(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】車両のランプ装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/44 20060101AFI20220823BHJP
F21V 31/00 20060101ALI20220823BHJP
F21S 45/50 20180101ALN20220823BHJP
F21W 103/35 20180101ALN20220823BHJP
【FI】
B60Q1/44 A
F21V31/00 100
F21V31/00 400
F21S45/50
F21W103:35
(21)【出願番号】P 2017189143
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲村 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】天野 寛司
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀生
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-085452(JP,A)
【文献】実開昭52-148585(JP,U)
【文献】特開2004-155361(JP,A)
【文献】実開昭53-025181(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/44
F21V 31/00
F21S 45/50
F21W 103/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に対して傾斜された車体側パネルに取付開口が形成され、同取付開口に車両外側から嵌合されて取付けられる車両のランプ装置であって、
光源を収容し、前記光源から発せられた光が通過可能な開口部を有する筐体と、
前記車体側パネルの傾斜に合わせて、その上端側と下端側のいずれか一方側が他方側より、前記光源の発光方向に沿って先行するよう傾斜され、前記開口部を塞ぐように前記筐体に取り付けられた透光性のレンズと、
前記開口部の外側を囲むように前記レンズの外周縁に沿って設けられ、前記取付開口の周囲のシール面に接触可能なシール構造と、を備え、
前記シール構造は、
前記開口部の周囲を囲んで前記レンズの外周縁に沿って連続的に設けられ、前記開口部の周囲を囲んで前記シール面に接触している弾性を有する軟質性の第1シールと、前記レンズの外周縁の前記第1シールの外周側で前記第1シールに沿って設けられ、前記第1シールの外側で前記シール面に接触している弾性を有する硬質性の第2シールと、を有し、
前記第2シールは、
前記レンズに固定可能なベース部と、
前記ベース部から突出させて前記シール面に接触している弾性リップ部と、を備え、
前記弾性リップ部は、前記レンズの上端側および下端側のうち、前記光源の発光方向に沿って先行させた前記一方側からその両側に亘って設定され
た2重シール部にのみ設けられる
ことを特徴とする車両のランプ装置。
【請求項2】
前記2重シール部において、前記第2シールは、前記第1シールの外側に沿って連続的に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両のランプ装置。
【請求項3】
前記第1シールは、前記第2シールの前記ベース部の上に積層して設けられ、前記2重シール部において前記第2シールに並んで配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両のランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部に設けられるストップランプの車両のランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の後部(例えば、テールゲート、リアトランク)には、ストップランプが設けられている。更に、当該ストップランプとは別に、車両の後部上側(例えば、リヤスポイラ、ルーフスポイラ)に、ハイマウントストップランプが設けられる仕様もあり、これにより、後方からの視認性を高めて、安全性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したハイマウントストップランプは、例えば、車両の後部の車体側パネルに設けた取付開口部に車両外側から嵌合されて取り付けられ、当該車体側パネルとハイマウントストップランプとの間は、シール構造によって液密的ないし気密的にシールされている(例えば、特許文献1参照)。これにより、例えば、雨水や洗車水などが車体パネルの内側に浸入することが防止されている。
【0005】
ところで、ハイマウントストップランプは、リヤスポイラーの後面のように前後に大きく傾斜した面(車体側パネル)に取付けられる場合がある。この場合、取付開口の周囲のシール面も傾斜しているため、差し込み方向とシール方向が大きくずれることになる。そのためハイマウントストップランプの取り付け時にシール構造の一部がめくれてしまいシール性能が悪化したり、見栄えが悪くなる虞があった。
【0006】
また、車体側のパネルが傾斜していると、ハイマウントストップランプの上方側と下方側とで必要とされるシール性能が異なってくる。例えば、リアゲートスポイラのように車両後方斜め上方へ傾斜していると、車体側パネルに当たった高圧の洗車水は、車体側パネルの傾斜に沿って前方側へ流れていく。つまり、ハイマウントストップランプの上方側のシール構造には、高圧の洗車水が多くあたる一方で、下方側のシール構造には、洗車水があたりにくくなっており、必ずしも全周に亘って同一のシール性能とする必要がない。
【0007】
このように傾斜した車体側パネルに、ハイマウントストップランプを取り付ける場合、そのシール構造に改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ストップランプを含むランプ装置の取付性の向上と、取付後のシール性(例えば、高圧洗車水に対するシール性)の向上を同時に図ることが可能な車両のランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明の車両のランプ装置は、開口部を有する筐体と、開口部を塞ぐように筐体に取り付けられたレンズと、開口部の外側を囲むように設けられたシール構造(軟質性の第1シール、硬質性の第2シール)と、を有する。レンズは、車体側パネルの傾斜に合わせて、その上端側と下端側のいずれか一方側が他方側より、光源の発光方向に沿って先行するよう傾斜されている。シール構造は、開口部の周囲を囲んでレンズの外周縁に沿って連続的に設けられ、開口部の周囲を囲んでシール面に接触している弾性を有する軟質性の第1シールと、レンズの外周縁の第1シールの外周側で第1シールに沿って設けられ、第1シールの外側でシール面に接触している弾性を有する硬質性の第2シールと、を有し、第2シールは、レンズに固定可能なベース部と、ベース部から突出させてシール面に接触している弾性リップ部と、を備え、弾性リップ部は、レンズの上端側および下端側のうち、光源の発光方向に沿って先行させた一方側からその両側に亘って設定された2重シール部にのみ設けられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ストップランプを含むランプ装置の取付性の向上と、取付後のシール性(例えば、高圧洗車水に対するシール性)の向上を同時に図ることが可能な車両のランプ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るハイマウントストップランプ(シール構造)が装備された車両の斜視図。
【
図2】ハイマウントストップランプ(シール構造)の断面図。
【
図3】ハイマウントストップランプ(シール構造)の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「一実施形態の構成」
図1には、後部にテールゲート1が設けられた車両2が示されている。テールゲート1は、車両2の後部上側に設けられたヒンジ機構(図示しない)によって、鉛直方向Dg(換言すると、車高方向)に沿って矢印R方向に開閉可能に支持されている。なお、鉛直方向(車高方向)Dgに対して、車幅方向Dw、及び、車両2の前後方向(前方D1、後方D2)が規定され、これら三者は互いに直交した位置関係を有している。
【0013】
テールゲート1には、鉛直方向(車高方向)Dgで見て上側に、例えば、車両走行時における空気抵抗の低下や走行安定性の向上を図るためのスポイラ3(以下、テールゲートスポイラと言う)が設けられている。テールゲートスポイラ3は、車両2の後方D2に向けて突出し、かつ、車幅方向Dwに亘って幅広に構成されている。
【0014】
更に、当該車両2には、通常のストップランプ4と、ハイマウントストップランプ5が設けられている。通常のストップランプ4は、車幅方向Dwで見てテールゲート1の両外側の車体側パネル(図示しない)に設けられている。ハイマウントストップランプ5は、鉛直方向(車高方向)Dgで見て、テールゲート1の上側(即ち、テールゲートスポイラ3)に設けられている。図面では一例として、ハイマウントストップランプ5は、テールゲートスポイラ3の中央に取り付けられている。
【0015】
かかる構成において、例えば、運転者がブレーキペダル(図示しない)を踏むと、ハイマウントストップランプ5及び通常のストップランプ4が点灯する。
【0016】
図2に示すように、テールゲートスポイラ3の後面の中央には、ハイマウントストップランプ5を取り付けるための取付開口3aが設けられている。取付開口3aは、テールゲートスポイラ3の後面を構成する車体側パネル3pを貫通させて構成されている。本実施形態のテールゲートスポイラ3の後面(車体側パネル3p)は、鉛直方向Dgに対して車両の前後方向に傾斜されている。即ち、テールゲートスポイラ3の後面(車体側パネル3p)の上方側が下方側より車両の後方D2側に位置するよう傾斜されている。取付開口3aは、後述するハイマウントストップランプ5の筐体7を車両の外側(後方D2側)から挿入可能に構成されている。
【0017】
取付開口3aは、車体側パネル3pを一部屈曲させたフランジ3fによって区画されている。フランジ3fは、後述する筐体7の挿入方向(換言すると、車両2の前方D1方向)に沿って延出されている。車体側パネル3pには、シール面3sが設けられている。シール面3sは、フランジ3f(取付開口3a)の周囲に沿った外側部分に取付開口3aを囲むように設けられ、後述するハイマウントストップランプ5のシール構造10(第1シール10a、第2シール10b)が対向して接触可能に構成されている。シール面3sは、車体側パネル3p(テールゲートスポイラ3の後面)の傾斜方向に沿って構成されている。
【0018】
なお、車体側パネル3p(テールゲートスポイラ3の後面)の傾斜角度は、テールゲートスポイラ3の形状や種類に応じて設定されるため、ここでは特に限定しない。本実施形態では、車体側パネル3pをリアゲートスポイラ3の後面としているが、リアゲートやトランクリッドのアウタパネルであってもよい。
【0019】
かかる構成において、例えば、作業員が、後述する筐体7を取付開口3aに挿入する。このとき、当該筐体7は、フランジ3fに沿って案内される。そして、後述するシール構造10(第1シール10a、第2シール10b)を、上記したシール面3sに接触させる。そうすると、後述するハイマウントストップランプ5の取付機構9がフランジ3fに弾性的に接触して係合する。
【0020】
これにより、ハイマウントストップランプ5が、抜け止めされた状態で、取付開口3aに取り付けられる。この結果、後述するハイマウントストップランプ5のレンズ8が、車両2の後方D2に向けて位置決めされる。以下、ハイマウントストップランプ5(シール構造10)の詳細について、具体的に説明する。
【0021】
「ハイマウントストップランプ5(シール構造10)」
図1~
図3に示すように、ハイマウントストップランプ5は、光源6と、筐体7と、透光性を有するレンズ8と、取付機構9と、シール構造10と、を有している。
【0022】
「筐体7」
筐体7は、光源6を収容可能に構成され、幅広の直方体形状を有している。このため、筐体7は、当該幅方向に沿って、複数の光源6を配置させることができる。これにより、筐体7を、テールゲートスポイラ3の取付開口3aに挿入した状態において、複数の光源6は、車幅方向Dwに沿って配列される。
【0023】
更に、筐体7は、光源6から発せられた光が通過可能な開口部7aを有している。筐体7は、開口部7a以外から光を通過させない材料で構成されている。筐体7の開口部7aの周囲には、開口部7aの周縁から外周側に向かって延びるフランジ部7bが形成され、これにより、開口部7aの全周に亘って端面7tが構成されている。この端面7tに、後述するレンズ8が接合されている。
【0024】
そして、筐体7の端面7t(フランジ7b)は、車体側パネル3p(テールゲートスポイラ3の後面)の傾きに合わせて全体が傾斜されている。即ち、筐体7の開口部7aの上方側と下方側の位置が光源6の発光方向にオフセットするように、端面7tが傾斜されている。なお、光源6としては、例えば、LEDや電球などの各種バルブ(bulb)を適用することができる。また、筐体7の開口部7aの大きさや形状は、例えば、ハイマウントストップランプ5の大きさや種類などに応じて設定されるため、ここでは特に限定しない。
【0025】
「レンズ8」
レンズ8は、光を透過する機能を有し、上記したテールゲートスポイラ3の取付開口3a及びその周囲のシール面3sを覆うような輪郭形状を有して構成されている。レンズ8は、例えば、その裏面8mに特殊なレンズ加工が施され、これにより、後続車に視認し易い明るさが確保されている。なお、筐体7、取付機構9、シール構造10は、それぞれ、レンズ8の裏面8m側(車体側パネル3pと対向する側)に設けられている。
【0026】
この場合、レンズ8は、上記した開口部7aを塞ぐように、筐体7に取り付けられている。この取付状態において、レンズ8は、筐体7の開口部7a周縁のフランジ部7b(端面7t)と同様、車体側パネル3p(テールゲートスポイラ3の後面)の傾きに合わせて傾斜されている。
【0027】
具体的には、レンズ8は、その上端8a側と下端8b側のいずれか一方側が、他方側より光源6の発光方向6dへ先行(オフセット)した位置となるよう鉛直方向Dgに対して傾斜されている。本実施形態では、光源6の発光方向6dで見て、レンズ8の上端8a側が下端8b側より光源6から遠い車両外側の位置、即ち、車両の後方D2側に位置するよう傾斜されている。つまり、レンズ8の傾斜方向8dが下端8b側から上端8a側に向かって後方傾斜する方向とされている。
【0028】
なお、レンズ8と筐体7との接合方法としては、例えば、筐体7の端面7tとレンズ8の裏面8mとを溶着させる方法や接着させる方法など、既存の各種取付方法を適用することができる。
【0029】
また、ハイマウントストップランプ5を、上記したテールゲートスポイラ3の取付開口3aに取り付けた状態において、筐体7の挿入方向(車両2の前方D1方向)と、光源6の発光方向6dは、互いに同一直線上に沿って位置付けられる。
【0030】
「取付機構9」
取付機構9は、筐体5の外側に設置され、車両2の後部(テールゲートスポイラ3)の取付開口3aに、ハイマウントストップランプ5を取り付けるための部材である。取付機構9は、側面視で、筐体7の開口部7a側に向かって開いた略U字状を成し、筐体7の上下を挟むように筐体7に設けられている。
【0031】
取付機構9は、筐体7を上下から挟み込んで固定される固定部9aと、U字状の上下両端部に形成されて車体側パネル3pの取付開口3a(フランジ3f)に係合される一対のクリップ部9bと、を備えている。取付機構9は、金属材料や樹脂材料で形成することができる。
【0032】
かかる構成において、鉛直方向(車高方向)Dgで見て、筐体7の上下両側に、クリップ部9bが1つずつ配置されている。なお、取付機構9は、筐体7の幅方向に複数、本実施形態では、2つ設けられる。
【0033】
固定部9aは、筐体7の開口部7aと反対側の部分に固定されている。固定方法としては、例えば、ネジ止め、接着など既存の各種固定方法を適用することができる。本実施形態では、一例として、固定部9aは、ネジ9cで筐体7に固定されている。
【0034】
クリップ部9bは、一端側が固定部9aに支持され、かつ、他端側が筐体7から離間した姿勢に弾性的に維持されている。換言すると、クリップ部9bは、一端側が固定され、他端側がフリーな状態となった片持ち姿勢に維持されている。更に、クリップ部9bは、一端側から上り勾配となったガイド面9b-1と、ガイド面9b-1から他端側に向かって下り勾配となった接触面9b-2と、を備えて筐体7の外側(上下方向)に突出した形状とされている。
【0035】
ここで、テールゲートスポイラ3の取付開口3aに、ハイマウントストップランプ5の筐体7を挿入する。この間、ガイド面9b-1が、取付開口3aを区画するフランジ3fに沿って案内される。このとき、クリップ部9bは、筐体7に接近する方向に弾性変形する。この状態で、筐体7を更に挿入する。やがて、ガイド面9b-1がフランジ3fを乗り越える。そうすると、クリップ部9bは、自身の弾性力によって、筐体7から離間した片持ち姿勢に復元する。このとき、接触面9b-2がフランジ3fの端部3fp(即ち、車両2の一部)に弾性的に接触する。かくして、ハイマウントストップランプ5は、車両2の後部(即ち、取付開口3a)に抜け止めされた状態で取り付けられる。
【0036】
「シール構造10」
シール構造10は、筐体7の開口部7aの外側を囲むように、レンズ8の外周縁に沿って裏面8mに設けられている。シール構造10は、第1シール10aと、第2シール10bと、を備えている。更に、シール構造10は、その一部分に、2重シール部10pが構成されている。2重シール部10pには、第1シール10a及び第2シール10bの双方が配置されている。他の部分には、第1シール10aが配置されている。
【0037】
第1シール10aは、筐体7部分を除いて環状に形成され、開口部7aの周囲を囲むようにレンズ8の外周縁に沿って連続的に設けられている。第1シール10aは、弾性を有する軟質性の材料で形成されている。軟質性の材料としては、例えば、ゴム材料をスポンジ状に発泡させたものを適用することができる。
【0038】
図面では一例として、第1シール10aは、レンズ8の裏面8mにおいて、開口部7aが設けられた部分及び2重シール部10pのうち第2シール10bが設けられた部分の双方を回避した余地部分に亘って設けられている。なお、第1シール10aは、必ずしも、上記した余地部分の全体に亘って設ける必要はなく、開口部7aの周囲の全周を連続的に囲むようなレイアウトであれば、その大きさや形状は自由に設定することができる。
【0039】
このように、開口部7aの周囲に第1シール10aを連続させて囲むことで、車体側パネル3pのシール面3sとレンズ8の外周縁部の裏面8mとの間をシールすることができる。この結果、雨水や洗車水は、当該第1シール10aで堰き止められ、車体側パネル3p(テールゲートスポイラ3)内に浸入することはない。
【0040】
更に、第1シール10aは、後述する第2シール10bのベース部10b-1の上に積層させて配置されている。ここで、後述するように、ベース部10b-1が筐体7(開口部7a)を回避した部分の全体に亘って設けられている仕様では、当該ベース部10b-1全体を覆うように第1シール10aを積層させてもよい。この場合、2重シール部10pにおいて、第1シール10aは、後述する第2シール10bの弾性リップ部10b-2と並んで配置される。なお、第1シール10aと後述するベース部10b-1との積層方法としては、例えば、両面テープや接着剤を用いた既存の固定方法を適用することができる。
【0041】
第2シール10bは、2重シール部10pにおいて、第1シール10aに沿って設けられている。2重シール部10pは、開口部7aの周囲のうち、鉛直方向Dgで見て、上側及び下側のいずれか一方側からその両側の途中までに亘る部分に設定されている。具体的には、2重シール部10pは、レンズ8の上端8a側および下端8b側のうち、光源6の発光方向6dに沿って先行(オフセット)させた一方側の領域に設定されている。なお、第2シール10bは、弾性を有する硬質性の材料で形成されている。硬質性の材料としては、例えば、ゴム材料を固化させたものを適用することができる。
【0042】
上記したように、本実施形態では、レンズ8の傾斜方向8dが、鉛直方向Dgに対して上端8a側を下端8b側よりも光源6の発光方向6dに沿って先行(オフセット)させている。このため、2重シール部10pは、その先行させたレンズ8の車両後方D2側に位置する上端8a側に設定されている。即ち、2重シール部10pは、開口部7aの周囲のうち、鉛直方向Dgで見て上端8a側から、レンズ8の両側部の途中まで設定されている。そして、2重シール部10pに、第2シール10bが配置されている。
【0043】
2重シール部10pにおいて、第2シール10bは、第1シール10aの外側に沿って連続的に配置されている。第2シール10bは、ベース部10b-1と、弾性リップ部10b-2と、を備えている。なお、ベース部10b-1と弾性リップ部10b-2は、一連の成形プロセスにおいて、互いに一体的に成形されている。
【0044】
ベース部10b-1は、レンズ8の裏面8mに固定することが可能に構成されている。図面では一例として、ベース部10b-1は、レンズ8の裏面8mのうち、筐体7(開口部7a)を回避した部分の全体に亘って設けられている。この場合、ベース部10b-1とレンズ8の裏面8mとの固定方法としては、例えば、両面テープや接着剤を用いた既存の固定方法を適用することができる。
【0045】
弾性リップ部10b-2は、ベース部10b-1から突出させて構成されている。弾性リップ部10b-2は、その基端がベース部10b-1に支持され、その先端10b-2tが先細り形状となっている。これにより、弾性リップ部10b-2の先端10b-2tは、弾性変形自在に構成されている。なお、先細り形状としては、例えば、三角形、円弧形など各種の形状を適用することができる。
【0046】
弾性リップ部10b-2の高さは、当該弾性リップ部10b-2の全体に亘って一定値に設定されている。弾性リップ部10b-2の高さは、例えば、レンズ8の裏面8mを基準に設定することができる。ここで、高さ方向は、例えば、レンズ8の裏面8mに直交する方向、換言すると、レンズ8の傾斜方向8dに直交する方向に沿って規定することができる。
【0047】
更に、弾性リップ部10b-2は、2重シール部10pに沿って連続的に設けられている。即ち、弾性リップ部10b-2は、開口部7aの周囲において、鉛直方向Dgで見てレンズ8の上端8a側からその両側の途中までに亘る部分に、レンズ8の外周縁に沿って設けられている。図面では一例として、弾性リップ部10b-2(即ち、第2シール10b)は、レンズ8の裏面8mの上端縁からその両側の側縁に沿って連続的に設けられている。
【0048】
かくして、弾性リップ部10b-2は、例えば、レンズ8の裏面8mと直交する方向(シール面3a側)対してレンズ8の外周側に傾斜させて突出されている。
【0049】
「一実施形態の作用、効果」
本実施形態によれば、
図4に示すように、ハイマウントストップランプ5が取付開口3aに取り付けられた状態において、シール構造10(第1シール10a、第2シール10b)が、テールゲートスポイラ3のシール面3sに接触している。特に、ハイマウントストップランプ5(即ち、レンズ8)の上端8a側の2重シール部10pでは、シール面3sに接触した第1シール10aの外側で、更に、第2シール10bの弾性リップ部10b-2がシール面3sに接触している。このとき、弾性リップ部10b-2は、レンズ8の外周側に傾斜された状態(
図4では上向きの姿勢)で、シール面3sに接触している。換言すると、弾性凸部10b-2は、筐体7の開口部7aに向けて反転すること無く、シール面3sに接触している。これにより、弾性凸部10b-2は、その先端10b-2tがシール面3sに沿って外向きに接触した姿勢に維持されている。
【0050】
そうすると、テールゲートスポイラ3の後面(車体側パネル3p)に沿って矢印11s方向に流れ落ちた雨水や洗車水は、2重シール部10pにおいて、弾性リップ部10b-2(第2シール10b)によって堰き止められると共に、弾性リップ部10b-2を通過した雨水や洗車水も、第1シール10aによって堰き止められる。この結果、当該雨水や洗車水が、車体側パネル3p(テールゲートスポイラ3)内に浸入することはない。
【0051】
例えば、高圧洗車の際には、車体側パネル3pに沿って矢印11s方向に勢いよく洗車水が流れ落ちるため、レンズ8の上端8a側(一方側)のシール構造10には、洗車水が勢いよく当たる。しかしながら、本実施形態のレンズ8の上端8a側(一方側)には、2重シール部10pが設定されるので、かかる高圧洗車水を、まず外向きの弾性リップ部10b-2によって確実に受け止めて水圧を減衰しつつ堰き止めることができる。万が一、弾性リップ部10b-2を通過したとしても第1シール10aによって堰き止められる。
【0052】
一方、ハイマウントストップランプ5(即ち、レンズ8)の下端8b側では、第2シール10bが設けられず第1シール10aのみが設けられる。しかし、例えば、テールゲートスポイラ3の後面(車体側パネル3p)に沿って矢印11s方向に流れ落ちた雨水や洗車水は、当該他方側8bから鉛直方向Dgに沿って自由落下し、レンズ8の下端8b側(他方側)のシール構造10まで逆流しにくくなっている。このため、高圧洗車の際でも、洗車水がシール構造10に当たり難く第1シール10aのみで車体側パネル3p(テールゲートスポイラ3)内への水の浸入を堰き止めることができる。これにより、当該下端8b側(他方側)のシール構造10は、第1シール10aのみのシンプルな構成とすることが可能となり、その結果、低コスト化を図ることができる。
【0053】
しかも、レンズ8の下端8b側(他方側)には、第2シール10bのような弾性リップ部10b-2が設定されないので、ハイマウントストップランプ5を取り付ける際に、レンズ8の下端8b側(他方側)の弾性リップ部10b-2がめくれてシール性能や見栄えが悪化することがない。
【0054】
本実施形態によれば、既存の車両2の後部(即ち、テールゲートスポイラ3)に何らの改良を加えること無く、現状の構造をそのまま用いて、ハイマウントストップランプ5を取り付けることができると共に、その取り付け後のシール性を向上させることができる。これにより、低コスト化及び汎用性に優れたハイマウントストップランプ5(シール構造10)を実現することができる。
【0055】
本実施形態によれば、2重シール部10pを、筐体7の開口部7aの周囲のうち、鉛直方向Dgで見て上側からその両側の途中までに亘る部分に規定し、その規定された2重シール部10pに、第2シール10b(弾性リップ部10b-2)を配置させている。これにより、車両2の後部(テールゲートスポイラ3の取付開口3a)に、ハイマウントストップランプ5を取り付ける際に、テールゲートスポイラ3のシール面3sに対して、弾性リップ部10b-2を反転させること無く接触させることができる。この結果、特に、高圧洗車時の洗車水を減圧させ、そして、当該洗車水を確実に堰き止めることができる。
【0056】
この場合、筐体7の開口部7aの周囲に沿って連続的に(即ち、開口部7aの全周に亘って)2重シール部10pを構成することも考えられるが、そうすると、鉛直方向Dgで見て下側からその両側の途中までに亘る部分の弾性リップ部(図示しない)は、ハイマウントストップランプ5を取付開口3aに取り付ける際に、シール面3sに対して反転して接触してしまう場合がある。そうなると、シール構造10(第1シール10a、第2シール10b)のシール性能を一定に維持することができなくなる上、見栄えが悪化してしまう。
【0057】
「変形例」
上記した実施形態では、ハイマウントストップランプ5のシール構造10を想定したが、当該シール構造10は、他のランプ装置にも適用することが可能であることは言うまでもない。
【0058】
上記した実施形態では、上端8a側が下端8b側よりも光源6の発光方向6dに沿って先行するようにレンズ8を傾斜させ、その上端8a側に2重シール部10p(第2シール10b、弾性リップ部10b-2)を配置させた仕様を想定したが、これとは逆に、下端8b側が上端8a側よりも光源6の発光方向6dに沿って先行するようにレンズ8を傾斜させ、その下端8b側に2重シール部10p(第2シール10b、弾性リップ部10b-2)を配置させた仕様でも、上記した実施形態と同一の効果を実現することができる。
【0059】
上記した実施形態では、2重シール部10pにおいて、第1シール10aを、第2シール10bのベース部10b-1の上に積層させて配置させた仕様を想定したが、これに代えて、
図5に示すように、2重シール部10pにおいて、第1シール10aを、第2シール10bのベース部10b-1の内側に隣接させて配置させた仕様でも、上記した実施形態と同一の効果を実現することができる。この場合、第1シール10aは、必ずしも、第2シール10bのベース部10b-1の内側に隣接させる必要はなく、両者の間に隙間を介在させてもよい。
【0060】
なお、第1シール10aと第2シール10bのベース部10b-1との間に隙間を介在させる場合、レンズ8を積層の2色成形にして、第1シール10aおよび第2シール10bが接着される部位を不透過材にするなど、当該隙間が視認できないようにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0061】
1…テールゲート、2…車両、3…テールゲートスポイラ、3s…取付開口、
4…通常のストップランプ、5…ハイマウントストップランプ、6…光源、7…筐体、
7a…開口部、8…レンズ、9…取付機構、10…シール構造、10a…第1シール、
10b…第2シール、10p…2重シール部。