルの間で、好ましくはクイックレーシングシステム(10)用に設けられた凹部(140)に配置されていることを特徴とする、態様7に記載の靴。
〔態様9〕
靴は、シャフト部(130)の両側にクイックレーシングシステム(10)を有することを特徴とする、態様8に記載の靴。
【符号の説明】
【0052】
10 クイックレーシングシステム
20 靴紐
30 ハウジング
40 通路
50 ロッカー
60 内側
70 ジョー
80 閉止部
90 開放部
100a ロック解除キー
100b ロック解除レバー
110 操作部
120 靴
130 シャフト部
140 凹部
150 ばね
160 係合部
170 阻止部