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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】複合材料とその使用
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/28 20060101AFI20220822BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220822BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220822BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220822BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20220822BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20220822BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220822BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20220822BHJP
   C09C 3/10 20060101ALI20220822BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
C09C1/28
C08L101/00
C08K3/36
C08K3/013
C08L33/02
C09D5/08
C09D201/00
C09D7/62
C09C3/10
C01B33/12 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020537287
(86)(22)【出願日】2018-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2018072435
(87)【国際公開番号】W WO2019057417
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-17
(31)【優先権主張番号】102017121698.7
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】センゲシュペイク,アンドレアス
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-104991(JP,A)
【文献】特開2010-13509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00-3/12
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料、特に切り替え可能な機能材料、好ましくは複合粒子であって、
(a) 多孔質キャリア材料、特に多孔質粒子、及び
(b) 膨張性材料、からなること、
前記多孔質キャリア材料の細孔は、膨張性材料を含むこと、
前記多孔質キャリア材料は、ミネラルフィラー又はミネラルフィラーの混合物であること、
前記多孔質キャリア材料は、大部分が開放した細孔システムを有すること、及び、
前記膨張性材料は、多孔質キャリア材料の細孔に形成されることを特徴とする複合材料。
【請求項2】
前記複合材料は、粒子状物質であることを特徴とする請求項1記載の複合材料。
【請求項3】
前記複合粒子が、0.5μm~5mm、特に0.5μm~1mm、好ましくは1~500μm、好ましくは1~200μm、より好ましくは2~100μm、特に好ましくは3~80μm、特に好ましくは5~30μmの範囲内の粒子サイズを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記多孔質キャリア材料は、開放細孔システムを具備することを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項5】
前記ミネラルフィラーが、シリカ、特にフュームドシリカ、キセロゲル、特にシリカゲル、珪藻土、ゼオライト、エアロゲル、パーライト、凝灰岩、膨張粘土、バーミキュライト及びさらに層状シリケート、特にベントナイト及び/又はカオリナイト及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項6】
前記ミネラルフィラーが、シリカ、特にフュームドシリカ、シリカゲル、珪藻土及びこれらの混合物から、好ましくはフュームドシリカ、シリカゲル及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項5に記載の複合材料。
【請求項7】
前記膨張性材料の体積は、膨張行程の間、膨張していない膨張性材料の体積に対して、少なくとも0.5倍、特に少なくとも1倍、好ましくは2倍、より好ましくは3倍に増加すること、且つ/又は、
前記膨張性材料の体積は、膨張工程の間、膨張していない膨張性材料の体積に対して、0.5~10倍、特に1~8倍、好ましくは2~7倍、より好ましくは3~6倍で増加することを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項8】
前記膨張性物質は、天然ポリマー、合成ポリマー、ミネラル物質及びこれらの混合物から、特に天然及び合成ポリマー並びにこれらの混合物から、好ましくは合成ポリマーから選択されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項9】
前記天然ポリマーは、アルギン酸塩、アルギン酸、アミロース、アミロペクチン、寒天、ゼラチン、カロース、カラギーナン、セルロース、キチン、キトサン、デキストラン、グルロン酸、イヌリン、ラミナリン、リケニン、プルラン、プスチュラン、デンプン、デンプン誘導体、キサンタン及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項8記載の複合材料。
【請求項10】
前記合成ポリマーは、メタクリル樹脂、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸の塩、ポリアクリルアミド、ポリアルコール並びにそれらのコ及びターポリマー及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項8に記載の複合材料。
【請求項11】
前記膨張性材料は、高吸水性ポリマーであることを特徴とする請求項1~10のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項12】
コーティング、特に外観コーティング、防食コーティング、防氷コーティング及び/又は木材保護コーティングにおける請求項1~10のいずれか1つに記載の符号材料、特に複合粒子の使用。
【請求項13】
(a)第1プロセス段階において、多孔質キャリア材料が提供され、
(b)前記第1プロセス段階(a)に続く第2プロセス段階において、膨張性材料が多孔質キャリア材料の細孔に導入され且つ/又は多孔質キャリア材料の細孔に形成されることを特徴とする複合材料、特に複合粒子を製造する方法。
【請求項14】
前記第1プロセス段階(a)において、多孔質キャリア材料が一括でもしくは分散として導入されることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記第2プロセス段階(b)では、膨張性材料又は膨張性材料の前駆体が、液体状で多孔質キャリア材料に、特に溶液又は分散液として添加されることを特徴とする請求項13又は14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切替可能な複合材料の技術分野、特に、機能性コーティングの製造のためのコーティング組成物における切替可能な複合材料の使用に関する。
【0002】
特に、本発明は、撥水及び水蒸気拡散開放コーティングの製造、ならびに複合材料の使用に適した複合材料に関する。
【0003】
さらに、本発明は、複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
機能性コーティングは、通常のコーティングと比較して、通常、機能とも呼ばれる付加的な陽極特性を備えているという事実によって特徴付けられる。したがって、機能的な外観コーティングは、建物の外観を天候から保護するだけでなく、水蒸気の拡散比率が向上したり、断熱性が向上したりすることもよくある。
【0005】
一般的に使用される外観コーティングは、塗料をベースにしており、いわゆるミネラル塗料、プラスチック分散塗料、シリコーン樹脂エマルジョン塗料の3つの群に分類できる。
【0006】
前述のコーティングシステムは、実際に最も一般的に使用される外観塗料である。正しい選択がなされていれば、ほとんどすべての外観をコーティングするために使用できる。
【0007】
ただし、前記3つのグループ内では、さらに細かい区別をしなければならない点に留意する必要がある。ミネラル塗料は通常、ケイ酸塩又は石灰バインダーを含んでいると共に、例えば、良好な水蒸気拡散特性のために最適化された種々のタイプの合成分散塗料がある。しかし、他のタイプは、しばしば弾性、クラックブライジングシステムは、より高い拡散抵抗を有する。
【0008】
シリコーン樹脂エマルジョン塗料の場合、それぞれのタイプは、より高価なシリコーン樹脂バインダーの割合で大きく異なり、最小シリコーン含有量を特定するための基準は存在しない。シリコーン樹脂エマルジョン塗料の配合では、特に縮合度又は重合度の度合いが異なる3種類のシリコーン又は出発材料が関連している。シリコーンの値は、ポリシロキサン又はシリコーン樹脂に対するシロキサン上の低分子シランの使用に伴って増加する。ポリマー分散とのバランスの取れた組み合わせにおける高品質のシリコーン樹脂のみが、結果として純粋なシリコーン樹脂塗料を生じる。この塗料は、良好な水蒸気透過性値と同様に、二酸化炭素の高い透過性、良好な耐候性と非常に良好な撥水性のための高い透過性を表示する。
【0009】
しかし、シリコーン樹脂エマルジョン塗料の製造は非常にコストがかかり、シリコーン樹脂エマルジョン塗料の水蒸気透過性は、外観の迅速な除湿を可能にするために、さらに改善されるものである。
【0010】
ミネラル塗料は、非常に高い水蒸気透過性を有するが撥水性はなく、また毛細血管活性が高いため液体水を吸収し石積に放出する。このため、ミネラル塗料は、一般的に大量の撥水剤を使用する場合にのみ屋外用途に適している。ここで、完全な毛細管疎水性を達成する必要があり、これは通常部分的にしか達成されない。
【0011】
対照的に、ポリマー分散塗料は、しばしば高いクラックブリッジングであり、機械的応力及び歪み、例えば、基板、特に建物の外観に対して、亀裂を沈降させるなど、補償することができる。しかし、それらは通常撥水性であり、水蒸気に対してわずかに透過性を有する。このため、ポリマーエマルジョン塗料が使用される場合に、外観が湿るリスクが常にあり、外観上にカビや藻類を形成することが好まれる。
【0012】
したがって、新規の色素製剤の特殊なフィラーによって外観コーティングに新しい又は改善された機能を導入しようと継続的に試みられる。
【0013】
外観コーティング用の機能性フィラーは、例えば次のような用途に使用される。
【0014】
特許文献1(国際特許公開WO2011/132132A1)は、特許文献2(DE 20 2010 005 960 A1)に対応し、中空微小球、バーミキュライト又は発泡ガラスを備えた機能性プラスターを、遮音性を向上させる機能性フィラーとして記載している。特に、最適な吸音を実現するために、コーティング又は石膏の多層構造が推奨される。
【0015】
特許文献3(EP1 775 272 A2)は、特許文献4(DE 10 2005 048 538 B3)に対応し、20重量%までのバーミキュライト含有量を有する有機バインダー成分を完全に分配する内部使用のための石膏を記述する。このコーティングの利点は、低水蒸気拡散抵抗μに見られ、内部用の標準的な分散塗料の100倍小さくする必要がある。同時に、ある程度の部屋の湿度がコーティングに保存され、室内の空気が乾燥したときに再び放出される。機能性コーティングを通して水分の急速な吸収及び放出と組み合わせて部屋の湿度の調節は永久に任意のカビの成長を防ぐ。パーライト、凝灰岩又は膨張粘土に基づいてフィラーを含む同等の製品は、毛細血管活動修復プラスターとして使用され、また防火プラスターとして使用される。
【0016】
国際公開WO2013/117511A1は、超疎水性表面コーティングの開発に代表的な取り組みを行っている。このために、シランとシラノールに基づく疎水性薬剤の使用だけでなく、とりわけ適切な表面構造上の作業が行われている。特に、顕著なヘッジホッグ構造を有する炭酸カルシウム粒子が記載されており、水を用いて140℃の湿潤角度を達成することができる。
【0017】
特許文献5(CN 103 351 817 A)は、内外用の自己制御型エネルギー貯蔵塗料について説明する。この色の利点は、良好な断熱、低吸水、防火及び老化に対する抵抗である。酸化カルシウムは、8~18重量部で活性成分としてリストされている。
【0018】
また、膨張性材料も建設部門で使用される。膨張シーリング材料は、主に、パイプ輸送、水平水障壁、及び吹き付け混合物のための膨張テープとして建設部門で使用される。そのためには、超吸収剤やベントナイト、化学的変質ポリウレタンエラストマー、ブチルゴムなどの膨張性材料が使用されます。変性ポリウレタンに基づく膨張ゴムは、比較的新しいクラスの材料を表す。ここで、膨張は、ポリクロロフェインに基づく水膨張性ポリマー樹脂を用いて行い、これは加硫によってポリクロロフェインマトリックスに切り離せないほど結合している。そのため、膨張工程中の膨張性樹脂の「洗い出し」は不可能である。
【0019】
さらに、特許文献5(CN 103 172 785 B)「超吸収自己架橋エポキシアクリレート共重合体及びその調製及び用途」は、高吸水性を特徴とする被覆材料として共重合体を記載している。コーティングは共重合体に基づいており、多孔質フィラーの助けを借りて、高い吸水性及び水蒸気透過性を達成し、内部領域の湿度の調節に使用することができる。しかしながら、このコーティングは、外装用塗料としてシールには適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】国際特許公開WO2011/132132A1
【文献】DE 20 2010 005 960 A1
【文献】EP 1 775 272 A2
【文献】DE 10 2005 048 538 B3
【文献】CN 103 351 817 A
【文献】CN 103 172 785 B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
特に外観コーティングの場合、基礎となる石積みや建物の水分規制への影響は非常に関連性が高い。
【0022】
2つの物理的パラメータが、建物の水分管理に対する外観コーティングの影響を決定する:一方は、吸水係数、いわゆるW値で、コーティングの吸水を示し、他方は、水蒸気拡散抵抗、いわゆるμ値で、建物コンポーネント内の水蒸気に対する抵抗性を示す。吸水量が小さいほど、水分や雨に対する保護が向上する。加熱された建物は、特に冬には、内側から外側への温度勾配を有する。暖かい空気はより多くの空気湿度を吸収することができ、温度勾配の方向に外側に拡散し、部分的に蒸気バリアとして機能する外観コーティングによって所定の位置に保持される。これは、外観の加湿につながり、その後、藻類や真菌の形成や外観コーティングの剥離など、外観に異なる損傷を与える可能性がある。
【0023】
それゆえに、最近の技術において、水分浸透に対する外部からの保護を提供すると同時に外観を乾燥させる外観コーティングを開発することが常に試行されている。
【0024】
外観塗料のコーティングの開発では、ポリシロキサンとシラノールの使用がキャピラリー疎水性を作り出し、それ以外の低水蒸気拡散値を増加させる分散塗料の開発が現在行われている。しかし、ポリシロキサンの割合が増加するにつれて、外観表面は汚れや灰色化の影響を受けやすくなる。
【0025】
しかし、建物の保護のためには、バランスのとれた壁の水分管理を可能にする外観塗料が決定的に重要である。ケイ酸塩分散塗料は、高水蒸気拡散比率の利点を有するだけでなく、高い毛細管給水の欠点も有する。ポリマーエマルジョン塗料は、十分な水蒸気透過性に欠けている。シリコーン樹脂エマルジョン塗料は水蒸気拡散値を向上させるが、達成された値は改善される必要があり、シリコーン塗料の生産は高コストと関連している。
【0026】
従って、最新技術は、撥水性及び水蒸気拡散開放コーティングの製造を可能にするシステムをまだ欠いている。
【0027】
特に、従来の塗料と同様に処理できるシステムが欠けているが、それは、向上された撥水特性を有すると共にこれらに比べてより高い水蒸気透過性を有するものである。
【0028】
コーティングシステムも添加剤も、最も多様な適用条件下で使用することができ、一貫して良好な結果を提供することができる技術の状態から知られていません。
【0029】
特に、コーティングの水蒸気拡散透過性が向上すると同時に、コーティングの撥水特性が維持されるか、あるいは改善されるように、公知のコーティングシステムを改良すること可能にする最新技術からフィラーは知られていない。
【0030】
さらに、現在までに製造が容易で、最先端技術に比べて改善された水蒸気拡散比率及び撥水性を示すコーティングシステムは、現在知られていない。
【0031】
従って本発明の課題は、当該最先端に関連する前述の欠点を回避又は少なくとも軽減する材料を提供することである。
【0032】
特に、本発明の課題の1つは、コーティング、特に外観コーティングの水蒸気透過性を向上させる材料を提供すると共に、コーティングの給水能力が期待される範囲まで上昇せず、いわゆる公知のシステムと比較して上昇しないが、撥水特性は可能であれば改善される。
【0033】
また、本発明のさらなる課題は、多くのコーティングに組み込まれて、コーティングの水蒸気透過性を増加させると同時に液体水の吸収を妨げる材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明の第1の様相によれば、前述の課題は請求項1に記載の複合材料によって解決される。本発明のこの様相の更に有利な実施形態は、それぞれの従属請求項の主題である。
【0035】
本発明の第2の様相に係る本発明の更なる主題は、請求項14に記載の複合材料の使用である。
【0036】
ここでも、本発明の第3の様相に係る本発明の更なる主題は、請求項15に記載の複合材料の製造のためのプロセスである。本発明のこの様相の更に有利な実施形態は、それぞれの従属請求項の主題である。
【0037】
以下に挙げられている特定の特徴、特に発明の一つの様相に関連して記載されている特別な実施形態等は、また、本発明の他の様相に関連して適用され、特にこれは、任意の明示的な言及を必要としない。
【0038】
さらに、すべての相対又は百分率、特に下記に述べられる重量関連の数量又は量は、本発明の枠組みの中で、成分、添加剤もしくは補助物質等の合計が、結果として100%又は100重量%となるように、当業者によって選択されることに留意するものである。これは、当業者にとって言うまでもないことである。
【0039】
また、当業者は、本発明の範囲を越えることなしに、適用及び個々の場合に応じて、以下に挙げる値、範囲又は量から逸脱させることも可能である。
【0040】
さらに、以下に指定されるパラメータの全ては、標準化又は明示的に指定された決定方法、又は当業者が知っている一般的な決定方法によって決定することができる。
【0041】
この規定を行うに当たって、本発明の主題は、以下で詳細に説明される。
【0042】
本発明の第1の様相によれば、本発明の主題は、
(a) 多孔質キャリア材料、特に多孔質粒子、及び
(b) 膨張性材料、を具備し、
多孔質キャリア材料の細孔が膨張性材料を含むことを特徴とする複合材料、特に切替可能な機能性材料、好ましくは複合粒子にある。
【0043】
本発明による複合材料又は複合粒子の特長は、高い水蒸気透過性を有することである。同時に、膨張性材料は、液体水と接触して膨れ上がり、複合材料の細孔を閉じ、複合材料を介してそれ以上の液体水が浸透することがないようにする。このようにして、液体、特に水との接触時に、多孔質複合材料の毛管作用により液体が深層に到達せず、複合材料による初期吸水後、特に複合材料によって、特に水の吸収を確実に行う。膨張性材料は、多孔質粒子の形態であることが好ましい多孔質キャリア材料の細孔が、膨張性材料によって閉塞され、したがってさらに液体、特に水の侵入が防止される。
【0044】
特に本発明による複合材料は、このように、それらの水透過性に関して切替可能に設計されているコーティング、特に外観コーティングの製造を可能にするものである。特にポリアクリレートなどのいわゆる超吸収性ポリマー(SAP)を使用する場合、外観コーティングの吸水係数(W値)が、例えば土砂降りの雨を介して水と接触する場合に、本発明による複合材料を含むコーティングの切り替え性によって最小化されるものである。
【0045】
高孔質キャリア材料、特に多孔質フィラー又は粒子の使用を通じて、孔システムは、コーティング、特に外観コーティングにおいて、本発明による複合材料がコーティングに組み込まれる場合に製造することができるので、コーティングは、0.1m未満の水蒸気拡散等価空気層厚さ(Sd値)を有し且つそれによる高い拡散性を有することが考慮される。
【0046】
多孔質キャリア材料、特に膨張性ポリマーによって機能させることにより、細孔は、液体、特に水に接触すると腫脹し、したがって標的化された可逆的なシールが達成される一方、複合材料は水蒸気に対して高い透過性を有する。
【0047】
コーティング組成物、特に本発明による複合材料を含む塗料は、特に外装使用に適しており、外観の毛細管水吸収を最小限に抑える。膨張性材料を膨らませて細孔を閉じることによって、水が、外観コーティングの細孔や毛細管を通してより深い層に浸透し、建築材料が湿るようになることから防止される。
【0048】
本発明による複合材料を高孔質として使用することにより、切替可能な機能性材料、特にフィラー、2つの矛盾した建築物物理要件、すなわち、非常に拡散性の高い外観表面と撥水効果を組み合わせることができる。
【0049】
本発明による複合材料を特徴とする外観コーティングは、前述のように、液体水に対する、特に土砂降りの雨に対する切り替え性と、高い水蒸気拡散率を維持しながらキャピラリー吸水を最小限に抑えている。特に、超吸収性ポリマー(SAPs)を用いる場合、拡散性壁面塗料の毛細管吸水(W値)を、初期の0.5kg/m0.5以上から0.05~0.2kg/m0.5の範囲の合計値に低減することができ、このようなコーティングは撥水性と考えられる。コーティングは通常0.01と01mの間の水蒸気拡散相当の空気層厚さ(Sd値)を有し、したがって、非常に透過性である。
【0050】
この技術の現状では、水蒸気拡散開放及び撥水性コーティングは、ポリシロキサン及びシラノールを使用して疎水化された分散塗料によって生成されることが多く、水蒸気拡散値が低くなる。しかし、このようにして得られるコーティングは、多くの場合、所望ほど効果的ではなく、製造に高価であり、使用が限られている。
【0051】
本発明の範囲内で、建物の水分管理を特に改善できる材料を提供することが可能になった。
【0052】
さらに、本発明による複合材料は、特に複合粒子、コーティングの固有の撥水性特性を少なくとも保持しながら、コーティングの水蒸気透過性を高め、種々のコーティングに使用することができる。また、本発明による複合材料を使用する場合、コーティングの機械的特性もマイナスの影響を受けない。
【0053】
特に、本発明による複合粒子は、プラスチック分散塗料又はシリコーン樹脂エマルジョン塗料に用いることができ、それらの水蒸気透過性を向上させることができる。
【0054】
本発明に関連して、膨張性材料は、特に吸収によってその体積を増加させる材料、すなわち液体の吸収、特に液体水である。体積の変化は可逆的であり、体積の減少は、好ましくは、以前に吸収された液体、特に水、気体状、特に水蒸気として、気体状において放出することによって生じる。
【0055】
本発明の好ましい実施形態によれば、複合材料は、粒子状物質の形、すなわち複合粒子の形で存在する。微粒子複合材料、特に複合粒子を用いることにより、本発明による複合材料は、多数のコーティング又はコーティング組成物に、優れた方法で組み込むことができる。
【0056】
本発明の範囲内で、複合材料が複合粒子の形態で存在する場合、複合粒子が、0.5μm~5mm、特に0.5μm~1mm、好ましくは1~500μm、より好ましくは1μm~200μm、特に好ましくは2~100μm、より好ましくは3~80μm、特に好ましくは5~20μm範囲内の粒子径を有することが証明された。前述の粒子サイズにより、特に薄層コーティングが製造されると同時に、バインダーマトリクス内に複合粒子を有する基板の表面の高い充填密度が達成され、その結果、コーティングの高い水蒸気拡散比率が生じる。
【0057】
既に説明したように、多孔質基材、特に多孔質粒子は、本発明による複合材料の基材として本発明に関連して用いられる。本発明に関連して、多孔質キャリア材料が20~99%、特に25~98%、好ましくは30~98%の範囲で空隙率を有する場合に、特に良好な結果が得られる。本発明に関する空隙率は、多孔質キャリア材料の、多孔質キャリア材料の総体積に対する空隙容量とも呼ばれる孔容積の比率である。複合粒子もしくは本発明によるキャリア材料もしくは百分率の複合粒子の空隙率は、特に水銀ポロシメトリー法によってもしくはBETモデルによる計算によって又はオイル数値として決定することができる。
【0058】
複合材料の水蒸気拡散率を高く保つためには、キャリア材料の高い空隙率が好ましい。
【0059】
本発明に関連して、特に良好な結果は、多孔質キャリア材料が、主として開放システム、すなわち主に開放多孔質を含む場合に得られる。これに関連して、多孔質キャリア材料は、少なくとも主として、好ましくはほとんど排他的に、開放細孔から形成される場合が特に好ましい。これに関連して、開放細孔は、環境に直接接触している多孔質キャリア材料の細孔として定義されるとともに、閉じた細孔はキャリア材料の内部に位置し、完全にキャリア材料に囲まれているので、環境との直接接触がなく、結果的に環境との関係の交換が行われ得ない。開放多孔質に基づいて、特に開放孔によって形成される合計多孔質の一部であると理解されるべきである。
【0060】
多孔質キャリア材料の開放細孔システム、特に開放細孔の高い割合が特に有利であり、これにより特に高い水蒸気の拡散速度を達成することができる。
【0061】
これに関連して、多孔質キャリア材料の総孔容量の少なくとも50%、特に少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%が開放孔によって形成される場合に特に好ましい。
【0062】
これに関して、良好な結果は、多孔質キャリア材料の総孔量の50~100%、特に60~99%、好ましくは70~98%が開放細孔によって形成される場合に得られるものである。
【0063】
多孔質キャリア材料の細孔の大きさに関する限り、これは自然に広い範囲にわたって変化し得る。しかし、多孔質キャリア材料が10nm~2μm、15nm~1.5μm、好ましくは20nm~1.3μm、より好ましくは25nm~1μmの範囲の細孔サイズの孔を有する場合に有効であることが証明されている。上述の範囲の細孔サイズは、一方で、良好な水蒸気透過性及び高い水蒸気拡散速度を可能にし、膨張性材料を含めることによってまだ遮断されていない。一方で、それらは、膨張性材料が、液体水が吸収されたときに、細孔を閉鎖するのに十分なほど狭い。本発明の範囲内で、孔サイズの決定は、当業者に共通する方法、特に、例えば水銀ポロシメトリー又はBETモデルにしたがって行うことができる。
【0064】
本発明の好ましい実施形態によれば、多孔質キャリア材料は、0.4~1.0mL/g、特に0.5~0.9mL/g、好ましくは0.6~0.8mL/gの孔容積を有する。
【0065】
本発明の好ましい実施形態によれば、多孔質キャリア材料は、フィラー、特にミネラルフィラー、又はフィラーの混合物である。キャリア材料が非常に多孔質のフィラー、特に高孔質フィラー又はフィラーの混合物である場合、本発明による複合材料又は特に本発明による複合粒子は、従来のコーティングシステムにフィラーとして添加することができる。特に、本発明による複合粒子は、コーティング組成物中の従来のフィラーの一部を置換することができ、本発明による複合粒子の使用は水蒸気拡散率を増加させるが、コーティングの撥水特性は改善されるか少なくとも維持されるとともに、コーティングの機械的特性は通常変わらない。
【0066】
本発明の文脈においてミネラルフィラーが多孔質キャリア材料として使用される場合、ミネラルフィラーは、通常、シリカ、特にフュームドシリカ、キセロゲル、特にシリカゲル、珪藻土、ゼオライト、エアロゲル、ペルライト、凝灰岩、膨張粘土、バーミキュライト、ベントナイト又はカオリナイトのような他の層状ケイ酸塩、及びそれの混合物から選択される。
【0067】
これに関連して、特に良好な結果は、シリカ、特にフュームドシリカ、シリカゲル、珪藻土及びそれらの混合物、好ましくはフュームドシリカ、シリカゲル及びそれらの混合物から選択される場合に得られるものである。
【0068】
膨張性材料の多孔質キャリア材料への充填に関する限り、これはそれぞれの要件に応じて広い範囲で変化し得る。しかしながら、膨張性材料を有する多孔質キャリア材料の充填レベルは、膨張した状態の膨張性材料が、キャリア材料の細孔から膨張しないように調整されることが好ましく、これによって、例えば、コーティングの機械的特性に悪影響を及ぼす。多孔質キャリア材料が0.05~0.5、特に0.08~0.4、好ましくは0.10~0.30の範囲で膨張性材料の充填レベルを有する場合、本発明の範囲内で特に良好な結果が得られる。所定は、前記多孔質キャリア材料、特にフィラーの質量に対する膨張していない状態の膨張材料の質量の割合として特に定義される。
【0069】
高吸収性ポリマー(SAP)が、多孔質キャリア材料の存在下で、その細孔において形成される膨張性材料として使用される場合、膨張性材料を製造するためのモノマー溶液によるキャリア材料への充填レベルが、0.2~3、特に0.4~2.5、好ましくは0.4~2.5の範囲内で変化するときに、うまくいくことが証明される。多孔質キャリア材料に対するモノマー溶液の上記重量関連比によって、一方で細孔を閉鎖できるように、ポリマーによる多孔質キャリア材料への十分に高い充填量を達成することができ、他方で、充填量が、高い水蒸気透過性を達成するほど十分に低いものである。
【0070】
膨張性材料の多孔質キャリア材料への充填又はキャリア材料の細孔に膨張性材料を形成することは、少なくとも部分的に膨張された状態において実行されることが好ましい。このようにして、多孔質キャリア材料の細孔に膨張材料の量が大きすぎないように、又はキャリア材料の細孔が既に非膨張状態で閉塞していることを保証する。
【0071】
上述したように、本発明は通常、膨張性材料が液体、特に液体水を吸収して膨れ上がっていることを提供する。
【0072】
液体、特に水の吸収により、膨張性材料の体積の増加に関して、体積におけるこの増加も広い範囲内で変化し得る。しかしながら、膨張性材料の体積が膨張過程中に膨張していない膨張性材料の体積に対して、少なくとも0.5倍、特に少なくとも1倍、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍で増加する場合、成功であることが証明された。
【0073】
また、膨張性材料の体積が膨張過程中に増加すれば、膨張性材料の体積が0.5~10倍、特に1~8倍、好ましくは2~7倍、より好ましくは3~6倍で増加する場合に、有益であることが証明されている。
【0074】
膨張していない状態の膨張性材料の開始値は、DIN ISO 291:2008-08、すなわち23℃、空気湿度65%、0.86バールと1.06バールの間の空気圧下で、膨張していない状態での膨張性材料の体積である。
【0075】
膨張性材料が1~10、特に1~8、好ましくは1.5~7、より好ましくは2~6の膨張度を有する場合、本発明の範囲内で特に良好な結果が得られるものである。本発明に関して、膨張性材料の膨張度は、膨張したポリマーの質量、特に吸収された水の質量の膨張していない膨張性材料の質量に対する割合であると理解される。
【0076】
膨張性材料の選択に関する限り、すべての適切な材料を選択することができるとともに、適切な材料は当業者に知られている。特に、膨張性材料は、天然ポリマー、合成ポリマー、ミネラル物質及びそれらの混合物から選択することができる。これに関連して、良好な結果は、膨張性材料が、天然及び合成ポリマー並びにこれらの混合物から選択される場合、好ましくは合成ポリマーが選択される場合に、得られる。特に、良好な結果は、本発明に関連して、高吸水性ポリマー(SAP)、いわゆる超吸収体が用いられる場合に得られる。
【0077】
本発明に関連して、天然ポリマーが膨張性材料として使用される場合、天然ポリマーが、アルギン酸塩、アルギン酸、アミロース、アミロペクチン、寒天、ゼラチン、カロース、カラギーナン、セルロース、キチン、キトサン、デキストラン、グルロン酸、イヌリン、ラミナリン、リケニン、プルラン、プスチュラン、デンプン、デンプン誘導体、キサンタン及びそれらの混合物から選択される場合に有効であることが証明されている。
【0078】
しかしながら、本発明に関連して合成ポリマーが選択された場合、合成ポリマーが、メタクリレート、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸の塩、ポリアクリルアミド、ポリアルコールならびにそれらのコ及びターポリマー及び混合物から選択される場合に、成功することが証明された。特に、合成ポリマーは、架橋剤の存在下で製造されるか、又はそれらの製造後にさらに架橋されるものが好ましい。これに関連して、ジアクリレートエステル、アリルメタクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン及び多官能ビニルモノマーが、架橋剤として使用されるものである。
【0079】
既に述べたように、膨張性材料がいわゆる超吸収性ポリマーである場合、本発明の範囲内で特に良好な結果が得られる。
【0080】
本発明の範囲内では、通常、複合粒子が500~1,500g/L、特に600~1,250g/L、好ましくは750~1,100g/L、より好ましくは800~1,000g/Lの範囲内の嵩密度を有することが意図されている。
【0081】
本名発明の第2の様相によれば、本発明のさらなる主題は、特に外観コーティング、防食コーティング、防氷コーティング及び/又は木材保護コーティングにおいて上述したような複合材料、特に複合粒子を使用することである。
【0082】
上述された複合材料は、基材の水分含有量を調節するために使用されるすべてのコーティングシステムへの組み込みに最適である。既に説明されている撥水性及び水蒸気拡散開放外観コーティングに加えて、複合材料は、塗料層のバランスのとれた水分含有量が、コーティングに温度差がある場合に凝縮水の形成を防止し、これによって、損傷から腐食防止コーティングを保護するため、腐食防止コーティングの取り込みにも特に適している。
【0083】
前記複合材料は、表面水分の吸収を遅延し、コーティング上への氷の形成を防ぐので、抗氷コーティングにもうまく使用することができる。
【0084】
この方法において変質されたコーティングが、木材の水分含有量を一定に保ち、これによって木材基板の収縮又は膨張による緊張の発生を防止するので、前記複合粒子は、木材保護コーティング、特に木材保護ワニスにうまく使用することができる。
【0085】
本発明の目的は、このように複合材料、特に上述した複合粒子を用い、コーティングによる基材の水分バランスを調節することにある。
【0086】
本発明のこの様相の更なる詳細については、本発明による複合材料に関する上記の説明を参照することができるが、これは本発明による使用に関してそれに応じて適用される。
【0087】
本発明の第3の様相によれば、本発明のさらなる主題は、複合材料、特に複合粒子の製造のためのプロセスにあり、このプロセスにおいて、
(a)第1プロセス段階において、多孔質支持材料が設けられており、
(b)第1プロセス段階(a)に続く第2プロセス段階において、膨張性物質が多孔質キャリア材料の細孔に導入され、また、多孔質キャリア材料の細孔に形成される。
【0088】
前記膨張性材料は、例えば、多孔質キャリア材料と接触させ、多孔質キャリア材料の細孔に溶解され又は細かく分散させた形で導入することができる。しかし、多孔質キャリア材料の細孔内に直接膨張性材料を合成することもできる。これは、膨張性材料が、高吸水性ポリマーのような合成ポリマーである場合に特に有用である。
【0089】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1プロセス段階(a)において多孔質キャリア材料を一括して又は分散として提供する。本発明に関連して、多孔質キャリア材料が、一括して、すなわち粉末床の形で提供され、その後膨張性材料と接触する場合が好ましい。多孔質キャリア材料の使用は、特に多孔質粒子、粉末床として又は粉末として、多孔質キャリア材料の細孔システムが膨張性材料又はその前駆体を含む溶液又は分散液に対して自由にアクセス可能であるという利点を有する。
【0090】
しかし、多孔質キャリア材料が分散液の形で提供され、次いで、例えば、反応物が分散液に添加されて膨張性材料を製造することができる。
【0091】
本発明に関して、通常、分散液が液体分散剤を含有することを意図される。第1プロセス段階(a)において、多孔質キャリア材料がこのように分散液の形で提示され、通常固体多孔質キャリア材料が、液体分散媒又は分散媒中に設けられるので、固体液体分散液が得られる。本発明に関連して、分散液は、互いに溶解しないかほとんど溶解せず又はお互いに化学的に結合しない少なくとも2つの物質の不均一混合物として理解され、これによって二相混合物を形成するものである。通常1つ以上の物質、いわゆる分散相又は分散された相は、別の連続物質、いわゆる分散媒又は分散剤に微細に分散される。本発明に関連して、好適に使用される液中個体分散液は、懸濁液とも呼ばれる。
【0092】
本発明の好ましい実施形態によれば、第2プロセス段階(b)で、膨張性材料又は膨張性材料の前駆体は、特に溶液又は分散液として多孔質キャリア材料に液体の形で添加される。
【0093】
これに関連して、同じ溶媒又は分散剤が第1プロセス段階(a)において使用されることが証明されている。本発明に関連して好ましく使用される溶媒又は分散剤は水である。水の使用は、膨張した状態のキャリア材料の細孔に膨張性材料を導入させ、そこで合成することができるものであり、これにより、膨張性材料から溶媒又は分散剤を排除した後、多孔質キャリア材料の細孔システムが遮断されず、特に水蒸気に対する透過性が保たれるものである。
【0094】
特に、第1プロセス段階(a))において、多孔質キャリア材料が提供され、膨張性ポリマー又はモノマー溶液の液体溶液又は分散液は、対抗質キャリア材料が、膨張性材料でできるだけ均一に充填されることを確実にするためにゆっくりと添加される場合、本発明の範囲内において良好な結果が得られる。モノマー溶液が使用される場合、それらは、その後に、例えばそれに続くラジカル重合によって重合される。特にモノマー溶液を用いることによって、膨張材料でできるだけ均一に多孔質担体材料の内孔を被覆することができる。
【0095】
特に良い結果は、使用するモノマー溶液が、モノマー溶液に基づいて60~95重量%、好ましくは70~90重量%の溶媒又は分散剤、好ましくは水含む場合に得られるものである。
【0096】
本発明に関して、高吸水性ポリマー(SAP)の形の膨張性材料が、多孔質キャリア材料の細孔において合成されることが好ましい。特に、前述したように、アクリレートに基づく超吸収性ポリマーが生成される場合に、良好な結果が得られる。特に、アクリル酸に基づく高吸水性ポリマーが、架橋剤としてN,N-メチレンビスアクリルアミドと合成する時に成功することが証明されている。本発明に関連して、モノマー溶液が、多孔質キャリア材料の細孔に膨張性材料を生成するために使用される場合に、モノマーを含む溶液が、溶液中の材料の総量に対して、1~10モル%、特に2~8モル%、好ましくは3~7モル%、より好ましくは4~6モル%の割合を有する場合に有効であることが証明されている。
【0097】
さらに、モノマー溶液がさらに少なくとも1つの架橋剤を含有する場合に本発明に関連して良好な結果が得られる。モノマー溶液に架橋剤が含まれている場合、モノマー溶液は、モノマー溶液の全材料量に基づいて、特に0.1~10モル%、好ましくは0.5~8モル%、より好ましくは1~7モル%、特に好ましくは2.5~6モル%の量で架橋剤を含有するものである。上記化合物及び化合物のクラスは、架橋剤として特に適している。
【0098】
アクリル酸に基づく高吸水性ポリマーが製造されるべきである場合は、0%の中和度を設定することが好ましい。
【0099】
上記の条件下で高吸水性ポリマーを製造することにより、膨張性材料が多孔質キャリア材料から膨張しないような方法で、多孔質キャリア材料の細孔を覆うことができるものである。さらに、多孔質キャリア材料にモノマー溶液を添加した後、重合反応を開始するために、重合反応を開始する少なくとも1つの開始剤を有する更なる溶液又は分散液が添加されるものである。
【0100】
膨張性材料の調製とキャリア材料の細孔への取り込みの両方のための分散液又は溶液の使用は、多孔質キャリア材料の細孔内の膨張性材料又は前駆体の非常に迅速な混合と均一な分布を可能にする。
【0101】
本発明の範囲内で、第2プロセス段階(b)に続く第3プロセス段階(c)において、膨張材料で装填されたキャリア材料が分離され、必要に応じて後に洗浄され、次いで乾燥させることも提供される。装填されたキャリア材料は、特に当業者に既知の全ての技術によって、例えば濾過、ふるい処理によって又は蒸留による溶媒又は分散剤の除去によって分離することができ、ここでろ過及びふるい処理は、単純な実行によることが好ましい。
【0102】
分離され装填されたキャリア材料を洗浄することにより、望ましくない反応残基、又は未反応のモノマー溶液又は添加剤を複合材料から除去することができる。反応に用いる溶媒又は分散剤は、通常、洗浄に用いられる。
【0103】
分離された複合材料が乾燥される時に、前記複合材料が20~100℃、特に30~90℃、好ましくは40~80℃、より好ましくは50~70℃の範囲内の温度で乾燥した場合に成功することが証明されている。
【0104】
本発明によるプロセスの詳細については、本発明に係る複合材料及びその使用に関する上記の説明を参照することができ、これは複合材料の製造のための発明によるプロセスに対応して適用される。
【0105】
上述されたような複合材料又は複合粒子は、機能性コーティング、好ましくは撥水性拡散解放コーティングの製造のためのコーティング組成物に著しく適合している。
【0106】
特に、機能性コーティングを製造するためのコーティング組成物、好ましくは撥水性拡散解放コーティングが、好ましくは、
(A)上述したような複合材料、特に複合粒子、及び
(B)バインダー、を具備するものである。
【0107】
さて、コーティング組成物が複合材料を含む量については、これは自然に広い範囲内で変化し得る。しかしながら、コーティング組成物が、コーティング組成物に基づいて、5~60重量%、特に7~50重量%、好ましくは10~40重量%、より好ましくは15~25重量%の量で、複合材料を含有する場合に有用であることが証明されている。
【0108】
同様に、コーティング組成物は、コーティング組成物に基づいて、5~50重量%、特に7~40重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは15~35重量%の量でバインダーを含有することを提供することが好ましい。
【0109】
前記バインダーが、ポリマー又はポリマーの混合物である場合に、特に良好な結果が得られる。これに関連して、前記バインダーが有機ポリマー又は有機ポリマーの混合物である場合に有効であることが証明されている。
【0110】
また、ポリマーが、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエステル及び/又はポリアクリレートならびにそれらの配合物及び共重合体から選択される場合が好ましい。これに関連して、ポリマーが、ポリ酢酸ビニル-エチレン-アクリレートコポリマーである場合が特に好ましい。
【0111】
好ましいバインダーシステムは、酢酸ビニル-エチレン-アクリレートコポリマーのような酸性pH値を有する。このようなバインダー又はバインダーシステムでは、通常、表面酸性フィラーは、複合粒子中で超吸収剤を膨張させるか凝集させることなしに容易に組み込むことができる。酢酸ビニル-エチレン-アクリレートコポリマーは、複合粒子の切り替え性を維持し、コーティングの迅速なシールを可能にする。さらに、酢酸ビニル-エチレン-アクリレート個ポリマーに基づくバインダーは、通常、揮発性有機化合物(VOCs)の特に低レベルによって特徴付けられる。
【0112】
したがって、前記コーティング組成物が、3~6、特に4~5の範囲のpH値を有することを提供することが好ましい。
【0113】
前記コーティング組成物に用いられるポリマーの最小膜形成温度(MFT))に関する限りにおいて、これは特定の要件に応じて大きく変化する可能性がある。しかしながら、前記ポリマーが、-40~20℃、特に-20~10℃、より好ましくは-10~0℃の範囲内の低い最低膜形成温度を有する場合が利益的であることが証明されている。上述した最小膜形成温度を有するポリマーは、一方で広い範囲の適用可能性を有するが、他方でそれらは、均一で閉じたコーティングの形成を可能にする。
【0114】
一般に、前記コーティング組成物は、分散液の形であり、特に液中固体分散液である。
【0115】
前記コーティング組成物が分散液の形である場合、通常は、コーティング組成物が分散剤を含有することを意図している。前記コーティング組成物が、コーティング組成物に基づいて、20~80重量%、特に30~70重量%、好ましくは35~60重量%、より好ましくは40~50重量%の量の分散剤を含む場合に特に良好な結果が得られる。
【0116】
前記分散剤は、それぞれの要件に応じて、水又は一般的な有機溶媒から、又は水と有機溶媒の混合物から、それぞれの要件に応じて選択することができる。しかし、水は、低コストで入手可能であり、且つ環境から無害であり、作業寿命の面からも、分散剤として使用されることが望ましい。
【0117】
前記コーティング組成物が少なくとも1つのさらなるフィラーを含有する場合が好ましい。前記コーティング組成物がさらなるフィラーを含む場合、コーティング組成物が、該コーティング組成物に基づいて0.01~50重量%、好ましくは0.05~35重量%、より好ましくは0.1~30重量%、特に好ましくは0.1~25重量%、特により好ましくは1~10重量%の量のさらなるフィラーを含む場合に有効であることが証明されている。
【0118】
同様に、さらなるフィラーが無機フィラー、特に粒子状無機フィラーである場合に有効であることが証明されている。
【0119】
これに関連して、さらなるフィラーが、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、石英、ケイ酸カルシウム及びそれらの混合物から選択され、好ましくは炭酸カルシウムから選択される場合に、特に良好な結果が得られるものである。さらなるフィラーを使用することにより、コスト集約型のバインダーの使用が、最小限に抑えられ、結果として生じたコーティングの機械的特性が調整されるものである。
【0120】
さらに、前記コーティング組成物が少なくとも1つの顔料を含有することを意図することが望ましい。コーティング組成物が顔料を含有する場合、コーティング組成物は、コーティング組成物に基づいて、1~30重量%、好ましくは2~25重量%、より好ましくは3~20重量%、特に好ましくは5~15重量%の量で顔料を含有する場合に特に良好な結果が得られる。特に上記の量における顔料の使用は、結果として得られるコーティングの着色を目的とされる方法で調整することを可能にする。上述されたコーティング組成物は、液体水に対して切替可能な機能性コーティングであるほぼすべての着色コーティングを製造するために使用することができることが特別な特徴である。
【0121】
当業者に知られている多数の顔料は、本発明の範囲内で使用することができる。しかしながら、特に良好な結果は、顔料が、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、硫化カドミウム、硫化亜鉛及びクロム酸塩及び混合物、好ましくは二酸化チタン及び酸化亜鉛及びそれらの混合物の群から選択される場合に得られるものである。
【0122】
前記コーティング組成物中の粒子の量に関する限り、これは自然に広い範囲にわたって変化し得る。しかしながら、前記コーティング組成物が、複合材料、さらにはフィラー及び顔料の形で、前記コーティング組成物の堆積に基づいて、74体積%未満、特に60体積%未満の粒子の総含有量を有する場合に、有効であることが証明されている。
【0123】
同様に、前記コーティング組成物は、特に複合材料、さらにフィラー及び顔料の形で、コーティング組成物に基づいて10~74体積%、特に20~65体積%、好ましくは25~60体積%、より好ましくは35~60体積%の粒子の総含有量を有することを提供することが好ましい。
【0124】
前記コーティング組成物は、フィラーのより高い比率で、前記フィラーが、結果として生じるコーティング;コーティングチョークからすぐに溶解されるために、74体積%より高い粒子又はフィラーを含むべきではない。
【0125】
しかしながら、低いSd値を達成するために、臨界顔料体積濃度74体積%まで、前記コーティング組成物において複合粒子をできるだけ高い比率で有することが利益的である。しかし、フィラー濃度を66体積%以上に上昇させると、毛細管吸水が劇的に悪化する。前記コーティング組成物に基づいて、20~60体積%、特に35~55体積%の複合粒子の体積濃度が、有利であることが証明されている。
【0126】
さらに、前記コーティング組成物が、少なくとも1つの疎水化剤、特にシリル化剤を含有する場合に有利である。
【0127】
前記コーティング組成物が疎水化剤を含有する場合、前記コーティング組成物は、通常、コーティング組成物に基づいて0.01~10重量%、好ましくは0.1~7.5重量%、好ましくは0.5~5重量%、特に好ましくは1~3重量%の量で疎水化剤を含有するものである。
【0128】
疎水化剤、特にシリル化剤は、シラン、オリゴマーシラン、シラノール、シロキサン、シリコネート及びこれらの混合物、特にオリゴマーシラン、シラノール、シロキサン及びこれらの混合物の群から選択されることが好ましい。加水分解シラン又はそれらのオリゴマー、すなわちシロキサンは、これに関連して特に好ましい。特に、疎水化剤が、アルキルジメトキシシラン、ジアルキルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン及びジフェニルジメトキシシラン及び混合物並びに縮合生成物、特にメチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン及び混合物並びにそのオリゴマーからなる群から選択されることが好ましい。
【0129】
前記コーティング組成物に関しては、前記コーティング組成物が、特に添加剤及び/又はフィラーの形で、少なくとも1つのさらなる成分を有することが、通常提供される。
【0130】
これに関連して、さらなる成分は、通常、レオロジー添加剤、防腐剤、安定剤、会合性増粘剤、酸及び/又は塩基、界面活性剤、脱酸成分、フィルム形成剤、ワックス、紫外線吸収剤、生物由来の活性成分、pH安定剤、pH調整剤及び染料の群から選択される。さらなる成分、特に添加剤及び補助物質の使用により、一方で、コーティング組成物の特性、特に処理及び保存に関連するコーティング組成物の特性、並びに結果として得られるコーティングの特性を目標の方法で調整することができる。
【0131】
前記コーティング組成物がさらに成分を含む場合、前記コーティング組成物は通常、該コーティング組成物に基づいて、0.01~15重量%、特に0.05~10重量%、好ましくは0.1~8重量%、より好ましくは0.1~5重量%の量の更なる成分を含有するものである。
【0132】
特に有利なコーティング組成物は、
該コーティング組成物に基づいたそれぞれの場合において、
(A)5~60重量%の量の複合材料、
(B)5~50重量%の量のバインダー、
(C)20~80重量%の量の分散剤、特に水、
(D)0.01~50重量%の量の少なくとも1つのさらなるフィラー、
(E)少なくとも1~30重量%の量の顔料、
(F)0.01~10重量%の量の疎水化剤、及び
(G)0.01~15重量%の量の補助物質及び/又は添加剤、
を具備するものである。
【0133】
上述したパラメータ及び特性のすべては、この好ましいコーティング組成物に適宜適用することができる。
【0134】
通常、前記コーティング組成物は、該コーティング組成物に基づいて、30~70重量%、特に35~60重量%、好ましくは40~55重量%の範囲の固体含有量を有する。
【0135】
前記コーティング組成物の粘度に関する限り、これは使用目的及び使用される用途の形態に応じて広い範囲にわたって変化し得る。しかしながら、一般に、前記コーティング組成物は、100~50,000mPas、特に500~30,000mPas、好ましくは1,000~20,000mPas、より好ましくは2,000~15,000mPas、特に好ましくは3,000~10,000mPas、特に好ましくは4,000~8,000mPasの範囲で20℃のブルックフィールド動的粘度を有するものである。
【0136】
前記コーティング組成物は、当業者に公知の任意の適切な方法によって基材に適用することができる。しかし、通常、前記コーティング組成物は、ブラッシング、ローリング、スクレイピング及び/又はスプレーによって基板上、特に建物外観上に適用される。
【0137】
前記コーティング組成物の適用に関する限り、前記コーティング組成物が、基板上、特に建物外観上に、20~600μm、特に50~500μm、好ましくは100~350μm、より好ましくは100~200μmの範囲の層厚で適用される場合に、有利であることが証明されている。
【0138】
同様に、前記コーティング組成物が1~10、特に1~5、好ましくは2~3層で、基板に適用される場合にも有効であることが証明されている。
【0139】
さらに、前記コーティング組成物が、100~500g/m、特に150~400g/m、好ましくは150~350g/m、より好ましくは150~250g/mの量で基板に塗布されることが意図される。
【0140】
上述の複合材料又はコーティング組成物では、新規かつ特に高性能コーティングが到達可能である。
【0141】
特に建物外観をコーティングするために特に有利なコーティングは、
(A) 上述したような複合材料、及び
(B)硬化されたバインダー、
を具備する。
【0142】
通常、前記コーティングは、20~500μm、特に50~400μm、好ましくは100~300μm、より好ましくは150~250μmの範囲内の厚さを有する。
【0143】
また、前記コーティングは、表面重量が90~200g/m、特に100~190g/m、好ましくは110~180g/m、より好ましくは120~180g/mの表面重量を有することが意図される。
【0144】
さらに、前記コーティングが、撥水性、特に土砂降り雨に対して不透過性であることが本発明の範囲内で提供される。しかし、前記コーティングが水蒸気の拡散に対して開放されることが提供される。
【0145】
前記コーティングが撥水性である場合、特に土砂降り雨に対して不浸透性、及び水蒸気に対して拡散開放性である場合が好ましい。上述されたコーティングの特徴は、撥水性と水蒸気の拡散に対する開放である。
【0146】
前記コーティングが、0.001~0.5、特に0.005~0.4、好ましくは0.01~0.3、より好ましくは0.01~0.1の範囲においてDIN EN ISO 1062-3によって決定される毛細管吸水性を有する場合に成功することが証明されている。
【0147】
前記コーティングは、0.001~0.5、特に0.001~0.3、好ましくは0.005~0.2、より好ましくは0.01~0.1の範囲でDIN EN ISO 7783-2に従って決定される水蒸気拡散等価空気層厚みを有することが好ましい。前記コーティングは、このように透過性が高いのが好ましい。
【0148】
同様に、前記コーティングが、クラックブリッジングであることを意図したものであってもよい。クラックブリッジングコーティングにより、石積建築における不均一性と張力の両方が、コーティングクラックなしに且つその機能の低下なしに補償することができる。使用されるバインダーの高い弾力性は、外観塗料の亀裂ブリッジ効果を作成し、さらに亀裂が乾燥することを防止する。
【0149】
通常、前記コーティングは、500%まで、特に400%まで、好ましくは350%までのDIN 5350 ENによる破断時の伸びを有するものである。同様に、前記コーティングが70~500%、特に80~400%、好ましくは100~350%の範囲でDIN 5350 ENによる破断時の伸びを有するものであってもよい。
【0150】
上述した本発明の複合材料及びコーティング組成物により、上述したコーティングを具備するコーティングシステムは、基材への適用に利用できる。
【0151】
これに関連して、前記コーティングと基材との間に下塗り層を設けるのが有利であることが好ましい。
【0152】
下塗りが基板とコーティングの間に配置される場合、下塗りはコーティング及び/又は基板に直接接触するように意図されることが好ましい。これに関連して、下塗り層が直接コーティングと基材に接触する場合が特に好ましい。
【0153】
前記下塗り層は、少なくとも1つの有機ポリマー及び少なくとも1つの有機ケイ素化合物に基づくことが可能である。
【0154】
これに関連して、前記ポリマーが、ポリアクリレート及びポリエステル並びにこれらの混合物から選択されることが提供される。
【0155】
有機ケイ素化合物に関しては、これは、典型的にはシラン、シラノール及びシロキサンから選択される。
【0156】
特に、良好な結果は、有機ケイ素化合物が、アルキルトリメトキシシラン、ジアルキルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン並びにそれらの混合物及びオリゴマーからなる群から選択される場合に得られるものである。特に、有機ケイ素化合物が、メチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン及びそれらオリゴマーからなる群から選択される場合が提供される。
【0157】
上述した下塗りコートによる記載されたコーティング又は記載されたコーティング組成物の接着性は、あまり好ましくない基材上でも保証することができる。特に、有機ケイ素化合物の上述した高い比率を有する下塗り層も、下塗り層の高い水蒸気拡散透過性を確保し、その結果として全体的なコーティングシステムの高い水蒸気拡散透過性を確保する。
【0158】
しかしながら、その代わりに、市販の10重量%の深塩基又は前述の10重量%の有機ケイ素化合物が、前述した本発明のコーティング組成物に付加され、基板における1層に付加されるコーティング組成物を形成することも提供される。続いて、コーティング組成物のさらなる層は、深塩基又は大量の有機ケイ素化合物なしに適用される。これはしばしば特別な下塗り層によって分配することを可能にする。
【0159】
前記下塗り層の層厚さに関する限り、下塗り層が10~100μm、特に20~80μm、好ましくは20~70μm、より好ましくは20~50μm範囲内の層厚を有する場合、成功することが証明されている。
【0160】
さらに、本発明による複合材料は、コーティングシステムの製造、特に建物外観をコーティングするための方法の利用を可能にし、ここで、コーティング組成物が、基板、特に建物外観に塗布され、コーティングが得られるように硬化又は架橋される。
【0161】
前記コーティング組成物は、ブラッシング、ローリング、スクレイピング及び/又はスプレー、特にブラッシング、ローリング及び/又はスクレイピングによって、基板に適用されることが、通常提供される。
【0162】
前記コーティング組成物の乾燥時間に関する限り、前記コーティング組成物が硬化又は架橋され、特に1~24時間、特に4~20時間、好ましくは6~16時間、より好ましくは8~12時間、乾燥される場合に最適であることが証明されている。
【0163】
特に下塗り組成物の形の前記下塗り層は、コーティング組成物が塗布される前に基板に塗布されることが好ましい。
【0164】
前記下塗り組成物が分散、特に水性散に基づいている場合、これに関して特に良好な結果が得られる。
【0165】
前記コーティングシステムに関連して既に述べたように、前記下塗り組成物が少なくとも1つの有機ポリマー及び少なくとも1つの有機ケイ素化合物を含む場合に、特に良好な結果が得られる。
【0166】
特に、有機ケイ素化合物が、シラン、シラノール及びシロキサンから選択される場合に良好な結果が得られると共に、上記特定のシラン又はそれらのオリゴマーが用いられることが好ましい。特に、有機ケイ素化合物が、アルコキシシラン及びアルコキシシロキサン、特にメチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン及びそれらのオリゴマーからなる群から選択された場合に良好な結果が得られる。
【0167】
通常、前記下塗り組成物は、塩基組成物に基づいて0.5~25重量%、特に1~15重量%、好ましくは1~10重量%の量の有機ケイ素化合物を含むことが提供される。これは、特別な下塗り組成物が使用される場合に適用される。
【0168】
しかしながら、上述されたように、前述のコーティング組成物は、10~15重量%の市販される深塩基を添加することによって又は最大10重量%のシランもしくはシロキサン又はシラノールを添加することによって変質され、コーティング組成物を底層として使用される。それから、変質されていないコーティング組成物は、この層に適用される。
【0169】
前記下塗り組成物の粘度に関する限り、前記下塗り組成物は、80~2,500mPas、特に85~1,500mPas、好ましくは85~1,000mPas、より好ましくは90~700mPas、より好ましくは100~500mPasの範囲における20℃のブルックフィールド動的粘度を有することが確率されている。
【0170】
通常、前記下塗り組成物は、ブラッシング、ローリング、スクレイピング及び/又はスプレーによって基板に適用されることを意図している。
【0171】
同様に、前記下塗り組成物が、10~150μm、特に20~120μm、好ましくは20~100μm、より好ましくは20~80μmの範囲内の層厚で基板に適用されるものである。
【0172】
本発明の主題は、図の説明及び実施例による好ましい実施形態に基づいて限定されない方法で以下にさらに説明されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0173】
図1図1は、膨張していない状態の膨張性材料を有する本発明による複合粒子の概略構造である。
図2図2は、膨れ上がった状態で膨れ上がれる材料を有する発明による複合粒子の模式説明図である。
図3図3は、本発明によって機能化されたコーティングシステムの概略説明図である。
図4図4は、乾燥状態において本発明によって機能化されたコーティングの500倍の光学顕微鏡映像である。
図5図5は、着色水での処理の後、本発明よって機能化されたコーティングの500倍の光学顕微鏡の映像である。
【発明を実施するための形態】
【0174】
図1は、孔システムを有する複合粒子1の形の本発明に係る複合材料の概略構造図を示すもので、開放細孔2によって形成されることが好ましい。複合粒子1のキャリア材料は、10~60μmの範囲の粒サイズを有するシリカゲル又はケイ酸からなることが好ましい。複合粒子1の細孔2の壁は、膨張性材料3、好ましくはアクリレートシステムの高吸水性ポリマーで装填され又は被覆されるものであり、膨張材料3は、図1に示すように膨張していない状態の複合材料1の細孔2を閉鎖しない。前記複合粒子1は、このように高い水蒸気拡散率、すなわち気体水に対する高い透過性を示すものである。前記複合粒子が組み込まれるコーティングにも同様に適用される。
【0175】
図2は、本発明による複合材料の概略構成図であり、特に複合粒子1、液体水4との接触後の図示を示す。液体水4との接触を通じて、図1に示す膨張性材料3は、複合粒子1の細孔2において図5で示すように膨張状態に変化し、複合材料1の細孔を通してそれ以上の水が吸収されないように、複合材料1の細孔2を閉じる。
【0176】
本発明による複合材料1は、膨張ポリマー5に吸収される液体水4が、気体状に再び放出され、膨張した膨張性材料、特に膨張した高吸収性ポリマーが、図1に示すような膨張していない状態3に復帰することができる。このように、本発明による複合材料1は、水蒸気に対する高い透過性を有するが、その孔が液体水と接触して閉鎖して材料が撥水性となる切替可能な機能性材料の製造を可能にする。膨張プロセスにより、本発明による複合材料を有するコーティングは、最初に、特に水と接触してから30分以内に高い毛細管吸水を示すが、それは、細孔が膨張したポリマーによって閉鎖された後、従来のコーティングの値をはるかに下回る値に低下するので、本発明による複合材料で製造されたコーティングが全体的に撥水性である。
【0177】
さらに、図3は、基板7に適用される本発明による複合材料を含むコーティングシステム6を示す。前記基板7は、建物外観又は建物壁であることが好ましい。コーティングシステム6は、切替可能な複合粒子1、及び下塗り層9を含むコーティング、特に機能的コーティング8からなる。前記コーティング8は、複合粒子1を含有し、これによって水蒸気に対する高い透過性を有し、液体水と接触して撥水性となるものである。
【0178】
前記コーティング8バインダーは、通常、高分子ビニル酢酸-エチレン-アクリレート結合剤であり、それは一方では高い撥水性を示し、他方では330%までの破壊時の優れた伸び率を有することから、前記コーティング8が損傷を受けることなしに、基板7の熱誘発変化及び張力を補償することもできる。
【0179】
前記下塗り層9は、通常、ポリマー結合剤、特にアクリレート結合剤に基づいており、それは、10重量%までの加水分解シラン、シロキサン又はシラノールを含むものである。シラン、シロキサン及びシラノールを用いることは、一方で前記下塗り層9とそれに塗布されるコーティング8の両方の接着性を改善し、他方で下塗り層9の高い水蒸気透過性を改善する。このようにして、水分は、常に基板、特に石積建築から大気に放出され、カビの形成を効果的に防止することができる。
【0180】
図4は、500倍の倍率で、膨張していない状態における本発明による複合粒子を有するコーティングの光学顕微鏡の映像を示す。示されたコーティングは、55%の複合粒子の体積分画分を有する。複合粒子は、シリカゲルとアクリル酸及びメチレンビスアクリルアミドと反応させることにより製造される。図4では、コーティング中の個々の複合粒子がはっきりと見える。
【0181】
図5は、図4と同じ被膜を、コーティングを着色水で処理した後、特にそれに接触させた後に、500倍の倍率で拡大した光学顕微鏡画の映像を示したものである。コーティングによって吸収されなかった余分な水は、写真が撮影される前に除去された。図5では、複合粒子の暗い染色によって認識される複合粒子に水が吸収されたことが非常に明確に分かる。前記高吸水性ポリマーが多孔性キャリア材料の細孔内において膨張するために、液体水は、フィラーの毛細管活性によって吸収されることがない。これにより、前記コーティングは撥水性になる。
【実施例
【0182】
1.機能性複合粒子の製造
以下には、本発明による複合粒子の製造は、シリカゲルとアクリレートベースの超吸収ポリマーを使用することが記載されている。
【0183】
モノマー溶液とスターター溶液の2つの溶液は、次の組成物で調製される:
モノマー溶液
64gのアクリル酸(モノマー)
8.4gのN,N’-メチレンビスアクリルアミド(架橋剤)
325.6gの水
【0184】
4.8モル%のモノマー含有量、6.1モル%の架橋剤含有量及び0%の中和度を有する400gのモノマー溶液が調製される。
【0185】
開始溶液
0.32gの過硫酸アンモニウム
0.32gの二亜硫酸ナトリウム
5mLの水
【0186】
続いて、0.040~0.063mmの粒サイズを有する516gのシリカゲルが提供される。前記スターター溶液と前記モノマー溶液は、モノマー溶液の早期重合を防止するために、フィラーに添加する前により小さい部分に分割され混合される。
【0187】
結合された溶液は、U=10rpmの蠕動ポンプと約5mL/分の適用量で60分間にわたって固体材料に付加される。モノマー溶液は、攪拌しながら添加され、自由に流れる生成物を残す。
【0188】
攪拌は、アンカー攪拌機で、100rpm未満で行われる。
【0189】
シリカゲルは、充填限界にあり、これは生成物が、ほとんど埃が付着せず、粉状であるが湿った粘りがあることを意味する。それから、反応容器は、窒素ですすがれ、重合が60℃の水槽において1時間撹拌されて実行される。
【0190】
不十分な混合により、凝集体が、重合時に周辺領域に形成されるが、これらは比較的容易に溶解することができる。得られた生成物は、60℃の乾燥オーブンで一晩乾燥させる。わずかな凝集が可能ですが、簡単に分割することができる。
【0191】
2.コーティング組成物の調製
下記の表1は、好ましいコーティング組成物の組成を示す。
【0192】
【表1】
表1:VEA共重合体分散に基づくコーティング組成物
【0193】
表1に示すように1000mLスケールのコーティング組成物を調製するために、250mLの水と175gの複合粒子は、攪拌しながら750~500rpmで溶解機により混合する。さらに65mLの水を加え、さらに5分間攪拌する。
【0194】
次いで、1500~2000rpmで溶解機によって攪拌しながら2.0gの分散剤及び175gの二酸化チタンを添加する。
【0195】
それに続いて、25g炭酸カルシウムを加えると同時に1500~2000rpmで溶解機によって撹拌し、10.0gのアルミニウムケイ酸を加えて1500~2000rpmで溶解機により混合する。次に、混合物は、10分間攪拌される。
【0196】
前記混合物に3.0gの脱泡剤が付加されると同時に500~750rpmで攪拌機により10分間撹拌される。
【0197】
次いで、295gの酢酸ビニル/エチレン/アクリル酸バインダーが、素早く添加され、2000rpmで溶解機により攪拌される。この混合物に、10mLの水と1.0gの増粘剤を加え、続いて2000rpmで溶解機により、さらに10分間攪拌する。
【0198】
1.0gの殺生物剤が前記混合物に添加され、前記混合物は、750rpmで溶解機により5分間攪拌される。
【0199】
3.基板のコーティング
3.1 表面の準備
コーティングシステムを適用する前に、前記基板は、欠陥のあるコーティングを機械的に又は圧力水噴射によって除去することによって前処理される。前記基板は、第1のコートが塗布される前に、基板を乾燥させる必要がある。
【0200】
3.2 下塗りコート
最大10重量%の深い下塗りを前記2.に基づいて記載されたコーティング組成物に付加することによって、付加的な下塗り層が、ほとんどの場合に分配することができる。
【0201】
3.3 下塗り、中間及び最終コート
コーティング組成物は、基板、特に建物外観上に、下塗り作業、場合により中間及び最終的な塗装により2又は3コートに塗布されることが好ましい。それは、ブラシ又はローラーにより塗布されることが好ましい。
【0202】
下塗りコートについて、下塗りコートが適用されていない場合、上述したように、最大10重量%の深い下塗りが、前記コーティング組成物に付加されることができる。
【0203】
下塗り又は中間コートは、最大10重量%の水で希釈する必要がある。粗い表面では、中間及び最終コートは、その構造と吸収性によって、少しだけ希釈され、よく塗られる。希釈の程度は、試験コートによって決定される。
【0204】
不均一に塗りつぶされたプラスターを同じレベルにするために且つプラスターの細かい亀裂を埋めるために、中間コートは、最大5~10重量%の水で希釈され適用されるものである。
【0205】
最終コートは最大5~10重量%の水で希釈することができる。特に集中的な色の場合、最終コートは、はがれることのない表面を達成するために10重量%の水で希釈する必要がある。
【0206】
少なくとも12時間の乾燥時間がコート間で行われるべきである。約150~200mL/mのコーティング組成物は、通常、滑らかな基材上のコートには十分である。粗い表面では、それに応じて消費が増加する。正確な消費はテストコーティングによって決定することができる。
【0207】
4.最先端のコーティングとの比較
本発明による複合粒子を含むコーティングと、市販のケイ酸塩塗料、プラスチック分散塗料及びシリコーン樹脂塗料に基づく塗料は、同一条件下で試験される。結果を表2に示す。
【0208】
【表2】
【0209】
表2は、それぞれの外観塗料のいくつかの重要な着色特性を示し、それによってシリコーン樹脂塗料は、最先端の最高水準を表し、可能な限り高い水蒸気拡散率と低い毛細管吸水の最良の組み合わせを提供する。本発明による機能性フィラーを用いたプラスチック分散塗料は、これらの値をさらに向上させる。
【0210】
さらに、機能化されたフィラーを使用すると、雨にさらされた後に外観表面をより迅速に乾燥させることができる:24時間浸漬期間(DIN EN 1062-3による)の後、再乾燥率は、改良されたフィラー、すなわち本発明による複合粒子を使用して最初の1時間以内に5%~19%に増加した。
【0211】
本発明による水性調整外観塗料は、表面水分の拡散及びより速く蒸発することができる均一な水分膜の形成をもたらす。これにより、表面水分の形で微生物の侵入の基礎を排除する。これは外観コーティングの高い拡散性によってさらに増強される。
【0212】
また、湿ったミネラル基材に対する毛細管活性乾燥効果が観察されており、基板内の毛細管結合水を表面に吸い込むことを確実にし、より速く乾燥させることができる。これは、シリコーン樹脂塗料に比べて改善された乾燥を結果として生じるものである。その後24時間DIN EN 1062-3に準じて塗料を水中に貯蔵することにより、再乾燥を重量的に測定した。24時間後、本発明による機能化された外観塗料で被覆された砂石灰レンガは、シリコーン樹脂コーティングの18重量%に比べて35重量%の水放出を示した。
【0213】
高吸水性ポリマー(SAP)で多孔質フィラーを機能させることによって、本発明によって拡散性壁面塗料の毛細管吸水(W値)を、当初の0.5kg/m0.5より大きい値から0.005kg/m0.5未満の値に低減させることができるので、0.1~0.03kg/m0.5の範囲内の全体的なW値が結果として生じ、本発明によって機能化される外観塗料は撥水性であると見なすことができる。毛細管吸水は、DIN 1062 ENによって決定される。特に測定開始時に最大4時間の測定時間で、本発明による複合粒子を含む外観コーティングが、プラスチック分散塗料に基づく市販の塗料よりも多くの水を吸収することが明らかになる。この吸水により、本発明による複合粒子を含むコーティングの細孔がSAPの膨張により閉鎖し、吸水率が著しく低下する。
【0214】
これは、乾燥状態において高い水蒸気拡散性を維持しながら達成される。本発明によって機能化された壁面塗料は、0.01~0.1mの水蒸気拡散に相当する水蒸気拡散等価性空気層厚(Sd値)を有し、これによって高い透過性があるものと考えられる。
【符号の説明】
【0215】
1 複合粒子
2 細孔
3 膨張性材料
4 液体水
5 膨張した膨張性材料
6 コーティングシステム
7 基板
8 コーティング
9 下塗りコート

図1
図2
図3
図4
図5