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特許7127130EMM-31材料並びにその方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】EMM-31材料並びにその方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20220822BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20220822BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220822BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20220822BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20220822BHJP
   C07D 207/09 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/70 M
B01J20/28 Z
B01J20/30
B01J20/18 A
C07D207/09
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020534486
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 US2018060916
(87)【国際公開番号】W WO2019125655
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】62/608,602
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル・テクノロジー・アンド・エンジニアリング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(72)【発明者】
【氏名】カーク・ディ・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】アレン・ダブリュー・バートン
(72)【発明者】
【氏名】ヒルダ・ビー・ブローマン
(72)【発明者】
【氏名】カール・ジー・ストローマイアー
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・シー・ウエストン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エイ・マレラ
(72)【発明者】
【氏名】ロス・マボン
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0158521(US,A1)
【文献】特表2013-534896(JP,A)
【文献】特表2012-505146(JP,A)
【文献】特表2015-518814(JP,A)
【文献】特表2009-523114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/48
B01J 29/70
B01J 20/28
B01J 20/30
B01J 20/18
C07D 207/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1のXRDピークを有する結晶性材料であって:
【表1】
前記材料中に存在する一部又はすべての構造指向剤は除去されている、結晶性材料。
【請求項2】
単位セル中の四面体(T)原子に関する以下の表2中の連結性によって規定されるフレームワークを有する結晶性材料であって、前記四面体(T)原子が架橋原子によって連結され:
【表2】
【表3】
【表4】
前記材料中に存在する一部又はすべての構造指向剤は除去されている、結晶性材料。
【請求項3】
0.10~0.25cc/gの微細孔容積を有する、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
aパラメータが17.9±0.5Åであり、bパラメータが21.4±0.5Åであり、cパラメータが20.0±0.5ÅであるC中心単位セルを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
60~150mg/gのn-ヘキサン又は40~100mg/gのメシチレンの吸着に適している、請求項1~4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
以下の表XRDピークを有し:
【表5】
(i)0.10~0.25cc/gの微細孔容積を有する;(ii)aパラメータが17.9±0.5Åであり、bパラメータが21.4±0.5Åであり、cパラメータが20.0±0.5ÅであるC中心単位セルを有する;又は(iii)60~150mg/gのn-ヘキサン、若しくは40~100mg/gのメシチレンの吸着に適している、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項7】
式I:
(v)X:YO(式I)
(式中、0.0005≦v≦0.1であり、Xは三価元素であり、Yは四価元素である)
で表される、請求項1~6のいずれか一項に記載の材料。
【請求項8】
XがBである場合、YのXに対するモル比が5~25である、請求項7に記載の材料。
【請求項9】
XがAlである場合、YのXに対するモル比が100~500である、請求項7に記載の材料。
【請求項10】
表3:
【表6】
XRDピークを有する、製造されたままの結晶性材料。
【請求項11】
aパラメータが17.9±0.5Åであり、bパラメータが21.3±0.5Åであり、cパラメータが20.2±0.5ÅであるC中心単位セルを有する、請求項10に記載の材料。
【請求項12】
式II:
(n)G:(v)X:YO(式II)
(式中、0.01≦n≦0.3であり、0.0005≦v≦0.1であり、Gは有機構造指向剤であり、Xは三価元素であり、Yは四価元素である)
で表される、請求項10又は11に記載の材料。
【請求項13】
XがBである場合、YのXに対するモル比が10~40である、請求項12に記載の材料。
【請求項14】
GのYに対するモル比が0.1~0.2である、請求項12又は13に記載の材料。
【請求項15】
水酸化物イオンの供給源と、四価元素Yの酸化物の供給源と、三価元素Xの供給源と、ビスピロリジニウムジカチオンを含む構造指向剤(G)とを含む組成物を混合することを含む、請求項10~14のいずれか一項に記載の材料の製造方法。
【請求項16】
一部又はすべての前記構造指向剤を除去することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
有機構造指向剤(G)が以下の構造:
【化1】
(化合物E)
(式中、Aはイオンである)
を含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
両方のAイオンが水酸化物イオンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
フレームワーク中のBをAlと交換するのに十分な条件下で、XがBでありYがSiである前記材料をAl源に接触させる、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
有機化合物を請求項1~9のいずれか一項に記載の材料に接触させることを含む、有機化合物を変換生成物に変換する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、EMM-31と呼ばれる材料、そのような材料の製造方法、これらの材料の使用、そのような材料の製造に使用される試薬、並びにそれらの試薬を製造するための方法及び中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、吸着剤として、及び炭化水素変換の触媒若しくは触媒担体として使用することができる。ゼオライトは、チャネルによって相互接続される均一な空隙及び細孔を有する。空隙及び細孔のサイズ及び寸法によって、あるサイズの分子の吸着が可能となる。サイズ選択によって分子を吸着するそれらの能力のために、ゼオライトは、炭化水素変換、例えば、クラッキング、水素化分解、不均化、アルキル化、オリゴマー化、及び異性化などの多くに使用されている。
【0003】
触媒作用における用途が見出されているゼオライトとしては、いずれかの天然又は合成の結晶性ゼオライトが挙げられる。これらのゼオライトの例としては、大細孔ゼオライト、中間孔径ゼオライト、及び小細孔ゼオライトが挙げられる。これらのゼオライト及びそれらのアイソタイプは、参照により本明細書に援用される、“Atlas of Zeolite Framework Types”,eds.Ch.Baerlocher,L.B.McCusker,及び D.H.Olson,Elsevier,Sixth Edition,2007に記載されている。大細孔ゼオライトは、一般に少なくとも約7Åの孔径を有し、LTL、VFI、MAZ、FAU、OFF、BEA、及びMORのフレームワークタイプのゼオライトが挙げられる(IUPAC Commission of Zeolite Nomenclature)。大細孔ゼオライトの例としては、マッシィ沸石、オフレタイト、ゼオライトL、VPI-5、ゼオライトY、ゼオライトX、オメガ、及びベータが挙げられる。中間孔径ゼオライトは、一般に約5Åから約7Å未満までの孔径を有し、例えば、MFI、MEL、EUO、MTT、MFS、AEL、AFO、HEU、FER、MWW、及びTONのフレームワークタイプのゼオライトが挙げられる(IUPAC Commission of Zeolite Nomenclature)。中間孔径ゼオライトの例としては、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-22、MCM-22、シリカライト1、及びシリカライト2が挙げられる。小孔径ゼオライトは、約3Åから約5.0Å未満までの孔径を有し、例えば、CHA、ERI、KFI、LEV、SOD、及びLTAフレームワークタイプのゼオライトが挙げられる(IUPAC Commission of Zeolite Nomenclature)。小細孔ゼオライトの例としては、ZK-4、ZSM-2、SAP0-34、SAP0-35、ZK-14、SAP0-42、ZK-21、ZK-22、ZK-5、ZK-20、ゼオライトA、菱沸石、ゼオライトT、グメリン沸石、ALP0-17、及びクリノプチロライトが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
細孔のトポロジー、サイズ、及び形状の最小の変化でさえも、収着選択性、並びに触媒活性及び選択性に大きな影響が生じることがあり、したがって新しいゼオライトが非常に追求されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、EMM-31結晶性材料、これらの材料の製造方法、それらの使用、そのような材料の製造に使用される試薬、並びにそれらの試薬を製造するための方法及び中間体を提供する。一態様では、本開示は、表1から選択される度2θにおいて少なくとも6個のX線回折(XRD)ピークを有する結晶性材料(一部又はすべてのSDAが除去されている場合)を提供する。
【0006】
【表1】
【0007】
さらなる一態様では、単位セル中の四面体(T)原子に関する以下の表2中の連結性によって規定されるフレームワークを有する結晶性材料が本明細書において提供され、四面体(T)原子は架橋原子によって連結される。
【0008】
【表2】
【0009】
【表3】
【0010】
【表4】
【0011】
別の一態様では、本開示は式I:
(v)X:YO (式I)
で表される材料を提供し、式中、0.0005≦v≦0.1であり、Xは三価元素であり、Yは四価元素である。
【0012】
さらに別の一態様では、表3から選択される度2θにおいて少なくとも6個のXRDピークを有する製造されたままの結晶性材料(SDAが除去されていない場合)が本明細書において提供される。
【0013】
【表5】
【0014】
さらに別の一態様では、本開示は、本明細書に記載の材料の製造方法を提供する。
【0015】
さらなる一態様では、製造されたままのEMM-31の製造に使用できる構造指向剤である化合物Eが本明細書において提供される。化合物Eは以下の構造:
【化1】
(化合物E)
(式中、Aはイオンである)
を有する。
さらなる一態様では、本開示は、化合物Eの製造方法も提供する。
【0016】
本概要などの本明細書中に記載されるいずれか2つ以上の特徴を組み合わせて、本明細書に特に記載されない特徴の組み合わせを形成することができる。1つ以上の特徴の詳細が添付の図面及び以下の説明に示される。その他の特徴及び利点は、説明及び図面、並びに請求項から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ナトリウム含有試薬を使用する製造されたままのEMM-31材料の粉末XRDパターンを示している。
図2】カリウム含有試薬を使用する製造されたままのEMM-31材料の粉末XRDパターンを示している。
図3】熱処理されたEMM-31材料の粉末XRDパターンを示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
EMM-31と呼ばれる材料、これらの材料の製造方法、それらの使用、EMM-31を製造するための構造指向剤などの試薬、それらの試薬を製造するための方法及び中間体が本明細書に提供される。一部又はすべての有機テンプレートが除去されている(例えば、構造指向剤(SDA)を除去するための熱処理又はその他の処理)EMM-31は、三価元素の酸化物(例えば、X)及び四価元素の酸化物(例えば、YO)の化学組成を有するとして記載することができ、これらの酸化物は種々のモル比で存在することができる。Xは三価元素であり、Yは四価元素である。製造されたままのEMM-31(すなわち、SDAを除去するための熱処理又はその他の処理の前)は、合成の試薬の1つであるSDAを含む場合がある。一態様では、製造されたままのEMM-31に対して熱処理を行うことで、一部又はすべてのSDAを除去することができる。製造されたままのEMM-31の熱処理(例えば、焼成)では、典型的には材料が、加熱炉中、空気、窒素、又はそれらの混合物から選択される雰囲気中で、高温、例えば、400~700℃に曝露する。別の一態様では、製造されたままのEMM-31のオゾン処理を使用して、一部又はすべてのSDAを除去することができる。一部又はすべてのSDAが除去されているEMM-31は、吸着剤として、並びに炭化水素変換、例えば有機化合物から変換生成物への変換の触媒又は触媒担体として使用することができる。
【0019】
一態様では、SDAのすべての一部が除去されているEMM-31材料は、表1から選択される度2θにおいて少なくとも6個のXRDピークを有する。
【0020】
【表6】
【0021】
1つ以上の態様では、EMM-31材料(一部又はすべてのSDAが除去されている場合)は、表1Aから選択される度2θ及びd間隔値を有する少なくとも6個のXRDピークを有することができ、ここでd間隔値は、ブラッグの法則を用いてd間隔の対応する値に変換する場合に対応する偏差±0.20度2θに基づいて求められる偏差を有する。
【0022】
【表7】
【0023】
本明細書に記載のXRDピークを有するXRDパターンにはCu(Kα)放射線が使用される。EMM-31材料は、表1又は表1Aから選択される少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、又は10個のXRDピークを有することができる。
【0024】
EMM-31材料(一部又はすべてのSDAが除去されている場合)は、単位セル中の四面体(T)原子に関する表2中の連結性によって規定されるフレームワークを有することができ、ここで四面体(T)原子は架橋原子によって連結される。連結性は、ゼオライト及びゼオタイプにおけるトポロジー的及び結晶学的四面体部位の分析のためのFortranコードであるコンピューターアルゴリズムのzeoTsitesによって計算することができる。例えば、G.Sastre,J.D.Gale,Microporous and Mesoporous Materials 2001,43,pages 27-40を参照されたい。四面体原子は、B、Al、Fe、Ga、Si、Ge、Sn、Ti、及びZr、又はそれらの混合物から選択される1つ以上の元素を含むことができる。例えば、四面体原子は、B、Al、又はSi、又はそれらの混合物から選択することができる。例えば、四面体原子は、Si若しくはAlを含むことができる、又はSi若しくはAlであってよい。架橋原子は、O、N、及びC、又はそれらの混合物から選択することができる。架橋原子は酸素原子であってよい(例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の架橋原子が酸素であってよい)。架橋原子Cは、ゼオライトの形成に使用される種々の供給源、例えばシリカ源から含まれることができる。架橋原子Nは、SDAが除去された後にゼオライト中に混入されうる。
【0025】
1つ以上の態様では、EMM-31材料(熱処理又はその他の処理によって、一部又はすべてのSDAが除去されている場合)は、0.10~0.25cc/g、例えば0.22cc/g微細孔容積を有することができる。
【0026】
例えば、この材料(一部又はすべてのSDAが除去されている場合)は、以下の表から選択されるXRDピークを有することができ、0.10~0.25cc/gの微細孔容積を有することができる。
【0027】
【表8】
【0028】
1つ以上の態様では、EMM-31材料(一部又はすべてのSDAが除去されている場合)は、aパラメータが17.9±0.5Åであり、bパラメータが21.4±0.5Åであり、cパラメータが20.0±0.5ÅであるC中心単位セルを有することができる。
【0029】
例えば、この材料は、以下の表から選択されるXRDピークを有し、aパラメータが17.9±0.5Åであり、bパラメータが21.4±0.5Åであり、cパラメータが20.0±0.5ÅであるC中心単位セルを有することができる。
【0030】
【表9】
【0031】
1つ以上の態様では、EMM-31材料(一部又はすべてのSDAが除去されている場合)は、n-ヘキサン成分を含有する流体と接触させると、1g(グラム)のEMM-31材料当たり少なくとも60mg(ミリグラム)のn-ヘキサン(例えば、60~150mg/gのn-ヘキサン)を吸着することができる。この材料は、少なくとも40mg/gのメシチレン(例えば、40~100mg/gのメシチレン)の吸着にも適切となりうる。例えば、この材料は、70~140、80~120、90~110、又は100mg/gのn-ヘキサンを吸着することができる。この材料は、40~80、50~70、又は60mg/gのメシチレンを吸着することができる。
【0032】
例えば、この材料(一部又はすべてのSDAの場合)は、以下の表から選択されるXRDピークを有することができ、少なくとも60mg/gのn-ヘキサン(例えば、60~150mg/gのn-ヘキサン若しくは100mg/gのn-ヘキサン)又は少なくとも40mg/gのメシチレン(例えば、40~100mg/gのメシチレン若しくは60mg/gのメシチレン)を吸着することができる。
【0033】
【表10】
【0034】
例えば、この材料(一部又はすべてのSDAが除去されている場合)は、以下の表から選択されるXRDピークを有することができ、(i)0.10~0.25cc/gの微細孔容積を有することができる;(ii)aパラメータが17.9±0.5Åであり、bパラメータが21.4±0.5Åであり、cパラメータが20.0±0.5ÅであるC中心単位セルを有することができる;及び/又は(iii)少なくとも60mg/gのn-ヘキサン(例えば、60~150mg/gのn-ヘキサン)若しくは少なくとも40mg/gのメシチレン(例えば、40~100mg/gのメシチレン)を吸着することができる。
【0035】
【表11】
【0036】
1つ以上の態様では、EMM-31材料(一部又はすべてのSDAが除去されている場合)は場合により式I:
(v)X:YO (式I)
で表すことができ、式中、0.0005≦v≦0.1であり、Xは三価元素であり、Yは四価元素である。Xは、B、Al、Fe、及びGa、又はそれらの混合物から選択することができる。例えば、XはAlを含むことができる、若しくはAlであってよく、又はXはBを含むことができる、若しくはBであってよい。Yは、Si、Ge、Sn、Ti、及びZr、又はそれらの混合物から選択することができる。例えば、YはSiを含むことができる、又はSiであってよい。式I中の酸素は、炭素原子(例えば、CHの形態)で置換することができ、これは製造されたままのEMM-31の製造に使用される試薬の供給源に由来することができる。式I中の酸素は、例えばSDAが除去された後に、窒素原子で置換することもできる。式Iは、一部又はすべてのSDAが除去されている典型的なEMM-31材料のフレームワークを表すことができるが、EMM-31材料の唯一の表現であることを意味するものではない。EMM-31材料は、SDA及び不純物を除去するための適切な処理の後にSDA及び/又は不純物を含む場合があり、これらは式I中には示されていない。さらに、式Iは、EMM-31材料中に存在しうるプロトン及び電荷補償イオンを含んでいない。
【0037】
変数vは、式I中のXのモル比の関係を示している。例えば、vが0.0005である場合、YのXに対するモル比は1000である(例えば、Si/B又はSi/Alのモル比は1000である)。vが0.1である場合、YのXに対するモル比は5である(例えば、Si/B又はSi/Alのモル比は5である)。XがBである場合、YのXに対するモル比は5~40又は5~25となりうる(例えば、Si/Bのモル比は、5~40又は5~25である)。XがAlである場合、YのXに対するモル比は、50~1000、100~1000、200~1000、300~1000、400~1000、又は500~1000となりうる(例えば、Si/Alのモル比は、100~1000又は500~1000である)。
【0038】
製造されたままの(例えば、SDAを除去するための処理が行われていない)EMM-31材料は、表3から選択される度2θにおいて少なくとも6個のXRDピークを有することができる。
【0039】
【表12】
【0040】
製造されたままの(例えば、SDAを除去するための処理が行われていない)EMM-31材料は、表3Aから選択される度2θ及びd間隔値を有する少なくとも6個のXRDピークを有することができ、ここでd間隔値は、ブラッグの法則を用いてd間隔の対応する値に変換する場合に対応する偏差±0.20度2θに基づいて求められる偏差を有する。
【0041】
【表13】
【0042】
製造されたままのEMM-31材料は、表3又は表3Aから選択される少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、又は10個のXRDピークを有することができる。
【0043】
1つ以上の態様では、製造されたままのEMM-31材料は、aパラメータが17.9±0.5Åであり、bパラメータが21.3±0.5Åであり、cパラメータが20.2±0.5ÅであるC中心単位セルを有すると記載することができる。例えば、製造されたままの材料は、表3又は表3Aから選択される少なくとも6個のXRDピークと、aパラメータが17.9±0.5Åであり、bパラメータが21.3±0.5Åであり、cパラメータが20.2±0.5ÅであるC中心単位セルとを有することができる。例えば、製造されたままのEMM-31材料は、表3又は表3Aから選択される少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、又は10個のXRDピークと、パラメータが17.9±0.5Åであり、bパラメータが21.3±0.5Åであり、cパラメータが20.2±0.5ÅであるC中心単位セルとを有することができる。
【0044】
1つ以上の態様では、製造されたままのEMM-31材料は場合により式II:
(n)G:(v)X:YO (式II)
で表すことができ、式中、0.01≦n≦0.3であり、0.0005≦v≦0.1であり、Gは有機構造指向剤であり、Xは三価元素であり、Yは四価元素である。Xは、B、Al、Fe、及びGa、又はそれらの混合物から選択することができる。例えば、XはAl若しくはBを含むことができる、又はAl若しくはBであってよい。Yは、Si、Ge、Sn、Ti、及びZr、又はそれらの混合物から選択することができる。例えば、YはSiを含むことができる、又はSiであってよい。式IIは、SDAを有する典型的な製造されたままのEMM-31材料のフレームワークを表すことができるが、このような材料の唯一の表現であることを意味するものではない。製造されたままのEMM-31材料は、式IIによって表されていない不純物を含む場合がある。さらに、式IIは、製造されたままのEMM-31材料中に存在しうるプロトン及び電荷補償イオンを含まない。式Iと同様に、式II中の酸素は、炭素原子(例えば、CHの形態)で置換することができ、これは製造されたままのEMM-31の製造に使用される試薬の供給源に由来することができる。
【0045】
変数vは、式II中のXのモルの関係を示している。式II中の変数vの値は、式Iに関して本明細書に記載される値と同じである。変数nは、式II中のSDA(G)のモルの関係を示している。例えば、nが0.01である場合、GのYに対するモル比は0.01である。nが0.3である場合、GのYに対するモル比は0.3である。GのYに対するモル比は、0.1~0.2又は0.1又は0.15であってよい。
【0046】
製造されたままのEMM-31材料の製造に使用される方法は:
(i)水酸化物イオンの供給源と、四価元素Yの酸化物の供給源と、三価元素Xの供給源と、ビスピロリジニウムジカチオンを含む構造指向剤(G)とを含む組成物を混合することと;
(ii)混合された組成物を加熱することと;
(iii)EMM-31材料の結晶を単離することと、
として記載することができる。言い換えると、製造されたままのEMM-31材料は、組成物からEMM-31材料の結晶を単離することを含む方法によって製造することができる。この方法は、組成物を加熱することをさらに含むことができる。この方法は、構造指向剤(G)、例えばビスピロリジニウムジカチオンを含む組成物を混合することをさらに含む。或いは、EMM-31は、SDAを使用せずに製造することができる。水酸化物イオンの供給及び四価元素Yの酸化物の供給源の組成物は、三価元素Xの供給源も含むことができる。例えば、EMM-31の製造に使用される組成物は、水酸化物イオンの供給源、四価元素Yの酸化物の供給源、三価元素Xの供給源、及びビスピロリジニウムジカチオンなどのSDA(G)を含むことができる。この組成物は、YOのHXO(例えば、HBO)に対するモル比又はYOのX(例えば、Al)に対するモル比が5~30(例えば、5~15)であってよい。この組成物は、HOのYOに対するモル比が1~50(例えば、10~40)であってもよい。この組成物は、OHのYOに対するモル比が0.05~0.6(例えば、0.15~0.5)であってもよい。この組成物は、GのYOに対するモル比が0.03~0.3(例えば、0.05~0.3、又は0.05~0.2)であってよい。合成中に使用される三価元素Xは、製造されたままの材料がボロシリケートとなるBであってよい。
【0047】
CHの形態の炭素は、EMM-31の製造に使用される試薬の種々の供給源、例えば、四価元素源(シリカ源)中に存在することができ、架橋原子としてEMM-31フレームワーク中に組み込むことができる。窒素原子は、SDAを架橋原子として除去した後に、EMM-31材料のフレームワーク中に組み込むことができる。
【0048】
場合により、製造されたままのEMM-31材料は、三価元素Xの供給源をSDAの水酸化物溶液と混合し、続いてこの混合物に四価のYの供給源を加えて成分のベース混合物を形成することによって製造することができる。EMM-31材料のシードをこのベース混合物に加えることができる。1つ以上の態様では、溶媒調整(例えば水のシリカに対する所望の比が実現される)後の混合物が、撹拌又は高速混合などの機械的方法によって、例えば、二重非対称遠心分離混合(例えば、FlackTek speedmixer)を1000~3000rpm(例えば、2000rpm)の混合速度で使用して、混合されることで、ベース混合物の適切な均質化が保証される。ベース混合物中の試薬の性質によるが、溶媒のYOに対する所望のモル比が結果として得られる混合物で実現されるように、ベース混合物のある量の溶媒(例えば、水酸化物溶液からの水、並びに場合によりシリカ源の加水分解によるメタノール及びエタノール)を除去することができる。溶媒含有量を減少させるための適切な方法としては、周囲空気、乾燥窒素、乾燥空気などの静止雰囲気又は流動雰囲気下での蒸発、又は噴霧乾燥若しくは凍結乾燥による方法を挙げることができる。溶媒除去プロセス中に除去される水が多すぎる場合、所望のHO/YOモル比を実現するために得られた混合物に水を加えることができる。
【0049】
混合された混合物は、次に、EMM-31材料の形成に適切な結晶化条件に置かれる。EMM-31材料の結晶化は、静的又は撹拌条件下、例えば対流オーブン中に入れられたポリプロピレンジャー又はTeflonでライニングされた若しくはステンレス鋼(SS)のオートクレーブなどの適切な反応器中、約100~約200℃の温度において、結晶化が起こるのに十分な時間、例えば、約1日~約30日(例えば、1日~14日、又は1日~7日)維持することで行うことができる。本明細書において別に示されなければ、測定される温度は、材料が加熱される周囲環境の温度であり、例えば材料が加熱される雰囲気の温度である。その後、製造されたままのEMM-31材料の固体結晶が、液体から(例えば、濾過又は遠心分離)によって分離され、回収される。
【0050】
四価元素Yの供給源の例は、シリカ、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、アルカリ金属ケイ酸塩、オルトケイ酸テトラアルキル(例えば、オルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラメチルなど)、及び酸化ゲルマニウム、又はそれらの混合物のコロイド懸濁液から選択することができる。シリカの供給源の別の例としては、LUDOX(登録商標)(例えば、LUDOX(登録商標)LS-30、LUDOX(登録商標)AS-40)コロイダルシリカ、SIPERNAT(登録商標)沈降シリカ、CARBOSPERSE(商標)ヒュームドシリカ懸濁液、又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0051】
1つ以上の態様では、三価元素Xはホウ素又はアルミニウムであってよい。アルミニウムの適切な供給源は、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、アルカリ金属アルミン酸塩、アルミニウムアルコキシド、及び硝酸アルミニウムなどの水溶性アルミニウム塩、又はそれらの混合物から選択することができる。ホウ素の適切な供給源は、ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、及び四ホウ酸カリウム、又はそれらの混合物から選択することができる。例えば、ホウ素源はホウ酸であってよい。
【0052】
1つ以上の態様では、EMM-31材料は、三価元素の供給源としてホウ酸を使用して製造することができる。ホウ素を含む製造されたままのEMM-31は、熱処理(例えば、焼成)によって、一部又はすべてのSDAを除去することができる。ホウ素を含む熱処理されたEMM-31材料は、0.10~0.25cc/g(例えば、0.22cc/g)の微細孔容積及び/又は60~90m/g(例えば、75m/g)の外部表面積を有すると記載することができる。場合により、XがBでありYがSiである材料(一部又はすべてのSDAが除去されている場合)は、フレームワーク中のBをAlと交換するのに十分な条件下で、Al源と接触させることができる。例えば、ホウ素を含む熱処理されたEMM-31は、ホウ素を含む熱処理されたEMM-31材料をAl(SOの溶液とともに(例えば、対流オーブン中の封止されたオートクレーブ中で100℃に維持して終夜、又は開放系で沸騰温度で)加熱することによって、アルミノシリケートに変換することができる。アルミニウム処理されたEMM-31は、次に、濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄することができる。アルミニウム処理されたEMM-31は、約140のアルファ値(本明細書で後述される)を有することができる。
【0053】
製造されたままのEMM-31材料の合成中に使用される一部又はすべてのSDAは、熱処理、オゾン処理、又はその他の処理によって除去されて、SDAを実質的に含まない(例えば、50%を超える、60%を超える、70%を超える、80%を超える、90%を超える、95%を超える、又は99%を超える(重量基準)SDAを含まない)EMM-31材料を形成することができる。SDAの除去は、製造されたままのEMM-31材料が空気、窒素、又はそれらの混合物から選択される雰囲気中で一部又はすべてのSDAを除去するのに十分な温度に加熱される熱処理(例えば焼成)を用いて行うことができる。熱処理に減圧を使用することができるが、便宜上の理由で大気圧が望ましい。熱処理は、最高700℃、例えば400℃~700℃の温度で行うことができる。熱処理(例えば焼成)は、箱形炉中、空気から水を除去する乾燥剤が入れられた乾燥管に曝露された乾燥空気中で行うことができる。加熱は、400℃~700℃(例えば、540℃)において1日~14日行うことができる。加熱は最初に窒素雰囲気中で最高400℃まで行うことができ、次に400℃から600℃まで雰囲気を空気に切り替えることができる。
【0054】
製造されたままのEMM-31材料は、構造指向剤、例えばビスピロリジニウムジカチオンを含む。EMM-31材料の別の合成方法は、SDAを使用せずに行うことができる。構造指向剤の適切な供給源は、関連のジ第四級アンモニウム化合物の水酸化物及び/又は塩から選択することができる。
【0055】
1つ以上の態様では、ゼオライト、例えば製造されたままのEMM-31材料の合成に有用な構造指向剤は、以下の構造:
【化2】
(化合物E)
(式中、Aはイオンである)
を有する化合物Eであってよい。例えば、Aは、トシレート、OH、又はI若しくはBrなどのハライドであってよい。例えば、両方のAイオンはOHであってよい。
【0056】
化合物Eの製造方法は:
(i)化合物1:
【化3】
を化合物2R:
【化4】
(式中、Rはアルキル(例えば、C1~10アルキル)である)
に変換することと;
(ii)化合物2Rを化合物3:
【化5】
に変換することと;
(iii)化合物3を化合物4R:
【化6】
(式中、Rはアルキル(例えば、C1~10アルキル)である)
に変換することと;
(iv)化合物4Rを化合物5:
【化7】
に変換することと;
(v)化合物5を化合物6:
【化8】
に変換することと;
(vi)化合物6を化合物7:
【化9】
に変換することと;
(vii)化合物7を化合物Eに変換することと、
を含むことができる。
【0057】
化合物2Rは、化合物1を化合物2Rに変換することによって製造することができる。例えば、化合物1は、マロン酸ジアルキル(例えば、マロン酸ジエチル)及び塩基と反応させることができる。適切な塩基は、水素化ナトリウムなどの水素化物塩基であってよい。使用される水素化物の量は、1モル当量の化合物1を基準として2~5モル当量(例えば、2.5又は3モル当量)の水素化物であってよい。使用されるマロン酸ジアルキル(例えば、マロン酸ジエチル)の量は、1モル当量の化合物1を基準として2~5モル当量(例えば、3モル当量)のマロン酸ジアルキルであってよい。化合物1から化合物2Rへの変換は、極性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド)などの溶媒の存在下で行うことができる。
【0058】
化合物3は、化合物2Rを化合物3に変換することによって製造することができる。化合物2Rから化合物3の変換は、化合物2Rを塩基と反応させ、次に酸と反応させることを含むことができる。適切な塩基は、水酸化物塩基、例えば、水酸化ナトリウムを含むことができ、又は水酸化物塩基、例えば、水酸化ナトリウムであってよい。酸は、硫酸(例えば、濃硫酸)を含むことができ、又は硫酸(例えば、濃硫酸)であってよい。
【0059】
化合物4Rは、化合物3を化合物4Rに変換することによって製造することができる。例えば、酸の存在下で化合物3をエタノールと反応させることができる。この酸は、硫酸(例えば、濃硫酸)を含むことができ、又は硫酸(例えば、濃硫酸)であってよい。この変換は、化合物3、エタノール、及び酸の混合物の還流温度において、化合物3を化合物4Rに変換するのに十分な時間で行うことができる。例えば、この変換では、約1時間~24時間(例えば、12~18又は14~16時間)還流させることができる。
【0060】
化合物5は、化合物4Rを化合物5に変換することによって製造することができる。この変換は、溶媒の存在下で化合物4Rを還元剤と反応させることを含むことができる。還元剤は、水素化アルミニウムリチウムを含むことができ、又は水素化アルミニウムリチウムであってよい。適切な溶媒は、エーテルを含むことができ、又はエーテルであってよく、例えば、溶媒は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、若しくはそれらの混合物を含むことができ、又はそれらであってよい。使用される還元剤(例えば、LiAlH)の量は、1モル当量の化合物4Rの1~2モル当量(例えば、1.5又は1.6モル当量)であってよい。
【0061】
化合物6は、化合物5を化合物6に変換することによって製造することができる。例えば、化合物5をトシレート源及び塩基と反応させることができる。適切なトシレート源は、塩化トシルを含むことができ、又は塩化トシルであってよい。塩基は、ピリジンを含むことができ、又はピリジンであってよい。ピリジンなどの塩基は、反応混合物の溶媒として機能することもできる。或いは、反応は、ハロゲン化溶媒、例えばクロロホルムなどの極性溶媒の存在下で行うことができる。使用されるトシレート源(例えば、塩化トシル)の量は、1モル当量の化合物5を基準として1~3モル当量(例えば、2モル当量)であってよい。
【0062】
化合物7は、化合物6を化合物7に変換することによって製造することができる。この変換は、溶媒の存在下で化合物6をピロリジンと反応させることを含むことができる。溶媒は、アセトニトリル、クロロホルム、若しくはそれらの混合物などの非プロトン性溶媒を含むことができ、又はそれらであってよい。使用されるピロリジンの量は、1モル当量の化合物6を基準として3~10又は5~10モル当量(例えば、7モル当量)であってよい。
【0063】
化合物Eの製造方法は、化合物7を化合物Eに変換することを含むことができる。例えば、この方法は、溶媒の存在下で化合物7をハロアルカン(例えば、ヨウ化物源又は臭化物源)と反応させることを含むことができる。ヨウ化物源は、ヨードエタンを含むことができ、又はヨードエタンであってよい。溶媒は、非プロトン性溶媒(例えば、アセトニトリル)を含むことができ、又は非プロトン性溶媒(例えば、アセトニトリル)であってよい。使用されるヨードエタンの量は、1モル当量の化合物7を基準として3~10又は5~10モル当量(例えば、7モル当量)であってよい。
【0064】
化合物Eのアニオンは、別のアニオンに変換することができる。例えば、アニオンのトシレート又はヨウ化物は、水酸化物アニオンに変換することができる。例えば、アニオンとしてヨウ素を有する化合物Eは、水酸化物樹脂(例えば、400mLのDowex(登録商標)SBR LC NG(OH)樹脂又はDowex(登録商標)Monosphere(商標)550A UPW OH樹脂)で処理することができる。この樹脂は水で洗浄することができる。化合物E(アニオンはヨウ素である)の試料、樹脂、及び水を封入し、10回転/分(RPM)で1時間回転させることができる。次に試料を濾過することができ、樹脂を水で洗浄することができる(例えば、約800mLの水、それによって最後の1滴の最終pHは約11となる)。
【0065】
1つ以上の態様では、化合物5は、別の選択肢では:
(i)1,2-ジヨードベンゼンを化合物1a:
【化10】
に変換することと;
(ii)化合物1aを化合物5に変換することと、
によって製造することができる。
【0066】
化合物1aは、J.Phys.Org.Chem.,2011,24,969-975(その全体が参照により本明細書に援用される)に報告される手順により製造することができる。1,2-ジヨードベンゼンから化合物1aへの変換は、プロパルギルアルコール、パラジウム触媒、CuI、及び塩基の存在下で行うことができる。パラジウム触媒は、二塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを含むことができ、又は二塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムであってよい。塩基は、ジエチルアミン又はトリメチルアミンなどのアミン塩基を含むことができ、又はそれらであってよい。変換は、エーテル溶媒などの溶媒中で行うことができる(例えば、エーテル溶媒は、テトラヒドロフランを含むことができ、又はテトラヒドロフランであってよい)。使用されるパラジウム触媒の量は、1モル当量の1,2-ジヨードベンゼンを基準として0.05~0.2モル当量(例えば、0.09又は0.1モル当量)であってよい。使用されるCuIの量は、1モル当量の1,2-ジヨードベンゼンを基準として0.01~0.1モル当量(例えば、0.05又は0.06モル当量)であってよい。使用されるプロパルギルアルコールの量は、1モル当量の1,2-ジヨードベンゼンを基準として2~6モル当量(例えば、4モル当量)であってよい。
【0067】
化合物5の製造方法は、化合物1aを化合物5に変換することを含むことができる。例えば、化合物1aをパラジウム及び水素と反応させることができる。パラジウムは、チャコール上のパラジウム(例えば、チャコール上の10%パラジウム)であってよく、又はチャコール上のパラジウム(例えば、チャコール上の10%パラジウム)を含むことができる。水素は、水素ガス(例えば、900psiの水素ガス)であってよく、又は水素ガス(例えば、900psiの水素ガス)を含むことができる。この反応は、極性溶媒(例えば、メタノール)、エーテル溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)、又はそれらの混合物(例えば、80:20のTHF:MeOH)の存在下で行うことができる。
【0068】
化合物5は、前述され実施例に記載されるように化合物6に変換することができる。
【0069】
1つ以上の態様では、別の選択肢では、化合物7の製造の中間プロセスを介することなく化合物Eを生成するために、化合物6をN-エチルピロリジンで処理することによって化合物Eを製造することができる。この変換は、非プロトン性溶媒、例えばアセトニトリルなどの溶媒の存在下で行うことができる。使用されるN-エチルピロリジンの量は、1モル当量の化合物6を基準として2~5モル当量(例えば、2~4又は3モル当量)であってよい。
【0070】
1つ以上の態様では、化合物Eは、別の選択肢では:
(i)1,2-ジヨードベンゼンを化合物1aに変換することと;
(ii)化合物1aを化合物5に変換することと;
(iii)化合物5を化合物6に変換することと;
(iv)化合物6を化合物Eに変換することと、
を含む方法によって製造することができる。
【0071】
化合物Eのアニオンは別のアニオンに変換することができる。例えば、アニオンのトシレート又はヨウ化物は、本明細書に記載の方法、又は“Ion Exchange Training Manual”George P.Simon,Van Nostrand Reinhold NY 1991に記載されるような標準的な方法によって水酸化物アニオンに変換することができる。
【0072】
一般的特徴
EMM-31材料(一部又はすべてのSDAが除去されている場合)は、水素化成分と組み合わせることができる。水素化成分は、水素化-脱水素機能が行われる、モリブデン、タングステン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、又は白金若しくはパラジウムなどの貴金属から選択することができる。このような水素化成分は、以下の方法:共結晶化;IIIA族元素、例えばアルミニウムが構造中に存在する程度での組成物中への交換;その中への含浸、又はそれとの物理的混合の1つ以上によって組成物中に混入することができる。例えば、このような水素化成分は、EMM-31材料中に含浸させることができる。白金の場合、EMM-31材料に、白金金属含有イオンを含む溶液を含浸させることができる。含浸に適切な白金化合物は、クロロ白金酸、塩化第一白金、白金アミン錯体を含有する化合物、又はそれらの混合物から選択することができる。
【0073】
EMM-31材料(一部又はすべてのSDAが除去されている場合)は、吸着剤又は触媒のいずれかとして使用される場合、少なくとも部分的に脱水することができる。このような脱水は、周囲雰囲気中、200~370℃の範囲内の温度に材料を加熱することによって行うことができ、この雰囲気は、空気、窒素、又はそれらの混合物から選択することができ、大気圧、減圧、又は過圧において、30分~48時間の間で行うことができる。脱水は、EMM-31材料を減圧下に置くことによって室温で行うこともできるが、十分な量の脱水を得るためには、より長い時間が必要となる。
【0074】
EMM-31材料(一部又はすべてのSDAが除去されている場合)は、吸着剤として、又は多種多様の有機化合物変換プロセスを触媒するために、アルミノシリケートの形態で触媒として使用することができる。単独、又は1つ以上の別の触媒活性物質(他の結晶性触媒を含む)との併用のいずれかで、本明細書に記載の改質されたEMM-31材料によって効果的に触媒される化学変換プロセスの例としては、酸活性を有する触媒を必要とするプロセスが挙げられる。本明細書に記載の改質されたEMM-31材料によって触媒することができる有機変換プロセスの例としては、クラッキング、水素化分解、不均化、アルキル化、オリゴマー化、及び異性化が挙げられる。
【0075】
EMM-31材料(一部又はすべてのSDAが除去されている場合)は、有機変換プロセス中に使用される温度及びその他の条件に対して耐性である別の材料と併用することができる。このような耐性材料は、活性材料、不活性材料、合成ゼオライト、天然ゼオライト、無機材料、又はそれらの混合物から選択することができる。このような耐性材料の例は、クレー、シリカ、アルミナなどの金属酸化物、又はそれらの混合物から選択することができる。無機材料は、天然、又はシリカ及び金属酸化物の混合物などのゼラチン状沈殿物若しくはゲルの形態のいずれかであってよい。EMM-31材料とともに耐性材料を使用すること、すなわち、それらが組み合わされる、又は結晶が活性である製造されたままのEMM-31結晶の合成中に存在すると、特定の有機変換プロセス中の触媒の変換及び/又は選択性が変化する傾向にある。不活性耐性材料は、適切には、特定のプロセスにおける変換の量を制御するための希釈剤として機能し、それによって、反応速度を制御するための別の手段を使用せずに経済的で規則的な方法で生成物を得ることができる。これらの材料は、商業的な操作条件下で触媒の粉砕強度を改善するために、天然クレー、例えば、ベントナイト及びカオリンの中に混入することができる。上記不活性耐性材料、すなわち、クレー、酸化物などは、触媒のバインダーとして機能する。商業的使用において、触媒が粉砕されて粉末状材料となるのを防止するのに望ましいので、良好な粉砕強度を有する触媒は有益となりうる。
【0076】
EMM-31材料との複合材料を形成することができる天然クレーとしては、モンモリロナイト及びカオリンのファミリー(これらのファミリーは、サブベントナイトと、Dixieクレー、McNameeクレー、Georgiaクレー、及びFloridaクレーとして一般に知られているカオリンとを含む)、又は主要無機成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、又はアナウキサイトであるその他のものが挙げられる。このようなクレーは、最初に採掘されたときの未処理の状態で使用することができ、又は最初に焼成、酸処理、若しくは化学改質を行うことができる。EMM-31材料との複合材料の形成に有用なバインダーとしては、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナ、又はそれらの混合物から選択される無機酸化物も挙げられる。
【0077】
EMM-31材料(一部又はすべてのSDAが除去されている場合)は、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニアなどの多孔質マトリックス材料、並びにシリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア、及びシリカ-マグネシア-ジルコニアなどの三元組成物と、複合材料を形成することができる。
【0078】
EMM-31材料及び無機酸化物マトリックスの相対比率は、広範囲で変動することができ、EMM-31材料含有量は、複合材料の約1~約90重量パーセントの範囲となり、又は複合材料がビーズ形態で製造される場合は複合材料の約2~約80重量パーセントの範囲内である。
【0079】
本明細書において使用される場合で、他に明記されなければ、数値又は値の範囲は、関連技術の当業者が妥当であると考える程度まで逸脱することができる。機器のばらつき及びその他の要因が数値に影響を与えうることがよく知られている。他に明記されなければ、このような逸脱は、示される数値又は値の範囲の±2%、5%、10%、15%、20%、25%、又は30%となりうる。
【0080】
本明細書に記載のEMM-31材料は、XRD若しくはNMR分光法を用いた定量によって(例えば、関連ピークの面積若しくは相対強度を測定することによる)、又はそのような測定に適切な他の周知の方法によって、組成物の全重量を基準として、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、又は少なくとも99重量%(例えば、99.5重量%又は99.9重量%)が純粋なEMM-31材料であってよい。材料の残りの部分は、構造指向剤、非晶質材料、その他の不純物、又はそれらの混合物であってよい、EMM-31ではない材料である。
【0081】
本明細書に記載のEMM-31材料は実質的に結晶性である。本明細書において使用される場合、「結晶性」という用語は、限定するものではないが、単一成分又は多成分結晶形態、例えば溶媒和物、水和物、及び共結晶などを含む材料の結晶性固体形態を意味する。結晶性は、原子の規則的な繰り返し及び/又は規則的な配列を有し、区別可能な結晶格子を有することを意味することができる。例えば、結晶性EMM-31は、異なる水又は溶媒の含有量を有することができる。異なる結晶格子は、XRD(例えば、粉末XRD)などによる固体特性決定方法によって決定することができる。関連技術の当業者に周知のその他の特性決定方法は、結晶形の特定にさらに役立てたり、安定性及び溶媒/水の含有量の測定に役立てたりすることができる。
【0082】
本明細書において使用される場合、「実質的に結晶性」という用語は、記載の固体材料の試料の重量の過半量(50%を超える)が結晶性であり、試料の残りが非結晶性形態であることを意味する。1つ以上の態様では、実質的に結晶性の試料は、少なくとも95%の結晶化度(例えば、5%の非結晶性形態)、少なくとも96%の結晶化度(例えば、4%の非結晶性形態)、少なくとも97%の結晶化度(例えば、3%の非結晶性形態)、少なくとも98%の結晶化度(例えば、約2%の非結晶性形態)、少なくとも99%の結晶化度(例えば、1%の非結晶性形態)、及び100%の結晶化度(例えば、0%の非結晶性形態)を有する。
【0083】
本明細書において使用される場合、「アルファ値」という用語は、ノルマルヘキサンをクラッキングするための試験試料の速度定数の、非晶質シリカ/アルミナである標準参照触媒の速度定数に対する比によって測定される、材料(例えば、本明細書に記載のEMM-31材料)の触媒活性を意味する。例えば、P.B.Weisz and J.N.Miale,J.Catalysis,4(1965)527-529;及びJ.N.Miale,N.Y.Chen,and P.B.Weisz,J.Catalysis,6(1966)278-287を参照されたい。例えば、1のアルファ値は、試験試料及び参照標準がほぼ同じ活性を有することを意味する。
【0084】
本明細書に記載の改質されたEMM-31材料の微細孔容積は、関連技術において周知の方法を用いて測定することができる。例えば、材料は窒素物理吸着を用いて測定することができ、それらのデータは、微細孔容積方法が記載され参照により本明細書に援用されるLippens,B.C.et al.,“Studies on pore system in catalysts:V.The t method”,J.Catal.,4,319(1965)に記載のt-プロット法によって分析することができる。
【0085】
本明細書において使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖又は分岐であってよい飽和炭化水素基を意味する。「Cn-mアルキル」という用語は、n~m個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。アルキル基は、1つのC-H結合が、化合物の残りの部分へのアルキル基の結合点によって置換されたアルカンに対応する。アルキル基は、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、1~3個の炭素原子、又は1~2個の炭素原子を含むことができる。アルキル部分の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、sec-ブチルなどの基が挙げられる。
【0086】
本明細書に報告されるX線回折データは、0.01796°のステップサイズでCuKα放射線を使用し50mm×16mmの活性領域を有するVÅNTEC-1気体検出器を使用して連続モードでBruker D4 Endeavor測定器を用いて収集した。図1及び2は、278秒/ステップの有効カウント時間で収集し、図3は347.5秒/ステップで収集した。格子面間隔のd間隔は、オングストロームの単位で計算し、線の相対強度I/Iは、ピーク強度の、バックグラウンドの上の最も強い線の強度のものに対する比である。強度は、ローレンツ効果及び分極効果に関して補正していない。2θにおける回折ピークの位置、及び線の相対ピーク面積強度I/I(o)(ここで、Ioは、バックグラウンド上の最も強い線の強度である)は、MDI Jadeピーク検索アルゴリズムを用いて求めた。単一の線として示される回折データは、結晶学的変化の差などの特定の条件下で、分離した線又は部分的に分離した線として現れうる複数の重なり合う線からなることができることを理解されたい。典型的には、結晶学的変化は単位セルパラメータの小さな変化、及び/又は結晶対称の変化を含むことができるが、構造の変化は含まない。相対強度の変化を含むこれらの小さな影響は、カチオン含有量、フレームワーク組成、細孔の充填の性質及び程度、結晶のサイズ及び形状、好ましい配向、並びに熱及び/又は水熱履歴の差の結果として生じることもある。
【0087】
特定の実施例によって、本開示の態様がより詳細に記載される。以下の実施例は、例示の目的で提供されるものであり、いかなる方法によっても本開示を限定することを意図するものではない。関連技術の当業者であれば、本質的に同じ結果を得るために種々のパラメータの変更又は修正が可能であることが容易に理解されるであろう。
【実施例
【0088】
実施例1:化合物Eの合成
アニオンがヨウ化物又は水酸化物である化合物Eをスキーム1により合成した。
【化11】
記載がなければ、すべての試薬は、Aldrichから受け取ったままで使用した。すべてのNMRスペクトルは、400MHz Bruker NMR上で得た。「乾燥」ガラス器具は、オーブン中100℃で少なくとも4時間乾燥させて微量の水分を除去し、次にN流下で高温で組み立てた。H NMRの略語:m=多重線、q=四重線、t=三重線、d=二重線、br=ブロード、s=一重線。13C NMR DEPT(分極移動による無歪み増強)の略語:C=第四級炭素、CH=メチン、CH=メチレン、CH=メチル。14N NMRのシフトは、0ppmに設定したDO中のNHNOのアンモニウムイオンを示している。
【0089】
ステップ1. 2,2’-(1,2-フェニレンビス(メチレン))ジマロン酸テトラエチル(化合物2)の製造
冷却した(冷却機を出て0℃)HO-エチレングリコール溶液がジャケット中に流入する乾燥ジャケット付きフラスコを使用した。このジャケット付きフラスコに、670mLの乾燥ジメチルホルムアミド及び67gの60重量% NaH(1.6mol)を投入した。このNaHは、40重量%が鉱油であり、NaHを加える前に鉱油を除去しなかった。この混合物に、約1時間にわたって、360mL(380g、1.68mol)のジエチルマロネートを加えた。水素が発生し、反応混合物の温度が15℃まで上昇し、すべてのNaHが溶解した。冷却を停止し、100.4g(0.574mol)の1,2-ビス(クロロメチル)ベンゼンである化合物1を1回ですべて加えた。温度が63℃まで上昇した。ジャケットに蒸気を1時間通し、次に反応混合物を室温まで冷却した。反応混合物を1000mLのHOと37mLの濃HClとの溶液中に注いだ。得られた下層を回転排気装置(rotary evacuator)上で濃縮し、次に、Kugelrohr装置中200mTorrにおいて温度を220℃まで上昇させて揮発分を蒸留により除去すると、容器中に83.0gの生成物(32%)が維持された。なんらかの特定の理論によって束縛しようとするものではないが、低い収率は、2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2-カルボン酸エチルが形成され、それが揮発分とともに蒸留で除去されるためと考えられる。生成物の化合物2は、予想される13C NMR、DEPTの帰属、及びH NMRスペクトルを有した。13C NMR(CDCl):δ168.8(C),136.1(C),129.5(CH),127.0(CH),61.4(CH),52.9(CH),31.1(CH),13.9(CH).H NMR(CDCl):δ7.12(m),4.18(m),3.68(t),3.27(d),1.19(m).
【0090】
ステップ2. 3,3’-(1,2-フェニレン)ジプロピオン酸(化合物3)の製造
化合物2を精製せずに、250mLのHO及び34g(0.85mol)のNaOHを加えて40分間加熱還流して加水分解した。形成されたエタノールは、6インチのVigreuxカラムに通して100℃(沸騰溶液からの蒸気の温度である)の終点まで分留した。溶液を室温まで冷却し、100mLのペンタンで抽出して、残留鉱油をNaHから除去し、24mLの濃HSO(0.451mol)を滴下して酸性化し、次に3日間(約100℃において)還流させて脱炭酸すると、その時点でもはやCOは発生しなかった。反応物をゆっくり冷却し、生成物を濾過によって単離し、フィルター上で50mLのHOで洗浄し、一定重量となるまで85℃で乾燥させて、42.7g(98%)の黄褐色固体を得た。生成物の化合物3は、予想される13C NMR、DEPTの帰属、及びH NMRスペクトルを有した。13C NMR(d-DMSO):δ182.6(C),139.6(C),128.9(CH),126.5(CH),38.8(CH),28.7(CH).H NMR(d-DMSO):δ7.11(m,4.3H),2.82(m,4.0H),2.36(m,3.8H).
【0091】
ステップ3. 3,3’-(1,2-フェニレン)ジプロピオン酸ジエチル(化合物4)の製造
41.7g(188mmol)の化合物3、150mL(2.58mol)の100%エタノール、及び1.9gの濃HSO(1.9mmol)の混合物を終夜加熱還流し、次に室温まで冷却した。この室温の反応混合物に、6mLのHO中の2.8gのKCOを加えた。得られた反応混合物を濾過し、約500mgの固体を200mLのジエチルエーテル中に抽出した。その混合物を30mlの飽和NaCl溶液で1回洗浄し、4Aモレキュラーシーブに通して濾過して、微量の水を除去した。次にロータリーエバポレーター上でジエチルエーテルを除去した。次にその未精製油をKugelrohr装置上200mTorrにおいて100℃の温度を用いて蒸留して、43g(82%)の油を得た。この生成物の化合物4は、予想される13C NMR、DEPTの帰属、及びH NMRスペクトルを有した。13C NMR(CDCl):δ172.7(C),138.3(C),128.9(CH),126.6(CH),60.4(CH),35.3(CH),27.5(CH),14.2(CH).H NMR(CDCl):δ7(m,7.15H),4.13(q,4.0H),2.98(t,4.0H),2.60(t,3.8H),1.23(t,5.9H).
【0092】
ステップ4. 3,3’-(1,2-フェニレン)ビス(プロパン-1-オール)(化合物5)の製造
乾燥したフラスコにN下で、160mLの無水ジエチルエーテル及び6.6g(174mmol)のLiAlHペレットを加え、終夜機械撹拌した。これに、202mLの無水ジエチルエーテル中の43g(155mmol)の化合物4を40分にわたって滴下した。添加の一部のみで発熱を伴い、多くの不溶性固体が形成された。250mLの無水テトラヒドロフラン(THF)を加え、その混合物を終夜加熱還流した。反応混合物を0℃まで冷却し、33mLの1:1のTHF:HOでクエンチし、次に92mLのHO中の9.2gのNaOHを加えた。ひだ付き濾紙に通して透明な上澄みを粒状固体からデカンテーションし、固体を100mLのジエチルエーテルで洗浄した。まとめたエーテル溶液をロータリーエバポレーター上、288mTorrにおいて55℃の温度を用いてKugelrohr装置上で減少させると、29g(67%)のオレンジ色油が得られ、そのガスクロマトグラフィー/質量分析(GCMS)によって単一成分が示された。分子イオンは見られなかったが、最大ピークが176(M-HO)に存在した。生成物の化合物5は、予想される13C NMR、DEPTの帰属、及びH NMRスペクトルを有した。13C NMR(CDCl):δ139.9(C),129.3(CH),126.2(CH),62.1(CH),34.2(CH),29.0(CH).H NMR(CDCl):δ7.23(m,4.3H),4.39(b,1.9H),3.74(m,4.0H),2.81(m,4.0H)
【0093】
ステップ5. 1,2-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル)ビス(4-メチルベンゼンスルホネート)(化合物6)の製造
三角フラスコ中で、29.0g(149mmol)の化合物5、110mL(1.4mol)の無水ピリジン、及び200mLのアミレン安定化CHClを混合した。この混合物を氷浴中で8℃まで冷却し、57.1g(298mmol)のp-トルエンスルホニルクロリドを1回ですべて加えた。その混合物をマグネチックスターラーで撹拌した。温度は22℃に上昇した。混合物を1時間撹拌し、次に、87mLの濃HCl及び410mLのHOが入った分液漏斗中に注いだ。その下層を分離し、100mLの飽和NaCl溶液で1回洗浄し、ロータリーエバポレーター上で揮発分を除去し、次にKugelrohr装置上274mTorrにおいて60℃の温度を用いて乾燥させて、78g(96%)のオレンジ色樹脂を得た。トシレート生成物である化合物6は、予想される13C NMR、DEPTの帰属、及びH NMRスペクトルを有した。13C NMR(CDCl):δ144.7(C),138.0(C),132.7(CH),129.7(CH),124.3(CH),127.7(CH),126.4(CH),69.7(CH),29.9(CH),28.0(CH),21.5(CH).H NMR(CDCl):δ7.80(d,4.0H),7.36(d,3.9H),7.09(m,2.5H),7.00(m,2.1H),4.06(t,3.7H),2.59(m,3.7H),2.45(s,5.9H),1.89(m,4.1H).
【0094】
ステップ6. 1,2-ビス(3-(ピロリジン-1-イル)プロピル)ベンゼン(化合物7)の製造
216gのアミレン安定化CHCl中の71.8g(143mmol)化合物6に、83mL(1.01mol)のピロリジンを加え、その混合物を1時間加熱還流し、室温まで冷却し、39gのNaOHを含有する400mLのHO中に注いだ。層分離させ、CHCl層を300mLのHOで1回洗浄し、揮発分をロータリーエバポレーター上で除去し、生成物をKugelrohr装置上で蒸留して、300mTorrにおいて195~215℃の範囲内の沸点を有する36.5g(85%)の無色油を得た。GCMSでは、予想される生成物が示され(M-1=299)、約5%の1-トシルピロリジンの不純物を有した。ピロリジン生成物である化合物7は、予想される13C NMR、DEPTの帰属、及びH NMRスペクトルを有した。13C NMR(CDCl):δ140.0(C),129.1(CH),125.8(CH),56.3(CH),54.2(CH),30.6(CH),30.6(CH),23.5(CH).H NMR(CDCl):δ7.12(m,4.1H),2.66(m,4.1H),2.49(m,11.6H),1.67(m,12.2H).
【0095】
ステップ7. 1,1’-(1,2-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)ヨージド(化合物E、アニオンはヨウ化物である)の製造
冷却器及び添加漏斗を取り付けた3口ジャケット付きフラスコに、200mLのCHCN中に溶解させた(46.4g、154mmol)の化合物7を加えた。90mL(175g、1.12mol)のヨードエタンを10mLずつ反応物に加えた。反応又は発熱は確認されなかった。ジャケット中に蒸気を用いて混合物を加熱した。還流又はその付近において、多くの固体が沈殿した。さらに200mLのCHCNを加え、混合物を終夜加熱還流した。混合物を室温まで冷却し、濾過し、ラバーダム下に配置しながらほとんどの溶媒が除去されるように減圧し、固体をオーブン中60℃において一定重量になるまで乾燥させて、79.4g(84%)の淡褐色固体を得た。生成物は、予想される13C NMR、DEPTの帰属、及びH NMRスペクトルを有した。13C NMR(d-DMSO):δ138.9(C),129.6(CH),126.9(CH),62.3(CH),58.3(CH),54.7(CH),28.7(CH),24.9(CH),22.0(CH),9.2(CH).H NMR(d-DMSO):δ7.30(m,1.97H),7.18(m,2.02H),3.58-3.37(m+s 3.47で,44.08H),2.45(m,4.16H),2.06(m,7.71H),1.87(m,3.72H)1.21(t,5.62H).
【0096】
ステップ8. 1,1’-(1,2-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)水酸化物(化合物E、アニオンは水酸化物である)の製造
前のステップで得られた、アニオンがヨウ化物である79.4gの化合物Eを、1Lのプラスチックボトル中のHOで2回洗浄した400mLのDowex(登録商標)SBR LC NG(OH)樹脂又はDowex(登録商標)Monosphere(商標)550A UPW OH樹脂に加えた。これに、約1インチのヘッドスペースを残してボトルを満たすのに十分な水を加えた。ボトルを密閉し、10回転/分(RPM)で1時間回転させ、濾過し、洗液の最後の1滴の最終pHが約11となるように、樹脂を約800mLのHOで洗浄した。30mBarにおいて50℃の温度を使用した回転蒸発によって、溶液を316gまで減少させた。2.216gのこの溶液を25mLまで希釈すると、83.1mgのフタル酸水素カリウムをフェノールフタレイン終点まで滴定するために、これが5.75mL必要であった。この滴定値に基づくと、25mLの希釈溶液が、アニオンが水酸化物である15.7重量%の化合物Eを含むと計算された。H NMRを用いてこの溶液中の水の水素に対する有機水素を積分すると、15.5重量%が得られた。これらの測定の平均(すなわち、NMR及び滴定測定の平均)は15.6重量%であり、97%の変換であると計算された。13C NMRは、ヨウ化物形態で見られるスペクトルから変化しなかった。14N NMR(HO/DO)では、1つの鋭いピーク(11Hzの半値幅)が59.0ppmにおいて示され、予想される構造に一致した。
【0097】
化合物Eの別の製造手順を以下に記載する。ステップ1A. 2,2’-(1,2-フェニレンビス(メチレン))ジマロン酸テトラエチル(化合物2)の製造
【0098】
機械的撹拌機及び冷却ジャケットを取り付けた3Lの3口フラスコ中に、窒素流下で、66.5gの60重量%のNaH(1.66mol)を投入した。650mLの乾燥DMFを加え、その混合物を0℃で撹拌した。365mLのジエチルマロネート(2.40mol)を添加漏斗から滴下し;この添加中、温度は5~18℃の間まで上昇した。次に、すべてのNaHが溶解するまで、反応物を1時間撹拌した。化合物1(105.1g、0.60mol)を200mlの乾燥DMF中に溶解させ、添加中の反応温度を0~70℃に維持しながら滴下して加えた。添加後、ベージュ色の混合物を0℃で2日間撹拌した。
【0099】
0℃の混合物の2日の混合後、37mLの濃HClを含む1000mLの量の水溶液のほとんどを加え、次にその混合物を室温まで温めた。得られた褐色混合物を次に4Lの分液漏斗に移した。その下層を取り出し、次に2Lの丸底フラスコ中に入れた。次に回転蒸発によって溶媒を除去して、408.1gの濃いオレンジ色の溶液を得た。この溶液をKugelrohr上に配置し、180℃及び438mTorrにおいてジマロネート生成物を単離した。このジマロネート生成物は濃い赤色の油(135g、53%)であった。
【0100】
ステップ2A. 3,3’-(1,2-フェニレン)ジプロピオン酸(化合物3)の製造
ジマロネート生成物(化合物2)を2Lの1口丸底フラスコに移し、155mLのエタノールを加えた(暗褐色溶液)。450mLの水中のNaOH 65gの溶液を加え、その反応物を激しく撹拌しながら加熱還流した。35分後、暗褐色溶液を冷却した。6インチのVigreuxカラムを反応容器に連結した。温度を98~102℃まで上昇させ、それによって300mLのエタノール及び水を蒸留した。蒸留頭を取り外し、50mLの濃硫酸が入った滴下漏斗と交換した。この酸を30分にわたって滴下した。滴下漏斗を取り外して、冷却器と交換し、反応物を24時間還流させると、その時点で褐色沈殿が形成された。この沈殿物を濾過し、80℃で終夜乾燥させて、(84g、100%)の所望の二酸生成物(化合物3)を褐色の表面の堅い材料として得た。
【0101】
ステップ3A. 3,3’-(1,2-フェニレン)ジプロピオン酸ジエチル(化合物4)の製造
1Lの丸底フラスコ中に、84g(0.37mol)の二酸(化合物3)、610mLの無水エタノール、及び5gの濃硫酸を加えた。この混合物を撹拌し、終夜加熱還流した。反応物を室温まで冷却し、撹拌しながら10g(0.07mol)及び炭酸カリウムを1回で加えた。62℃、207mbarにおいて減圧濃縮して、590mLの蒸留物を得た。500mLのエーテル及び60mLの5%重炭酸ナトリウムを加え、その混合物を室温で撹拌した。得られた二相の褐色溶液を次に分液漏斗中に注いだ。層分離させた。そのエーテル層を4Åモレキュラーシーブ上で乾燥させ、51℃、847mbar、次に60℃、136mbarで減圧濃縮した。92gの褐色で高流動性の油を回収した。この油をKugelrohr上に90℃、261mTorrにおいて配置して(89g、86%)ジエステル(化合物4)を回収した。
【0102】
ステップ4A. 3,3’-(1,2-フェニレン)ビス(プロパン-1-オール)(化合物5)の製造
オーブンで乾燥させ滴下漏斗、還流冷却器、及び機械的撹拌機を取り付けた3Lの丸底ジャケット付きフラスコを高温で組み立て、窒素流下で冷却した。次にこれに540mLの乾燥テトラヒドロフラン及び19.8gの水素化アルミニウムリチウムペレットを投入した。得られた灰色混合物を30分間撹拌した。170mLの乾燥テトラヒドロフラン中に溶解させた89gのジエステル(化合物4)を1時間にわたって滴下した。反応は発熱を伴い、添加後、混合物を穏やかに1時間還流させた。次に反応物を0℃まで冷却し、1:1のTHF:水及び270mLの水中の26gの水酸化ナトリウムでクエンチした。得られたスラリーをブフナー漏斗で濾過し、その固体を500mLのエーテルで洗浄した。溶媒をrotovapにより70℃、151mbarで除去して、63.7gの褐色油を回収した。この褐色油をKugelroh上に100℃、1.64torrにおいて配置して、(61.1g、98.5%)のジオール(化合物5)を回収した。
【0103】
ステップ5A. 1,2-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル)ビス(4-メチルベンゼンスルホネート)(化合物6)の製造
ジオール(化合物5)61.1gを230mLのピリジン中に溶解させ、1LのErlenmeyer中に注いだ。丸底フラスコを合計425mLのクロロホルムで濯いだ。Erlenmeyerを水/二酸化炭素冷却浴中で0℃まで冷却し、撹拌しながら120gの塩化トシルを素早く加えると、温度が10℃に上昇した。20分後、温度は10℃のままであった。フラスコをその冷却浴から取り出し、室温まで温め、35分間撹拌した。得られた黄色いオレンジ色の溶液を、183mLの濃塩酸及び840mLの水が入った2Lの分液漏斗中に注いだ。層分離させ、その下層を210mLの飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。この下層を4Åのシーブに注いで通過させ、60℃、151mTorrにおいて減圧濃縮して、160.8gの濃いオレンジ色の油が得られ、これをKugelrohr中で60℃、261mTorrにおいてさらに蒸留して、(143.6g、91%)のジトシレート(化合物6)を濃いオレンジ色の油として回収した。
【0104】
ステップ6. 1,2-ビス(3-(ピロリジン-1-イル)プロピル)ベンゼン(化合物7)の製造
91.5gのジトシレート(化合物6)を100mLのアセトニトリル中に溶解させた。この溶液に106mLのピロリジンを20~40分にわたって滴下した。この溶液はわずかに暖かくなった。フラスコにストッパーを付けて、立てた状態で終夜維持した。得られた褐色溶液を2Lの丸底フラスコ中に注ぎ、50℃、150mbarにおいて減圧濃縮した。400mLの水中の40gのNaOHの溶液を加え、得られた二相の層を撹拌子で10分間撹拌し、次に1Lの分液漏斗中に入れて振盪した。層分離させ、そのエーテル層を50mLの飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を60℃、150mbarにおいて濃縮して、53.6gの暗褐色溶液を回収した。この材料をKugelrohr中で195℃、245mTorrにおいてさらに蒸留して、(46.48g、85%)のジピロリジノ生成物(化合物7)の淡黄色油として回収した。
【0105】
ステップ7A. 1,1’-(1,2-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)ヨージド(化合物E、アニオンはヨウ化物である)の製造
冷却器及び添加漏斗を取り付けた3口ジャケット付きフラスコに、200mLのアセトニトリル中に溶解させた(46.4g、154mmol)のジピロリジノ生成物(化合物7)を加えた。この反応物に90mL(175g、1.12mol)のヨードエタンを10mLずつ加えた。すべての試薬を加えた後、蒸気を用いて反応を加熱還流した。加熱によって、白色沈殿物が形成された。撹拌を容易にするためさらに200mLのアセトニトリルを加え、反応物を終夜還流させた。加熱を停止し、反応物を室温まで冷却した。冷却しながら、反応フラスコをアルミニウム箔の中に包んだ。反応混合物をブフナー漏斗に通して濾過し、ほぼ白色の固体をエーテル(120mL)で濯いだ。この白色固体を、フルハウス真空(full house vacuum)下でラバーダムを用いて乾燥させた。この白色材料を結晶皿に置き、60℃のオーブン中で乾燥させた。(79.4g、84%)の所望のジ第四級アンモニウム塩生成物(化合物E、アニオンはヨウ化物)を得た。
【0106】
ステップ8A. 1,1’-(1,2-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)水酸化物(化合物E、アニオンは水酸化物である)の製造
ジヨージド生成物(化合物E、アニオンはヨウ化物である)(79.4g、0.13mol)を水中に溶解させ、Dowex(登録商標)Monosphere(商標)550A OH樹脂のカラムに通すことによってイオン交換した。ジヒドロキシ化合物(化合物E、アニオンは水酸化物である)を収集し、15重量%溶液となるまで濃縮した。
【0107】
実施例2. 化合物Eのさらなる合成
別の選択肢として、化合物Eはスキーム2により製造することができる。
【化12】
【0108】
ステップ1. 3,3’-(1,2-フェニレン)ビス(プロパ-2-イン-1-オール)(化合物1a)の製造
3,3’-(1,2-フェニレン)ビス(プロパ-2-イン-1-オール)の合成について、J.Phys.Org.Chem.,2011,24,969-975に報告される手順により製造した。機械的撹拌機を取り付けた乾燥した3口の2Lの丸底フラスコ中に、乾燥THF(720mL)中の1,2ジヨードベンゼン(36.0g;109.1mmol)を窒素下で加えた。溶液の排気及び窒素の再充填を2回行った。二塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(7.2g;10.3mmol、0.09モル%)を1回で加えた。再び系の排気及び窒素の再充填を2回行った。ヨウ化銅(I)(1.2g;6.5mmol、0.06モル%)を加え、得られた濃いオレンジ色の混合物を5分間撹拌した。プロパルギルアルコール(25.4mL;436.3mmol、4.0当量)をシリンジで素早く加え、続いてジエチルアミン(72mL)を加えた。得られた暗褐色溶液をアルミニウム箔中に包み、終夜撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)(95:5ヘキサン:酢酸エチル、UV検出を使用)では、少量の出発物質の残存が示された。プロパルギルアルコール(12.7mL;218.1mmol、2.0当量)を加え、続いてジエチルアミン(36mL)を加えた。さらに48時間(合計72時間)後、反応溶液を減圧濃縮して、粗生成物として粘稠油を回収した。この粗生成物を800mLの酢酸エチル及び1MのHCl(250mL)の中に(温めながら)溶解させた。その混合物を濾過し、2Lの分液漏斗中に注いだ。内容物を振盪し、分離させた。その有機層を水(2×200mL)及びブライン(250mL)で洗浄した。有機層を減圧濃縮して22.0gの褐色油を回収し、これをシリカ上にあらかじめ吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて単離した。生成物を、40~70体積%の酢酸エチル:ヘキサンの連続グラジエントを用いて35分にわたって単離して、12.7g(62%)の所望の生成物を回収した。H-NMR,400MHz,CDCl,ppm;7.4-7.3(m,2H),7.2(m,2H),4.5(s,4H)及び3.5(br,2H).13C-NMR,100MHz,CDCl,ppm;131.5,128.0,125.2,91.6,84.2及び51.4.
【0109】
ステップ2. 3,3’-(1,2-フェニレン)ビス(プロパン-1-オール)(化合物5)の製造
3,3’-(1,2-フェニレン)ビス(プロパ-2-イン-1-オール)(12.6g;67.6mmol)を100mLのTHF及び67mLのメタノールの中に温めながら溶解させた。得られた淡褐色溶液を600mLのステンレス鋼オートクレーブ中に注いだ。パラジウム(2.5g、チャコール上10%)を171mLのTHF中のスラリーとして加えて、化合物1aの最終濃度を0.2Mにした。このスラリーを750RPMの撹拌速度で900psiのH下100℃に30時間加熱した。30時間後、分析のためのアリコートを抜き取った。H-NMR(CDCl)により、反応の完了が示された。この反応混合物をCeliteのパッドに通して濾過し、200mLのTHFで濯いだ。溶媒を減圧濃縮して13.3gの暗色油を回収した。この粗生成物をシリカ上にあらかじめ吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて単離した。生成物を、0~100体積%の酢酸エチル:ヘキサンの連続グラジエントを用いて30分にわたって単離して、9.9g(75%)の所望の生成物が淡黄色として回収し、これは一晩のうちに固化した。H-NMR,400MHz,CDCl,ppm;7.1-7.0(m,4H),3.6(t,4H),3.0 br,2H),2.7(m,4H),1.8-1.7(m,4H).13C-NMR,100MHz,CDCl,ppm;139.8,129.2,126.1,62.2,34.1及び28.8.
【0110】
ステップ3. 1,2-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル)ビス(4-メチルベンゼンスルホネート)(化合物6)の製造
500mLの丸底フラスコ中で、3,3’-(1,2-フェニレン)ビス(プロパン-1-オール)(12.2g;62.7mmol)をCHCl(126mL、アミレンで安定化させた)中に窒素下で溶解させた。トリエチルアミン(17.8mL;127.4mmol)を加え、その溶液を-5℃まで冷却した(4:1のIPA:水にCO(s)を使用)。4-(ジメチルアミノ)ピリジン(0.3g;3.1mmol)を加えた。5分後、p-トルエンスルホニルクロリド(24.3g;127.4mmol、ヘキサンから再結晶させた)を加えた。10分後、反応物を室温まで温めた。反応物を室温で5時間撹拌した。アリコートのH-NMRにより、反応の完了が示された。反応溶液を分液漏斗中に注ぎ、150mLの酸水溶液(240mLの脱イオン水中の51mLの濃HCl)、飽和塩化アンモニウム(150mL)、及びブライン(150mL)で洗浄した。その有機層を減圧濃縮して、30.5g(96%)の所望の粗生成物を回収した。H-NMR ,400MHz,CDCl,ppm;7.8-7.7(d,4H),7.3(d,4H),7.1(m,2H),7.0(m,2H),4.0(t,4H),2.6-2.5(m,4H),2.4(s,6H),1.8(m,4H).13C-NMR,100MHz,CDCl,ppm;144.8,138.2,133.0,129.9,129.1,127.9,126.5,69.7,30.0,28.1及び21.6.
【0111】
ステップ4. 1,1’-(1,2-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)4-メチルベンゼンスルホネート(化合物E、アニオンはトシレートである)の製造
撹拌子を入れた乾燥した100mLの2口丸底フラスコに、20mLの乾燥アセトニトリル中に溶解させた1,2-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル)ビス(4メチルベンゼンスルホネート)(5.0g;9.9mmol)を窒素下で加えた。N-エチルピロリジン(2.5mL、20.8mmol、2.1当量)を加え、その溶液を3.5時間加熱還流した。アリコートのH-NMRにより、反応完了が示された。一定重量となるまで、反応溶液を55℃で減圧濃縮した。6.9g(99%)の粗生成物を回収した。H-NMR,400MHz,CDCN,ppm;7.6(d,4H),7.2-7.1(m,8H),3.4-3.3(m,12H),3.2(q,4H),2.7(m,4H),2.3(s,6H),2.0-1.9(m,12H)及び1.2-1.1(m,6H).13C-NMR,100MHz,CDCN,ppm;145.4,138.4,138.3,129.0,128.0,126.3,125.3,61.7,58.2,54.1,28.1,24.6,21.1,19.9及び7.7.
【0112】
ステップ5. 1,1’-(1,2-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)水酸化物(化合物E、アニオンは水酸化物である)の製造
実施例1のステップ8における手順と類似の手順を用いて、トシレート塩の1,1’-(1,2-フェニレンビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1-エチルピロリジン-1-イウム)4-メチルベンゼンスルホネートを水酸化物塩に変換した。
【0113】
実施例3. ナトリウム含有試薬を用いた製造されたままのEMM-31の合成
14.1mlのSDA(水酸化物形態の化合物E)の15.60重量%溶液に、1.38mlの10重量% NaOH溶液及び13.4mlの3.47重量%ホウ酸溶液を加えた。次にこれに、6.25mLのLUDOX(登録商標)LS-30及び0.40mlの脱イオン水を加えた。45mLのTeflonライナーにキャップを取り付け、鋼製のParrオートクレーブ中に密閉し、対流オーブン中で21日にわたって160℃で加熱した。生成物を濾過により回収し、脱イオン水で洗浄した。得られた生成物を図1中に示されるようにpower XRDによって分析し、表4にはピークを列挙している。
【0114】
【表14】
【0115】
EMM-31のシードを使用したことを除いて、この合成を繰り返した。29日間の160℃における加熱の後、生成物を前述のように単離した。粉末XRDパターンは、試料がEMM-31であることを示した(データは示していない)。反応物を6日にわたって180℃で加熱、又は7日にわたって175℃で加熱したことを除いて、EMM-31のシードを用いたこの合成を繰り返した。粉末XRDは、生成物がEMM-31であることを示した(データは示していない)。NaOH/Si=0.10、SDA(OH)/Si=0.25、Si/B=10、及びHO/Si=30のモル比を使用して反応物を150℃で加熱したことを除いて、EMM-31のシードを用いたこの合成を繰り返した。21日間の加熱後、生成物は非晶質であった。
【0116】
実施例4. カリウム含有試薬を使用した製造されたままのEMM-31の合成
184μLのSDA(水酸化物形態の化合物E)の15.60重量%溶液に、20.53μLの17.5重量% KOH溶液及び131.5μLの3.47重量%ホウ酸溶液を加えた。次にこれに、122.2μLのLUDOX(登録商標)LS-30及び7.6μLの脱イオン水を加えた。次に1.5mlのSSライナーにキャップを取り付け、高処理量の24ウェルアルミニウムオートクレーブブロック中に封入し、21日にわたって160℃で加熱した。生成物を遠心分離によって回収し、脱イオン水で洗浄した。得られた生成物を図2中に示されるようにpower XRDによって分析し、表5にはピークを列挙している。
【0117】
【表15】
【0118】
EMM-31のシードを使用したことを除いて、この合成を繰り返した。29日間の160℃における加熱の後、生成物を前述のように単離した。粉末XRDパターンは、試料がEMM-31であることを示した(データは示していない)。反応物を6日にわたって180℃で加熱、又は7日にわたって175℃で加熱したことを除いて、EMM-31のシードを用いたこの合成を繰り返した。粉末XRDは、生成物がEMM-31であることを示した(データは示していない)。KOH/Si=0.10、SDA(OH)/Si=0.25、Si/B=10、及びHO/Si=30のモル比を使用して反応物を150℃で加熱したことを除いて、EMM-31のシードを用いたこの合成を繰り返した。21日間の加熱後、生成物は非晶質であった。
【0119】
実施例5. 熱処理されたEMM-31
ナトリウム含有試薬を使用して製造した製造されたままのEMM-31材料の試料(シードを用いずに合成した実施例3)を540℃まで焼成した。試料の焼成は、マッフル炉中、炉にNを導入し室温で2時間、次に、炉の中のN雰囲気の温度を2℃/分で400℃まで上昇させ、次に空気を導入しながら炉の中の雰囲気の温度を2℃/分で540℃まで上昇させることによって行った。温度を540℃で2時間維持した後、試料を室温まで冷却した。
【0120】
この熱処理された試料について、窒素物理吸着を用いて測定し、t-プロット法を用いてデータを分析した。この材料は0.22cc/gの微細孔容積及び75m/gの外部表面積を有した。1.03gの熱処理されたEMM-31を20mLの1MのAl(SO溶液に加え、その懸濁液を封入したオートクレーブ中100℃に終夜維持した対流オーブン中で加熱することによって、この熱処理されたEMM-31をアルミノシリケートに変換した。生成物を濾過によって回収し、約250mLの脱イオン水で洗浄した。アルミノシリケートのEMM-31材料の試料について、アルファ(n-ヘキサンクラッキング)試験を用いて測定した。測定されたアルファ値は140であった。
【0121】
実施例3からのナトリウム含有試薬を使用して合成した製造されたままのEMM-31の試料を540℃まで焼成した。得られた生成物(熱処理されたEMM-31材料)を図3中に示されるようにpower XRDによって分析し、表6にはピークを列挙している。
【0122】
【表16】
【0123】
本明細書に記載されるものに加えて、本開示の種々の修正は、以上の説明から当業者には明らかとなるであろう。このような修正は、添付の請求項の範囲内となることも意図される。限定するものではないがすべての特許、特許出願、及び刊行物などの本出願に引用される各参考文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。
図1
図2
図3