(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20220822BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20220822BHJP
G08B 23/00 20060101ALI20220822BHJP
G08B 21/18 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
A01B69/00 301
A01M7/00 D
G08B23/00 510D
G08B23/00 520C
G08B21/18
(21)【出願番号】P 2021076294
(22)【出願日】2021-04-28
(62)【分割の表示】P 2018081490の分割
【原出願日】2018-04-20
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大悟
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-101728(JP,A)
【文献】特開昭62-029445(JP,A)
【文献】特開2012-060899(JP,A)
【文献】特開2002-035662(JP,A)
【文献】特開2006-121924(JP,A)
【文献】特開2001-343988(JP,A)
【文献】特開2001-145407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
A01B 69/00
G08B 23/00
G08B 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を走行させながら薬剤の散布を行う農作業機(1)であって、
前記
薬剤の散布に関する警告を表示可能な表示装置(71)と、
前記警告に対応する音声案内を出力する音声出力装置(76)と、
単位面積当たりの目標散布量にて前記薬剤の散布を行えないことを異常な状態として検知可能な検知手段(16a,16b,24a,60)と、
前記検知手段(16a,16b,24a,60)から
、前記目標散布量にて散布を行えないことを示す情報を入力した際に、前記目標散布量にて散布を行えない旨の前記警告を前記表示装置(71)に表示させるように前記表示装置(71)を制御すると共に、
前記目標散布量を下げるか又は前記車両の速度を下げる旨の2通りの解決方法を案内する前記音声案内を前記音声出力装置(76)に出力させるように前記音声出力装置(76)を制御する制御装置(61)と、を備える農作業機(1)。
【請求項2】
前記表示装置(71)と前記音声出力装置(76)のいずれか又は両方が、前記制御装置(61)とは別体になっている、請求項
1に記載の農作業機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の操作が行われる制御装置を備えた自走式の防除機(乗用管理機または果樹用防除機等)が知られている。このような制御装置を備えた農作業機において、たとえば異常が発生したり運転状態が不適切であったりする場合に、音を発生させて警告する(報知する)技術が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載の技術では、農作業機が各種のセンサを備えており、コントローラは、センサの検出信号を受けて音声警報ユニットに音声警報を出力させる。またいずれかのセンサに異常が発生すると、コントローラは、異常の発生したセンサの名称を表す内容の音声警報を音声警報ユニットに出力させる。特許文献2に記載の技術では、薬液の散布量と散布条件の設定量が異なる場合に、制御装置は、不適切な散布条件であることをブザーまたは音声で報知する。特許文献3に記載の技術では、操舵のタイミングが適切でない(早すぎる)場合に、制御装置は、操舵のタイミングが適切でないことをブザーまたは音声で報知する。
【0004】
これらの技術の他にも、従来、表示灯または液晶表示器による視覚装置などを用いて、使用者に対して警告を通知する農作業機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-312516号公報
【文献】特開2012-60899号公報
【文献】特開2012-120481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、利便性の面で種々の課題が残されている。また上記特許文献1~3では、警告について述べたが、農作業機が備える電子装置の操作方法(操作手順または使用方法)に関しても、従来は利便性が不十分であった。たとえば、使用方法を記載したラベルが操作部付近に設置されたり、紙媒体もしくは電子媒体による取扱説明書が提供されたり、液晶表示部に使用方法が表示されたりといった方法が用いられている。しかし、ラベルが用いられる場合には、ラベルの大きさの制約により十分な説明が行えないといった問題がある。紙媒体による取扱説明書が用いられる場合には、必要な情報がどこにあるかを探さなければならない煩わしさがある。電子媒体による取扱説明書が用いられる場合には、取扱説明書を閲覧するための装置(たとえばスマートフォン等)が必要である。液晶表示部における表示が用いられる場合には、上記したラベルと同様、十分な情報を提供することが難しく、また操作対象の画面と操作方法に関する情報提供画面が同一であるため、操作者は、操作方法に関する情報の内容を一旦覚えてから、操作画面に戻って操作を行う必要がある。そして、これらのいずれにおいても、安全のため、使用者は、作業を一旦中断してから操作方法を参照する必要がある。
【0007】
上記特許文献1~3のようにブザー等の聴覚装置が用いられる場合もあるが、その他にも、表示灯または液晶表示器による聴覚装置が用いられる場合もある。しかし、ブザー等の聴覚装置が用いられる場合には、何らかの異常が発生していることを使用者は直ちに知ることができるが、ブザーの鳴動要因が複数ある場合、どの問題が起きているかを把握することはできない。要因に応じて鳴動パターンを使い分けている場合もあるが、その場合でも、使用者は鳴動パターンと要因との対応を覚えておく必要がある。表示灯が用いられる場合には、表示灯の汚れによる視認性の低下が生じ得るといった問題がある。または、使用者の注意が別のところにあることが原因で、表示に気づかない可能性もある。ブザーまたは表示灯が用いられる場合に共通する欠点として、使用者は異常な状態を解消するために何をすればよいかを予め知っておかねばならないといった欠点が挙げられる。あるいは、使用者が必要な情報を参照しなければならないとの欠点も挙げられる。液晶表示器による聴覚装置が用いられる場合には、使用者が視覚装置に表示された内容を読むために、視線を移動させる必要がある。作業中は車両の移動に起因する揺れや振動があり、視覚装置の視認性が低下するため、使用者の負担が大きくなる。
【0008】
本発明は、操作または警告に関し、使用者にとっての利便性が高められた農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、所定の農作業を行うための農作業機(1)であって、農作業に関する警告を表示可能な表示装置(71)と、警告に対応する音声案内を出力する音声出力装置(76)と、農作業が異常な状態にあることを検知する検知手段(16a,16b,24a,60)と、検知手段(16a,16b,24a,60)から農作業が異常な状態にあることを示す情報を入力した際に、情報に対応する警告を表示装置(71)に表示させるように表示装置(71)を制御すると共に、当該異常な状態に対する解決方法を含んだ音声案内を音声出力装置(76)に出力させるように音声出力装置(76)を制御する制御装置(61)と、を備える。
【0010】
この農作業機(1)によれば、制御装置(61)が検知手段(16a,16b,24a,60)から農作業が異常な状態にあることを示す情報を入力すると、その情報に対応する警告が表示装置(71)に表示され、さらには、その異常な状態に対する解決方法を含んだ音声案内が、音声出力装置(76)から出力される。よって、使用者は、視覚を通じて異常な状態を認識できるのみならず、音声案内を聞くことで、聴覚を通じてその異常な状態に対する解決方法(すなわち正常な状態に戻るための解決方法)を知ることができる。異常な状態を解決するために、作業を中断して取扱説明書を参照する必要がない。たとえば、ある異常に関して、解決方法を知るために表示装置(71)を参照する必要もなくなる。よって、制御装置(60,61)が行う制御に基づき発せられる警告に関し、使用者にとっての利便性が高められている。
【0011】
農作業は薬剤の散布であり、検知手段(16a,16b,24a,60)は、単位面積当たりの薬剤の散布量にて散布を行えないことを異常な状態として検知可能であり、制御装置(61)は、薬剤の散布量にて散布を行えないことを示す情報を入力した際に、薬剤の散布量にて散布を行えない旨の警告を表示装置(71)に表示させると共に、薬剤の散布量にて散布を行うための解決方法を含んだ音声案内を音声出力装置(76)に出力させてもよい。農作業機(1)では、単位面積当たりの薬剤の散布量が設定され、その散布量にて散布を行うために、たとえば車両の速度、薬剤の噴霧圧力、噴霧ポンプの能力、および噴霧ノズル(5)の種類等が所定の条件を満たす必要がある。所定の条件が満たされない場合には、検知手段(16a,16b,24a,60)によって、設定された薬剤の散布量にて散布を行えないことが検知され、その旨の警告が表示装置(71)に表示される。それに加え、その薬剤の散布量にて散布を行うための解決方法(たとえば車両の速度を下げる指示等)を含んだ音声案内が、音声出力装置(76)から出力される。よって、使用者は、音声案内を聞くことで、その薬剤の散布量にて散布を行うための解決方法を容易に知ることができる。
【0012】
表示装置(71)と音声出力装置(76)のいずれか又は両方が、制御装置(61)とは別体になっていてもよい。この場合、表示装置(71)または音声出力装置(76)の小型化が可能である。別体とされた各装置のレイアウトにも制限がなく、たとえば表示装置(71)または音声出力装置(76)を使用者にとって都合のよい(すなわち見やすい、または音声案内を聞きやすい等の)位置に設置しつつ、制御装置(61)は故障の発生を防止しやすい位置に設置することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、操作または警告に関し、使用者にとっての利便性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の農作業機の一実施形態を示す右側面図である。
【
図4】
図1の農作業機の電子装置周辺の構成を示すブロック図である。
【
図5】操作装置と表示装置と制御装置が一体に設けられた例を示す図である。
【
図6】電子装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図7】制御装置におけるプログラムの動作例を示す図である。
【
図8】メイン画面に対応する、各種音声案内の一例を示す図である。
【
図9】警告発生時に対応する、各種音声案内の一例を示す図である。
【
図10】散布計画に対応する、各種音声案内の一例を示す図である。
【
図11】噴霧ノズルの選択・編集に対応する、各種音声案内の一例を示す図である。
【
図12】速度補正および散布幅の設定に対応する、各種音声案内の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1を参照して、一実施形態に係る防除機(農作業機)1の基本構成について説明する。防除機1は、車両2と、薬液散布装置であるブームノズル装置3とを備えた自走式の乗用管理機である。防除機1は、圃場において車両2を走行させながら、薬液タンク10に貯留された薬液(薬剤)を散布する。防除機1は、運転者(使用者)によって行われる操作に基づき、薬液の散布(所定の農作業)を行う。
【0017】
車両2の車体フレーム4の前部および後部のそれぞれには、車両2の幅方向に延びるフロントアクスル8およびリアアクスル9(
図2参照)が取り付けられている。フロントアクスル8およびリアアクスル9のそれぞれには、上下方向に延びるナックル8a,9aを介して、前輪6および後輪7が取り付けられている。防除機1では、これらの前輪6および後輪7の駆動回転により、四輪駆動の走行が可能となっている。
【0018】
車体フレーム4には、その前後方向の中央部において、薬液タンク10が配設されている。薬液タンク10の前端部の中央には、凹部が形成されており、この凹部に、運転者が着座する運転席11が設けられている。薬液タンク10の後方には、エンジンルーム13が設けられている。このエンジンルーム13には、駆動源であるエンジン21および薬液を噴霧するための噴霧ポンプ22等(
図2参照)が設けられている。
【0019】
車体フレーム4には、操作機器部12の前方に、上記したブームノズル装置3が取り付けられている。ブームノズル装置3の左右方向の中央部は車体フレーム4によって支持されており、ブームノズル装置3は振り子状に揺動可能になっている。より詳細には、車体フレーム4の前端部には、四節リンク装置41が前方に延びるように設置されている。四節リンク装置41の前側リンクに固定されたブームノズル装置3は、昇降移動可能になっている。
【0020】
ブームノズル装置3は、左右方向に延びるセンターブーム(図示せず)と、センターブームの左右両端部に連結された一対のサイドブーム50とを有する。ブームノズル装置3には、センターブームに対してサイドブーム50,50をそれぞれ開閉するための開閉機構55が設けられている。開閉機構55は、センターブームの両端部を中心にしてサイドブーム50を回転させると共に、サイドブーム50の基端部を中心にしてサイドブーム50を回転させる。サイドブーム50の開閉および上下動が順次または同時に行われることにより、サイドブーム50の展開および格納が可能になっている。開閉機構55により、サイドブーム50は、使用状態においてセンターブームと一直線状となるように展開される。
【0021】
図2を参照して、防除機1の車両2における伝動系統について説明する。車両2では、噴霧ポンプ22による薬液の噴霧や車両2の走行に必要な動力をエンジン21の動力でまかなう。エンジン21と噴霧ポンプ22との間には、噴霧ポンプ22をオンオフ操作するための電磁クラッチ28が設けられる。エンジン21の前方には、たとえばギア式の減速機24が設置されている。減速機24とエンジン21の間には、エンジン21の動力を減速機24に伝達するための静油圧式変速機(Hydraulic Static Transmission、以下、HSTという)25が設けられている。HST25は、エンジン21の動力を用いて油圧を発生させ、その油圧により前輪6および後輪7に回転駆動力を供給して、車両2を走行させる機構である。HST25と、減速機24と、リアアクスル9に取り付けられた伝達装置であるリアデフ30とを介して、リアアクスル9にエンジン21の回転動力が伝達される。また、減速機24からさらに前後方向に延びるユニバーサルシャフト29と、フロントアクスル8に取り付けられた伝達装置であるフロントデフ31とを介して、ナックル8aにエンジン21の回転動力が伝達される。減速機24には、車両2の速度を計測するための車速センサ24aが設けられている。
【0022】
図3を参照して、防除機1における配管系統について説明する。薬液タンク10と噴霧ポンプ22とを接続する第一供給ラインL1には、送液バルブ17、ドレンプラグ18、およびストレーナ19がこの順に設けられている。噴霧ポンプ22の吐出側に接続された第二供給ラインL2には、噴霧ポンプ22による噴霧圧力を調整するための調圧装置16が設けられている。この調圧装置16は、噴霧圧力を計測する圧力センサ16aと、噴霧流量を計測する流量センサ16bと、噴霧圧力を調整するための調圧モータ16cとを有する。調圧装置16には、センターブームの噴霧管46aにつながるセンター送液ラインL3と、サイドブーム50の送液管51につながる一対のサイド送液ラインL4,L4とが接続されている。噴霧管46aおよび送液管51には、薬剤を噴霧するための複数の噴霧ノズル5が取り付けられている。また、調圧装置16は、第一戻りラインL5および第二戻りラインL6を介して薬液タンク10に接続されている。第一戻りラインL5にはコック15aが設けられている。第二戻りラインL6は、ジェットポンプ15の吐出側に接続されている。第二戻りラインL6にはフート弁15bが設けられる。ジェットポンプ15の吐出側であってフート弁15bの上流側に、第一戻りラインL5が合流している。
【0023】
図1に示されるように、車体フレーム4の前端部には、運転席11の前側に間隔をおいて、運転操作のための操作機器および薬液(薬液)散布のための操作機器を備えた操作機器部12が配設されている。操作機器部12は、車両2の操舵を行うためのハンドル23と、車両2を操作するための操作スイッチ類12aと、調圧装置16を制御し薬液の圧力を調整するための調圧ハンドル(図示せず)とを有する。
【0024】
続いて、
図4、
図5および
図6を参照して、本実施形態の防除機1が備える表示・音声再生機能をもつ電子装置に係る構成について説明する。
図4に示されるように、防除機1は、上記した操作スイッチ類12aと、車両2を制御するための第1電子装置60と、薬液の噴霧に関する各状態を計測するためのセンサ類(車速センサ24a、圧力センサ16aおよび流量センサ16b)と、アクチュエータ類(調圧モータ16cおよび電磁クラッチ28)と、表示・音声再生機能をもつ第2電子装置80とを備える。防除機1では、第1電子装置60と第2電子装置80は別体になっているが、第1電子装置60と第2電子装置80が一体になっていてもよい。第1電子装置60と第2電子装置80が別体になっている場合、車両内通信により、これらの電子装置間でデータが授受され得る。車両内通信としては、たとえば、CAN(Controller Area Network)等が使用され得る。
【0025】
図5および
図6に示されるように、第2電子装置80は、使用者が薬液の散布に関する設定(操作)を行うためのタッチパネル(操作装置)72と、薬液の散布に関する各種情報(警告を含む)を表示可能な液晶表示装置(表示装置)71と、使用者に対して音声案内を出力するオーディオ出力装置(音声出力装置)76と、これらの装置を制御するコントローラ部(制御装置)61とを兼ね備えている。したがって、第2電子装置80は、たとえば運転席11の前方等、運転席11に着座した使用者の手が届く範囲かつ使用者が視認しやすい位置に設けられる(
図1参照)。
図5に示されるように、表示装置80は、液晶表示装置71に表示される操作装置としてのタッチパネル72を含んでもよい。
【0026】
図6に示されるように、第2電子装置80は、中核となるコントローラ部61と、周辺装置インターフェース65を介してコントローラ部61と信号の授受を行う周辺装置70とを備える。コントローラ部61は、演算装置であるCPU62と、記憶装置であるROM63よびRAM64とを含む。周辺装置70は、液晶表示装置71と、タッチパネル72と、ボタン73と、USBインターフェース74と、車両2との通信インターフェース75と、オーディオ出力装置76と、ロータリエンコーダ77とを含む。ロータリエンコーダ77は、使用者によって操作されるダイアル78(
図5参照)に取り付けられてもよい。すなわち、第2電子装置80は、操作装置としてのダイアル78およびロータリエンコーダ77を含んでもよい。第2電子装置80は、操作装置としての複数のボタン73を含んでもよい。たとえば、6個のボタン73が、液晶表示装置71の左側と右側においてそれぞれ上下に並べられている。たとえば左側の6個のボタン73が上から順にF1~F6ボタンであり、右側の6個のボタン73が上から順にF7~F12ボタンであってもよい。
【0027】
ROM63内には、コントローラ部61を管理する基本ソフト(OS)66と、防除機1に係る制御および音声案内に係る処理を実行させるプログラム67と、音声案内の実施に必要な複数の音声データ68(
図8~
図12参照)とが格納されている。音声データ68では、プログラム67により、薬液の噴霧に関する上記した各状態と音声再生条件が対応づけられている。
【0028】
第1電子装置60も、第2電子装置80のコントローラ部61と同様の構成を備えている。第1電子装置60は、第2電子装置80の操作装置から薬液の散布に関する情報を入力して、防除機1のアクチュエータ類(調圧モータ16cおよび電磁クラッチ28)を制御する。また、第1電子装置60は、防除機1のセンサ類(車速センサ24a、圧力センサ16aおよび流量センサ16b)から薬液の噴霧に関する上記した各状態の計測値を入力し、薬液の散布が異常な状態にあるか否かを判断する。第1電子装置60および上記センサ類は、農作業が異常な状態にあることを検知する検知手段に相当する。
【0029】
上記構成を有する防除機1では、薬液の散布に関わる操作の状態または第2電子装置80の操作方法と、薬液の散布が異常な状態にある場合の解決方法とを、音声案内によって聴覚を通じて使用者に案内することができるようになっている。
図8、
図10~
図12には、操作の状態または操作方法に関する音声案内リストの一例が示されている。
図9には、警告が発生したときの解決補法に関する音声案内リストの一例が示されている。各図に示されるように、それぞれの操作および状態(現象)に対して、音声案内と、音声案内の頻度が定められている。
図8~
図12に示される「どんなとき」に記載の操作・状態(現象)は、音声再生条件に相当する。
【0030】
防除作業では、単位面積当たりに散布する薬液の量が規定の量(たとえば、10a当たり100L)となることが求められている。第2電子装置80の操作装置では、単位面積当たりの薬液の散布量を設定可能になっている。また、噴霧管46aおよび送液管51(ブームノズル装置3)に取り付けられる噴霧ノズル5は、その種類によって、噴霧圧力(MPa)に対する噴霧量(L/10a)の相関(特性)が異なっている。第2電子装置80の操作装置では、取り付けられる噴霧ノズル5の種類を設定可能になっている。なお、各噴霧ノズル5における噴霧量の総和が、防除機1による薬液の総散布量(目標値)に相当する。一方、第1電子装置60は、第2電子装置80および各センサとの通信を行い、使用者により設定された規定の散布量と、使用者により設定された噴霧に使用する噴霧ノズル5の特性と、車速センサ24aから得られる車両2の速度を用いて、単位面積当たりの散布量が規定の量となる噴霧圧力を計算し、調圧装置16に対して、計算値と圧力センサ16aの値が等しくなるように調圧モータ16cを制御する。
【0031】
図7を参照して、第2電子装置80における処理(すなわちプログラム67の動作例)について説明する。第2電子装置80のコントローラ部61は、車両情報および入力装置の状態を監視する(ステップS01)。ここでいう車両情報とは、車両2の速度、薬液の噴霧圧力および薬液の噴霧流量である。入力装置とは、液晶表示装置71、タッチパネル72、ボタン73、およびロータリエンコーダ77(ダイアル78)等の操作装置である。次に、コントローラ部61は、音声再生条件を満足するか否かを判断する(ステップS02)。たとえば、液晶表示装置71において特定の図形が表示されている状態で、タッチパネル72の操作が行われた場合に、コントローラ部61はオーディオ出力装置76を制御して、その操作を行ったことによる効果を音声案内として出力させる。たとえば、単位面積当たり散布量の設定を変更する操作が行われた場合であれば、コントローラ部61は、その単位面積当たり散布量に関する情報を入力する。コントローラ部61は、当該情報を入力した際に、ROM63から音声再生条件に対応づけられた音声データを読み出し(ステップS03)、目標散布量が設定された旨の音声案内(たとえば、「散布量の目標値を変更しました。」「目標散布量は〇〇L/10aです。」等)をオーディオ出力装置76に出力させる(ステップS04)(
図8参照)。なお、
図8~
図12において、「総散布量」は、「単位面積当たり散布量」またはその目標値(目標散布量)を意味する。
【0032】
あるいは、使用者が作業前に第2電子装置80の入力装置を操作して噴霧ノズル5の種類を設定する。このとき、タッチパネル72またはボタン73等の入力装置が使用者により操作されると、コントローラ部61は、使用される噴霧ノズル5の種類に関する情報を入力する。コントローラ部61は、当該情報を入力した際に、ROM63から音声再生条件に対応づけられた音声データを読み出し(ステップS03)、噴霧ノズル5の種類が設定された旨の音声案内(たとえば、「設定を変更しました。」をオーディオ出力装置76に出力させる(ステップS04)(
図11参照)。
図8、
図10、
図11および
図12に示されるように、音声データ68には、操作の効果または使用者が次に操作するべき内容が含まれている。
【0033】
あるいは、防除作業の最中にあっては、上記した噴霧圧力の制御により、車両2の速度が変動しても単位面積当たりの散布量が一定となるように制御が行われる。しかし、車速センサ24aの計測値に基づき計算された噴霧圧力が、噴霧ポンプ22の能力を超える圧力になる場合もある。これはすなわち、薬液の散布が異常な状態にあることの一種である。この状態では、所定の散布量にて散布を行えないため、第1電子装置60から第2電子装置80へと、所定の散布量にて散布を行えないことを示す情報が出力され、第2電子装置80のコントローラ部61は、当該情報を入力する。コントローラ部61は、当該情報を入力した際に、所定の散布量にて散布を行えない旨の警告を液晶表示装置71に表示させる。それと同時に、コントローラ部61は、ROM63から音声再生条件に対応づけられた音声データを読み出し(ステップS03)、所定の散布量にて散布を行うための解決方法を含んだ音声案内(たとえば、「散布量または速度を下げてください。」等)をオーディオ出力装置76に出力させる(ステップS04)(
図9参照)。
図9に示されるように、音声データ68には、農作業における異常な状態に対する解決方法(すなわち正常な状態に戻るための解決方法)が含まれている。なお、音声案内に警告が含まれてもよく、警告とそれに続く解決方法とが、オーディオ出力装置76から出力されてもよい。
【0034】
本実施形態の防除機1によれば、操作装置を用いて使用者が操作を行い、第1電子装置60によって、防除機1が制御される。第2電子装置80のコントローラ部61が農作業に関する情報を入力すると、その情報に対応する音声案内がオーディオ出力装置76から出力される。よって、使用者は、取扱説明書またはそれに対応するものを閲覧する必要がなく、音声案内を聞くことで、聴覚を通じて操作の状態またはこれからなすべき操作の方法等を知ることができる。たとえば、ある操作に関して、操作方法を知るために液晶表示装置71を参照する必要もなくなる。よって、操作装置の操作に関し、使用者にとっての利便性が高められている。従来の視覚的な案内から聴覚的な案内に変わることで、表示装置の画面を見る必要がなくなり、使用者の負担が軽減される。さらには、上記した従来の技術が有していた問題点や欠点が改善される。
【0035】
使用者が操作装置を用いて単位面積当たりの薬剤の散布量を設定すると、薬剤の散布量が設定された旨の音声案内がオーディオ出力装置76から出力される。よって、使用者は、特に何かを視覚で確認することなく、聴覚を通じて薬剤の散布作業を開始できる。薬剤の散布量は、薬剤の散布作業における重要な設定項目のひとつである。薬剤の散布量が設定されたことの確認が容易であるという点で、薬剤の散布作業における利便性が高められている。
【0036】
あるいは、使用者が操作装置を用いて噴霧ノズル5の種類を設定すると、噴霧ノズル5の種類が設定された旨の音声案内がオーディオ出力装置76から出力される。よって、使用者は、特に何かを視覚で確認することなく、聴覚を通じて薬剤の散布作業を開始できる。噴霧ノズルの種類は、薬剤の散布作業における重要な設定項目のひとつである。噴霧ノズルの種類が設定されたことの確認が容易であるという点で、薬剤の散布作業における利便性が高められている。
【0037】
また、警告の観点では、第1電子装置60が検知手段から農作業が異常な状態にあることを示す情報を入力すると、その情報に対応する警告が液晶表示装置71に表示され、さらには、その異常な状態に対する解決方法を含んだ音声案内が、オーディオ出力装置76から出力される。よって、使用者は、視覚を通じて異常な状態を認識できるのみならず、音声案内を聞くことで、聴覚を通じてその異常な状態に対する解決方法(すなわち正常な状態に戻るための解決方法)を知ることができる。異常な状態を解決するために、作業を中断して取扱説明書を参照する必要がない。たとえば、ある異常に関して、解決方法を知るためにオーディオ出力装置76を参照する必要もなくなる。よって、第1電子装置60および第2電子装置80が行う制御に基づき発せられる警告に関し、使用者にとっての利便性が高められている。解決方法を聴覚的に示すことで、表示装置の画面を見る必要がなくなり、使用者の負担が軽減される。さらには、上記した従来の技術が有していた問題点や欠点が改善される。
【0038】
農作業機では、単位面積当たりの薬剤の散布量が設定され、その散布量にて散布を行うために、たとえば車両2の速度、薬剤の噴霧圧力、噴霧ポンプ22の能力、および噴霧ノズル5の種類等が所定の条件を満たす必要がある。所定の条件が満たされない場合には、検知手段によって、設定された薬剤の散布量にて散布を行えないことが検知され、その旨の警告が液晶表示装置71に表示される。それに加え、その薬剤の散布量にて散布を行うための解決方法(たとえば車両の速度を下げる指示等)を含んだ音声案内が、オーディオ出力装置76から出力される。よって、使用者は、音声案内を聞くことで、その薬剤の散布量にて散布を行うための解決方法を容易に知ることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、操作方法の観点では、操作装置と音声出力装置のいずれか又は両方が、制御装置とは別体になっていてもよい。この場合、操作装置または音声出力装置の小型化が可能である。別体とされた各装置のレイアウトにも制限がなく、たとえば操作装置または音声出力装置を使用者にとって都合のよい(すなわち操作しやすい、または音声案内を聞きやすい等の)位置に設置しつつ、制御装置は故障の発生を防止しやすい位置に設置することもできる。
【0040】
また、警告の観点では、表示装置と音声出力装置のいずれか又は両方が、制御装置とは別体になっていてもよい。この場合、表示装置または音声出力装置の小型化が可能である。別体とされた各装置のレイアウトにも制限がなく、たとえば表示装置または音声出力装置を使用者にとって都合のよい(すなわち見やすい、または音声案内を聞きやすい等の)位置に設置しつつ、制御装置は故障の発生を防止しやすい位置に設置することもできる。
【0041】
薬液の散布以外の農作業に本発明を適用することもできる。
図8~
図12に示される音声案内以外にも、種々の音声案内を音声出力装置に出力させてもよい。たとえば、流量センサ16bの調整、時計の設定、画面の明るさの設定、診断画面、使い方画面、流量表示単位の設定、または音声案内の設定に関する音声案内を音声出力装置に出力させてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…防除機(農作業機)、2…車両、5…噴霧ノズル、16…調圧装置、16a…圧力センサ(検知手段)、16b…流量センサ(検知手段)、16c…調圧モータ、22…噴霧ポンプ、24a…車速センサ(検知手段)、28…電磁クラッチ、60…第1電子装置(制御装置、検知手段)、61…コントローラ部(制御装置)、68…音声データ、71…液晶表示装置(表示装置)、72…タッチパネル(操作装置)、73…ボタン(操作装置)、76…オーディオ出力装置(音声出力装置)、77…ロータリエンコーダ(操作装置)、78…ダイアル(操作装置)、80…第2電子装置。