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特許7127113クレーン、クレーンを組み立てるための方法、およびクレーンを分解するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】クレーン、クレーンを組み立てるための方法、およびクレーンを分解するための方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/70 20060101AFI20220822BHJP
   B66C 23/26 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
B66C23/70 Z
B66C23/26 C
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020509416
(86)(22)【出願日】2018-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 NL2018050262
(87)【国際公開番号】W WO2018199750
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】2018785
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(31)【優先権主張番号】62/490,221
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2019512
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】519383337
【氏名又は名称】スコフ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アントン・アドリアン・ヨアヒム・ファン・デン・ブルーク
(72)【発明者】
【氏名】ウェッセル・ヘルメンス
(72)【発明者】
【氏名】ピーテル・マリア・ストーフ
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/133389(WO,A2)
【文献】実公昭52-042515(JP,Y1)
【文献】特開昭57-151768(JP,A)
【文献】特開昭62-164973(JP,A)
【文献】特開昭57-077762(JP,A)
【文献】特開昭61-165471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
E04H 12/00-14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンであって、
クレーン基部(2)と、
前記クレーン基部(2)に配置される第1の枢動部(11)の周りで枢動可能である第1のマスト(10)であって、前記第1の枢動部(11)は水平方向の枢動軸を有し、前記第1のマスト(10)は、長手方向の軸を有し、複数のマスト分割体(15、16、16*)を備え、後マストおよびメインブームの一方である、第1のマスト(10)と、
前記クレーン基部(2)に配置される第2の枢動部(31)の周りで枢動可能である第2のマスト(30)であって、前記第2の枢動部(31)は水平方向の枢動軸を有し、前記第2のマスト(30)は、長手方向の軸を有し、複数のマスト分割体(35、36、36*)を備え、後マストおよびメインブームの他方である、第2のマスト(30)と、
前記第1のマスト(10)を鉛直方向の位置において前記クレーン基部(2)に対して解放可能に固定するように構成される第1のマスト固定装置(50)と、
前記第1のマスト(10)の外面に連結される第1の案内装置(61)、および、前記第2のマスト(30)の外面に連結される第2の案内装置(62)を備える案内システム(60)であって、
前記案内システム(60)は、前記第1のマスト(10)の前記長手方向の軸と前記第2のマスト(30)の前記長手方向の軸とが互いに対して平行に鉛直方向へ両方で延び、前記第1の案内装置(61)と前記第2の案内装置(62)とが互いに移動可能に連結される連結状態を有し、前記第2の案内装置(62)に連結される前記第2のマスト(30)の少なくともマスト分割体(35、36、36*)と、前記第1の案内装置(61)に連結される前記第1のマスト(10)の少なくともマスト分割体(15、16、16*)との鉛直方向における相対移動を案内するように構成され、
前記案内システム(60)は、前記第1の案内装置(61)と前記第2の案内装置(62)とが互いから連結解除される連結解除状態をさらに有する、案内システム(60)と、
前記クレーンの組立の間、前記案内システム(60)が前記連結状態にあるときに、前記案内システム(60)に連結される前記第2のマスト(30)の少なくともマスト分割体(35、36、36*)を、前記第1のマスト(10)の少なくともマスト分割体(15、16、16*)に対して鉛直方向上向きに移動させるように構成されるマスト分割体装着装置(70)と、
前記案内システム(60)が前記連結状態にあるとき、前記第2のマスト(30)の少なくともマスト分割体(35、36、36*)を、前記第1のマスト(10)の少なくともマスト分割体(15、16、16*)に対する固定位置で係止するように構成されるマスト分割体係止装置(75)と、
前記案内システム(60)が前記連結解除状態にあるとき、前記第1のマスト(10)と前記第2のマスト(30)とを互いから離すように枢動させるように構成されるマスト枢動アクチュエータ(80)と
を備えるクレーン。
【請求項2】
前記第1のマスト(10)は後マストであり、前記第2のマスト(30)はメインブームである、請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記第1のマスト(10)はメインブームであり、前記第2のマスト(30)は後マストである、請求項1に記載のクレーン。
【請求項4】
前記マスト分割体装着装置(70)は、前記クレーンの組立の間、前記第2のマスト(30)の少なくとも1つのマスト分割体(35、36、36*)を鉛直方向上向きに押すように構成される液圧ジャッキ(76)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項5】
前記マスト分割体装着装置(70)は、前記クレーンの組立の間、前記第2のマスト(30)の少なくとも1つのマスト分割体を鉛直方向上向きに引っ張るように構成されるケーブル(73)を備え、組み立てられた前記クレーンにおける前記ケーブル(73)は、前記第1のマスト(10)と前記第2のマスト(30)との間に支線を形成する、請求項1から4のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項6】
前記マスト分割体装着装置(70)は、前記第1のマスト(10)の前記長手方向の軸と平行に移動可能である搬送体(72)を備え、前記搬送体(72)は、マスト分割体(35、36、36*)が前記クレーン基部(2)から鉛直方向のある距離における第1の位置にあるとき、前記第2のマスト(30)の前記マスト分割体(35、36、36*)と係合するように、前記第1の位置から、前記第1の位置と異なる前記クレーン基部(2)からの距離における第2の位置への前記マスト分割体(35、36、36*)の移転の間に、前記マスト分割体(35、36、36*)を保持するように、および、前記マスト分割体(35、36、36*)が前記第2の位置において固定された後に前記マスト分割体(35、36、36*)を解放するように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項7】
前記搬送体(72)は、前記第2のマスト(30)の最も下のマスト分割体(35、36、36*)と係合するように構成される、請求項6に記載のクレーン。
【請求項8】
前記マスト分割体装着装置(70)は、前記クレーンの組立の間、前記案内システム(60)が前記連結状態にあるときに、前記案内システム(60)に連結される前記第1のマスト(10)の少なくともマスト分割体(15、16、16*)を、前記第2のマスト(30)の少なくともマスト分割体(35、36、36*)に対して鉛直方向上向きに移動させるようにさらに構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項9】
前記マスト枢動アクチュエータ(80)は、作動状態および非作動状態を有する押し外し/保持装置(81)を備え、
前記作動状態において、前記押し外し/保持装置(81)は前記第1のマスト(10)と前記第2のマスト(30)との両方に連結され、前記非作動状態において、前記押し外し/保持装置(81)は前記第1のマスト(10)および前記第2のマスト(30)の少なくとも一方から連結解除される、請求項1から8のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項10】
クレーンを組み立てるための方法であって、前記クレーンは、請求項1から9のいずれか一項に記載のクレーンであり、
前記方法は、以下のステップ、すなわち、
前記第1のマスト(10)を、前記クレーン基部(2)における前記第1の枢動部(11)に連結し、続いて、前記第1のマスト固定装置(50)によって、鉛直方向の位置において前記第1のマスト(10)を前記クレーン基部(2)に対して固定するステップと、
前記第2の案内装置(62)の少なくとも一部が設けられる前記第2のマスト(30)の上マスト分割体(35)を、前記クレーン基部(2)から鉛直方向のある距離にある第1の位置において、前記第1のマスト(10)に隣接して前記第1のマスト(10)の外側に配置し、前記第2の案内装置(62)の前記少なくとも一部を、前記第1のマスト(10)における前記第1の案内装置(61)に連結し、それと共に前記案内システム(60)を前記連結状態にするステップと、
前記マスト分割体装着装置(70)によって前記第2のマスト(30)の前記上マスト分割体(35)を鉛直方向上向きに移動させ、この移動は前記案内システム(60)によって案内され、続いて、前記クレーン基部(2)から前記第1の位置より大きい鉛直方向の距離にある第2の位置において、前記マスト分割体係止装置(75)によって、前記第2のマスト(30)の前記上マスト分割体(35)を前記第1のマスト(10)に対して固定するステップと、
前記第2のマスト(30)を構築するために、前記第2のマスト(30)の第1の中間マスト分割体(36)を前記第2のマスト(30)の前記上マスト分割体(35)の下方端(35b)に固定するステップと、
前記第2のマスト(30)の前記第1の中間マスト分割体(36)を前記クレーン基部(2)における前記第2の枢動部(31)に連結するステップと、
前記案内システム(60)を前記連結解除状態にするステップと、
前記マスト枢動アクチュエータ(80)によって、前記第2のマスト(30)を前記第1のマスト(10)から離すように枢動させるステップと、
前記第1のマスト固定装置(50)によって、前記クレーン基部(2)に対する前記第1のマスト(10)の固定を解放するステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記第2のマスト(30)の第1の中間マスト分割体(36)を前記第2のマスト(30)の前記上マスト分割体(35)の下方端(35b)に固定する前記ステップの後で、前記第1の中間マスト分割体(36)を前記クレーン基部(2)における前記第2の枢動部(31)に連結する前記ステップの前に、以下の追加のステップ、すなわち、
前記第1のマスト(10)への前記第2のマスト(30)の前記上マスト分割体(35)の固定を解放し、前記第2のマスト(30)の前記上マスト分割体(35)および前記第1の中間マスト分割体(36)を鉛直方向上向きに一緒に移動させ、前記移動は前記案内システム(60)によって案内され、それによって、前記第2のマスト(30)の前記上マスト分割体(35)を、前記クレーン基部(2)から前記第2の位置より大きい鉛直方向の距離にある第3の位置へと持って行くステップと、
前記マスト分割体係止装置(75)によって、前記第2のマスト(30)の前記上マスト分割体(35)および前記第1の中間マスト分割体(36)を前記第1のマスト(10)に対して固定するステップと、
前記第2のマスト(30)をさらに構築するために、前記第2のマスト(30)の後続の中間マスト分割体(36*)を前記第2のマスト(30)の前記第1の中間マスト分割体(36)の下方端(36b)に連結するステップと
が実施され、
前記第2のマスト(30)の前記第1の中間マスト分割体(36)を前記クレーン基部(2)における前記第2の枢動部(31)に連結する前記ステップは、前記後続の中間マスト分割体(36*)を前記クレーン基部(2)における前記第2の枢動部(31)に連結することで実現される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の中間マスト分割体を前記クレーン基部(2)における第2の枢動部(31)に連結する前記ステップは、
連結マスト分割体(37)を前記第1の中間マスト分割体(36)の下方端(36b)と前記第2の枢動部(31)との間に配置することと、
前記連結マスト分割体(37)の第1の端(37a)を前記第2のマスト(30)の前記第1の中間マスト分割体(36)の前記下方端(36b)に連結し、前記連結マスト分割体(37)の第2の端(37b)を前記第2の枢動部(31)に連結することと
を含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記連結マスト分割体(37)は、前記連結マスト分割体(37)の前記第2の端(37b)が前記第2の枢動部(31)に連結された後、鉛直方向に対してある角度で延びる長手方向の軸を有し、
前記連結マスト分割体(37)の前記第1の端(37a)は、第3の枢動部(38)を介して前記第1の中間マスト分割体(36)の前記下方端(36b)に連結され、
前記第1の中間マスト分割体(36)と前記第2のマスト(30)の前記上マスト分割体(35)とは、前記連結マスト分割体(37)と同軸で延びることになることを行うために、前記第3の枢動部(38)の周りで一緒に枢動させられ、その後に、前記第1の中間マスト分割体(36)が前記連結マスト分割体(37)に対して回転可能に固定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のマスト(30)の前記上マスト分割体(35)はケーブル(73、71)によって上向きに引っ張られる、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記マスト枢動アクチュエータ(80)によって、前記第2のマスト(30)を前記第1のマスト(10)から離すように枢動させた後、前記ケーブル(73、71)は、前記第1のマスト(10)と前記第2のマスト(30)との間に支線を形成する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のマスト(30)の前記上マスト分割体(35)は液圧ジャッキ(76)によって上向きに押される、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のマスト(30)は、以下のステップ、すなわち、
前記第1のマスト(10)と前記第2のマスト(30)との両方に連結される前記マスト枢動アクチュエータ(80)によって、前記第2のマスト(30)を前記第1のマスト(10)から第1の開角度にわたって離すように枢動させるステップと、
前記マスト枢動アクチュエータ(80)と、前記第1のマスト(10)および/または前記第2のマスト(30)との間の連結を解放するステップと、
重力の影響の下で、前記第2のマスト(30)を前記第1のマスト(10)からさらなる第2の開角度にわたって離すように枢動させるステップと
によって、前記第1のマスト(10)から離すように枢動させられる、請求項10から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記案内システム(60)を前記連結解除状態にする前に、以下の追加のステップ、すなわち、
前記第2のマスト(30)を鉛直方向の位置において前記クレーン基部(2)に対して固定するステップと、
前記第1のマスト(10)の第1のマスト分割体の下方端を前記第1の枢動部(11)から連結解除するステップと、
前記マスト分割体装着装置(70)によって前記第1のマスト(10)の前記第1のマスト分割体を鉛直方向上向きに移動させ、この移動は前記案内システム(60)によって案内され、続いて、前記マスト分割体係止装置(75)によって、前記第1のマスト(10)の前記第1のマスト分割体を前記第2のマスト(30)に対して固定するステップと、
前記第1のマスト(10)をさらに構築するために、前記第1のマスト(10)の第1の中間マスト分割体(16)を前記第1のマスト(10)の前記第1のマスト分割体の下方端に固定するステップと、
前記第1のマスト(10)の前記第1の中間マスト分割体(16)を前記クレーン基部(2)における前記第1の枢動部(11)に連結するステップと
が実施される、請求項10から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記クレーンの組立の少なくとも一部の間、前記第2のマスト(30)は前記第1のマスト(10)より長い、請求項10から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
クレーンを分解するための方法であって、前記クレーンは、請求項1から9のいずれか一項に記載のクレーンであり、前記方法は、以下のステップ、すなわち、
前記第1のマスト固定装置(50)によって、前記第1のマスト(10)を鉛直方向の位置において前記クレーン基部(2)に対して固定するステップと、
前記第2のマスト(30)を前記第1のマスト(10)に向けて枢動するステップと、
前記案内システム(60)を前記連結状態にし、前記第2のマスト(30)の上マスト分割体(35)が前記クレーン基部(2)から鉛直方向のある距離にある第2の位置にある状態で、前記第2のマスト(30)を鉛直方向において前記第1のマスト(10)に対して固定するステップと、
前記第2のマスト(30)の第1の中間マスト分割体(36)を前記クレーン基部(2)における前記第2の枢動部(31)から連結解除するステップと、
前記第2のマスト(30)の前記第1の中間マスト分割体(36)を前記第2のマスト(30)の前記上マスト分割体(35)の下方端から解放し、前記第1の中間マスト分割体(36)を取り外すステップと、
前記第1のマスト(10)に対する前記第2のマスト(30)の鉛直方向での固定を解放し、前記マスト分割体装着装置(70)によって、前記第2のマスト(30)の前記上マスト分割体(35)を第1の位置へと鉛直方向下向きに移動させるステップであって、前記第1の位置は、前記クレーン基部(2)から前記第2の位置より小さい鉛直方向の距離にあり、この移動は前記案内システム(60)によって案内される、ステップと、
前記案内システム(60)を前記連結解除状態にするステップと、
前記第2のマスト(30)の前記上マスト分割体を取り外すステップと、
前記クレーン基部(2)に対する前記第1のマスト(10)の固定を解放するステップと、
前記第1のマスト(10)を前記クレーン基部(2)における前記第1の枢動部(11)から連結解除し、前記第1のマスト(10)を取り外すステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻上式クレーンおよび巻上式装置の分野に関し、具体的には、巻上作業が実施される現場までクレーンが分解された状態で輸送されてから組み立てられるモジュール設計の大形クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
現地において、それ自体が動作させられる現場において組み立てられる大形のラチスブームクレーンが使用される。通常、クレーンのメインブームおよび/または後マストが、地面に置かれている間に組み立てられ、それらの動作位置へと、巻き上げられる、および/または、引っ張られる。非常に一般的な問題は、例えば、新たな反応容器が既存の石油化学工場において設置されるとき、クレーンを構築するために現場で利用可能な空間が限られていることである。
【0003】
この問題へのいくつかの解決策が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、ジャッキングタワーを構築するための伸縮式の構成を提案している。鋏状の機構がマストのマスト分割体を持ち上げ、それによって、後続のマスト分割体の追加のために、タワーの底に空間を作り出す。組み立てられた小分割体の鉛直方向の移動が、タワーの下方部分において小分割体の周りで延びるタワーの下方の幅広い案内マスト分割体によって案内される。
【0005】
しかしながら、特許文献1によるシステムおよび方法は、水平方向の枢動軸の周りで枢動可能であるマストを有するクレーンの組立には使用できない。
【0006】
特許文献2は、最初に、完全な長さの鉛直方向のバラストマストが、互いの上に後続のマスト分割体を積み重ねることによって現場で組み立てられる方法を提案している。次に、後マストの上マスト分割体をバラストマストに連結し、バラストマストのマスト分割体を下方から追加する一方で、この上マスト分割体をバラストマストまで上げることで、後マストが組み立てられる。後マストが完全に組み立てられた後、メインブームは、マスト分割体を互いの上に積み重ねることで建設される。
【0007】
特許文献2の方法は、特に制限された空間において、実行が難しい可能性がある相当の高さにおける作業をなおも必要とする。さらに、この方法は、常に望ましいとは限らない完全な長さのバラストマストの存在を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2014/140723号パンフレット
【文献】国際公開第2016/133389号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
限られた空間が利用可能である現場における組立および分解に適するクレーンを提供することが、本発明の目的である。さらに、このようなクレーンを組立および分解するための実用的な方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、
- クレーン基部と、
- クレーン基部に配置される第1の枢動部の周りで枢動可能である第1のマストであって、第1の枢動部は水平方向の枢動軸を有し、第1のマストは、長手方向の軸を有し、複数のマスト分割体を備え、後マストおよびメインブームの一方である、第1のマストと、
- クレーン基部に配置される第2の枢動部の周りで枢動可能である第2のマストであって、第2の枢動部は水平方向の枢動軸を有し、第2のマストは、長手方向の軸を有し、複数のマスト分割体を備え、後マストおよびメインブームの他方である、第2のマストと、
- 第1のマストを鉛直方向の位置においてクレーン基部に対して解放可能に固定するように構成される第1のマスト固定装置と、
- 第1のマストの外面に連結される第1の案内装置、および、第2のマストの外面に連結される第2の案内装置を備える案内システムであって、
案内システムは、第1のマストの長手方向の軸と第2のマストの長手方向の軸とが互いに対して平行に鉛直方向へ両方で延び、第1の案内装置と第2の案内装置とが互いに移動可能に連結される連結状態を有し、第2の案内装置に連結される第2のマストの少なくともマスト分割体と、第1の案内装置に連結される第1のマストの少なくともマスト分割体との鉛直方向における相対移動を案内するように構成され、
案内システムは、第1の案内装置と第2の案内装置とが互いから連結解除される連結解除状態をさらに有する、案内システムと、
- クレーンの組立の間、案内システムが連結状態にあるときに、案内システムに連結される第2のマストの少なくともマスト分割体を、第1のマストの少なくともマスト分割体に対して鉛直方向上向きに移動させるように構成されるマスト分割体装着装置と、
- 案内システムが連結状態にあるとき、第2のマストの少なくともマスト分割体を、第1のマストの少なくともマスト分割体に対する固定位置で係止するように構成されるマスト分割体係止装置と、
- 案内システムが連結解除状態にあるとき、第1のマストと第2のマストとを互いから離すように枢動させるように構成されるマスト枢動アクチュエータと
を備えるクレーンによって得られる。
【0011】
クレーン基部は、例えば、クローラクレーンのシャーシおよび/またはリンガークレーンの足組立体であり得る。クレーン基部は、例えば、ローラおよび/またはスライドシューを備えてもよい。任意選択で、クレーン基部は、クレーンのマストからの押す力と引っ張る力との両方を吸収できる。
【0012】
任意選択で、クレーン基部は、例えば、3つ以上のアウトリガで、任意選択で少なくとも8つのアウトリガといった、複数のアウトリガを備える。アウトリガは、マストの下方端から(少なくとも水平方向において)ある距離に配置される。可能な変形において、少なくとも1つのアウトリガからマストの中心までの水平方向距離は、マストの幅の1.5倍超である。
【0013】
クレーン基部は作業領域の支持面に配置される。支持面は、例えば、より良好な一貫性のために、固定されていない鋼鉄板が設けられた地面の一部である。
【0014】
第1のマストは後マストまたはメインブームのいずれかである。第1のマストは、クレーン基部に配置される第1の枢動部の周りに枢動可能である。この第1の枢動部は水平方向の枢動軸を有する。第1のマストは複数のマスト分割体を備える。任意選択で、各々のマスト分割体は、作業場所における現場において、例えばピンホール連結部によって互いに連結される別々の管および/またはビームから個別に組み立てられる。第1のマストは、マストの長さの方向において延びる長手方向の軸を有する。
【0015】
任意選択で、第1のマストは格子マストである。任意選択で、第1のマストはA字形またはY字形を有する。
【0016】
第2のマストは後マストおよびメインブームの他方である。そのため、第1のマストが後マストである場合、第2のマストはメインブームである。第1のマストがメインブームである場合、第2のマストは後マストである。
【0017】
第2のマストは、クレーン基部に配置される第2の枢動部の周りに枢動可能である。この第2の枢動部は水平方向の枢動軸を有する。第2のマストは複数のマスト分割体を備える。任意選択で、各々のマスト分割体は、作業場所における現場において、例えばピンホール連結部によって互いに連結される別々の管および/またはビームから個別に組み立てられる。第2のマストは、マストの長さの方向において延びる長手方向の軸を有する。
【0018】
任意選択で、第2のマストは格子マストである。任意選択で、第2のマストはA字形またはY字形を有する。
【0019】
可能な実施形態では、第1の枢動部の水平方向の枢動軸は第2の枢動部の水平方向の枢動軸と平行である。任意選択で、第1の枢動部の水平方向の枢動軸と第2の枢動部の水平方向の枢動軸とは互いと同軸である。
【0020】
可能な実施形態では、第1の枢動部と第2の枢動部とは互いから離間される。これは、マストの大きさを考慮すると有利であり得、加えて、クレーン基部の下での局所的な地面の圧力を低減するのを助ける。
【0021】
任意選択で、第1の枢動部と第2の枢動部とは互いと一致できる。その場合、クレーンは、例えば、クレーン基部に配置される組み合わせられた枢動部を備える。第1のマストおよび第2のマストは、この実施形態では、組み合わせられた枢動部の周りにおいて両方で枢動可能である。この組み合わせられた枢動部は水平方向の枢動軸を有する。
【0022】
本発明によるクレーンは第1のマスト固定装置をさらに備える。第1のマスト固定装置は、クレーンの組立および/または分解の少なくとも一部の間、第1のマストを鉛直方向の位置においてクレーン基部に対して解放可能に固定するように構成される。そのため、第1のマスト固定装置は、第1のマストを鉛直方向の位置において一時的に固定するように、および、この固定がもはや必要とされないときにこの固定を解放するように、構成される。第1のマスト固定装置は、例えば、マストを、クレーン基部に、および/または、例えば、岩盤もしくは重い反応容器などの硬く重たい構造といった、クレーンの近傍における1つもしくは複数の頑丈な場所に固定する。
【0023】
「鉛直方向」は、水平方向に対して90°で延びることを意味し、鉛直方向からの小さな不測の逸脱および/または小さな意図的でない逸脱を含む。概して、純粋な鉛直方向からの逸脱は、約5°より大きくなることはない。
【0024】
本発明によるクレーンは案内システムをさらに備える。案内システムは、第1のマストの外面に連結される第1の案内装置、および、第2のマストの外面に連結される第2の案内装置を備える。外面は、外側を向くマストの面である。単一のブームを含むマストでは、外面は、そのブームの長手方向中心線から離れた方を向く。
【0025】
案内システムは連結状態と連結解除状態とを有する。連結状態では、第1のマストの長手方向の軸と第2のマストの長手方向の軸とが互いに対して平行に鉛直方向へ両方で延びる。小さな不測の逸脱および/または意図的でない逸脱が起こる可能性がある。連結状態において、第1の案内装置と第2の案内装置とは移動可能に互いに連結される。案内システムは、第2の案内装置に連結される第2のマストの少なくともマスト分割体、および、第1の案内装置に連結される第1のマストの少なくともマスト分割体の鉛直方向における相対移動を案内するように構成される。そのため、第2のマストのマスト分割体が第1のマストのマスト分割体に対して鉛直方向上向きまたは下向きに移動させられ、第1のマストのマスト分割体が第1の案内装置に直接的または間接的のいずれかで連結され、第2のマストのそれぞれのマスト分割体が第2の案内装置に直接的または間接的のいずれかで連結される場合、案内システムが連結状態にあるとき、この移動は案内システムによって案内される。
【0026】
任意選択で、案内システムが連結状態にあるとき、案内システムは、第1のマストおよび第2のマストの長手方向以外のすべての方向において、第1の案内装置に連結される第1のマストの少なくともマスト分割体に対する、第2の案内装置に連結される第2のマストのマスト分割体の移動を防止する。
【0027】
案内システムは、第1の案内装置と第2の案内装置とが互いから連結解除される連結解除状態をさらに有する。連結解除状態において、案内システムは、第2のマストのマスト分割体と第1のマストのマスト分割体との互いに対する移動を好ましくは案内しない。連結解除状態において、第2のマストのマスト分割体と第1のマストのマスト分割体とは互いに対して移動できるが、これらの移動は好ましくは案内システムによって案内されない。
【0028】
本発明によるクレーンはマスト分割体装着装置をさらに備える。マスト分割体装着装置は、クレーンの組立の間、案内システムが連結状態にあるときに、案内システムに連結される第2のマストの少なくともマスト分割体を、第1のマストの少なくともマスト分割体に対して鉛直方向上向きに移動させるように構成される。マスト分割体装着装置は、第2のマストの最も下のマスト分割体と係合するように任意選択で構成される。
【0029】
本発明によるクレーンはマスト分割体係止装置をさらに備える。マスト分割体係止装置は、案内システムが連結状態にあるとき、第2のマストの少なくともマスト分割体を、第1のマストの少なくともマスト分割体に対する固定位置で係止するように構成される。
【0030】
本発明によるクレーンは、案内システムが連結解除状態にあるとき、第1のマストと第2のマストとを互いから離すように枢動させるように構成されるマスト枢動アクチュエータをさらに備える。
【0031】
本発明によるクレーンは、クレーンが動作させられる現場において、効率的で迅速な組立および分解を可能にする。この現場における比較的小さい領域は、本発明によるクレーンを組立および分解するのに十分である。
【0032】
これは、主に第2のマストが鉛直方向において組み立てることができるという事実による。組立および分解は第2のマストの最も低い部分から行われ、これは相当の高さにおける作業を回避する。これは実用的であり、組立および分解の間に大型の補助クレーンを使用する必要性を排除する。
【0033】
クレーンは、第2のマストが完全または部分的に組み立てられた後、後続のマスト分割体を追加することで、第1のマストをその長手方向において延ばすことも許容する。第1のマストのこの長さの延長は、第1のマストが鉛直方向に配置されている間に実行され得る。第1のマストの長さの延長も第1のマストの最も下の部分から行われ、そのため、第1のマストの長さの延長の間、相当の高さにおける作業が回避される。
【0034】
可能な実施形態では、案内システムは少なくとも1つの案内レールを備える。この案内レールは、第1のマストおよび第2のマストの少なくとも一方の少なくとも1つのマスト分割体の外面に搭載され、搭載されるマスト分割体の長手方向において延びる。任意選択で、第1のマストと第2のマストとの両方の少なくとも1つのマスト分割体に案内レールが設けられる。
【0035】
可能な実施形態では、隣接するマスト分割体の案内レールが、個々の案内レールがそれぞれのマストの長手方向において互いと並べられる連続した組み合わせられた案内レールを一緒に形成するような方式で、第1のマストの複数の隣接するマスト分割体および/または第2のマストの複数の隣接するマスト分割体に案内レールが設けられる。
【0036】
可能な実施形態では、案内システムは、例えば案内従動車輪といった案内従動子を備える。案内システムの連結状態において、案内従動子は、例えば、第1のマストまたは第2のマストの外面に係合し、第2のマスト分割体が第1のマストに対して移動させられるとき、案内従動子はこの外面にわたって走行する。代替または追加で、案内システムの連結状態において、案内従動子は、第2のマストのマスト分割体に装着される案内レール内にまたは案内レールに配置され、その案内レールはそれぞれのマスト分割体の長手方向において延びる。代替または追加で、案内システムの連結状態において、案内従動子は、第1のマストのマスト分割体に装着される案内レール内にまたは案内レールに配置され、その案内レールはそれぞれのマスト分割体の長手方向において延びる。
【0037】
任意選択で、この実施形態では、案内従動子の形および案内レールの形、または/ならびに、案内従動子によって係合させられるマストの外面は、第1のマストに対する第2のマストのマスト分割体の移動が、マスト分割体の長手方向を除くすべての方向において防止されるようになる。
【0038】
任意選択で、案内システムは複数の案内従動子を備える。案内従動子は案内車輪であるかまたは案内車輪を備え、案内車輪は、案内システムの連結状態において、案内レール内にまたは案内レールに配置される。案内レールは、例えば、能動位置と受動位置とを有する移動可能側壁を備える。側壁は、案内システムが連結状態にあるときに能動位置にある。能動位置において、移動可能側壁は、マスト分割体の長手方向を除くすべての方向において、第1のマストに対する第2のマストのマスト分割体の移動を防止する。非能動位置において、移動可能側壁は、能動位置にあるときに防止していた第2のマストのマスト分割体の移動をもはや防止しない。移動可能側壁の非能動位置は、案内システムを連結状態から連結解除状態にすることを許容する。
【0039】
可能な実施形態では、第1のマストは後マストであり、第2のマストはメインブームである。この実施形態では、任意選択で、少なくとも第2のマストに、荷重を巻き上げるように構成される少なくとも1つの巻上装置が設けられる。任意選択で、第1のマストと第2のマストとの両方に、巻上装置または複数の巻上装置が設けられる。
【0040】
代替の実施形態では、第1のマストはメインブームであり、第2のマストは後マストである。この代替の実施形態では、任意選択で、少なくとも第1のマストに、荷重を巻き上げるように構成される少なくとも1つの巻上装置が設けられる。任意選択で、第1のマストと第2のマストとの両方に、巻上装置または複数の巻上装置が設けられる。
【0041】
可能な実施形態では、マスト分割体装着装置は、クレーンの組立の間、第2のマストの少なくとも1つのマスト分割体を鉛直方向上向きに押すように構成される液圧ジャッキを備える。
【0042】
代替または追加で、マスト分割体装着装置はケーブルを備え、そのケーブルは、クレーンの組立の間、第2のマストの少なくとも1つのマスト分割体を鉛直方向上向きに引っ張るように構成される。任意選択で、このケーブルは、組み立てられたクレーンにおいて、第1のマストと第2のマストとの間に支線を形成する。
【0043】
可能な実施形態では、マスト分割体装着装置は、第1のマストの長手方向の軸と平行に移動可能である搬送体を備える。搬送体は、マスト分割体がクレーン基部から鉛直方向のある距離における第1の位置にあるとき、第2のマストのマスト分割体と係合するように、第1の位置から、第1の位置と異なるクレーン基部からの距離における第2の位置へのマスト分割体の移転の間に、そのマスト分割体を保持するように、および、マスト分割体が第2の位置において固定された後にマスト分割体を解放するように構成される。
【0044】
任意選択で、搬送体は、第2のマストの最も下のマスト分割体と係合するように構成される。
【0045】
可能な実施形態では、マスト分割体装着装置は、第2のマストの長手方向の軸と平行に移動可能である搬送体を備える。この実施形態では、搬送体は、マスト分割体がクレーン基部から鉛直方向のある距離における第1の位置にあるとき、第1のマストのマスト分割体と係合するように、第1の位置から、第1の位置と異なるクレーン基部からの距離における第2の位置へのマスト分割体の移転の間に、そのマスト分割体を保持するように、および、マスト分割体が第2の位置において固定された後にマスト分割体を解放するように構成される。
【0046】
任意選択で、搬送体は、第1のマストの最も下のマスト分割体と係合するように構成される。
【0047】
可能な実施形態では、マスト分割体装着装置は、クレーンの組立の間、案内システムが連結状態にあるときに、案内システムに連結される第1のマストの少なくともマスト分割体を、第2のマストの少なくともマスト分割体に対して鉛直方向上向きに移動させるようにさらに構成される。これは、第2のマストの少なくとも一部が組み立てられた後、第1のマストの長さを延ばすことを許容する。
【0048】
可能な実施形態では、マスト枢動アクチュエータは押し外し/保持装置を備える。押し外し/保持装置は作動状態と非作動状態とを有する。作動状態において、押し外し/保持装置は第1のマストと第2のマストとの両方に連結される。非作動状態において、押し外し/保持装置は第1のマストおよび第2のマストの少なくとも一方から連結解除される。この実施形態は、少なくとも枢動移動の第1の部分の間、案内システムが連結解除状態にされた後に第1のマストに対する第2のマストの制御された枢動を可能にする。
【0049】
可能な実施形態では、マスト枢動アクチュエータは、第1のマストの上マスト分割体または第2のマストの上マスト分割体と、クレーンの頑丈な場所またはクレーンの外部の頑丈な場所との間に連結部を備える。この連結部は、例えばケーブルまたはロッドである。クレーンの頑丈な場所は、例えば、クレーンのバラストまたはアウトリガである。クレーンの外部の頑丈な場所は、例えば、クレーンの外部の重い物体または岩肌である。
【0050】
第1の変形において、連結部は、変化させることができる長さを有する。連結部の長さを短縮することで、第1のマストは第2のマストから離れるように枢動する、または、第2のマストは第1のマストから離れるように枢動する。
【0051】
第2の変形では、頑丈な場所は、それが連結部を介して連結される上マスト分割体に対して移動可能であり得る。頑丈な場所を第1のマストおよび/または第2のマストに対して移動させることで、第1のマストは第2のマストから離れるように枢動するようにさせられ得る、または、第2のマストは第1のマストから離れるように枢動するようにさせられ得る。
【0052】
第3の変形では、連結部の両方の長さは変化させることができ、頑丈な場所は、それが連結部を介して連結される上マスト分割体に対して移動可能である。
【0053】
可能な実施形態では、本発明によるクレーンのメインブームの長さは、例えば80メートルから180メートルの間、任意選択で100メートルから150メートルの間といった、例として60メートルから200メートルの間である。
【0054】
可能な実施形態では、本発明によるクレーンの後マストの長さは、例えば50メートルから120メートルの間、任意選択で60メートルから100メートルの間といった、例として30メートルから150メートルの間である。
【0055】
可能な実施形態では、クレーンのメインブームの長さは120メートルから180メートルの間であり、後マストの長さは30メートルから90メートルの間である。任意選択でこの実施形態では、クレーンのメインブームの長さは150メートルであり、後マストの長さは60メートルである。
【0056】
可能な実施形態では、メインブームは後マストより長い。代替の実施形態では、後マストはメインブームより長い。
【0057】
可能な実施形態では、第1のマスト固定装置は、バラストと、バラストを第1のマストに解放可能に連結する少なくとも1つの連結要素とを備える。連結要素は、例えばケーブル、管、または液圧シリンダであり得る。複数の連結要素が存在する場合、ケーブル、管、および/または液圧シリンダの組み合わせが使用され得る。
【0058】
クレーンが完全に組み立てられた後にクレーンが動作させられるとき、第1のマスト固定装置はクレーンの残りの部分から全体で連結解除され得る。代替で、第1のマスト固定装置の少なくとも一部分はクレーンの残りの部分に連結されたままである。例えば、第1の固定装置のバラストは、動作の間、クレーンのバラストとして使用されてもよい。
【0059】
可能な実施形態では、第1のマスト固定装置は、第2のマストを鉛直方向の位置においてクレーン基部に対して解放可能に固定するようにさらに構成される。これは、第2のマストが完全または部分的に組み立てられた後に第1のマストの長さを延ばすことが望ましいとき、特に有利である。
【0060】
可能な実施形態では、クレーンは、第1のマストを鉛直方向の位置においてクレーン基部に対して解放可能に固定するように構成される第2のマスト固定装置をさらに備える。
【0061】
可能な実施形態では、本発明によるクレーンには、強風の条件においてクレーンを安定化させるために係留ケーブルが設けられる。これらの係留ケーブルは、第1のマストの最も上のマスト分割体および/もしくは第2のマストの最も上のマスト分割体に、クレーンの他の1つまたは複数の十分に頑丈な場所に、ならびに/または、クレーンの外部の1つまたは複数の十分に頑丈な場所に、任意選択で連結される。
【0062】
本発明はクレーンを組み立てるための方法にさらに関し、そのクレーンは、本発明によるクレーンである。
【0063】
本発明によるこの方法は、以下のステップ、すなわち、
- 第1のマストを、クレーン基部における第1の枢動部に連結し、続いて、第1のマスト固定装置によって、鉛直方向の位置において第1のマストをクレーン基部に対して固定するステップと、
- 第2の案内装置の少なくとも一部が設けられる第2のマストの上マスト分割体を、クレーン基部から鉛直方向のある距離にある第1の位置において、第1のマストに隣接して第1のマストの外側に配置し、第2の案内装置の少なくとも一部を、第1のマストにおける第1の案内装置に連結し、それと共に案内システムを連結状態にするステップと、
- マスト分割体装着装置によって第2のマストの上マスト分割体を鉛直方向上向きに移動させ、この移動は案内システムによって案内され、続いて、クレーン基部から第1の位置より大きい鉛直方向の距離にある第2の位置において、マスト分割体係止装置によって、第2のマストの上マスト分割体を第1のマストに対して固定するステップと、
- 第2のマストを構築するために、第2のマストの第1の中間マスト分割体を第2のマストの上マスト分割体の下方端に固定するステップと、
- 第2のマストの第1の中間マスト分割体をクレーン基部における第2の枢動部に連結するステップと、
- 案内システムを連結解除状態にするステップと、
- マスト枢動アクチュエータによって、第2のマストを第1のマストから離すように枢動させるステップと、
- 第1のマスト固定装置によって、クレーン基部に対する第1のマストの固定を解放するステップと
を含む。
【0064】
本発明による方法では、初めに、第1のマストはクレーン基部における第1の枢動部に連結される。このときの第1のマストは、その完全な最終的な長さへと組み立てられるか、または、完全な最終的な長さより短いかのいずれかであり得る。完全な最終的な長さより短い場合、第1のマストは後で長さが延ばされることになる。
【0065】
第1のマストは、第1の枢動部に連結された後、第1のマスト固定装置によって、鉛直方向の位置においてクレーン基部に対して固定される。このステップは、第1のマストを鉛直方向の位置にすることを含み得る。例として、第1のマストが例えば地面において水平方向で組み立てられる場合、第1のマストは、例えば補助クレーンによって、水平方向の位置から鉛直方向の位置へとさせられる。
【0066】
「鉛直方向」は、水平方向に対して90°で延びることを意味し、鉛直方向からの小さな不測の逸脱および/または小さな意図的でない逸脱を含む。概して、純粋な鉛直方向からの逸脱は、約5°より大きくなることはない。
【0067】
次に、第2の案内装置の少なくとも一部が設けられる第2のマストの上マスト分割体が、第1の位置において、第1のマストに隣接して第1のマストの外側に配置される。この第1の位置は、クレーン基部から鉛直方向のある距離にある。第2のマストの上マスト分割体は、組み立てられたクレーンにおいて第2のマストの上部分を形成することになる。任意選択で、上マスト分割体は、第1の位置に配置されるとき、滑車および/またはケーブルが設けられている。上マスト分割体は、上方端と、下方端と、長手方向の軸とを有する。
【0068】
次に、第2の案内装置の少なくとも一部が第1のマストにおける第1の案内装置に連結され、それと共に案内システムを連結状態にする。
【0069】
次に、第2のマストの上マスト分割体はマスト分割体装着装置によって鉛直方向上向きに移動させられる。この移動は案内システムによって案内される。次に、第2のマストの上マスト分割体は、第2の位置において第1のマストに対して固定される。固定はマスト分割体係止装置によって実行される。第2の位置は、クレーン基部から第1の位置より大きい鉛直方向の距離にある。
【0070】
次に、第2のマストの第1の中間マスト分割体が第2のマストの上マスト分割体の下方端に固定される。第2のマストは、完全に組み立てられたとき、上マスト分割体と、少なくとも1つの中間マスト分割体とを備える。概して、完全に組み立てられた第2のマストは、上マスト分割体と、複数の中間マスト分割体とを備えることになる。中間マスト分割体はすべて同じ長さを有し得るが、代替で、異なる長さの中間マスト分割体が第2のマストを組み立てるために使用されてもよい。これは、例えば、上マスト分割体、および/または、上マスト分割体に固定される機器(滑車およびケーブルなど)が比較的重いとき、有利であり得る。その場合、比較的短い中間マスト分割体が上マスト分割体のすぐ下で使用されることが望ましい可能性がある。任意選択で、同じく比較的短い上マスト分割体がこの場合に使用される。
【0071】
上マスト分割体は、上マスト分割体のすぐ下の中間マスト分割体と同じ長さまたは異なる長さを有し得る。
【0072】
第1の中間マスト分割体が第2のマストの上マスト分割体の下方端に固定された後、第2のマストの第1の中間マスト分割体はクレーン基部における第2の枢動部に連結される。この連結は直接的または間接的のいずれかである。例えば、第2のマストの所望の長さを得るために、1つまたは複数の後続の中間マスト分割体が第2のマストの第1の中間マスト分割体に連結されるとき、第2の枢動部への第2のマストの第1の中間マスト分割体の連結は、この後続のマスト分割体またはこれらの後続のマスト分割体を介される。
【0073】
第2の枢動部への第2のマストの第1の中間マスト分割体の直接的または間接的のいずれかの連結の後、案内システムは連結解除状態にさせられる。連結解除状態において、第2のマストのマスト分割体は、第2のマストの長手方向の軸と平行以外の方向において、第1のマストに対して移動できる。例えば、第2のマストのマスト分割体は第1のマストから離れるように移動できる。
【0074】
次に、第2のマストは、マスト枢動アクチュエータによって、第1のマストから離すように枢動させられる。
【0075】
続いて、第1のマスト固定装置によるクレーン基部に対する第1のマストの固定が解放される。そのため、第1のマストは、水平方向の軸の周りでクレーン基部に対して再び枢動できる。任意選択で、この固定の解放の後、第1のマストは鉛直方向の軸の周りでも枢動できる。
【0076】
本発明による方法の可能な実施形態では、第2のマストの第1の中間マスト分割体を第2のマストの上マスト分割体の下方端に固定するステップの後で、第1の中間マスト分割体をクレーン基部における第2の枢動部に連結するステップの前に、以下の追加のステップ、すなわち、
- 第1のマストへの第2のマストの上マスト分割体の固定を解放し、第2のマストの上マスト分割体および第1の中間マスト分割体を鉛直方向上向きに一緒に移動させ、その移動は案内システムによって案内され、それによって、第2のマストの上マスト分割体を、クレーン基部から第2の位置より大きい鉛直方向の距離にある第3の位置へと持って行くステップと、
- マスト分割体係止装置によって、第2のマストの上マスト分割体および第1の中間マスト分割を第1のマストに対して固定するステップと、
- 第2のマストをさらに構築するために、第2のマストの後続の中間マスト分割体を第2のマストの第1の中間マスト分割体の下方端に連結するステップと
が実施される。
【0077】
この実施形態では、第2のマストの第1の中間マスト分割体をクレーン基部における第2の枢動部に連結するステップは、後続の中間マスト分割体をクレーン基部における第2の枢動部に連結することで実現される。
【0078】
この実施形態による方法によれば、複数の中間マスト分割体を収容する第2のマストが組み立てられる。
【0079】
任意選択で、この実施形態は、以下の追加のステップ、すなわち、
- 第1のマストへの第2のマストの上マスト分割体、第1の中間マスト分割体、および後続の中間マスト分割体の固定を解放し、第2のマストの上マスト分割体、第1の中間マスト分割体、および後続の中間マスト分割体を鉛直方向上向きに一緒に移動させ、その移動は案内システムによって案内され、それによって、第2のマストの上マスト分割体を、クレーン基部から第3の位置より大きい鉛直方向の距離にある第4の位置へと持って行くステップと、
- マスト分割体係止装置によって、第2のマストの上マスト分割体、第1の中間マスト分割体、および後続の中間マスト分割体を第1のマストに対して固定するステップと、
- 第2のマストをさらに構築するために、第2のマストのさらなる後続の中間マスト分割体を第2のマストの後続の中間マスト分割体の下方端に連結するステップと
を含む。
【0080】
これらのステップを繰り返し、上マスト分割体をクレーン基部からさらに離れた位置で毎回固定することによって、第2のマストは所望の長さへと組み立てることができる。
【0081】
本発明による方法の可能な実施形態では、第1の中間マスト分割体をクレーン基部における第2の枢動部に連結するステップは、
- 連結マスト分割体を第1の中間マスト分割体の下方端と第2の枢動部との間に配置することと、
- 連結マスト分割体の第1の端を第2のマストの第1の中間マスト分割体の下方端に連結し、連結マスト分割体の第2の端を第2の枢動部に連結することと
を含む。
【0082】
第2のマストの最も下のマスト分割体が後続の中間マスト分割体である場合、連結マスト分割体の第1の端は、第2のマストのこの後続の中間マスト分割体の下方端に連結される。次に、第1の中間マスト分割体は、この最も下の後続の中間マスト分割体を介して(および、任意選択で、存在する場合には他の後続のマスト分割体を介して)、連結マスト分割体の第1の端に連結される。
【0083】
任意選択で、連結マスト分割体が使用される実施形態では、連結マスト分割体は、連結マスト分割体の第2の端が第2の枢動部に連結された後、鉛直方向に対してある角度で延びる長手方向の軸を有する。連結マスト分割体の第1の端は、第3の枢動部を介して第1の中間マスト分割体の下方端に連結される。第1の中間マスト分割体と第2のマストの上マスト分割体とは、連結マスト分割体と同軸で延びることになることを行うために、第3の枢動部の周りで一緒に枢動させられる。この枢動の後、第1の中間マスト分割体は連結マスト分割体に対して回転において固定され、そのため、第1の中間マスト分割体は第3の枢動部の周りでもはや回転できない。
【0084】
第2のマストの最も下のマスト分割体が後続の中間マスト分割体である場合、連結マスト分割体の第1の端は、第3の枢動部を介して、第2のマストのこの後続の中間マスト分割体の下方端に連結される。次に、第1の中間マスト分割体は、この最も下の後続の中間マスト分割体を介して(および、任意選択で、存在する場合には他の後続のマスト分割体を介して)、連結マスト分割体に回転可能に固定される。
【0085】
本発明による方法の可能な実施形態では、第2のマストの上マスト分割体はケーブルによって上向きに引っ張られる。1つまたは複数の中間マスト分割体が第2のマストの上マスト分割体に連結される場合、第2のマストの上マスト分割体および1つまたは複数の中間マスト分割体は、好ましくはケーブルによって上向きに一緒に引っ張られる。この実施形態は、クレーンの比較的素早い組立を可能にする。
【0086】
任意選択で、マスト枢動アクチュエータによって、第2のマストを第1のマストから離すように枢動させた後、このケーブルは、第1のマストと第2のマストとの間に支線を形成する。
【0087】
本発明による方法の可能な実施形態では、第2のマストの上マスト分割体は液圧ジャッキによって上向きに押される。1つまたは複数の中間マスト分割体が第2のマストの上マスト分割体に連結される場合、第2のマストの上マスト分割体および1つまたは複数の中間マスト分割体は、好ましくは液圧ジャッキによって上向きに一緒に押される。任意選択で、複数の液圧ジャッキが適用される。
【0088】
可能な実施形態では、第2のマストの上マスト分割体は、1つまたは複数のケーブルとの組み合わせで、少なくとも1つの液圧ジャッキによって上向きに移動させられる。1つまたは複数の中間マスト分割体が第2のマストの上マスト分割体に連結される場合、第2のマストの上マスト分割体および1つまたは複数の中間マスト分割体は、好ましくは、1つまたは複数のケーブルとの組み合わせで、少なくとも1つの液圧ジャッキによって上向きに一緒に移動させられる。
【0089】
本発明による方法の可能な実施形態では、第2のマストは、以下のステップ、すなわち、
- 第1のマストと第2のマストとの両方に連結されるマスト枢動アクチュエータによって、第2のマストを第1のマストから第1の開角度にわたって離すように枢動させるステップと、
- マスト枢動アクチュエータと、第1のマストおよび/または第2のマストとの間の連結を解放するステップと、
- 重力の影響の下で、第2のマストを第1のマストからさらなる第2の開角度にわたって離すように枢動させるステップと
によって、第1のマストから離すように枢動させられる。
【0090】
この実施形態は、制御された手法で第2のマストを第1のマストから離すように枢動させることができる。
【0091】
本発明による方法の可能な実施形態では、案内システムを連結解除状態にする前に、以下の追加のステップ、すなわち、
- 第2のマストを鉛直方向の位置においてクレーン基部に対して固定するステップと、
- 第1のマストの第1のマスト分割体の下方端を第1の枢動部から連結解除するステップと(任意選択で、これは、クレーン基部に対する第1のマストの固定を解放することを伴う)、
- マスト分割体装着装置によって第1のマストの第1のマスト分割体を鉛直方向上向きに移動させ、この移動は案内システムによって案内され、続いて、マスト分割体係止装置によって、第1のマストの第1のマスト分割体を第2のマストに対して固定するステップと、
- 第1のマストをさらに構築するために、第1のマストの第1の中間マスト分割体を第1のマストの第1のマスト分割体の下方端に固定するステップと、
- 第1のマストの第1の中間マスト分割体をクレーン基部における第1の枢動部に連結するステップと
が実施される。
【0092】
この実施形態は、第2のマストが完全または部分的に組み立てられた後に第1のマストの長さを延ばすことを可能にする。
【0093】
任意選択で、この実施形態では、1つまたは複数の後続の中間マスト分割体が第1のマストに続いて加えられる。各々の後続の中間マスト分割体は、第1のマストの最も下の(最も下となるまでの)中間マスト分割体の下方端に連結される。この方式で、第1のマストはその所望の長さまで延ばされ得る。
【0094】
任意選択で、この実施形態では、第1のマストはその所望の長さを得た後、鉛直方向におけるクレーン基部に対する第2のマストの固定は解放され、鉛直方向におけるクレーン基部に対する第1のマストの固定は再び確立されてもよい。次に、第2のマストの最も下の中間マスト分割体の下方端は、第2の枢動部から連結解除され得る。次に、第2のマストは、マスト分割体装着装置によって鉛直方向上向きに移動させられ得る。この移動はここでも案内システムによって案内される。次に、第2のマストは、マスト分割体係止装置によって第1のマストに対して固定され、さらなる後続の中間マスト分割体が、第2のマストを所望の長さへと構築するために、後続の中間マスト分割体の追加に関連して先に記載されたのと同じ方式で追加され得る。
【0095】
本発明による方法の可能な実施形態では、クレーンの組立の少なくとも一部の間、第2のマストは第1のマストより長い。
【0096】
本発明による方法の可能な実施形態では、上マスト分割体および/または中間マスト分割体は、クレーンが組み立てられて動作させられる現場において、および/または、この現場の近くで組み立てられる。
【0097】
本発明は、例えば、本明細書において記載されているようなクレーンおよび/もしくは方法に関連して、または、別のクレーンおよび/または方法に関連して使用される、クレーンマスト分割体を組み立てる方法であって、そのマスト分割体は、例えば、上マスト分割体または中間マスト分割体を形成するためのものであり、以下のステップ、すなわち、
- 第1の隅管を鉛直方向の位置において固定するステップと、
- 第2の隅管を、鉛直方向の位置において、第1の隅管から第1の水平方向のある距離において固定するステップであって、第1の水平方向のある距離は、第1の方向における、組み立てられるマスト分割体の幅に対応する、ステップと、
- 第3の隅管を、鉛直方向の位置において、第2の隅管から第2の水平方向のある距離において固定するステップであって、第2の水平方向のある距離は、第1の方向に対して垂直である第2の方向における、組み立てられるマスト分割体の幅に対応する、ステップと、
- 第4の隅管を、鉛直方向の位置において、第3の隅管から第1の方向における、第1の水平方向のある距離に対応する水平方向のある距離に、および、第1の隅管から第2の方向における、第2の水平方向のある距離に対応する水平方向のある距離に、固定するステップと、
- 第1の隅管と第2の隅管との間に少なくとも1つの連結管を配置することで、第1の隅管と第2の隅管とを互いに連結するステップと、
- 第2の隅管と第3の隅管との間に少なくとも1つの連結管を配置することで、第2の隅管と第3の隅管とを互いに連結するステップと、
- 第3の隅管と第4の隅管との間に少なくとも1つの連結管を配置することで、第3の隅管と第4の隅管とを互いに連結するステップと、
- 第4の隅管と第1の隅管との間に少なくとも1つの連結管を配置することで、第4の隅管と第1の隅管とを互いに連結するステップと
を含む方法にも関する。
【0098】
実施形態では、クレーンマスト分割体組立方法は、前記第1の方向および前記第2の方向における、組み立てられるマスト分割体の前記幅に対応する場所において、第1、第2、第3、および第4の隅管固定装置が設けられる基礎フレームを有する隅管支持構造の使用を含み、各々の隅管固定装置は、基礎フレームにおいて鉛直方向の位置で位置決めされる隅管の下方端を解放可能に固定するように適合または構成され、方法は、前記第1から第4の隅管の各々の下方端がそれぞれの前記第1から第4の隅管固定装置によって固定されるように、前記第1から第4の隅管の各々を隅管支持構造において鉛直方向で配置するステップを含み、マスト分割体を完成させるために前記連結管を配置するステップをさらに含み、隅管固定装置を解放し、例えば移動式クレーンを使用して、完成したマスト分割体を隅管支持構造から取り外すステップをさらに含む。
【0099】
実施形態では、隅管支持構造の基礎フレームは、異なる断面のクレーンマスト分割体においての使用を可能にするために、その基礎フレームにおける隅管固定装置の様々な場所を可能にするように具現化される。
【0100】
実施形態では、各々の隅管固定装置は、例えば、隅管の下方端に設けられた係止孔へと挿入可能な係止ピンの例のような液圧で作動可能な係止部材といった、係止部材と係止部材アクチュエータとを備える。
【0101】
実施形態では、各々の隅管固定装置は、隅管の下方端へと入るように構成される差込部材を備える。
【0102】
実施形態では、隅管の各々は、その長さに沿って、例えば1つまたは複数の孔が設けられた板といった、連結管の端を固定するように構成される留め付け部材を有するようにあらかじめ製作され、例えば、連結管は、その軸方向の端において、ピンまたはボルトを用いて隅管にそれぞれの端を固定するように許容する孔が設けられる1つまたは複数の板を有する。
【0103】
好ましくは、連結管の一部は2つの隅管の間で対角線上に配置され、実施形態では、連結管の一部は2つの隅管の間で水平方向に配置される。
【0104】
例えばクレーンの上マスト分割体または中間マスト分割体を形成するクレーンマスト分割体を組み立てるこの方法の変形では、第1の隅管と第2の隅管とは、複数の連結管を第1の隅管と第2の隅管との間に配置することで互いに連結される。
【0105】
上マスト分割体または中間マスト分割体を形成するマスト分割体を組み立てるこの方法の変形では、第2の隅管と第3の隅管とは、複数の連結管を第2の隅管と第3の隅管との間に配置することで互いに連結される。
【0106】
上マスト分割体または中間マスト分割体を形成するマスト分割体を組み立てるこの方法の変形では、第3の隅管と第4の隅管とは、複数の連結管を第3の隅管と第4の隅管との間に配置することで互いに連結される。
【0107】
上マスト分割体または中間マスト分割体を形成するマスト分割体を組み立てるこの方法の変形では、第4の隅管と第1の隅管とは、複数の連結管を第4の隅管と第1の隅管との間に配置することで互いに連結される。
【0108】
上マスト分割体または中間マスト分割体を形成するマスト分割体を組み立てるこの方法の変形では、第1の隅管と第3の隅管とは、少なくとも1つであって任意選択で複数の連結管を第1の隅管と第3の隅管との間に配置することで互いに連結される。
【0109】
例えば上マスト分割体または中間マスト分割体を形成するマスト分割体を組み立てるこの方法のさらなる変形では、第1の隅管と第4の隅管とは、言及された隅管支持構造を好ましくは用いて、鉛直方向の位置において、望まれる相互の水平方向の距離において固定される。次に、第1の隅管と第2の隅管との間のすべての連結管は、第1の隅管と第2の隅管との間に配置される。続いて、第2の隅管と第3の隅管との間のすべての連結管は、第2の隅管と第3の隅管との間に配置される。続いて、第3の隅管と第4の隅管との間のすべての連結管は、第3の隅管と第4の隅管との間に配置される。次に、第4の隅管と第1の隅管との間のすべての連結管は、第4の隅管と第1の隅管との間に配置される。
【0110】
例えば上マスト分割体または中間マスト分割体を形成するクレーンマスト分割体を組み立てるこの方法のさらなる変形では、初めに、第1の隅管と第2の隅管とは、第1の水平方向における第1の隅管からの第1の水平方向のある距離における第2の隅管で、鉛直方向の位置において固定される。次に、第1の隅管と第2の隅管との間のすべての連結管は、第1の隅管と第2の隅管との間に配置される。次に、第3の隅管は、第1の水平方向に対して垂直の方向において第2の隅管から第2の水平方向のある距離で、鉛直方向の位置において固定される。続いて、第2の隅管と第3の隅管との間のすべての連結管は、第2の隅管と第3の隅管との間に配置される。次に、第4の隅管は、第1の水平方向において第3の隅管から第1の水平方向のある距離において、および、第1の隅管から第1の方向に対して垂直な第2の水平方向のある距離において、鉛直方向の位置において固定される。続いて、第3の隅管と第4の隅管との間のすべての連結管は、第3の隅管と第4の隅管との間に配置される。次に、第4の隅管と第1の隅管との間のすべての連結管は、第4の隅管と第1の隅管との間に配置される。
【0111】
任意選択で、隅管は、八角形、円形、または長方形の断面形を有する。
【0112】
組立方法および言及した隅管支持構造は、例えば、三角形または六角形の断面のものであるクレーンマスト分割体について、正方形または長方形でない断面を有するクレーンマスト分割体の組立において構成および使用されてもよいことは、理解されるものである。それらの実施形態では、隅管の数は、例えば3つもしくは6つとでき、または、なおも別の実施形態では、8つなどとできる。
【0113】
任意選択で、隅管のうちの少なくとも1つの断面の大きさは、マスト分割体の別の隅管の断面の大きさと異なる。例えば、第1の隅管と第2の隅管とは同じ第1の断面の大きさを有してもよく、第3の隅管と第4の隅管とは同じ第2の断面の大きさを有してもよく、第1の隅管および第2の隅管の第1の断面の大きさは第3の隅管および第4の隅管の第2の断面の大きさと異なる。
【0114】
この方法による1つまたは複数のマスト分割体を組み立てた後、このようにして組み立てられたマスト分割体は、本発明によるクレーンにおいて、および/または、本発明によるクレーンを組み立てるための方法において、上マスト分割体または中間マスト分割体として使用できる。しかしながら、マスト分割体を組み立てるためのこの方法は、異なる種類のクレーンのために、または、クレーンを組み立てるための異なる方法における使用のために、マスト分割体を組み立てるために使用されてもよい。
【0115】
本発明は、クレーンを分解するための方法にさらに関する。この方法によって分解されるクレーンは、本発明によるクレーンである。
【0116】
本発明によるこのさらなる方法は、以下のステップ、すなわち、
- 第1のマスト固定装置によって、第1のマストを鉛直方向の位置においてクレーン基部に対して固定するステップと、
- 第2のマストを第1のマストに向けて枢動するステップと、
- 案内システムを連結状態にし、第2のマストの上マスト分割体がクレーン基部から鉛直方向のある距離にある第2の位置にある状態で、第2のマストを鉛直方向において第1のマストに対して固定するステップと、
- 第2のマストの第1の中間マスト分割体をクレーン基部における第2の枢動部から連結解除するステップと、
- 第2のマストの第1の中間マスト分割体を第2のマストの上マスト分割体の下方端から解放し、第1の中間マスト分割体を取り外すステップと、
- 第1のマストに対する第2のマストの鉛直方向での固定を解放し、マスト分割体装着装置によって、第2のマストの上マスト分割体を第1の位置へと鉛直方向下向きに移動させるステップであって、第1の位置は、クレーン基部から第2の位置より小さい鉛直方向の距離にあり、この移動は案内システムによって案内される、ステップと、
- 案内システムを連結解除状態にするステップと、
- 第2のマストの上マスト分割体を取り外すステップと、
- クレーン基部に対する第1のマストの固定を解放するステップと、
- 第1のマストをクレーン基部における第1の枢動部から連結解除し、第1のマストを取り外すステップと
を含む。
【0117】
本発明は、本発明の例示の実施形態が非限定的な手法で示されている図面を参照して、以下においてより詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0118】
図1】本発明によるクレーンの第1の実施形態の図である。
図2】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図3】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図4A】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図4B】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図5】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図6】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図7】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図8】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図9】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図10】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図11】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図12】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図13】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図14】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図15】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図16A】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図16B】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図17】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図18】本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の実施形態の連続のステップの図である。
図19】本発明のさらなる実施形態を示す図である。
図20】本発明のさらなる実施形態を示す図である。
図21A】本発明によるマスト分割体を組み立てる可能な方法の例の図である。
図21B】本発明によるマスト分割体を組み立てる可能な方法の例の図である。
図21C】本発明によるマスト分割体を組み立てる可能な方法の例の図である。
図21D】本発明によるマスト分割体を組み立てる可能な方法の例の図である。
図21E】本発明によるマスト分割体を組み立てる可能な方法の例の図である。
図22A】隅管支持構造が使用される本発明によるクレーンマスト分割体の組立の図である。
図22B】隅管支持構造が使用される本発明によるクレーンマスト分割体の組立の図である。
図22C】隅管支持構造が使用される本発明によるクレーンマスト分割体の組立の図である。
図22D】隅管支持構造が使用される本発明によるクレーンマスト分割体の組立の図である。
図22E】隅管支持構造が使用される本発明によるクレーンマスト分割体の組立の図である。
図22F】隅管支持構造が使用される本発明によるクレーンマスト分割体の組立の図である。
【発明を実施するための形態】
【0119】
図1は、本発明によるクレーン1の第1の実施形態を示す図である。
【0120】
クレーン1は、この実施形態ではクローラクレーンのシャーシであるクレーン基部2を備える。この実施形態におけるクレーン基部2は、2つの無限軌道3と、旋回輪4とを備える。クレーン基部2は作業領域の支持面に配置される。支持面は、例えば、より良好な一貫性のために、固定されていない鋼鉄板が設けられた地面の一部である。
【0121】
クレーン1は第1のマスト10をさらに備える。この実施形態では、第1のマスト10はクレーン1の後マストである。第1のマスト10は、この実施形態では旋回輪4のすぐ上においてクレーン基部2に配置されている第1の枢動部11の周りで枢動可能である。第1の枢動部11は水平方向の枢動軸を有する。第1のマストは複数のマスト分割体15、16、16*を備える。任意選択で、各々のマスト分割体は、作業場所における現場において、例えばピンホール連結部によって互いに連結される別々の管および/またはビームから個別に組み立てられる。第1のマスト10は、第1のマスト10の長さの方向において延びる長手方向の軸を有する。
【0122】
この実施形態では、第1のマスト10は、単一のブームとして形成される格子マストであり、代替で、図面に示されていない実施形態では、第1のマストはA字形またはY字形を有する。
【0123】
クレーン1は第2のマスト30をさらに備える。この実施形態では、第2のマスト30はクレーン1のメインブームである。第2のマスト30は、この実施形態では旋回輪4のすぐ上においてクレーン基部2に配置されている第2の枢動部31の周りで枢動可能である。第2の枢動部31は水平方向の枢動軸を有する。第2のマストは複数のマスト分割体35、36、36*を備える。任意選択で、各々のマスト分割体は、作業場所における現場において、例えばピンホール連結部によって互いに連結される別々の管および/またはビームから個別に組み立てられる。第2のマスト30は、第2のマスト30の長さの方向において延びる長手方向の軸を有する。
【0124】
この実施形態では、第2のマスト30は、単一のブームとして形成される格子マストであり、代替で、図面に示されていない実施形態では、第2のマストはA字形またはY字形を有する。
【0125】
この実施形態では、第1の枢動部11の水平方向の枢動軸は第2の枢動部31の水平方向の枢動軸と平行である。この実施形態では、第1の枢動部11と第2の枢動部31とは互いから離間されている。これは、クレーン基部2の下での局所的な地面の圧力を低減するのを助ける。
【0126】
図1の実施形態では、クレーン1は、クレーン1の組立および/または分解の少なくとも一部の間、第1のマスト10を鉛直方向の位置においてクレーン基部2に対して解放可能に固定するように構成される第1のマスト固定装置50をさらに備える。この実施形態における第1のマスト固定装置50は固定ロッド51を備え、固定ロッド51は、第1のマスト10が鉛直方向の位置へと固定されるとき、第1のマスト10とクレーン基部2との間で延びる。クレーン1の動作の間、固定ロッド51は、第1のマスト10およびクレーン基部2の少なくとも一方から連結解除される。この実施形態では、第1のマスト固定装置50は、クレーン1の組立および/または分解の少なくとも一部の間、第1のマスト10を鉛直方向の位置においてクレーン基部2に対してさらに固定するために使用される第1のバラスト52および第2のバラスト53をさらに備える。第1のバラスト52は、クレーン基部2からある距離に配置され、連結要素54、58を介して第1のマスト10の上部に連結される。連結要素54、58は、例えば、1つまたは複数のケーブル、管、ビーム、および/または液圧シリンダを備え得る。第2のバラスト53は、クレーン基部2に装着され、連結要素55を介して第1のマスト10の上部に連結される。連結要素55は、例えば、1つまたは複数のケーブル、管、ビーム、および/または液圧シリンダを備え得る。第1のバラスト52および/または第2のバラスト53は、クレーン1の動作の間のバラストとしても使用され得る。望まれる場合、第1のバラスト52は、クレーン1の動作の間、クレーン1の組立および/または分解の間と異なる位置に配置され得る。任意選択で、第1のバラスト52は、クレーン1の動作の間、「浮遊バラスト」(つまり、地面の上方の高さに配置される)として使用される。
【0127】
第1のマスト固定装置50は、第1のマスト10を鉛直方向の位置において一時的に固定するように、および、この固定がもはや必要とされないときにこの固定を解放するように、構成されている。
【0128】
クレーンが完全に組み立てられた後にクレーンが動作させられるとき、第1のマスト固定装置50はクレーン1の残りの部分から全体で連結解除され得る。代替で、第1のマスト固定装置50の少なくとも一部分(例えば、第1のバラスト52および/または第2のバラスト53)はクレーン1の残りの部分に連結されたままである。
【0129】
図1のクレーンは案内システム60をさらに備える。案内システム60は、第1のマスト10の外面に連結される第1の案内装置61と、第2のマスト30の外面に連結される第2の案内装置62とを備える。
【0130】
案内システム60は連結状態と連結解除状態とを有する。連結状態では、第1のマスト10の長手方向の軸と第2のマスト30の長手方向の軸とが互いに対して平行に鉛直方向へ両方で延びる。小さな不測の逸脱および/または意図的でない逸脱が起こる可能性がある。連結状態において、第1の案内装置61と第2の案内装置62とは移動可能に互いに連結される。案内システム60は、第2の案内装置62に連結される第2のマスト30の少なくともマスト分割体35、36、および、第1の案内装置61に連結される第1のマスト10の少なくともマスト分割体15、16、16*の鉛直方向における相対移動を案内するように構成されている。そのため、第2のマスト30のマスト分割体35、36、36*が第1のマスト10のマスト分割体15、16、16*に対して鉛直方向上向きまたは下向きに移動させられ、第1のマスト10のマスト分割体15、16、16*が第1の案内装置61に直接的または間接的のいずれかで連結され、第2のマスト30のそれぞれのマスト分割体35、36、36*が第2の案内装置62に直接的または間接的のいずれかで連結される場合、案内システム60が連結状態にあるとき、この移動は案内システム60によって案内される。
【0131】
図1の実施形態では、案内システム60が連結状態にあるとき、案内システム60は、第1のマスト10および第2のマスト30の長手方向以外のすべての方向において、第1の案内装置61に連結される第1のマスト10の少なくともマスト分割体15、16、16*に対する、第2の案内装置62に連結される第2のマスト30のマスト分割体35、36、36*の移動を防止する。
【0132】
案内システム60は、第1の案内装置61と第2の案内装置62とが互いから連結解除される連結解除状態をさらに有する。連結解除状態において、案内システム60は、第2のマスト30のマスト分割体35、36、36*と第1のマスト10のマスト分割体15、16、16*との互いに対する移動を好ましくは案内しない。連結解除状態において、第2のマスト30のマスト分割体35、36、36*と第1のマスト10のマスト分割体15、16、16*とは互いに対して移動できるが、これらの移動は好ましくは案内システム60によって案内されない。
【0133】
図1の実施形態では、案内システム60は複数の案内レール63を備える。案内レール63は、第1のマスト10および第2のマスト30の少なくとも一方の少なくとも1つのマスト分割体15、16、16*、35、36、36*の外面に搭載され、搭載されるマスト分割体の長手方向において延びる。図1の実施形態では、第1のマスト10と第2のマスト30との両方の少なくとも1つのマスト分割体15、16、16*、35、36、36*に案内レールが設けられている。
【0134】
図1の実施形態では、隣接するマスト分割体の案内レール63が、個々の案内レールがそれぞれのマスト10、30の長手方向において互いと並べられる連続した組み合わされた案内レールを一緒に形成するような方式で、第1のマスト10の複数の隣接するマスト分割体15、16、16*および/または第2のマスト30の複数の隣接するマスト分割体35、36、36*に案内レール63が設けられる。
【0135】
図1の実施形態では、クレーン1はマスト分割体装着装置70をさらに備える。マスト分割体装着装置70は、クレーン1の組立の間、案内システム60が連結状態にあるときに、案内システム60に連結される第2のマスト30の少なくともマスト分割体35、36、36*を、第1のマスト10の少なくともマスト分割体15、16、16*に対して鉛直方向上向きに移動させるように構成されている。
【0136】
図1の実施形態では、マスト分割体装着装置70はケーブル71を備え、このケーブル71は、クレーン1の組立の間、第2のマスト30の少なくとも1つのマスト分割体35、36、36*を鉛直方向上向きに引っ張るように任意選択で構成されている。図1の実施形態では、このケーブル71は、組み立てられたクレーン1において、第1のマスト10と第2のマスト30との間に支線を形成している。
【0137】
任意選択で、図1の実施形態では、マスト分割体装着装置70は、クレーン1の組立の間、第2のマスト30の少なくとも1つのマスト分割体35、36、36*を鉛直方向上向きに押すように構成されている液圧ジャッキ76を追加で備える。
【0138】
代替の実施形態では、マスト分割体装着装置70は、ケーブル71の代わりに、クレーン1の組立の間、第2のマスト30の少なくとも1つのマスト分割体35、36、36*を鉛直方向上向きに移動させるように構成される液圧ジャッキを備える。
【0139】
図1の実施形態では、マスト分割体装着装置70は搬送体72を備える。搬送体72は、第1のマスト10の長手方向の軸と平行に移動可能である。搬送体72は、マスト分割体35、36、36*がクレーン基部2から鉛直方向のある距離における第1の位置にあるとき、第2のマスト30のマスト分割体35、36、36*と係合するように、第1の位置から、第1の位置と異なるクレーン基部2からの距離における第2の位置へのマスト分割体35、36、36*の移転の間に、そのマスト分割体35、36、36*を保持するように、および、マスト分割体35、36、36*が第2の位置において固定された後にマスト分割体35、36、36*を解放するように構成されている。この実施形態では、搬送体は、第2のマスト30の最も下のマスト分割体35、36、36*と係合するように構成されている。
【0140】
図1の実施形態では、マスト分割体装着装置70は、クレーンの組立の間、案内システム60が連結状態にあるときに、案内システム60に連結される第1のマスト10の少なくともマスト分割体15、16、16*を、第2のマスト30の少なくともマスト分割体35、36、36*に対して鉛直方向上向きに移動させるようにさらに構成されている。これは、第2のマスト30の少なくとも一部が組み立てられた後、第1のマスト10の長さを延ばすことを許容する。
【0141】
図1の実施形態のクレーン1は、案内システム60が連結状態にあるとき、第2のマスト30の少なくともマスト分割体35、36、36*を、第1のマスト10の少なくともマスト分割体15、16、16*に対する固定位置で係止するように構成されているマスト分割体係止装置75をさらに備える。
【0142】
図1のクレーンはマスト枢動アクチュエータ80をさらに備える。マスト枢動アクチュエータ80は、案内システム60が連結解除状態にあるとき、第1のマスト10と第2のマスト30とを互いから離すように枢動させるように構成されている。
【0143】
図1の実施形態では、マスト枢動アクチュエータ80は押し外し/保持装置81を備える。押し外し/保持装置81は作動状態と非作動状態とを有する。作動状態において、押し外し/保持装置81は第1のマスト10と第2のマスト30との両方に連結される。非作動状態において、押し外し/保持装置81は第1のマスト10および第2のマスト30の少なくとも一方から連結解除される。この実施形態は、少なくとも枢動移動の第1の部分の間、案内システム60が連結解除状態にされた後に第1のマスト10に対する第2のマスト30の制御された枢動を可能にする。
【0144】
図2図18は、本発明によるクレーンを組み立てるための方法の第1の可能な実施形態の連続のステップを示している。
【0145】
図2は、本発明による方法の可能な実施形態における第1のステップを示している。クレーン基部2が地面5に配置されている。クレーン基部2は、2つの無限軌道3(そのうちの1つが図2に示されている)と、旋回輪4とを備えている。
【0146】
第1のマスト10は、クレーン基部2における第1の枢動部11に連結されている。この段階における第1のマスト10は、上マスト分割体15と、第1の後続のマスト分割体16とを備える。この段階において、第1のマスト10は、例えば、実質的に水平方向の位置において延びている。
【0147】
第1の案内装置61は第1のマスト10の外面に連結されている。第1の案内装置61は、上マスト分割体15および第1の後続のマスト分割体16に装着されている案内レール63を備える。案内レール63同士は互いと一直線に延びている。この実施形態では、第1のマスト10の各々のマスト分割体15、16には2つの案内レール63が設けられており、案内レール63は、マスト分割体15、16の長手方向において延び、互いから離間されて配置されている(例えば、図3参照)。
【0148】
この段階において、第1のマスト10は第1のマスト固定手段にも連結される。第1のマスト固定手段は、第1のマスト10とクレーン基部2との間で延びる固定ロッド51(図3参照)を備える。図示した実施形態では、固定ロッド51は、図2のステップでは第1のマスト10にまだ連結されていない。この実施形態では、固定ロッド51は液圧シリンダを備える。この実施形態では、第1のマスト固定装置は第1のバラスト52と第2のバラスト53とをさらに備える。第1のバラスト52は、クレーン基部2からある距離において地面49に配置され、連結要素54、55を介して第1のマスト10の上部に連結される。連結要素54は、例えば、1つまたは複数のケーブル、管、ビーム、および/または液圧シリンダを備え得る。第2のバラスト53は、クレーン基部2に装着され、連結要素55、56、56'を介して第1のマスト10の上部に連結される。連結要素55は、例えば、1つまたは複数のケーブル、管、ビーム、および/または液圧シリンダを備え得る。第1のバラスト52および/または第2のバラスト53は、クレーン1の動作の間のバラストとしても使用され得る。望まれる場合、第1のバラスト52は、クレーン1の動作の間、クレーン1の組立および/または分解の間と異なる位置に配置され得る。
【0149】
図3は、本発明によるクレーン1の組立の可能な実施形態における後続のステップを示している。このステップでは、第1のマスト10は、例えば、補助クレーンによって、および/または、ウインチ(例えば、クレーン1自体のウインチ)によって、クレーン基部2に対して鉛直方向の位置にさせられる。
【0150】
第1のマスト10は、クレーン基部2に対して鉛直方向の位置にさせられた後、第1のマスト固定装置によって、クレーン基部2に対して鉛直方向の位置において固定される。固定ロッド51はここでは第1のマスト10に連結される。
【0151】
図4Aおよび図4Bは、本発明によるクレーン1の組立の可能な実施形態における後続のステップを示している。図4Aはこのステップを等角図において示しており、図4Bはこのステップにおけるクレーン1の一部を側面図において示している。
【0152】
この段階において、装着プラットフォーム74がクレーン基部2に隣接して配置される。任意選択で、装着プラットフォームはクレーン基部2に固定される。さらに、マスト分割体係止装置75は、第1のマスト10と、マスト分割体装着装置の第1の搬送体72とに装着される。
【0153】
マスト分割体係止装置75および第1の搬送体72は、第1の案内装置61と第2の案内装置62とを互いと連結し、それによって案内システムを連結状態にする。
【0154】
さらに、マスト枢動アクチュエータ80の押し外し/保持装置81が第1のマスト10に装着される。
【0155】
このステップでは、第2の案内装置62の少なくとも一部が設けられる第2のマスト30の上マスト分割体35が、この実施形態では装着テーブル74の上である第1の位置において、第1のマスト10に隣接して第1のマスト10の外側に配置される。クレーン基部2から鉛直方向のある距離におけるこの第1の位置は、例えば、旋回輪4の上部から測定される。第2のマスト30の上マスト分割体35は、組み立てられたクレーン1において第2のマスト30の上部分を形成することになる。この実施形態では、上マスト分割体35は、第1の位置に配置されるとき、滑車および/またはケーブルが設けられている。上マスト分割体は、上方端35aと、下方端35bと、長手方向の軸とを有する。
【0156】
第2のマスト30の上マスト分割体35は、ケーブル71によって第1のマストの上マスト分割体15に連結される。これらのケーブル71は、第1のマスト10の上部と第2のマスト30の上部との間で支線として使用できる。方法のこの段階において、これらのケーブル71はピンと張られる必要はない。
【0157】
図示した実施形態では、マスト分割体装着装置の第1の搬送体72には液圧ジャッキ76が設けられる。また、マスト分割体係止装置75には液圧ジャッキ77も設けられる。
【0158】
図示した実施形態では、案内レール63は孔64を有し、孔64にはピンが配置され得る。第1の搬送体72を案内レール63に沿って上または下へ移動させるために、最初に、第1のピンが孔64のうちの1つに配置される。次に、液圧ジャッキ76が延ばされ、それによって、第1の搬送体72を、案内レール63に沿って上向きに、より高い位置へと移動させる。次に、第1の搬送体は、このより高い位置において案内レールに固定され(例えば、案内レール63に沿った上のより高い孔64に第2のピンを配置することで)、第1のピンは孔64から取り外される。次に、液圧ジャッキは後退させられ(そのため、ジャッキは再びより短くなる)、第1のピンは案内レールの後続の孔64に配置される。このように、第1の搬送体72は、案内レール63に沿ってマスト10、30において上ることができる。第1の搬送体72は、液圧ジャッキ76を逆の方式で使用することで再び下降できる。この配置は、第1のマスト10および/または第2のマスト30に対する第1の搬送体72の位置を固定するために使用されてもよい。
【0159】
マスト分割体係止装置75は、第1の搬送体72と同じ方式で案内レール63に沿って上下に移動できる。ピンおよび孔64は、任意選択で液圧ジャッキ77との組み合わせで、第1のマスト10および/または第2のマスト30に対するマスト分割体係止装置75の位置を固定するために使用できる。
【0160】
図5は、本発明によるクレーン1の組立の可能な実施形態における後続のステップを示している。
【0161】
このステップで、第2のマスト30の上マスト分割体35はマスト分割体装着装置によって鉛直方向上向きに移動させられる。第1の搬送体72およびマスト分割体係止装置75は第2のマスト30の上マスト分割体35を保持する。第1の搬送体72およびマスト分割体係止装置75は第1の案内装置61に沿って上向きに移動させられ、第2のマスト30の上マスト分割体はそれらと共に移動する。この移動は案内システムによって案内される。
【0162】
第1の搬送体72およびマスト分割体係止装置75は、1つもしくは複数のケーブルの引っ張る作動によって、および/または、1つもしくは複数の液圧ジャッキの押す作動もしくは引っ張る作動によって、上向きに移動させられ得る。
【0163】
次に、第2のマスト30の上マスト分割体35は、図5に示された位置である第2の位置において第1のマスト10に対して固定される。固定はマスト分割体係止装置75によって実行される。第2の位置は、クレーン基部2から第1の位置より大きい鉛直方向の距離にある。
【0164】
図6は、本発明によるクレーン1の組立の可能な実施形態における後続のステップを示している。
【0165】
このステップでは、第2のマスト30の第1の中間マスト分割体36が提供され、続いて装着テーブル74に配置される。
【0166】
図7は、本発明によるクレーン1の組立の可能な実施形態における後続のステップを示している。
【0167】
このステップでは、第2のマスト30の第1の中間マスト分割体36が第2のマスト30の上マスト分割体35の下方端35bに固定される。第2のマスト30は、完全に組み立てられたとき、上マスト分割体35と、少なくとも1つの中間マスト分割体36、36*とを備えることになる。概して、完全に組み立てられた第2のマスト30は、上マスト分割体35と、複数の中間マスト分割体36、36*とを備えることになる。
【0168】
第1の中間マスト分割体36は2つの案内レール63を備える。第2のマスト30の第1の中間マスト分割体36が第2のマスト30の上マスト分割体35の下方端35bに固定されるとき、これらの案内レール63は第2のマスト30の上マスト分割体35の案内レール63と一直線に延びる。マスト分割体35、36、36*の案内レール63は第2の案内装置62の一部を一緒に形成する。
【0169】
図8は、本発明によるクレーン1の組立の可能な実施形態における後続のステップを示している。
【0170】
このステップでは、マスト分割体装着装置の第1の搬送体72は、装着テーブル74に向けて第1の案内装置61に沿って下向きに移動させられる。図8に示された位置に到達したとき第1の搬送体72は、第2のマスト30の第1の中間マスト分割体36に連結される。
【0171】
マスト分割体係止装置75は、鉛直方向における第1のマスト10への第2のマスト30の上マスト分割体35の固定を続いて解放する。案内システムはその連結状態に留まり、マスト分割体係止装置75は第2のマスト30の上マスト分割体35に連結されたままである。
【0172】
図9は、本発明によるクレーン1の組立の可能な実施形態における後続のステップを示している。
【0173】
このステップでは、マスト分割体装着装置は、第1の搬送体72を第1の案内装置61および第2の案内装置62の案内レールに沿って上向きに移動させることで、第2のマスト30の上マスト分割体35および第1の中間マスト分割体36を一緒に鉛直方向上向きに移動させる。それと共にこの移動は案内システムによって案内される。この上向きの移動によって、第2のマスト30の上マスト分割体35は、クレーン基部2から第2の位置より大きい鉛直方向の距離にある第3の位置へと持って行かれる。
【0174】
次に、第2のマスト30の上マスト分割体35および第1の中間マスト分割体36は、マスト分割体係止装置75によって第1のマストに対して固定される。
【0175】
図10は、本発明によるクレーン1の組立の可能な実施形態における後続のステップを示している。
【0176】
このステップでは、第2のマストをさらに構築するために、第2のマスト30の後続の中間マスト分割体36*が第2のマスト30の第1の中間マスト分割体36の下方端36bに連結される。
【0177】
第2のマスト30の後続の中間マスト分割体36*が最も下となるまで中間マスト分割体36、36*の下方端36b、36*bに連結される連結するステップ、マスト分割体係止装置による鉛直方向での固定を解放するステップ、最も下の中間マスト分割体に係合する第1の搬送体72によって上マスト分割体35およびすべての中間マスト分割体36、36*を上向きに一緒に移動させるステップ、ならびに、マスト分割体係止装置によって上マスト分割体35と中間マスト分割体36、36*との結合の鉛直方向での固定を再び確立するステップを繰り返すことで、第2のマスト30は所望の長さへと長くさせることができる。
【0178】
そのため、この実施形態では、少なくとも以下の追加のステップが実行される。
- 第1のマスト10への第2のマスト30の上マスト分割体35、第1の中間マスト分割体36、および後続の中間マスト分割体36*の固定を解放し、第2のマスト30の上マスト分割体35、第1の中間マスト分割体36、および後続の中間マスト分割体36*を鉛直方向上向きに一緒に移動させ、その移動は案内システム60によって案内され、それによって、第2のマスト30の上マスト分割体35を、クレーン基部2から第3の位置より大きい鉛直方向の距離にある第4の位置へと持って行くステップ。
- マスト分割体係止装置75によって、第2のマスト30の上マスト分割体35、第1の中間マスト分割体36、および後続の中間マスト分割体36*を第1のマスト10に対して固定するステップ。
- 第2のマスト30をさらに構築するために、第2のマスト30のさらなる後続の中間マスト分割体を第2のマストの後続の中間マスト分割体36*の下方端36*bに連結するステップ。
【0179】
これらのステップを繰り返し、上マスト分割体35をクレーン基部2からさらに離れた位置で毎回固定することによって、第2のマスト30は所望の長さへと組み立てることができる。
【0180】
この結果、図11の状況をもたらす。
【0181】
図11において見られるように、第2のマスト30は第1のマスト10より長くさせられ得る。これは、第1の搬送体72が、上マスト分割体35と中間分割体36、36*との結合を上向きに移動させるとき、第2のマスト30の最も下の中間分割体36、36*と係合し続けるため、達成され得る。
【0182】
マスト分割体係止装置75は、上マスト分割体35と中間分割体36、36*との結合を係止および解放し続ける。しかしながら、第2のマスト30の長さが第1のマスト10の長さを越え始めるとき、マスト分割体係止装置75は第2のマストの上マスト分割体35ともはや直接的に係合せず、1つまたは複数の中間マスト分割体36、36*を介して係合する。この状況におけるマスト分割体係止装置75は、(例えば、第2の案内装置62を介して)中間マスト分割体36、36*のうちの1つと直接的に係合する。
【0183】
本発明による方法のこの図示した実施形態では、第1のマスト10をさらに長くすることがここでは望まれている。図12は、本発明によるクレーン1の組立のこの可能な実施形態における後続のステップを示している。
【0184】
これを達成するために、第2のマスト30は、鉛直方向の位置においてクレーン基部2に対して固定される。図示した実施形態では、この固定は、第1のマストを鉛直方向の位置において固定するために使用される前にあった固定ロッド51によって確立される。しかしながら、代替で、専用のマスト固定装置が、第2のマスト30を鉛直方向の位置においてクレーン基部2に対して固定するために提供されてもよい。
【0185】
次に、第1のマスト10の第1のマスト分割体の下方端16bが第1の枢動部11から連結解除される。任意選択で、これは、クレーン基部2に対する第1のマスト10の固定を解放することを伴う。この実施形態では、この第1のマスト分割体は、第1のマスト10の中間マスト分割体16と第1のマスト10の上マスト分割体15との組み合わせである。他の実施形態では、第1のマスト分割体は、例えば、第1のマストの上マスト分割体15だけであり得る、または、第1のマスト10の上マスト分割体15と第1のマスト10の複数の中間マスト分割体16との組み合わせであり得る。
【0186】
完全に組み立てられたクレーンにおいて第1のマスト10を第1の枢動部11に連結する連結マスト分割体17が、第1のマスト分割体が第1の枢動部11から連結解除される前にあった位置に留まっている。連結マスト分割体17は、例えば、第1のマスト固定装置の連結ロッド57によって所定位置で保持される。
【0187】
次に、第1のマスト10の第1のマスト分割体は、マスト分割体装着装置によって鉛直方向上向きに移動させられる。第1の搬送体72およびマスト分割体係止装置75は第1のマスト10の第1のマスト分割体35を保持する。第1の搬送体72およびマスト分割体係止装置75は、第2の案内装置62に沿って上向きに移動させられ、第1のマスト10の第1のマスト分割体はそれらと共に移動する。この移動は案内システムによって案内される。
【0188】
第1の搬送体72およびマスト分割体係止装置75は、1つもしくは複数のケーブルの引っ張る作動によって、および/または、1つもしくは複数の液圧ジャッキ76、77の押す作動もしくは引っ張る作動によって、上向きに移動させられ得る。
【0189】
次に、第1のマスト10の第1のマスト分割体は、図12に示された位置である第2の位置において第2のマスト30に対して固定される。固定はマスト分割体係止装置75によって実行される。第2の位置は、クレーン基部2から、第1のマスト分割体が連結マスト分割体17の上方端17aになおも固定されていたときにおける位置より大きな鉛直方向の距離にある。
【0190】
図13は、本発明によるクレーン1の組立の可能な実施形態における後続のステップを示している。
【0191】
このステップにおいて、第1のマスト10の第1の中間マスト分割体16*が、連結マスト分割体17の上方端17aと第1のマスト10の第1のマスト分割体の下方端16bとの間の空間に挿入される。次に、第1のマスト10をさらに構築するために、第1のマスト10の中間マスト分割体16*は第1のマスト10の第1のマスト分割体の下方端16bに固定される。
【0192】
任意選択で、この実施形態では、1つまたは複数の後続の中間マスト分割体16*が第1のマスト10に続いて加えられる。各々の後続の中間マスト分割体16*は、第1のマスト10の最も下の(最も下となるまでの)中間マスト分割体16、16*の下方端に連結される。この方式で、第1のマストはその所望の長さまで延ばされ得る。
【0193】
この追加の間、第1の搬送体72は、第2のマスト30のマスト分割体35、36、36*の結合で行ったのと同じ方式で、第1のマスト10の連結された上マスト分割体15および中間マスト分割体16、16*を上向きに移動する。同様に、マスト分割体係止装置75は、第1のマスト10に対して第2のマスト30のマスト分割体35、36、36*の結合で行ったように、第1のマスト10の連結された上マスト分割体15および中間マスト分割体16、16*を、鉛直方向において、第2のマスト30に対して係止する。
【0194】
この実施形態は、第2のマストが完全または部分的に組み立てられた後に第1のマストの長さを延ばすことを可能にする。
【0195】
図14は、第1のマスト10および第2のマスト30が所望の数の中間マスト分割体16、16*、36、36*を有している方法の段階を示している。
【0196】
次に、第1のマストの最も下の中間マスト分割体16*が連結マスト分割体17に固定される。さらに、さらなる固定ロッド51*が、第1のマスト10を鉛直方向の位置においてクレーン基部2に対して固定するために配置される。
【0197】
図15は、本発明によるクレーン1の組立の可能な実施形態における後続のステップを示している。
【0198】
ここで、第1のマスト10は、鉛直方向の位置において、クレーン基部2に対して再び固定される。クレーン基部2に対する第2のマスト30の固定は解放されている。マスト分割体装着装置は、第2のマスト30のマスト分割体35、36、36*の結合を再び上向きに移動させ、次に、マスト分割体係止装置は、鉛直方向の位置において第1のマスト10に対して第2のマスト30のマスト分割体35、36、36*の結合を係止する。このように、一部の空間は、第2のマスト30の最も下の中間マスト分割体36*の下方端とクレーン基部2との間に作り出される。
【0199】
後続のステップとして、装着テーブル74が取り外され、連結マスト分割体37(図16B参照)が第2の枢動部31と第2のマスト30の最も下の中間マスト分割体36*の下方端との間に配置される。連結マスト分割体37の第1の端37aが、この実施形態では後続のマスト分割体36*を介した間接的な方式で、第2のマストの第1の中間マスト分割体36の下方端に連結される。さらに、連結マスト分割体37の第2の端37bが第2の枢動部31に連結される。これは図16Aに示されている。
【0200】
図16Bは、図16Aの状況におけるクレーンの下方部分を側面図で示している。
【0201】
図16Bにおいて見られるように、この実施形態では、連結マスト分割体37は、連結マスト分割体の第2の端37bが第2の枢動部31に連結された後、鉛直方向に対してある角度で延びる長手方向の軸を有する。連結マスト分割体37の第1の端37aは、第3の枢動部38を介して第1の中間マスト分割体36の下方端に連結される。
【0202】
この実施形態では、次に、第2のマスト30の第1の中間マスト分割体36、後続の中間マスト分割体36*、および上マスト分割体35が、第2のマスト30の第1の中間マスト分割体36、後続の中間マスト分割体36*、および上マスト分割体35が連結マスト分割体37と同軸で延びることになることを行うために、第3の枢動部38の周りで一緒に枢動させられる。
【0203】
この枢動を許容するために、案内システムは連結解除状態にさせられる。この実施形態では、これは、マスト分割体係止装置75、第1の搬送体72、および第2の搬送体72を第2のマスト30から連結解除することによって行われる。代替で、マスト分割体係止装置75、第1の搬送体72、および第2の搬送体は、第1のマスト10から、または、第1のマスト10と第2のマスト30との両方から、連結解除される。
【0204】
図17において見られるように、第1の中間マスト分割体36、後続の中間マスト分割体36*、および上マスト分割体35の結合の枢動は、マスト枢動アクチュエータ80によってもたらされる。この実施形態では、マスト枢動アクチュエータ80は押し外し/保持装置81を備える。押し外し/保持装置81は作動状態と非作動状態とを有する。作動状態において、押し外し/保持装置81は第1のマスト10と第2のマスト30との両方に連結される。非作動状態において、押し外し/保持装置81は第1のマスト10および第2のマスト30の少なくとも一方から連結解除される。
【0205】
図2図18に示した実施形態では、押し外し/保持装置81は少なくとも1つの液圧シリンダを備える。
【0206】
本発明による方法の可能な実施形態では、このステップにおいて、第2のマスト30は、マスト枢動アクチュエータによって、第1のマスト10から第1の開角度にわたって離すように枢動させられる。この段階において、マスト枢動アクチュエータ80の押し外し/保持装置81は第1のマスト10と第2のマスト30との両方に連結される。これは図17に示されている。
【0207】
次に、マスト枢動アクチュエータと第2のマスト30との間の連結が解放される。次に、第2のマスト30は、重力の影響の下で、および/または、マスト枢動アクチュエータによって、第1のマスト10からさらなる第2の開角度にわたって離すように枢動させられる。第2の開角度にわたるこの枢動は支線71によって制御される。
【0208】
第2のマスト30の第1の中間マスト分割体36、後続の中間マスト分割体36*、および上マスト分割体35が、それらの長手方向の軸が連結マスト分割体37の長手方向の軸と少なくとも平行となる程度であって好ましくは同軸となる程度まで第3の枢動部38の周りで一緒に枢動させられたとき、第2のマスト30の第1の中間マスト分割体36、後続の中間マスト分割体36*、および上マスト分割体35の組み合わせは、連結マスト分割体37に対して回転可能に固定され、そのためもはや第3の枢動部38の周りで回転できない。
【0209】
続いて、第1のマスト固定装置によるクレーン基部2に対する第1のマスト10の固定が解放される。そのため、第1のマスト10は、水平方向の軸の周りでクレーン基部2に対して再び枢動できる。任意選択で、この固定の解放の後、第1のマスト10は、クレーン基部2に対して鉛直方向の軸の周りでも枢動できる。
【0210】
この状況は図18に示されている。図18に示した状況から、クレーン1は、必要な場合、巻上動作のためにさらに準備され得る。例えば、クレーン1の組立の間に使用された連結要素54は、動作の連結要素58のために交換され得る、または、連結要素58によって補われ得る。また、第1のマスト固定装置の固定ロッド51*は、望まれる場合、取り外されてもよい、および/または、バラスト52、53の一方もしくは両方は異なる位置に移動させられてもよい、および/または、バラストの重量は変更されてもよい。
【0211】
本発明によるクレーン1の分解は、図2図18で示したステップを逆の順番で概して実行することで行われ得る。
【0212】
図19および図20は、本発明のさらなる実施形態を示している。これらの図19および図20では、同一の符号が、図1図18におけるものと同じまたは同様のクレーンの部品に使用されている。
【0213】
この実施形態では、マスト分割体装着装置は、マスト分割体装着装置の第1の搬送体72に連結されている少なくとも1つのケーブル73を備える。このケーブル73は、クレーンの組立の間、第1の搬送体72を第1の案内装置61および第2の案内装置62に沿って上へ引っ張るために使用される。任意選択で、追加で、液圧ジャッキ76が、クレーンの組立の間、第1の搬送体72を第1の案内装置61および第2の案内装置62に沿って上へ押すために存在する。
【0214】
図19は、図8に示した組立段階と同様である組立段階の間のこのさらなる実施形態を示している。マスト分割体装着装置の第1の搬送体72は、第2のマスト30の最も下の中間マスト分割体36に連結される。
【0215】
図20は、図9に示した組立段階と同様である組立段階の間のこのさらなる実施形態を示している。マスト分割体装着装置の第1の搬送体72は、第2のマスト30の最も下の中間マスト分割体36に連結され、上マスト分割体35と第1の中間マスト分割体36とを一緒に上向きに移動させている。この上向きの移動は、ケーブル73の引っ張り作動によって得られる。ケーブル71は、任意選択で、ケーブル73によるこの引っ張りの前および/または間、緩んだままである。
【0216】
任意選択で、この実施形態では、ケーブル71は無しとされてもよい。その場合、第1の搬送体72は、案内システムが連結解除状態にあるとき、例えば第2のマスト30の上マスト分割体35にといった、第2のマスト30に連結されたままである。そのため、ケーブル73は、組み立てられたクレーンにおいて、第1のマスト10と第2のマスト30との間に支線を形成する。
【0217】
図21A図21Eは、例えば上マスト分割体または中間マスト分割体を形成するためであるマスト分割体を組み立てるための可能な方法の例を示している。この方法は、本発明によるクレーンおよびクレーンを組み立てる方法との組み合わせで使用できるが、他のクレーンおよびクレーン組立方法と組み合わされて使用されてもよい。
【0218】
この方法は、任意選択で、クレーンが組み立てられるのと同じ現場で実行される。
【0219】
図21Aは、マスト分割体を組み立てるこの方法の第1の段階を示している。
【0220】
第1の隅管201が鉛直方向の位置で固定されている。第2の隅管202が鉛直方向の位置で固定されてもいる。第2の隅管202は、第1の隅管から第1の水平方向のある距離X1に配置されている。この第1の水平方向のある距離X1は、第1の方向における、組み立てられるマスト分割体の幅に対応する。
【0221】
第3の隅管203が、鉛直方向の位置において、第2の隅管から第2の水平方向のある距離X2に固定されている。第2の水平方向のある距離X2は、第1の方向に対して垂直である第2の方向において組み立てられるマスト分割体の幅に対応する。
【0222】
第4の隅管204が、第1の方向において第3の隅管203から水平方向のある距離X1において、および、第1の隅管201から第2の方向において水平方向のある距離X2において、鉛直方向の位置において固定される。
【0223】
図21Bは、マスト分割体を組み立てるこの方法の後続の段階を示している。
【0224】
この段階では、複数の連結管210、211、212が、第1の隅管201と第2の隅管202との間に配置され、それら第1の隅管201および第2の隅管202に連結される。結果として、第1の隅管201と第2の隅管202とは連結管210、211、212によって互いに連結される。
【0225】
図21Cは、マスト分割体を組み立てるこの方法の後続の段階を示している。
【0226】
この段階では、複数の連結管220、221、222が、第2の隅管202と第3の隅管203との間に配置され、それら第2の隅管202および第3の隅管203に連結される。結果として、第2の隅管202と第3の隅管203とは連結管220、221、222によって互いに連結される。
【0227】
図21Dは、マスト分割体を組み立てるこの方法の後続の段階を示している。
【0228】
この段階では、複数の連結管230、231、232が、第3の隅管203と第4の隅管204との間に配置され、それら第3の隅管203および第4の隅管204に連結される。結果として、第3の隅管203と第4の隅管204とは連結管230、231、232によって互いに連結される。
【0229】
図21Eは、マスト分割体を組み立てるこの方法の後続の段階を示している。
【0230】
この段階では、複数の連結管240、241、242が、第4の隅管204と第1の隅管201との間に配置され、それら第4の隅管204および第1の隅管201に連結される。結果として、第4の隅管204と第1の隅管201とは連結管240、241、242によって互いに連結される。
【0231】
図22A図22Fは、隅管支持構造が使用される、本発明によるクレーンマスト分割体の組立を示している。
【0232】
上面図である図22Aと、側面図である図22Bとでは、隅管支持構造300の実施形態が、クレーンマスト分割体組立方法における使用のために描写されている。構造300は、地面に配置されるように具現化されている基礎フレーム301を有する。長方形の断面のクレーンマスト分割体が組み立てられることがこの例では想定されているため、そのためこの例では4つの隅管201、202、203、204を伴い、基礎フレーム301には、第1および第2の直交する方向において組み立てられるマスト分割体の幅に対応する場所において、それぞれ符号311、312、313、および314とされた第1、第2、第3、および第4の隅管固定装置が設けられている。基礎フレーム301は、好ましくは、固定装置311~314の相対位置が、異なる断面を有するマスト分割体の組立のために同じ基礎フレームおよび固定装置の使用を許容するために調節可能であるような実施形態である。
【0233】
この例では、各々の隅管固定装置311、312、313、および314は、それぞれの隅管の下方端へと入るように構成される差込部材311aを備える。
【0234】
各々の隅管固定装置311、312、313、および314は、基礎フレーム301において鉛直方向の位置で位置決めされるそれぞれの隅管の下方端を解放可能に固定するように適合または構成されている。
【0235】
この例では、各々の隅管固定装置は、例えば、隅管の下方端に設けられた係止孔へと挿入可能な係止ピンの例のような液圧で作動可能な係止部材311bといった、係止部材と係止部材アクチュエータとを備える。
【0236】
図22Cは、第1の隅管201の下方端がそれぞれの前記第1の隅管固定装置311によって固定されるように、第1の隅管201を隅管支持構造300において鉛直方向で配置することを示している。例えば、隅管をこの過程において取り扱うために、移動式クレーン320が使用される。
【0237】
図22Dは、すべての4つの隅管が構造300において鉛直方向で配置され、それぞれの固定装置によってそれらの下方端においてしっかりと保持されるように、構造300におけるここでは隅管204である1つまたは複数のさらなる隅管の配置を示している。
【0238】
図22Eは、マスト分割体を形成するために、隣り合う隅管を相互に連結するすべての連結管の配置を示している。ここで見られるように、隅管の各々は、その長さに沿って、例えば1つまたは複数の孔が設けられた板201a、201b、201c、204a、204b、204cといった、連結管241の端を固定するように構成される留め付け部材を有するようにあらかじめ製作され、例えば、連結管は、その軸方向の端において、ピンまたはボルトを用いて隅管にそれぞれの端を固定するように許容する孔が設けられる1つまたは複数の板を有する。
【0239】
図示されているように、クレーンマスト分割体では、連結管の一部は2つの隅管の間で対角線上に配置され、連結管の一部は2つの隅管の間で水平方向に配置される。
【0240】
マスト分割体200が完成されると、固定装置311~314の係止部材は、隅管の下方端を解放するように作動させられ、マスト分割体200全体が、例えば、本明細書に記載されているようなクレーンまたはクレーンマストを組み立てるための方法でのさらなる使用のために、構造300から取り外され得る。次いで、構造300は、なおも別のクレーンマスト分割体の組立のために使用できる。
【符号の説明】
【0241】
1 クレーン
2 クレーン基部
3 無限軌道
4 旋回輪
5 地面
10 第1のマスト
11 第1の枢動部
15 上マスト分割体
16 第1の後続のマスト分割体
16* マスト分割体
16b 下方端
17 連結マスト分割体
30 第2のマスト
31 第2の枢動部
35 上マスト分割体、第1のマスト分割体
35a 上方端
35b 下方端
36 第1の中間マスト分割体
36* 中間マスト分割体
36b、36*b 下方端
37 連結マスト分割体
37a 第1の端
37b 第2の端
38 第3の枢動部
49 地面
50 第1のマスト固定装置
51、51* 固定ロッド
52 第1のバラスト
53 第2のバラスト
54、55、56、56'、58 連結要素
57 連結ロッド
58 連結要素
60 案内システム
61 第1の案内装置
62 第2の案内装置
63 案内レール
64 孔
70 マスト分割体装着装置
71 ケーブル
72 搬送体
73 ケーブル
74 装着プラットフォーム、装着テーブル
75 マスト分割体係止装置
76、77 液圧ジャッキ
80 マスト枢動アクチュエータ
81 押し外し/保持装置
200 マスト分割体
201 第1の隅管
202 第2の隅管
203 第3の隅管
204 第4の隅管
201a、201b、201c、204a、204b、204c 板
210、211、212、220、221、222、230、231、232、240、241、242 連結管
300 隅管支持構造
301 基礎フレーム
311 第1の隅管固定装置
311a 差込部材
311b 係止部材
312 第2の隅管固定装置
313 第3の隅管固定装置
314 第4の隅管固定装置
320 移動式クレーン
X1 第1の水平方向のある距離
X2 第2の水平方向のある距離
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図21C
図21D
図21E
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
図22F