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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】基準センサを有する誘導センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
G01D5/20 K
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020546111
(86)(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 US2018060618
(87)【国際公開番号】W WO2019172967
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】15/914,037
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アイビス,フィリップ,エイチ.
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-145786(JP,A)
【文献】国際公開第2011/030142(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0140728(US,A1)
【文献】特表2017-534853(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0057668(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/20-5/252
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置センサ装置であって、
移動可能なターゲットの動きを検知する稼働センサヘッドであり、センサコイルと、該センサコイルに動作的に結合された可変電気素子とを含む稼働センサヘッドと、
固定された基準ターゲットに動作的に結合された基準センサヘッドであり、基準センサコイルと、該基準センサコイルに動作的に結合された可変基準電気素子とを含む基準センサヘッドと、
を有し、
当該位置センサ装置は、前記基準センサヘッドからの一貫した出力を維持するように前記可変基準電気素子のキャパシタンス又はインダクタンスを調節し、前記可変基準電気素子の前記調節に基づいて、前記稼働センサヘッドの前記可変電気素子のキャパシタンス又はインダクタンスを調節するように構成されている、
位置センサ装置。
【請求項2】
前記可変電気素子は、可変キャパシタである、請求項に記載の位置センサ装置。
【請求項3】
前記可変基準電気素子は可変基準キャパシタであり
前記可変基準キャパシタのキャパシタンスが、前記基準センサヘッドの共振周波数を維持するように調節される、
請求項に記載の位置センサ装置。
【請求項4】
前記可変基準キャパシタは、前記可変基準キャパシタの前記キャパシタンスに対する変更が前記稼働センサヘッドの前記可変キャパシタに対しても為されるように、前記稼働センサヘッドの前記可変キャパシタに動作的に結合される、請求項に記載の位置センサ装置。
【請求項5】
前記基準センサヘッドは、前記基準センサヘッドの前記共振周波数を維持するように前記可変基準キャパシタの前記キャパシタンスを調節するフィードバックループの一部である、請求項又はに記載の位置センサ装置。
【請求項6】
前記フィードバックループは、
前記基準センサヘッドからの出力信号を受信する位相計算モジュールと、
前記位相計算モジュールからの出力を、前記可変基準キャパシタに送られるアナログ信号へと変換するデジタル-アナログ変換器と、
を含む、請求項に記載の位置センサ装置。
【請求項7】
前記稼働センサヘッドはまた、前記センサコイル及び前記可変キャパシタに動作的に結合された固定キャパシタを含む、請求項乃至のいずれかに記載の位置センサ装置。
【請求項8】
前記稼働センサヘッドは、1つ以上のキャパシタを含み、
前記稼働センサヘッドの前記センサコイル及び前記1つ以上のキャパシタは基板上にある、
請求項1乃至のいずれかに記載の位置センサ装置。
【請求項9】
当該位置センサ装置は更に電子モジュールを有し、該電子モジュールは、
前記稼働センサヘッドの増幅器と、
前記稼働センサヘッドに結合されたアナログ-デジタル変換器であり、前記増幅器からの出力信号をデジタル化してデジタル出力信号を生成するアナログ-デジタル変換器と、
前記デジタル出力信号を復調する、前記稼働センサヘッドの復調器と、
を含み、
前記稼働センサヘッドは、
前記電子モジュールの外側にあって、前記稼働センサヘッドの前記センサコイルに対して前記電子モジュールよりも近い1つ以上のキャパシタ、
を含む、
請求項1乃至のいずれかに記載の位置センサ装置。
【請求項10】
前記センサコイルと前記電子モジュールとの間に4線式の接続が存在し、前記電子モジュールから前記センサコイルに駆動信号を提供することと、前記センサコイルから前記電子モジュールに出力信号を提供することとに、別々の線が用いられる、請求項に記載の位置センサ装置。
【請求項11】
固定位置のターゲットに動作的に結合されたセンサ装置を動作させる方法であって、
前記センサ装置の基準センサヘッドを、該基準センサヘッドからの一貫した出力を維持するように調節することと、
前記基準センサヘッドの前記調節からの結果を用いて、前記センサ装置の稼働センサヘッドを調節することと、
を有し、
前記稼働センサヘッドは、移動可能なターゲットの位置を決定するために使用され、
前記基準センサヘッドの調節は、前記基準センサヘッドの可変基準電気素子のキャパシタンス又はインダクタンスを調節することを含み、
前記稼働センサヘッドの調節は、前記基準センサヘッドの前記可変基準電気素子の前記調節に基づいて、前記稼働センサヘッドの可変電気素子のキャパシタンス又はインダクタンスを調節することを含む、
方法。
【請求項12】
前記基準センサヘッドの調節は、閉ループフィードバックプロセスの一部である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基準センサヘッドの調節は、前記基準センサヘッドの基準センサコイルからの出力信号の位相を維持する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記基準センサヘッドの調節及び前記稼働センサヘッドの調節は、温度変化に起因する前記センサ装置の特性の変化を補償する、請求項11乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記基準センサヘッドは、前記固定位置のターゲットと誘導的に相互作用する基準センサコイルを有し、
前記稼働センサヘッドは、前記移動可能なターゲットと誘導的に相互作用するセンサコイルを有する、
請求項11乃至14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
固定された基準ターゲットに動作的に結合された基準センサヘッドであり、当該基準センサヘッドからの一貫した出力を維持するように調節されるように構成された基準センサヘッドであり、当該基準センサヘッドの調節は、当該基準センサヘッドの可変基準電気素子のキャパシタンス又はインダクタンスを調節することを含む、基準センサヘッドと、
移動可能なターゲットの動きを誘導的に検知する稼働センサヘッドであり、当該稼働センサヘッドは、前記基準センサヘッドの前記調節からの結果を用いて調節されるように構成され、当該稼働センサヘッドの調節は、当該稼働センサヘッドの可変電気素子のキャパシタンス又はインダクタンスを調節することを含む、稼働センサヘッドと、
を有し、
前記稼働センサヘッドは、センサコイルと、該センサコイルに動作的に結合されたキャパシタとを含み、
前記センサコイル及び前記キャパシタは、前記稼働センサヘッドの一部である基板上にある、
位置センサ装置。
【請求項17】
当該位置センサ装置は更に電子モジュールを有し、該電子モジュールは、
前記稼働センサヘッドの増幅器と、
前記稼働センサヘッドに結合されたアナログ-デジタル変換器であり、前記増幅器からの出力信号をデジタル化してデジタル出力信号を生成するアナログ-デジタル変換器と、
前記デジタル出力信号を復調する、前記稼働センサヘッドの復調器と、
を含み、
前記キャパシタは、前記電子モジュールの外側にあり、且つ、前記センサコイルに対して前記電子モジュールよりも近い、
請求項16に記載の位置センサ装置。
【請求項18】
前記センサコイルと前記電子モジュールとの間に4線式の接続が存在し、前記電子モジュールから前記センサコイルに駆動信号を提供することと、前記センサコイルから前記電子モジュールに出力信号を提供することとに、別々の線が用いられる、請求項17に記載の位置センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば渦電流変位センサなどの誘導(インダクティブ)センサの分野にある。
【背景技術】
【0002】
渦電流変位センサでは、アナログ駆動回路を用いて、センサネットワークの一部である複数のセンサコイル(ヘッド)に振動磁界が提供される。駆動回路は、センサコイルを駆動するために、典型的には約500kHzの周波数を持つ振動磁界を提供する。センサネットワークは、センサヘッドに対するターゲットの近接によるセンサヘッドインピーダンスの変化を検出する。これらのインピーダンス変化は、ターゲットからセンサヘッドまでの距離に比例する。センサネットワークの出力は正弦波であり、該正弦波を復調及び/又は処理して、例えば信号振幅から位置情報を抽出するために、振幅及び/又は位相(これから位置を決定することができる)を決定しなければならず、又はそれに代えて、該正弦波を復調及び/又は処理して、やはり位置に比例する信号から位相を抽出しなければならない。このようなセンサの精度における継続的な改善が望まれる。
【発明の概要】
【0003】
誘導センサ装置は、例えば温度の影響を補償するために、稼働(オペレーショナル)センサヘッドを同調させる(チューニングする)ために使用される、固定ターゲットを有する基準(リファレンス)センサヘッドを含む。
【0004】
誘導センサ装置は、対応するセンサヘッド又はコイルの近くに配置されたキャパシタを有する。対応し合うキャパシタ及びコイルは同一基板上に配置され得る。
【0005】
誘導センサ装置は、電子モジュールとセンサヘッドとの間に4線(ケルビン)接続を有する。
【0006】
本発明の一態様によれば、位置センサ装置は、移動可能なターゲットの動きを検知する稼働センサヘッドと、 固定された基準ターゲットに動作的に結合された基準センサヘッドと、を含み、基準センサヘッドからの出力が、稼働センサヘッドからの出力を同調させるように構成される。
【0007】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、稼働センサヘッドは、センサコイルと、該センサコイルに動作的に結合された可変電気素子とを含む。
【0008】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、可変電気素子は可変キャパシタである。
【0009】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、可変電気素子は可変インダクタである。
【0010】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、基準センサヘッドは、基準センサコイルと、該基準センサコイルに動作的に結合された可変基準キャパシタとを含む。
【0011】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、可変基準キャパシタは、基準センサヘッドの共振周波数を維持するように調節される。
【0012】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、可変基準キャパシタは、可変基準キャパシタのキャパシタンスに対する変更が稼働センサヘッドの可変キャパシタに対しても為されるように、稼働センサヘッドの可変キャパシタに動作的に結合される。
【0013】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、基準センサヘッドは、基準センサヘッドの共振周波数を維持するように可変基準キャパシタのキャパシタンスを調節するフィードバックループの一部である。
【0014】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、フィードバックループは、基準センサヘッドからの出力信号を受信する位相計算モジュールを含む。
【0015】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、フィードバックループは、位相計算モジュールからの出力を、可変基準キャパシタに送られるアナログ信号へと変換するデジタル-アナログ変換器を含む。
【0016】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、稼働センサヘッドはまた、センサコイル及び可変キャパシタに動作的に結合された固定キャパシタを含む。
【0017】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、稼働センサヘッドは、センサコイル及び1つ以上のキャパシタを含み、センサコイル及び1つ以上のキャパシタは基板上にある。
【0018】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、位置センサ装置は更に電子モジュールを有し、該電子モジュールは、稼働センサヘッドの増幅器と、稼働センサヘッドに結合されたアナログ-デジタル変換器であり、増幅器からの出力信号をデジタル化してデジタル出力信号を生成するアナログ-デジタル変換器と、デジタル出力信号を復調する、稼働センサヘッドの復調器と、を含む。
【0019】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、稼働センサヘッドは、前記電子モジュールの外側にあって稼働センサヘッドのセンサコイルに対して電子モジュールよりも近い1つ以上のキャパシタを含む。
【0020】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、センサコイルと電子モジュールとの間に4線式の接続が存在し、電子モジュールからセンサコイルに駆動信号を提供することと、センサコイルから電子モジュールに出力信号を提供することとに、別々の線が用いられる。
【0021】
本発明の他の一態様によれば、固定位置のターゲットに動作的に結合されたセンサヘッドを動作させる方法は、センサ装置の基準センサヘッドを、該基準センサヘッドからの一貫した出力を維持するように調節するステップと、基準センサヘッドの調節からの結果を用いて、センサ装置の稼働センサヘッドを調節するステップとを含み、稼働センサヘッドは、移動可能なターゲットの位置を決定するために使用される。
【0022】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、基準センサヘッドの調節は、基準センサヘッドの可変基準キャパシタのキャパシタンスを調節することを含む。
【0023】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、稼働センサヘッドの調節は、可変基準キャパシタの調節に基づいて稼働センサヘッドの可変キャパシタのキャパシタンスを調節することを含む。
【0024】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、基準センサヘッドの調節は、基準センサヘッドの可変基準電気素子のキャパシタンス又はインダクタンスを調節することを含む。
【0025】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、稼働センサヘッドの調節は、可変基準電気素子の調節に基づいて、稼働センサヘッドの可変電気素子のキャパシタンス又はインダクタンスを調節することを含む。
【0026】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、基準センサヘッドの調節は、閉ループフィードバックプロセスの一部である。
【0027】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、基準センサヘッドの調節は、基準センサヘッドの基準センサコイルからの出力信号の位相を維持する。
【0028】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、基準センサヘッドの調節及び稼働センサヘッドの調節は、温度変化に起因する前記センサ装置の特性の変化を補償する。
【0029】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、基準センサヘッドは、固定位置のターゲットと誘導的に相互作用する基準センサコイルを有する。
【0030】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、稼働センサヘッドは、移動可能なターゲットと誘導的に相互作用するセンサコイルを有する。
【0031】
本発明の更なる他の一態様によれば、位置センサ装置は、移動可能なターゲットの動きを誘導的に検知する稼働センサヘッドを含み、稼働センサヘッドは、センサコイルと、該センサコイルに動作的に結合されたキャパシタとを含み、センサコイル及びキャパシタは、稼働センサヘッドの一部である基板上にある。
【0032】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、キャパシタは、電子モジュールの外側にあり、且つ、センサコイルに対して電子モジュールよりも近い。
【0033】
この概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、センサコイルと電子モジュールとの間に4線式の接続が存在し、電子モジュールからセンサコイルに駆動信号を提供することと、センサコイルから電子モジュールに出力信号を提供することとに、別々の線が用いられる。
【0034】
前述の目的及び関連する目的の達成のため、本発明は、以下にて十分に記述されて特に請求項中に示される特徴を有する。以下の記載及び添付の図面は、本発明の特定の例示的な実施形態を詳細に説明するものである。しかしながら、これらの実施形態は、本発明の原理が使用され得る様々なやり方のうちのほんの数例を示すものである。本発明の他の目的、利点及び新機構が、以下の発明の詳細な説明が図面とともに検討されることで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
添付の図面は、本発明の様々な態様を示すものである。
図1】本発明の第1の実施形態に従ったインピーダンスベースのセンシング装置のブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に従った方法の高水準フローチャートである。
図3】本発明の第2の実施形態に従ったインピーダンスベースのセンシング装置のブロック図である。
図4】本発明の第3の実施形態に従ったインピーダンスベースのセンシング装置のブロック図である。
図5】本発明の第4の実施形態に従ったインピーダンスベースのセンシング装置のブロック図である。
図6】本発明の第5の実施形態に従ったインピーダンスベースのセンシング装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
誘導センサ装置は、導電性のターゲットの動きを検出するのに用いられる稼働センサヘッドの特性を調節するために使用される基準センサヘッドを含む。基準センサヘッドは、稼働センサヘッドが動きを検出するターゲットと同様の固定基準ターゲットの近くにあるが、基準ターゲットは基準センサヘッドに対して固定された位置にあるという違いがある。基準センサヘッドは、可変基準キャパシタ又は可変基準インダクタを含んでおり、それが、センサ装置の動作中に、例えば一定(又はほぼ一定)の共振周波数などの一定(又はほぼ一定)の出力を維持するように調節される。可変基準素子(可変キャパシタ又は可変インダクタ)の調節は、例えば、温度変化に起因する基準センサヘッドの特性の変化を補償するために行われ得る。稼働センサヘッドの可変稼働素子(可変キャパシタ又は可変インダクタ)において、可変基準素子に対してなされる調節と同様の調節がなされるように、基準センサヘッド及び稼働センサヘッドが共に結合され得る。基準センサヘッドは、複数の稼働センサヘッドに対して調節を提供するように使用され得る。
【0037】
他の一態様において、誘導センサ装置は、比較的遠い電子モジュール内ではなく、センサコイルに近接して配置されたキャパシタを有する。例えば、装置の各センサヘッドが1つ以上の基板を含むことができ、該(1つ以上の)基板上に例えばセンサコイル及び1つ以上の対応するキャパシタが備えられる。
【0038】
更なる他の一態様において、誘導センサ装置は、そのセンサヘッドの各々について、センサコイルに送られる駆動信号用と、移動可能なターゲットの位置を検出するために処理される検知出力信号用とに、異なる線(ワイヤ)を有し得る。これは、装置の感度及び/又は精度を向上させ得るものである非常に高いインピーダンスのセンス増幅器の使用を可能にし得る。
【0039】
図1は、例えば1つ以上のターゲットの位置の変化を測定する渦電流センサ装置などの、誘導センサ装置10の概略図である。装置10は、4つの稼働(又はアクティブ)センサヘッド12、14、16、及び18を含んでいる。稼働センサヘッド12及び14は、第1の移動可能なターゲット22の位置を決定するための第1のセンサチャネル20の一部として使用され、稼働センサヘッド16及び18は、第2の移動可能なターゲット26の位置を決定するための第2のセンサチャネル24の一部として使用される。一実施形態において、ターゲット22及び26は、例えばミラーなどの光学装置の運動に関連付けられることができ、ターゲット22及び26は、例えば、直交し合う方向におけるミラーの運動(例えば、並進運動又は傾斜運動)を表す。これは、動きが決定され得るターゲットの単なる一例であり、例えば加速度計の一部としての使用といった、誘導センサの数多くの他の用途も可能であることが理解されるであろう。ターゲット22及び26は、アルミニウム又は他の好適な材料で作製されることができ、例えばプレート、バー、又はディスクであるなど、多様な好適形状のいずれを有してもよい。
【0040】
装置10はまた、基準チャネル36の一部として、固定された基準ターゲット34が付随した基準センサヘッド32を含んでいる。基準ターゲット34は基準センサヘッド32に対して移動せず、例えば温度の変化の影響を補償するために、基準センサヘッド32の出力を用いてアクティブ又は稼働センサヘッド12-18の特性を調節することを可能にする。基準ターゲット34は、ターゲット22及び26と同じ材料で作製されることができ、及び/又はターゲット22及び26と同じ形状を持ち得る。
【0041】
1つ以上の電流ドライブは、周期的な駆動電流をセンサヘッド12、14、16、18、及び32に印加する。この電流は、途中でそれぞれの電流駆動増幅器52、54、56、58、及び60を通ってそれぞれのセンサコイル62、64、66、68、及び70へと進むものであり、図1において、波形42、44、46、48、及び50によって示されている。駆動電流は、例えば500kHzといった好適な周波数にあることができ、センサコイル62-70内に振動磁界を生成する。センサコイル62-70は、非限定的な例を挙げるに、巻線コイル又はプリント配線板上の平らな螺旋トレースとし得る。センサヘッド12、14、16、18、及び32はまた、それぞれの固定キャパシタ72、74、76、78、及び80と、それぞれの可変キャパシタ82、84、86、88、及び90とを有しており、これらは、対応するそれぞれのセンサコイル62、64、66、68、及び70と並列に結合されている。
【0042】
可変キャパシタ82-90は、より広範なカテゴリの可変電気素子の例である。図1に示す特定の実施形態に示される可変キャパシタ82-90の代わりに、例えば可変インダクタなどの他のタイプの可変電気素子が使用されてもよく、一部のタイプの素子(例えば可変インダクタなど)は、キャパシタ82-90と並列に配置される代わりに、コイル62-70と直列に配置される。以下の説明において理解されるべきことには、記載される可変キャパシタ82-90は、使用可能な広範な種類の可変電気素子の単なる例である。
【0043】
センサヘッド12、14、16、18、及び32からの出力信号は、それぞれのセンシング計装増幅器92、94、96、98、及び100を通り抜け、次いでそれぞれのアナログ-デジタル(A/D)変換器102、104、106、108、及び110を通り抜ける。次いで、稼働センサチャネル20、24からのデジタル化された信号が復調器112、114、116、及び118を通り抜け、そして、復調された出力信号が組み合わされて、ターゲット22及び26の位置に関する位置インジケーションが生成される。復調は、位相センシティブ整流、又はDFT(離散フーリエ変換)、又は他の手段の形態をとることができる。ターゲット位置は、振幅測定結果又は位相測定結果のいずれかから抽出されることができる。
【0044】
所与のターゲット22、26と、それに付随するセンサコイル62、64、及び66、68との間で距離が変化すると、インダクタコイル62、64、及び66、68を流れる渦電流が、コイルの実効インダクタンスを変化させるように影響され、それ故に、共振をシフトさせ、位置を測定する手段を可能にする。センサヘッド12、14、16、及び18の出力信号の振幅又は位相のいずれかにおける変化を用いて、ターゲット位置を推定することができ、処理された信号だけを用いて又は他のデータ(例えば、較正データ若しくはルックアップテーブル、又はデータに線形最小二乗フィット(又はもっと高次の曲線)を適用することなど)と組み合わせて用いて、所与のチャネル20、24のセンサヘッド12、14、16、18によって検出された物体変位の出力が生成される。例えば、センサチャネル20、24は、ターゲット位置を既知の位置に移動させ、センサ推定されたターゲット位置をそれらの既知の位置と比較することによって較正され得る。そして、推定位置と既知の位置との間の差を装置10内で用い、ルックアップテーブル、又は多項式フィット、又は他の手段を介して、推定位置誤差を低減させることができる。
【0045】
基準センサヘッド32のデジタル化された基準出力信号は位相計算モジュール122を通り、そこで、共振周波数の変化が指し示す位相の変化が検出される。位相は、(例えば)離散フーリエ変換(DFT)などの、複数の手段又は機構を介して検出され得る。基準ターゲット34は動かないので、出力基準信号の変化は基準チャネル36の特性の変化に起因するものである。基準チャネル36の使用は、例えば温度の変化によって生じるような、システム特性における変化をアイソレーションし、そのような変化を、ターゲットの移動から生じる出力の変化から分離したままにすることを可能にする。これは、可変キャパシタ82、84、86、88、及び90の使用を通じて、例えば温度の変化から生じるものなどのシステム特性の変化を除去又は少なくとも大幅に低減させるための、システムの補償を可能にする。
【0046】
従って、位相計算モジュール122からの出力が、可変基準キャパシタ90のキャパシタンスの値を変化させるための信号として表現され、該値が、基準センサヘッド32の共振周波数を維持するよう、基準センサヘッド32の出力に対する位相の変化を補償するように変化される。値の変更のためのこの信号は、キャパシタンス調節を実現するために可変キャパシタ82、84、86、88、及び90に送られる前に、デジタル-アナログ(D/A)変換器126、及び基準チャネルフィードバック増幅器128を通される。基本的に、基準チャネル36は、低帯域幅の閉じたフィードバックループとして作用し、基準チャネル36からの出力信号を一定に維持するように可変基準キャパシタ90のキャパシタンスが調節されるとともに、同じ変更が稼働センサヘッド12-18の可変キャパシタ82、84、86、及び88に為される。これに代わる一アプローチは、補償すべき変化はゆっくりと変化するものであるので、基準計算及び対応する調節をコマンドで実行するものであろう。このような計算及び操作は、ソフトウェア、ハードウェア、若しくはファームウェア、又はこれらの組み合わせにて実行され得る。
【0047】
フィードバック信号は、アナログ信号として上述されている。それに代えて、センサヘッドに適切なインタフェースを設けて、フィードバック信号をデジタル信号の形態としてもよい。
【0048】
基準センサヘッド32の構成及び特性は、稼働センサヘッド12-18の構成及び特性と多くの点で同様とし得る。例えば、固定キャパシタ72-80の全てが同様の特性を持つとすることができ、可変キャパシタ82-90の全てが同様の特性を持つとすることができ、駆動増幅器52-60の全てが同様の特性を持つとすることができ、センサコイル62-70の全てが同様の特性を持つとすることができ、センシング計装増幅器92-100の全てが同様の特性を持つとすることができ、且つ/或いはA/D変換器102-110の全てが同様の特性を持つとすることができる。センサ装置10の様々な対応し合うする部分間での特性の類似性は、基準センサヘッド32のチューニングを稼働センサヘッド12-18に適用することの助けとなる。しかしながら、一部の代わりの実施形態では、チューニングのための適切な調節を行って、異なるセンサの一部の部分に異なる特性が存在してもよい。
【0049】
可変キャパシタ82-90は、センサヘッド12-18を同調させるために調節され得る広範なカテゴリの可変電気素子の一例である。他の可能なタイプの可変電気素子は可変インダクタである。可変インダクタは、コイル62-70に電気的に結合されたセンサヘッド12-18及び32の一部として設けられることができ、可変インダクタのインダクタンスが、センサヘッド12-18及び32を同調させるために変化される。例えば可変キャパシタ及び/又は可変インダクタを使用して、異なるタイプの可変素子が、同じセンサヘッド内で使用されてもよい。
【0050】
センサ10の1つの有利な特徴は、キャパシタ72-90が、センサ装置10の他の電気/電子/プロセッシングコンポーネントを収容する電子モジュール(又は電子ボックス)130から離して、それらの対応するセンサコイル62-70の近くに配置され得ることである。例えば、電子モジュール130は、増幅器52-60、92-100、及び/又は128、A/D変換器102-110、D/A変換器126、復調器112-118、及び/又は位相計算モジュール122を含み得る。
【0051】
図1に例示するように、センサコイル62、64、66、68、及び70は、それぞれの基板142、144、146、148、及び150上に位置することができ、センサコイル62、64、66、68、及び70の各々に対応するキャパシタ72-90も、対応する基板142、144、146、148、及び150上に位置し得る。キャパシタ72-90を、例えば、電子モジュール130に対してよりも、センサコイル62-70に対して近くして、キャパシタ72-90をそれらの対応するセンサコイル62-70の近くに配置することはまた、センサコイル62-70とキャパシタ72-90との間の電気抵抗を低減させ、センサ装置のいっそう容易でいっそう正確なチューニングを提供する。
【0052】
対応するセンサコイル62-70の近くでのキャパシタ72-90の配置は、センサヘッド12-18及び32の各々のための4線(four-wire)接続の使用という、センサ装置10の別の有利な構成を可能にする。駆動増幅器52-60からセンサヘッド12-18及び32に送られる駆動信号用と、センサヘッド12-18及び32からセンシング計装増幅器92-100に送られるセンサ信号用とに、別々の線(ワイヤ)が存在する。センサ信号出力からのリード及びコンタクト抵抗の除去は、ターゲット22及び26の位置を決定するために使用される信号の精度を向上させ、基準センサヘッド32に基づくセンサヘッドチューニングの精度を向上させる。
【0053】
図2は、例えば装置10(図1)などのセンサ装置を調節する方法200の高水準フローチャートである。ステップ202にて、例えば位相計算モジュール122(図1)の使用によってなどで、基準センサヘッド32(図1)の出力がモニタされる。このモニタリングに基づいて、ステップ204にて、基準センサヘッド32の共振周波数を維持するように、例えば可変キャパシタ90においてなどで、基準センサヘッド32において調節が為される。ステップ202及び204は、より詳細に上述したフィードバックループの部分である。ステップ206にて、基準センサヘッド32に対する調節に基づいて、稼働センサヘッド12-18が同調又は調節される。前述したように、これらの調節は、基準センサヘッド32及び稼働センサヘッド12-18の双方の可変キャパシタ82-90に対する同じ調節を伴い得る。
【0054】
図3は、他の一構成のセンサ装置260を示しており、センサ装置260は、センサ装置10の4線接続ではなく2線接続のみをセンサ装置260が有するという点で、センサ装置10(図1)とは異なっており、センサヘッド262-270と電子モジュール(又は電子ボックス)280との間で駆動信号及びセンサヘッド出力信号が同じ線に沿って走る。他の点では、センサ装置260はセンサ装置10と同様である。
【0055】
図4は、センサ装置10(図1)の基準チャネル36(図1)を省いた他の選択肢のセンサ装置310を示している。センサ装置10のフィードバック概念が省かれるので、センサ装置310はまた、例えばセンサ装置10の可変キャパシタ82-90(図1)などの、如何なる可変キャパシタも含まない。そうとはいえ、センサ装置310は、例えば、対応するキャパシタ372-328及びコイル362-368をそれぞれの基板382、384、386、及び388上に有するなど、それぞれのセンサコイル362、364、366、及び368の近くでの固定キャパシタ372、374、376、及び378の配置から得られるものなどの、一部の有利な特性を有する。加えて、センサ装置310は、センサコイル362-368と電子モジュール又は電子ボックス390との間に駆動信号線及びセンサ出力信号線の別々の対を有して、センサ装置10と4線インタフェースを共有し得る。
【0056】
図5は、更なる他の一選択肢のセンサ装置410を示しており、これは、単一のターゲット422の動きを追跡するための2つの稼働センサヘッド412及び414と、フィードバックループの部分として固定ターゲット434に動作的に結合された基準センサヘッド432とを有している。基準センサヘッド432は、それぞれのセンサコイル462、464、及び466に動作的に結合された可変キャパシタ442、444、及び446を変化させることによって温度変化(又は他の影響)を補償するために使用される。フィードバック処理については、センサ装置10(図1)に関して上で説明されている。センサ装置410は、センサ装置10の4つの稼働センサヘッド12-18(図1)とは対照的に、センサ装置410が2つの稼働センサヘッド412及び414のみを有するという点で、センサ装置10とは異なっている。理解されることには、このような装置には、単一の稼働センサヘッドから多数のこのような稼働センサヘッドまで、合理的な如何なる数の稼働センサヘッドがあってもよい。
【0057】
図6は、センサ装置510を示しており、これは、可変キャパシタ82-90(図1)が可変電気素子582、584、586、588、及び590に置き換えられていることを除いて、センサ装置10(図1)と同様であり、可変電気素子582-590は、(前述のように)可変キャパシタ、可変インダクタ、又はこれらの何らかの組み合わせとし得る。可変電気素子582-590は、図6では、コイル562、564、566、568、及び570と直列の可変インダクタとして示されているが、より広く、他のタイプの電気素子であってもよい。他の点では、センサ装置510はセンサ装置10と同様であることができ、同様の素子、同様の特徴、及び同様の機能の仕方を有し得る。
【0058】
本発明を1つ以上の特定の好適実施形態に関して図示して説明してきたが、明らかなことには、本明細書及び添付の図面を読んで理解した当業者には、等価な代替及び変更が思い浮かぶことになる。特に、上述の要素(コンポーネント、アセンブリ、装置、組成など)によって実行される様々な機能に関して、そのような要素を記述するために使用される用語(“手段”への参照を含む)は、特段の断りがない限り、ここに例示した本発明の1つ以上の実施形態においてその機能を果たす開示構造とは構造的に等価でないとしても、記述される要素の指定機能を実行する(すなわち、機能的に等価な)如何なる要素にも対応することが意図される。また、本発明の或る特定の機構は、例示した幾つかの実施形態のうちの1つ以上に関してのみ上述されているかもしれないが、そのような機構が、所与又は特定の用途に関して望ましくて有利であるように、他の実施形態の1つ以上の他の機構と組み合わされてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6