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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】耐震補強構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
E04G23/02 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018190108
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020059986
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】小林 春之
(72)【発明者】
【氏名】畝 博志
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 徹
(72)【発明者】
【氏名】福原 武史
(72)【発明者】
【氏名】井戸硲 勇樹
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-025244(JP,A)
【文献】特開2016-044392(JP,A)
【文献】特開2010-159543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の既存柱と、一対の前記既存柱に架設された上下の既存梁と、を有する既存架構と、
前記既存架構に設けられた既存コンクリート壁と、
前記既存梁に沿って設けられ、前記既存梁を増打ち補強する増打ち補強部と、
前記既存コンクリート壁と増打ち補強部とに亘って埋設される接続筋と、
を備える耐震補強構造。
【請求項2】
前記増打ち補強部は、前記既存梁の全長に亘って設けられる、
請求項1に記載の耐震補強構造。
【請求項3】
前記既存梁は、鉄骨造とされるとともに前記増打ち補強部に埋設され、
前記増打ち補強部には、梁主筋が埋設される、
請求項2に記載の耐震補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
既存コンクリート壁を増打ち補強する耐震補強構造が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-49329号公報
【文献】特開2005-220591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の耐震補強構造では、既存コンクリート壁の大きさに応じて増打ち範囲が広くなるため、施工に手間がかかる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、施工性を向上しつつ、既存コンクリート壁の耐力を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る耐震補強構造は、一対の既存柱と、一対の前記既存柱に架設された上下の既存梁と、を有する既存架構と、前記既存架構に設けられた既存コンクリート壁と、前記既存柱及び前記既存梁の少なくも一方に設けられた増打ち補強部と、を備える。
【0007】
第1態様に係る耐震補強構造によれば、既存架構は、一対の既存柱と、一対の既存柱に架設された上下の既存梁とを有している。また、既存架構には、既存コンクリート壁が設けられている。この既存架構の既存柱及び既存梁の少なくも一方には、増打ち補強部(増打ちコンクリート補強部)が設けられている。
【0008】
ここで、既存架構による既存コンクリート壁の拘束力が低い場合、既存コンクリート壁に対する既存架構の抵抗力が小さくなり、既存コンクリート壁が耐力を十分に発揮することができない可能性がある。
【0009】
これに対して本発明では、前述したように、既存架構の既存柱及び既存梁の少なくとも一方に、増打ち補強部が設けられている。この増打ち補強部によって、既存柱及び既存梁の少なくとも一方を補強(補剛)することにより、既存架構による既存コンクリート壁の拘束力が高められる。この結果、地震時に、既存コンクリート壁が耐力を十分に発揮可能になるため、既存コンクリート壁の耐力が高められる。換言すると、既存架構による既存コンクリート壁の拘束力を高めることにより、既存コンクリート壁の耐力を高く評価することができる。
【0010】
また、本発明では、既存コンクリート壁の全面を増打ち補強する場合と比較して、補強範囲を狭くすることができるため、施工性が向上する。さらに、本発明では、既存コンクリート壁の壁厚が増大しないため、耐震補強完了時の室内への影響を小さくすることができる。
【0011】
このように本発明では、施工性を向上し、かつ、室内への影響を小さくしつつ、既存コンクリート壁の耐力を高めることができる。
【0012】
第2態様に係る耐震補強構造は、第1態様に係る耐震補強構造において、前記増打ち補強部は、前記既存梁及び前記既存柱の少なくとも一方の全長に亘って設けられる。
【0013】
第2態様に係る耐震補強構造によれば、増打ち補強部は、既存梁及び既存柱の少なくとも一方の全長に亘って設けられる。これにより、既存架構による既存コンクリート壁の拘束力がさらに高められる。したがって、既存コンクリート壁の耐力がさらに高められる。
【0014】
第3態様に係る耐震補強構造は、第2態様に係る耐震補強構造において、前記既存梁は、鉄骨造とされるとともに前記増打ち補強部に埋設され、前記増打ち補強部には、梁主筋が埋設される。
【0015】
第3態様に係る耐震補強構造によれば、既存梁は、鉄骨造とされるとともに増打ち補強部に埋設される。また、増打ち補強部には、梁主筋が埋設される。つまり、鉄骨梁は、増打ち補強部及び梁主筋によって鉄骨鉄筋コンクリート造とされる。これにより、既存架構による既存コンクリート壁の拘束力がさらに高められる。したがって、既存コンクリート壁の耐力がさらに高められる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る耐震補強構造によれば、施工性を向上しつつ、既存コンクリート壁の耐力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第一実施形態に係る既存構造物の外周部を外側から見た立面図である。
図2図1の2-2線断面図である。
図3】第一実施形態に係る耐震補強構造が適用された既存架構を示す図2に対応する断面図である。
図4】第二実施形態に係る耐震補強構造が適用された既存架構を示す図2に対応する断面図である。
図5】(A)は、既存梁の変形例を示す図2に対応する断面図であり、(B)は、耐震補強構造の変形例を示す図2に対応する断面図である。
図6】(A)は、既存梁の変形例を示す図2に対応する断面図であり、(B)は、耐震補強構造の変形例を示す図2に対応する断面図である。
図7】(A)は、既存梁の変形例を示す図2に対応する断面図であり、(B)は、耐震補強構造の変形例を示す図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。
【0019】
(既存構造物)
図1には、本実施形態に係る耐震補強構造40が適用される前の既存構造物(既存建物)10が示されている。既存構造物10は、既存架構20及び既存コンクリート壁30を有している。
【0020】
既存架構20及び既存コンクリート壁30は、既存構造物10の外周部に配置されている。つまり、本実施形態の既存架構20は、外周架構(外周既存架構)とされており、本実施形態の既存コンクリート壁30は、外壁(既存コンクリート外壁)とされている。なお、既存コンクリート壁30は、外壁に限らず、内壁であっても良い。
【0021】
(既存架構)
既存架構20は、一対の既存柱22と、上下の既存梁24とを有している。一対の既存柱22は、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、又は鉄骨鉄筋コンクリート造とされている。この一対の既存柱22には、上下の既存梁24が架設されている。
【0022】
図2に示されるように、既存梁24は、鉄骨造とされている。より具体的には、既存梁24は、H形鋼によって形成されている。この既存梁24は、上下方向に互いに対向する一対の上フランジ部24A及び下フランジ部24Bと、上フランジ部24Aと下フランジ部24Bとを接続するウェブ部24Cとを有している。また、既存梁24の上には、既存スラブ12が設けられている。この既存梁24には、既存コンクリート壁30が接合されている。
【0023】
なお、既存梁24は、H形鋼に限らず、I形鋼やC形鋼であっても良い。
【0024】
(既存コンクリート壁)
既存コンクリート壁30は、例えば、耐力壁や耐震壁、雑壁とされる。この既存コンクリート壁30は、鉄筋コンクリート造とされており、内部に複数の壁筋32が埋設されている。また、既存コンクリート壁30は、上下の既存梁24の外側に配置されており、上下の既存梁24の側面にそれぞれ接合されている。
【0025】
なお、既存コンクリート壁30と上下の既存梁24との接合構造は、同様の構成とされている。そのため、以下では、既存コンクリート壁30の上部と上側の既存梁24との接合構造について説明し、既存コンクリート壁30の下部と下側の既存梁24との接合構造については説明を省略する。
【0026】
既存コンクリート壁30の上部は、コンクリート接合部34を介して既存梁24の側面に接合されている。コンクリート接合部34は、既存梁24の全長に亘って設けられている。また、コンクリート接合部34は、既存コンクリート壁30の上部と既存梁24のウェブ部24Cとに亘って設けられている。このコンクリート接合部34は、鉄筋コンクリート造とされており、その内部に複数の接続筋36が埋設されている。
【0027】
接続筋36は、C字形状に屈曲されており、既存コンクリート壁30の上部と既存梁24との間に配置されている。また、複数の接続筋36は、既存梁24の材軸方向に間隔を空けて複数配置されている。各接続筋36の一端側は、既存梁24に溶接等によって接合されている。また、各接続筋36の他端側は、既存コンクリート壁30に埋設されている。このように複数の接続筋36が埋設されたコンクリート接合部34によって、既存梁24と既存コンクリート壁30とが接合されている。
【0028】
なお、コンクリート接合部34の配筋は、適宜変更可能である。また、図示を省略するが、既存コンクリート壁30の左右の端部は、一対の既存柱22にそれぞれ接合されている。
【0029】
(耐震補強構造)
図3には、本実施形態に係る耐震補強構造40が適用された既存架構20(図1参照)が示されている。耐震補強構造40は、上側の既存梁24に設けられる増打ち補強部(増打ちコンクリート補強部)42を有している。
【0030】
(増打ち補強部)
増打ち補強部42は、上側の既存梁24の内側(既存コンクリート壁30と反対側)の側面、及び下面を被覆している。また、増打ち補強部42は、既存梁24の全長に亘って設けられており、その両端部が一対の既存柱22に接続されている。この増打ち補強部42によって、既存梁24の断面積が大きくされている。
【0031】
増打ち補強部42は、鉄筋コンクリート造とされており、その内部に複数の接続筋44,46、及び複数の補強筋48が埋設されている。接続筋44は、L字形状に屈曲されている。この接続筋44の一端部は、例えば、図示しないケミカルアンカー等の後施工アンカーを介して既存コンクリート壁30の上部に接続されている。また、接続筋44の他端部は、例えば、後施工アンカーを介して既存スラブ12に接続されている。この接続筋44によって、増打ち補強部42が既存コンクリート壁30及び既存スラブ12にそれぞれ接合されている。
【0032】
接続筋46は、既存梁24の下側に配置されている。この接続筋46の一端部は、例えば、後施工アンカーを介して既存コンクリート壁30の上部に接続されている。また、接続筋46の他端部は、増打ち補強部42に埋設されている。この接続筋46によって、既存コンクリート壁30と増打ち補強部42とが接合されている。また、複数の補強筋48は、既存梁24の材軸方向に沿って配置されている。
【0033】
このように構成された増打ち補強部42によって、既存梁24の断面積が大きくされている。また、既存梁24による既存コンクリート壁30の上部の拘束力が高められている。
【0034】
(作用)
次に、第一実施形態の作用について説明する。
【0035】
本実施形態に係る耐震補強構造40によれば、既存架構20は、一対の既存柱22と、一対の既存柱22に架設された上下の既存梁24とを有している。また、既存架構20には、既存コンクリート壁30が設けられている。この既存架構20の上側の既存梁24には、増打ち補強部42が設けられている。
【0036】
ここで、例えば、上側の既存梁24による既存コンクリート壁30の拘束力が低い場合、既存コンクリート壁30に対する既存架構20の抵抗力が小さくなる。より具体的には、地震時における既存コンクリート壁30のせん断変形に対する既存梁24の抵抗力が小さくなる。そのため、既存コンクリート壁30が、その耐力を十分に発揮することができない可能性がある。
【0037】
この対策として本実施形態では、上側の既存梁24に増打ち補強部42が設けられている。この増打ち補強部42によって、上側の既存梁24を補強(補剛)することにより、当該既存梁24による既存コンクリート壁30の拘束力が高められる。この結果、地震時に、既存コンクリート壁30が耐力を十分に発揮可能になるため、既存コンクリート壁30の耐力が高められる。換言すると、上側の既存梁24による既存コンクリート壁30の拘束力を高めることにより、既存コンクリート壁30の耐力を高く評価することができる。
【0038】
このように本実施形態では、既存コンクリート壁30を増打ち補強せずに、既存コンクリート壁30の耐力を高めることができる。また、本実施形態では、既存コンクリート壁30の全面を増打ち補強する場合と比較して、補強範囲を狭くすることができる。したがって、施工性が向上する。
【0039】
さらに、既存コンクリート壁30の全面を増打ち補強する場合は、既存コンクリート壁30の壁厚が厚くなるため、室内(室内空間)が狭くなる可能性がある。これに対して本実施形態では、既存コンクリート壁30の壁厚を厚くせずに、すなわち室内を狭くせずに、既存コンクリート壁の耐力を高めることができる。
【0040】
また、増打ち補強部42は、既存梁24の全長に亘って設けられている。これにより、既存梁24による既存コンクリート壁30の拘束力が高められる。さらに、増打ち補強部42は、一対の既存柱22に接続されている。これにより、既存梁24による既存コンクリート壁30の上部の拘束力がさらに高められる。したがって、既存コンクリート壁30の耐力をさらに高めることができる。
【0041】
また、本実施形態では、上側の既存梁24に増打ち補強部42が設けられている。この上側の既存梁24によって、地震時における既存コンクリート壁30のせん断変形(回転変形)が上から押さえ込まれる。これにより、本実施形態では、下側の既存梁24にのみ増打ち補強部42を設ける場合と比較して、既存梁24による既存コンクリート壁30の拘束力を効率的に高めることができる。したがって、本実施形態では、既存コンクリート壁30の耐力を効率的に高めることができる。
【0042】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0043】
図4には、第二実施形態に係る耐震補強構造50が適用された既存架構20(図1参照)が示されている。耐震補強構造50は、上側の既存梁24に設けられる増打ち補強部52を有している。この増打ち補強部52によって、上側の既存梁24が鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)とされている。
【0044】
具体的には、増打ち補強部52は、複数の上端梁主筋54と、複数の下端梁主筋56と、複数のせん断補強筋57と、複数の接続筋58,59と、複数の補強筋60とを有している。複数の上端梁主筋54は、増打ち補強部52の上部に、例えば、2列3段で埋設されている。これと同様に、複数の下端梁主筋56は、増打ち補強部52の下部に、例えば、2列3段で埋設されている。これらの上端梁主筋54及び下端梁主筋56は、既存梁24の材軸方向に沿って配置されており、両端部が一対の既存柱22(図1参照)に接続されている。これらの上端梁主筋54及び下端梁主筋56は、複数のせん断補強筋57によって囲まれている。複数の複数のせん断補強筋57は、既存梁24の材軸方向に間隔を空けて配置されている。なお、上端梁主筋54及び下端梁主筋56は、梁主筋の一例である。
【0045】
また、複数の接続筋58は、増打ち補強部52の上部と既存スラブ12とに亘って埋設されており、増打ち補強部52と既存スラブ12とを接合している。また、複数の接続筋59は、増打ち補強部52の下部と既存コンクリート壁30の上部とに亘って埋設されており、増打ち補強部52と既存コンクリート壁30とを接合している。また、複数の補強筋60は、既存梁24の材軸方向に沿って配置されている。
【0046】
このように構成された増打ち補強部52によって、既存梁24の断面積が大きくされている。また、既存梁24による既存コンクリート壁30の拘束力が高められている。
【0047】
(作用)
次に、第二実施形態の作用について説明する。
【0048】
本実施形態に係る耐震補強構造50によれば、上側の既存梁24には、増打ち補強部52が設けられている。この増打ち補強部52によって、上側の既存梁24を補強(補剛)することにより、当該既存梁24による既存コンクリート壁30の拘束力が高められる。したがって、既存コンクリート壁30の耐力が高められる。
【0049】
また、増打ち補強部52に複数の上端梁主筋54及び下端梁主筋56を埋設し、鉄骨造の既存梁24を鉄骨鉄筋コンクリート造にすることにより、既存梁24による既存コンクリート壁30の拘束力がさらに高められる。したがって、既存コンクリート壁30の耐力をさらに高めることができる。
【0050】
(変形例)
次に、上記第一実施形態及び第二実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、上記第一実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は、上記第二実施形態にも適宜適用可能である。
【0051】
上記第一実施形態では、既存梁24の外側に既存コンクリート壁30が配置されるが、上記第一実施形態はこれに限らない。例えば、図5(A)に示されるように、既存コンクリート壁30は、上下の既存梁24の間に配置されても良い。なお、図5(A)では、下側の既存梁24の図示が省略されている。
【0052】
具体的には、図5(A)には、上側の既存梁24が示されている。この既存梁24の下フランジ部24Bの下側には、既存コンクリート壁30が配置されている。また、既存梁24の下フランジ部24Bには、スタッド26が溶接等によって接合されている。このスタッド26を介して既存梁24と既存コンクリート壁30とが接合されている。
【0053】
ここで、既存梁24は、例えば、図5(B)に示されるように、増打ち補強部62によって補強される。具体的には、増打ち補強部62は、断面矩形状に形成されている。この増打ち補強部62の内部に、既存梁24が埋設されている。また、増打ち補強部62には、複数の上端梁主筋64、複数の下端梁主筋66、及び複数の接続筋68,69が埋設されている。
【0054】
上端梁主筋64は、増打ち補強部62の上側の角部にそれぞれ埋設されている。また、下端梁主筋66は、増打ち補強部62の下側の角部にそれぞれ埋設されている。これらの上端梁主筋64及び下端梁主筋66は、既存梁24に沿って配置されており、両端部が一対の既存柱22(図1参照)に接続されている。なお、上端梁主筋64及び下端梁主筋66は、梁主筋の一例である。
【0055】
接続筋68は、既存梁24の両側にそれぞれ配置されている。各接続筋68は、増打ち補強部62と既存スラブ12とに亘って埋設されており、増打ち補強部62と既存スラブ12とを接合している。また、接続筋69は、L字形状に屈曲されている。各接続筋69は、増打ち補強部62と既存コンクリート壁30とに亘って埋設されており、増打ち補強部62と既存コンクリート壁30とを接合している。
【0056】
このように構成された増打ち補強部62によって、既存梁24が鉄骨鉄筋コンクリート造とされている。これにより、既存梁24による既存コンクリート壁30の拘束力が高められる。したがって、既存コンクリート壁30の耐力が高められる。
【0057】
次に、上記第一実施形態では、既存梁24が鉄骨造とされるが、上記第一実施形態はこれに限らない。例えば、図6(A)に示されるように、既存梁70は、鉄筋コンクリート造であっても良い。
【0058】
具体的には、既存梁70は、鉄筋コンクリート造とされている。また、既存梁70は、断面矩形状に形成されている。この既存梁70の幅は、既存コンクリート壁30の壁厚と同等とされている。この既存梁70の上側の角部には、上端梁主筋72がそれぞれ埋設されている。また、既存梁70の下側の角部には、下端梁主筋74がそれぞれ埋設されている。さらに、既存梁70には、上端梁主筋72及び下端梁主筋74を囲むせん断補強筋76が埋設されている。
【0059】
既存梁70は、例えば、図6(B)に示されるように、増打ち補強部82によって補強される。増打ち補強部82は、既存梁70及び既存コンクリート壁30の両側にそれぞれ設けられている。各増打ち補強部82は、既存梁70の側面を全面に亘って被覆するとともに、既存コンクリート壁30の上部の壁面を被覆している。また、各増打ち補強部82には、前述した複数の接続筋68,69が埋設されている。さらに、各増打ち補強部82の下部には、複数の補強筋84が埋設されている。複数の補強筋84は、既存梁70の材軸方向に沿って配置されている。
【0060】
このように構成された増打ち補強部82によって既存梁70を補強することにより、既存梁70による既存コンクリート壁30の拘束力が高められる。したがって、既存コンクリート壁30の耐力が高められる。
【0061】
また、例えば、図7(A)には、鉄筋コンクリート造の既存梁70が示されている。この既存梁70は、断面矩形状に形成されている。この既存梁70の幅は、既存コンクリート壁30の壁厚よりも広くされている。
【0062】
既存梁70は、例えば、図7(B)に示されるように、増打ち補強部92によって補強される。増打ち補強部92は、既存コンクリート壁30の両側で、かつ、既存梁70の下側にそれぞれ設けられている。この増打ち補強部92には、複数の接続筋94及び複数の補強筋96が埋設されている。
【0063】
複数の接続筋94は、L字状に屈曲されている。各接続筋94は、既存コンクリート壁30の上部と既存梁70とに亘って埋設されており、既存コンクリート壁30と既存梁70とを接合している。また、複数の補強筋96は、既存梁24の材軸方向に沿って配置されている。
【0064】
このように構成された増打ち補強部92によって既存梁70を補強することにより、既存梁70による既存コンクリート壁30の拘束力が高められる。したがって、既存コンクリート壁30の耐力が高められる。
【0065】
次に、上記第一実施形態では、既存梁24の全長に亘って増打ち補強部42が設けられるが、増打ち補強部は、既存梁24に部分的に設けることも可能である。
【0066】
また、上記第一実施形態では、上下の既存梁24のうち、上側の既存梁24にのみ増打ち補強部42が設けられるが、上記第一実施形態はこれに限らない。増打ち補強部は、上下の既存梁24の少なくとも一方に設けることができる。また、増打ち補強部は、上下方向及び水平方向の少なくとも一方に連続する既存架構にそれぞれ設けても良い。
【0067】
また、増打ち補強部は、例えば、一対の既存柱22の少なくとも一方に設けることができる。つまり、増打ち補強部は、既存梁24及び既存柱22の少なくとも一方に設けることができる。なお、既存柱22の増打ち補強部には、周知の増打ち補強を適宜採用することができる。
【0068】
また、増打ち補強部の形状や配置は、適宜変更可能である。さらに、増打ち補強部に埋設する補強筋等の数や配置、形状も適宜変更可能である。
【0069】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
10 既存構造物
20 既存架構
22 既存柱
24 既存梁
30 既存コンクリート壁
40 耐震補強構造
42 増打ち補強部
50 耐震補強構造
52 増打ち補強部
54 上端梁主筋(梁主筋)
56 下端梁主筋(梁主筋)
62 増打ち補強部
64 上端梁主筋(梁主筋)
66 下端梁主筋(梁主筋)
70 既存梁
82 増打ち補強部
92 増打ち補強部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7