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特許7127117シーラント用樹脂組成物、蓋材、及び包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】シーラント用樹脂組成物、蓋材、及び包装体
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20220822BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20220822BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
C09K3/10 Z
C09K3/10 E
C08L31/04 S
C08L33/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020510796
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 JP2019011804
(87)【国際公開番号】W WO2019188691
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2018067435
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・ダウポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸一郎
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/6917(WO,A1)
【文献】特開2008-95044(JP,A)
【文献】特開2002-226642(JP,A)
【文献】特開2000-63588(JP,A)
【文献】特開平01-254752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/10-3/12
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
B65D67/00-85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)と、
前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)とは異なるエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)と、を含み、
前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)及び前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の含有量の合計に対して、前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)の含有量は10質量%以上90質量%以下であり、かつ、前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の含有量は10質量%以上90質量%以下であり、
前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)の構成単位及び前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の構成単位の総モル量を100mol%としたとき、
前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)及び前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)に含まれる極性基を有する構成単位の合計の含有比率が5.0mol%以上8.5mol%以下であるシーラント用樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)が、エチレン・酢酸ビニル共重合体である請求項1に記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)は、アルキル部位の炭素数が1以上4以下である請求項1又は請求項2に記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項4】
粘着付与樹脂の含有量が1質量%未満である請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項5】
前記総モル量に対する、前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)中の不飽和エステル由来の構成単位の含有比率X(mol%)および前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル基由来の構成単位の含有比率Y(mol%)が、下記の式(1)、式(2)及び式(3)を全て満たす請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のシーラント用樹脂組成物。
Y>1 (1)
Y<-0.7X+7.1 (2)
Y>-0.7X+4.4 (3)
【請求項6】
下記の式(4)、式(5)及び式(6)を全て満たす請求項5に記載のシーラント用樹脂組成物。
Y≧1.8 (4)
Y≦-0.7X+6.8 (5)
Y≧-0.7X+5.2 (6)
【請求項7】
下記工程を含む試験方法により測定されるn-ヘキサンへの抽出量が30mg/L以下である、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のシーラント用樹脂組成物:
基材層と、前記基材層の一方の面に設けられ、かつ、前記シーラント用樹脂組成物により構成されたシール層とを備える試験片を準備する工程;
前記試験片を片面溶出用専用冶具にセットし、前記試験片をセットした前記片面溶出用専用冶具を、試験片のシール層の表面積1cmに対してn-ヘキサン溶媒量が2mLになるようにV[L]のn-ヘキサン溶媒に浸漬し、25℃で2時間静置して、n-ヘキサン抽出液を得る工程;及び
前記n-ヘキサン抽出液から前記n-ヘキサンを留去して抽出残渣物を得、前記抽出残渣物の質量M[mg]を測定し、前記n-ヘキサンへの前記シーラント用樹脂組成物の抽出量Z(M/V)[mg/L]を算出する工程。
【請求項8】
下記工程を含む試験方法により測定される剥離強度が、10N/15mm以上15N/15mm未満である、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のシーラント用樹脂組成物:
基材層と、前記基材層の一方の面に設けられ、かつ、前記シーラント用樹脂組成物により構成されたシール層とを備える試験片を準備する工程;
前記シール層が0.5mm厚の耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)シートに接するように、前記HIPSシートに前記試験片を積層し、更に前記試験片に0.3mm厚のPETシートを積層し、積層体を得る工程;
前記積層体に対して、最大出力が3kWであり発振周波数が40.46MHzである高周波ウェルダーにて、出力52%または54%、ゲージ圧0.1MPaで2秒間加圧し、0.5秒間溶着し、2秒間冷却することで前記HIPSシートに前記試験片を接着させ、前記積層体から前記PETシートを取り除き、23℃の環境下で24時間放置する工程;及び
23℃の環境下において、引張速度300mm/分で前記HIPSシートに接着した前記試験片を15mm幅の試験片として前記HIPSシートから引き離し、引き離す際に観測される最大応力を前記剥離強度[N/15mm]とする工程。
【請求項9】
基材と、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載のシーラント用樹脂組成物と、を含む蓋材。
【請求項10】
請求項9に記載の蓋材と、
前記蓋材がヒートシールされる底材と、を備える包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラント用樹脂組成物、蓋材、及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
シーラント用樹脂組成物は、包装あるいは密封する手段の1つとして使用されることが広く知られている。
特に、食品類や医薬品の容器素材としては、耐衝撃性ポリスチレンシート、ポリエチレンラミネート紙、発泡ポリスチレンシート又はこれに耐衝撃性ポリスチレンフィルムを貼り合わせたもの等が広く使用されており、これら容器と蓋材はシーラント用樹脂組成物を使用してヒートシールすることにより密封されることが知られている。
【0003】
金属層と、接着剤層と、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-アクリル酸エステル共重合体樹脂及びポリオレフィン系樹脂の少なくとも1種からなる樹脂と粘着付与剤を含有する易剥離性樹脂層を順次積層した積層体を有する易剥離性包装材用積層体が知られている(例えば、特開平3-79342号公報)。
【0004】
一方、上記のような樹脂組成物が食品用の蓋材のシーラントとして使用される場合、使用する国によってはその国の基準を満たさない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開平3-79342号公報に示されているように、シーラントとして使用される樹脂配合として、オレフィン系樹脂と粘着付与樹脂とを配合させた樹脂組成物が知られているが、樹脂組成物中に含まれる粘着付与樹脂は一般的にヘキサンへの溶出量が高い。
そのため、粘着付与樹脂を一定量含んでいる樹脂組成物を、食品容器に適用しようとすると、各国における食品衛生規格等の国家標準規格を満たさないおそれがある。
本発明の解決課題は、従来のシーラント用樹脂組成物と比較し、良好なシール強度が維持されつつ、ヘキサンへの溶出量が抑制されたシーラント用樹脂組成物、蓋材、及び包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的な手段には、以下の態様が含まれる。
<1> エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)と、前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)とは異なるエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)と、を含み、前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)及び前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の含有量の合計に対して、前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)の含有量は10質量%以上90質量%以下であり、かつ、前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の含有量は10質量%以上90質量%以下であり、前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)の構成単位及び前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の構成単位の総モル量を100mol%としたとき、前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)及び前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)に含まれる極性基を有する構成単位の合計の含有比率が5.0mol%以上8.5mol%以下であるシーラント用樹脂組成物。
<2> 前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)が、エチレン・酢酸ビニル共重合体である<1>に記載のシーラント用樹脂組成物。
<3> 前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)は、アルキル部位の炭素数が1以上4以下である<1>又は<2>に記載のシーラント用樹脂組成物。
<4> 粘着付与樹脂の含有量が1質量%未満である<1>~<3>のいずれか一つに記載のシーラント用樹脂組成物。
<5> 前記総モル量に対する、前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)中の不飽和エステル由来の構成単位の含有比率X(mol%)および前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位の含有比率Y(mol%)が、下記の式(1)、式(2)及び式(3)を全て満たす<1>~<4>のいずれか一つに記載のシーラント用樹脂組成物。
Y>1 (1)
Y<-0.7X+7.1 (2)
Y>-0.7X+4.4 (3)
<6> 下記の式(4)、式(5)及び式(6)を全て満たす<5>に記載のシーラント用樹脂組成物。
Y≧1.8 (4)
Y≦-0.7X+6.8 (5)
Y≧-0.7X+5.2 (6)
<7> 下記試験方法により測定されるn-ヘキサンへの抽出量が30mg/L以下である、<1>~<6>のいずれか一つに記載のシーラント用樹脂組成物。
(試験方法)
基材層と、前記基材層の一方の面に設けられ、かつ、前記シーラント用樹脂組成物により構成されたシール層とを備える試験片を準備する。
次いで、前記試験片を片面溶出用専用冶具にセットし、前記試験片をセットした前記片面溶出用専用冶具を、V[L]のn-ヘキサン溶媒に浸漬し、25℃で2時間静置する。ここで、試験片のシール層の表面積W[cm]に対するn-ヘキサン溶媒量はV[L]=W/500とする。すなわち、試験片のシール層の表面積1cmに対してn-ヘキサン溶媒量は2mLとする。
次いで、得られたn-ヘキサン抽出液から前記n-ヘキサンを留去し、前記n-ヘキサンを留去することにより得られた抽出残渣物の質量M[mg]を測定し、前記n-ヘキサンへの抽出量Z(M/V)[mg/L]を算出する。
<8> 下記試験方法により測定される剥離強度が、10N/15mm以上15N/15mm未満である、<1>~<7>のいずれか一つに記載のシーラント用樹脂組成物。
(試験方法)
基材層と、前記基材層の一方の面に設けられ、かつ、前記シーラント用樹脂組成物により構成されたシール層とを備える試験片を準備する。
前記シール層が0.5mm厚のHIPS(耐衝撃性ポリスチレン)シートに接するように、前記HIPSシートに前記試験片を積層し、更に前記試験片に0.3mm厚のPETシートを積層し、積層体を得た。
前記積層体に対して、高周波ウェルダー(最大出力=3kW、発振周波数=40.46MHz)にて、出力52%または54%、0.1MPa(ゲージ圧)で加圧時間2秒間、溶着0.5秒間、冷却2秒間でシールを行い、前記PETシートを取り除くと共に前記HIPSシートに前記試験片を接着させ、室温(23℃)で24時間放置した。
次いで、23℃の環境下において、引張速度300mm/分で前記試験片(15mm幅の試験片)を前記HIPSシートから引き離し、最大応力を前記HIPSシートに対する剥離強度[N/15mm]として算出した
<9> 基材と、<1>~<8>のいずれか一つに記載のシーラント用樹脂組成物と、を含む蓋材。
<10> <9>に記載の蓋材と、
前記蓋材がヒートシールされる底材と、を備える包装体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、良好なシール強度が維持されつつ、ヘキサンへの溶出量が抑制されたシーラント用樹脂組成物、蓋材、及び包装体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0009】
なお、本明細書において、数値範囲における「~」は、「~」の前後の数値を含むことを意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する該複数の物質の構成単位を意味する。
【0010】
[シーラント用樹脂組成物]
本開示のシーラント用樹脂組成物は、 エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)と、前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)とは異なるエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)と、を含み、前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)及び前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の含有量の合計に対して、前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)の含有量は10質量%以上90質量%以下であり、かつ、前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の含有量は10質量%以上90質量%以下であり、前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)の構成単位及び前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の構成単位の総モル量を100mol%としたとき、前記エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)及び前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)に含まれる極性基を有する構成単位の合計の含有比率が5.0mol%以上8.5mol%以下である。
【0011】
本開示のシーラント用樹脂組成物は、上記構成としたことにより、良好なシール強度が維持されつつ、ヘキサンへの溶出量が抑制されると考えられる。
また、本開示のシーラント用樹脂組物は、必要に応じて、その他の重合体や添加剤を含んでもよいが、粘着付与樹脂は実質含んでいない。含んでいたとしてもシーラント用樹脂組成物に対して1質量%未満であることが好ましく、0.5質量%未満であることがより好ましい。
【0012】
なお、粘着付与物質とは、タッキファイヤーとも称され、ベースポリマーの粘着力やタック力を上昇させるために使用されるものであり、例えばロジン類、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、低分子量スチレン系樹脂、イソプレン系樹脂、アルキルフェノール樹脂等が挙げられるが、公知のものであれば特に限定されるものでない。
【0013】
本開示のシーラント用樹脂組成物は、上記成分のほか、必要に応じて、スリップ剤、離ロール剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、顔料、染料などの添加剤を含有することができる。これらの添加剤は、シーラント用樹脂組成物に対して合計で、2質量%以下含有されることが好ましく、1質量%以下含有されることがより好ましく、0.5質量%以下含有されることがさらに好ましく、含まれていなくてもよい。
【0014】
<エチレン・不飽和エステル系共重合体(A):(A)成分>
本開示のシーラント用樹脂組成物は、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)を含む。エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)は、エチレンに由来する構成単位と、不飽和エステルに由来する構成単位とを含む。
本開示のエチレン・不飽和エステル系共重合体(A)は、1種単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0015】
エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)の不飽和エステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステルなどが挙げられる。
これらの中でも、不飽和エステルとしては、良好なシール強度の維持、及びヘキサンへの溶出量を抑制する観点から、酢酸ビニルが好ましい。
【0016】
エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)は、エチレン及び不飽和エステル以外のモノマーに由来する構成単位(以下、「他の構成単位」ともいう。)を含んでいてもよい。
他の構成単位としては、例えば、不飽和カルボン酸エステル、不飽和炭化水素(例えば、プロピレン、ブテン、1,3-ブタジエン、ペンテン、1,3-ペンタジエン、1-ヘキセン等)、ビニル硫酸、ビニル硝酸等の酸化物、ハロゲン化合物(例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル等)、ビニル基含有の1級及び2級アミン化合物、一酸化炭素、二酸化硫黄等に由来する構成単位が挙げられる。
これらの中でも、他の構成単位としては、不飽和カルボン酸エステルに由来する構成単位であることが好ましい。なお、後述のエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)としてカウントできる構成単位は、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)としてカウントし、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)には含めない。
【0017】
不飽和カルボン酸エステルとしては、エチレン及び不飽和エステルと共重合可能であれば特に制限はなく、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステルが挙げられる。
不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソオクチル等のアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル等のメタクリル酸アルキルエステル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸アルキルエステル等のアルキルエステルの炭素数が1~12である不飽和カルボン酸アルキルエステルが挙げられる。
【0018】
これらの中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソオクチル等のアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが好ましく、アクリル酸又はメタクリル酸の低級アルキルエステル(炭素数2~5のアルキルエステル)がより好ましい。
【0019】
他の構成単位の含有量としては、良好なシール強度の維持、及びヘキサンへの溶出量を抑制する観点から、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)の全構成単位に対して0.1質量%~10質量%が好ましく、1質量%~5質量%がより好ましく、0質量%であってもよい。
【0020】
エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)は、良好なシール強度の維持、及びヘキサンへの溶出量を抑制する観点から、シーラント用樹脂組成物の全質量に対して30質量%以上85質量%以下含まれることが好ましく、30質量%以上80質量%以下含まれることがより好ましい。
【0021】
エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)は、不飽和エステル由来の構成単位の含有率によって、剥がれ難さ(シール強度)を調整することが可能である。この観点から、不飽和エステル由来の構成単位の含有率としては、エチレン・不飽和エステル系共重合体の全構成単位に対して、1質量%~40質量%であることが好ましく、2質量%~30質量%であることがより好ましく、5質量%~25質量%であることが更に好ましい。
不飽和エステル由来の構成単位の含有率が1質量%以上であると、シール強度がより得られやすく、またシール強度の安定性もより向上しやすい。また、不飽和エステル由来の構成単位の含有率が40質量%以下であると、シール強度の安定性及び耐ブロッキング性により優れる傾向がある。
【0022】
エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)としては、良好なシール強度の維持、及びヘキサンへの溶出量の抑制及び加工性の観点から、0.1g/10分~150g/10分であることが好ましく、0.5g/10分~100g/10分であることがより好ましく、1g/10分~50g/10分であることがさらに好ましい。
なお、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)のMFRは、ISO1133:1997に対応するJIS K7210(1999年)に準拠した方法により190℃、荷重2160gにて測定することができる。
【0023】
エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)には、極性基を有する構成単位、不飽和エステル由来の構成単位が含まれる。
更に、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)中には、不飽和エステル以外の他の極性基を有するモノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。他の極性基を有するモノマーとして、カルボキシ基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、並びにアルコール性水酸基等の極性基を有するモノマーが挙げられる。
ここで、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)中に含まれる極性基を有する構成単位の含有比率は、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)の構成単位を100mol%としたとき、1.8mol%以上11mol%以下であることが好ましく、1.8mol%以上8mol%以下であることがより好ましい。
なお、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)中に含まれる極性基を有する構成単位の含有比率とは、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)中に含まれる極性基を有するモノマーに由来する構成単位の合計の含有比率のことを示す。
【0024】
<エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B):(B)成分>
本開示のシーラント用樹脂組成物は、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)を含む(ただしエチレン・不飽和エステル系共重合体(A)とエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)は異なる。)。エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)は、エチレンに由来する構成単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位とを含む。
本開示のエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)は、1種単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0025】
エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)は、エチレンとアクリル酸またはメタクリル酸のアルキル部位の炭素数1以上(好ましくは炭素数1以上4以下)のアルキルエステルとの共重合体(好ましくはランダム共重合体)である。
アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸nプロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nブチルなどが挙げられる。
これらの中でも、入手のし易さ、性能および価格のバランスからアルキル部位の炭素数1以上4以下のアルキルエステルを有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0026】
エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)としては、良好なシール強度の維持、及びヘキサンへの溶出量を抑制する観点から、例えば、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸nプロピル共重合体、エチレン・アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・アクリル酸nブチル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸nプロピル共重合体、エチレン・メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・メタクリル酸nブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸イソブチル共重合体などが好ましく、エチレン・アクリル酸メチル共重合体及びエチレン・メタクリル酸メチル共重合体の少なくとも一方であることがより好ましい。
【0027】
エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)は、エチレン及び(メタ)アクリル酸アルキル以外のモノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。
すなわち、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)は、本開示のエチレン・不飽和エステル系共重合体(A)と同様に「他の構成単位」を含んでいてもよく、また、好ましい「他の構成単位」の態様についても同様である。
他の構成単位の含有量としては、良好なシール強度の維持、及びヘキサンへの溶出量を抑制する観点から、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の全構成単位に対して0.1質量%~10質量%が好ましく、1質量%~5質量%がより好ましく、0質量%であってもよい。
【0028】
エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)は、良好なシール強度の維持、及びヘキサンへの溶出量を抑制する観点から、シーラント用樹脂組成物の全質量に対して15質量%以上70質量%以下含まれることが好ましく、20質量%以上70質量%以下含まれることがより好ましい。
【0029】
エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率によって、剥がれ難さ(シール強度)を調整することが可能である。この観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率としては、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体の全構成単位に対して、1質量%~40質量%であることが好ましく、5質量%~35質量%であることがより好ましく、10質量%~30質量%であることが更に好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率が1質量%以上であると、シール強度がより得られやすく、またシール強度の安定性もより向上しやすい。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率が30質量%以下であると、シール強度、シール強度の安定性及び耐ブロッキング性により優れる傾向がある。
【0030】
エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)としては、良好なシール強度の維持、及びヘキサンへの溶出量を抑制する観点から、0.1g/10分~150g/10分であることが好ましく、0.5g/10分~100g/10分であることがより好ましく、1g/10分~50g/10分であることがさらに好ましい。
なお、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)のMFRは、ISO1133:1997に対応するJIS K7210(1999年)に準拠した方法により190℃、荷重2160gにて測定することができる。
【0031】
エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)には、極性基を有する構成単位を構成するモノマーとして、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが含まれる。
更に、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)中には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の他の極性基を有するモノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。他の極性基を有するモノマーとして、カルボキシ基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、並びにアルコール性水酸基等の極性基を有するモノマーが挙げられる。
ここで、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)中に含まれる極性基を有する構成単位の含有比率は、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の構成単位を100mol%としたとき、7mol%以上10mol%以下であることが好ましく、7.5mol%以上9.5mol%以下であることがより好ましい。
なお、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)中に含まれる極性基を有する構成単位の含有比率とは、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)中に含まれる極性基を有するモノマーに由来する構成単位の合計の含有比率のことを示す。
【0032】
-シーラント用樹脂組成物における(A)成分及び(B)成分の関係-
本開示のシーラント用樹脂組成物は、良好なシール強度の維持及びヘキサンへの溶出量を抑制する観点から、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)及びエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の含有量の合計(100質量%)に対して、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)の含有量は10質量%以上90質量%以下であり、かつ、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の含有量は10質量%以上90質量%以下である。
エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の含有量が10質量%以上であると、剥離強度が良好でシール強度に優れたものとなる。エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の含有量が90質量%以下であると、シール強度が高くなり過ぎるのを抑制することができ、良好なシール強度となる。また、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)の含有量が10質量%以上であると、シール強度が高くなり過ぎるのを抑制することができ、良好なシール強度となる。エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)の含有量が90質量%以下であると、剥離強度が良好でシール強度に優れたものとなる。
更には、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)の含有量は25質量%以上85質量%以下であり、かつ、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の含有量は15質量%以上75質量%以下であることが好ましく、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)の含有量は30質量%以上80質量%以下であり、かつ、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の含有量は20質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)の含有量は40質量%以上80質量%以下であり、かつ、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の含有量は20質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。
シーラント用樹脂組成物中に含まれるエチレン・不飽和エステル系共重合体(A)とエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の合計量は、シーラント用樹脂組成物の全質量に対して80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
【0033】
本開示のシーラント用樹脂組成物は、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)とエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)に含まれる極性基を有する構成単位の含有比率の合計は、5.0mol%以上8.5mol%以下(但し、シーラント用樹脂組成物中のエチレン・不飽和エステル系共重合体(A)とエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の構成単位の総モル量を100mol%とする)である。
極性基を有する構成単位の含有比率の合計が5.0mol%以上であると、シール強度が低くなりすぎるのを抑制でき、8.5mol%以下であると、シール強度が高くなり過ぎるのを抑制することができるため、良好なシール強度に調整することができる。
また、良好なシール強度を得る観点から、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)とエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)に含まれる極性基を有する構成単位の含有比率の合計は、5.6mol%以上8.3mol%以下であることが好ましく、5.7mol%以上8.0mol%以下であることがより好ましい。
【0034】
本開示のシーラント用樹脂組成物は、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)とエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)の構成単位の総モル量を100mol%としたとき、エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)中の不飽和エステル由来の構成単位の含有比率X(mol%)および前記エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位の含有比率Y(mol%)が、良好なシール強度の維持、及びヘキサンへの溶出量を抑制する観点から、下記の式(1)、式(2)及び式(3)を全て満たすことが好ましく、下記の式(4)、式(5)及び式(6)を全て満たすことがより好ましい。
Y>1 (1)
Y<-0.7X+7.1 (2)
Y>-0.7X+4.4 (3)
Y≧1.8 (4)
Y≦-0.7X+6.8 (5)
Y≧-0.7X+5.2 (6)
【0035】
-シーラント用樹脂組成物の特性-
本開示のシーラント用樹脂組成物は、n-ヘキサンに対する溶出量が30mg/L以下という性質を示すため、ヘキサンへの溶出量が抑制されているといえる。また、本開示のシーラント用樹脂組成物を使用して高周波シール強度試験を行ったときの剥離強度は、10N/15mm以上15N/15mm未満という性質を示すため、良好なシール強度が維持されているといえる。
また、本開示のシーラント用樹脂組成物は、n-ヘキサンに対する溶出量が30mg/L以下であることが好ましく、28mg/L以下であることがより好ましい。
また、本開示のシーラント用樹脂組成物を使用して高周波シール強度試験を行ったときの剥離強度は、10N/15mm以上15N/15mm未満であることが好ましく、10N/15mm以上14.6N/15mm未満であることがより好ましい。
なお、ヘキサンに対する溶出量、及び高周波シール試験を行ったときの剥離強度の具体的な測定方法は、後述する実施例で行う方法と同様の方法である。
すなわち、ヘキサンに対する溶出量は、少なくとも下記工程を含む試験方法により測定される:
基材層と、前記基材層の一方の面に設けられ、かつ、前記シーラント用樹脂組成物により構成されたシール層とを備える試験片を準備する工程;
前記試験片を片面溶出用専用冶具にセットし、前記試験片をセットした前記片面溶出用専用冶具を、試験片のシール層の表面積1cmに対してn-ヘキサン溶媒量が2mLになるようにV[L]のn-ヘキサン溶媒に浸漬し、25℃で2時間静置して、n-ヘキサン抽出液を得る工程;及び
前記n-ヘキサン抽出液から前記n-ヘキサンを留去して抽出残渣物を得、前記抽出残渣物の質量M[mg]を測定し、前記n-ヘキサンへの前記シーラント用樹脂組成物の抽出量Z(M/V)[mg/L]を算出する工程。
また、剥離強度は、少なくとも下記工程を含む試験方法により測定される:
基材層と、前記基材層の一方の面に設けられ、かつ、前記シーラント用樹脂組成物により構成された、シール層とを備える試験片を準備する工程;
前記シール層が0.5mm厚の耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)シートに接するように、前記HIPSシートに前記試験片を積層し、更に前記試験片に0.3mm厚のPETシートを積層し、積層体を得る工程;
前記積層体に対して、最大出力が3kWであり発振周波数が40.46MHzである高周波ウェルダーにて、出力52%または54%、ゲージ圧0.1MPaで2秒間加圧し、0.5秒間溶着し、2秒間冷却することで前記HIPSシートに前記試験片を接着させ、前記積層体から前記PETシートを取り除き、23℃の環境下で24時間放置する工程;及び
23℃の環境下において、引張速度300mm/分で前記HIPSシートに接着した前記試験片を15mm幅の試験片として前記HIPSシートから引き離し、引き離す際に観測される最大応力を前記剥離強度[N/15mm]とする工程。
【0036】
[蓋材]
本開示の蓋材は、本開示のシーラント用樹脂組成物を含む。例えば、本開示のシーラント用樹脂組成物は、プラスチック製容器のヒートシール材、とりわけ耐衝撃性ポリスチレンや発泡ポリスチレン等の容器とその蓋材との易開封性シール材料として好適に使用することができる。
【0037】
本開示のシーラント用樹脂組成物は、易開封性シール材料用途に使用される場合、通常は各種基材に積層した形で使用される。
基材としては、紙、アルミニウム、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、(耐衝撃性)ポリスチレン、アルミ蒸着ポリエステル、アルミ蒸着ポリプロピレン、シリカ蒸着ポリエステルなどを挙げることができる。このような基材は単層である必要はなく、2層以上の積層体であってもよい。
なお、各種基材への積層方法は公知の方法によりなされるもので、特に限定されるものではない。
【0038】
[包装体]
本開示の包装体は、本開示の蓋材と、蓋材がヒートシールされる底材と、を備える。また本開示の包装体は、各種包装材料として使用することができる。
包装体の形態として例えば、プラスチック単体や上述のような積層体からなる各種の易開封シール蓋付き容器が挙げられる。
とりわけ耐衝撃性ポリスチレン容器と蓋材との間のシーラントとして、本開示のシーラント用樹脂組成物を使用するときに密封性、易開封性等に優れたものとなる。
さらにポリスチレン製容器のみならず、他の材料の容器、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の容器と蓋材のヒートシール用として有効に利用できる。このような蓋付容器は、例えば、即席メン、ヌードル、ゼリー、プリン、ヨーグルト、みつ豆、サワー、豆腐、乳酸飲料、和菓子、加工肉などの飲食物、薬品、医療容器、トナーなどの各種包装に使用することができる。
【実施例
【0039】
以下、本開示を実施例によりさらに具体的に説明するが、本開示はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下に示すMFRの値は、ISO1133:1997に対応するJIS K7210(1999年)に準拠した方法により190℃、荷重2160gの条件にて測定される値である。
【0040】
[実施例1~11、比較例1~12]
シーラント用樹脂組成物の作製に用いる成分の詳細は以下の通りである。
【0041】
<1.エチレン・不飽和エステル系共重合体(A)>
・(EVA-1):
種類:エチレン・酢酸ビニル共重合体「V421(商品名、三井・デュポンポリケミカル株式会社製)」
酢酸ビニルの構成単位の含有量(VA含量):11.3mol%
MFR(JIS K7210-1999、190℃、荷重2160g)4g/10分
・(EVA-2):
種類:エチレン・酢酸ビニル共重合体「EV450R(商品名、三井・デュポンポリケミカル株式会社製)」
酢酸ビニルの構成単位の含有量(VA含量):7.1mol%
MFR(JIS K7210-1999、190℃、荷重2160g)15g/10分
・(EVA-3):
種類:エチレン・酢酸ビニル共重合体「EV550(商品名、三井・デュポンポリケミカル株式会社製)」
酢酸ビニルの構成単位の含有量(VA含量):5.0mol%
MFR(JIS K7210-1999、190℃、荷重2160g)15g/10分
・(EVA-4):
種類:エチレン・酢酸ビニル共重合体「BRV72(商品名、三井・デュポンポリケミカル社製)」
酢酸ビニルの構成単位の含有量(VA含量):1.9mol%
MFR(JIS K7210-1999、190℃、荷重2160g)23.5g/10分
【0042】
<2.エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体(B)>
・(EMA-1):
種類:エチレン・アクリル酸メチル共重合体「商品名、ElvaloyAC 12024S(デュポン社製)」
アクリル酸メチルの構成単位の含有量(MA含量):9.3mol%
MFR(JIS K7210-1999、190℃、荷重2160g)20g/10分
・(EMA-2):
種類:エチレン・アクリル酸メチル共重合体「ElvaloyAC 1820(商品名、デュポン社製)」
アクリル酸メチルの構成単位の含有量(MA含量):7.5mol%
MFR(JIS K7210-1999、190℃、荷重2160g)8g/10分
【0043】
<3.添加剤>
・スリップ剤(PEG):ポリエチレングリコール(日本精化株式会社製)
・離ロール剤(ELA):エルカ酸アミド(日油株式会社製)
【0044】
<4.粘着付与剤>
・粘着付与樹脂:脂環族飽和炭化水素樹脂「アルコンAM-1(商品名、荒川化学工業株式会社製)」
【0045】
-シーラント用樹脂組成物の作製-
下記表1に示す組成となるように、各成分を65mmφ単軸押出機(ナカタニ機械(株)製、L/D=26、スクリュータイプ:先端ダルメージフライトスクリュー)で樹脂温度150℃にて溶融混練してシーラント用樹脂組成物を作製した。
例えば、表1の実施例1では、上述の(EMA-1)及び(EVA-2)の合計質量に対して(EMA-1)を20質量%、(EVA-2)を80質量%、上述の離ロール剤を0.09質量%、及びスリップ剤を0.06質量%含み、(EMA-1)及び(EVA-2)に含まれる極性基を有する構成単位の合計の含有比率(但し、組成物中のEMA-1の構成単位とEVA-2の構成単位の総モル量を100mol%とする)が7.5mol%であるシーラント用樹脂組成物であることを示している。
【0046】
-評価用の試験片の作製-
表1に示す組成のシーラント用樹脂組成物を40mmφシングル押出ラミネーター(田辺プラスチックス機械(株)製、L/D=32)を用いて、押出機ダイ出口樹脂温度220℃、引取速度30m/分、成形後のシーラント用樹脂組成物からなるシール層の厚みが20μmとなるような押出条件で、前記シーラント用樹脂組成物をTダイから基材層(AL層(20μm)/PE層(15μm)の2層積層体)のPE層上に溶融押出し、フィルム状にラミネート成形した。
このフィルム状にラミネート成形されたものを評価用の試験片とした。
【0047】
[評価]
-高周波シール強度試験における剥離強度(対HIPSシール強度)-
高周波シール強度試験を行ったときの剥離強度は、以下の方法により行った。実施例および比較例で得られた試験片のシール層側が、0.5mm厚のHIPS(耐衝撃性ポリスチレン)シート(RP東プラ株式会社製、商品名:NOASTIC-M)に接するように、前記HIPSシート上に積層し、試験片のAL層上に0.3mm厚のA-PETシート(RP東プラ株式会社製、商品名:NOACRYSTAL-V)を載せた。
得られた積層体に対して、高周波ウェルダー(最大出力:3kW、発振周波数:40.46MHz)(精電舎社製)にて、出力52%または54%、0.1MPa(ゲージ圧)で加圧時間2秒間、溶着0.5秒間、冷却2秒間でシールを行い、HIPSシートに包装材を接着させ、室温(23℃)で24時間放置した。(シール時に用いたA-PETシートはシール直後に取り除いた。)
次いで、23℃の環境下において、引張速度300mm/分で試験片(15mm幅の試験片)をHIPSシートから引き離し、最大応力をHIPSシートに対するシール強度(N/15mm)として算出した。
【0048】
上記方法により測定された剥離強度は、10N/15mm以上であると実用上、許容範囲であり、また、15N/15mm未満であると、易剥離性の観点から好ましい。
【0049】
-ヘキサン抽出試験-
ヘキサン抽出試験は、以下の方法により行った。実施例及び比較例で得られた試験片から、100cmの円を確保できるよう15cm×15cmの試験片を3枚切り出した。次いで、試験片の対象面積(3枚の合計)を300cmとし、円内径11.3cmの片面溶出用専用冶具にシール層側が上になるように試験片をそれぞれセットした(100cm/1台を3台分)。なお、片面溶出用専用冶具は文献「器具・容器包装の規格基準とその試験法」(厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課 監修 川村葉子著)の34頁の図に示すものを使用した。
次いで、300mLの3つのメスシリンダーに、試験片をセットした上記片面溶出用専用冶具をそれぞれ入れ、25℃のn-ヘキサン溶媒を200mLずつ注ぎ入れ、それぞれ25℃下、2時間静置した。2時間経過後、得られたn-ヘキサン抽出液(合計600mL)を1Lのビーカーに回収し、恒量を得た150mLのソックスレーフラスコにn-ヘキサン抽出液を移した(恒量とは、空のフラスコを105℃、2時間乾燥後、30分冷却し、重量を測定することを繰り返したときの重量変化が0.5mg以下になること)。その後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を留去(計600mLのヘキサンを数回に分けて留去)した。
次いで、105℃で2時間乾燥の後、デシケーター内で30分冷却した。次いで、抽出残渣物を含むソックスレーフラスコの重量mを測定した。
また、ブランクとして、空のソックスレーフラスコの重量mを測定した。ここで、600mLのn-ヘキサン抽出液の代わりに600mLのn-ヘキサンを用いた以外は重量mの測定と同様に操作することによって、空のソックスレーフラスコの重量mを測定した。n-ヘキサンへの抽出量Z[mg/L]は下記式から算出した。
Z={(m-m)×1000}/600
Z:ヘキサンへの抽出量[mg/L]
:空のソックスレーフラスコの重量[mg]
:抽出残渣を含むソックスレーフラスコの重量[mg]
【0050】
上記方法により測定されたヘキサン抽出量(すなわち、ヘキサンへの溶出量)は、30mg/L以下であると実用上、許容範囲である。
【0051】
【表1】
【0052】
表1からわかるように、実施例のシーラント用樹脂組成物は、良好なシール強度を示すと共に、及びヘキサンへの溶出量が抑制されているものであった。さらに、実施例1~11は、前述した式(1)~(6)を全て満たすものであった。
一方、比較例のシーラント用樹脂組成物は、シール強度、及びヘキサンへの溶出量の少なくとも一方において評価基準を満たさないものであった。
2018年3月30日に出願された日本国特許出願2018-067435号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。