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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/173 20060101AFI20220822BHJP
   F16C 25/08 20060101ALI20220822BHJP
   F16C 35/063 20060101ALI20220822BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
H02K5/173 A
F16C25/08 A
F16C35/063
F16C19/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020554804
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2019036057
(87)【国際公開番号】W WO2020090249
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2018202562
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 浩威
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴之
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-511278(JP,A)
【文献】特開平05-030701(JP,A)
【文献】特開平07-231609(JP,A)
【文献】米国特許第06356004(US,B1)
【文献】特開昭58-020972(JP,A)
【文献】特開昭62-205712(JP,A)
【文献】特開平03-020131(JP,A)
【文献】特表2006-511185(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054236(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/173
F16C 25/08
F16C 35/063
F16C 19/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸としてのシャフトと、
前記シャフトに固定されたロータと、
前記回転軸方向において前記ロータと対向して配置され、前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、
前記ロータおよび前記軸受の間に配置され、一端部が前記ロータに固定されるばね部材と、を備え
前記ばね部材は、
前記シャフトの外面に沿って螺旋状に巻き回された線材により形成されており、
前記ロータ側における前記ばね部材の外径が前記軸受側における外径よりも大きく、
前記ばね部材のピッチは、不均等であり、
前記ロータ側における前記ばね部材のピッチが前記軸受側における前記ばね部材のピッチよりも長い、
モータ。
【請求項2】
複数のコイルと、複数の板状の金属部材と、を備えるステータを備え
前記ロータは、マグネットを備え
前記複数の板状の金属部材は、前記回転軸方向に積まれている
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ロータは、
磁性部材と、
マグネットと、を備え、
前記磁性部材は、前記回転軸方向において、前記ばね部材へ向かって突出する突出部を備え、
前記突出部の一部分は前記ばね部材の内側に配置される、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記回転軸方向において、前記突出部は、前記ばね部材に向かって先細る形状を備え、
前記突出部の外面は、傾斜面を有し、
前記ばね部材の前記一端部が前記傾斜面に固定される、請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記回転軸方向において、前記ばね部材は、
前記ロータを前記軸受に対して付勢している、請求項1~4のいずれか1つに記載のモータ。
【請求項6】
径方向において、前記ばね部材と前記シャフトの外面との間には隙間が設けられる、請求項1~5のいずれか1つに記載のモータ。
【請求項7】
記巻き回された線材のピッチは、前記回転軸方向で不均等である、
請求項1乃至6のいずれか1つに記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ブラシレスモータ等といった種々のモータが提案されている。また、モータの中には、車両のエンジンルームに配置される車載用のモータがある。また、車載用のモータには、例えば、軸受に対してロータを付勢するばねがシャフトに設けられるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-244595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両のエンジンでは様々な振動が発生する。かかる振動には、例えば、ピストンの往復運動による一定周波数の振動(いわゆるサイン波)や、走行時に道路凹凸からの突き上げに起因した不規則な周波数の振動(いわゆるランダム波)等がある。
【0005】
そして、このような振動によって、ロータを付勢するばねが暴れる、いわゆるサージングが生じることで、ばねがシャフトの外面に接触して、シャフトの摩耗を早めてしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、シャフトの摩耗を抑えることができるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るモータは、回転軸としてのシャフトと、ロータと、軸受と、ばね部材とを備える。前記ロータは、前記シャフトに固定される。前記軸受は、前記回転軸方向において前記ロータと対向して配置され、前記シャフトを回転可能に支持する。前記ばね部材は、前記ロータおよび前記軸受の間に配置され、一端部が前記ロータに固定される。前記ばね部材は、前記シャフトの外面に沿って螺旋状に巻き回された線材により形成されており、前記ロータ側における前記ばね部材の外径が前記軸受側における外径よりも大きく、前記ばね部材のピッチは、不均等であり、前記ロータ側における前記ばね部材のピッチが前記軸受側における前記ばね部材のピッチよりも長い。
【0008】
本発明の一態様によれば、シャフトの摩耗を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るモータの外観を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るモータの断面図である。
図3図3は、実施形態に係るロータおよびばね部材の斜視図である。
図4図4は、実施形態に係るモータの一部の断面図である。
図5図5は、実施形態に係るばね部材の断面図である。
図6図6は、図5に示すばね部材と異なる不等ピッチのばね部材を示す図である。
図7図7は、図5に示すばね部材と異なる不等ピッチのばね部材を示す図である。
図8図8は、図5に示すばね部材と異なる不等ピッチのばね部材を示す図である。
図9図9は、ばね部材の変形例を示す図である。
図10図10は、ばね部材の変形例を示す図である。
図11図11は、ばね部材の変形例を示す図である。
図12図12は、ばね部材の別の変形例を示す図である。
図13図13は、ばね部材の別の変形例を示す図である。
図14図14は、ばね部材の別の変形例を示す図である。
図15図15は、実施形態に係るロータおよびばね部材の位置関係を説明するための図である。
図16図16は、変形例に係るヨークの断面図である。
図17図17は、変形例に係るモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係るモータについて図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下では、モータは、ステータの内周側にロータが配置されるインナロータ型のブラシレスモータである場合を例に挙げて説明するが、モータは、ステータの外周側にロータが配置されるアウタロータ型のブラシレスモータであってもよい。なお、Z軸方向である回転軸方向を、軸方向と呼称する。後述するサージングとは、例えば、ピストンの往復運動による一定周波数の振動(いわゆるサイン波)や、走行時に道路凹凸からの突き上げに起因した不規則な周波数の振動(いわゆるランダム波)等の振動によって、ばねによるロータを付勢する力が弱まり、ばねが暴れ、所定の周波数で発生する共振をいう。
【0011】
図1は、実施形態に係るモータの外観を示す斜視図である。図1に示すように、実施形態に係るモータ1は、全体形状が略円柱形状である。また、モータ1は、後述するロータやステータ等の各部材がハウジング3および蓋部31によって覆われている。また、モータ1は、シャフト2がハウジング3および蓋部31からZ軸方向である軸方向に突出している。なお、モータ1は、図示しない外部端子を備えており、かかる外部端子を介して外部から電力が供給されてシャフト2が回転する。
【0012】
実施形態に係るモータ1は、ハウジング3の内部において、後述するばね部材7(図2参照)を備える。ばね部材7は、後述するロータ4(図2参照)および第2軸受6b(図2参照)の間に配置され、一端部がロータ4に固定される。これにより、例えば、車両の振動等によって、ばね部材7がシャフト2の径方向に暴れることを抑止できる、すなわち、サージングの発生を抑制できるため、ばね部材7とシャフト2とが接触することを抑制できる。従って、実施形態に係るモータ1によれば、ばね部材7の一端部をロータ4に固定することで、シャフト2の摩耗を抑え、特にシャフト2が金属部材で形成されていれば金属摩耗の発生を抑えることができる。また、シャフト2の摩耗により生じる金属粉が第2軸受6b等に進入してシャフト2の回転効率が低下することを抑制でき、特に摩耗により発生する粉が軸受の内部に侵入して、軸受が回転しにくくなることを抑止することができる。
【0013】
さらに、実施形態に係るばね部材7は、略円錐形状であり、また、回転軸方向においてばね部材7を構成する線材(金属線)のピッチが不均等となる、いわゆる不等ピッチで構成することもできる。これにより、サージングの発生をさらに抑制できるため、シャフト2の摩耗をより抑制できる。なお、上記したばね部材7の詳細については後述する。
【0014】
以下、モータ1の構成について詳細に説明する。
【0015】
図2は、実施形態に係るモータ1の断面図である。図2に示すように、モータ1は、回転軸としてのシャフト2、ハウジング3、ロータ4、ステータ5、軸受6、ばね部材7および蓋部31を備える。
【0016】
シャフト2は、モータ1における回転軸である。シャフト2は、一端部が蓋部31から突出し、他端部がハウジング3の後述する底部3bから突出する。つまり、シャフト2は、モータ1をZ軸方向である軸方向に貫通して配置される。また、シャフト2は、Z軸正方向側の一端部(あるいは、Z軸負方向側の他端部)に、例えば、ギア等の動力伝達機構が接続される。
【0017】
ハウジング3は、例えば鉄やアルミ等の金属材料で形成される筐体である。また、ハウジング3は、Z軸正方向側である一端部側が開口した開口部3aとなっており、他端部側が閉じられた底部3bとなっている。
【0018】
蓋部31は、ハウジング3の開口部3aを覆う蓋であり、例えば、鉄やアルミ等の金属材料や、硬質の樹脂材料等で形成される。なお、蓋部31には、シャフト2が通過するための貫通孔が設けられる。
【0019】
ロータ4は、モータ1における回転体であり、ヨーク4aと、マグネット4bとを備える。また、ロータ4は、ステータ5の内周側に配置される、いわゆるインナロータ型である。なお、ロータ4は、インナロータ型に限定されるものではなく、ステータ5の外周側に配置される、いわゆるアウタロータ型であってもよい。アウタロータ型のモータの場合には、ロータは筒状のヨークと、ヨークの外面または内面に取り付けられた環状のマグネットを備える。このロータの内側に、ステータが配置された構成でアウタロータ型のモータは構成される。
【0020】
ヨーク4aは、筒状の鉄心であり、磁性部材で形成されており、内面4a1側にシャフト2の外面2aが固定される。なお、ヨーク4aとシャフト2との固定は、例えば、接着部材等を用いて接着により固定してもよく、あるいは、ヨーク4aにシャフト2を圧入して固定してもよい。
【0021】
マグネット4bは、内周部4b1と外周部4b2とを備える筒状の永久磁石であり、内周部4b1にヨーク4aが固定される。マグネット4bは、樹脂部材と磁性材料で形成した、いわゆるボンド磁石、又は複数個のマグネットをヨーク4aの外面4a2に配置してマグネット4bを形成してもよい。なお、ヨーク4aとシャフト2との固定は、例えば、接着部材等を用いて接着により固定してもよく、あるいは、圧入して固定してもよい。
【0022】
また、モータ1の径方向において、マグネット4bの外周部4b2とステータ5の内周部との間には磁気ギャップが形成されている。これにより、ロータ4がステータ5で発生する磁界によって回転する。
【0023】
ステータ5は、筒状の磁性部材であり、例えば、ケイ素鋼板、電磁鋼板等の軟磁性鋼板等の板状の金属部材によって形成される。具体的には、ステータ5は、この板状の金属部材がシャフト2の軸方向に複数積まれて形成される。
【0024】
また、ステータ5の内周側には、図示しないコイルが巻かれた複数のティースを有する。かかる複数のティースとマグネット4bとの間には磁気ギャップが形成される。すなわち、ステータ5は、外部から供給される交流電流を各ティースに巻かれたコイルに順次通電することで、ロータ4を回転するための磁界を形成する。
【0025】
軸受6は、例えば、転がり軸受であり、シャフト2の軸方向においてロータ4と対向して配置され、シャフト2を回転可能に支持する。本実施形態では、軸受6は、第1軸受6aおよび第2軸受6bを備える。上記したシャフト2は、第1軸受6aおよび第2軸受6bに挿入される。具体的には、シャフト2は、第1軸受6aに圧入される。また、第2軸受6bは、シャフト2に対して変位または摺動可能に挿入される。
【0026】
第1軸受6aは、ロータ4に対して蓋部31側に配置され、蓋部31に固定される。具体的には、第1軸受6aは、蓋部31に接着または圧入により固定される。これにより、例えば、車両の振動等により、第1軸受6aがハウジング3に対して位置ずれすることを抑制できる。
【0027】
第2軸受6bは、ロータ4に対してハウジング3の底部3b側に配置され、底部3bに固定される。具体的には、第2軸受6bは、ハウジング3の底部3bに接着または圧入により固定される。これにより、例えば、車両の振動等により、第2軸受6bがハウジング3に対して位置ずれすることを抑制できる。
【0028】
ばね部材7は、ロータ4および第2軸受6bの間に配置され、一端部がロータ4に固定される。なお、ばね部材7は、ロータ4および第1軸受6aの間に配置されてもよい。このように、ばね部材7は、一端部がロータ4に固定されることで、振動によるばね部材7の暴れが抑制されるため、ばね部材7とシャフト2との接触が抑制されることで、シャフト2の外面2aの傷つき(摩耗)を抑えることができる。ここで、図3および図4を用いて、ばね部材7についてさらに説明する。
【0029】
図3は、実施形態に係るロータ4およびばね部材7の斜視図である。図4は、実施形態に係るモータ1の一部の断面図である。図3では、ロータ4およびばね部材7の固定箇所を拡大して示している。
【0030】
図3に示すように、ロータ4は、ばね部材7側の端面4d(ばね部材7に対向する他端部の面)において凹部41が形成される。そして、ばね部材7は、一端部7a(図4参照)がロータ4の凹部41に嵌ることで固定される。具体的には、図3に示すように、凹部41は、軸方向で高さの異なるヨーク4aの他端部(ばね部材7側の端部)およびマグネット4bの他端部(ばね部材7側の端部)を組み合わせることで形成され、径方向において、ヨーク4aの他端部およびマグネット4bの他端部の間には段部4cが設けられている。
【0031】
より具体的には、図4に示すように、ロータ4のヨーク4aは、Z軸負方向側であるばね部材7へ向かって突出する突出部41aを有する。また、ロータ4のマグネット4bは、ヨーク4aにおける突出部41a以外の部位(非突出部)に対してばね部材7へ向かって突出している。つまり、凹部41は、ヨーク4aの突出部41aおよびマグネット4bの内周部4b1を側壁とし、ヨーク4aの非突出部を底面とした凹部として構成される。
【0032】
なお、ロータ4は、少なくとも突出部41aを有していれば、凹部41を形成しなくともよい。つまり、マグネット4bがヨーク4aの非突出部に対して突出しなくともよく、例えば、マグネット4bの端面(ばね部材7に対向する他端部の面)と非突出部の端面(ばね部材7に対向する他端部の面)とが揃っていてもよく、マグネット4bの端面よりも非突出部の端面のほうがばね部材7に近くなる配置であってもよい。
【0033】
そして、ばね部材7は、ヨーク4aの突出部41aの一部分が内側に配置されるとともに、一端部7aが突出部41aに接触して固定される。なお、ばね部材7および突出部41aの位置関係の詳細については、図15で後述する。
【0034】
また、図4に示すように、第2軸受6bは、内輪61bと、外輪62bと、ボール部63bとを備える。径方向において、内輪61bとシャフト2との間には所定の間隙が設けられている。この内輪61bは、シャフト2に対して変位または摺動可能であるとともに、内輪61bには、ばね部材7による付勢力が作用している。内輪61bは、このばね部材7の付勢力により、ボール部63bを介して外輪62bに接触しており、回転するシャフト2に接触して回転する部位となっている。外輪62bは、ハウジング3の底部3b(図2参照)に固定される部位である。ボール部63bは、複数のボールがシャフト2の径方向に並んで配置されるとともに、内輪61bおよび外輪62bの間に配置される。
【0035】
そして、ばね部材7の他端部7bは、樹脂部材8を介して第2軸受6bの内輪61bに接続される。樹脂部材8は、平板状で環状の形状を有し、ばね部材7の滑り止めとして機能する。これにより、ばね部材7は、シャフト2、ロータ4および内輪61bの回転に連動して回転する。なお、ばね部材7および樹脂部材8の間や、樹脂部材8および内輪61bの間は、例えば、接着部材等によって固定されてもよい。
【0036】
また、ばね部材7は、ロータ4および第2軸受6bの間に配置されることで、軸方向において、ロータ4を第2軸受6bに対して付勢している。これにより、ばね部材7は、第2軸受6bに与圧または予圧をかけることができるため、例えば、車両の振動等が伝播した場合であっても、与圧または予圧により内輪61bとボール部63bと外輪62bとが互いに接触しているため、シャフト2の回転を安定させることができる。
【0037】
また、図4に示すように、ばね部材7は、略円錐形状、かつ、不等ピッチで構成される。ここで、図5を用いて、ばね部材7の形状について具体的に説明する。図5は、実施形態に係るばね部材7の断面図である。
【0038】
図5に示すように、径方向において、ばね部材7とシャフト2の外面2aとの間には隙間が設けられる。これにより、例えば、車両の振動等によって、ばね部材7がシャフト2の径方向へ振れたとしても、ばね部材7とシャフト2とが接触することを抑制できるため、シャフト2の摩耗を抑えることができる。
【0039】
また、図5に示すように、ばね部材7は、金属線9がシャフト2の外面に沿って螺旋状に形成され、Z軸正方向側であるロータ4側におけるばね部材7の外径W1がZ軸負方向側である第2軸受6b側におけるばね部材7の外径W2よりも大きい。具体的には、ばね部材7は略円錐形状となっており、ばね部材7の外径が第2軸受6bからロータ4に向かって徐々に大きくなっている。
【0040】
これにより、ばね部材7の径方向への振動の中心をロータ4側にずらすことができる。つまり、ばね部材7およびシャフト2の隙間がより広い位置に振動の中心をずらすことができるため、ばね部材7およびシャフト2の接触をさらに抑制できる。
【0041】
また、ばね部材7は、螺旋状に巻き回された少なくとも1本の線材(金属線9)で形成されており、軸方向において、この巻き回れた金属線9の一部分と他の一部分の間隔(ピッチ)が不均等になっている。具体的には、ばね部材7において、ロータ4側における金属線9のピッチP1が第2軸受6b側における金属線9のピッチP2よりも長い。より具体的には、ロータ4側の一端部7aを始点とし、線間の中心から中心の間隔を、第2軸受6b側の他端部7bに向かって計測すると、ばね部材7において、ロータ4側から第2軸受6bに向かって金属線9のピッチが徐々に短くなる。言い換えると、ばね部材7は、軸方向において、ロータ4側にある一端部7aと、第2軸受6b側にある他端部7bと、ロータ4側にある一端部7aと第2軸受6b側にある他端部7bとの間にある中央部7cとを備える。第2軸受6b側にある他端部7bと中央部7cとの間における、ばね部材7を形成する金属線9の巻き数Nは、ロータ側にある一端部7aと中央部7cとの間における、ばね部材7を形成する金属線9の巻き数Mより多くなっている。また、軸方向において、金属線9の巻数はロータ4から第2軸受6bに向かう方向に徐々に増加している。言い換えると、ばね部材7は、一端部7a、中央部7c、他端部7bに向かって金属線9のピッチが「P1>P3>P2」と徐々に短くなる不等ピッチのばねである。
【0042】
これにより、Z軸方向であるシャフト2の軸方向の振動がモータ1に伝播した場合に、ばね部材7を伝播する振動の周波数について、ロータ4側におけるばね部材7の金属線9と第2軸受6b側におけるばね部材7の金属線との間(ピッチ間)で異なることで、ばね部材7が共振を起こしにくくなるため、サージングの発生を抑えることができる。また、ばね部材7がサージングを起こしにくくしたことにより、振動の中心をロータ4側にずらして、ばね部材7の径方向への振幅をより抑えることができる。
【0043】
なお、ばね部材7は、ロータ4側から第2軸受6bに向かって金属線9のピッチが徐々に短くなる不等ピッチに限定されない。図6図8は、図5に示すばね部材と異なる不等ピッチのばね部材を示す図である。例えば、ばね部材7において、ロータ4側における金属線9のピッチP1が第2軸受6b側における金属線9のピッチP2よりも短くてもよい。より具体的には、ばね部材7は、図6に示すように、一端部7a、中央部7c、他端部7bに向かって金属線9のピッチが「P1<P3<P2」と徐々に長くなる不等ピッチのばねであってもよい。さらに、例えば、(1)ロータ4側における金属線9のピッチと、第2軸受6b側における金属線9のピッチと、ロータ4側における金属線9と、第2軸受6b側における金属線9との間(中央部7c側)における金属線9のピッチが、互いに異なっていてもよい。すなわち、例えば、図5に示す、領域Aのピッチと領域Bのピッチと領域Cのピッチとが互いに異なっていてもよい。また、(2)ロータ4側における金属線9のピッチが、同じ第2軸受6b側における金属線9のピッチ及び中央部7c側における金属線9のピッチに対して異なっていてもよい。すなわち、領域Bのピッチと領域Cのピッチとが同じで、領域Aのピッチが領域Bや領域Cのピッチと異なっていてもよい。また、(3)第2軸受6b側における金属線9のピッチが、同じロータ4側における金属線9のピッチ及び中央部7c側における金属線9のピッチに対して異なっていてもよい。すなわち、領域Aのピッチと領域Cのピッチとが同じで、領域Bのピッチが領域Aや領域Cのピッチと異なっていてもよい。また、(4)中央部7c側における金属線9のピッチが、同じロータ4側における金属線9のピッチ及び第2軸受6b側における金属線9のピッチに対して異なっていてもよい。すなわち、領域Aのピッチと領域Bのピッチとが同じで、領域Cのピッチが領域Aや領域Bのピッチと異なっていてもよい。また、(5)軸方向において金属線の各ピッチが不連続に変化するように設定されていてもよい。例えば、ばね部材7は、図7に示すように、一端部7aから中央部7cに向かって金属線9のピッチが「P1>P3」と短くなり、中央部7cから他端部7bに向かって金属線9のピッチが「P3<P2」と長くなり、かつ、「P1>P2>P3」と、ピッチが不連続に変化する不等ピッチのばねであってもよい。また、例えば、ばね部材7は、図8に示すように、ロータ4側から第2軸受6b側に向かって、金属線9のピッチが「P1>P4>P3>P5<P2」と変化し、かつ、「P1>P4>P2>P3>P5」、ピッチが不連続に変化する不等ピッチのばねであってもよい。図8に示すような不連続な不等ピッチは、例えば、Nを整数、Cを定数として「P1=N×C」である場合、「P4=(N-1)×C,P3=(N-3)×C,P5=(N-4)×C, P2=(N-2)×C」と設計することで得られる。あるいは、図8に示す不連続性は、例えば、図8に示すような不連続な不等ピッチは、例えば、「P1=N×C」である場合、「P4=(N-1)×C,P3=(N-2.5)×C,P5=(N-3.5)×C, P2=(N-1.5)×C」と設計することで得られる。また、(6)金属線の各ピッチが互いに異なっていれば、任意のピッチを設定可能である。
【0044】
また、図5に示す一例では、ばね部材7は、一端部7aから他端部7bに向かって外径が小さくなる略円錐形状であるが、これに限定されない。図9図10および図11は、ばね部材の変形例を示す図である。例えば、ばね部材7は、図9に示すように、一端部7aから他端部7bに向かって外径が大きくなる略円錐形状であってもよい。なお、図9では、一端部7a、中央部7c、他端部7bに向かって金属線9のピッチが「P1<P3<P2」と徐々に長くなる不等ピッチのばね部材7を示している。また、ばね部材7は、略円錐形状に限定されない。例えば、ばね部材7は、図10に示すように、第2軸受6bからロータ4側に向かって(Z軸負方向に向かって)外径が段階的に変化する階段状の形状であってもよい。図10では、Z軸正方向側の1段目のばねの外径Xが、Z軸負方向側の2段目のばねの外径Yより大きいばね部材7を例示している。あるいは、ばね部材7は、図11に示すように、軸方向における中心の外径が最も長く、端部(一端部7aおよび他端部7b)に向かって(Z軸正方向およびZ軸負方向に向かって)外径が徐々に短くなる、いわゆる樽型のばね部材であってもよい。図11では、Z軸正方向側の端部の外径Xが、Z軸負方向側の端部の外径Yより大きい樽型のばね部材7を例示している。つまり、ばね部材7は、シャフト2との間に隙間が確保できれば、任意の形状を採用可能である。
【0045】
また、ばね部材7は、不等ピッチばねや円錐ばねに限定されるものではない。図12図14は、ばね部材の別の変形例を示す図である。サージングの発生を抑えるという観点からは、ばね部材7は、図12に示すように、荷重とばねのたわみ(変位量)とが正比例の関係とならない非線形ばねであればよい。図12では、線形ばねの荷重特性を点線で示し、非線形ばねの荷重特性の例を、実線と一点鎖線で示している。上述した不等ピッチばねや、円錐ばね、階段状のばね、樽型のばね等は、非線形ばねの一例である。
【0046】
例えば、ばね部材7は、図13に示すように、ばねの外径は一定であるが、線径が異なるテーパ―スプリングでもよい。あるいは、ばね部材7は、ばね定数が異なるばねを組み合わせた非線形ばねであってもよい。例えば、ばね部材7は、図14に示すように、外径が一定で等間隔ピッチであるが、粘りに長けたばね70と、反発力に長けたばね71とを、連結部材としてのゴムリング72で繋ぎ合わせたものであってもよい。ばね70とばね71は、焼きなましの方法を変えることで得ることができる。なお、ばね部材7は、ゴムリング72が無い状態で、粘りに長けたばね70と反発力に長けたばね71とが一体化されたばねでもよい。あるいは、ばね部材7は、図14に示すピッチP1、P2に対してピッチP3、P4が異なるばねを組み合わせた非線形ばねであってもよい。
【0047】
なお、図5等では、ばね部材7は、不等ピッチである場合を示したが、ばね部材7は、各ピッチが略同じ、つまり、等間隔のピッチであってもよい。すなわち、ばね部材7の一端部7aがロータ4に固定されることで、サージングの発生が十分に抑えられるのであれば、ばね部材7aは、線形ばねであってもよい。
【0048】
次に、図15を用いて、ロータ4の突出部41aとばね部材7との位置関係について説明する。図15は、実施形態に係るロータ4およびばね部材7の位置関係を説明するための図である。
【0049】
軸方向において、突出部41aは、ばね部材7に向かって先細る形状を備え、突出部41aの外面41a1は傾斜面を有し、ばね部材7の一端部7aが傾斜面に固定される。具体的には、図15に示すように、突出部41aは、ばね部材7へ向かうほど先細りとなる傾斜面410aを有する。そして、ばね部材7の一端部7aは、傾斜面410aに固定される。換言すれば、傾斜面410aは、ばね部材7の一端部7a側の外径W1に対応する位置となる。
【0050】
つまり、突出部41aを傾斜面410aによりテーパ形状とすることで、突出部41aがばね部材7の内側に嵌る。これにより、ばね部材7と突出部41aとを物理的に固定することができる。
【0051】
従って、ばね部材7と突出部41aとの固定に接着部材を必要としないため、かかる接着部材による回転の軸ずれを防ぐことができる。さらに、突出部41aがばね部材7の内側に嵌ることで、ばね部材7が自動的に調心されるため、車両の振動等によるばね部材7の振動を抑制することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、突出部41aは、ヨーク4aの端面の一部が傾斜面410aとなる階段状の形状である場合を示したが、これに限定されず、例えば、図16に示すように、ヨーク4aの端面全体が傾斜面410aとなる形状であってもよい。
【0053】
図16は、変形例に係るヨーク4aの断面図である。図16に示すように、変形例に係るヨーク4aは、ロータ4側の端面全体がロータ4へ向かって先細りとなる傾斜面410aである。これにより、ばね部材7の外径W1がどのような長さであっても対応させることができる。
【0054】
上述してきたように、実施形態に係るモータ1は、回転軸としてのシャフト2と、ロータ4と、軸受6と、ばね部材7とを備える。ロータ4は、シャフト2に固定される。軸受6は、回転軸方向においてロータ4と対向して配置され、シャフト2を回転可能に支持する。ばね部材7は、ロータ4および軸受6の間に配置され、一端部7aがロータ4に固定される。これにより、シャフト2の摩耗を抑えることができる。
【0055】

ここで、上述したように、モータ1において、第2軸受6bの内輪61bは、シャフト2に対して変位または摺動可能に挿入される。このため、サイン波やランダム波の振動がモータ1に加わると、サージングの発生によるばね部材とシャフト2との摩擦の他に、内輪61bとシャフト2との摩擦も発生する。かかる摩擦で生じる金属粉によっても、シャフト2の回転効率が悪化する。以下では、シャフト2と内輪61bとのルーズな嵌め合いを圧入に近づけることで、揺動を起こさないように構成したモータについて、図17を用いて説明する。図17は、変形例に係るモータの断面図である。なお、図17に示すモータ1aにおいて、図2に示すモータ1と同一の部分には、同一の符号を付しており、それらについては説明を省略する。
【0056】
モータ1aにおいて、シャフト20のZ軸正方向側は、蓋部32から突出しており、ギア等の動力伝達機構が接続される出力側となっている。また、シャフト20のZ軸負方向側は、反出力側であり、ハウジング3の底部3bの内部に収容されている。底部3bの開口は、第2蓋部32により覆われている。そして、図17に例示する変形例に係るモータ1aは、図2に例示する実施形態に係るモータ1と比較して、シャフト2に代えて、ねじ10とシャフト20とを有する点が異なる。以下これらを中心に説明する。
【0057】
ねじ10は、ねじ部10aと頭部10bとを有する。頭部10bは、上面が平らで座面が円錐形の形状を有する。すなわち、図17に示すねじ10は皿ねじである。頭部10bの上面には、例えば十字穴が形成されている。シャフト20には、反出力側に、ねじ10が挿入される穴が形成されている。シャフト20の穴部21は、この穴を形成する内壁面である。穴部21は、円筒形状の穴を形成する円筒部21aと、雄ねじであるねじ部10aを受け入れるように溝が切られた雌ねじ部21bと、頭部10bの座面の傾斜に合わせた傾斜を有するテーパ面部21cとを有する。頭部10bのZ方向の寸法は、テーパ面部21cのZ方向の寸法より大きい。
【0058】
第2軸受6bにシャフト20を挿入した後、ねじ10をドライバーなどで回して締めこんでいくと、Z軸正方向に押し込まれる頭部10bの座面が当たることで、テーパ面部20cはシャフト20の径方向外側に向かって押し広げられる。これにより、テーパ面部20cが大きくなり、それにともない、シャフト20の外径が大きくなり、シャフト2と内輪61bとの間の隙間が次第に狭くなっていく。その結果、シャフト2が内輪61bに圧入された状態とすることができる。嵌め合いの度合いは、ねじ10の回し量によって調整することができる。これにより、振動による内輪61bとシャフト2との摩擦が生じにくくなり、第2軸受6b内に摩耗粉が発生することを抑制できる。なお、本変形例では、シャフト20が第1軸受6aおよび第2軸受6bに圧入されることになるので、第2軸受6b(内輪61b)に予圧がかかった状態となる。このため、本変形例は、予圧のかかった状態を維持できるのであれば、ばね部材7がなくてもよい。
【0059】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 モータ、2 シャフト、3 ハウジング、4 ロータ、4a ヨーク、4b マグネット、5 ステータ、6 軸受、6a 第1軸受、6b 第2軸受、7 ばね部材、8 樹脂部材、9 金属線、31 蓋部
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