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▶ マイクロポート(シャンハイ)メドボット カンパニー,リミティッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】手術ロボットシステム及びその手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/29 20060101AFI20220822BHJP
   A61B 34/37 20160101ALI20220822BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B34/37
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020534184
(86)(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2018114902
(87)【国際公開番号】W WO2019120005
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-08-05
(31)【優先権主張番号】201711394632.0
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519068560
【氏名又は名称】シャンハイ マイクロポート メドボット(グループ)カンパニー,リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ,タオ
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,シアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,チャオ
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-522017(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0046637(US,A1)
【文献】国際公開第2017/018048(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/29
A61B 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的構造ユニット及び圧力センサユニットを備える手術器具であって、
前記機械的構造ユニットは器具シャフト及びエンドエフェクタを備え、前記器具シャフトは、本体と、前記本体の遠位端から延びる接続部分とを備え、前記接続部分は、同軸で配置された第1のコネクタ及び第2のコネクタを備え、前記第1のコネクタは前記器具シャフトの前記本体に固定して接続され、前記第2のコネクタは前記エンドエフェクタに固定して接続され、
前記圧力センサユニットは、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとの間に配置された検知要素を備え、
前記エンドエフェクタがデカルト力を受けるとき、前記第2のコネクタが前記デカルト力を受け、前記検知要素に前記デカルト力を与え、前記検知要素は、前記デカルト力を検知し前記検知要素の当該検知から力データを取得し、それにより前記エンドエフェクタが受ける前記デカルト力を前記力データに基づいて特定するように構成される、手術器具。
【請求項2】
前記第1のコネクタは中空の支持シャフトであり、前記第2のコネクタは中空のベースであり、前記ベースは、前記エンドエフェクタの近位端の軸方向の延長から形成され、前記ベースは前記支持シャフトとスリーブ接続するように構成される、請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
前記第1のコネクタは外層構造であり、前記第2のコネクタは内層構造であり、前記外層構造は、前記検知要素が配置される溝を形成するように前記内層構造と径方向に接続される、請求項1に記載の手術器具。
【請求項4】
前記溝はU字型の軸方向断面を有する、請求項3に記載の手術器具。
【請求項5】
前記第1のコネクタの外面のサイズは、前記第2のコネクタの内面のサイズよりも小さく、
前記第2のコネクタの前記内面のサイズは、前記第1のコネクタの前記外面のサイズと、前記検知要素の径方向の寸法との和よりも小さい、請求項1に記載の手術器具。
【請求項6】
前記第2のコネクタの内面のサイズは、前記第1のコネクタの外面のサイズと前記検知要素の径方向の寸法との和よりも大きく、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとの間の弾性を増大させるために、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとの間に充填材が配置される、請求項1に記載の手術器具。
【請求項7】
前記第1のコネクタの内面のサイズは、前記第2のコネクタの外面のサイズよりも大きく、
前記第1のコネクタの前記内面の前記サイズは、前記第2のコネクタの前記外面の前記サイズと、前記検知要素の径方向の寸法との和よりも小さい、請求項1に記載の手術器具。
【請求項8】
前記第1のコネクタの内面のサイズは、前記第2のコネクタの外面のサイズと、前記検知要素の径方向の寸法との和よりも大きく、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとの間の弾性を増大させるために、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとの間に充填材が配置される、請求項1に記載の手術器具。
【請求項9】
前記充填材はゴム又はシリコーンから作製される、請求項6又は8に記載の手術器具。
【請求項10】
前記圧力センサユニットは一つの検知要素を含むか又は複数の検知要素を含み、前記複数の検知要素は、前記手術器具の周方向及び/又は軸方向に沿って分布している、請求項1に記載の手術器具。
【請求項11】
前記複数の検知要素は、前記手術器具の前記軸方向における複数の列に分布し、前記列の各々における前記検知要素は、前記手術器具の前記周方向において均一に分布している、請求項10に記載の手術器具。
【請求項12】
前記検知要素の列の各々は、前記検知要素の列のうちの隣接する列と互い違いに配置される、請求項11に記載の手術器具。
【請求項13】
スレーブデバイスを備える手術ロボットシステムであって、前記スレーブデバイスは、 ロボットアームと、請求項1~12のいずれか一項に記載の手術器具と、
を備え、
前記ロボットアームは、前記手術器具に取り外し可能に接続された末端部を有し、遠隔の運動中心の周りを旋回するように前記手術器具を駆動するように構成される、手術ロボットシステム。
【請求項14】
マスターデバイス及び制御ユニットを更に備え、前記マスターデバイスは力インジケータを備え、
前記制御ユニットは、前記マスターデバイス及び前記スレーブデバイスに通信可能に接続され、前記制御ユニットは、前記手術器具の前記検知要素から、前記エンドエフェクタが受ける前記デカルト力に関する情報を得るように構成され、前記情報を前記力インジケータに送信する、請求項13に記載の手術ロボットシステム。
【請求項15】
前記力インジケータは、モータが設けられたマスターマニピュレータであり、前記制御ユニットは、操作者が前記手術器具の前記末端部に作用する力を感じることを可能にするように、前記マスターマニピュレータの前記モータにトルクコマンドを発行するように構成される、請求項14に記載の手術ロボットシステム。
【請求項16】
前記マスターマニピュレータは振動モータを更に備え、前記手術器具の前記末端部に作用する力が予め定められた閾値を超えているとき、前記制御ユニットは前記マスターマニピュレータの前記振動モータに振動コマンドを発行し、前記操作者に、前記手術器具の前記末端部に作用する過剰な力について通知する、請求項15に記載の手術ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、医療デバイスの技術分野に関し、より詳細には、手術ロボットシステム及びその手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲手術は、創傷が小さく、回復が早いという利点により、ますます多くの患者により受け入れられており、従来の開放手術から徐々に進歩した低侵襲手術において、ますます多くの手術モードが適用されている。同時に、手術法の継続的発展により、対応する手術デバイスの開発及び進歩も大幅に促進された。初期のハンドヘルド手術デバイスは、機械化されたインテリジェント手術デバイスに継続的に置き換わっている。現代における最も発展した手術デバイスとして、手術ロボットシステムは、人々の医学的着想に絶えず影響を与えており、異なる機能を有する様々な低侵襲手術ロボットシステムが絶えず登場している。
【0003】
低侵襲手術において、腹腔鏡手術は、それが早期に実現されたことによって基本的に普及している。既存の腹腔鏡手術ロボットシステムの中で、ダビンチ(DaVinci)システムは、世界中で最も優れたロボットシステムのうちの一つとして認識されており、ダビンチシステムの使用は、ヨーロッパ及びアメリカをほとんどカバーしており、ダビンチシステムが絶対的利点を有することを反映している。ダビンチ手術ロボットシステムの基本的制御概念は、マスター/スレーブ遠隔制御動作の制御モードである。医師は、マスターコンソールのマスターマニピュレータを通じて、臨床ロボットの手術器具を制御する。一般に、臨床ロボットは、手術器具及び内視鏡を保持することが可能な複数のロボットアームを有する。しかしながら、手術ロボットシステムの手術器具は、従来の手術器具と異なり、より自動的でインテリジェントであるという特徴を有する。
【0004】
手術ロボットシステムの手術器具は、通常、4自由度、すなわち、回転、スイング、ピッチング及び開閉を含み、それによってヒトの手の作用を最も良好にシミュレートすることができる。医師がロボットを動作させるとき、手術器具の動作は、医師自身の手によって行われる動作に類似している。更に、手術器具は、ヒトの手よりも柔軟性が高く、ヒトの手にはできない動作を行うことができる。しかしながら、発明者が知るそのようなシステムにおける手術器具は、依然として複数の欠点があり、その主要なものは以下の通りである。
(1)いくつかの既存の手術ロボットには力フィードバック機構がなく、その手術器具が、動作中に、それらの動作環境及び状態を医師にフィードバックすることができない。結果として、医師は手術器具に対する視界の外からの干渉も、特定の身体組織に接触する手術器具も知覚することができないが、医師はそのことを認識することができず、それにより望ましくない動作が生じる場合がある。これは、操作中の医師の感覚及び動作結果に大幅に影響を与え、又は更には動作の失敗につながる。
(2)いくつかの手術ロボットは力フィードバック機構を含むが、力フィードバック機構の構造は複雑である。例えば、中国特許出願公開第101340850号に開示されている、力フィードバック機構を有する手術ロボットには、シャフトの長手方向軸に平行な歪みを検出するために、エンドエフェクタに接続されたシャフトの遠位端の外側に配置された複数の歪みゲージが設けられており、このとき、歪みに基づいて対応する力を計算することができる。上記の手術ロボットは、手術器具の力フィードバック機構を実現するための間接的な力フィードバック構造を用いる。歪みゲージ自体は、エンドエフェクタと直接接続されることも接触することもない。歪みゲージによって測定された歪みを手術器具に加えられる力に変換するには、より複雑なアルゴリズムが必要であり、間接的な力フィードバック機構の測定精度は比較的低く、手術ロボットのための手術器具の設計目的に合わない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願のいくつかの上記の目的は、手術ロボットシステム及びその手術器具を提供することによって、構造複雑性、計算複雑性及び低精度等の、手術器具の末端部に作用する接触力を測定するための従来のメカニズムの問題のうちの少なくとも一つを克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の態様によれば、機械的構造ユニット及び圧力センサユニットを備える手術器具が提供され、
機械的構造ユニットは器具シャフト及びエンドエフェクタを備え、器具シャフトは、本体と、本体の遠位端から延びる接続部分とを備え、接続部分は、径方向に分布した第1のコネクタ及び第2のコネクタを備え、第1のコネクタは器具シャフトの本体に固定して接続され、第2のコネクタはエンドエフェクタに固定して接続され、
圧力センサユニットは、第1のコネクタと第2のコネクタとの間に配置された検知要素を備え、検知要素は、接続部分によって検知要素に対して及ぼされる力を検知して、エンドエフェクタが受けるデカルト力を特定するように構成される。
【0007】
任意には、第1のコネクタは中空の支持シャフトであり、第2のコネクタは中空のベースであり、ベースは、エンドエフェクタの近位端の軸方向の延長から形成され、ベースは支持シャフトとスリーブ接続するように構成される。
【0008】
任意には、第1のコネクタは外層構造であり、第2のコネクタは内層構造であり、外層構造は、検知要素が配置される溝を形成するように内層構造と径方向に接続される。
【0009】
任意には、溝はU字型の軸方向断面を有する。
【0010】
任意には、第1のコネクタの外面のサイズは、第2のコネクタの内面のサイズよりも小さく、
第2のコネクタの内面のサイズは、第1のコネクタの外面のサイズと、検知要素の径方向の寸法との和よりも小さい。
【0011】
任意には、第2のコネクタの内面のサイズは、第1のコネクタの外面のサイズと検知要素の径方向の寸法との和よりも大きく、第1のコネクタと第2のコネクタとの間の弾性を増大させるために、第1のコネクタと第2のコネクタとの間に充填材が配置される。
【0012】
任意には、第1のコネクタの内面のサイズは、第2のコネクタの外面のサイズよりも大きく、
第1のコネクタの内面のサイズは、第2のコネクタの外面のサイズと、検知要素の径方向の寸法との和よりも小さい。
【0013】
任意には、第1のコネクタの内面のサイズは、第2のコネクタの外面のサイズと、検知要素の径方向の寸法との和よりも大きく、第1のコネクタと第2のコネクタとの間の弾性を増大させるために、第1のコネクタと第2のコネクタとの間に充填材が配置される。
【0014】
任意には、充填材はゴム又はシリコーンから作製される。
【0015】
任意には、圧力センサユニットは一つの検知要素を含むか又は複数の検知要素を含み、複数の検知要素は、手術器具の周方向及び/又は軸方向に沿って分布している。
【0016】
任意には、複数の検知要素は、手術器具の軸方向における複数の列に分布し、列の各々における検知要素は、手術器具の周方向において均一に分布している。
【0017】
任意には、検知要素の列の各々は、検知要素の列のうちの隣接する列と互い違いに配置される。
【0018】
本出願の別の態様によれば、スレーブデバイスを備える手術ロボットシステムが提供され、スレーブデバイスは、
ロボットアームと、
手術器具と、
を備え、
ロボットアームは、手術器具に取り外し可能に接続された末端部を有し、遠隔の運動中心の周りを旋回するように手術器具を駆動するように構成される。
【0019】
任意には、手術ロボットシステムは、マスターデバイス及び制御ユニットを更に備え、マスターデバイスは力インジケータを備え、
制御ユニットは、マスターデバイス及びスレーブデバイスに通信可能に接続され、制御ユニットは、手術器具の検知要素から、エンドエフェクタが受けるデカルト力に関する情報を得るように構成され、情報を力インジケータに送信する。
【0020】
任意には、力インジケータは、モータが設けられたマスターマニピュレータであり、制御ユニットは、操作者が手術器具の末端部に作用する力を感じることを可能にするように、マスターマニピュレータのモータにトルクコマンドを発行するように構成される。
【0021】
任意には、マスターマニピュレータは振動モータを更に備え、手術器具の末端部に作用する力がプリセットされた閾値を超えているとき、制御ユニットはマスターマニピュレータの振動モータに振動コマンドを発行し、操作者に、手術器具の末端部に作用する過剰な力について通知する。
【0022】
本出願に係る手術器具は、径方向に分布した第1のコネクタ及び第2のコネクタを有し、第1のコネクタと第2のコネクタとの間に圧力センサユニットの検知要素が配置され、検知要素は、第2のコネクタによって第1のコネクタに加えられる力を検知するように構成され、力情報に従って、手術器具のエンドエフェクタに作用するデカルト力を特定することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、圧力センサユニットは、歪み圧力センサ、ピエゾ抵抗圧力センサ又は圧電圧力センサである。接続領域において力を受けるために、第1のコネクタと第2のコネクタとの間に検知要素が配置される。手術器具のエンドエフェクタに外力(すなわち、デカルト力)がかけられるとき、第2のコネクタによって検知要素及び第1のコネクタに及ぼされる力により検知要素が変形し、変形情報を生成する。更に、変形情報に基づいて第1のコネクタと第2のコネクタとの間の圧力を特定することを通じて、手術器具のエンドエフェクタに作用するデカルト力を正確にかつ一義的に測定することができる。
【0024】
特に、手術器具の器具シャフトの遠位端は、二重層及び中空の支持シャフトを形成するように軸方向に延びる。好ましくは、支持シャフトは、U字型の軸方向断面を有する溝を有する。支持シャフトのU字型の薄壁に起因して、薄壁の特徴は、手術器具のエンドエフェクタに作用する力を特定する際の精度を更に改善することができる。
【0025】
モータ出力を用いて手術器具のエンドエフェクタに作用する力を計算する従来の解決策と比較して、本出願の手術器具は、より単純な力伝達経路及びより高い力測定精度の双方の利点を有する。更に、手術器具の末端部に作用する力は、追加の構成要素を必要とすることなく、より容易な方式で特定することができ、手術器具の構造的複雑性を低下させ、その組立てを容易にする。更に、手術器具に必要な変更は僅かであるため、僅かな変更で改変された後の様々な既存の手術器具を、本出願によって提案される手術ロボットシステムにおいて適切に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本出願の実施形態に係る手術ロボットシステムの構造概略図である。
図2a】本出願の実施形態に係る手術器具の構造概略図である。
図2b図2aに示す手術器具の部分拡大図である。
図3a】本出願の実施形態に係る、一体形成されない変形可能部分を有する手術器具の末端部の構造を概略的に示す。
図3b】本出願の別の実施形態に係る、一体形成されない変形可能部分を有する手術器具の末端部の構造を概略的に示す。
図4a】本出願の更なる実施形態に係る、一体形成された変形可能部分を有する手術器具の末端部の構造を概略的に示す。
図4b図4aに示す手術器具の末端部の断面図である。
図4c図4bに示す手術器具の末端部の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本出願の上記の及び他の目的、特徴及び利点は、図1図4と合わせて、提案される手術ロボットシステム及びその手術器具に関する以下の詳細な説明を読むことによってより明確になるであろう。図面は大幅に簡略化され、原寸に比例して描かれていない場合があり、その唯一の目的は、開示される実施形態の簡易的で明確な説明を容易にすることであることに留意されたい。本明細書において用いられるとき、「後端」、「末端部」又は「遠位」は、操作者からより遠く、患者により近い端部を指す一方で、「前端」又は「近位」は、操作者により近く、患者からより遠い端部を指す。本開示において用いられるとき、「一つの」(a)、「一つの」(an)及び「その」(the)の意味は、明確に別段の指示がない限り、単数及び複数の参照物を含む。
【0028】
以下で説明されるこれらの実施形態に係る手術ロボットシステムは、手術器具の末端部に作用する径方向の力及び/又は軸方向の力を測定することが可能である。
【0029】
図1は、手術ロボットシステムの構造概略図である。手術ロボットシステムは、手術カート1、ロボットアーム2、手術器具3、内視鏡4を備えるスレーブデバイスを含む。スレーブデバイス全体のベースとして、手術カート1は、上記のスレーブデバイスの全ての他の構成要素を支持する。一方、手術カート1は、スレーブデバイスが患者に接近するか又は患者から離れることを可能にするように、地面を移動可能である。
【0030】
複数の自由度を有するロボットアーム2が手術カート1に装着され、遠隔の運動中心の周りを旋回するように手術器具3を駆動するよう構成される。手術カート1が患者の近傍に移動すると、手術器具3が所定の標的手術部位に到達するようにロボットアーム2を調整することができる。換言すれば、手術カート1及びロボットアーム2の双方を調整することによって、遠隔の運動中心が手術部位の周辺に配置される。手術器具3は、固定接続又は可動接続を通じてロボットアーム2の末端部に取り外し可能に装着される。スレーブデバイスの出力として、手術器具3は、最終的に、標的病変を治療するために手術部位において患者の身体内に入る。
【0031】
内視鏡4は、手術器具3が結合されるのと異なる方のロボットアーム2の末端部に装着され、手術環境に関する画像情報を収集するように構成される。画像情報は、限定ではないが、病変の周辺の組織に関する情報と、手術器具3の姿勢及び位置に関する情報とを含むことができる。ロボットアーム2上に装着されるとき、内視鏡4は、内視鏡4によって収集された手術環境に関する情報のリアルタイムの表示を可能にするために、以下で詳述するようにマスターデバイスに通信可能に接続することができる。内視鏡4は、3次元であっても3次元でなくてもよく、これは本出願によって制限されない。
【0032】
図1を続けて参照すると、手術ロボットシステムはマスターデバイスを更に含み、マスターデバイスは、撮像システム5と、マスターマニピュレータ6と、アームレスト7と、コンソールベース8とを含む。手術動作中、撮像システム5によって表示されている内視鏡4からの情報を用いて、医師は、撮像システム5を通じて手術器具3の動きを観測し、それに応じて、マスターマニピュレータ6を操作することによって手術器具3の後続の動きを制御することができる。医師は、手術コンソールのところに座り、撮像システム5の支援により、生体内での手術器具の末端部の位置及び運動を観測することができる。この観測に基づいて、医師は、マスターマニピュレータ6を操作することによって末端部の多次元の動き(回転、スイング、ピッチング及び開閉等)を制御し、これにより低侵襲性の動作を可能にすることができる。アームレスト7は、手術動作が長時間続く場合に医師がより高い快適性を維持することができるように、医師の腕を支持することができる。更に、アームレスト7は、異なる医師の様々な需要に合うように昇降させることができる。マスターデバイスの基本構造として機能するコンソールベース8は、地面を自由に動くことができ、上述したマスターデバイスの全ての他の構造を支持する。
【0033】
手術ロボットシステムの特定の手術動作が以下に説明される。
【0034】
最初に、医師は、スレーブデバイスがより良好な動作位置にくるようにスレーブデバイスを手術台の近傍に押し、マスターデバイスを、医師の操作に好都合な比較的良好な操作位置に押すように、手術カート1及びコンソールベース8を制御する。
【0035】
次に、機械的アーム2の調整を通じて、手術器具3及び内視鏡4が外科的切開の近傍に駆動される。
【0036】
その後、患者に対する切開を通じて、手術器具3及び内視鏡4が患者の身体内に挿入される。
【0037】
最終的に、医師は、立体撮像システム5を通じて患者の身体内の手術器具3のエンドエフェクタの位置及び移動状態を観測し、マスターマニピュレータ6を通じてエンドエフェクタの位置及び移動状態を調整し、次に低侵襲手術を行う。
【0038】
明らかなように、マスターマニピュレータ6から手術器具3に対し行われる制御は、手術ロボットシステムにおけるマスター/スレーブ制御に対し基本的である。手術動作の実際の状況をより良好にシミュレートするために、すなわち、動作中の手術器具3に作用する力をシミュレートするために、手術器具3が、そこに作用する任意の力をマスターマニピュレータ6にフィードバックすること、すなわち、手術器具3に力フィードバック機能を与えることが望ましく、それによって、医師は適応的に手術動作を調整することができる。したがって、本出願は、検知デバイスが付いた手術器具と、対応する手術ロボットシステムとを提供する。
【0039】
特に、手術器具3は、手術器具3の末端部に作用する力を検知するための検知デバイス9を更に含む。手術ロボットシステムは、検知デバイス9によって取得される、手術器具3に作用する力に関する情報を送受信するための制御ユニット10を更に含む。制御ユニット10は、例えば、有線又は無線接続によってマスターデバイス及びスレーブデバイスの双方に通信可能に接続される。制御ユニット10は、制御戦略に基づいて、検知デバイス9からのデータを処理し、制御に要する様々なデータを計算する役割を果たす。制御ユニット10は、手術器具3の末端部に作用する力に関する情報をマスターデバイスの力インジケータに送信するように構成され、それによって、手術器具3の末端部に作用する力を医師が知覚することができる。
【0040】
力インジケータは、手術器具3の末端部に作用する力の大きさ及び方向を表示することができる撮像システム5とすることができる。代替的に、力インジケータは、モータを備えたマスターマニピュレータ6とすることができる。医師がシステムを操作する間、制御ユニット10は、手術器具3の末端部に作用する力に関する情報に基づいてマスターマニピュレータ6のモータを制御することができ、医師に作用する力を及ぼすことができる。明らかなように、マスターマニピュレータ6から手術器具3に対し行われる制御は、手術ロボットシステムにおけるマスター/スレーブ制御に対し基本的なものである。手術動作の実際の状況をより良好にシミュレートする、すなわち、動作中に手術器具3に作用する力をシミュレートするために、手術器具3が、そこに作用する任意の力をマスターマニピュレータ6にフィードバックし、力フィードバック機能を設けられることが可能であることが望ましい。検知デバイス9によって検知された力データに基づいて手術器具3の末端部に作用する力が特定されると、制御ユニット10は、マスターマニピュレータ6のモータにトルクコマンドを発行し、操作者が手術器具3の末端部に作用する力を知覚することを可能にすることができる。より好ましくは、マスターマニピュレータ6には、振動モータを設けることができる。この場合、検知デバイス9によって検知された力データから特定される、手術器具3の末端部に作用する力が、予め定められた閾値を超えているとき、制御ユニット10は、マスターマニピュレータ6の振動モータに振動コマンドを発行し、手術器具3の末端部に作用している過剰な力について操作者に通知することができる。
【0041】
本出願において、手術器具は、機械的構造ユニット及び圧力センサユニットを含む。機械的構造ユニットは、器具シャフト及びエンドエフェクタを含む。器具シャフトは、本体と、本体の遠位端から延びる接続部分とを含む。器具シャフトは、接続部分を通じてエンドエフェクタに接続され、圧力センサユニットは、本出願の検知デバイス9として機能し、その検知要素は、接続部分によってそこに加えられる力(すなわち、エンドエフェクタが受けるデカルト力)を検知する。次に、手術器具の実施について更に詳細に説明する。
【0042】
まず、図2a及び図2bを参照すると、図2aは、手術器具の機械的構造ユニットを概略的に示し、図2bは、図2aに示す手術器具の機械的構造ユニットの部分拡大図を示す。示すように、手術器具3の機械的構造ユニットは、電力モジュール301と、装着ベース302と、器具シャフト303と、力伝達機構304と、エンドエフェクタ305とを含む。
【0043】
電力モジュール301は、器具シャフト303の近位端に配置される一方で、エンドエフェクタ305は、器具シャフト303の遠位端に配置される。電力モジュール301は、力伝達機構によってエンドエフェクタ305に伝わる駆動力を提供し、これにより、エンドエフェクタ305が多次元回転運動及び/又は開閉動作等を行うことを可能にするように構成される。
【0044】
電力モジュール301は、外部モータに取り外し可能に接続され、外部モータから力を受けるように構成される。特に、電力モジュール301は、減速機を通じてモータに接続される。モータによって出力される力は、減速機によって増大され、次に電力モジュール301及び力伝達機構304を通じてエンドエフェクタ305に伝達される。例えば、力伝達機構304は、鋼線及び案内輪を含むワイヤ伝達である。鋼線は力を伝達するのに用いられ、案内輪は鋼線の延びる方向を調整するのに用いられる。特に、力伝達機構304は器具シャフト303を通り、電力モジュール301及びエンドエフェクタ305に接続される。エンドエフェクタ305は、患者の身体内の病変部位に対し、はさみ切断、締結及び把持等の特定の動作を実行するように構成される。エンドエフェクタ305は、はさみ、プライヤー、プローブ等であり得るため、本出願は、エンドエフェクタ305のいかなる特定のタイプにも限定されない。
【0045】
装着ベース302は、ロボットアーム2の末端部に取り外し可能に接続される。好ましくは、電力モジュール301は装着ベース302に収容される。器具シャフト303の近位端は装着ベース302に接続され、遠位端はエンドエフェクタ305に接続される。器具シャフト303は、エンドエフェクタ305が動作中に患者の部位を治療することができるように十分な長さを有する。
【0046】
器具シャフト303は、本体と、本体の遠位端から延びる接続部分320とを含む(図4aを参照)。接続部分320は、径方向に分布した第1の接続部材及び第2の接続部材を含み、第1の接続部材は、器具シャフトの本体に固定して接続され、第2の接続部材は、エンドエフェクタに固定して接続される。更に、圧力センサユニットの検知要素は、接続部分320によってそこに及ぼされる力を検知し、それによって接続部320に作用する力、及び更にはエンドエフェクタ305の応力全体(すなわち、エンドエフェクタ305に対するヒトの細胞からの反力)を特定するために、第1の接続部材及び第2の接続部材間に配置される、すなわち、器具シャフト303の接続部分320に位置する。接続部分320は、器具シャフト303の本体と別個にされてもよく、すなわち、別個に加工され、その後一体となるように共に組み立てられてもよい。更に、検知要素は、圧電歪みゲージ、ピエゾ抵抗歪みゲージ、歪みゲージ等の、接続部分320に作用する力を検知するための歪みゲージから選択することができる。いくつかの実施形態では、圧力センサユニットは、検知要素を含む回路を含む。検知要素が力に起因して変形し、抵抗が変化するとき、回路の電流又は電圧も変化する。較正された電流/電圧及び圧力間の関係に基づいて、圧力センサユニットは、検知要素に作用する圧力を検知する。
【0047】
例えば、図3aに示す実施形態において、第1のコネクタ及び第2のコネクタは、二つの別個の部材として設計される。特に、第2のコネクタは、エンドエフェクタ305の近位端に接続された末端部ベース310であり、末端部ベース310は、上述した力伝達機構304の通過を容易にする中空構造を有する。第1のコネクタは、器具シャフト303の本体に固定して接続された支持シャフト311である。同様に、支持シャフト311も、力伝達機構304の通過を容易にする中空構造を有する。支持シャフト311の直径及び材料は、器具シャフト303の他の部分と同じであってもよいし、又は異なっていてもよい。更に、一つ以上の検知要素312は支持シャフト311の外面(好ましくは円形の外面)に取り付けられる。好ましくは、複数の検知要素312は、支持シャフト311の周方向に沿って均一に分布している。より好ましくは、支持シャフト311には、軸方向に一様に分布した検知要素312の複数の列が設けられ、検知要素312の各列及び検知要素312の隣接する列は互い違いにされる。更に、締まり嵌めを得るために、末端部ベース310の内径は、支持シャフト311の外径よりも大きく、支持シャフト311の外径と検知要素312の径方向の寸法との和よりも僅かに小さく、それによって、支持シャフト311を末端部ベース310内に挿入し、末端部ベース310と共に固定することができる。ここで、検知要素312の径方向の寸法は、末端部ベース310又は支持シャフト311の断面方向に沿った検知要素312の厚みである。検知要素312の使用前に、締まり嵌めに起因した検知構成要素の測定誤差を、測定基準に対する調整を通じて除去することができる。他の実施形態では、末端部ベース310の内径は、支持シャフト311の外径と検知要素312の径方向の寸法との和よりも僅かに大きく、すなわち、二つの間に隙間嵌めが形成される。末端部ベース310が支持シャフト311と隙間嵌めされている場合、接続部分320の弾性を高めるために、好ましくは、弾性ゴム、シリコーン等の充填材が、末端部ベース310と支持シャフト311との間の隙間に設けられる。更に、末端部ベース310及び支持シャフト311は、好ましくは同軸で配置され、隙間嵌めされる。
【0048】
末端部ベース310と、その中にスリーブ接続された支持シャフト311とによって形成される接続部分320において、支持シャフト311は、器具シャフト303の本体に固定して接続され、末端部ベース310はエンドエフェクタ305に固定して接続され、検知要素312は支持シャフト311と末端部ベース310との間に配置される。手術器具3のエンドエフェクタ305がデカルト力を受け、このデカルト力を末端部ベース310に伝達するとき、末端部ベース310は、このデカルト力を検知要素312に対して及ぼす。この力は、検知要素312によって即座に検知される。したがって、末端部ベース310及び支持シャフト311に作用する力の測定を通じて、手術器具末端部305が受けるデカルト力は、正確にかつ一義的に測定することができ、更に、手術器具末端部の構造の変化によって生じる測定誤差を回避することができる。
【0049】
特に、実際の手術中、手術器具3のエンドエフェクタ305がヒトの組織によって及ぼされるデカルト力を受けるとき、エンドエフェクタ305は、このデカルト力を末端部ベース310に伝達し、次に末端部ベース310は、このデカルト力を、支持シャフト311の外面に取り付けられた検知要素312に対して及ぼす。したがって、検知要素312の検知により得られた力データに基づいて、手術器具3のエンドエフェクタ305が受けるデカルト力を知覚することができる。
【0050】
しかしながら、検知要素31は、支持シャフト311の外面に取り付けられることに限定されず、末端部ベース310の内面(好ましくは、円形の内面)にも取り付けられ得る。この場合、締まり嵌めを得るために、検知要素312が取り付けられた末端部ベース310の内径(すなわち、末端部ベース310の内径から検知要素312の径方向の寸法を減算したもの)は、支持シャフト311の外径よりも僅かに小さくすることができる。
【0051】
上記の実施形態と異なり、接続部分320の第1のコネクタは、第2のコネクタ上にスリーブ接続される。詳細については図3bを参照されたい。図3bに示す実施形態において、第2のコネクタは、エンドエフェクタ305の近位端に接続された末端部ベース313であり、末端部ベース313は、力伝達機構304の通過を容易にする中空構造を有する。第1のコネクタは、器具シャフト303の本体に固定して接続された支持シャフト314である。同様に、支持シャフト314も、力伝達機構304が通過することができるように中空構造を有する。支持シャフト314の直径及び材料は、器具シャフト303の他の部分と同じであってもよいし、又は異なっていてもよい。一つ以上の検知要素315が支持シャフト314の内面(好ましくは、円形の内面)に取り付けられる。上記の実施形態との違いは、末端部ベース313の外径が、支持シャフト314の内径よりも小さく、支持シャフト314の内径と、検知要素315の径方向の寸法との間の差よりも僅かに大きく、すなわち、末端部ベース313を締まり嵌め方式で支持シャフト314内に挿入することができることである。同様に、末端部ベース313の外径は、支持シャフト314の内径と検知要素315の径方向の寸法との差よりも僅かに小さくすることができ、すなわち、末端部ベース313と支持シャフト314との間に隙間嵌めを得ることができ、弾性ゴム、シリコーン等の充填材が、末端部ベース313と支持シャフト314との間の隙間に配置される。好ましくは、末端部ベース313は、支持シャフト314と同軸で配置され、隙間嵌めされる。
【0052】
検知要素315は、支持シャフト314の内面に加えて、末端部ベース313の外面(好ましくは、円形の外面)にも取り付けられる。この場合、締まり嵌めを得るために、検知要素315が取り付けられた末端部ベース313の外径(すなわち、末端部ベース313の外径と検知要素315の径方向の寸法との和)は、支持シャフト314の内径よりも僅かに大きいか、又は隙間嵌めを得るために、末端部ベース313の外径及び検知要素315の径方向の寸法は、支持シャフト314の内径よりも僅かに小さく、二つの間の隙間を充填するために充填材が用いられる。
【0053】
上記の末端部ベース310、313のいずれも、エンドエフェクタ305の近位端の軸方向の延長によって形成することができる。
【0054】
更に、第1のコネクタ及び第2のコネクタは、手術器具の構造を単純化し、手術器具のサイズを最適化するために、一つの部品として設計されてもよい。上記の実施形態と同様に、図4a図4cに示す別の好ましい解決策では、第1のコネクタは、器具シャフト303の本体の遠位端に接続された外層構造323として実施される。外層構造323は、力伝達機構304の通過を容易にするための中空構造を有する。第2のコネクタは、エンドエフェクタ305の近位端に接続された内層構造324として実施され、内層構造324は、上述した力伝達機構304の通過を容易にするように中空にされる。接続部分320は、エンドエフェクタ305に固定して接続され、好ましくは、内層構造324はエンドエフェクタ305に固定して接続される。特に、外層構造323は、内層構造324の周縁部に配置され、内層構造324に径方向に接続され、共に器具シャフトの接続部分320のシャフトアームを形成する。このため、溝322が内層構造324と外層構造323との間に形成される。好ましくは、溝322はU字形状である。好ましくは、溝322内に補強板を設けて、その構造強度を強化する。更に、一つ以上の検知要素321が溝322内に配置され、例えば接続部分320の外層構造323の内面に取り付けられるか、又は接続部分320の内層構造324の外面に取り付けられる。好ましくは、接続部分320の弾性を増大させるために、溝322内に、弾性ゴム、シリコーン等の充填材が設けられる。
【0055】
エンドエフェクタ305がヒトの組織によって加わる力を受けるとき、接続部分320のシャフトアームの中空構造に起因して、溝322を形成する内層及び外層構造がある程度変形し、それによって検知要素321を圧搾する場合があり、したがって検知要素321が変形することが理解されるべきである。変形に従って、圧力センサユニットは、検知要素321が受ける力を特定することができ、次に、エンドエフェクタ305に作用する力(その大きさ及び方向を含む)を検知することができ、最終的に手術器具の末端部に作用する力を特定することができる。任意には、複数の検知要素321が溝322内に周方向に一様に分布し、より好ましくは、溝322には、周方向に、かつ軸方向に沿って一様に分布した検知要素321の複数の列が設けられ、これにより検出の精度が改善される。
【0056】
手術器具の構造に関する詳細な説明が上記で与えられたが、当然ながら、本出願は、限定ではないが、上記で説明した構成を含み、そこに行われる任意の改変も本出願の範囲内にあると意図される。当業者は、上記の実施形態の教示に照らして他の実施形態に到達し得る。
【0057】
更に、本出願は、手術ロボットシステムも提供する。手術ロボットシステムはスレーブデバイスを含む。スレーブデバイスは、上述したロボットアーム及び手術器具を含む。手術器具は、遠隔の運動中心の周りを動き回るように手術器具を駆動することができるように、ロボットアームの末端部に取り外し可能に接続される。更に、手術ロボットシステムは、マスターデバイス及び制御ユニットを更に含む。マスターデバイスは力インジケータを含む。制御ユニットは、マスターデバイス及びスレーブデバイスと通信可能に接続される。制御ユニットは、手術器具の検知要素からエンドエフェクタによって受信されたデカルト力の情報を特定し、その情報を力インジケータに送信するように構成される。更に、制御ユニット10は、既存のPLCコントローラ、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ等を利用することができ、当業者は、当該技術分野における共通の一般的知識と組み合わせて、本明細書における開示に基づいてそのような選択をどのように実施するかを理解するであろう。
【0058】
本出願に係る手術器具は、径方向に分布した第1のコネクタ及び第2のコネクタを有し、第1のコネクタと第2のコネクタとの間に検知要素が配置され、検知要素は、手術器具の器具シャフトの末端部に作用する力を検知することができ、次に、手術器具のエンドエフェクタが受けるデカルト力が特定される。更に、いくつかの実施形態では、圧力センサユニットは、歪み圧力センサ、ピエゾ抵抗圧力センサ又は圧電圧力センサであり、接続部分に作用する力を検知するために、第1のコネクタと第2のコネクタとの間に検知要素が配置される。手術器具の末端部は外力をかけられ、それによって第1のコネクタ及び第2のコネクタはそれに応じて力をかけられ、その力を検知要素に伝達し、これにより検知要素が変形する。そのような変形は、検知要素によって即座に検知され、それによって、接続部分に作用する力を特定することができる。したがって、第1のコネクタと第2のコネクタとの間の圧力は、変形情報から求められ、手術器具の末端部に作用するデカルト力を、正確にかつ一義的に測定することができる。
【0059】
特に、手術器具の器具シャフトの遠位端は、二重層の中空の支持シャフトを形成するように軸方向に延びる。好ましくは、支持シャフトは、U字型の軸方向断面を有する溝を有する。支持シャフトのU字型の薄壁に起因して、手術器具の末端部に作用する力の特定精度を更に改善することができる。
【0060】
モータ出力を用いて手術器具の末端部に作用する力を計算する従来の解決策と比較して、本出願の手術器具は、より単純な力伝達経路及びより高い力測定精度の双方の利点を有する。更に、手術器具の末端部に作用する力は、追加の構成要素を必要とすることなく、手術器具の構造と独立して容易な方式で特定することができ、手術器具の構造複雑度を低下させ、その組立てを容易にする。更に、手術器具において必要とされる変更は僅かであるため、僅かな変更で改変された後の様々な既存の手術器具を、本出願によって提案される手術ロボットシステムにおいて適切に用いることができる。
【0061】
上記の説明は、本開示の好ましい実施形態のみを説明し、本開示の範囲を限定するように意図されない。上記の開示に従って当業者によって行われる任意の変更及び改変は全て、添付の特許請求の範囲の保護範囲内にある。
【符号の説明】
【0062】
1 手術カート
2 ロボットアーム
3 手術器具
301 電力モジュール
302 装着ベース
303 器具シャフト
304 力伝達機構
305 エンドエフェクタ
4 内視鏡
5 撮像システム
6 マスターマニピュレータ
7 アームレスト
8 コンソールベース
9 検知デバイス
10 制御ユニット
310、313 末端部ベース
312、315、321 検知要素
311、314 支持シャフト
320 接続部分
323 外層構造
324 内層構造
322 溝
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c