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特許7127159マルチ酵素バイオセンサ及び室温におけるマルチ酵素バイオセンサの安定化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】マルチ酵素バイオセンサ及び室温におけるマルチ酵素バイオセンサの安定化
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/327 20060101AFI20220822BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
G01N27/327 353U
G01N27/327 353A
G01N27/416 336J
G01N27/327 353B
G01N27/327 353Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020571701
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 US2019035156
(87)【国際公開番号】W WO2020204975
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】62/830,191
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506391864
【氏名又は名称】インストゥルメンテーション ラボラトリー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,シャオシャン
(72)【発明者】
【氏名】パミディ,プラサード
(72)【発明者】
【氏名】サルベラ,ホセ
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-153243(JP,A)
【文献】特表2004-528579(JP,A)
【文献】特表2000-507457(JP,A)
【文献】特表平09-504179(JP,A)
【文献】特表2006-507498(JP,A)
【文献】特表2008-541104(JP,A)
【文献】特表2003-533679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/327
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、
前記電極の表面上に固定化された酵素層であって、クレアチナーゼ、クレアチニナーゼ、及びサルコシンオキシダーゼからなる群から選択される少なくとも一つの酵素を含む酵素層と、
前記酵素層に配置された拡散バリアと、
多糖であって、(i)前記拡散バリア内又は前記拡散バリア上に含まれる多糖、又は(ii)前記拡散バリア及び前記酵素層に含まれる多糖であって、前記少なくとも一つの酵素の安定した活性を維持するための多糖と、
を含み、
前記拡散バリアが、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)アイオノマー、ペルフルオロスルホネートアイオノマー NAFION(登録商標)、ポリ-(2-ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、又はこれらの混合物、又はこれらのコポリマーを含む、
バイオセンサ。
【請求項2】
架橋剤により前記少なくとも一つの酵素が架橋されている、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項3】
前記架橋剤が、グルタルアルデヒド、1,4-ジイソシアナトブタン、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、及び1,2,9,10-ジエポキシデカンからなる群から選択されるすくなくとも一つである、請求項2に記載のバイオセンサ。
【請求項4】
前記電極が、白金、金、パラジウム、白金の合金、金の合金、パラジウムの合金、又は炭素系材料を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項5】
前記電極が、グラファイト又はカーボンナノチューブを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項6】
前記多糖が、スクロース、トレハロース、ラフィノース、又はラクチトールを含む、或いは、
前記多糖が10%のスクロースを含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項7】
前記バイオセンサが、クレアチン、或いはクレアチニン及びクレアチンの両方を測定するよう構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項8】
前記酵素層ポリイオン化合物をさらに含む、或いは
前記酵素層が、ポリエチレンイミン、ポリ(N-ビニルイミダゾール)、ポリプロピレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリリジン、プロタミン、又はポリイオン化合物の誘導体をさらに含む
請求項1~7のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項9】
前記拡散バリアが外膜を含み、前記外膜が、異なる水分取込みレベルを有するポリウレタンのブレンドを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項10】
前記多糖が前記酵素層中にある、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項11】
センサアレイと、少なくとも1つの請求項1~10のいずれか一項に記載のバイオセンサと、を収容するカートリッジ。
【請求項12】
請求項1~1のいずれか一項に記載のバイオセンサを用いてインビトロ診断を実施するための臨床アナライザ。
【請求項13】
バイオセンサを製造するための方法であって、
酵素溶液中の少なくとも一つの酵素を電極の表面上にキャストして酵素層を形成することであって、前記少なくとも一つの酵素がクレアチナーゼ、クレアチニナーゼ、及びサルコシンオキシダーゼからなる群から選択される、キャストすることと、
拡散バリアを前記酵素の表面上に適用することと、
(i)前記拡散バリアを前記酵素の表面上に適用した後に、多糖溶液を適用すること、又は(ii)前記電極の表面上に前記酵素溶液を適用する前に、前記酵素溶液に多糖を添加し、かつ、前記拡散バリアを前記酵素の表面上に適用した後に、前記多糖溶液を適用することと、
前記電極を乾燥させて、バイオセンサを形成することであって、前記多糖溶液が、前記少なくとも一つの酵素の安定な活性を維持する、ことと、
を含み、
前記拡散バリアが、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)アイオノマー、ペルフルオロスルホネートアイオノマー NAFION(登録商標)、ポリ-(2-ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、又はこれらの混合物、又はこれらのコポリマーを含む、
方法。
【請求項14】
前記少なくとも一つの酵素が、グルタルアルデヒド、1,4-ジイソシアナトブタン、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、及び1,2,9,10-ジエポキシデカンの少なくとも一つ、又はこれらの組み合わせで架橋される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記多糖溶液と共に、ポリイオン化合物を適用することをさらに含み、前記ポリイオン化合物が、ポリエチレンイミン、ポリ(N-ビニルイミダゾール)、ポリプロピレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリリジン、プロタミン、又はそれらの誘導体を含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記多糖の適用が、前記多糖溶液を少なくとも30分間適用することを含む、請求項1315のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記バイオセンサが、周囲温度で5ヶ月間の乾燥貯蔵及び21日間の使用後に、安定したクレアチニン性能を維持する、請求項1316のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記バイオセンサが、周囲温度で5ヶ月間の貯蔵及び21日間の使用後に、400pA/mg/dLを超える安定したバイオセンサ性能を維持する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から10のいずれか一項に記載のバイオセンサを収容する使い捨てカートリッジ。
【請求項20】
複数のセンサアレイ及び較正試薬をさらに含む、請求項19に記載の使い捨てカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月5日に出願され、全ての意図及び目的のために本明細書中にその全体が援用される米国仮特許出願第62/830,191号に対する優先権及びその利益を主張する。
【0002】
発明の分野
[0001] 本発明は、室温での酵素安定性並びに長期の貯蔵寿命及び使用寿命を有するクレアチン及びクレアチニンバイオセンサなどのマルチ酵素バイオセンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[0002] 酵素バイオセンサは、血液などの患者体液サンプル中のクレアチニン、クレアチン、グルコース、尿素及び乳酸などの多数の分析物を検出するために使用される。したがって、酵素バイオセンサは、患者の病気のポイントオブケア診断を支援する上で特に重要である。
【0004】
[0003] しかしながら、特にポイントオブケア用途における酵素バイオセンサの欠点の1つは、その連続使用を通して、そして通常15日未満である周囲温度でのその貯蔵寿命にわたって、酵素活性が損失することである。したがって、短い貯蔵寿命は、クレアチン及びクレアチニンバイオセンサなどの酵素バイオセンサの実際の適用を制限する重要な因子である。
【0005】
[0004] 特に問題のある貯蔵寿命の酵素バイオセンサは、クレアチニンバイオセンサである。クレアチニンの測定は、例えば、患者の腎機能障害を決定するのに役立つ。
【0006】
[0005] クレアチニンセンサは、少なくとも、ただ1つではなく3つの酵素を含有する酵素バイオセンサであるという理由で普通ではない。これらの3つの酵素は、架橋試薬、例えばグルタルアルデヒドによって、又は物理吸収、ヒドロゲルによる捕捉によって電極の表面に固定化されるか、或いは、例えば導電性モノマーを用いる電解重合によって電極上にコーティングされる。クレアチニンバイオセンサにおけるクレアチニンの検出は、以下のような3酵素カスケード反応に基づく:
【化1】
【0007】
[0006] 3酵素カスケード反応後に生じる生成物は、過酸化水素(H)である。過酸化水素は次に、一定の分極電位下で電極において電気化学的に検出される。
【0008】
[0007] 長期(5ヶ月~1年以上を意味する)にわたって生体サンプルを正確に測定することにおいて、上記のクレアチニン及びクレアチンバイオセンサを商業化し、実際に適用するために、克服しなければならない主要な課題は、15~25℃、好ましくは18~24℃、より好ましくは20~24℃の範囲及び24℃の周囲温度におけるバイオセンサの貯蔵中の酵素の長期安定性(貯蔵寿命)である。
【0009】
[0008] 設計原理から、基質クレアチニンを測定するためのセンサ感度(スロープ)は、バイオセンサの電極上に固定化された酵素混合物の残りの酵素活性に直接関連する。3つの酵素、クレアチニナーゼ、クレアチナーゼ及びサルコシンオキシダーゼは非常に繊細であり、周囲温度において安定ではない。タンパク質の変性に起因するクレアチニンバイオセンサの感度(スロープ)の高速減衰は、その不安定性及び非常に限られた使用寿命又は貯蔵寿命の基礎である。
【0010】
[0009] 臨床サンプル、水性品質管理試薬、較正試薬中のクレアチンの存在に起因して、クレアチニンセンサのクレアチン応答を補正するために、付加的なクレアチン測定用センサが必要とされる。クレアチンセンサは2つの酵素を含有し、上記の酵素カスケード反応の第2及び第3のステップを含む。
【0011】
[0010] 全血分析計、例えば、GEM Premier(登録商標)分析計(Instrumentation Laboratory Company, Bedford, MA)は、多用途の1回消耗型カートリッジ、例えば、Instrumentation Laboratory Company(Bedford, MA)に譲渡され、全ての意図及び目的のために参照によってその全体が本明細書中に援用される米国特許第6,960,466号に記載されるカートリッジを利用する。カートリッジは、血液分析物の血液測定のために、マルチ酵素センサ、例えばクレアチニン及びクレアチンセンサを含む全ての重要な構成要素(センサアレイ、参照溶液、洗浄溶液及び較正試薬)を含有し、最低5ヶ月間の周囲温度での貯蔵を必要とする。
【0012】
[0011] 従来技術において類似の一般設計を有する最も市販されているクレアチニンセンサは、バイオセンサの重要な部品を冷却してその寿命を延ばすことによって、クレアチニンセンサの短い使用寿命及び貯蔵寿命の問題に対処する。しかしながら、このアプローチは、例えば、病院のポイントオブケア場所における現場のオペレータによる機器の操作をさらに複雑にする。例えば、GEM(登録商標)PAKカートリッジ(Instrumentation Laboratory Company, Bedford, MA)の場合、バイオセンサは、カートリッジの不可欠で重要な特徴である。カートリッジサイズ及び試薬安定性、例えば参照溶液の試薬安定性、並びに較正溶液の気体pO及びpCOの安定化のために、カートリッジ全体を冷却して貯蔵することは非実用的である。
【0013】
[0012] 溶液中又は乾燥段階のいずれかにおける遊離形態の単一の酵素の活性は、単糖又は多糖を用いて延長できることが知られている。しかしながら、有用な貯蔵寿命のために乾燥貯蔵及び周囲温度における3酵素又は2酵素バイオセンサシステムの活性を延長することは、単一酵素バイオセンサシステムの活性を延長する際には遭遇されない課題を導入する。以下に記載される本発明は、クレアチン及びクレアチニンバイオセンサなどのマルチ酵素バイオセンサの活性、貯蔵寿命及び使用寿命を延長する問題を特定及び解決する。
【0014】
[0013] 酵素バイオセンサにおける酵素活性の維持は、貯蔵寿命及び使用寿命にとって重要である。水の存在下で、糖中に含有されるポリヒドロキシル基は水と複合体を形成することが仮定される。糖-水複合体が酵素と相互作用すると、酵素が架橋されている場合でも、糖-水複合体は酵素構造に浸透する。理論に結び付けることなく、水と複合体化された糖は、酵素活性の維持を支援する酵素構造のアンフォールディングを低減すると考えられる。
【0015】
[0014] しかしながら、単一酵素センサの安定性の維持と比較して、クレアチニンセンサにおいて3つの酵素を一緒に有することは、複数の酵素の化学構造間の複雑な相互作用に起因して、酵素安定性を維持するためにより多くの課題を提示する。これらの複雑な相互作用は、センサの作製の間、又は保管の間に、1つ又は複数の酵素の不安定性を引き起こす。これらの相互作用は、予想よりも低いバイオセンサ性能をもたらす。本明細書に開示される本発明の目的は、15~25℃の範囲の周囲温度においてセンサの貯蔵寿命及び使用寿命の望ましくない低下を引き起こす酵素の相互作用に起因するクレアチニン及びクレアチンマルチ酵素センサなどのバイオセンサの安定性及び有用な貯蔵寿命の欠如に対処することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
発明の概要
[0015] 本発明は、室温において安定したマルチ酵素バイオセンサ、製造方法、及び安定したマルチ酵素バイオセンサを収容するカートリッジに関する。センサ及びバイオセンサという用語は、全体を通して互換的に使用される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
[0016] 1つの態様では、本発明はマルチ酵素バイオセンサの製造方法に関し、バイオセンサは、周囲温度で少なくとも5ヶ月の貯蔵寿命及びさらに3週間の使用寿命にわたって安定性を有する。本方法は、電極を提供することと、溶液中の複数の酵素、すなわち酵素混合物を電極の表面上にキャストして、酵素層を形成することと、拡散バリアを酵素層の表面上に適用することと、多糖溶液を電極に適用することと、電極を乾燥させて、安定したマルチ酵素バイオセンサを形成することとを含む。
【0018】
[0017] バイオセンサの電極は、例えば、白金、金、パラジウム、白金、金及びパラジウムの合金、炭素、グラファイト、並びにカーボンナノチューブからなる群から選択される。
【0019】
[0018] 複数の酵素は、クレアチニナーゼ、クレアチナーゼ、及びサルコシンオキシダーゼからなる群から選択されるが、これに限定されない。本発明の一実施形態では、酵素は、例えば、グルタルアルデヒド、1,4-ジイソシアナトブタン、1,2,7,8-ジエポキシオクタン及び1,2,9,10-ジエポキシデカン、又はこれらの組合せとの化学架橋によって電極上に固定化される。バイオセンサは、血液、血漿又は血清などの体液サンプル中のクレアチン及び/又はクレアチニンを測定することができる。
【0020】
[0019] 種々の実施形態における多糖溶液を電極に適用するステップは、二糖のスクロース、トレハロース、及びラクチトール、三糖のラフィノース、並びに他の多糖などであるが、これらに限定されない1つ又は複数の多糖を適用することを含む。多糖は、電極が酵素混合物により溶媒キャストされる前に酵素混合物に添加され得るか、又は拡散バリアを電極に適用した後に溶液中で適用され得るか、又は上記ステップの組み合わせとして適用され得る。電極は,多糖溶液中に浸漬され、乾燥され、そして複数回多糖溶液中に再浸漬され、毎回浸漬の後に乾燥され得る。溶液中の多糖の濃度は0%超~約25%の範囲であり、多糖処理の期間は30分以上である。
【0021】
[0020] 本発明の一実施形態では、ポリエチレンイミン、ポリ(N-ビニルイミダゾール)、ポリプロピレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリリジン、プロタミン、及びポリイオン化合物の誘導体からなる群から選択されるポリイオン化合物が酵素混合物に添加され得る。
【0022】
[0021] 拡散バリアの適用は、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)アイオノマー(ペルフルオロスルホネートアイオノマー、NAFION(登録商標))、ポリ-(2-ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、並びにこれらの混合物及びコポリマーからなる群から選択される高分子化合物を電極に適用して、クレアチン及びクレアチニンの1つ又は複数を測定すべき体液サンプルフローチャンバ内に導入される体液サンプルと接触する外膜を形成することを含む。酵素層は、外膜と電極との間に位置する。
【0023】
[0022] 本発明の方法に従う安定したマルチ酵素バイオセンサは、周囲温度で少なくとも5ヶ月間の貯蔵及び21日間の使用後に、400pA/mg/dlを超える安定したクレアチニン性能を維持する。
【0024】
[0023] 別の態様では、本発明は、電極、電極上に酵素層として固定化された複数の酵素、酵素層の表面上の拡散バリア,及び多糖を含むマルチ酵素バイオセンサに関する。電極、酵素、架橋剤、多糖、拡散バリア、及びマルチ酵素バイオセンサの安定性は、上記に記載される。
【0025】
[0024] さらに別の態様では、本発明は、センサアレイ内の少なくとも1つのマルチ酵素センサを収容するカートリッジに関し、少なくとも1つのマルチ酵素センサは、複数の酵素を含む酵素層を有する電極と、体液サンプルフローチャンバに隣接する電極の酵素層の表面上の拡散バリアと、多糖とを含む。電極、酵素、架橋剤、多糖、拡散バリアを含むマルチ酵素センサ、及びマルチ酵素バイオセンサの安定性は、上記に記載される。本発明に従う一実施形態では、本発明に従う酵素バイオセンサが包含されるセンサアレイを有するカードに加えて、カートリッジは、センサアレイ内の上記の少なくとも1つのマルチ酵素センサを収容し、さらに、参照溶液、流体チャネル、較正試薬、洗浄溶液、及び臨床分析計と作用的に相互作用するための電子部品、並びに他の重要な構成要素を含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図面の簡単な説明
図1】[0025]本発明の一実施形態に従う酵素センサの断面図を示す。
図2A】[0026]10個のカートリッジ群におけるクレアチニンセンサ活性のグラフ図であり、5ヶ月間の室温貯蔵(例えば、22°~25℃)後の3週間の使用期間にわたるカートリッジの年数(時間)に対して、スロープとしてプロットされる各カートリッジのクレアチニンセンサの活性(ピコアンペア/ミリグラム/デシリットル(pA/mg/dL)単位)である。各カートリッジは、スクロース処理を受けていないクレアチニンセンサを格納した。スロープが400ピコアンペア/ミリグラム/デシリットル(400pA/mg/dL)のカットオフ値を下回ったので、1週間後に試験を中断した。カットオフは、カートリッジ間(センサ間)の分析性能の一貫性を保証するように設定される。
図2B】[0027]別の5個のカートリッジ群におけるクレアチニンセンサ活性のグラフ図である。5ヶ月間の室温貯蔵後の3週間の使用期間にわたるカートリッジの年数(時間)に対して、スロープとしてプロットされる各カートリッジのクレアチニンセンサ活性の活性(pA/mg/dL)である。各カートリッジは、10%のスクロースによる処理を受けたクレアチニンセンサを格納した。
図3】[0028]室温での5ヶ月間の貯蔵後の3週間の使用寿命にわたる、スクロース処理及びポリエチレンイミン含有クレアチニンセンサ感度についての、3919、3921、3925及び3926の番号が付けられた4つのバッチのグラフ図である;全部で12個のクレアチニンセンサを試験した。
図4A】[0029]酵素混合物中にポリエチレンイミンを含まないクレアチニン及びクレアチンセンサの10個のカートリッジ群(それぞれ異なる記号で表される)における臨床サンプルでのクレアチニンセンサの分析性能のグラフ図である。GEM PAKと参照化学分析計との間で測定されたクレアチニンの差違(バイアス又は誤差としても知られる)を、参照化学分析計により報告された血漿クレアチニンに対してプロットした。破線は、臨床用途のための任意の所与のクレアチニン濃度におけるバイアスの許容限界であった。センサ間の性能の変動に起因して、GEMと参照分析計との間のバイアスは散在し、多数のサンプルが許容限界を超えるバイアス(破線の外側のデータ点)を有した。
図4B】[0030]ポリエチレンイミン含有酵素混合物を有するクレアチニン及びクレアチンセンサの別の10個のカートリッジ群(それぞれ異なる記号で表される)における臨床サンプルでのクレアチニンセンサの分析性能のグラフ図である。GEM PAKと参照化学分析計との間で測定されたクレアチニンの差異を、参照化学分析計により報告された血漿クレアチニンに対してプロットした。破線は、臨床用途のための任意の所与のクレアチニン濃度におけるバイアスの許容限界であった。センサ性能の改善と共に、バイアスは密に分布し、サンプルの大部分は、臨床的な許容限界内のバイアス(破線内のデータ点)を有した。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
[0031] 以下に記載される本発明は、インビトロ診断、特にポイントオブケア用途のために臨床分析計で使用されるマルチ酵素バイオセンサ(クレアチン及びクレアチニンバイオセンサを含むがこれらに限定されない)の貯蔵寿命及び使用寿命を延長する、酵素安定性を増強するためのデバイス及び関連方法に関する。
【0028】
[0032] 本発明によると、多糖、例えば、スクロースなどの二糖は、3酵素バイオセンサシステム、例えばクレアチニンセンサなどのマルチ酵素システムの安定性及び活性を保存し、貯蔵寿命及び使用寿命を延長するための最適な組成物である。トレハロース(α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシド)、ラフィノース(O-α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-α-D-グルコピラノシルβ-D-フルクトフラノシド)、及びラクチトール(4-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-グルシトール)(全ての多糖はSigmaから入手)などの他の多糖もマルチ酵素バイオセンサにおける酵素の安定性及び活性を改善し、その貯蔵寿命及び使用寿命を延長する。
【0029】
[0033] 簡単にするために、以下に提示される研究のために、多糖の例として10%スクロースを使用した。周囲温度でのマルチ酵素活性の維持においてスクロース安定化により著しい改善が観察された。スクロース処理による酵素安定化の後にマルチ酵素センサを室温で貯蔵する場合、少なくとも5ヶ月の安定した貯蔵寿命が達成された。
【0030】
[0034] 高分子電解質、すなわちポリイオン化合物は、多糖に加えて、マルチ酵素安定剤として有用な別の既知の種類の化学物質であり、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)である。PEIは、その目的のためにバイオセンサ含有カートリッジ、例えば、GEM(登録商標)-PAK(Instrumentation Laboratory Company; Bedford, MA)において、単一酵素バイオセンサ、例えば、乳酸酵素センサ製剤に適用されている。3酵素又は2酵素バイオセンサシステムに対するスクロース安定化効果をさらに増強するために、PEIを3酵素混合物に導入することにより、高分子電解質/糖安定化システムを研究した。以下で議論される製剤は、最良の結果、すなわち5ヶ月間の乾燥貯蔵及び3週間の使用寿命の後に400pA/mg/dLを超えるセンサスロープの維持を達成するように最適化されている。PEIは、酵素の外殻タンパク質構造とのその静電相互作用によって酵素安定性を改善し、固定化酵素の3次元構造へのスクロース-水複合体の浸透をさらに促進し得る。したがって、PEIの存在下の固定化酵素システムは、遊離水の代わりに、ポリヒドロキシル化合物、例えばスクロースが充填されており、センサ製造ステップにおける乾燥プロセスの間、及び臨床現場で使用する前の貯蔵寿命中の乾燥貯蔵を通して、酵素の安定した活性を維持する。
【0031】
[0035] 以下に記載されるように、本発明者らにより、二糖、例えばスクロースは、バイオセンサ、例えばクレアチニンセンサのための2酵素又は3酵素システムの活性の保存及び安定性のために最適な組成物の1つであることが決定された。トレハロース、ラフィノース、及びラクチトールなどの他の多糖もマルチ酵素センサに対して同様の効果を有し、安定性を改善する。
【0032】
[0036] 本発明に従う典型的な酵素バイオセンサ、例えば、クレアチン又はクレアチニンバイオセンサは、図1に示される。センサカード50上の酵素センサ59は3層複合膜60を含み、これは、体液サンプルフローチャンバ56から電極57へと配置される、フローチャネル56に隣接する外側拡散膜51、外膜51と内膜55との間に位置する酵素層53を含み、内膜55は電極57に隣接する。酵素センサ59は、フローチャネル56に沿って酵素センサ59の外膜51の上を通るサンプルフローとしての患者サンプルと接触する。
【0033】
[0037] 本発明の一実施形態では、本発明に従う安定したマルチ酵素二糖処理センサを製造するためのステップは、以下のことを含む:
(i)複数の酵素、例えば、任意選択的に架橋されるマルチ酵素混合物、例えば、3酵素又は2酵素混合物を電極上に溶媒キャストする。適用される場合には、架橋剤はグルタルアルデヒド、1,4-ジイソシアナトブタン、1、2、7、8-ジエポキシオクタン、1、2、9、10-ジエポキシデカン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。代替的に、電極の表面での1つ又は複数の酵素の固定化は、物理吸収、ヒドロゲルによる捕捉によって行うことができ、或いは、例えば導電性モノマーを用いる電解重合によって電極上にコーティングされる。電極は、白金、金、パラジウム、上記のものの合金、炭素、グラファイト、及びカーボンナノチューブからなる群から選択され得る;
(ii)溶媒キャストしたマルチ酵素電極に、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)アイオノマー(ペルフルオロスルホネートアイオノマー、NAFION(登録商標))、ポリ-(2-ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、又はこれらの混合物及びコポリマーなどの拡散コントロールバリアを適用する;その後、
(iii)0%超~2%、2%~25%、2%~20%、5%~15%、10%~15%の範囲の濃度(w/v)、好ましくは10%溶液の多糖溶液、例えば、スクロース溶液などの二糖溶液、又はトレハロース、ラフィノース若しくはラクチトールに対して、少なくとも30分~24時間、少なくとも30分~240分、少なくとも30分~120分、少なくとも30分~60分、好ましくは少なくとも30分間にわたって、溶媒キャスト電極を曝露する。
(iv)空気乾燥させる。
【0034】
[0038] マルチ酵素多糖処理バイオセンサを製造するための上記の方法の代替の実施形態では、以下により詳細に記載されるように、ステップ(iii)において電極を多糖溶液に曝露するのではなく、酵素混合物を電極に溶媒キャストする前に、多糖と、任意選択的にPEIなどのポリイオン化合物とが酵素混合物に直接添加され、次に、多糖と、任意選択的にPEIと、マルチ酵素との混合物が電極上に溶媒キャストされる。
【0035】
[0039] マルチ酵素多糖処理バイオセンサを製造するためのさらに別の代替的な実施形態では、以下により詳細に記載されるように、上記のステップ(iii)は、酵素混合物に直接多糖を添加し、任意選択的に、PEIなどのポリイオン化合物を添加するステップと結合され、次に、酵素混合物が電極上に溶媒キャストされる。
【実施例
【0036】
発明の例証
[0040] バイオセンサ活性の貯蔵寿命及び使用寿命が延長されたマルチ酵素バイオセンサの有用性及び製造方法の例証は、原理の証明のために実施された研究から、以下に提示される。
【0037】
[0041] 3酵素混合物を用いて白金電極を溶媒キャストすることによって、クレアチニンセンサを作製した。3酵素混合物は、水中の30%のクレアチニナーゼ、30%のクレアチナーゼ、30%のサルコシンオキシダーゼ及び10%のグルタルアルデヒド(重量百分率)を用いて作製した。水中の45%のクレアチナーゼ、45%のサルコシンオキシダーゼ及び10%のグルタルアルデヒド(重量百分率)である2酵素混合物を用いて白金電極を溶媒キャストすることによって、2酵素クレアチン電極を製造した。酵素混合物は、電極の表面上に水性酵素溶液を分配することによって、白金電極上にキャストされる。電極上の溶媒キャスト酵素層は、1~10ミクロン、好ましくは2~5ミクロンの範囲の厚さを有する。次に、酵素キャスト電極をポリウレタンで被覆して、外膜を形成した。電極の外膜は、センサカードのフローチャネル内を流れる患者の体液サンプルに曝露される。
【0038】
[0042] 外膜は、異なる水分取込みレベルを有するポリウレタンのブレンドを含む。外膜の一実施形態のための典型的な組成物は、20%の水分取込みを有する77%の脂肪族ポリエーテル系ポリウレタン、60%の水分取込みを有する17%の脂肪族ポリエーテル系ポリウレタン、及び3%の水分取込みを有する6%の脂肪族ポリエーテル系ポリウレタンである。拡散バリア外膜において代替的なポリウレタンブレンドも可能であり、例えば、米国特許第6,960,466号、及び同日付で出願されたOuter Membrane Compositions for Creatinine/Creatine Sensors(代理人事件整理番号INL-169)に記載されるものなどであり、これらはそれぞれ、全ての意図及び目的のために参照によってその全体が本明細書中に援用される。
【0039】
[0043] 一実施形態では、この組成物を有するセンサの外膜は、例えば、3.0mLのシクロヘキサノン溶媒、17.0mLのテトラヒドロフラン溶媒、1.08gの20%水分取込みポリウレタン、0.24gの60%水分取込みポリウレタン、及び0.08gの3%水分取込みポリウレタンの溶液を分配することによって作製することができ、複合膜の酵素層上に直接接触して積層される。ポリウレタン以外に、他の適切なポリマーには、ポリ(テトラフルオロエチレン)アイオノマー(ペルフルオロスルホネートアイオノマー、NAFION(登録商標))、ポリ-(2-ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、並びにこれらの混合物及びコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
[0044] 図2Aを参照して、実施された研究において、一部のクレアチニンバイオセンサ(対照)についてはスクロース処理をしなかった。これらのクレアチニンセンサは、スクロース処理したクレアチニンバイオセンサのように室温で貯蔵した。
【0041】
[0045] 図2Bを参照して、他のクレアチニンバイオセンサは、拡散バリア(この場合は、ポリウレタン)の適用後に、生物学的pH7.4において緩衝化された10%スクロース溶液中に30分間浸漬させた後、周囲温度の空気中で乾燥させた。
【0042】
[0046] 図3を参照して、ポリエチレンイミンを3酵素混合物に添加することにより、別のクレアチニンセンサ群を研究した。これらのクレアチニンバイオセンサは、例えば、5重量%のクレアチニナーゼ、55重量%のクレアチナーゼ、30重量%のサルコシンオキシダーゼ、5重量%のPEI、及び5重量%のグルタルアルデヒドの混合物から作製した。クレアチニン電極中のクレアチニナーゼ、クレアチナーゼ及びサルコシンオキシダーゼの重量分率、並びにクレアチン電極中のクレアチナーゼ及びサルコシンオキシダーゼの重量分率は異なることが可能であり、上記の重量百分率に限定されない。クレアチニン及びクレアチン電極中のポリエチレンイミンの重量パーセントは、例えば、1%から20%まで異なることができ、クレアチニン及びクレアチン電極中のグルタルアルデヒドの重量パーセントも、例えば、1%から10%まで異なることができる。ポリエチレンイミン以外のポリイオン安定剤も、酵素混合物を安定化させるために使用することができる。ポリイオン化合物の例としては、ポリ(N-ビニルイミダゾール)、ポリプロピレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリリジン、プロタミン、及びこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。前の実施例に記載されるように、次にポリウレタン外膜を酵素層の上に直接適用した。次に、センサを10%スクロースに少なくとも30分間曝露した後、空気中で乾燥させた。
【0043】
[0047] マルチ酵素バイオセンサの安定性を延長するためのスクロースなどの多糖の適用は、PEIの有無にかかわらず上記の研究において開示されるスクロース濃度に限定されない。本発明の別の実施形態では、スクロース含有酵素混合物の電極上への適用の後、例えば、スクロース含有酵素混合物が既に電極の表面に適用された電極を、種々の濃度のスクロースを有する溶液に浸漬することにより、さらなるスクロース処理が行われる。例えば、水中の6%のクレアチニナーゼ、50%のクレアチナーゼ、15%のサルコシンオキシダーゼ、1%のグルタルアルデヒド、及び28%のスクロース(重量百分率)を用いて3酵素混合物を作製した。このスクロース含有酵素混合物を有するクレアチニンセンサは続いて、上記の実施例に記載される外膜を適用した後に、複数のスクロース処理のために再度付加的なスクロース処理を受けてもよい。
【0044】
[0048] 上記の方法に従って作製されたクレアチニンバイオセンサを室温で5ヶ月間貯蔵した。2つのセンサ群、スクロース処理されない対照クレアチニンセンサ(図2A)及びスクロース処理クレアチニンセンサ(図2B)の感度を、室温で5ヶ月間の貯蔵の後、3週間にわたって研究した。3週間の使用寿命の最後まで必要とされる最小スロープ(pA/mg/dL)は400pA/mg/dLであった。
【0045】
[0049] 図2Aを再度参照して、スクロースで処理されない対照センサの研究は、センサのスロープが、必要とされる最小スロープ閾値(400pA/mg/dL)を下回ったので、1週間後に中断された。
【0046】
[0050] 図2Bを再度参照して、スクロースで処理したクレアチニンセンサの場合、スロープははるかに高い値から始まり、3週間の研究期間中、400pA/mg/dLの閾値を上回ったままであった。
【0047】
[0051] 図3を再度参照して、スクロース処理(10%溶液)クレアチニンセンサの製造バッチ当たり3つのセンサ、4つのバッチ(バッチ番号3919、3921、3925、及び3926で示される)から12個のクレアチニンセンサを選択した。これらのセンサは、その酵素混合物中にPEIも含有した。5ヶ月間の貯蔵及び3週間の使用寿命の後に、12個のクレアチニンセンサの感度を研究した。研究により、クレアチニンセンサの3週間の使用寿命にわたって、PEI及びスクロース処理したクレアチニンセンサの複数のバッチ間の性能の一貫性が実証された。
【0048】
[0052] 図4Aを参照して、臨床サンプル中のクレアチニンの測定において、酵素混合物中にポリエチレンイミンを含まずに、スクロース処理クレアチニンセンサの分析性能の研究を実施した。GEM PAKと参照化学分析計との間で測定されたクレアチニンの差異を、参照化学分析計により報告された血漿クレアチニンに対してプロットした。破線は、臨床用途のための任意の所与のクレアチニン濃度におけるバイアスの許容限界であった。センサ間の性能の変動に起因して、バイアスは広い空間に散在し、多数のサンプルは、許容限界を超えるバイアス(破線の外側のデータ点)を有した。
【0049】
[0053] 図4Bを参照して、ポリエチレンイミン含有酵素混合物を用いたスクロース処理クレアチニンセンサの分析性能の臨床サンプルにおける研究が説明される。GEM PAKと参照化学分析計との間で測定されたクレアチニンの差異を、参照化学分析計により報告された血漿クレアチニンに対してプロットした。破線は、臨床用途のための任意の所与のクレアチニン濃度におけるバイアスの許容限界であった。ポリエチレンイミンの添加により修飾されたセンサ製剤を用いて、改善されたセンサ性能が実証され(データは図4Aに対して図4Bに示される)、バイアスは密に分布し、ポリエチレンイミンで修飾されたセンサを用いて測定されたサンプルの大部分は、臨床的な許容限界内のバイアス(破線内のデータ点)を有した。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B