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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】自動車用ドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 81/06 20140101AFI20220823BHJP
   E05B 81/14 20140101ALI20220823BHJP
   E05B 81/16 20140101ALI20220823BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
E05B81/06
E05B81/14
E05B81/16
B60J5/00 N
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021068791
(22)【出願日】2021-04-15
(62)【分割の表示】P 2019038167の分割
【原出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2021119286
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】大川 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】西島 広隆
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特許第6213927(JP,B2)
【文献】特開2013-100718(JP,A)
【文献】特開2004-124687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 81/00-91/90
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカと噛合することによりドアを閉鎖位置に保持するラッチ機構と、
前記ラッチ機構の噛合をモータの動力により解除可能な電動リリース機構と、
前記ラッチ機構の噛合を手動操作力により解除可能な手動リリース機構と、
前記手動リリース機構の作動による前記ラッチ機構の噛合解除を無効にするロック状態及び有効にするアンロック状態に切り替え可能なロック機構と、
を備えた自動車用ドアラッチ装置において、
前記電動リリース機構は、前記モータの動力によりスプリングの付勢力に抗して基準位置から正方向又は逆方向へ回転し、当該回転した後、前記スプリングの付勢力により前記基準位置に復帰可能な回転カムを有し、
前記ロック機構は、ロック状態のとき、前記回転カムの正方向への回転角度を規制しないが、アンロック状態のとき、前記回転カムの正方向への回転角度を所定角度に規制するアクティブレバーを有し、
前記電動リリース機構は、
前記ロック機構がロック状態にあって、前記回転カムが前記モータの動力により前記基準位置から前記スプリングの付勢力に抗して正方向へ前記所定角度よりも大きい角度回転することにより、前記ラッチ機構を噛合解除させた後、前記スプリングの付勢力により前記基準位置に復帰し、
前記ロック機構がアンロック状態にあって、前記回転カムが前記モータの動力により前記基準位置から前記スプリングの付勢力に抗して正方向へ前記所定角度回転することにより、前記ロック機構をアンロック状態からロック状態に切り替え作動させた後、前記スプリングの付勢力により前記基準位置に復帰することを特徴とする自動車用ドアラッチ装置。
【請求項2】
前記電動リリース機構は、
前記ロック機構がロック状態にあって、前記回転カムが前記モータの動力により前記基準位置から前記スプリングの付勢力に抗して逆方向へ回転することにより、前記ロック機構をロック状態からアンロック状態に切り替え作動させた後、前記スプリングの付勢力により基準位置に復帰することを特徴とする請求項1記載の自動車用ドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアラッチ装置に関し、特に、電動リリース機構、手動リリース機及びロック機構を備えた自動車用ドアラッチ装置に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータの動力によりラッチ機構とストライカとの噛合を解除可能な電動リリース機構と、手動操作力によりラッチ機構の噛合を解除可能な手動リリース機構と、手動リリース機構の解除作動を無効にするロック状態及び有効にするアンロック状態に切り替え可能なロック機構を備えた自動車用ドアラッチ装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の発明は、ラッチ機構の噛合解除は専ら電動リリース機構により行う思想で、手動リリース機構は事故、電気系統の故障、バッテリの電圧降下等により電動リリース機構の作動が不能になった場合の補完として設けられる。このため、ロック機構は、手動リリース機構の作動のみに使用され、常時はロック状態で使用されて緊急時のみ、アンロック状態に切り替えられるようになっている。
【0004】
ロック機構のロック状態とアンロック状態との切り替えは、モータの動力で回転する回転カム(カム体)の正転及び逆転により行われる。回転カムは、中立復帰バネの付勢力で基準位置に保持されており、基準位置から正転するとロック機構をロック状態に切り替え、基準位置から逆転するとロック機構をアンロック状態に切り替える構成を有している。
【0005】
さらに、回転カムは、基準位置から正転した場合にはラッチ機構の噛合解除も行う。これにより、単一のモータにより、ロック機構の切り替えと、ラッチ機構の噛合解除を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6213927号公報(米国特許第9551172号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の課題は、ロック機構のアンロック状態からロック状態への切り替えはラッチ機構の噛合解除が条件となるため、単一のモータにより、ラッチ機構の噛合解除を行うことなく、ロック機構を単独でアンロック状態からロック状態に切り替えることができないことにある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、単一のモータにより、ラッチ機構の噛合解除、ロック機構のアンロック状態からロック状態への切り替えを単独で行うことができるようにした自動車用ドアラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
本発明は、ストライカと噛合することによりドアを閉鎖位置に保持するラッチ機構と、前記ラッチ機構の噛合をモータの動力により解除可能な電動リリース機構と、前記ラッチ機構の噛合を手動操作力により解除可能な手動リリース機構と、前記手動リリース機構の作動による前記ラッチ機構の噛合解除を無効にするロック状態及び有効にするアンロック状態に切り替え可能なロック機構と、を備えた自動車用ドアラッチ装置において、前記電動リリース機構は、前記モータの動力によりスプリングの付勢力に抗して基準位置から正方向又は逆方向へ回転し、当該回転した後、前記スプリングの付勢力により前記基準位置に復帰可能な回転カムを有し、前記ロック機構は、ロック状態のとき、前記回転カムの正方向への回転角度を規制しないが、アンロック状態のとき、前記回転カムの正方向への回転角度を所定角度に規制するアクティブレバーを有し、前記電動リリース機構は、前記ロック機構がロック状態にあって、前記回転カムが前記モータの動力により前記基準位置から前記スプリングの付勢力に抗して正方向へ前記所定角度よりも大きい角度回転することにより、前記ラッチ機構を噛合解除させた後、前記スプリングの付勢力により前記基準位置に復帰し、前記ロック機構がアンロック状態にあって、前記回転カムが前記モータの動力により前記基準位置から前記スプリングの付勢力に抗して正方向へ前記所定角度回転することにより、前記ロック機構をアンロック状態からロック状態に切り替え作動させた後、前記スプリングの付勢力により前記基準位置に復帰することを特徴とする。
好ましくは、前記電動リリース機構は、前記ロック機構がロック状態にあって、前記回転カムが前記モータの動力により前記基準位置から前記スプリングの付勢力に抗して逆方向へ回転することにより、前記ロック機構をロック状態からアンロック状態に切り替え作動させた後、前記スプリングの付勢力により基準位置に復帰する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、単一のモータにより、ラッチ機構の噛合解除、ロック機構のアンロック状態からロック状態への切り替えを単独で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る自動車用ドアラッチ装置の外観斜視図である。
図2】ラッチ機構及びカバーを省略した状態の自動車用ドアラッチ装置の斜視図である。
図3図2におけるIII矢視図である。
図4】要部の斜視図である。
図5図4と異なる方向から見た要部の斜視図である。
図6】回転カムが基準位置にある場合の要部の正面図である。
図7】回転カムが基準位置から正方向へ回転した際の要部の正面図である。
図8】回転カムが図7に示す位置からさらに正方向へ回転した際の要部の正面図である。
図9】回転カムが図8に示す位置から反転して基準位置へ戻る際の要部の正面図である。
図10】回転カムが基準位置から逆方向へ回転した際の要部の正面図である。
図11】回転カムが図10に示す位置から反転して基準位置に戻った際の要部の正面図である。
図12】ロック機構がアンロック状態にあるとき、回転カムが基準位置から正方向へ回転した際の要部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1~3に示すように、自動車用ドアラッチ装置1は、ドアを閉鎖位置に保持するためのラッチ機構2と、手動操作力によりラッチ機構2の噛合を解除するリリース作動可能な手動リリース機構3と、手動リリース機構3のリリース作動を無効にするロック状態及び有効にするアンロック状態に切り替え可能なロック機構4と、電動力によりラッチ機構2の噛合を解除可能な電動リリース機構5を含む。
【0013】
図1に示すように、ラッチ機構2は、ドア内に固定されるボディ6内にラッチ軸24により枢支され、ドアの閉鎖時に車体側のストライカ(図示略)に噛合するラッチ21と、ボディ6内にラチェット軸25により枢支され、ストライカに噛合したラッチ21に係合することにより、ラッチ21の回動を阻止してドアを閉鎖位置に保持するラチェット22と、ラチェット22と一体に回転可能なラチェットレバー23(図2、3参照)を有する。
【0014】
ラチェット22は、枢軸25を中心に図1において時計方向であるリリース方向へ回転することにより、ラッチ21との係合を解除して、ドアの開放を可能にする。なお、以下の説明で使用する「ラッチ機構2」の「噛合解除」は、ラチェット22とラッチ21との係合を解除して、ドアの解放を可能にすることを意味する。
なお、本実施形態において、ラチェット22とラチェットレバー23とを別体としたが、これに限定されるものでなく、ラチェット22とラチェット23とを一体構成としても良い。
【0015】
図2、3に示すように、手動リリース機構3は、ドアの車外側に設けられるアウトサイドハンドル(図示略)の機械的動作に連動するアウトサイドレバー31と、ドアの車内側に設けられるインサイドハンドル(図示略)の機械的動作に連動するインサイドレバー32を有する。
【0016】
アウトサイドレバー31は、ボディ6に固定されるハウジング7に前後方向の枢軸71により枢支され、アウトサイドハンドルの機械的動作に連動して枢軸71を中心にリリース方向(図2において時計方向)へ回転する。アウトサイドレバー31の回転運動は、ロック機構4がアンロック状態であれば後述のようにラチェットレバー23を介してラチェット22に伝達され、ロック機構4がロック状態であれば後述のようにラチェット22に伝達されない。
【0017】
インサイドレバー32は、ハウジング7に左右方向の枢軸72により枢支され、インサイドハンドルの機械的動作に連動して枢軸72を回転中心として図3において時計方向へ回転する。インサイドレバー42の回転運動は、アウトサイドレバー41に直接伝達される。したがって、インサイドハンドルの機械的動作は、ロック機構がアンロック状態であればラチェット22に伝達され、ロック機構がロック状態であればラチェット22に伝達されない。なお、ハウジング7の車内側を向く左側面は、図1に示すようにカバー7aにより閉塞される。
【0018】
ロック機構4は、ハウジング7に枢軸73により枢支されるロックレバー41と、ロックレバー41に連結されるサブレバー42と、ハウジング7に枢軸74により枢支される第1アクティブレバー43と、第1アクティブレバー43と同軸上に枢支される第2アクティブレバー44を含んで構成される。
【0019】
ロックレバー41は、枢軸73を中心に前後方向へ回転可能であって、後述のモータ51の動力による後述の回転カム52の回転及びキーを使用してのドアの車外側に設けられるキーシリンダの手動操作力により、ロック機構をアンロック状態とする例えば図3に示すアンロック位置から反時計方向へ所定角度回転してロック機構をロック状態とするロック位置、及びその逆へ回転可能である。ロックレバー41の上部には、車外側を向く右方へ棒状に突出し、回転カム52の後述の第1作用部52b及び第2作用部52cが作用する入力部41aが設けられる。
【0020】
ロックレバー41の上端部には、ハウジング7に枢支され、キーを使用してのキーシリンダの回転に連動して回転部46aを中心に回転するキーレバー46が連結される。キーレバー46は、その下方に枢支されたサブキーレバー48を介してロックレバー41に連結される。これにより、バッテリの電圧降下等によりモータ51の動力によりロック機構4の切り替え作動が不能になった緊急事態時、キーを使用しての手動操作力によりロック機構4をロック状態からアンロック状態及びその逆へ切り替えることができる。
なお、本実施形態においては、ロック機構をロック状態として、モータ51の動力によりドアの開放を可能にするものであるから、キーを使用してのロック機構4の操作は、基本的には緊急事態が発生しない限り行われない。
【0021】
サブレバー42は、上部がロックレバー41の下部に回転可能で、かつ上下方向にスライド可能に連結され、下端部がアウトサイドレバー31の端部である連結部31aに前後方向へ所定角度回転可能に連結される。これにより、ロックレバー41がアンロック位置からロック位置、又はロック位置からアンロック位置へ回転すると、これに連動して、サブレバー42は、連結部31aを回転中心として、図3に示すアンロック位置から反時計方向へ所定角度回転したロック位置、又はロック位置からアンロック位置に回転する。
【0022】
ロックレバー41及びサブレバー42がアンロック位置にある場合には、アウトサイドレバー31がアウトサイドハンドル又はインサイドハンドルの機械的動作による操作に基づいて回転すると、サブレバー42は、図3に示すアンロック位置から上方へ直進して、サブレバー42に設けられたリリース部42aがラチェットレバー23の端部23aに下方から当接する。これにより、ラチェットレバー23及びラチェット22は、リリース方向へ回転して噛合機構2の噛合を解除する。ロックレバー41及びサブレバー42がロック位置にある場合には、アウトサイドレバー31がアウトサイドハンドル又はインサイドハンドルの機械的動作による操作に基づいて、アウトサイドレバー31が回転しても、サブレバー42がロックレバー41により前斜め上方へ向けて誘導されるため、サブレバー42のリリース部42aがラチェットレバー23の端部23aに対して当接することはない。したがって、ラチェットレバー23及びラチェット22がリリース方向へ回転しないため、アウトサイドハンドル及びインサイドハンドルの機械的動作による操作によってはドアを開けることはできない。
【0023】
図4は、要部の斜視図、図5は、図4と異なる方向から見た要部の斜視図、図6~12は、要部を作動を説明するための正面図である。
第1アクティブレバー43は、上下方向の略中央部が枢軸74によりハウジング7に枢支されると共に、上端部に設けられた連結軸43aがロックレバー41の下部に設けられた上下方向の長孔41bに上下動かつ回転可能に連結される。これにより、第1アクティブレバー43は、ロックレバー41の回転に従動して回転し、ロックレバー41がロック位置にある場合には図6に示すロック位置に弾性保持され、ロックレバー41がアンロック位置にある場合にはロック位置から時計方向へ所定角度回転した図11に示すアンロック位置に弾性保持される。第1アクティブレバー43のロック位置及びアンロック位置への弾性保持は、第1アクティブレバー43に作用するスプリング47の弾性力により行われる。第1アクティブレバー43を各位置に弾性保持するスプリング47の保持力は、ロックレバー41にも伝達される。
【0024】
第2アクティブレバー44は、後端部が枢軸74によりハウジング7に枢支されると共に、スプリング45により反時計方向へ付勢されて、ロックレバー41及び第1アクティブレバー43がロック位置にある場合、裏面に設けられた第1突部44aがハウジング7に設けられた第1ストッパ部75に反時計方向から当接したロック位置に保持される。
【0025】
第1アクティブレバー43がロック位置からアンロック位置に回転すると、第1アクティブレバー43に設けられた突部43bが第2アクティブレバー44の第1突部44aに対して時計方向から当接することによって、第2アクティブレバー44は、スプリング45の付勢力に抗して、ロック位置から時計方向へ所定角度回転して、第2アクティブレバー44の端部44dがハウジング7に設けられた第2ストッパ部78に当接する例えば図11に示すアンロック位置に移動する。
【0026】
第2アクティブレバー44には、前端上部にあって、電動リリース機構5の回転カム32と相互に作用し合う第2突部44b及びストッパ部44cが設けられる。第2突部44bは、第2アクティブレバー44がロック位置にある場合には回転カム32の回転軌道から外れた位置にあり、第2アクティブレバー44がアンロック位置に回転した場合には回転カム32の回転軌道内に進入する。これにより、第2アクティブレバー44は、ロック位置にある場合、回転カム32の基準位置から時計方向(正方向)への回転角度を規制しないが、アンロック位置にある場合、回転カム32の基準位置から時計方向への回転角度を所定角度に規制する。
【0027】
図2、3に示すように、電動リリース機構5は、ハウジング7に支持されるモータ51と、モータ51の回転軸と一体になって回転するウォームギヤ51aに噛合することで、モータ51の動力に基づいて枢軸76を中心に正逆回転可能なウォームホイールにより構成される回転カム52と、回転カム52が図6に示す基準位置から時計方向(正方向)へ回転することにより、枢軸77を中心に反時計方向へ回転可能なオープンレバー53を有する。
【0028】
モータ51は、アウトサイドハンドルの機械的動作のうち初期動作をセンサ(図示略)が検知した場合、又はユーザ携帯のワイヤレス操作スイッチ兼発信器がロック操作された場合に正転駆動し、ワイヤレス操作スイッチ兼発信器がアンロック操作された場合に逆転駆動する。なお、センサの検知は、ワイヤレス操作スイッチ兼発信器を自動車に装備された認証装置が認証している場合に限って有効である。
【0029】
回転カム52は、ハウジング7に左右方向を向く枢軸76により枢支されると共に、常時は回転カム52の裏側に設けられたスプリング54の付勢力により例えば図6に示す基準位置(基準位置)に弾性保持される。回転カム52は、モータ51が正転することにより、スプリング54の付勢力に抗して基準位置から時計方向(正方向)へ回転し、モータ35が逆転することにより、スプリング54の付勢力に抗して基準位置から反時計方向(逆方向)へ回転し、時計方向又は反時計方向へそれぞれ回転した後、モータ51への給電が停止されることで、スプリング54の付勢力により反転して基準位置に復帰する。
【0030】
回転カム52には、オープンレバー53に作用するカム部52aと、ロック機構4のロックレバー41に作用する第1、2作用部52b、52cと、ロック機構4の第1アクティブレバー43に作用する第3作用部52dと、第2アクティブレバー44と相互に作用し合う第4、5作用部52e、52fを有する。
【0031】
オープンレバー53は、ハウジング7に左右方向の枢軸77により枢支されると共に、回転カム52の回転面に重なるように前方へ延伸する第1アーム部53aと、後斜め下方へ延伸し、ラチェットレバー23に作用する第2アーム部53bを有する。
【0032】
回転カム52のカム部52aは、回転カム52の表側の回転面に左方へ向けて半円状に突出するように設けられ、回転カム52がスプリング54の付勢力に抗して基準位置から時計方向へ回転した場合、円弧面がオープンレバー53の第1アーム部53aに上方から接触することで第1アーム部53aを押し下げて、オープンレバー53を基準位置から反時計方向へ回転させるように作用する。
【0033】
オープンレバー53は、基準位置から反時計方向へ回転した場合には、第2アーム部53bがラチェットレバー23のアーム部23aに下方から当接することにより、ロック機構4の状態に無関係に、ラチェット22をリリース方向へ回転させてラッチ機構2をアンラッチ状態としてドアの開操作を可能にする。
【0034】
回転カム52の第1作用部52bは、第2作用部52cから反時計方向へ若干離れた位置にあって、かつ第2作用部52cよりも回転カム52の外周から外方へ長く突出するように設けられる。
【0035】
回転カム52がスプリング54の付勢力に抗して基準位置から時計方向へ回転すると、第1作用部52bは、ロック位置にあるロックレバー41の入力部41aに対して前方から当接することにより、ロックレバー41をロック位置からアンロック位置へ移動させるようにロックレバー41に作用する。この場合、回転カム52は、ロックレバー41をアンロック位置に移動させた時点又はその直後に、時計方向への回転が規制されて図8に示すリリース位置に停止して、モータ51への給電が停止されると、スプリング54の付勢力により、リリース位置から反時計方向へ反転して基準位置に戻る。
【0036】
第2作用部52cは、回転カム52がリリース位置からスプリング54の付勢力により基準位置に復帰する際、アンロック位置にあるロックレバー41の入力部41aに反時計方向から当接することにより、ロックレバー41をアンロック位置からロック位置に移動させるようにロックレバー41に対して作用する。
【0037】
第3作用部52dは、回転カム52が基準位置にあり、第1アクティブレバー43がロック位置にある場合には、図6に示すように、第1アクティブレバー43の第1係合部43cに対向し、回転カム52が基準位置にあり、第1アクティブレバー43がアンロック位置にある場合には、図11に示すように、第1アクティブレバー43の第2係合部43dに対向する。
【0038】
第1アクティブレバー43がロック位置にあって、回転カム52がモータ51の動力により基準位置から反時計方向へ所定角度回転した場合には、第3作用部52dが第1アクティブレバー43の第1係合部43cに当接することにより、第1アクティブレバー43をロック位置からアンロック位置へ移動させる。また、第1アクティブレバー43がアンロック位置にあって、回転カム52がモータ51の動力により基準位置から時計方向へ回転した場合には、第3作用部52dが第1アクティブレバー43の第2係合部43dに当接することにより、第1アクティブレバー43をアンロック位置からロック位置へ移動させる。
【0039】
なお、ロック機構4がアンロック状態にある場合には、第2アクティブレバー44により、後述のように、回転カム52の基準位置から時計方向への回転角度が、ロック機構4がロック状態にあるときよりも小さくなるように規制されるため、回転カム52の時計方向への回転に伴って、オープンレバー53をリリース作動させることはない。
【0040】
回転カム52の第4作用部52eは、第2アクティブレバー44がアンロック位置にある場合、回転カム52がモータ51の動力によりスプリング54の付勢力に抗して基準位置から時計方向へ所定角度回転時点で第2アクティブレバー44のストッパ部44cに対して当接することにより、回転カム52の時計方向への回転角度をロック機構4がロック状態にある場合よりも小さくなるように規制する。
【0041】
第5作用部52fは、ロック機構4がアンロック状態で第2アクティブレバー44がアンロック位置にある場合、回転カム52がモータ51の動力により基準位置から時計方向へ回転した際、第4作用部52eが第2アクティブレバー44のストッパ部44cに当接する前で、かつ第3作用部52dが第1アクティブレバー43の第2係合部43dに当接する前に、第2アクティブレバー44の反時計方向への回転、すなわちロック位置へ向けての回転を阻止するように、第2アクティブレバー44の第2突部44bに対して係合可能な位置に変位する。これにより、第2アクティブレバー44を除くロック機構4の全ての要素がロック位置へ移動するまで、第2アクティブレバー44はアンロック位置に保持されて、回転カム52の基準位置から反時計方向への回転角度を所定角度となるように確実に規制する。
【0042】
次に、自動車用ドアラッチ装置1の作用について説明する。
<ロック機構4がロック状態にあって、回転カム52が基準位置から時計方向へ回転した場合>
図6は、ロック機構4がロック状態で、回転カム52が基準位置にある状態を示し、図7は、回転カム52が基準位置からモータ51の動力により基準位置から時計方向へ向けて回転している最中を示し、図8は、回転カム52が基準位置から時計方向へ回転しリリース位置に停止した状態を示し、図9は、回転カム52がリリース位置から基準位置に戻る際の途中状態を示す。
【0043】
回転カム52が図6に示す基準位置から時計方向へ回転すると、回転カム52の回転に伴って、カム部52aの円弧面がオープンレバー53の第1アーム部53aに上方から当接して、オープンレバー53を反時計方向、すなわちリリース方向へ回転させる。そして、図7に示すように、回転カム52が基準位置から時計方向へ約120度回転すると、オープンレバー53がリリース方向へ最終位置まで回転して、ラチェットレバー23を介して噛合機構2の噛合解除を行い、ドアの解放を可能にする。
【0044】
回転カム52が図7に示す位置からさらに時計方向へ回転すると、第1作用部52bがロックレバー41の入力部41aに当接することにより、図8に示すように、ロックレバー41はロック位置からアンロック位置に回転させられて、回転カム52はリリース位置に停止する。この場合、ロックレバー41のロック位置からアンロック位置への回転に伴って、第1アクティブレバー43及び第2アクティブレバー44もそれぞれロック位置からアンロック位置に回転するが、これらの回転は単に回転するだけで、他の要素に何ら影響を与えるものではない。
【0045】
本実施形態においては、回転カム52が基準位置から時計方向へ回転した場合、先に噛合機構2の噛合解除を行い、次にロック機構4をロック状態からアンロック状態に切り替え作動させるものであるが、これに代えて、噛合機構2の噛合解除とロック機構4のロック状態からアンロック状態への切り替え作動を同時にしたり、または、ロック機構4のロック状態からアンロック状態への切り替え作動を噛合機構2の噛合解除よりも先に行うようにしても良い。
【0046】
回転カム52が図8に示すリリース位置に停止すると、モータ51への給電が停止される。これにより、回転カム52は、スプリング54の付勢力により、リリース位置から基準位置へ向けて反時計方向へ向けて反転する。そして、図9に示すように、回転カム52がリリース位置から若干反転すると、回転カム52の第2作用部52cがロックレバー41の入力部41aに対して反時計方向から当接することにより、ロックレバー41を再びロック位置に回転させる。引き続いて、回転カム52は、スプリング54の付勢力によりさらに反時計方向へ回転して、図6に示す基準位置に戻って停止する。
【0047】
上述の動作を総括説明すると、ロック機構4がロック状態にあって、モータ51の動力により、回転カム52が基準位置から時計方向へ回転した場合には、回転カム52が基準位置から時計方向へ回転する動作によって、オープンレバー53をリリース作動させてドアの開き操作を可能にすると共に、ロック状態にあるロック機構4を一旦アンロック状態に切り替え作動させる。そして、回転カム52がスプリング54の付勢力により基準位置に復帰する際の動作によって、アンロック状態に切り替え作動させたロック機構4を再びロック状態に切り替える動作を行うものである。
【0048】
上述のように、モータ51の動力によりドアを開ける際、普段使用されないロック機構4を切り替え作動させるものであるから、ロック機構4が長期間に亘って使用されなかったことが要因となって、ロック機構4の可動部分のグリスが硬化したり、さびが発生したりすることを未然に防止できる。これにより、緊急時に、ロック機構4をロック位置からアンロック位置又はその逆へ確実に切り替えることができる。
【0049】
<ロック機構4がロック状態にあって、回転カム52が基準位置から反時計方向へ回転した場合>
図6に示す状態から、回転カム52が基準位置からモータ51の動力により反時計方向へ回転すると、図10に示すように、第3作用部52dが第1アクティブレバー43の第1係合部43cに係合することにより、第1アクティブレバー43をロック位置からアンロック位置に回転させる。そして、第1アクティブレバー43をアンロック位置に回転させた後、モータ51への給電が停止されると、回転カム52は、第1アクティブレバー43をアンロック位置に回転させた位置から、スプリング54の付勢力により、時計方向へ反転させられて、図11に示すように基準位置に復帰する。
【0050】
上述により、ロック機構4がロック状態のとき、回転カム52を基準位置からモータ51の動力により反時計方向へ回転させた場合には、ロック機構4を単独でロック状態からアンロック状態に切り替えることができる。
【0051】
<ロック機構4がアンロック状態にあって、回転カム52が基準位置から時計方向へ回転した場合>
図11に示す状態から、回転カム52が基準位置から時計方向へ回転すると、第5作用部52fは、即座に第2アクティブレバー44のストッパ部44cの裏側に潜り込んで、第2アクティブレバー44のアンロック位置からロック位置への回転を阻止する。この状態で、さらに回転カム52が時計方向へ回転すると、図12に示すように、第3作用部52dが第1アクティブレバー43の第2係合部43dに対して当接することにより、第1アクティブレバー43をアンロック位置からロック位置に回転させる。そして、この直後(回転カム52が基準位置から時計方向へ約30度回転した位置)、第4作用部52eが第2アクティブレバー44のストッパ部44cに時計方向から当接することにより、回転カム52はその位置に停止する。
【0052】
これにより、ロック機構4がアンロック状態にあるときの回転カム52の基準位置から時計方向への回転角度は、ロック機構4がロック状態にあるときにオープンレバー53をリリース作動させてラッチ機構2を噛合解除させる回転角度よりも小さくなるように規制される。
【0053】
そして、回転カム52が時計方向への回転を停止すると、モータ51への給電が停止される。これにより、回転カム52は、スプリング54の付勢力により、停止した位置からスプリング54の付勢力により反時計方向へ反転して基準位置に戻る。
【0054】
回転カム52が基準位置に戻ると、回転カム52の第5作用部52fと第2アクティブレバー44の第2突部44bとの係合関係が解消される。これにより、第1アクティブレバー43がロック位置に既に切り替わっていることから、第2アクティブレバー44は、スプリング45の付勢力によりロック位置に戻り、図6に示すような状態となる。
【0055】
上述により、ロック機構4がアンロック状態のとき、回転カム52を基準位置からモータ51の動力により時計方向へ回転させることで、ロック機構4を単独でアンロック状態からロック状態に切り替えることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 自動車用ドアラッチ装置 2 ラッチ機構
21 ラッチ 22 ラチェット
23 ラチェットレバー 23a アーム部
24 ラッチ軸 25 ラチェット軸
3 手動リリース機構 31 アウトサイドレバー
31a 連結部 32 インサイドレバー
4 ロック機構 41 ロックレバー
41a 入力部 42b 長孔
42 サブレバー 42a リリース部
43 第1アクティブレバー 43a 連結軸
43b 突部 43c 第1係合部
43d 第2係合部 44 第2アクティブレバー
44a 第1突部 44b 第2突部
44c ストッパ部 44d 端部
45 スプリング 46 キーレバー
46a 回転部 47 スプリング
48 サブキーレバー 5 電動リリース機構
51 モータ 51a ウォームギヤ
52 回転カム 52a カム部
52b 第1作用部 52c 第2作用部
52d 第3作用部 52e 第4作用部
52f 第5作用部 53 オープンレバー
53a 第1アーム部 53b 第2アーム部
54 スプリング 6 ボディ
7 ハウジング 7a カバー
71、72、73、74 枢軸 75 第1ストッパ部
76、77 枢軸 78 第2ストッパ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12